JP5774246B2 - 金属成形体の粗面化方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化できる技術は実用化されていない。
特許文献2には、特許文献1の発明において、さらに複数回重畳的にレーザースキャニングするレーザー加工方法の発明が開示されている。
さらにクロス方向へのレーザースキャンにより十分な表面粗し処理ができることから、接合強度は高くできることが考えられるが、表面粗さ状態が均一にならず、金属と樹脂との接合部分の強度の方向性が安定しないおそれがあるという問題がある。
例えば、1つの接合体はX軸方向への剪断力や引張強度が最も高いが、他の接合体は、X軸方向とは異なるY軸方向への剪断力や引張強度が最も高く、さらに別の接合体は、X軸およびY軸方向とは異なるZ軸方向への剪断力や引張強度が最も高くなるという問題が発生するおそれがある。
製品によっては(例えば、一方向への回転体部品や一方向への往復運動部品)、特定方向への高い接合強度を有する金属と樹脂の複合体が求められる場合があるが、特許文献1、2の発明では前記の要望には十分に応えることができない。
実施形態1〜3では、金属長尺コイル表面にレーザー照射して凹凸を形成することが記載されている。そして、段落番号10では、金属長尺コイル表面をストライプ状や梨地状に荒らすこと、段落番号19では、金属長尺コイル表面をストライプ状、点線状、波線状、ローレット状、梨地状に荒らすることが記載されている。
しかし、段落番号21、22の発明の効果に記載されているとおり、レーザー照射をする目的は、金属表面に微細で不規則な凹凸を形成し、それによりアンカー効果を高めるためである。特に処理対象が金属長尺コイルであることから、どのような凹凸を形成した場合でも、必然的に微細で不規則な凹凸になるものと考えられる。
よって、特許文献3の発明は、特許文献1、2の発明のようにクロス方向にレーザー照射して表面に微細な凹凸を形成する発明と同じ技術的思想を開示しているものである。
金属成形体と樹脂成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の接合面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する工程、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂を射出成形する工程を有している、複合成形体の製造方法を提供する。
また本発明は、課題の他の解決手段として、
金属成形体と樹脂成形体が接合された複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の接合面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する工程、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、少なくとも前記接合面と前記樹脂成形体となる樹脂を接触させた状態で圧縮成形する工程を有している、複合成形体の製造方法を提供する。
最初の工程では、金属成形体10の接合面12に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する。
この工程では、接合面12に対して高い照射速度でレーザー光を連続照射することで、ごく短時間で接合面12を粗面にすることができる。図1の接合面12(部分拡大図)は、粗面にされた状態が誇張されて図示されている。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、接合強度も高いレベルに維持することができる。
(A)レーザー光の照射速度が2000〜15000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm2
要件(A)、(B)であるときの加工時間を上記範囲内にするとき、接合面12の全面を粗面にする(粗面化する)ことができる。
(I)図3、図4に示すように、接合面(例えば長方形とする)12の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)接合面の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法。
(III)接合面の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)接合面に対してランダムに連続照射する方法。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほど接合面12に対する粗面化の程度が大きくなる。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする、また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体10の接合面の面積に応じて調整することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(図4に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、図3、図4に示す連続照射方法に代えて、図5に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、レーザー出力とレーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm2)より選択することができる。
エネルギー密度(W/μm2)は、0.1W/μm2以上が好ましく、0.2〜10W/μm2がより好ましく、0.2〜6.0W/μm2がさらに好ましい。
エネルギー密度(W/μm2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
金属成形体10の接合面12は、図1に示すような平面でもよいし、図2に示すような曲面でもよいし、平面と曲面の両方を有しているものでもよい。
このときの金属成形体の接合面12の状態の一実施形態を図6〜図8により説明する。
図6に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで粗面化することができる。1本の直線への照射回数は1〜10回が好ましい。
このとき、粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、図7(a)、図8(a)〜(c)に示すようになっている。なお、「金属成形体10の表層部」は、表面から粗面化により形成された開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分である。
なお、1本の直線への照射回数が10回を超える回数である場合には、粗面化のレベルをより高めることができ、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度を高めることができるが、合計照射時間が長くなる。このため、目的とする複合成形体1の接合強度と製造時間との関係を考慮して、1本の直線への照射回数を決めることが好ましい。1本の直線への照射回数が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは20〜35回である。
開放孔30は、厚さ方向に形成された開口部31を有する幹孔32と、幹孔32の内壁面から幹孔32とは異なる方向に形成された枝孔33からなる。枝孔33は、1本または複数本形成されていてもよい。
なお、複合成形体1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合強度が維持できるのであれば、開放孔30の一部が幹孔32のみからなり、枝孔33がないものでもよい。
内部空間40は、トンネル接続路50により開放孔30と接続されている。
なお、多数の開放孔30が一つになって溝状の開放空間45が形成されていてもよい。
また、同様に開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔32の内壁面が溶融して枝孔33が形成され、さらに枝孔33が延ばされてトンネル接続路50が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体の接合面には開放孔や溝が形成されるが、開口部を有していない内部空間と、前記開放孔と前記内部空間を接続する接続通路は形成されない。
この工程では、
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂を射出成形する工程、または
前工程においてレーザー光が照射された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、少なくとも前記接合面と前記樹脂成形体となる樹脂を接触させた状態で圧縮成形する工程、
のいずれかの方法を適用することができる。
その他、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の成形方法として使用される公知の成形方法
も適用することができる。
熱可塑性樹脂を使用した場合には、溶融した樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を冷却固化させることで複合成形体を得られる方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、射出圧縮成形などの成形方法も使用することができる。
熱硬化性樹脂を使用した場合には、液状或いは溶融状態の樹脂に圧力などをかけることで、金属成形体に形成された孔や溝やトンネル接続路内に樹脂を入り込ませた後、樹脂を熱硬化させることで複合成形体を得られる成形方法であればよい。射出成形や圧縮成形のほか、トランスファー成形などの成形方法も使用することができる。
なお、射出成形法と圧縮成形法で熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときは、後工程において加熱などをすることで熱硬化させる。
性エラストマーも含まれる。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系等のものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
このような開放孔30などの開口径より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体の開放孔30などの内部に繊維状充填材の一部が張り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。より望ましくは、25〜200質量部、さらに望ましくは45〜150質量部である。
開放孔30と(幹孔32と枝孔33)開放空間45の内部には、それぞれの開口部分から樹脂が入り込んでおり、内部空間40の内部には、開放孔30や開放空間45の開口部から入り込んだ樹脂がトンネル接続路50を通って入り込んでいる。
このため、本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、開放孔30や開放空間45内のみに樹脂が入り込んだ複合成形体と比べると、図1において金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12に対して、金属成形体10の端部を固定した状態で樹脂成形体20を平行方向(図1のX方向)に引っ張ったときのせん断接合強度(S1)と、金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12に対して垂直方向(図1のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)の両方が高くなる。
実施例および比較例は、図9に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表1に示す条件でレーザー光を連続照射した。
実施例1〜5、比較例1〜3は図3に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例6は図4に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で射出成形して、実施例および比較例の図17に示す複合成形体を得た。
図11は、実施例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図12は、実施例3の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図13は、実施例4の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図14は、実施例5の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図15は、実施例6の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図16は、比較例2の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(100倍、500倍である)。照射速度が1000mm/secであることから、接合面の粗面化が十分になされていなかった。
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L7):ダイセルポリマー(株)製),ガラス繊維の繊維長:11mm
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
実施例および比較例の図17に示す複合成形体を用い、引張試験を行ってせん断接合強度(S1)を評価した。結果を表1に示す。
引張試験は、金属成形体10側の端部を固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで図17に示すX方向(図1のX方向であり、接合面12に対して平行方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
工業的規模で大量生産することを考慮すれば、加工時間の短縮ができる(即ち、製造に要するエネルギーも低減できる)実施例1の製造方法の工業的価値は非常に大きなものである。
実施例1と実施例2、3との対比から確認できるとおり、実施例2、3のようにレーザー照射の繰り返し回数を増加させることで接合強度を高めることができるが、その場合であっても、比較例1〜3と比べると加工時間を短縮することができた。
実施例1〜3と実施例4〜6との対比から確認できるとおり、実施例4〜6のようにレーザーの照射速度を高めたときにはよりせん断接合強度(S1)(図1、図17のX方向への接合強度)を高めることができた。
実施例および比較例は、図18に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表2に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、図1で示すY方向(図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで図20のY方向(図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
しかし、表2の比較例4〜6との対比から明らかなとおり、本願発明の製造方法を適用することにより、金属成形体10と樹脂成形体20の接合面12(面積90mm2)に対して垂直方向(図1のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)も高くできることが確認できた。
実施例および比較例は、図21に示す金属成形体(アルミニウム:A5052)の接合面12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表3に示す条件でレーザーを連続照射した。
実施例10〜14、比較例8、9は図3に示すようにレーザー光を連続照射し、実施例15は図4に示すようにレーザー光を連続照射し、比較例7は図5に示すようにレーザー光を連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、下記の方法で圧縮成形して、実施例および比較例の複合成形体を得た。
金属成形体10を接合面12が上になるように型枠内(テフロン製)に配置し、接合面12上に樹脂ペレットを加えた。その後、型枠を鉄板で挟みこみ、下記条件で圧縮して、図22に示す複合成形体を得た。
樹脂ペレット:PA66樹脂(2015B,宇部興産(株)製)
温度:285℃
圧力:1MPa(予熱時)、10MPa
時間:2分間(予熱時)、3分間
成形機:東洋精機製作所製圧縮機(mini test press-10)
実施例および比較例の複合成形体を用い、引張試験を行って引張り接合強度(S2)を評価した。結果を表3に示す。
引張試験は、次のようにして実施した。
図23に示すように、複合成形体の樹脂成形体20の露出面に対して、アルミニウム板72aとその面に対して垂直方向に固定された引張部73aからなる治具74aを接着剤71aにより固着した。
同様に図23に示すように、複合成形体の金属成形体10の露出面に対して、アルミニウム板72bとその面に対して垂直方向に固定された固定部73bからなる治具74bを接着剤71bにより固着した。
固定部73bを固定した状態で、下記条件にて引張部73aを引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:テンシロン
引張速度:5mm/min
チャック間距離:16mm
開口部を有していない内部空間の有無を確認した。以下にその方法を示す。
複合成形体の接合面12を含む接合部において、レーザー照射方向に対して垂直方向(図6のA-A、B-B、C-C方向)にランダムに3箇所切断し、それぞれの表層部の断面部を走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に3点観察した。
SEM観察写真(500倍)において内部空間の有無を確認できた場合、その個数を数えた。なお、内部空間の最大径が10μm以下のものは除外した。
内部空間の個数(9箇所での平均値)を示した(表3)。
また、内部空間を微小部X線分析(EDX)で分析し、樹脂が内部空間まで侵入していることを確認した。
SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 S-3400N
EDX分析装置:アメテック(旧エダックス・ジャパン)社製 Apollo XP
また、図2のように複合成形体の金属面が曲面の場合には、曲面の接線に対して垂直方向にサンプルを切断することで、同様の測定が可能である。
なお、顕微レーザラマン分光測定装置を用いても樹脂が内部空間まで侵入していることを確認できる。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図24からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例10の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
図25からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例11の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
図26からは厚さ方向に形成された複数の孔と、複数の独立した空間が確認でき、それらは全て黒く見えることから、樹脂が侵入していることが確認できる。
厚さ方向に形成された孔は、開放孔30の幹孔32に相当する孔と認められる。
独立した空間は、幹孔32の内壁面から幹孔32の形成方向とは異なる方向に延ばされた枝孔33の断面であるか、内部空間40であると認められる。
そして、内部空間40であるとすると、内部に樹脂が侵入していることから、開放孔30とトンネル接続路50で接続されているものと考えられる。
このため、実施例12の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
相対的に白く見える部分が金属成形体10であり、相対的に黒く見える部分が樹脂成形体20である。
金属成形体10には、多数の開放孔30が形成されていることが確認できる。
このため、実施例15の複合成形体は、接合面12に対して垂直方向に引っ張ったとき(図1のY方向)の引張り接合強度(S2)が高くなっている。
実施例7〜9(表2)と同様にして、図18に示す金属成形体(表4に示す金属)の接合面12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、図1で示すY方向(図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで図20のY方向(図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
図21に示す金属成形体(表4に示す金属)の接合面12の全面(40mm2の広さ範囲)に対して、表4に示す条件でレーザーを連続照射した。
レーザー光は図3に示すように連続照射した。
次に、処理後の金属成形体を使用して、実施例10〜15と同様に圧縮成形して複合成形体を得た。
引張試験と内部空間の観察方法は、実施例10〜15と同様に実施した。
実施例17(SUS304)は、表2の実施例9(アルミニウム)と比べると、レーザー照射速度を遅くして加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった(図30)。
実施例18(SUS304,GF入りのPP)は、実施例17(SUS304,GF入りのPA)と比べると、同じ条件であるが、引張り接合強度(S2)は低くなった。
実施例19は、表3の実施例10〜12と比べると、繰り返し回数が多いため、加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった。
実施例20(SUS304)、実施例21(SUS304;図31)は、表3の実施例13(アルミニウム)と比べると、レーザー照射速度を遅くして繰り返し回数を増加させたため、加工時間は長くなったが、引張り接合強度(S2)は高くなった。
実施例1と同様にして、アルミニウム表面にレーザー照射したときのエネルギー密度と溝の深さの関係(図32)、エネルギー密度と溝の幅の関係(図33)を試験した。
その結果、エネルギー密度が0.3W/μm2付近において、明確な違いが認められた。
実施例7〜9(表2)と同様にして、図18に示す金属成形体(表5に示す金属)の接合面12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表5に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、図1で示すY方向(図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで図20のY方向(図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
実施例7〜9(表2)と同様にして、図18に示す金属成形体(表6に示す金属)の接合面12の全面(90mm2の広さ範囲)に対して、表6に示す条件でレーザー光を連続照射した。
その後、実施例1〜6、比較例1〜3と同様に実施して、図19に示す複合成形体を得た。
得られた複合成形体について、図1で示すY方向(図20のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、図20に示すように、金属成形体10側の治具70により固定した状態で、金属成形体10と樹脂成形体20が破断するまで図20のY方向(図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重を測定した。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
10 金属成形体
12 接合面
20 樹脂成形体
Claims (7)
- 金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで前記金属成形体の表面を粗面化する、金属成形体の粗面化方法。
- 前記金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射するとき、直線、曲線およびこれらの組み合わせからなる線が形成されるようにレーザー光を連続照射する、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。
- 前記金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射するとき、
直線、曲線およびこれらの組み合わせからなる線が形成されるようにレーザー光を連続照射し、
レーザー光を複数回連続照射して1本の直線または1本の曲線を形成する、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。 - 前記金属成形体の表面に対して、2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射するとき、
複数本の直線、複数本の曲線およびこれらの組み合わせからなる線が形成されるようにレーザー光を連続照射し、
前記複数本の直線、または前記複数本の曲線が、それぞれ0.005〜1mmの範囲で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射する、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。 - 前記金属成形体の接合面に対して、2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射するとき、
複数本の直線、複数本の曲線およびこれらの組み合わせからなる線が形成されるようにレーザー光を連続照射し、
前記複数本の直線、または前記複数本の曲線が、それぞれ0.005〜1mmの範囲で等間隔に形成されたものを1群として、各群の間隔が0.01〜1mmの範囲で等間隔になるように複数群形成されるようにレーザー光を連続照射する、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。 - 前記レーザー光を連続照射するとき、下記要件(A)、(B)であるときの加工時間が0.1〜30秒の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程である、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。
(A)レーザー光の照射速度が2000〜15000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm2 - 前記レーザー光を連続照射するとき、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、
前記レーザー出力とスポット面積(π・〔スポット径/2〕2)から求められるエネルギー密度(W/μm 2)が0.2〜10W/μm 2の範囲になるようにレーザー光を連続照射する工程である、請求項1記載の金属成形体の粗面化方法。
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