JP5741443B2 - ルテニウム膜形成用材料及びルテニウム膜形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ルテニウム膜形成用材料及びルテニウム膜形成方法に関する。
DRAM(Dynamic Random Access Memory)に代表される半導体デバイスは、その高集積化と微細化に伴い、デバイスを構成する各金属膜及び金属酸化膜の材料変更が必要となっている。
なかでも、半導体デバイス内の多層配線用途での導電性金属膜の改良が要求されており、新たに導電性の高い銅配線への変換が進んでいる。この銅配線の導電性を高める目的で、多層配線の層間絶縁膜材料には低誘電率材料(Low−k材料)が用いられている。しかし、この低誘電率材料中に含まれている酸素原子が銅配線に容易に取り込まれ、その導電性を低下させるといった問題が生じている。その為、低誘電率材料からの酸素の移動を防ぐ目的で、低誘電率材料と銅配線の間にバリア膜を形成する技術が検討されている。このバリア膜の用途に用いられる、誘電体層からの酸素を取り込みにくい材料およびドライエッチングにより容易に加工できる材料として、金属ルテニウム膜が注目されている。さらには上記銅配線をメッキ法にて埋め込むダマシン成膜法において、上記バリア膜とメッキ成長膜の双方の役割を同時に満たす目的から、金属ルテニウムが注目されている。
また、半導体デバイスのキャパシタにおいても、アルミナ、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、チタン酸バリウム・ストロンチウム(BST)のような高誘電率材料の電極材料として、金属ルテニウム膜はその高い耐酸化性と高い導電性から注目されている。
上記の金属ルテニウム膜の形成には、従来、スパッタリング法が多く用いられてきたが、近年、構造の微細化や、薄膜化や、量産性の向上への対応として、化学気相成長法が検討されている。
しかし、一般に、化学気相成長法で形成した金属膜は、微結晶の集合状態が疎であるなど、表面モルフォロジーが悪く、上記モルフォロジーの問題を解決する手段として、ビス(ジピバロイルメタナート)ルテニウムやルテノセン、ビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウムを化学気相成長材料に用いることが検討されている(特許文献1〜3参照。)。
さらに、これらの化学気相成長材料を製造工程で用いる場合、その製造条件の安定の目的から、材料の良好な保存安定性が要求される。しかし、既存のルテノセンやビス(アルキルシクロペンタジエニル)ルテニウム等は、空気の混入などにより短時間で材料の酸化及びそれによる性能劣化が生じ、その結果、成膜したルテニウムの導電性が低下してしまい、その保存安定性と空気中での安定な取扱い性に問題がある。
特開平6−283438号公報 特開平11−35589号公報 特開2002−114795号公報
本発明は上記問題に鑑みなされたもので、その目的は保存安定性に優れ、なおかつ残留不純物の少ない良質なルテニウム膜を得ることができるルテニウム膜形成用材料及び該材料を用いてルテニウム膜を形成する簡易な方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、下記式(1)で表される化合物を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 下記の一般式(1)で表される化合物を含有するルテニウム膜形成用材料。
Figure 0005741443
(一般式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基、Rは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基である。)
[2] 化学気相成長法用である、前記[1]に記載のルテニウム膜形成用材料。
[3] 前記[1]または[2]に記載のルテニウム膜形成用材料を用いる、ルテニウム膜形成方法。
[4] 前記[2]に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に供給するルテニウム膜形成用材料供給工程と、該ルテニウム膜形成用材料を加熱分解して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程とを含む、ルテニウム膜形成方法。
[5] 上記膜形成工程における加熱分解の温度が100℃〜800℃である、前記[4]に記載のルテニウム膜形成方法。
[6] 上記膜形成工程における加熱分解を不活性気体または還元性気体中で行う、前記[4]または[5]に記載のルテニウム膜形成方法。
[7] 前記[1]に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程を含む、ルテニウム膜形成方法。
本発明のルテニウム膜形成用材料によると、長期間の保存安定性に優れ、しかも残留不純物量が少ない良質なルテニウム膜を得ることができる。また、本発明のルテニウム膜形成用材料を用いて簡易な方法でルテニウム膜を形成することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、下記の一般式(1)で表される化合物を含有する。
Figure 0005741443
一般式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基である。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
また、炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜7の炭化水素基が好ましい。
その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基を挙げることができる。
また、炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜6のハロゲン化炭化水素基が好ましい。その具体例としては、例えばクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペンタフルオロフェニル基を挙げることができる。
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基である。
炭素数1〜12の2価の炭化水素基としては、炭素数1〜12の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記炭素数1〜12の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1〜8の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましい。
上記炭素数1〜12の2価の直鎖または分岐鎖の炭化水素基における、炭化水素基の例としては、メチレン基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。
上記アルキレン基の好適な具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等が挙げられる。
上記アルケニレン基の好適な具体例としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等が挙げられる。
上記アルキニレン基の好適な具体例としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基等が挙げられる。
前記炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜8の2価の脂環式炭化水素基が好ましい。
炭素数3〜12の2価の脂環式炭化水素基における、「脂環式炭化水素基」の具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基等が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子上でもよい。
前記炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等が挙げられる。
また、前記「炭素数1〜12の2価の炭化水素基」の好適な具体例としては、アルケニレン基、アリーレン基が挙げられる。中でも、ビニレン基、フェニレン基が特に好ましい。
また、Rで示す炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、上述の炭素数1〜12の2価の炭化水素基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換された基が挙げられる。
置換するハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。中でも、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物の合成法は、例えば、ドデカカルボニル三ルテニウムと下記の一般式(2)で表わされる化合物とを反応させて得ることができる。
Figure 0005741443
一般式(2)中、R、R、R、R及びRは、上記一般式(1)中と同義である。
また、上記一般式(2)で表わされる化合物は、下記の一般式(3)で表わされる化合物と、下記の一般式(4)で表わされる化合物とを反応させて得ることができる。
Figure 0005741443
一般式(3)中、Xはハロゲン原子であり、Rは上記一般式(1)中と同義である。
で表されるハロゲン原子の例としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。中でも、反応性及びコストの観点から臭素が好ましい。
Figure 0005741443
一般式(4)中、X2はハロゲン原子であり、R、Rは上記一般式(1)中と同義である。
2で表されるハロゲン原子の例としては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。中でも、反応性及びコストの観点から塩素が好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール、1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニルを挙げることができる。
これらの化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて、ルテニウム膜形成用材料として使用することができる。1種類の化合物を単独でルテニウム膜形成用材料として使用することが好ましい。
また、本発明のルテニウム膜形成用材料は、溶媒に溶解させて用いることもできる。該溶媒は、上記一般式(1)で表される化合物を溶解するものであれば特に限定されない。該溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒等を挙げることができる。
上記炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、シクロオクタン、デカン、シクロデカン、ジシクロペンタジエンの水素化物、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン等を挙げることができる。
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジメチルジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ブロモベンゼン、フルオロベンゼン等を挙げることができる。
上記エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、ブチルグリシジルエーテル、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、2−メチルフェントール、3−メチルフェントール、4−メチルフェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール、1,4−ジメトキシベンゼン等を挙げることができる。
上記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、アリルアルコール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ヘプタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、1.2-ブタンジオール、1.3-ブタンジオール、プロピレングリコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、3−クロロ−1−プロパノール等を挙げることができる。
上記エステル溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、クロロ酢酸エチル、アセト酢酸エチル、クロロ炭酸メチルエステル、クロロ炭酸エチルエステル等を挙げることができる。
上記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジエチルケトン、メチルヘキシルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
これら溶媒は単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
これらのうち、溶解性と、得られる組成物溶液の安定性の点から、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、またはこれらの溶媒の中から選ばれる2種以上からなる混合溶媒を用いるのが好ましい。
炭化水素溶媒の好ましい例としては、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。エーテル溶媒の好ましい例としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、フェントール、ベラトロール、2−エトキシアニソール又は1,4−ジメトキシベンゼンが挙げられる。エステル溶媒の好ましい例としては、酢酸エチルが挙げられる。ケトン溶媒の好ましい例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンが挙げられる。
本発明のルテニウム膜形成用材料における溶媒を除いた成分の合計質量が組成物の総質量に占める割合(以下、「固形分濃度」という。)は、好ましくは0.1〜70質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、上記式(1)で表わされる化合物以外に、その他のルテニウム化合物を含むことができる。その他のルテニウム化合物としては、ルテニウムドデカカルボニル、(2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,3−ブタジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,3−シクロヘキサジエン)トリカルボニルルテニウム、(1,4−シクロヘキサジエン)トリカルボニルルテニウム、及び(1,5−シクロオクタジエン)トリカルボニルルテニウムなどが挙げられる。
本発明のルテニウム膜形成用材料の溶媒を除いた成分の合計量中の上記一般式(1)で表される化合物の割合は、好ましくは30〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%である。
本発明のルテニウム膜形成方法は、上記のルテニウム膜形成用材料を使用するものである。
本発明のルテニウム膜形成方法は、上記のルテニウム膜形成用材料を使用する他は、それ自体公知の方法を使用できるが、例えば次の(a)または(b)の方法で実施することができる。
(a)化学気相成長法による方法
この方法は、本発明のルテニウム膜形成用材料を基体(例えば、基板)上に供給し、次いで、基体上に供給されたルテニウム膜形成用材料を加熱分解させて、基体上にルテニウム膜を形成させる方法である。
(b)塗布による方法
この方法は、本発明のルテニウム膜形成用材料を、基体(例えば、基板)上に塗布し、次いで、基体上に塗布されたルテニウム膜形成用材料を熱処理及び/又は光処理して、基体上にルテニウム膜を形成させる方法である。
本発明のルテニウム膜形成方法において使用できる基体の材料としては、例えば、ガラス、シリコン半導体、石英、金属、金属酸化物、合成樹脂等の適宜の材料を使用できるが、ルテニウム化合物を熱分解する工程の温度に耐えられる材料であることが好ましい。
上記基体としては、例えば、Ta、Ti、Zr、Hf、Pt、Ir、Cu、Au、Al等の金属膜、TaN、TiN、ZrN、AlN等の金属窒化膜、及び、絶縁膜が挙げられる。
上記絶縁膜としては、例えば、熱酸化膜、PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱CVD法により得られる酸化シリコン膜、ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、FSGと呼ばれる絶縁膜、誘電率の低い絶縁膜等が挙げられる。
上記熱酸化膜は、高温にしたシリコンを酸化性雰囲気に晒し、シリコンと酸素、あるいはシリコンと水分を化学反応させることにより形成されたものである。
上記PETEOS膜は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料として、促進条件としてプラズマを利用して、化学気相成長法で形成されたものである。
上記HDP膜はテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を原料として、促進条件として高密度プラズマを利用して、化学気相成長法で形成されたものである。
上記熱CVD法により得られる酸化シリコン膜は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により形成されたものである。
上記ホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)は、常圧CVD法(AP−CVD法)又は減圧CVD法(LP−CVD法)により得ることができる。
上記FSGと呼ばれる絶縁膜は、促進条件として高密度プラズマを利用して、化学気相成長法で成膜することができる。
上記誘電率の低い絶縁膜としては、例えば有機SOG、水素含有SOG、有機高分子からなる低誘電率材料、SiOF系低誘電率材料、またはSiOC系低誘電率材料等からなる絶縁膜を挙げることができる。ここで、「SOG」とは”Spin On Glass”の略であり、基体上に前駆体を塗布し、次いで熱処理等により成膜される絶縁膜の材料を意味する。
上記有機SOGは、例えばメチル基等の有機基を含有するケイ素酸化物から構成されるものである。有機SOGからなる絶縁膜は、基体上に例えばテトラエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより得ることができる。
上記水素含有SOGは、ケイ素−水素結合を含有するケイ素酸化物から構成されるものである。水素含有SOGからなる絶縁膜は、基体上に例えばトリエトキシシラン等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより得ることができる。
上記有機高分子からなる低誘電率材料としては、例えばポリアリーレン、ポリイミド、ポリベンゾシクロブテン、ポリフッ化エチレン等を主成分とする低誘電率材料を挙げることができる。該材料からなる絶縁膜は、基体上に例えばポリアリーレン等を含有する前駆体を塗布し、次いで熱処理等をすることにより得ることができる。
上記SiOF系低誘電率材料は、フッ素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものである。該材料からなる絶縁膜は、例えば化学気相蒸着法により得た酸化ケイ素からなる膜にフッ素を添加(ドープ)することにより得ることができる。
上記SiOC系低誘電率材料は、炭素原子を含有するケイ素酸化物から構成されるものである。該材料からなる絶縁膜は、例えば四塩化ケイ素と一酸化炭素との混合物を原料とする化学気相蒸着法により得ることができる。
上記したもののうち、有機SOG、水素含有SOG及び有機高分子からなる低誘電率材料は、形成された膜中に微細な空孔(ポア)を有するものであってもよい。
ルテニウム膜が形成される基体はトレンチを有していてもよい。トレンチは、上記のような材料からなる基体上に公知の方法、例えば、フォトリソグラフィー等によって形成される。
上記トレンチは、どのような形状、大きさのものであってもよいが、トレンチの開口幅、すなわち表面開口部の最小距離が、300nm以下であり、かつトレンチのアスペクト比、すなわちトレンチの深さをトレンチの表面開口部の最小距離で除した値が、3以上である場合に、本発明の有利な効果が最大限に発揮される。上記トレンチの開口幅は、好ましくは10〜250nm、より好ましくは30〜200nmである。上記トレンチのアスペクト比は、好ましくは3〜40、より好ましくは5〜25である。
(a)化学気相成長法による方法
この方法の一例は、(1)本発明のルテニウム膜形成用材料を減圧及び加熱下に気化または蒸発させて、その気化物または蒸発物を基体(例えば、基板)上に堆積させる工程と、(2)上記工程(1)の後、得られた堆積物を加熱して熱分解させて、基体上にルテニウム膜を形成させる工程、を含むものである。
なお、上記工程(1)において、本発明のルテニウム膜形成用材料の分解を伴ったとしても、本発明の効果を弱めるものではない。
上記工程(1)において、ルテニウム化合物を気化または蒸発させる温度は、好ましくは100〜350℃、更に好ましくは120〜300℃、特に好ましくは150〜250℃である。
上記工程(2)において、ルテニウム化合物を加熱分解させる温度は、好ましくは100〜800℃、より好ましくは100〜600℃、さらに好ましくは180〜450℃、さらに好ましくは200〜420℃、特に好ましくは250〜410℃である。
本発明の化学的気相成長方法は、不活性気体の存在下もしくは不存在下、又は、還元性気体の存在下もしくは不存在下のいずれの条件下でも実施することができる。また、不活性気体および還元性気体の両者が存在する条件で実施してもよい。ここで不活性気体としては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。また、還元性気体としては、例えば水素ガス、アンモニアガス等を挙げることができる。また本発明の化学的気相成長方法は、酸化性気体の共存下で実施することも可能である。ここで、酸化性気体としては、例えば酸素、一酸化炭素、亜酸化窒素等を挙げることができる。
特に、成膜したルテニウム膜中の不純物の量を低減させる目的から、これら還元性気体を共存させることが好ましい。還元性気体を共存させる場合、雰囲気中の還元性気体の割合は、1〜100モル%であることが好ましく、3〜100モル%であることがより好ましい。
雰囲気中の酸化性気体の割合は、10モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが特に好ましい。
本発明の化学的気相成長方法は、加圧下、常圧下および減圧下のいずれの条件でも実施することができる。中でも、常圧下又は減圧下で実施することが好ましく、15,000Pa以下の圧力下で実施することがさらに好ましい。
(b)塗布による方法
この方法は、基体上に上記ルテニウム膜形成用材料を塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、基体上で上記一般式(1)で表わされる化合物をルテニウム膜に変換することにより、ルテニウム膜を形成するものである。
上記のような基体上に、上述のルテニウム膜形成用材料を塗布するに際しては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スプレー法、液滴吐出法等の適宜の方法を用いることができる。これらの塗布工程では、基体上の形状、大きさ等により、基体の隅々にまでルテニウム膜形成用材料が行き亘るような塗布条件が採用される。例えば塗布法としてスピンコート法を採用する場合、スピナーの回転数は、好ましくは300〜2,500rpm、より好ましくは500〜2,000rpmである。
上記塗布工程の後、塗布したルテニウム膜形成用材料中に含有される溶媒等の低沸点成分を除去するために、加熱処理を行ってもよい。加熱する温度及び時間は、使用する溶媒の種類、沸点(蒸気圧)等により異なるが、好ましくは、100〜350℃で5〜90分間、より好ましくは、100〜250℃で10〜60分間である。このとき、系全体を減圧にすることで、溶媒の除去をより低温で行うこともできる。
次いで、上記の如くして形成された塗膜を、熱処理及び/又は光処理することによって、基体上にルテニウム膜が形成される。
上記熱処理の温度は、好ましくは100〜800℃であり、より好ましくは150〜600℃であり、更に好ましくは300〜500℃である。熱処理時間は、好ましくは30秒〜120分であり、より好ましくは1〜90分、更に好ましくは10〜60分である。
上記光照射に用いる光源としては、例えば水銀ランプ、重水素ランプ、希ガスの放電光、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、希ガスハロゲンエキシマレーザー等を挙げることができる。上記水銀ランプとしては、例えば低圧水銀ランプ又は高圧水銀ランプを挙げることができる。上記希ガスの放電光に用いる希ガスとしては、例えばアルゴン、クリプトン、キセノン等を挙げることができる。上記希ガスハロゲンエキシマレーザーに使用する希ガスハロゲンとしては、例えばXeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArCl等を挙げることができる。
これらの光源の出力は、好ましくは10〜5,000Wであり、より好ましくは100〜1,000Wである。これらの光源の波長は、特に限定されないが、好ましくは170nm〜600nmである。また、形成されるルテニウム膜の膜質の点で、レーザー光の使用が特に好ましい。また、より良好なルテニウム膜を形成する目的で、酸化性ガス雰囲気下でプラズマ酸化させることもできる。このときのプラズマ酸化の酸化条件としては、例えばRF電力を20〜100Wとし、導入ガスとして酸素ガスを90〜100%とし残りをアルゴンガスとし、導入ガスの導入圧を0.05〜0.2Torrとし、プラズマ酸化時間を10〜240秒とすることができる。
この塗布工程及び熱処理及び/又は光処理工程中の雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスからなるのが好ましい。さらに必要に応じて水素、アンモニアなどの還元性ガスを混入してもよい。
上記熱処理及び光処理(光照射)は、どちらか一方のみを行ってもよく、熱処理と光処理の双方を行ってもよい。熱処理と光処理の双方を行う場合には、その順番の前後は問わず、熱処理と光処理を同時に行ってもよい。これらのうち、熱処理のみを行うか、熱処理と光処理の双方を行うことが好ましい。また、より良好なルテニウム膜を形成する目的で、上記熱処理及び/又は光処理工程とは別にプラズマ酸化を実施してもよい。
本発明のルテニウム膜形成用材料は、空気中の保存に対して酸化等の劣化が生じにくく、保存安定性に優れる。例えば、本発明のルテニウム膜形成用材料を市販の実験用の密閉容器に入れて冷暗所に保持する場合、特に容器内の雰囲気を不活性雰囲気にしなくても、15日間程度、該材料の劣化は生じない。
上記の如くして得られたルテニウム膜は、純度および電気伝導性が高く、例えば、配線電極のバリア膜、メッキ成長膜、キャパシタ電極等に好適に使用することができる。
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[合成例1] 1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの合成
窒素置換した3つ口フラスコにマグネシウム5.10g、クロロジメチルシラン19.86g、テトラヒドロフラン15mLを入れ、1,2−ジブロモベンゼン12mLとテトラヒドロフラン100mLの溶液を1時間掛けてゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。溶液を室温まで冷却した後に濾過及び蒸留(10Torr,93℃)を行い、無色透明液体の1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン6.73gを得た。この1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン2.91gとドデカカルボニル三ルテニウム(0)3.20g、ヘキサン80mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、9時間加熱還流を行った。還流終了後、濾過を行い、減圧下で濃縮及び乾燥し、下記式(5)で表される1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール6.04gを黒赤褐色液体として得た。収率は35質量%であった。
[合成例2] 1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの合成
窒素置換した3つ口フラスコにマグネシウム5.10g、トリクロロシラン28.44g、テトラヒドロフラン15mLを入れ、1,2−ジブロモベンゼン12mLとテトラヒドロフラン100mLの溶液を1時間掛けてゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。溶液を室温まで冷却した後に濾過及び蒸留(10Torr,93℃)を行い、無色透明液体の1,2−ビス(ジクロロシリル)ベンゼン11.32gを得た。この1,2−ビス(ジクロロシリル)ベンゼン4.14gとドデカカルボニル三ルテニウム(0)3.20g、ヘキサン80mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、9時間加熱還流を行った。還流終了後、濾過を行い、減圧下で濃縮及び乾燥し、下記式(6)で表される1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール7.37gを黒赤褐色液体として得た。収率は41質量%であった。
[合成例3] 1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの合成
窒素置換した3つ口フラスコにマグネシウム5.10g、クロロビス(トリフルオロメチル)シラン42.53g、テトラヒドロフラン15mLを入れ、1,2−ジブロモベンゼン12mLとテトラヒドロフラン100mLの溶液を1時間掛けてゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。溶液を室温まで冷却した後に濾過及び蒸留(10Torr,93℃)を行い、無色透明液体の1,2−ビス(ビストリフルオロメチルシリル)ベンゼン19.28gを得た。この1,2−ビス(ビストリフルオロメチルシリル)ベンゼン6.15gとドデカカルボニル三ルテニウム(0)3.20g、ヘキサン80mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、9時間加熱還流を行った。還流終了後、濾過を行い、減圧下で濃縮及び乾燥し、下記式(7)で表される1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール9.38gを黒赤色液体として得た。収率は47質量%であった。
[合成例4] 1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンの合成
窒素置換した3つ口フラスコにマグネシウム5.10g、クロロジメチルシラン19.86g、テトラヒドロフラン15mLを入れ、1,2−ジブロモエチレン18.59gとテトラヒドロフラン100mLの溶液を1時間掛けてゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間加熱還流した。溶液を室温まで冷却した後に濾過及び蒸留(10Torr,93℃)を行い、無色透明液体の1,2−ビス(ジメチルシリル)エチレン4.48gを得た。
この1,2−ビス(ジメチルシリル)エチレン2.17gとドデカカルボニル三ルテニウム(0)3.20g、ヘキサン80mLを窒素置換した3つ口フラスコに入れ、9時間加熱還流を行った。還流終了後、濾過を行い、減圧下で濃縮及び乾燥し、下記式(8)で表される1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレン5.39gを黒黄褐色液体として得た。収率は31質量%であった。
Figure 0005741443
以下の実施例において、比抵抗は、ナプソン社製の探針抵抗率測定器(形式:RT−80/RG−80)により測定した。膜厚及び膜密度は、フィリップス社製の斜入射X線分析装置(形式:X’PertMRD)により測定した。ESCAスペクトルは、日本電子社製の装置(形式:JPS80)にて測定した。また密着性の評価は、JIS K−5400に準拠して碁盤目テープ法によった。
[実施例1]
(1)ルテニウム膜の形成
合成例1にて得られた1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gを窒素ガス中で石英製のボート型容器に計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流方向側の近傍に熱酸化膜付きシリコンウエハを置き、室温下で反応容器内に窒素ガスを300mL/分の流量にて20分間流した。その後、反応容器中に窒素ガスを100mL/分の流量で流し、さらに系内を13Paにし、反応容器を200℃で15分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガスを200ml/分の流量で流し、反応容器の温度を400℃に上昇させ、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は400Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜について、4端子法で抵抗率を測定したところ、82μΩcmであった。この膜の膜密度は11.8g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜について、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。結果を表1に示す。
なお、表1中、基板との密着性が良好な場合を「○」、不良の場合を「×」とした。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、空気に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1gを50mL容量の石英製三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後、常圧下で空気を3L/分の流量で3時間流通させた。外観上、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は無かった。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素ガスで容器内を置換してから、上記(1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は400Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜について、4端子法で抵抗率を測定したところ、82μΩcmであった。この膜の膜密度は11.8g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜について、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られず、空気曝露加熱テストによるルテニウム金属膜質の劣化は観察されなかった。結果を表1に示す。
[実施例2]
(1)ルテニウム膜の形成
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gの代わりに合成例2にて得られた1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gを用いる以外は実施例1と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、空気に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1gを50mL容量の石英製の三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後、常圧下で空気を3L/分の流量で3時間流通させた。外観上、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は無かった。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素ガスで容器内を置換してから、上記(1)と同様の要領で成膜を実施したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
(1)ルテニウム膜の形成
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gの代わりに合成例3にて得られた1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gを用いる以外は実施例1と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、空気に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1gを50mL容量の石英製の三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後、常圧下で空気を3L/分の流量で3時間流通させた。外観上、1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は無かった。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素ガスで容器内を置換してから、上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
(1)ルテニウム膜の形成
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール0.05gの代わりに合成例4にて得られた1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレン0.05gを用いる以外は実施例1と同様にして、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、空気に対する劣化性検討を加熱加速テストにて実施した。1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレン1gを50mL容量の石英製三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後常圧下で空気を3L/分の流量で3時間流通させた。外観上、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンの変化は無かった。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素で容器内を置換してから、上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
(1)ルテニウム膜の形成
実験は乾燥窒素雰囲気でコントロールされたグローブボックス内にて実施した。合成例1にて得られた1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1.00gに、乾燥したトルエンを加えて、全量を2.00gとして、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを33質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を調製した。
シリコン基板をスピンコーターに装着し、上記方法により調製した1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを33質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を2mL滴下し、回転数500rpmで10秒間スピンを行なった。この基板を150℃のホットプレート上で10分間加熱した。その後、更に350℃で30分間加熱したところ、基板表面は、金属光沢を有する膜で覆われた。この膜の膜厚は143Åであった。この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが分かった。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、熱に対する劣化性試験を実施した。乾燥窒素雰囲気の室温下のグローブボックス内にて、100mL容量の耐圧ステンレス製容器内に1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを1g収容して密栓した。その後、恒温槽で容器全体を80℃に加熱し、1ヶ月保管した。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素ガスで容器内を置換してから開栓したところ、外観上、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は観測されなかった。更に、上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は140Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが分かった。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
(1)ルテニウム膜の形成
合成例2にて得られた1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1.00gに、乾燥したトルエンを加えて、全量を4.00gとして、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを25質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を調製した。
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを33質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物の代わりに上記方法により調製した1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを25質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を用いた以外は実施例5の(1)と同様にして、膜を形成した。その結果、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの代わりに合成例2にて得られた1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを用いた以外は実施例5の(2)と同様にして、熱に対する劣化試験を実施した。外観上、1,1,3,3−テトラクロロ−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は観測されなかった。更に、上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
(1)ルテニウム膜の形成
合成例3にて得られた1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロール1.00gに、乾燥したエチレングリコールジエチルエーテルを加えて、全量を5.00gとして、1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを20質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を調製した。
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを33質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物の代わりに上記方法により調製した1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを20質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を用いた以外は実施例5の(1)と同様にして、膜を形成した。その結果、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの代わりに合成例3にて得られた1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを用いた以外は実施例5の(2)と同様にして、熱に対する劣化試験を実施した。外観上、1,1,3,3−テトラキストリフルオロメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの変化は観測されなかった。上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
(1)ルテニウム膜の形成
合成例4にて得られた1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレン1.00gに、乾燥したn−ブタノールを加えて、全量を2.50gとして、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンを40質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を調製した。
1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールを33質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物の代わりに上記方法により調製した1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンを40質量%含有する金属ルテニウム膜形成用組成物を用いた以外は実施例5の(1)と同様にして、膜を形成した。その結果、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
(2)保存安定性の試験
保存安定性の確認として、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−1,3−ジヒドロ−ベンゾ[d][2,1,3]ルテナジシロールの代わりに合成例4にて得られた1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンを用いた以外は実施例5の(2)と同様にして、熱に対する劣化試験を実施した。外観上、1,1,3,3−テトラメチル−2,2,2,2−テトラカルボニル−2,1,3−ジシラルテノレンの変化は観測されなかった。上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。得られた金属ルテニウムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
(1)ルテニウム膜の形成
市販のビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム0.01gを窒素ガス中で石英製ボート型容器に量計り取り、石英製反応容器にセットした。反応容器内の気流の下流の方向側の近傍に石英基板を置き、室温下で反応容器内に酸素・窒素混合ガス(酸素含量:5体積%)を250mL/分の流量にて60分間流した。その後反応容器中に酸素・窒素混合ガス(酸素含量:5体積%)を20mL/分の流量で流し、さらに系内を110Paにし、反応容器を350℃に30分間加熱した。ボート型容器からミストが発生し、近傍に設置した石英基板に堆積物が見られた。ミストの発生が終了した後、減圧を止め、窒素ガスを系に入れて圧力を戻し、次いで101.3kPaで窒素ガスを200mL/分の流量で流し、そのまま1時間保持したところ、基板上に金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は850Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが判った。このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、25μΩcmであった。また、この膜の膜密度は12.1g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、基板とルテニウム膜との剥離は全く見られなかった。
(2)保存安定性の試験
市販のビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムに対し、実施例1の(2)と同様に空気に対する劣化性検討としての加熱加速テストを実施した。ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム1gを50mL容量の石英製三口フラスコに入れ、容器全体を50℃に加熱し、その後、常圧下で空気を3L/分の流量で3時間流通させた。これにより、本来は薄黄色透明液体状であるビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムの外観は、黄色不透明の液体状に変化した。その後、容器を室温に戻し、乾燥窒素ガスで容器内を置換してから、上記(1)と同様にして成膜したところ、基板上にやや黒ずんだ金属光沢を有する膜が得られた。この膜の膜厚は300Åであった。
この膜のESCAスペクトルを測定したところ、Ru3d軌道に帰属されるピークが280eVと284eVに観察され、他の元素に由来するピークは全く観察されず、金属ルテニウムであることが分かった。また、このルテニウム膜につき、4端子法で抵抗率を測定したところ、78μΩcmと低い導電率しか示さなかった。この膜の膜密度は12.1g/cmであった。ここで形成されたルテニウム膜につき、基板との密着性を碁盤目テープ法によって評価したところ、100個の碁盤目ルテニウム膜のうち80個のルテニウム膜が剥離し、ルテニウム膜質が著しく低下した。このように、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウムは、空気曝露加熱テストにより成膜されたルテニウム金属膜質が劣化した。
Figure 0005741443
表1から、本発明のルテニウム膜形成用材料(実施例1〜8)は、空気中の保存に対して酸化等の劣化が生じにくく、保存安定性に優れていることがわかる。また、本発明のルテニウム膜形成用材料を用いて形成されたルテニウム膜は、基体に対して優れた密着性を有することがわかる。一方、本発明に該当しないルテニウム膜形成用材料(比較例1)は、保存安定性、及び保存後の密着性が劣ることがわかる。

Claims (7)

  1. 下記の一般式(1)で表される化合物を含有するルテニウム膜形成用材料。
    Figure 0005741443
    (一般式(1)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、または炭素数1〜10のハロゲン化炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、または炭素数1〜12の2価のハロゲン化炭化水素基である。)
  2. 化学気相成長法用である、請求項1に記載のルテニウム膜形成用材料。
  3. 請求項1又は2に記載のルテニウム膜形成用材料を用いる、ルテニウム膜形成方法。
  4. 請求項2に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に供給するルテニウム膜形成用材料供給工程と、該ルテニウム膜形成用材料を加熱分解して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程とを含む、ルテニウム膜形成方法。
  5. 上記膜形成工程における加熱分解の温度が100℃〜800℃である、請求項4に記載のルテニウム膜形成方法。
  6. 上記膜形成工程における加熱分解を不活性気体または還元性気体中で行う、請求項4又は5に記載のルテニウム膜形成方法。
  7. 請求項1に記載のルテニウム膜形成用材料を、基体上に塗布し、次いで熱処理及び/又は光処理して、上記基体上にルテニウム膜を形成させる膜形成工程を含む、ルテニウム膜形成方法。
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