JP5760567B2 - 水性インクジェット用顔料インキ - Google Patents
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Description
このため、インキ中に浸透性の高い高沸点の水溶性溶剤を添加することにより乾燥性の向上を図る必要がある。しかしながら、インキ中への浸透性溶剤の添加は、顔料分散状態を安定化させている分散樹脂の溶解状態を変化させ、顔料分散性および保存安定性を著しく低下させる場合があった。
即ち、浸透性の高い溶剤と、それが存在しても顔料分散性を低下させない顔料分散樹脂の組み合わせが望まれていた。
特許文献4にはピグメントイエロー150を界面活性剤により分散させた水性インキの記載があるが、界面活性剤による分散では浸透性の高い溶剤と混合した場合に分散安定性が低下することが予測される。そのため浸透性溶剤の添加ができずコート紙、塩化ビニルシートといった疎水性が高い基材への印刷には実質使用不可能であった。
特許文献5にはピグメントイエロー150を顔料分散樹脂により分散することで安定化させた水性インキの記載がある。これは顔料分散樹脂を使用しているため浸透性の高い溶剤と混合した場合にも分散安定性を保つことができると考えられるが、インキ中に占める溶剤量が多く、基材上での乾燥が非常に遅くなりインキ間での混色が起こるため、疎水性の高い基材上では良質な印刷物を得ることができなかった。
コポリマー全量中の単量体A、B、Cの合計量の比率は70〜100質量%であり、
前記水溶性溶剤がグリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種であるインクジェット用イエローインキに関する。
単量体A:炭素数18〜24のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α-メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
また、本発明は、前記顔料分散樹脂の酸価が50〜400mgKOH/gであることを特徴とするインクジェット用イエローインキに関する。
また、本発明は、前記単量体Aがベヘニル(メタ)アクリレートであることを特徴とするインクジェット用イエローインキに関する。
また、本発明は、前記グリコールエーテル類が(ポリ)アルキレングリコールモノ(またはジ)アルキルエーテルであるインクジェット用イエローインキに関する。
さらに、本発明は、前記インクジェット用イエローインキと、少なくともシアン、マゼンタ、ブラックを含む4色以上のインキセット、ならびに当該インクジェット用インキで印刷してなる印刷物に関する。
例えば、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、前記単量体Aがベヘニル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
コポリマーは、通常のアクリルの溶液重合により得られる。しかしながら、このとき溶剤に溶解しており、水性媒体中に分散または溶解させるためには、以下の方法がある。
一つ目の方法としては、水と共沸する溶剤中で重合し、その後、水とアミンを加えて中和し、水性化する。さらに、溶剤を水と共沸させ、溶媒は完全に水のみとする。
二つ目の方法としては、最終的にインキに含まれる水溶性溶剤を合成溶媒として重合する。その後、水とアミンを加えて中和し水性化するが、溶剤は取り除くことをせず、そのまま後述のプレミキシング、分散処理を行う。
二つ目の方法の合成溶媒としては、最終的にインキに含まれる水性溶媒であれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
まず印字性に優れる最大の理由は浸透性である。インクジェットインキではノズルを乾燥させるとインキを吐出することできなくなるため、保湿剤つまり高沸点の水溶性溶剤が必須である。しかしながら、高沸点の水溶性溶剤を含有すると、当然、乾燥は遅くなる。インクジェット専用基材に印字する場合なら、それでも十分に優れた印字性を得ることができる可能性があるが、一般の印刷基材である上質紙、コート紙(片面に20g/m2程度塗工した紙)、アート紙(片面に40g/m2程度塗工した紙)や塩化ビニルシートに印字する場合、乾燥が遅く、これが印字したドットとドットがつながり起こる印字ムラの原因になることがある。特に、水や溶剤の吸収が乏しいコート紙、アート紙や塩化ビニルシートの場合は、この傾向が得に顕著である。そこで、基材への浸透性が高い溶剤を使用することで、乾燥性を高めることが重要となる。樹脂の合成溶媒として使用可能なグリコールエーテル類、ジオール類はその性質も合わせ持ち、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類はその効果が非常に高い。これらは、インクジェットインキによく使用される溶剤であるグリセリンやジエチレングリコールなどに比べ、はるかに基材への浸透性が高い。つまり、これらの溶剤を使用することで、乾燥性が高くなり、印字ムラなどの問題が解消し、印字性が優れたものとなる
しかしながら、これらの溶剤には、顔料の分散性を低下させるという大きな問題がある。理由は定かではないが、これらの溶剤はグリセリンやジエチレングリコールに比べて、疎水性が高く、インキ中の溶媒の疎水性が高くなるために、顔料に吸着している分散樹脂が溶媒へ脱着しやすくなり、分散性が低下するものと考えられる。
特にインキの保存安定性では、これらの溶剤を使用すると、大きく増粘するもしくは分離する傾向にある。
これらにより、浸透性の高い溶剤を使用することで、印字性とノズルからの吐出性に優れ、これらの溶剤を使用しても分散性が低下しない分散樹脂を使用することで、保存安定性に優れるインキを得ることができる。
本発明のイエローインキではピグメントイエロー150を使用することで高い耐候性を実現している。一般的な印刷に使用される黄色顔料はアゾ顔料が多く、これは紫外線等により容易に分解され、印刷物の退色が起こる。しかし、ピグメントイエロー150は金属錯体顔料であり、顔料の分解が起こりにくいため極めて高い耐候性を保持している。
本発明のインキを形成する場合に好適な水性媒体は、水及び水溶性溶剤の混合溶媒であるが、水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
グリコールジアルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。特に(ポリ)アルキレングリコールモノ(またはジ)アルキルエーテルとジオール類を併用することで高い濡れ、浸透性を発揮しつつ、高い保存安定性を保つことが可能となる。さらに印刷する基材の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-メチルオキサゾリジノン、N-エチルオキサゾリジノンなどの水溶性の含窒素複素環化合物を添加することもできる。
上記したような水性の樹脂微粒子のインキ中における含有量は、固形分でインキの全質量の2〜30質量%の範囲であり、より好ましくは3〜20質量%の範囲である。
イエロー以外の色の顔料を例示するとシアンの顔料としては、例えば、C. I. Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、 C. I. Vat Blue 4、6等が挙げられる。また、マゼンタ顔料としてはC. I. Pigment Red 5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、120、122、147、149、150、168、177、178、179、202、206、207、209、238、242、254、255、269、C. I. Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。
本発明では上述した顔料の限定されるものではなく、その他の顔料を使用してオレンジ、グリーン、ホワイト等の特色も組み合わせたインキセットとして使用することができる。
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ベヘニルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV-601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V-601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。分散樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し、水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、分散樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ベヘニルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV-601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V-601和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂2の溶液を得た。分散樹脂2の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し水性化した後、90℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。内温が100℃に達すると、これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、分散樹脂2の不揮発分20%の溶剤を含まない水性化溶液を得た。
表1に記載した原料と仕込み量、反応温度を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、分散樹脂3〜15、比較分散樹脂1〜7の溶液を得た。さらに、中和率100%になるようにジメチルアミノエタノールを添加し、製造例1と同様にして水性化し、分散樹脂3〜15、比較分散樹脂1〜7の水性化溶液を得た。
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2-エチルヘキシルアクリレート10部、メチルメタクリレート57部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH-10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。得られた樹脂微粒子水分散体を定着樹脂1とした。定着樹脂1の計算上のガラス転移点温度は80℃である。
顔料としてPigment Yellow 150を20部、分散樹脂1を20部、水60部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分) = 5/1となっている。
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを35部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5部、水40部を混合し、インキを作製した。
表2に記載した分散樹脂、顔料、溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
表2に記載した分散樹脂を用いて実施例1と同様にして分散体の作成を行い、顔料分散体20部、表2記載の溶剤、定着樹脂20部を混合しインキを作成した。
作成したインキの粘度をE型粘度計(東機産業社製TVE-20L)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定した。このインキを70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化を評価した。評価基準は下記のとおりであり、A、 B、 C評価が実用可能領域である。
A : 四週間保存後の粘度変化率が±10%未満
B : 二週間保存後の粘度変化率が±10%未満
C : 一週間保存後の粘度変化率が±10%未満
D : 一週間保存後の粘度変化率が±10〜20%
E : 一週間保存後の粘度変化率が±20%以上
上記で調製したインクジェット用イエローインキを、25℃環境下でセイコーアイ・インフォテック社製ソルベントインクインクジェットプリンタColor Painter 64SPlusに充填し、基材を50℃に加温しながら画像を印刷した。基材にインキを塗布後、80℃、3分で加熱乾燥を行い、評価用印字物を得た。この印刷物を用いて耐候性評価、印刷品質の確認、耐性試験を行った。
上記プリンタにて1m×1mのベタ印字を行い、印字前後でノズルチェックパターンを印字してノズル抜け本数をカウントし、その本数で評価を行った。
○:ノズル抜け無し
△:ノズル抜け1〜10本
×:ノズル抜け11本以上
(耐候性)
印刷基材としてPVCを使用して印刷を行ったサンプルを、スーパーキセノンウェザーメータSX75(スガ試験機製)を用いて放射照度160W、bp53℃、50%RH、照射+降雨サイクルモード(1サイクル120分、内18分降雨)の条件にて600時間耐候性試験を行い、試験前後での濃度変化を評価した。濃度はX-Rite製528分光濃度計を用い測定を行った。
○ : OD値低下率10%未満
× : OD値低下率10%以上
下記の基材に対して印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
コート紙 : 王子製紙製OKトップコート+
PVC : メタマーク製MD-5
(耐性試験)
印刷基材としてPVCを使用して印刷を行ったサンプルを綿棒にエタノールを染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が51回以上のものは○、20〜50回のものは△、20回未満のものは×とした。
実施例では請求項の範囲内の顔料、分散樹脂、溶剤を使用することにより、高い保存安定性、吐出性、耐候性、印字品質、耐性を得ることが出来ている。実施例16〜30では定着樹脂として樹脂微粒子を使用することにより、さらに高い耐性を達成している。実施例21〜26では溶剤組成を調整することによりPVC上でも高い印刷品質を実現している。
一方、比較例1〜7では分散樹脂が請求項の範囲外であるため、インキの安定性を保てなく、吐出性も悪い。比較例8〜13ではピグメントイエロー150を使用していないため、耐候性が低い。比較例14〜16では溶剤組成が請求項の範囲外であるため印刷品質が低下している。このように本発明の範囲外では全ての評価項目を満足し、実用に耐えうる品質のインキとすることができないことが示されている。
Claims (8)
- 少なくともピグメントイエロー150、水溶性溶剤、水及び顔料分散樹脂を含有してなるインクジェット用顔料イエローインキにおいて、前記顔料分散樹脂が、下記の単量体A、単量体B及び単量体Cを共重合組成に含むコポリマー(共重合体)であることを特徴とし、
コポリマー全量中の単量体A、B、Cの合計量の比率は70〜100質量%であり、
前記水溶性溶剤がグリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするインクジェット用イエローインキ。
単量体A:炭素数18〜24のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α-メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸 - 前記顔料分散樹脂の酸価が50〜400mgKOH/gであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット用イエローインキ。
- 前記単量体Aがベヘニル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット用イエローインキ。
- 樹脂微粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のインクジェット用イエローインキ。
- 前記グリコールエーテル類が(ポリ)アルキレングリコールモノ(またはジ)アルキルエーテルである請求項1〜4いずれか記載のインクジェット用イエローインキ。
- 前記ジオール類が炭素数3〜6のアルカンジオールである請求項1〜5いずれか記載のインクジェット用イエローインキ。
- 請求項1〜6いずれか記載のインクジェット用イエローインキと、少なくともシアン、マゼンタ、ブラックを含む4色以上のインキセット。
- 請求項1〜7いずれか記載のインクジェット用インキ、もしくはインキセットを用いて印刷してなる印刷物。
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