JP5761660B2 - 金属プロトポルフィリン錯体の定量方法及びそれに用いる酵素センサー - Google Patents

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Description

本発明は、ヘムを含む金属プロトポルフィリン錯体の定量方法と、それに用いる酵素センサーに関する。
プロトポルフィリンは、ポルフィン環に4つのメチル基、2つのビニル基、2つのプロピォン酸基が結合したポルフィリンの総称であり、通常は、ヘムやクロロフィルの前駆体となる、下記化1の式で表わされるプロトポルフィリンIXを意味する。そして、金属とこのプロトポルフィリンとから構成される錯体が金属プロトポルフィリン錯体であり、金属が鉄原子(2価又は3価)の場合が、ヘモグロビン(ヘム蛋白)の構成成分として知られているヘムである。
Figure 0005761660
生体色素のヘムは、遊離状態で細胞内エフェクターとして働くことが近年明らかとなってきた。それに伴い、低濃度のヘムを高感度で定量するための技法に対するニーズが高まってきている。遊離ヘムは、幅広い吸収帯を有する一方で吸光率が小さい分子であるため、本来の吸光度測定による定量は、低濃度領域において不可能である。また、既存のヘム定量法は、煩雑な操作を有することや、低感度であること、また、夾雑物を多く含む試料の定量が困難であることなどの問題点がある。
これまで、具体的なヘムの定量には、主に、ピリジンヘモクロム法(非特許文献1と2参照)が用いられてきたが、有機溶媒による抽出操作が煩雑で、発色団の吸光係数も低く、毒性のあるピリジンを使うなど問題点が多かった。また、ヘモグロビンの定量に関し、試験検体中のヘモグロビンの非蛍光性ヘム部分を蛍光性ポルフィリンに定量的に変換し、その蛍光を検出して、検体中のヘモグロビン量を測定する方法も提案されているが(特許文献1と2参照)、煩雑な操作を要するものであり実用的ではなかった。
本発明者らは、ヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO)の強固なヘム結合性を利用して、HOのアミノ酸改変及び蛍光プローブ修飾により、遊離型ヘムに応答する人工センサーを構築し、簡便かつ高感度な測定法を開発し提案した(非特許文献3と4)。しかしながら、この測定法では、微量なヘム濃度差を検出する場合に、感度面で不十分であるという問題があった。
Paul, K. G.; Theorell, H.; Åkeson, Å "The Molar Light Absorptionof Pyridine Ferroprotoporphrin (Pyridine Haemochromogen)" Acta Chemica Scandinavica7, 1284-1287, 1953. J. S. Rieske, "The quantitative determination of mitochondrialhemoproteins" Methods in Enzymology 10, 488-493, 1967. 第10回生命化学研究会シンポジウム・熊本(2008)要旨集第47頁(P33) 平成20年度日本生化学会九州支部例会講演要旨集第67頁(P-10) Sugishima, M. et al.; "Crystal structure of rat heme oxygenase-1in complex with heme." FEBS Lett. 471, 61-66, 2000. Sugishima, M. et al.; "Crystal structure of Rat Apo-HemeOxygenase-1 (HO-1): Mechanism of Heme Binding in HO-1 Inferred from StructureComparison of the Apo and HemeComplex Forms." Biochemistry. 41, 7293-7300, 2002.
特開昭60−89756号公報 特表昭57−501746号公報
本発明の目的は、色々と問題のある、従来のヘムを含む金属プロトポルフィリン錯体の定量方法を改善して、簡便かつ高感度な定量方法と、それに用いる酵素センサーを提供せんとするものである。
本発明は、蛍光色素で蛍光ラベル化されたヘムオキシゲナーゼを用いる金属プロトポルフィリン錯体の定量方法において、蛍光色素として、親水性で、かつ、その蛍光波長が金属プロトポルフィリン錯体の吸収波長と重なるような蛍光色素を用い、前記ヘムオキシゲナーゼが、ラットヘムオキシゲナーゼの18番目の残基をシステインに変異させ、該位置に親水性蛍光色素を導入したものである金属プロトポルフィリン錯体の定量方法である。
そして、本発明の他の態様は、前記定量方法において用いられる酵素センサー、即ち、蛍光色素として、親水性で、かつ、その蛍光波長が金属プロトポルフィリン錯体の吸収波長と重なるような蛍光色素で蛍光ラベル化されたヘムオキシゲナーゼからなり、前記ヘムオキシゲナーゼが、ラットヘムオキシゲナーゼの18番目の残基をシステインに変異させ、該位置に親水性蛍光色素を導入したものである酵素センサーである。
本発明の定量方法によると、ピリジンヘモクロム法を始めとした従来のヘム定量法よりも、簡易な操作方法で微量のヘム分子を高感度に検出することができる点、有害な強酸や有機溶媒を使用することなく定量操作を行うことができる点で大きなメリットを期待できる。また、HOの基質特異性から、夾雑物を含む試料であってもヘムのみを定量することができる。更に、本発明の原理を用いて作製した酵素センサーである蛍光ラベル化HOは、ダイナミックレンジをより大きくするための分子設計が施こされているので、数nMオーダーでも明確な強度変化が起こり、信頼性の高い定量が実現できる。
本発明の定量方法は、未知濃度のヘムを含む試料に酵素センサーを添加し、蛍光変化を測定するだけで、簡便かつ高感度にヘムを定量できる方法であり、従来では数時間要したヘムの定量が数分で完了できる。
本発明の酵素センサーは、ヘムと結合比1で結合する生体内酵素であるHOの基質特異性を利用したバイオヘムセンサーであり、タンパク質を基盤に用いた新たなヘム定量のためのセンサーである。
HO−ANSに対するヘム滴定の蛍光スペクトル変化(蛍光強度変化)を示す図。 HO−A350に対するヘム滴定の蛍光スペクトル変化を示す図。 HO−A555に対するヘム滴定の蛍光スペクトル変化を示す図。 HO−ANSに対するヘムの親和性を示す解離定数Kdを求めるための、フィッティング解析結果を示す図。 HO−A350に対するヘムの親和性を示す解離定数Kdを求めるための、フィッティング解析結果を示す図。 HO−A555に対するヘムの親和性を示す解離定数Kdを求めるための、フィッティング解析結果を示す図。 図5のヘム濃度0〜200nMの範囲を拡大し線形近似式を追加した図。
本発明は、親水性蛍光色素で蛍光ラベル化されたヘムオキシゲナーゼを用いる金属プロトポルフィリン錯体の定量方法に関するものである。金属プロトポルフィリン錯体とは、前記化1の式で表わされるプロトポルフィリンIXと金属とから構成される錯体を意味する。金属としては、例えば、2価又は3価の鉄、コバルト、亜鉛、スズ、クロム、マンガンが挙げられる。
ヘムオキシゲナーゼ(heme oxygenase:HO)は、ヘムをビリベルジンと一酸化炭素と遊離鉄に分解する酵素である。HOは、ヘムのポルフィリン環を開裂し、酸素分子を添加する酸素添加酵素である。HOには、HO−1とHO−2の二つのアイソフォームがあり、HO−1は様々な刺激によって発現が誘導され、主に、肝臓、脾臓、マクロファージに存在するのに対し、HO−2は、構成型で、肝臓、脳、睾丸に存在することが知られている。
本発明においては、前記いずれのHOでも用いることができるが、好ましいのは、ラットヘムオキシゲナーゼ、中でもC末端膜結合部分を除去して可溶性としたラットヘムオキシゲナーゼ−1である。HOは膜結合性タンパク質であるため、そのままでは水に不溶性なので、C末端膜結合部分を除去した可溶性HOが好ましい。ヘムオキシゲナーゼは、蛍光色素で蛍光ラベル化されるが、蛍光色素としては、例えば、疎水性の2-anilinonaphthalene-6-sulfonic acid (ANS)や、親水性のAlexa Fluor 350や Alexa Fluor 555(共にInvitrogen社製)がある。本発明において用いられるのは、親水性の蛍光色素であって、かつ、その蛍光波長が金属プロトポルフィリン錯体の吸収波長と重なるような蛍光色素である。吸収波長の少なくとも一部が重なるような蛍光色素であればよい。具体的には、金属プロトポルフィリン錯体がヘムの場合は、Alexa Fluor 350が挙げられる。
親水性蛍光色素で蛍光ラベル化する位置と方法は特に制限されるものではないが、好ましいのは、例えば、ラットヘムオキシゲナーゼの18番目の残基をシステインに変異(変異体ラットHO分子)させ、該位置に親水性蛍光色素(蛍光プローブ)を導入するものである。
本発明では、このように、変異体ラットHO分子に蛍光プローブを付加させた蛍光ラベル化タンパク質(本発明の酵素センサー)を作製し、これがヘムと結合することで起こる蛍光強度変化を観察することでヘムを定量する。また、ヘム結合時の強度変化幅(ダイナミックレンジ)が大きくなるような蛍光色素の選定を行い、高感度で直線的な応答性を持つ定量センサーを構築する。
次に、蛍光ラベル化HOの作製方法及び定量方法について、例として、ラットヘムオキシゲナーゼ−1(ラットHO−1)を用いて説明する。始めに、大腸菌発現系を用いて次のようにして変異体ラットHO−1を発現・精製する。変異体とは、野生型ラットHO−1の18番目のリジンを、システインに変異させたもの(K18C)であり、その目的は変異部位に選択的に蛍光色素を導入することである。変異させる部位については、18番目の残基に限定されるものではない。
次に、前記変異体にマレイミド反応性蛍光色素を導入して蛍光ラベル化を行う。本発明では、親水性蛍光色素で修飾されたHOについてヘム親和性測定を行い、センサーとして最適なものを選定すればよい。
その後、作製した蛍光ラベル化HO−1(本発明の酵素センサー)にヘム溶液を滴定し、蛍光強度を測定する。蛍光強度の減少値とヘム濃度の関係から近似曲線を求め、それを検量線として未知試料の定量を行う。
次に、蛍光ラベル化HOにおける最適な分子設計のための原理について説明する。結晶構造解析により、ラットHO−1の立体構造やヘム結合部位が近年明らかとなった(非特許文献5参照)。また、ヘムと結合する際に一部のコンフォメーションが変化し、ヘム結合部位で誘導適合が起こることが提唱されている(非特許文献6参照)。ラットHOの18番目のリジンは、ヘムとの結合時に形成される近位へリックス中にあり、ホロ型になった場合にはヘムに近い位置に移動する。このとき、18番目のリシンとヘムの間の距離は1nm程度であり、蛍光エネルギー移動が可能な距離となる。そこで、18番目の残基をシステインに変異させ蛍光団を導入することで、ヘムの結合に伴う蛍光エネルギー移動が起こり、その応答シグナルとして蛍光強度変化が起こるようなシステムを設計する。
具体的には、蛍光団を励起させている状況下で蛍光ラベル化HOにヘムを滴定すると、蛍光団が放つ蛍光を近くのヘム分子が吸収するため、検出される蛍光強度が減少する。このときの強度と、ヘムを加える前の強度の差の関係よりヘム濃度を算出する。なお、ヘム分子は蛍光団からエネルギー移動を受けても蛍光を発しないため、蛍光分析に広く用いられるFRET法とは異なる定量法である。
更に、導入する蛍光色素の蛍光波長と、ヘムの吸収波長の重なりについても考慮する必要がある。ヘムは広い吸収帯を有する分子であるが、遊離状態では特に450nm以下の波長に対する吸収率が高い。従って、本発明では、蛍光団が発する蛍光波長が、ヘムの高吸収率波長帯と重なり合うような蛍光色素を使用し、両分子間のエネルギー移動効率を向上させることが高感度なセンサー設計において重要である。
用いる蛍光団は、疎水性分子は適切ではなく、親水性分子である必要がある。HOのヘム結合部位周辺は疎水性残基を多く含んでいるため、疎水性蛍光色素を使用すると、蛍光分子が相互作用してヘムの結合を阻害する可能性がある。以上のように、HOに対して蛍光色素を導入する位置、ヘムとの距離関係、波長の重なり、蛍光分子の物性を考慮して本発明の酵素センサーを構築することができる。以下、実施例により本発明を詳述する。
大腸菌発現系を用いて、ラットHO−1のLys18をCysに置換した変異体(K18C)を作製し、親水性又は疎水性の蛍光色素を、マレイミドを介してK18Cに導入する例を示す。これらの蛍光ラベル化蛋白質(酵素センサー)に、ヘムを滴定し、それぞれの蛍光強度変化の解析結果から、ヘムとの親和性を表す解離定数Kdを算出した。
[K18Cの発現及び精製]
野生型ラットHO−1のC末端膜結合部位を除いて可溶性とした、リコンビナントタンパク質の発現プラスミドを母体とし、K18Cをコードする遺伝子を大腸菌へ形質転換した。その変異株を液体培地で培養し、菌体内にラットHO−1を大量発現させた。野生型ラットHO−1は分子構造にシステイン残基を一つも含まないが、K18Cへと変異させることで、唯一のチオール基を有することになる。
次に、培養液から菌体を収集し−80℃で凍結させてから、EDTA及びリゾチームを含むトリス/塩酸緩衝液で懸濁したものに、超音波を適用して菌体を破砕した。以降の操作で用いたすべての緩衝液には、システイン残基の酸化や二量体の形成を防止する目的で、dithiothreitol(DTT、和光純薬工業株式会社)を終濃度1mMになるように含有させた。
破砕処理後の溶出液を、遠心分離して得られた上清に対して、陰イオン交換クロマトグラフィーを実施した。イオン交換樹脂には、TOYOPEARL DEAE-650M(東ソー株式会社製)を用いた。その後、HO−1を含むと考えられる分画液を濃縮後、HPLCにより精製した。分離カラムは、POROS HQ/20(Applied Biosystems社製)を使用した。得られた酵素溶液についてSDS−PAGEを行ったところ、30kDa付近の位置に単一バンドが確認されたため、一連の操作によりK18Cを精製・単離したことが示された。
[蛍光プローブの導入]
精製したK18Cのシステイン残基に、蛍光団を導入する操作を行った。K18C溶液に、数倍モル量のDTTを加えてシステイン部位を活性化した後、4℃で透析してDTTを取り除いた。次に、K18Cに対して5倍モル量の蛍光色素溶解液を加え、室温、アルゴンガス雰囲気下で4時間反応させた後、反応停止剤として2−メルカプトエタノールを添加した。
反応終了後10mMリン酸緩衝液を用いて、4
℃で72時間透析を行い、未反応の蛍光色素分子と2−メルカプトエタノールを完全に取り除いた。透析終了後、蛍光ラベル化されたK18Cを回収し、吸収スペクトルを測定した。分光光度計はV−650(ジャスコエンジニアリング株式会社製)を使用した。
280nmにおける吸光度とラットHO−1のモル吸光係数(ε=30500M−1・cm−1)から、全タンパク質濃度を、各蛍光団の最大吸収波長における吸光度と各蛍光団のモル吸光係数から、蛍光ラベル化されたHO−1の濃度を算出し、その比から蛍光色素の導入率を求めた。なお、導入率が50%以上のものをセンサータンパク質としてヘム定量に使用した。
蛍光色素としては、invitrogen社が販売しているマレイミド反応性蛍光色素3種類を用いた。1つめの蛍光色素は、分子量が416の疎水性化合物である2-anilinonaphthalene-6-sulfonic acid (ANS、励起波長322nm、蛍光波長430nm、モル吸光係数ε=20000M−1・cm−1)を使用した(比較のための蛍光色素1)。2つめの蛍光色素は、分子量が578.68の親水性化合物であるAlexa Fluor 350(励起波長346nm、蛍光波長442nm、ε=19000M−1・cm−1)を使用した(本発明の蛍光色素)。3つめの蛍光色素は、分子量が約1250の親水性化合物であるAlexa Fluor 555(励起波長555nm、蛍光波長565nm、ε=150000M−1・cm−1)を使用した(比較のための蛍光色素2)。
これらの蛍光色素は、蛍光団の近隣にマレイミド基が修飾してあり、システインのチオール基と特異的に反応して共有結合を形成する。以下、これらの色素でK18Cを蛍光ラベル化したものを、それぞれHO−ANS(比較のための蛍光色素1)、HO−A350(本発明の蛍光色素)、HO−A555(比較のための蛍光色素2)と呼称する。
実施例1で作製した蛍光ラベル化タンパク質(酵素センサー)溶液は、冷凍・遮光保存し、使用時は室温にて解凍後10000rpmで10分間遠心分離して、得られた上清を濃度調整して測定に用いた。
[ヘム親和性試験]
実施例1で作製した3種類の蛍光ラベル化タンパク質が、野生型ラットHO−1と同等のヘム親和性を維持しているかについて試験を行った。蛍光測定用石英セルに2ml
の蛍光ラベル化タンパク質溶液を入れ、ヘム溶液を滴定して25℃における蛍光スペクトルを測定した。蛍光分光光度計はFP−6500(ジャスコエンジニアリング株式会社製)を使用した。使用したヘム溶液の濃度決定は、ピリジンヘモクロム法を適用した。
市販のhemin(3価の鉄とプロトポルフィリンの錯体、塩化鉄の錯体)(Sigma-Aldrich, Inc製)を、100mM・NaOH水溶液で溶解し、10mMリン酸緩衝液で希釈したものに、20%ピリジン/100mM・NaOH溶液を加え、更に、sodium hydrosulfite(和光純薬工業株式会社製)を添加したものについて、556nmの吸光度を測定した。この方法を用いることで、ヘムはピリジン分子と錯体(ヘモクロム)を形成するため、その吸光度より約10μM以上のヘム濃度を決定することができる。なお、556nmにおけるヘム錯体のモル吸光係数はε=34.4mM−1・cm−1とした。
図1に、HO−ANSに対するヘム滴定の蛍光スペクトル変化(蛍光強度変化)を示した(タンパク質濃度280nM)。図では、実際の測定結果のうち、スペクトルの代表的なもののみを示しており、図中の数値は当量(eqiv.)を示している、図1から分かるように、ヘムの添加により、蛍光強度はヘム濃度依存的に低下し、測定セル内のタンパク質濃度とヘム濃度が等しくなった時点以降(図中の1当量より大きいスペクトル)で、蛍光強度変化が小さくなり、ヘム結合が飽和に達したことを示している。また、蛍光強度のダイナミックレンジ(図中の破線の矢印の長さ)は、約800であり、良好な応答性をもつセンサーであることが示された。
図2に示すHO−A350の測定結果においても、HO−ANSと同様の蛍光スペクトルが得られた(タンパク質濃度220nM)。一方、図3に示すHO−A555の結果では、ダイナミックレンジが狭くなった(タンパク質濃度65nM)。HO−A555はモル吸光係数が非常に高く、同じ親水性蛍光色素で作製したHO−A350よりも、測定に使用するタンパク質濃度を抑えることができるため、ランニングコストを軽減できるが、微量なヘム濃度差を検出する場合には、感度面で前者に劣ると判断される。
また、実験結果は示していないが、HO−A555は、測定環境の温度変化による強度変化が起こり易いことが確認された。HO−A555のダイナミックレンジが狭くなった理由は、Alexa Fluor 555の蛍光波長が565nmであるのに対して、ヘムの主な吸収帯は450nm以下であることから、両分子間のエネルギー移動効率の悪さが原因であると考えられる。
ヘムを加えていない0当量の場合(F)と、各ヘム滴定量の場合(F)の最大蛍光強度の差(F−F)を求め、測定セル内のヘム濃度との関係をプロットしたグラフから、数値解析ソフトウェアOrigin ver.7.5 J (OriginLab Corporation製)を用いて、蛍光ラベル化HO−1に対するヘムの親和性を示す解離定数Kdをフィッティング解析により算出した。その結果を図4〜6に示した。
各図から、HO−ANS(図4)のKdは42.5±9.6nM、HO−A350(図5)のKdは1.62±0.73nM、HO−A555(図6)のKdは9.47±2.24nM、であることが分かった。これらの数値から、2種類の親水性蛍光色素(HO−A350とHO−A555)を使用した場合は、野生型HO−1固有の高いヘム親和性を維持するが、疎水性色素であるANSで蛍光ラベル化すると、数倍以上低下することが実験的に証明された。従って、実施例1で得られた酵素センサーの中では、ヘムの定量には、本発明の要件を満足する蛍光色素であるHO−A350の使用が最良であることが分かった。
[ヘム濃度の算出]
図5のヘム濃度0〜200nMの範囲を拡大し、線形近似式を追加したものを図7に示した。蛍光強度差とヘム濃度との間に良好な相関係数が得られたため、これを検量線とすれば、未知のヘム濃度の定量が可能である。よって、このヘムセンサータンパク質(酵素センサー)を用いて定量操作を行うには、あらかじめ200nM程度のHO−A350溶液に、0〜200nMの既知濃度のヘムを加えたときのF−Fを数点測定し、それらの値から検量線を作成しておき、次に、未知濃度のヘムの蛍光強度差より濃度を算出すればよい。この実施例より、ヘム濃度が10nM以上であれば定量可能であることが示され、従来の方法であるピリジンヘモクロム法(およそ10μM以上で定量可能)の1000倍もの感度が実現された。
本発明は、蛋白質工学を基盤とした新規なヘム等の定量方法に関するので、大学や製薬会社等で行われている医学や分子生物学の研究に有用な手法である。また、例えば、ヘムは、がん組織において濃度の上昇が示唆されていることから、ヘム濃度は癌等の診断の指標になり得る。従って、本発明は、癌検診に使う検査キットに応用することができる。あるいは、大腸がんにおいては、便中にヘモグロビンとともに遊離ヘムも含まれることから、免疫学的便潜血反応の代替検査方法としても使うことができる。

Claims (5)

  1. 蛍光色素で蛍光ラベル化されたヘムオキシゲナーゼを用いる金属プロトポルフィリン錯体の定量方法において、蛍光色素として、親水性で、かつ、その蛍光波長が金属プロトポルフィリン錯体の吸収波長と重なるような蛍光色素を用い、前記ヘムオキシゲナーゼが、ラットヘムオキシゲナーゼの18番目の残基をシステインに変異させ、該位置に親水性蛍光色素を導入したものであることを特徴とする金属プロトポルフィリン錯体の定量方法。
  2. 前記システインへの変異は、前記18番目の残基のみになされていることを特徴とする請求項1記載の金属プロトポルフィリン錯体の定量方法。
  3. 前記ラットヘムオキシゲナーゼは、C末端膜結合部分を除去して水溶性とされたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属プロトポルフィリン錯体の定量方法。
  4. 前記金属プロトポルフィリン錯体がヘムであり、前記親水性蛍光色素の最大蛍光波長が450nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属プロトポルフィリン錯体の定量方法。
  5. 蛍光色素の蛍光波長が金属プロトポルフィリン錯体の吸収波長と重なるような親水性蛍光色素で蛍光ラベル化されたヘムオキシゲナーゼからなり、前記ヘムオキシゲナーゼが、ラットヘムオキシゲナーゼの18番目の残基をシステインに変異させ、該位置に親水性蛍光色素を導入したものである酵素センサー。
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