JP5741914B2 - 液晶高分子成形体 - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、特定比率の液晶ポリエステルと、特定比率のホウ酸アルミニウムウィスカーとからなる液晶ポリエステル樹脂組成物が、液晶ポリエステルの異方性を低減し、成形体のウエルド部の強度を向上させることが開示されている。
本発明は、球形フィラーを含有する液晶高分子組成物を射出成形して得られた、開口部を有する液晶高分子成形体であって、前記開口部から外側へ向けて延びる、射出成形で生じたウエルド部を有し、前記ウエルド部は、前記開口部における厚みが1mm以下であり、且つ前記成形体表面に沿って、前記厚みの2倍以上の長さを有し、前記液晶高分子は、流動開始温度が280〜380℃の液晶ポリエステルであり、前記液晶高分子組成物の球形フィラーの含有量が25〜50質量%であり、前記球形フィラーの平均粒径が10〜75μmであることを特徴とする液晶高分子成形体を提供する。
本発明の液晶高分子成形体においては、前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位を30モル%以上有することが好ましい。
本発明の液晶高分子成形体においては、一回の射出成形において、射出速度の最大値を、射出開始から前記最大値に到達するまでの時間で除することにより定義される射出加速度を、1000〜25000mm/sec2とし、且つ金型入り口における射出圧力の最大値を5〜150MPaとして、射出成形して得られたことが好ましい。
本発明の液晶高分子成形体においては、射出時の前記液晶高分子組成物の温度を、[前記液晶高分子組成物の流動開始温度+20℃]以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度+80℃]以下として、射出成形して得られたことが好ましい。
本発明の液晶高分子成形体においては、射出成形時の金型の温度を、80℃以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−100℃]以下として、射出成形して得られたことが好ましい。
本発明の液晶高分子成形体においては、コンパクトカメラモジュール用の部品であることが好ましい。
本発明の液晶高分子成形体(以下、単に成形体ということがある。)は、球形フィラーを含有する液晶高分子組成物を射出成形して得られた、開口部を有する液晶高分子成形体であって、前記開口部から外側へ向けて延びる、射出成形で生じたウエルド部を有し、前記ウエルド部は、前記開口部における厚みが2.5mm以下であり、且つ前記成形体表面に沿って、前記厚みの2倍以上の長さを有することを特徴とする。
成形体の開口部は、これを形成するための構造物が内部に設けられた金型を使用して、一方(上流側)から他方(下流側)へ向けて液晶高分子組成物の溶融体を圧入させることで形成される。圧入された液晶高分子組成物は、前記構造物に当たって二手に分かれ、二つの流体となって金型内を流動し、前記構造物を越えてから、これら二つの流体が合流して、液晶高分子組成物が前記構造物を取り囲む。そして、金型から取り出された成形体は、前記構造物が存在していた部位に開口部を有するものとなる。この時、金型内で二つの流体が合流した部位は融着により一体化しており、成形体においてウエルド部となる。したがって、ウエルド部は、開口部の下流側の部位から、最下流側(すなわち、外側)へ向けて延びる。
ここに示す成形体1は、薄板状であり、開口面が円形状の開口部11を有する。開口された表面1a及び裏面1bの外形は四角形状であり、開口部11は、成形体1と同心状に設けられている。
成形体1は、金型(図示略)内の図1中の矢印で示される方向に液晶高分子組成物の溶融体が圧入され、金型内で液晶高分子組成物の流体が上流側から下流側へ向けて流動して充填され、成形されたものである。
なお、T1及びZは、ここでは互いに同じとなっているが、異なっていてもよい。
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar2及びAr3は、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar1、Ar2及びAr3中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(式中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性、耐熱性、強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
なお、液晶ポリエステルに代えて、その他の液晶高分子、又は液晶高分子組成物を用いれば、同様にこれらの流動開始温度も測定できる。
球形フィラーは、その形状を考慮すると、繊維状フィラー、板状フィラー、短冊状フィラー等のその他のフィラーよりも、成形体におけるウエルド部の強度を向上させる効果は小さいのではないかと推測されたが、本発明においては全く意外にも、強度を向上させる効果が最も高い。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
充填材の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
添加剤の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
液晶高分子以外の樹脂の含有量は、液晶高分子100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
前記射出加速度を下限値以上とすることで、ウエルド部の割れ抑制効果がより向上する。また、上限値以下とすることで、射出成形機として特殊なものが不要となり、汎用性が向上する。
射出圧力を下限値以上とすることで、ウエルド部の割れ抑制効果がより向上する。また、上限値以下とすることで、成形体におけるバリの発生が抑制され、さらに、金型からの成形体の離型が容易になるため、離型時における成形体の変形に伴う、ウエルド部の割れが抑制される。
前記温度を下限値以上とすることで、得られる成形体の表面の荒れが抑制されて表面性がより向上する。さらに、ウエルド部の割れ抑制効果がより向上する。また、上限値以下とすることで、成形機内で滞留する液晶高分子の分解が抑制され、成形体の表面性がより向上する。さらに、成形後の金型からの成形体の離型時に、ノズルからの溶融樹脂の流出が抑制されて、成形体の生産性がより向上する。
ウエルド部の割れ抑制効果と成形性がより向上する点から、射出時の液晶高分子組成物の温度は、[液晶高分子組成物の流動開始温度+30℃]以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度+60℃]以下とすることがより好ましい。
また、液晶高分子組成物を射出成形する時は、金型の温度の上限値は、液晶高分子組成物の分解を防止するために、液晶高分子組成物の種類に応じて適宜調整することが好ましく、[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−50℃]とすることが好ましい。このようにすることで、成形後の金型の冷却時間を短縮できて生産性が向上する。さらに、金型からの成形体の離型が容易となり、成形体の変形が抑制される。さらに、金型同士の噛み合いが向上するので、金型開閉時における成形体の破損が抑制される。
そして、上記効果がより顕著に得られることから、金型の温度は、80℃以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−100℃]以下とすることが好ましく、1000℃以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−100℃]以下とすることがより好ましく、130℃以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−100℃]以下とすることがさらに好ましい。
上記方法により実用的な射出成形条件を決定した後は、金型を、目的とする成形体を得るためのものに変更して、成形すればよい。
なお、ここでは、標準成形体を用いた方法について説明したが、目的とする成形体でウエルド部の強度測定と成形体の表面性評価が可能であれば、この成形体を用いて、実用的な射出成形条件を決定すればよい。
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル又は液晶ポリエステル組成物約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステル又は液晶ポリエステル組成物を溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.194gを入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで30分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で1時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、261℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(LCP1)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。
[製造例2]
製造例1で得られた液晶ポリエステル(LCP1)、及び下記フィラーを、表1に示す組成で混合し、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM−30)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、液晶ポリエステル組成物のペレットを得た。得られたペレットの流動開始温度(FT:フロー温度)の測定結果を表1に示す。
ガラスビーズ(GB):ポッターズバロティーニ社製、EGB731−PN(メーカー公表サイズ:中心粒径20μm)
ミルドガラスファイバー(mGF):セントラル硝子株式会社製、ミルドファイバー・ガラスパウダー EFH75−01(メーカー公表サイズ:繊維径10μmφ×繊維長75μm)
チョップドガラスファイバー(cGF):オーウェンス・コーニング社製、グラスロンチョップドストランド CS03 JA PX−1(メーカー公表サイズ:繊維径10μmφ×繊維長3mm)
タルク(Talc):日本タルク株式会社製、タルクX−50(板状充填剤、中心粒径:14.5μm)
ウィスカー:ホウ酸アルミニウムウィスカー、四国化成工業株式会社製、アルボレックスG
なお、中心粒径とは、メジアン径D50のことであり、粒径を2極化した際に、それぞれが等量となる数値のことである。
[実施例1〜5、比較例1〜4]
上記で得られた液晶ポリエステル組成物のペレットを120℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業株式会社製UH−1000型射出成形機を用いて、表1に示す条件で、図1に示す液晶ポリエステル成形体(ウエルド部評価用試験片)を製造した。なお、成形体は、図1において、X及びYが64mm、Z及びT1が0.5mm、開口部の直径が3mmであるものとした。なお、いずれの成形体も、L1≧3T1の条件を満たしていた。またこの時、波形モニターで、射出速度の最大値、Attack時間、およびショック圧(金型入り口における射出圧力の最大値)を計測し、射出加速度を求めた。そして、得られた成形体について、下記方法でその表面性を評価し、ウエルド部の割れの有無を確認した。結果を表2に示す。
成形体の表面を目視観察して、荒れ及びフローマークの有無について、評価した。
(ウエルド部の割れの有無の確認)
射出成形後14日目の成形体のウエルド部を、マイクロスコープを用いて倍率20倍で観察した。
日精樹脂工業株式会社製PS40E5ASE型射出成形機を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、成形体を製造し、この時の射出速度の最大値、Attack時間、およびショック圧を計測し、射出加速度を求めた。また、得られた成形体の表面性を評価し、ウエルド部の割れの有無を確認した。結果を表2に示す。なお、波形モニターとしては、株式会社ニレコ製MOBAC M220−16を用いた。また、この射出成形機では、射出速度設定を「mm/sec(ミリメートル/秒)」単位では表せないため、表1において射出速度を%表示とした(「*」参照)。
Claims (6)
- 球形フィラーを含有する液晶高分子組成物を射出成形して得られた、開口部を有する液晶高分子成形体であって、
前記開口部から外側へ向けて延びる、射出成形で生じたウエルド部を有し、
前記ウエルド部は、前記開口部における厚みが1mm以下であり、且つ前記成形体表面に沿って、前記厚みの2倍以上の長さを有し、
前記液晶高分子は、流動開始温度が280〜380℃の液晶ポリエステルであり、
前記液晶高分子組成物の球形フィラーの含有量が25〜50質量%であり、
前記球形フィラーの平均粒径が10〜75μmであることを特徴とする液晶高分子成形体。 - 前記液晶ポリエステルが、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位を30モル%以上有することを特徴とする請求項1に記載の液晶高分子成形体。
- 一回の射出成形において、射出速度の最大値を、射出開始から前記最大値に到達するまでの時間で除することにより定義される射出加速度を、1000〜25000mm/sec2とし、且つ金型入り口における射出圧力の最大値を5〜150MPaとして、射出成形して得られたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶高分子成形体。
- 射出時の前記液晶高分子組成物の温度を、[前記液晶高分子組成物の流動開始温度+20℃]以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度+80℃]以下として、射出成形して得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶高分子成形体。
- 射出成形時の金型の温度を、80℃以上で、且つ[前記液晶高分子組成物の流動開始温度−100℃]以下として、射出成形して得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶高分子成形体。
- コンパクトカメラモジュール用の部品であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶高分子成形体。
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