JP5767006B2 - 切断ブレード - Google Patents
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Description
この種の切断ブレードとしては、例えば下記特許文献1〜3に示されるように、円形薄板状をなす基材と、基材の外周縁部に形成された切れ刃と、基材内に分散され、ダイヤモンドやcBN(立方晶窒化ホウ素)からなる砥粒とを備えたものが知られている。
また近年では、半導体製品の製品歩留まりの向上を目的として、このようなレジンボンドブレード(切断ブレード)を極薄刃に形成することが要求されている。
すなわち、基材がレジンボンドからなる切断ブレードを使用した場合、加工品位は高められるものの、ブレード寿命(工具寿命)が短く、また生産性を向上させる目的で切断速度を上げると、製品(被切断材を切断加工してなる切断片等)の切断面に蛇行が生じることがあった。また、切断ブレードを極薄刃に形成した場合には、ブレード剛性が確保できなくなり、前述の蛇行が生じやすかった。
すなわち、本発明は、円形薄板状をなす基材と、前記基材の外周縁部に形成された切れ刃と、前記基材内に分散された砥粒と、を備える切断ブレードであって、前記基材は、レジンボンドからなり、前記基材の厚さ方向の外側には、該基材より硬度が高い高硬度層が形成され、前記高硬度層は、長円形薄板状又は楕円形薄板状をなす複数の金属薄片同士が、バインダにより結合され積層し形成されていることを特徴とする。
本発明の切断ブレードによれば、基材が弾性のあるレジンボンドからなるので、切断時に切断ブレードから被切断材に及ぼされる加工負荷の衝撃が十分に緩和されて、チッピング等が抑制されるとともに、加工品位が確保される。そして、この切断ブレードには、基材の厚さ方向の外側に、該基材よりも硬度が高い高硬度層が形成されているので、ブレード全体としての剛性が確保されている。
また、基材の厚さ方向の外側に高硬度層が形成されていることにより、ブレード側面(ブレードの厚さ方向を向く表面)の摩耗が効果的に抑制されるから、工具寿命の延長が期待できる。
詳しくは、高硬度層の厚さが1μm未満である場合は、ブレード剛性を確保しにくくなり、製品の切断面に蛇行が生じるおそれがある。また、高硬度層の厚さが10μmを超える場合は、該高硬度層の厚さが全体に不均一となり、使用に適さなくなるおそれがある。
また、本発明の切断ブレードにおいて、前記金属薄片が、ステンレスで形成されることとしてもよい。
本実施形態の切断ブレード1は、半導体デバイスの切断加工に用いられるものであって、具体的には、SiC、水晶及び石英等の硬脆材料などの被切断材を精密切断加工することにより、製品であるチップ(切断片)を作製するものである。
本実施形態の切断ブレード1は、外径が58mm程度、取付孔5の内径が40mm程度となっている。
尚、基材2内には、前記砥粒4以外に、フィラーが分散配置されていてもよい。
高硬度層6の厚さT2は、1μm〜10μmである。
また、高硬度層6のロックウェル硬さは、HRC:6〜10である。
図4(a)は、本実施形態の高硬度層6に含まれる金属である金属薄片7を示している。金属薄片7は、例えば、316−Lステンレス箔片からなる。図示の例では、金属薄片7は、長円形薄板状又は楕円形薄板状をなしており、全長が30μm程度、幅が10μm程度、厚さが0.3μm程度となっている。
また、高硬度層6をパターン形成する場合には、基材2の外面2aにマスキング等を施して、スプレー塗布すればよい。また、それ以外の公知のエッチング等を用いてパターン形成しても構わない。
本実施形態の切断ブレード1によれば、基材2が弾性のあるレジンボンドからなるので、切断時に切断ブレード1から被切断材に及ぼされる加工負荷の衝撃が十分に緩和されて、チッピング等が抑制されるとともに、加工品位が確保される。そして、この切断ブレード1には、基材2の厚さ方向の外側に、該基材2よりも硬度が高い高硬度層6が形成されているので、ブレード全体としての剛性が確保されている。尚、基材2の外面2aに高硬度層6が形成されることによってブレード全体の剛性が高められることは、後述する実施例からも明らかである。
また、基材2の厚さ方向の外側に高硬度層6が形成されていることにより、ブレード側面(ブレードの厚さ方向を向く表面)の摩耗が効果的に抑制されるから、工具寿命の延長が期待できる。
詳しくは、高硬度層6の厚さT2が1μm未満である場合は、ブレード剛性を確保しにくくなり、製品の切断面に蛇行が生じるおそれがある。また、高硬度層6の厚さT2が10μmを超える場合は、該高硬度層6の厚さT2が全体に不均一となり、使用に適さなくなるおそれがある。
また、高硬度層6の硬度は、基材2の硬度より高ければよいことから、本発明の参考例では、該高硬度層6に金属を用いる代わりに、硬質の樹脂材料等を用いても構わない。
[実施例1]
本発明の実施例1として、フェノール樹脂からなる基材2内に、ダイヤモンド砥粒(砥粒4)及びWCからなるフィラーを含み、基材2の外面2aにステンレスを含む高硬度層6を被覆した切断ブレード1を用意した。この切断ブレード1の組成(基材2内の組成)は、体積比で、フェノール樹脂:61.25%、ダイヤモンド砥粒:12.5%、WCフィラー:26.25%とした。
試験の結果を、表1に示す。
一方、比較例1として、基材2の外面2aに高硬度層6を形成しない以外は、実施例1と同じ条件として、切断ブレードを作製し試験を行った(すなわち、比較例1における被覆率は0%である)。結果を表1に示す。
また、実施例2として、切断ブレード1の仕様を、SDC600−50、58D/XT/40H(X=0.1)とした。すなわち、基材2の厚さT1を、T1:100μmとし、それ以外は実施例1と同じ条件として、試験を行った。結果を表2に示す。
一方、比較例2として、基材2の外面2aに高硬度層6を形成しない以外は、実施例2と同じ条件として、切断ブレードを作製し試験を行った。結果を表2に示す。
また、実施例3として、切断ブレード1の仕様を、SDC600−50、58D/XT/40H(X=0.2)とした。すなわち、基材2の厚さT1を、T1:200μmとし、それ以外は実施例1と同じ条件として、試験を行った。結果を表3に示す。
一方、比較例3として、基材2の外面2aに高硬度層6を形成しない以外は、実施例3と同じ条件として、切断ブレードを作製し試験を行った。結果を表3に示す。
また、実施例4として、切断ブレード1の仕様を、SDC600−50、58D/XT/40H(X=0.21)とした。すなわち、基材2の厚さT1を、T1:210μmとし、それ以外は実施例1と同じ条件として、試験を行った。結果を表4に示す。
一方、比較例4として、基材2の外面2aに高硬度層6を形成しない以外は、実施例4と同じ条件として、切断ブレードを作製し試験を行った。結果を表4に示す。
表1〜表4に示す通り、基材2の外面2aに高硬度層6が形成された実施例1〜4については、蛇行量Lがすべて30μm以下となり、切断ブレード1の蛇行が抑制されることが確認された。
また、実施例1〜4のうち、高硬度層6の被覆率が50%以上であるものは、蛇行量Lがすべて22μm以下となり、そのうちさらに、高硬度層6の厚さT2が1μm〜10μmであるものは、蛇行量Lが無し(1μm以下)となり、優れた蛇行抑制効果が得られることがわかった。
尚、実施例1〜4のうち、高硬度層6の厚さT2:15μm(10μmを超えるもの)については、被覆厚さにバラつきが生じて、使用に適さなかった。
尚、比較例4については、実施例4と同様に蛇行量Lが無しとなっていた。すなわち、基材2の厚さT1が200μmを超えると、レジンボンドからなる基材2であってもブレード剛性が確保されるために、高硬度層6によるブレード剛性向上の効果が得られにくいことがわかった。
すなわち、本実施例において安定して切断加工を行うには、基材2の厚さT1が70μm以上であることが好ましい。
2 基材
2a 基材の厚さ方向を向く外面
3 切れ刃
4 砥粒
6 高硬度層
7 金属薄片(金属)
T1 基材の厚さ
T2 高硬度層の厚さ
Claims (5)
- 円形薄板状をなす基材と、
前記基材の外周縁部に形成された切れ刃と、
前記基材内に分散された砥粒と、を備える切断ブレードであって、
前記基材は、レジンボンドからなり、
前記基材の厚さ方向の外側には、該基材より硬度が高い高硬度層が形成され、
前記高硬度層は、長円形薄板状又は楕円形薄板状をなす複数の金属薄片同士が、バインダにより結合され積層し形成されていることを特徴とする切断ブレード。 - 請求項1に記載の切断ブレードであって、
前記基材の半径をRとし、前記高硬度層が、前記基材の厚さ方向を向く外面のうち、前記外周縁部から径方向内方へ向かって1/3×Rの切り込み領域をすべて被覆した状態を被覆率100%と仮定して、
前記被覆率が、50%以上であることを特徴とする切断ブレード。 - 請求項1又は2に記載の切断ブレードであって、
前記高硬度層の厚さが、1μm〜10μmであることを特徴とする切断ブレード。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切断ブレードであって、
前記基材の厚さが、70μm〜200μmであることを特徴とする切断ブレード。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の切断ブレードであって、
前記金属薄片が、ステンレスで形成されることを特徴とする切断ブレード。
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