JP5747246B2 - 円二色性素子 - Google Patents

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Description

本発明は、電磁波に円二色性を生じさせる円二色性素子に関する。
円二色性は、入射平面波が右回り、左回り円偏光であるときの透過率をそれぞれTR、TLと表記した場合、TR=TLのときは円二色性なしと、それ以外の場合、すなわち、TR>TLまたはTR<TLのときに円二色性があると定義される。
円二色性素子とは、円二色性を呈する素子のことである。
円二色性素子として機能する入射平面波の波長を円二色性素子の動作波長と呼ぶ。
任意に固定したある時間における平面波の電場ベクトルが、進行方向を規定する波数ベクトルの周りを円状の回転分布を形成するとき、その平面波は円偏光であると定義される。ここで、平面波とは、電磁波でその分布が関数 exp(ik・r−iωt)で表されるものをいう。ただし、iは虚数単位、kは電磁波の波数ベクトル、rは3次元ユークリッド空間座標、ωは電磁波の角振動数、tは時間を表す。
図23は、左回り円偏光の一例を示す概念図である。
図23に示すように、波数ベクトル14に対して任意に固定した瞬間の電場ベクトル15が左ネジ状の分布を形成するとき、平面波は左回り円偏光と定義される。波数ベクトル14は平面波の進行方向を表すベクトルである。図23では光の1波長分の電場ベクトル15の変化を8ステップで表示している。
図24は、右回り円偏光の一例を示す概念図である。
図24に示すように、波数ベクトル16に対して任意に固定した瞬間の電波ベクトル17が右ネジ状の分布を形成するとき、平面波は右回り円偏光と定義される。平面波の進行方向を表す波数ベクトル16から電場ベクトル17が発せられる。図24では光の1波長分の電場ベクトル17の変化を8ステップで表示している。
図25は、円二色性の一例を示す概念図であって、円二色性が顕著な状況を模式的に表している。
円二色性素子18に、波数ベクトル19の入射平面波が右回り円偏光20であるとし、波数ベクトル21で入射する光が左回り円偏光22とするとき、波数ベクトル23で表される透過平面波の透過率TRが50%以上であるのに対して、波数ベクトル24で表される透過平面波の透過率TLが1%以下である場合を示している。
円二色性の度合いは、(TR−TL)/(TR+TL)で規定される円二色性度σにより、定量的に表わされる。
円二色性なしのとき、σ=0となる。また、円二色性があるときにはつねにσ≠0である。特に、左回り円偏光の透過率が0%、つまり、TL=0のときには、σ=1である。図25で示した状況はこの場合に対応している。一方、右回り円偏光の透過率が0%、つまり、TR=0のときには、σ=−1である。以上のように最大限に大きな円二色性は、|σ|=1として表される。
円二色性素子は、max(TR,TL)×|σ|で規定される効率因子εにより、評価できる。
ここで、max(TR,TL)はTR、TLの大きい方の値を表す。この効率因子εが大きい値をとるほど、円二色性素子として優れている。ε=100が理想的な円二色性素子である。ε≧60ならば性能の高い円二色性素子、ε≧25ならば実用に資する円二色性素子と評価される。
また、円二色性素子は、λ/dで規定される構造の効率化因子αでも、評価できる。
ここで、λは光の真空中の波長、dは円二色性素子の厚さを表す。構造の効率化因子αは、円二色性素子がどれくらい薄いサイズで実現できるかを定量的に表すための指標である。例えば、波長λが500nmの光に対して、厚さdが250nmの円二色性素子の構造の効率化因子αは2となる。つまり、構造の効率化因子α≧1のとき、照射する平面波の波長よりも厚さが薄いサイズ(以下、サブ波長サイズの厚さ)の円二色性素子が実現できていることを意味し、構造の効率化因子αが大きいほど、より薄いサイズで円二色性素子を実現できていることを意味する。
円二色性素子は、円二色性度σと効率因子ε、構造の効率化因子αによって、多面的に、かつ、総合的に評価できる。
円二色性に関しては、絶縁体材料または半導体材料における固有の円二色性や、それらに磁性イオンを微量ドープした固体媒体における円二色性に関して多くの研究例がある。しかし、円二色性度σが0.5を超えるようなコントラストの大きな円二色性素子に関する研究例はほとんどない。
また、センチメートルオーダーまで厚くした円二色性素子の研究例は多く、例えば、波長λが500×10−9mの光に対する厚さdが1×10−2mの円二色性素子であって、構造の効率化因子αが5×10−5と極めて小さな値をとり、光の波長に比べてはるかに厚い。一方で円二色性素子の研究例はあるが、厚さをサブ波長サイズに薄くした円二色性素子の研究例はほとんどない。
光デバイスの極小化を進めて、マイクロチップ等へ組み込んで、多機能、低消費電力なマイクロ光デバイスを実現するために、光の波長より薄い円二色性素子の実現が求められている。
更に、−100℃以下の極低温で行われた円二色性の研究例は多いが、室温の実用環境下では円二色性が見いだしにくく、特に、可視光、近赤外光域を含む光学波長域において、実用に資する円二色性素子に関する研究例はほとんどない。
円二色性素子としては、例えば、特許文献1に記載の素子がある。
特許文献1は、「円二色性を持つ媒体測定表面プラズモン共鳴センサー、円二色性測定法及び測定装置」に関するものであり、異方的なプラズモン共鳴を利用した円二色性素子の発明が開示されている。発明の対象は、透過配置ではなく、反射配置での円二色性が主である。一般に、プラズモン共鳴はサブ波長サイズの素子作製に関連づけられるが、特許文献1では実証的な数値計算または実験による裏づけがなく、実効性は明らかでない。また、開示の素子は円二色性度が0.2以下と見積もることができ、円二色性素子としての機能が小さい。
非特許文献4には、サブ波長サイズの波長板を可能にする構造体が記載されている。屈折率が極端に大きな異方性をもつ電磁波媒体で、このようなサブ波長サイズの波長板を可能にすることを示している。この波長板は、実施例の円二色性素子を実現するための一要素である。
とくに1/4波長板が円偏光に対しては有用である。1/4波長板とは、入射円偏光を透過させたのちに直線偏光に変換する素子のことである。
非特許文献4で示したようなサブ波長サイズの1/4波長板は、入射波長に対して前記定義を満たすように厚さを最適化することによって得られる。したがって、1/4波長板の厚さは入射円偏光を透過させたのちに直線偏光に変換する最適な厚さに定まる。
通常の1/4波長板は光学結晶を板状に切り出し、光学研磨することによって作製され、可視光(典型的な波長は500nm)用の1/4波長板は厚さが1mm以上である。
また、1/4波長板では、厚さがサブ波長であるか否かにかかわらず、面内に電磁波の位相速度が最も早い軸(先進軸)と最も遅い軸(遅延軸)が存在し、互いに直交する。前記性質を表す式は実施形態で後述する式(4)と式(5)であり、式(3)で示すジョーンズ行列が1/4波長板を表している。
1/4波長板においては、入射光が右回り、左回り円偏光のいずれである場合にも透過率は同じであり、透過光はともに直線偏光になり、互いに直交する偏光の向きを示す。円二色性度σの値は0になり、1/4波長板は円二色性のない素子である。
非特許文献5には、螺旋状の金属コイルをマイクロメートルサイズで作製してなる円二色性素子が記載されている。具体的には、金の螺旋型構造を周期的に並べて作った円二色性素子であって、赤外光域においてはマイクロ波領域で発見された構造を使って素子を構成することができるという経験則にもとづいて構造設計を行い、作製されたものである。金属の誘電率が赤外光とは大きく異なるため、この構造は可視光、近赤外光域で円二色性を有効に発現させることはできず、透過平面波の偏光操作性も有しない。
この円二色性素子は、波長3μm以上の赤外光域の入射円偏光の回転向きによって共鳴状態を励起する・しないことを選択できる。共鳴状態を励起する入射円偏光の場合には光はコイルに吸収されて透過せず、共鳴状態を励起しない入射円偏光の場合には光が素通りして、90%程度の透過率が得られる。これにより、円二色性度σが1に近い円二色性素子とすることができる。
しかし、この設計は次の2点で可視光、近赤外光域では有効でない。第1に、コイルを作る金属(非特許文献5では金)の誘電率が光吸収成分を多く含み、どの入射円偏光に対しても光が吸収されてしまう。第2に、コイル構造の共鳴状態にはカットオフ(波長の下限)があるため、金属コイルをより小さなサイズで作ることで共鳴状態が起こる波長を可視光や近赤外光域にもってくることができない。
非特許文献6には、近赤外光域における円二色性素子が記載されている。
この素子は十字形の同じ形状の微小金属片を直接接しないように薄膜層をサンドイッチ状に挟んで、ねじり角をつけて積層する構造を有している。前記薄膜層を挟みながら十字状の同じ構造物を重ねる際に、ねじり角をつけることで円二色性の発現を可能にしている。
非特許文献6の円二色性度σは最大0.4であり、そのときの透過率が7%であり、効率因子εは2.8と非常に小さく、実用には向かない。実際、円二色性素子としては暗い。
また、透過平面波の偏光は入射平面波とほぼ同じ円偏光であり、直線偏光や入射平面波の円偏光と反対回りにする操作はできず、微小金属片の共鳴状態を使っているので、光吸収が大きく、透過率を大きくすることは望めない難点がある。
このように、従来の円二色性素子は、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有すること、円二色性素子の厚さを光の波長よりも薄くすること、透過平面波の偏光状態を直線偏光または右回り若しくは左回りの円偏光に制御することが困難であるという課題があった。
特開2009−210495号公報
L.Li,"New formulation of the Fourier modal method for crossed surface−relief gratings,"J.Opt.Soc.Am.A,Vol.14,p.2758-2767(1997). L.Li,"Formulation and comparison of two recursive matrix algorithm for modeling layered diffraction gratings,"J.Opt.Soc.Am.A,Vol.13,p.1024-1035(1996). A.D.Rakic,A.B.Djurusic,J.M.Elazar,and M.L.Majewski,"Optical properties of metallic films for vertical−cavity optoelectronic devices,"Appl.Opt.,Vol.37,5271-5283(1988). M.Iwanaga,"Ultracompact waveplates:Approach from metamaterials,"Appl.Phys.Lett.,Vol.92,153102(2008). J.K.Gansel,M.Thiel,M.S.Decker,K.Bade,V.Saile,G.von Freymann,S.Linden,and M.Wegener,"Gold Helix Photonic Metamaterial as Broadband Circular Polarizer,"Science,Vol.325,p.1513-1515(2009). M.Decker,M.Ruther,C.E.Kriegler,J.Zhou,C.M.Soukoulis,S.Linden,and M.Wegener,"Strong optical activity from twisted−cross photonic metamaterials,"Opt.Lett.,Vol.34,p.2501-2503(2009). M.Iwanaga,A.S.Vengurlekar,T.Hatano,and T.Ishihara,"Reciprocal transmittances and reflectances:An elementary proof," Am.J.Phys.Vol.75,p.899−903(2007). M.Iwanaga,"Polarization−selective transmission in stacked two−dimensional complementary plasmonic crystal slabs," Appl.Phys.Lett.Vol.96,083106(2010). E.D.Palik,Handbook of Optical Constants of Solids II,Academic Press,San Diego,1991.
本発明は、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、入射平面波の波長よりも薄い厚さであって、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と反対回り若しくは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することを課題とする。
電磁気学に関する現象を正確に表す方程式として認知されているマクスウェル方程式の解は周期的構造体における電磁現象ついても正確に再現できることはすでに周知である。
電磁波が周期構造体を透過するときの透過率、透過平面波の偏光ベクトルを算出することが本発明における重要な手法であるから、以下、文献について述べる。
周期的な配列からなる構造体におけるマクスウェル方程式をフーリエ変換した形に書き換えて解くことが適している。例えば、非特許文献1には、具体的にマクスウェル方程式をフーリエ変換した形に書き換えた表式が記載されており、書き換えた方程式を数値的に高速・高精度に解くためのアルゴリズムが記載されている。この方法を用いることによって、入射平面波を周期構造体に照射したときに誘起される固有モードのマクスウェル方程式の解を正確に知ることができる。
また、非特許文献2には、周期的な配列からなる層におけるマクスウェル方程式の解が求められたとき、その解を用いて、積層構造体の透過率や反射率を安定的に数値計算する散乱行列法のアルゴリズムと具体的な表式が系統的に記載されている。
非特許文献1,2の方法を組み合わせることにより、周期的な配列からなる層が任意に積層した構造体の透過率、反射率をマクスウェル方程式からの直接の帰結として算出することが可能になる。したがって、これらの方法から算出した結果は電磁気学において最も信頼できる結果であり、多数の実験との比較からそれらの結果の妥当性もすでに周知の事実である。
とくに、金属を含む周期構造体の平面電磁波に対する透過率の実験値を再現性よく、前記計算方法によって示した文献として、たとえば非特許文献7、8が挙げられる。非特許文献7、8には、金属を含む周期的構造体の透過率に関する実験値と前記方法による計算値があり、周期構造体の周期長が入射平面波の波長に対してサブ波長である範囲において、±5%以下の誤差の範囲内で一致している。よって、本願の構成で得られた計算値も、同様の誤差の範囲内の実験値が得られると推察される。実験値との誤差の主な原因は実際に作製する構造が加工精度に応じて、設計からずれていることであると考えられている。
前記計算方法で得た透過平面波の任意に定めた時間における電場ベクトルを進行方向に沿って、算出することにより、透過平面波の偏光ベクトルが得られる。この方法については、非特許文献4にもすでに記載がある。
また、非特許文献3には、実験的に測定された銀の誘電率をBrendel−Bardenモデルによって統一的にフィッティングして広い波長域にわたる誘電率が記載されている。
本願発明者は、非特許文献1、2に記載の計算及び非特許文献3に記載の銀の誘電率を利用して、前記課題を解決できる可能性があることに発見して、本発明を完成した。本発明は、以下の構成を有する。
本発明の円二色性素子は、1/4波長板と異方的透過板との積層構造を有し、サブ波長の厚さの円二色性素子であって、前記1/4波長板が400nm以上1600nm以下の波長領域から選択される一の平面波の円偏光を直線偏光に変換可能であり、前記異方的透過板が前記一の平面波の直線偏光方向に高透過率軸を有しており、前記1/4波長板が負誘電率部材と電磁波透過部材とからなり、前記1/4波長板の一面側で、前記負誘電率部材が平行かつ間隔を一定にして配置された複数のラインを形成しており、前記ラインの延伸方向が前記1/4波長板の先進軸方向とされており、前記異方的透過板が、電磁波透過部材と負誘電率部材とからなり、前記異方的透過板の一面側で、前記負誘電率部材が同一の大きさの複数の四角形状であり、隣接する前記負誘電率部材の頂角同士を近接させ、一方向に並べて配置して形成した複数のラインが、それぞれ平行かつ間隔を一定にして配置されていることを特徴とする。
本発明の円二色性素子は、前記異方的透過板の高透過率軸が、前記1/4波長板の先進軸に対して45度の角度をなしていることが好ましい
発明の円二色性素子は、前記1/4波長板及び前記異方的透過板の両方の負誘電率部材が金属であることが好ましい。
本発明の円二色性素子は、前記電磁波透過部材が、前記一の平面波の透過率が70%以上の材料であることが好ましい。
本発明の円二色性素子は、前記異方的透過板の前記1/4波長板の反対側の面に別の1/4波長板が積層されていることが好ましい。
本発明の円二色性素子は、前記1/4波長板及び前記別の1/4波長板の先進軸が平行となるように、前記別の1/4波長板が積層されていることが好ましい。
本発明の円二色性素子は、前記1/4波長板及び前記別の1/4波長板の先進軸が直交するように、前記別の1/4波長板が積層されていることが好ましい。
本発明の円二色性素子は、1/4波長板と異方的透過板との積層構造を有し、サブ波長の厚さの円二色性素子であって、前記1/4波長板が400nm以上1600nm以下の波長領域から選択される一の平面波の円偏光を直線偏光に変換可能であり、前記異方的透過板が前記一の平面波の直線偏光方向に高透過率軸を有しており、前記1/4波長板が負誘電率部材と電磁波透過部材とからなり、前記1/4波長板の一面側で、前記負誘電率部材が平行かつ間隔を一定にして配置された複数のラインを形成しており、前記ラインの延伸方向が前記1/4波長板の先進軸方向とされており、前記異方的透過板が、電磁波透過部材と負誘電率部材とからなり、前記異方的透過板の一面側で、前記負誘電率部材が同一の大きさの複数の四角形状であり、隣接する前記負誘電率部材の頂角同士を近接させ、一方向に並べて配置して形成した複数のラインが、それぞれ平行かつ間隔を一定にして配置されている構成なので、400nm以上1600nm以下の波長領域から選択される一の平面波を入射・透過させて透過平面波に円二色性を生じさせることができ、0.96以上の円二色性度σかつ61以上の効率因子εを有し、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と反対回り若しくは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することができる。また、サブ波長の厚さの円二色性素子とする構成なので、マイクロチップ等に組み込みが容易となり、光―光変換デバイス、光―電気変換デバイス、電気―光変換デバイス等をより小型化、多機能化、低消費電力化することができる。
本発明の円二色性素子の一例を示す図であって、2層型円二色性素子の概略図である。 図1に示す円二色性素子の側面図である。 1/4波長板の単位面の平面図である。 異方的透過板の単位面の平面図である。 本発明の円二色性素子の別の一例を示す図であって、第1の3層型円二色性素子の概略図である。 本発明の円二色性素子の更に別の一例を示す図であって、第2の3層型円二色性素子の概略図である。 別の1/4波長板の単位面の平面図である。 2層型円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。 2層型円二色性素子の円二色性度スペクトルの計算結果を示すグラフである。 2層型円二色性素子の透過平面波の偏光状態の計算結果を示すグラフである。 直線偏光下における異方的透過板(厚さ210nm)単層の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。 第1の3層型円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。 第1の3層型円二色性素子の円二色性度スペクトルの計算結果を示すグラフである。 第1の3層型円二色性素子の透過平面波の偏光状態の計算結果を示す斜視図である。 第1の3層型円二色性素子の透過平面波の偏光状態の計算結果を示すグラフである。 第2の3層型円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。 第2の3層型円二色性素子の円二色性度スペクトルの計算結果を示すグラフである。 第2の3層型円二色性素子の透過平面波の偏光状態の計算結果を示す斜視図である。 異方的透過板の単位面の平面図である。 異方的透過板の単位面の平面図である。 単位面31をもつ層構造が厚さ100nmのときの透過平面波の偏光状態の計算結果を示すグラフである。 厚さが最適化されていない2層型円二色性素子の透過スペクトルである。 左回り円偏光の定義を示す概略図である。 右回り円偏光の定義を示す概略図である。 円二色性の一例を示す概念図である。
(本発明の第1の実施形態:2層型円二色性素子)
まず、本発明の第1の実施形態である円二色性素子について説明する。
本発明の2層型素子が入射円偏光を透過した後、直線偏光にする機能発現機構は以下のようにジョーンズ行列を使って示すことができる。
ジョーンズ行列法は、透過光学素子の性質を表現する方法として、光学の中で既に確立されたものである。特に、素子に対して垂直に光が入射する場合に適した方法である。
直交座標xyz軸が与えられたときに、素子の入射面がxy平面と平行で、入射光の進行方向が−z軸向きであるように素子と入射光を設定する。
光の電場成分(Ex,Ey)を基底ベクトルにとり、これをジョーンズベクトルと呼ぶ。この基底ベクトルによって、光学素子の透過特性を2×2行列として表現することができ、これをジョーンズ行列と呼ぶ。光の位相も含めて表現するために、ジョーンズベクトル、ジョーンズ行列ともに複素数値である。
まず、右回り円偏光のジョーンズベクトルJは式(1)のように表すことができる。同様に、左回り円偏光のジョーンズベクトルJは式(2)のように表すことができる。ここで、虚数単位はiと表すとともに、ジョーンズベクトルは絶対値の大きさが1に規格化されている(以下、同じ)。
次に、1/4波長板の先進軸がx軸と平行、遅延軸がy軸と平行になるように配置するとき、対応するジョーンズ行列Lは式(3)と表される。
一般に、ジョーンズ行列にジョーンズベクトルをかけると、積の結果は透過光のジョーンズベクトルを表す。かけたジョーンズベクトルが入射光の偏光を表している。
式(3)が1/4波長板を表すジョーンズ行列であることはつぎのように確認できる。前記のように、1/4波長板の定義は円偏光を直線偏光に変換することである。ジョーンズ行列Lに右回り円偏光のジョーンズベクトルJ及び左回り円偏光のジョーンズベクトルJをかけると、式(4)及び式(5)から分かるように、それぞれ直線偏光に変換する。なお、式(4)の右辺は(1,1)方向に直線偏光したジョーンズベクトルを表し、式(5)の右辺は(−1,1)方向に直線偏光したジョーンズベクトルを表している。2つの1次独立なジョーンズベクトルJとJに対して、式(4)と式(5)を満たすジョーンズ行列は一意に決まり、その表式が式(3)である。以上のように、式(3)は1/4波長板を表すジョーンズ行列である。
また、右回り円偏光、左回り円偏光が1/4波長板によって変換されて得られた直線偏光は互いに直交することが式(4)と式(5)から分かる。
次に、異方的透過板を表すジョーンズ行列Lは式(6)と表される。ただし、高透過率軸がベクトル(1,1)と平行、低透過率軸がベクトル(−1,1)と平行になるように配置するものとする。
式(6)が異方的透過板であることを以下のように確認できる。式(6)のジョーンズ行列に(1,1)方向の直線偏光を表すジョーンズベクトルを作用させると、式(7)から分かるように、入射偏光と同じジョーンズベクトルが透過平面波の偏光状態を表す。つまり、(1,1)方向が高透過率軸であり、その透過率は100%である。一方、式(8)は入射平面波が直線偏光であり、(−1,1)方向のときに対応しており、その透過平面波はゼロベクトル、つまり透過率0%であることを表している。したがって、(−1,1)方向が低透過率軸である。2つの1次独立なジョーンズベクトルに対して、式(7)と式(8)を満たす行列成分の比は式(6)で表される行列に一意に定まることから、式(6)が異方的透過板を表すジョーンズ行列であることが確かめられた。
以上説明したように、1/4波長板、異方的透過板はそれぞれジョーンズ行列L、ジョーンズ行列Lに対応する効果を有することが明らかになった。
なお、ジョーンズ行列L、ジョーンズ行列Lは、定性的な性質を明示的に示すために、理想化されている。現実の円二色性素子は、反射損失や吸収損失がともない、透過率が100%ではないこともありうるが、円二色性素子の動作原理は定性的に同様に説明できる(以下の説明に関しても同様)。
次に、1/4波長板と、異方的透過板を積層した2層型円二色性素子のジョーンズ行列Mは、ジョーンズ行列Lに左からLをかけることで得られる。ジョーンズ行列の積は層構造の積層に対応している。ジョーンズ行列Mの具体的な表現は式(9)で示している。
式(9)が2層型円二色性素子101を表すジョーンズ行列であることは次のように確認できる。式(10)及び式(11)でそれぞれ右回り円偏光のジョーンズベクトルJ、左回り円偏光のジョーンズベクトルJをそれぞれ作用させると、右回り円偏光に対して透過率100%、左回り円偏光に対して透過率0%となる。2つの1次独立なジョーンズベクトルに対して、式(10)と式(11)を満たす行列成分の比は式(9)で表される行列に一意に定まることから、式(9)が2層型円二色性素子101を表すジョーンズ行列であることが確かめられた。
また、式(10)から分かるように、右回り円偏光下での透過平面波の偏光状態は(1,1)方向の直線偏光である。
以上説明したように、式(9)のジョーンズ行列Mで表される2層型円二色性素子(本発明の円二色性素子101)は、入射円偏光のうち右回り円偏光のみを透過し、透過波を直線偏光にする。
とくに、前記ジョーンズ行列で示した過程では、1/4波長板、異方的透過板の内部構造に依存していない。つまり、本発明の第1の実施形態である2層型円二色性素子は各層が1/4波長板、異方的透過板であるという条件を満たせば成立する普遍的な性質であることが明らかになった。
図1は、本発明の第1の実施形態である円二色性素子の一例を示す概略図である。サブ波長サイズの厚さで円二色性素子を実現するために必要な内部構造まで含めて概略を示している。
図1に示すように、円二色性素子101は、直方体平板状の2層が積層して構成されている円二色性素子である。平面視略矩形状の1/4波長板1と平面視略矩形状の異方的透過板2が積層されることで概略構成されている。異方的透過板2の内部構造が見えるように2つの層の大きさを変えて図示している。
図1では座標xyzを定義している。1/4波長板1の先進軸、遅延軸が、xy軸に一致するように座標を設定する。このとき、xy面に垂直に入射する平面波は−z向きに進行することになる。前記入射平面波の進行方向を規定するベクトルが波数ベクトル5である。
図2では+x側から円二色性素子101のyz断面を見る配置で1/4波長板1と異方的透過板2を示している。入射平面波が照射する順にxy平面と平行な1/4波長板1の一面1a、他面1bとする。異方的透過板2の一面2a、他面2bとする。1/4波長板1の他面1bと異方的透過板2の一面2aは接するように積層している。
図1において、1/4波長板1は負誘電率部材3aと電磁波透過部材3bとからなり、負誘電率部材3aと電磁波透過部材3bは交互に配列され、界面がy軸と平行になるように配置されている。負誘電率部材3aと電磁波透過部材3bの配列方向はx軸と一致している。
1/4波長板1の一面側で、負誘電率部材3aは平行かつ間隔を一定にして配置された複数のラインを形成している。
図3において、1/4波長板1のxy断面の部分拡大図、とくに単位面31を示している。ここで、単位面とは、xy断面から抽出され、xy面内において隙間なく、かつ重なりなく単位面を隣接して繰り返しならべることにより、元のxy断面全体を構成できる単位のことを言う。
図3の単位面は横lx、縦lyの長さをもち、内部に負誘電率部材3a、電磁波透過部材3bを含んでいる。負誘電率部材3aのx軸方向の長さはtxとされている。単位面31で表される1/4波長板1の内部構造は、各部材の比を、長さtxを変えることで変更できる。図3では、1/4波長板1の先進軸3c、遅延軸3dも示している。前記ラインの延伸方向は、1/4波長板1の先進軸3c方向とされている。
図4において、異方的透過板2のxy断面に関する単位面41を示している。図4の単位面は縦lx、横lyの長さをもち、内部に負誘電率部材4a1、4a2、4a3、4a4、4a5、4a6及び電磁波透過部材4bを含んでいる。負誘電率部材4a1から4a6は平面視四角形状の同一の形状で横sx、縦syの長さをもつ。
図4では、異方的透過板2の高透過率軸4c、低透過率軸4dも示している。
異方的透過板2の高透過率軸4cは、1/4波長板1の先進軸3cに対して45度の角度をなしている。
単位面41で表される異方的透過板2の内部構造は、配列の負誘電率部材4a1から4a6の個数、形状に変更の自由度がある。異方的透過板2の配列の負誘電率部材は同一形状に限定されるわけではない。例えば、正方形の大きさが大小違うものが一列に配列しているようなものでも異方的透過板2になり得る。
異方的透過板2は、単位面41がxy平面に周期的に隣接して並んで形成され、負誘電率部材4a1、4a2、4a3、4a4、4a5、4a6が斜めに一直線状となるように配列されている。これにより、ライン状の負誘電率部材4aが形成されている。また、ライン状の負誘電率部材4aは互いに平行に、かつ、配列間隔が等間隔となるように配置されている。
このような規則的構造を有することにより、異方的透過板2は、入射平面波として直線偏光の波を用いた場合、任意の直線偏光の方向の透過率を高くすることができるとともに、その方向から90°回転させた直線偏光の方向の透過率を低くすることができる。例えば、xy面内でベクトル(1,1)と平行な直線偏光の方向の透過率高くすることができるとともに、ベクトル(−1,1)と平行な直線偏光の方向の透過率を低くすることができる。
負誘電率部材3a及び負誘電率部材4a1、4a2、4a3、4a4、4a5、4a6は金属からなることが好ましい。前記金属の種類は、入射波長と誘電率を考慮して決定することが好ましい。金属材料を含むことにより、サブ波長の薄さで円二色性素子を作製することに有利に働く。
使用可能な金属の例として、Ag、Al、Au、Pt等を挙げることができ、とくに可視光域ではAg、Alが好ましい。Ptは、入射平面波として可視光を用いたときは光吸収による損失が大きく好ましくない。赤外光域、マイクロ波域においてはCuを金属部材として使用することができる。
金属材料の誘電率は、入射平面波の波長に依存し、長波長の極限では負の値をとり、波長が短くなるに従い、0に向かって単調に増加し、現実の金属材料に対して便宜的に、誘電率が0になる波長が実効的なプラズマ波長と定義されている。
単位面31の負誘電率部材3aの面内割合を減らすことにより、実効的なプラズマ波長を長波長側にシフトさせることができる。よって、入射平面波として、実効的なプラズマ波長より短波長側の波長域の平面波を用いることにより、1/4波長板1の透過率を高くすることができる。
電磁波透過部材3b及び電磁波透過部材4bは、入射平面波の透過率は70%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。入射平面波の透過率が大きい材料の例としては、絶縁体または半導体からなることが挙げられる。例えば、可視光領域の波長の入射平面波に対しては、透明な絶縁体であるSiO、Al、MgF等を用いることができる。
例えば、銀やアルミニウムのプラズマ波長は紫外光域にある。したがって、銀とSiOの組み合わせ、またはアルミニウムとSiOの組み合わせで、図3に示した単位面31を形成することができる。
単位面31に占める金属の面内割合を減らすことにより、実効的なプラズマ波長は紫外光域から可視光域、近赤外光域へと移動することができる。
これにより、サブ波長サイズの1/4波長板1の動作波長を紫外光域から可視光域、近赤外光域まで移動することができる。
更に、1/4波長板1の板厚を考慮して、入射平面波の波長を選択することにより、サブ波長サイズ以下の板厚とされた円二色性素子とすることができる。
なお、1/4波長板1は、単独でサブ波長サイズの1/4波長板になりうることが報告されている(非特許文献4)。
次に、本発明の第1の実施形態である2層型の円二色性素子101の偏光効果について説明する。
まず、図1に示すように、入射平面波を1/4波長板1の一面1aに垂直な方向(−z方向)に入射させる。
特定の波長の電磁波に依存しないジョーンズ行列を用いて先述したように、紫外光からマイクロ波にわたる広範な波長領域の電磁波から入射平面波を選んで用いることが可能であり、入射平面波の波長に対応した部材を用いることにより、同様の偏光効果を得ることができる。なお、波長域は紫外光より長波長以上の範囲(波長400nm以上)とすることが好ましい。波長を可視光より短くすると、光吸収損失のすくない負誘電率部材がこれまで見つかっていないために単位面31で例示するような1/4波長板が構成困難であるからである。
入射平面波は、1/4波長板1の内部で円偏光から直線偏光に変換される。
なお、右回り円偏光と左回り円偏光は、互いに向きが直交する直線偏光に変換される。
次に、直線偏光とされた入射平面波は、異方的透過板2の内部へ入射される。
異方的透過板2は、その高透過率軸と向きの直線偏光を透過率高く透過させる一方、高透過率軸と直交する方向、すなわち、低透過率軸と向きの直線偏光を透過率低く透過させる。
そのため、異方的透過板2の他面2bから出射される2つの直線偏光は、透過率が異なり、円二色性が発現される。なお、これらの透過率から、円二色性度σ及び効率因子εが算出される。
以上により、本発明の第1の実施形態である円二色性素子101は、右回りのまたは左回りの一方の入射円偏光のみを透過させ、直線偏光に変換して、円二色性の効率因子εを大きくして出射することができる。
(本発明の第2の実施形態:第1の3層型円二色性素子)
次に、本発明の第2の実施形態である円二色性素子について説明する。最初に、ジョーンズ行列を用いて機能発現機構を示す。第1の3層型円二色性素子のジョーンズ行列M (1)は、2つの1/4波長板が平行な先進軸をもつように積層するから、式(12)のように積Lで表される。
式(12)が3層型円二色性素子102を表すジョーンズ行列であることは次のように確認できる。式(13)及び式(14)でそれぞれ右回り円偏光のジョーンズベクトルJ、左回り円偏光のジョーンズベクトルJをそれぞれ作用させると、式(13)のように右回り円偏光に対して透過率100%、式(14)のように左回り円偏光に対して透過率0%となる。2つの1次独立なジョーンズベクトルに対して、式(13)と式(14)を満たす行列成分の比は式(12)で表される行列に一意に定まることから、式(12)が3層型円二色性素子102を表すジョーンズ行列であることが確かめられた。
式(13)と式(14)から、右回り円偏光のみを透過して、式(13)から、透過平面波は入射円偏光と反対回り、つまり左回り円偏光になることが示された。
式(13)は入射平面波が右回り円偏光であった場合で、透過平面波は左回り円偏光になっており、入射円偏光と逆回り円偏光の透過平面波を表している。
なお、入射平面波が左回り円偏光で透過平面波が右回り円偏光になる円二色性素子は異方的透過板を90度回転すれば得られる。
以上の導出によって、円二色性素子は、個別的な場合だけでなく、1/4波長板、異方的透過板、1/4波長板の3層積層構造であれば、各層の構造の子細に依らず、普遍的に実現できる。
図5は、本発明の第2の実施形態である円二色性素子の一例を示す概略図である。サブ波長サイズの厚さで円二色性素子を実現するために必要な内部構造まで含めて概略を示している。
図5に示すように、円二色性素子102は3層型であって、異方的透過板2の他面2b側に平面視略矩形状の別の1/4波長板6が積層されている他は、本発明の第1の実施形態である2層型の円二色性素子101と同様の構成とされている。
なお、図5では、異方的透過板2と別の1/4波長板6の内部構造を示すため、1/4波長板1及び異方的透過構造板2の一端側が削除して描かれている。本発明の第1の実施形態と同様の構成であるとともに、異方的透過板2と別の1/4波長板6の接する面積は等しく、互いに重なり合うように積層されている。
図5に示すように、別の1/4波長板6は、負誘電率部材7aと電磁波透過部材7bを有している。別の1/4波長板6は、1/4波長板1と同様に、負誘電率部材7aと電磁波透過部材7bがx軸方向に交互に配列し、y軸方向に一様である構造を有する。
本発明の第1の実施形態で述べたのと同様に、負誘電率部材7aに金属を用いることで別の1/4波長板6はサブ波長の薄さにすることが可能になる。
次に、本発明の第2の実施形態である第1の3層型円二色性素子102の偏光効果について説明する。
図5に示すように、入射平面波が、1/4波長板1の一面に垂直な方向(−z方向)に入射される。
入射平面波は、1/4波長板1の内部で円偏光から直線偏光に変換される。
なお、右回り円偏光と左回り円偏光は、互いに向きが直交する直線偏光に変換される。
次に、直線偏光とされた入射平面波は、異方的透過板2の内部へ入射される。
異方的透過板2は、その高透過率軸と向きの直線偏光を透過率高く透過させる一方、高透過率軸と直交する方向、すなわち、低透過率軸と向きの直線偏光を透過率低く透過させる。
次に、別の1/4波長板6の先進軸が、1/4波長板1の先進軸と一致するように配置されているので、異方的透過板2から出射された直線偏光は、入射円偏光と逆回りの円偏光に変換される。以上の過程を経て、別の1/4波長板6の他面から、−z方向に出射される。
以上により、本発明の第2の実施形態である円二色性素子102は、右回りの入射円偏光のみを透過させ、左回りの円偏光に変換して出射するか、または、左回りの入射円偏光のみを透過させ、右回りの円偏光に変換して出射することができる。最終的に透過された光の透過率の比が円二色性となる。これらの透過率の比から、円二色性度σ及び効率因子εが算出される。
(本発明の第3の実施形態:第2の3層型円二色性素子)
本発明の第3の実施形態である円二色性素子について説明する。第3の実施形態である3層型円二色性素子を表すジョーンズ行列M (2)は、3層型円二色性素子102において、別の1/4波長板6をxy平面内で90度回転した配置なので、式(15)のように表される。
式(15)が3層型円二色性素子103を表すジョーンズ行列であることは次のように確認できる。式(16)及び式(17)で示すようにそれぞれ右回り円偏光のジョーンズベクトルJ、左回り円偏光のジョーンズベクトルJをそれぞれ作用させると、式(16)のように右回り円偏光に対して透過率100%、式(17)のように左回り円偏光に対して透過率0%となる。2つの1次独立なジョーンズベクトルに対して、式(16)と式(17)を満たす行列成分の比は式(15)で表される行列に一意に定まることから、式(15)が3層型円二色性素子103を表すジョーンズ行列であることが確かめられた。
式(16)と式(17)から、右回り円偏光のみを透過して、式(17)から、透過平面波は入射円偏光と同じ向きの円偏光になることが示された。
なお、この円二色性素子の異方的透過板をxy面内で90度回転すれば、入射平面波が左回り円偏光で、透過平面波も左回り円偏光とする円二色性素子が得られる。
本発明の実施形態である3つの円二色性素子は、式(1)〜式(17)を用いた一般的な証明に基づき、設計されたものである。
図6は、本発明の第3の実施形態である円二色性素子の一例を示す概略図である。サブ波長サイズの厚さで円二色性素子を実現するために必要な内部構造まで含めて概略を示している。
図6では、別の1/4波長板8の先進軸を、1/4波長板1の先進軸と直交する向きに配置することにより、透過平面波の偏光が入射平面波の円偏光と同じ向きの円偏光となる円二色性が可能になる。
図7は、別の1/4波長板8のxy断面図の部分拡大図であり、xy面内の単位面71を示している。図7の単位面71は図3の単位面31をxy面内で90度回転したものと一致する。
負誘電率部材9aに金属を用いることで、別の1/4波長板8はサブ波長の薄さの1/4波長板となることができる。
図7では、1/4波長板の先進軸9c、遅延軸9dを示している。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、1/4波長板1と異方的透過板2との積層構造を有し、サブ波長の厚さの円二色性素子であって、1/4波長板1が400nm以上1600nm以下の波長領域から選択される一の平面波5の円偏光を直線偏光に変換可能であり、異方的透過板2が一の平面波5の直線偏光方向に高透過率軸を有している構成なので、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することができる。また、サブ波長の厚さの円二色性素子を提供することにより、マイクロチップ等に組み込みが容易となり、光―光変換デバイス、光―電気変換デバイス、電気―光変換デバイス等をより小型化、多機能化、低消費電力化することができる。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、異方的透過板2の高透過率軸が、1/4波長板1の先進軸に対して45度の角度を有している構成なので、入射平面波5の偏光状態を変更して、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光にすることができる。異方的透過板2を加えることにより、円二色性を発現させることができる。1/4波長板1は前述のとおり、円二色性のない素子であるから、本発明の円二色性素子101、102、103における円二色性の発現効果は異方的透過板2にその起源がある。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、1/4波長板1が負誘電率部材3aと電磁波透過部材3bとからなり、前記1/4波長板の一面側で、前記負誘電率部材が平行かつ間隔を一定にして配置された複数のラインを形成しており、前記ラインの延伸方向が1/4波長板1の先進軸方向とされている構成なので、入射平面波5の偏光状態を変更して、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光にすることができる。負誘電率部材3aを使用することにより、1/4波長板1の厚さをサブ波長サイズに小さくする効果がある。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、異方的透過板2が電磁波透過部材4bと負誘電率部材4aとからなり、異方的透過板2の一面側で、負誘電率部材4aが同一の大きさの複数の四角形状であり、隣接する前記負誘電率部材の頂角同士を近接させ、一方向に並べて配置して形成した複数のラインが、それぞれ平行かつ間隔を一定にして配置されている、または、前記異方的透過板の一面側で、前記負誘電率部材が平行かつ間隔一定にして配置された複数のラインを形成して配置されている構成なので、入射平面波の偏光状態を変更して、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光にすることができる。異方的透過板2が部材4a、4bからなる線状構造を有することにより、単位面41内に異方的な構造を形成し、透過率に関する異方性を導くことが可能になる。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、負誘電率部材3a、4aが金属である構成なので、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、入射平面波の波長よりも薄い厚さであって、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することができる。負誘電率部材3a、4aに金属を用いることにより、金属のプラズモン共鳴を引き起こすことが可能になり、円二色性素子の厚さをサブ波長サイズの薄さにすることに有利に働く。
本発明の実施形態である円二色性素子101、102、103は、電磁波透過部材3b、4bが、一の平面波5の透過率が70%以上である材料である構成なので、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、入射平面波の波長よりも薄い厚さであって、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することができる。透過率が70%以上と大きな部材を用いることにより、電磁波が効率的に透過する領域を単位面31、41、71、191、201内に確保することができる。
本発明の実施形態である円二色性素子102、103は、異方的透過板2の1/4波長板1の反対側の面に別の1/4波長板6、8が積層されている構成なので、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子を提供することができる。別の1/4波長板6、8を積層することにより、異方的透過板を透過直後の直線偏光に近い平面波をさらに円偏光に変換する効果がある。別の1/4波長板6、8を加えることで、円二色性素子102、103を透過平面波の偏光を円偏光にすることができる。
本発明の実施形態である円二色性素子102は、1/4波長板1及び別の1/4波長板6の先進軸が平行となるように、別の1/4波長板6が積層されている構成なので、1/4波長板1が、入射平面波の偏光状態を変更して、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御してから、別の1/4波長板6により、透過平面波の円偏光の回り向きを入射平面波の円偏光に対して、同じ回りか逆回りかのいずれか指定できる。
本発明の実施形態である円二色性素子103は、1/4波長板1及び別の1/4波長板8の先進軸が直交するように、別の1/4波長板8が積層されている構成なので、1/4波長板1が、入射平面波の偏光状態を変更して、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回りまたは同じ回りの円偏光に制御してから、別の1/4波長板8により、透過平面波の円偏光の回り向きを入射平面波の円偏光に対して、同じ回りか逆回りかのいずれか指定できる。
本発明の実施形態である円二色性素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1:2層型円二色性素子)
まず、図1〜図4に示す1/4波長板と異方的透過板とを積層した2層型円二色性素子の実施例を示す。ここで、部材3a、4aは金属(銀)、部材3b、4bは絶縁体(SiO)と設定した。これにより、図3における単位面31内における屈折率の異方性が大きくできる。
また、単位面31と単位面41の大きさl×lは300×300nmとした。負誘電率部材の幅tは30nmの厚さとした。このとき、先進軸がx軸と一致し、遅延軸がy軸と一致する。また、単位面41における電磁波透過部材4a1〜4a6は、大きさs×sが50×50nmの正方形の領域を対角線上に6個連続して配置した。前記正方形の領域は、xy面内でベクトル(−1,1)方向に角を接して並べた。高透過率軸をベクトル(1,1)向き、低透過率軸をベクトル(−1,1)の向きに生じさせる。
以上の設定のもとで、入射平面波が855nmのとき、1/4波長板の厚さは284nmである。異方的透過板の厚さは210nmとした。
次に、前記2層型円二色性素子の入射面(xy面)に垂直に入射平面波を入射した場合の、透過スペクトルの計算結果を算出した。
先に記載した透過率、透過平面波の偏光状態を算出する方法において、本発明に関する具体的な数値計算に関しては、フーリエ展開するときに使用した振動子の次数をx、y方向に対してそれぞれ±17次以上とることにより、計算精度は±1%に抑えた。
なお、本願における円二色性素子は空気中または真空中に存在している場合に対して、数値計算を実施した。また、この数値計算のための円二色性素子を構成する物質パラメータとして、銀の比誘電率は非特許文献3から得た。また、SiOの比誘電率は、対象としている波長域において周知の値である2.13を用いた。(以下、同じ)
図8は、実施例1の円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。実線は右回り円偏光を入射したときの透過スペクトルの計算結果であり、点線は左回り円偏光を入射したときの透過スペクトルの計算結果である。
図8に示すように、左回り円偏光のときに855nmで透過率が最小になり、1.1%まで低下した。一方、右回り円偏光のときは855nmで透過率82.4%であった。
つまり、図1で全体像を示した2層構造は、入射平面波の波長が855nmのとき、円二色性素子として機能することが明らかになった。なお、前記透過スペクトルの計算結果は、先に述べた方法により求めた(以下、この配置や計算方法は同様)。
次に、前記透過スペクトルから円二色性度を算出した。図9中の実線は、前記透過スペクトルから直接算出した円二色性度である。波長855nmにおいて円二色性度σが最大値0.97であり、この値は円二色性度の上限値1に近かった。
効率因子ε=82.4×0.97=80となった。また、構造に関する効率化因子α=855/(284+210)=1.73となり、サブ波長サイズとなった。
次に、2層型円二色性素子の透過平面波の偏光状態を算出した。
図10は、2層型円二色性素子に右回り円偏光の入射平面波を入射し、出射される透過平面波の偏光状態の計算結果であって、入射偏光ベクトルの大きさを1に規格化して表示したものである(以下、同様の規格化を行った)。
ここで、横軸がx成分の電場Ex、縦軸がy成分の電場Eyを表し、電場成分(Ex,Ey)を平面上に射影した。光の1周期分をプロットすると、xy面内でベクトル(1,1)方向(図10中の矢印方向)に電場が変化した。つまり、透過平面波はベクトル(1,1)方向の直線偏光であった。
図11は、図1の異方的透過板2が単独で存在するときに、サブ波長の薄さの異方的透過板であるかどうかを検証するため、透過スペクトルの計算を行った結果を示している。異方的透過板2の厚さは210nmとした。実線は入射平面波が(1,1)方向の直線偏光のときの透過スペクトルの計算結果であり、点線は入射平面波が(−1,1)方向の直線偏光のときの透過スペクトルの計算結果である。
入射平面波の直線偏光が(1,1)方向のとき、入射平面波の波長800から950nmの範囲の透過率は80%を超えて大きかった。一方で入射平面波の直線偏光が(−1,1)方向のとき、同透過率は2%以下と小さかった。したがって、異方的透過板2が単独で存在するとき、実際にサブ波長の薄さの異方的透過板であることが明らかになった。
なお、1/4波長板1がサブ波長の薄さの1/4波長板になることは非特許文献4と同様に検証できるから、ここでは省略する。
図11に示した例では異方的透過板の厚さを210nmとして計算を実行した。異方的透過板の厚さとしては、円二色性素子全体の厚さをサブ波長の厚さに保つ範囲のなかで、入射平面波の波長の1/5以上の厚さにすることが好ましい。その際に、入射平面波の波長において高透過率と低透過率の比が70以上に大きく、なおかつ、高透過率が80%以上であることを満たすように留意する。
(実施例2:第1の3層型円二色性素子)
異方的透過板の他面側に別の1/4波長板を積層した他は実施例1と同様にして、図5に示す第1の3層型円二色性素子の実施例を示す。
図5に示すように、第1の3層型円二色性素子の計算モデルは、入射平面波の透過する順に、厚さ284nmの1/4波長板、厚さ210nmの異方的透過構造板及び厚さ255nmの別の1/4波長板を積層したものである。
ここで、別の1/4波長板6の厚さが1/4波長板1の厚さと10%程度異なる理由は、異方的透過板を透過してきた直後の電磁波が近接場成分を含んで、理想的な平面波ではないためである。別の1/4波長板6の厚さに関しては、透過平面波を円偏光にするための最適化が必要である。
1/4波長板と別の1/4波長板の単位面は、図3に示した同一の単位面とした。また、異方的透過板の単位面は、図4の単位面と同一とした。
次に、図5に示す波数ベクトル5の向き、つまり、−z向きに進行する入射平面波を、3層型円二色性素子の入射面(xy面)に垂直に入射した場合の、透過スペクトルの計算結果を算出した。
図12は、実施例2の円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフである。実線は入射平面波が右回り円偏光のときの透過スペクトルの計算結果であり、点線は左回り円偏光のときの透過スペクトルの計算結果である。
図12に示すように、850nm付近において、左回り円偏光下の透過スペクトルは数%以下と小さかった。一方で右回り円偏光下では70%を超える透過率を示した。したがって、第1の3層型円二色性素子が850nm付近で円二色性を有することが明らかになった。
図13は、円二色性度σを示すグラフであり、円二色性度σが90%を超える波長域が50nm以上の幅の波長領域に存在し、大きな円二色性度が実現できた。
波長855nmにおいて、TR=71.9%、TL=1.0%で、σ=0.97と上限値に近かった。このとき、円二色性素子としての効率因子ε=70であり、実用に資する効率であった。また、厚さに関する効率化因子α=855/(284+210+255)=1.1であり、サブ波長サイズの薄さであることも明らかになった。
図14は、波長855nmの入射平面波が右回り円偏光であるとき、ある時間における透過平面波の電場ベクトル分布、つまり、偏光状態を3次元的に示したものであり、−zの向きに進む透過平面波の任意の時間における位置に対応する電場ベクトルの向きと大きさを示している。
図15は、3層型円二色性素子に右回り円偏光の入射平面波を入射し、出射される透過平面波の偏光状態の計算結果であって、入射偏光の強度を1に規格化するとともに、電場ベクトルをxy面上に射影したものである。図15中の矢印は、光の進行方向に沿って、電場ベクトルが回転する向きである。
図14、図15に示すように、透過平面波は、左回り円偏光であった。
以上から、図5で示した3層構造は、右回り円偏光の入射平面波のみを、効率的に透過し、なおかつ、円偏光の向きを反対回りに変換して、左回り円偏光の透過平面波として出射する円二色性素子であることが明らかになった。
(実施例3:第2の3層型円二色性素子)
次に、別の1/4波長板の向きをxy面内で90°回転させた以外は実施例2と同様の構成として、図6に示す、第2の3層型円二色性素子の計算モデルを作成した。
図6に示すように、負誘電率部材9a、電磁波透過部材9bはx軸に平行な方向に一様に伸び、y軸方向に交互に分布している。
次に、入射平面波を3層型円二色性素子の入射面(xy面)に垂直に入射したときの透過スペクトルの計算結果を算出した。
図16は、実施例3の円二色性素子の透過スペクトルの計算結果を示すグラフであって、実線は入射平面波が右回り円偏光のときの透過スペクトルであり、点線は左回り円偏光のときの透過スペクトルである。
図16に示すように、左回り円偏光の透過スペクトルは、波長860nm付近で透過スペクトルが数%以下の小さな値をとり、一方で右回り円偏光の透過スペクトルは50%を超える透過率を示した。また、波長855nmでのTR=63.7%,TL=1.1%であり、σ=0.96であり、σの上限値1に近かった。また、効率因子ε=61であり、実用に資する円二色性素子であった。波長855nmでの構造の効率化因子α=1.1であり、サブ波長サイズの薄さであった。
図17は、円二色性度σであり、波長860nm付近で円二色性度σは95%を超える最大値をとった。
図18は、波長855nmの入射平面波が右回り円偏光であるとき、ある時間における透過平面波の電場ベクトル分布、つまり、偏光状態を3次元的に示したものであり、−z向きに進む透過平面波の任意の時間における電場ベクトルの軌跡を示した図である。
図18に示すように、右回り円偏光の入射平面波は、透過平面波になったときも右回り円偏光のままであった。図6で示した3層型円二色性素子は、右回り円偏光のみを効率的に透過し、円偏光の向きを入射平面波と同じ右回り円偏光のままとする機能を有することが明らかになった。
試験:第2の2層型円二色性素子)
入射平面波の波長460nmに対する2層型の円二色性素子の試験例を示す。前記円二色性素子は、図3の単位面31を有し、厚さ118nmの1/4波長板と図19の単位面191を有し、厚さ30nmの異方的透過板の2層積層構造からなる。なお、単位面31、191の大きさlx×lyは150×150nmとし、単位面31におけるtxは30nmとし、単位面191におけるpx、pyともに50nmとした。また、単位面31、191における負誘電率部材は金属(銀)とし、電磁波透過部材は絶縁体(SiO)とした。異方的透過板における高透過率軸は単位面191内において(1,1)方向であり、低透過率軸は(−1,1)方向である。
この第2の2層型円二色性素子は円二色性度σが0.78、効率因子εが26であり、円二色性が示された。
試験例における入射波長460nmは、実施例1と比べて短波長であり、銀の誘電率の虚部が増加して吸収損失が増大する。その結果、効率因子などの低下を招くと考察した。
試験:第3の2層型円二色性素子)
入射平面波の波長1500nmに対する2層型の円二色性素子の試験例を示す。前記円二色性素子は、図3の単位面31を有し、厚さ176nmの1/4波長板と図20の単位面201を有し、厚さ340nmの異方的透過板の2層積層構造からなる。なお、単位面31、191の大きさlx×lyは250×250nmとし、単位面31におけるtxは50nmとし、単位面201におけるwx、wyともに50nmとした。5つの正方形12a1、12a2、12a3、12a4,12a5はすべて同形である。また、単位面31、201における負誘電率部材は金属(銀)とし、電磁波透過部材は半導体(Si)とした。異方的透過板における高透過率軸は単位面201内において(1,1)方向であり、低透過率軸は(−1,1)方向である。
この第2の2層型円二色性素子は円二色性度σが0.92、効率因子εが44であり、円二色性が示された。本試験例における入射波長1500nmでは、電磁波透過部材Siの誘電率が大きいために反射損失が増加するために透過率が相対的に減少する。その結果、実施例1と比較して、効率因子などの低下を招いていると考察した。なお、本試験例におけるSiの誘電率は非特許文献9の値を引用した。
(比較例1)
まず、単位面31をもつ層構造が単独で存在し、その厚さが100nmであるほかは、構造パラメータlx、ly、txは実施例1と同じである場合の透過平面波の偏光状態を調べた。入射平面波の波長は855nmである。図19にその結果を示しており、入射円偏光に対して、透過平面波の偏光状態は楕円偏光になっている。したがって、前記層構造が単独で存在するとき、偏光変換素子であることが分かる。しかし、1/4波長板であれば透過平面波は直線偏光になるので、前記層構造は1/4波長板ではない。
つぎに、厚さが100nmの前記層構造と異方的透過板を積層させた素子を比較例1とする。なお、前記素子は構造としては2層型円二色性素子101で偏光変換素子の厚さを変えた構造である。
図22は比較例1の2層型素子の透過スペクトルの計算結果である。実線は、右回り円偏光の入射平面波の場合であり、点線は、左回り円偏光の入射平面波の場合である。図22において波長855nmのとき、円二色性度σ=(72.7−14.7)/(72.7+14.7)=0.66であり、実施例1と比較して円二色性度は低下している。なお、効率因子ε=48である。
実施例1〜3の素子の円二色性度σが0.96以上あるのに対し、比較例1ではσが0.66であり、効率因子ε=48であった。比較例1の円二色性素子は、偏光変換素子の厚さが最適化されていないため、円二色性度が小さくなったと考察した。
(比較例2)
実施例1において、入射平面波の波長を500nmとした例である。この場合、図1の1に相当する層が円偏光の入射平面波を直線偏光に変換できないことから、1/4波長板ではない。したがって、波長500nmの入射平面波に対して2層型円二色性素子101は1/4波長板と異方的透過板の積層構造になっていない。この例における円二色性度σ=(27.2−56.3)/(27.2+56.3)=−0.35であり、効率因子ε=20である。
(比較例3)
実施例1において、入射平面波の波長を1500nmとした例である。この場合、図1の1に相当する層が円偏光の入射平面波を直線偏光に変換できないことから、1/4波長板ではない。したがって、波長1500nmの入射平面波に対して2層型円二色性素子101は1/4波長板と異方的透過板の積層構造になっていない。この例における円二色性度σ=(44.6−28.5)/(44.6+28.5)=0.22であり、効率因子ε=9.8である。
(比較例4)
実施例1において、入射平面波の波長を2000nmとした例である。この場合、図1の1に相当する層が円偏光の入射平面波を直線偏光に変換できないことから、1/4波長板ではない。したがって、波長2000nmの入射平面波に対して2層型円二色性素子101は1/4波長板と異方的透過板の積層構造になっていない。この例における円二色性度σ=(44.1−30.4)/(44.1+30.4)=0.18であり、効率因子ε=8.1である。
(比較例5)
実施例1において、入射平面波の波長を350nmとした例である。この場合、素子の厚さが494nmであるから、サブ波長の厚さではない。図1の1に相当する層が円偏光の入射平面波を直線偏光に変換できないことから、1/4波長板ではない。したがって、波長350nmの入射平面波に対して2層型円二色性素子101は1/4波長板と異方的透過板の積層構造になっておらず、なおかつ素子の厚さは波長よりも大きい。この例における円二色性度σ=(17.6−12.4)/(17.6+12.4)=0.17であり、効率因子ε=3.0である。


比較例2、3、4、5において、いずれの場合も入射円偏光を変換する1/4波長板に相当する層が厚さに関して最適化されていないため、円二色性度の絶対値が0.35以下と小さくなったと考察した。また、異方的透過板構造に相当する層が波長に対して適した単位面構造を有していないことから、効率因子が20以下に低下したと考察した。
本発明の円二色性素子は、0.75以上の円二色性度σかつ25以上の効率因子εを有し、入射平面波の波長よりも薄い厚さであって、透過平面波の偏光状態を直線偏光または入射円偏光と逆回り若しくは同じ回りの円偏光に制御可能な円二色性素子に関するものであり、スピントロニクス材料などを用いた光デバイス産業等において利用可能性がある。
1…1/4波長板、1a…一面、1b…他面、2…異方的透過板、2a…一面、2b…他面、3a…負誘電率部材、3b…電磁波透過部材、3c…先進軸、3d…遅延軸、4a、4a1、4a2、4a3、4a5、4a6…負誘電率部材、4b…電磁波透過部材、4c…高透過率軸、4d…低透過率軸、5…波数ベクトル、6…別の1/4波長板、7a…負誘電率部材、7b…電磁波透過部材、8…別の1/4波長板、9a…負誘電率部材、9b…電磁波透過部材、9c…先進軸、9d…遅延軸、10a、10b、10c…負誘電率部材、10d、10e…電磁波透過部材、11a…高透過率軸、11b…低透過率軸、12a1、12a2、12a3、12a4、12a5…負誘電率部材、12b1、12b2…電磁波透過部材、13a…高透過率軸、13b…低透過率軸、14…波数ベクトル、15…電場ベクトル、16…波数ベクトル、17…電場ベクトル、18…円二色性素子、19…波数ベクトル、20…右回り円偏光、21…波数ベクトル、22…左回り円偏光、23…右回り円偏光下の透過光波数ベクトル、24…左回り円偏光下の透過光波数ベクトル、31…1/4波長板の単位面、41…異方的透過板の単位面、71…別の1/4波長板の単位面、101…2層型円二色性素子、102…第1の3層型円二色性素子、103…第2の3層型円二色性素子、191…異方的透過板の単位面、201…異方的透過板の単位面。

Claims (7)

  1. 1/4波長板と異方的透過板との積層構造を有し、サブ波長の厚さの円二色性素子であって、前記1/4波長板が400nm以上1600nm以下の波長領域から選択される一の平面波の円偏光を直線偏光に変換可能であり、前記異方的透過板が前記一の平面波の直線偏光方向に高透過率軸を有しており、
    前記1/4波長板が負誘電率部材と電磁波透過部材とからなり、前記1/4波長板の一面側で、前記負誘電率部材が平行かつ間隔を一定にして配置された複数のラインを形成しており、前記ラインの延伸方向が前記1/4波長板の先進軸方向とされており、
    前記異方的透過板が、電磁波透過部材と負誘電率部材とからなり、前記異方的透過板の一面側で、前記負誘電率部材が同一の大きさの複数の四角形状であり、隣接する前記負誘電率部材の頂角同士を近接させ、一方向に並べて配置して形成した複数のラインが、それぞれ平行かつ間隔を一定にして配置されていることを特徴とする円二色性素子。
  2. 前記異方的透過板の高透過率軸が、前記1/4波長板の先進軸に対して45度の角度をなしていることを特徴とする請求項1に記載の円二色性素子。
  3. 前記1/4波長板及び前記異方的透過板の両方の負誘電率部材が金属であることを特徴とする請求項1又は2に記載の円二色性素子。
  4. 前記1/4波長板及び前記異方的透過板の両方の電磁波透過部材が、前記一の平面波の透過率が70%以上の材料であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の円二色性素子。
  5. 前記異方的透過板の前記1/4波長板の反対側の面に別の1/4波長板が積層されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の円二色性素子。
  6. 前記1/4波長板及び前記別の1/4波長板の先進軸が平行となるように、前記別の1/4波長板が積層されていることを特徴とする請求項に記載の円二色性素子。
  7. 前記1/4波長板及び前記別の1/4波長板の先進軸が直交するように、前記別の1/4波長板が積層されていることを特徴とする請求項に記載の円二色性素子。
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