JP5740763B2 - 超硬合金 - Google Patents

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Description

本発明は、超硬合金に関するものである。特に、高硬度でありながら、靱性及び強度並びに耐食性に優れる超硬合金に関するものである。
高圧水流加工(ウォータジェット加工)用のノズル、カメラなどに用いられるガラスレンズ用などの金型といった部材の構成材料として、WC(炭化タングステン)粉末(硬質相)とCo(コバルト)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)などの金属粉末(結合相)とを混合した後、焼結した超硬合金が利用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
上記高圧水流加工用のノズルなどの部材では、耐用寿命を改善するため、例えば、耐摩耗性を向上させることが検討されている。耐摩耗性を向上させるには、硬度を高めることが効果的である。硬度を高めるには、WCよりも硬度が低いCo、Niなどの結合相の含有量を低減したり、WCを微細にすることが挙げられる。WCを微細にするには、特許文献1〜3に記載されるように、VC(炭化バナジウム)、Mo2C(炭化モリブデン)、Cr3C2(炭化クロム)といったCr(クロム)炭化物などの粒成長の抑制効果がある金属炭化物を添加することが挙げられる。
特開平05‐230588号公報 特開平09‐025535号公報 特開平04‐348873号公報
昨今、上記ノズルや金型などの構成材料として、高硬度であると共に、靭性及び強度にも優れ、耐摩耗性、耐欠損性(耐チッピング性)、耐食性をバランスよく具える超硬合金が望まれている。しかし、従来の超硬合金は、高硬度、高靭性、高強度、及び耐食性を十分に、かつバランスよく具えているとは言えない。
特許文献1〜3に記載されるように、超硬合金中のWCの微細化のために粒成長の抑制効果がある金属炭化物を原料として添加すると、得られた超硬合金中に上記金属炭化物が残存したり、再析出することで、強度の低下を招く。また、原料の上記金属炭化物自体が粗大であると、原料のWC粉末に均一に混合することが難しく、WCの粒成長の抑制効果にばらつきが生じて、超硬合金中に成長して粗大になったWCが存在したり、超硬合金中に粗大な金属炭化物が存在し易くなる恐れがある。原料のWC粉末、及び上記金属炭化物を十分に混合するために、原料の混合時間を長くすると、上記WC粉末が過剰に粉砕され、焼結中にオストワルド成長によりWCが成長し易くなり、粗大なWCが存在する超硬合金となる恐れがある。局所的に粗大なWCが存在することで、強度の低下を招く。
また、レンズ用金型には、耐摩耗性に優れることに加えて、金型による形成だけで面品位が高いレンズが得られることが望まれる。即ち、金型により形成されたレンズに、別途研磨処理などを施さずそのままの状態で使用可能な程度に表面性状に優れるレンズが形成できる金型が望まれる。このような要望に対応するためには、金型を構成する超硬合金中のWCが微粒でかつ均質であることが望まれる。
特許文献1に記載される硬質合金には、W2Cが存在する。W2Cは、WCよりも粒成長し易いことから、超硬合金中に粗大なW2Cが存在する恐れがある。超硬合金中に粗大な粒子が存在すると、強度や靭性の低下、面品位の低下を招く。
特許文献2に記載される焼結硬質材は、高硬度化を目的として、低硬度な結合相(Co)を非常に少なく添加しているため、強度や靭性が低い。また、結合相が少な過ぎることで、W2Cが析出され易い上に、焼結性が悪いことから緻密化のために1700℃以上といった非常に高温で焼結する必要がある。このような高温で焼結するために析出されたW2Cが成長し易く、上述のように金属炭化物を添加しても粒成長の抑制効果に限界がある。そして、超硬合金中に粗大なW2Cが存在すると、強度や靭性の低下、面品位の低下を招く。従って、この焼結硬質材では、高硬度、高靭性、及び高強度の両立ができない。
特許文献3に記載される焼結体は、耐アブレシブ摩耗性の向上を目的とし、高硬度であるものの強度や靭性が低い。特に、結合相(Co)の添加が少ない焼結体では、抗折力が低い。また、特許文献3では、WCの平均粒径を単に小さくすることを提案するだけであり、粒度分布の制御について検討されていない。焼結体中のWCの粒径のばらつきが大きいと、焼結体中の結合相の厚さが不均一になり(局所的に厚くなったり薄くなったりし)、偏摩耗や欠損の原因となる。また、粒成長を抑制するために原料に用いた複炭化物(異種金属炭化物)が析出されると、この複炭化物が結合相との濡れ性が悪いことで、強度の低下を招いたり、析出した複炭化物が脱落することで摩耗が進行し易くなる。従って、この焼結体では、高硬度、高靭性、及び高強度の両立ができない。
また、特許文献1〜3に記載されるように、超硬合金の結合相には主としてCoが用いられており、結合相にCoを用いることにより破壊靭性をできるだけ高めることで、欠損を抑制して耐用寿命を向上させることが試みられている。一方で、高圧水流加工用のノズルといった用途では、水による結合相の腐食により耐用寿命が低下する恐れがあるため、耐食性に優れることが望まれる。しかし、結合相の主体がCoの場合、十分な耐食性を得ることが難しい。
そこで、本発明の目的は、高硬度、高靭性、高強度、及び耐食性をバランスよく具える超硬合金を提供することにある。
本発明者らは、特定の組成とすると共に、原料の調整及び製造方法を工夫することで、高硬度で耐摩耗性に優れると共に、高靭性及び高強度で耐欠損性に優れ、更に耐食性にも優れる超硬合金が得られる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明の超硬合金は、Ni及びCrを含有し、残部がWとCとの二元化合物及び不可避不純物から構成される。上記Niは、当該超硬合金に対して0.2質量%以上0.9質量%以下含有する。Niは、NixWyCzの状態で存在する。上記Crは、当該超硬合金に対して0.2質量%以上1.5質量%以下含有する。そして、上記WとCとの二元化合物は、主としてWCであり、上記超硬合金中のWCの平均粒度が0.15μm以上0.7μm以下、かつWCの粒度の標準偏差σがσ≦0.2を満たす。
本発明超硬合金は、金属Niに比べて高硬度なNi化合物(NixWyCz)を主たる結合相とし、かつWCが微細であることで、硬度が高く、耐摩耗性に優れる。特に、本発明超硬合金は、Crを含有することで、WCの粒成長を効果的に抑えて微細なWCとすることができ、硬度を向上できる上に、粗大なWCの存在による強度の低下を抑制できる。また、本発明超硬合金では、結合相(主としてNixWyCz)によりWCの周囲を十分に覆うことが可能な程度にNi成分を含有していることから、耐食性に優れ、焼結性も高い。そのため、焼結温度が高い特許文献2,3と比較して、本発明超硬合金の製造にあたり、焼結温度を低くすることができることから、局所的なWCなどの粒成長を抑制して、超硬合金中に粗大なWCなどが存在し難い。更に、本発明超硬合金中のCrは、主として金属成分で存在し、炭化物といった化合物の状態でほとんど存在しない。そのため、本発明超硬合金では、粒成長を抑制するために原料に金属炭化物を用いた場合のように金属炭化物が残留したり、再析出したりすることによる強度の低下が実質的に生じ得ない。かつ、本発明超硬合金は、上記特定の範囲でNi成分を含有することで、結合相が少な過ぎる超硬合金のような靭性及び強度の極端な低下を低減でき、強度及び靭性も高い。また、上述のように微細で均一的なWCの周囲を覆うように結合相(主としてNixWyCz)が存在することで、結合相の厚さも均一的であることから、本発明超硬合金は、偏摩耗や欠損が生じ難く、耐摩耗性や耐欠損性に優れる。
上述のように本発明超硬合金は、高硬度、高靭性、高強度、及び耐食性をバランスよく具え、耐摩耗性、耐欠損性、耐食性の全てに優れる。また、低Ni組成であり、NiがNixWyCzの状態で存在する本発明超硬合金は、室温だけでなく高温、例えば、500℃〜800℃といった温度域でも硬度の低下が少なく高硬度であり、室温から高温に亘る広い範囲においても耐摩耗性に優れる。従って、本発明超硬合金は、例えば、耐摩耗性及び耐食性に優れることが望まれる部材、例えば高圧水流加工用のノズルの構成材料に好適に利用することができる。また、本発明超硬合金は、WCが微細で均一的であり、結合相(主としてNixWyCz)の厚さも均一的である。即ち、本発明超硬合金は、組織が均一的であり、Ni成分が比較的少ないことから、耐摩耗性に加えて、鏡面仕上げといった良好な仕上げ面品位が求められる部材、例えばガラスレンズの金型の構成材料にも好適に利用することができる。そして、本発明超硬合金は、高靭性で高強度であることから、上記ノズルや金型などを製造する際に研削、ワイヤ加工、放電加工などが施されても、これらの加工に伴う加工亀裂やチッピングを低減することができ、上記ノズルなどの部材を生産性よく製造することができる。また、本発明超硬合金は、上述のように高強度で高靭性であることから、上記各種の部材の使用時に亀裂やチッピングが生じ難く、耐欠損性にも優れる。以下、本発明を詳細に説明する。
<超硬合金>
《組成》
本発明超硬合金は、硬質相が主としてWCの粒子から構成され、結合相が主としてNi化合物(NixWyCz)から構成されるWC‐NixWyCz系超硬合金であり、NixWyCz及び後述するCrを除く残部がWとCとの二元化合物と不可避的な不純物とにより構成される。更に後述するVを含む場合は、NixWyCz、Cr及びVを除く残部がWとCとの二元化合物と不可避的な不純物とにより構成される。WとCとの二元化合物には、WC、W2Cが挙げられる。
[Ni]
本発明超硬合金中におけるNiは、NixWyCzというNiとWとの化合物の状態で存在する。後述する実施例において本発明超硬合金をX線回折により分析した結果、Niを含む成分のピーク波形は、NixWyCzのピーク波形が得られ、金属Niのピーク波形は検出限界により得られなかった。また、NixWyCz中にCrやVが固溶されている場合、NixWyCzのピーク波形からピーク位置がややずれたピーク波形が得られると考えられる。従って、超硬合金をX線回折により分析した場合にCrやVを固溶することによりNixWyCzのピーク波形がややずれた場合も、金属Niのピーク波形が得られない超硬合金は、本発明の範囲に含有されると解釈する。後述する製造方法によれば、超硬合金中のNiの実質的に全てがNixWyCzとして存在し、金属Niが存在しない(金属NiのX線回折によるピーク波形が検出限界により得られない)超硬合金を製造することができる。x,y,zは、いずれも正の値をとり、x+y>zを満たす。
本発明超硬合金は、当該超硬合金に対してNiを0.2質量%以上含有することでNixWyCzを十分に生成して、WCの周囲を覆うことができ、焼結性に優れる。そのため、本発明超硬合金を製造するにあたり、焼結温度を通常の超硬合金と同程度、例えば、通常の減圧焼結と同程度の焼結条件で焼結を行っても緻密な超硬合金とすることができる。Niが0.2質量%未満では、NixWyCzによりWCの周囲を十分に覆いきれず焼結性が低下するため、焼結温度を高くする必要があり、焼結温度の高温化により、焼結時にWCの粒成長を促進して粗大なWCの発生を招く。そして、粗大な粒子の存在による強度の低下を招く。また、Niが少な過ぎると、靱性(例えば、破壊靭性)の他、耐食性も極端に低下する。Niが多いほど、耐食性の向上、焼結性の向上に効果があるが、0.9質量%を超えると、WCの粒成長が起こり易くなることから硬度(室温から高温に亘る硬度)が低下し、特に、600℃以上の高温域での硬度の低下が著しい。また、WCの粒成長により、超硬合金の組織の均一性も低下することから、強度の低下も招く。Niの含有量を0.2質量%以上0.9質量%以下とすることで、焼結温度の高温化によるWCのオストワルド成長を抑制し、超硬合金中に粗大なWCの発生を低減して、WCの粒度が微粒で均一的なWC‐NixWyCz系超硬合金とすることができる。また、本発明超硬合金は、微細な組織を有することから表面性状に優れる。特に、Niの成分を少なめにすると共にその存在状態をNixWyCzとすることで、高温で使用される場合であっても、超硬合金の表面からNiが溶出し難く、超硬合金の表面の鏡面状態を長く維持することができる。Niの含有量は、0.2質量%以上0.6質量%以下がより好ましい。
[Cr]
Crを超硬合金に対して0.2質量%以上含有することで、WCの粒成長を効果的に抑えて粗大なWCの発生を低減し、微細で均一的な大きさのWCが均一的に存在する超硬合金を安定して製造することができる。また、Crを含有することで、超硬合金の耐酸化性を向上することができる。Crが多いほど、粒成長の抑制効果が高められるが、Crが多過ぎると、Cr炭化物として析出し易くなり、Cr炭化物の存在による強度の低下の要因となる。そこで、本発明超硬合金は、Crの含有量を0.2質量%以上1.5質量%以下とする。より好ましいCrの含有量は、0.2質量%以上0.9質量%以下である。
Crに加えて、更に、本発明超硬合金は、Vを含有していてもよい。VもCrと同様にWCの粒成長の抑制効果が高く、CrとVとの双方を含有することで、WCの粒成長を更に効果的に抑えられる。Vの含有量が多過ぎると、WCやW2CとNixWyCzとの濡れ性が悪くなり、焼結性が低下することから超硬合金の強度が低下したり、V炭化物として析出し易くなり、V炭化物の存在による強度の低下の要因となる。そのため、Vの含有量は、超硬合金に対して0.1質量%以下(0質量%を含む)が好ましい。
上記Crや上記Vは、実質的に全てがNixWyCz中やWC中に固溶して、金属成分として存在することが好ましい。後述する実施例において本発明超硬合金をX線回折により分析した結果、Cr炭化物のピーク波形やV炭化物のピーク波形は検出限界により得られない範囲にある。このことから、超硬合金中のCrやVは、NixWyCz中やWC中に固溶されていると考えられる。従って、超硬合金をX線回折により分析した場合に純粋なNixWyCzのピーク波形からずれたピーク波形を有する超硬合金は、本発明の範囲に含有されると解釈する。後述する製造方法によれば、超硬合金中のCrやVの実質的に全てがNixWyCz中やWC中に固溶した金属成分として存在し、CrやVの金属単体、及びCr炭化物やV炭化物が存在しない(Cr炭化物やV炭化物のX線回折のピーク波形が検出限界により得られない)超硬合金を製造することができる。
[WとCとの二元化合物]
本発明超硬合金は、NixWyCz,Cr,(V)を除く残部がWとCとの二元化合物及び不可避的な不純物により構成される。WとCとの二元化合物のうち、特に、WCの含有量が当該超硬合金に対して97質量%以上である。このWCは、超硬合金中に粒状で存在して、硬質相として機能する。特に、WCは、微粒である上に均一的な大きさである。具体的には、WCの平均粒度が0.15μm以上0.7μm以下であり、粒度の標準偏差σが0.2以下である。平均粒度が上記範囲を満たし、かつ標準偏差が上記範囲を満たすことで、微細なWCにより硬度を高められると共に、粗大なWCが少ないことにより強度の低下を低減することができる。平均粒度が0.15μm未満と小さ過ぎると、亀裂が進展し易く、靭性の低下を招き、平均粒度が0.7μm超であると、硬度の低下を招く。より好ましい平均粒度は、0.15μm以上0.4μm以下である。標準偏差σは小さい方が好ましく、特に下限を設けない。
超硬合金中に粗大なWCが少ないことが好ましい。具体的には、粒度(粒径)が1.0μm以上であるWCの面積割合が、当該超硬合金に対して5%以下であると、上述したように粗大なWCの存在による強度の低下を抑えて、高強度な超硬合金となり得る。上記粗大なWCの面積割合は、小さい方が好ましく、4%以下がより好ましい。
超硬合金中に存在するW及びCは、その大部分がWCで存在し、W2Cが少ないことが好ましい。上述のようにW2CはWCよりも粒成長し易いため、粗大な粒子が存在する超硬合金となり得る。具体的には、体積割合で、W2C/(WC+W2C)≦0.005を満たすことが好ましい。上記W2Cの体積割合は、小さい方が好ましく、存在しない、即ち、WとCとの二元化合物がWCのみであることが望ましい。
上述したWCの平均粒度、粒度の標準偏差、及び粗大なWCの面積割合は、例えば、EBSD法を利用することで、W2Cの体積割合は、X線回折を利用することで簡単に求められる。これらの測定方法の詳細は後述する。
[特性]
本発明超硬合金は、高硬度、高靭性、及び高強度である。具体的には、HRA硬度が94以上96.5以下、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上、抗折力が1GPa以上であることが好ましい。HRA硬度が94以上であることで、耐摩耗性に優れ、HRA硬度が96.5以下であることで、過度な高硬度化による靭性の低下を低減できる。また、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上及び抗折力が1GPa以上であることで、各種の部材の製造にあたり、加工時の亀裂やチッピングを効果的に抑えられ、かつ高硬度な上に、高靭性及び高強度である超硬合金本来の優れた性能を具える部材を提供することができる。
<製造方法>
超硬合金は、一般に、原料の準備→原料の混合・粉砕→乾燥→成形→焼結という工程で製造される。本発明超硬合金は、上記焼結後に、更にHIP(熱間静水圧焼結)を行うと共に、特定の原料の利用、及び特定の条件での混合・粉砕を行う。
[原料WC]
原料のWC粉末は、超硬合金中のWCが微細な状態になり易いように、微細なものを利用することが好ましい。具体的には、平均粒度が0.1μm以上0.5μm以下のWC粉末が好ましい。0.1μm未満でも0.5μm超でも粒成長して粗大なWCが存在する超硬合金が形成され易い。
特に、原料のWC粉末は、Crを含有したものを使用すると、超硬合金中にCr炭化物が生成され難い。Cr及びVを含有する超硬合金を製造する場合、原料として、Cr及びVを含有したWC粉末を使用すると、超硬合金中にCr炭化物やV炭化物が生成され難い。本発明者らは、原料にCr炭化物やV炭化物の粉末、金属Crや金属Vの粉末を用いると、Cr炭化物やV炭化物が残存したり析出・再析出したりして、強度の低下を招く、との知見を得た。一方、WC粉末自体にCrやVを含有している場合、Cr炭化物やV炭化物が析出され難い、又は実質的に生成されない上に、原料全体に亘りCrやVを均一的に存在させる(分散させる)ことができるため、焼結時のWCの粒成長を超硬合金全体に亘って均一的に抑えられ、微粒で均一的な粒度のWCが均一的に存在する組織の超硬合金を安定して製造できる、との知見を得た。また、WC粉末自体がCrやVを含有していることで、WC中にCrやVが固溶した状態の超硬合金が得られ易い、との知見を得た。更に、VCといった焼結性を低下させる化合物を原料に利用しないことで、焼結性の悪化を回避できる。これらの知見に基づき、CrやVを含有したWC粉末を用いることを提案する。なお、原料のWC粉末中に含有して添加されたCrやVの含有量は、超硬合金中の含有量に実質的に等しい。
[原料Ni]
原料のNi粉末には、微細なWC粉末と均一的に混合され易いように、WC粉末と同程度の微細なものを利用することが好ましい。具体的には、平均粒度が0.2μm以上0.6μm以下のNi粉末が好ましい。0.2μm未満であると、Niが小さ過ぎることで再凝集し易くなってNiが均一的に分散されず、焼結性の低下や、焼結性の低下に伴う焼結温度の高温化によりWCの粒成長を促して、均一的な粒度分布が得られ難くなる。0.6μm超であると、微細なWC粉末と均一的に混合され難くなり、上述のようにNiが不均一に存在することによる焼結性の低下や粒度分布の不均一を招く。
[原料カーボン]
上述したCrやV含有のWC粉末及びNi粉末に加えて、適宜カーボン粉末を添加することなどにより、超硬合金中における炭素(C)の総量を調整する。超硬合金中の炭素の総量を調整すると共に、後述する製造条件で製造することで、Ni粉末の実質的に全てをNixWyCzとすることができる上に、得られた超硬合金中の炭素はWC、NixWyCzとして存在し易い。超硬合金中の炭素の総量が多過ぎると、金属Niが存在し易くなる。また、超硬合金中の炭素の総量が多過ぎると、フリーカーボンとして超硬合金中に存在したり、Cr炭化物などが析出されて、強度の低下を招く。
[混合・粉砕]
上述した原料となる粉末を用意し、ビーズミル、アトライター、ボールミルといった回転翼を有する粉砕分散機により、混合・粉砕を行う。混合・粉砕の時間は10時間以上20時間以下が好ましい。特に、混合・粉砕の開始から5時間までの初期工程を高速回転(25r.p.m.以上)で行い、以降の混合・粉砕(以下、後工程と呼ぶ)を低速回転(25r.p.m.未満)で行うことが好ましい。初期工程で概ねの混合・粉砕を完了し、後工程では、主として分散を行う。このように混合・粉砕工程を多段にすることで、均一的な混合、分散を実現し易い。混合・粉砕工程の全体に亘って高速回転で行うと、Niの凝集が生じて分散状態が悪くなり、WCが成長し易くなるなど、組織の不均一化を招く。一方、混合・粉砕工程の全体に亘って低速回転で行うと、粉砕や混合が不十分で組織の不均一化を招く。
上記乾燥、成形、焼結などは、一般的な条件と同等程度の条件を利用することができる。例えば、焼結条件は、焼結温度:1450〜1550℃での減圧焼結(真空焼結、Ar雰囲気焼結、CO雰囲気焼結など)が挙げられる。本発明超硬合金は、上述のように原料に微粒のWC粉末及びNi粉末を用いて上述の組成に配合し、更に上述のように特定の条件で混合・粉砕を行って適切に分散させることで、WCの周囲をNixWyCzが十分に覆えることから、焼結温度を上記のように比較的低めにすることができる。焼結温度が低いことで、WC(W2C)の粒成長を抑制することができる。
本発明超硬合金の製造では、上記焼結後にHIPを行う。ここで、一般に、結合相(Ni)が比較的少ない超硬合金では、WCの周囲にNiが十分に回り切らないため、焼結し易いように高温で焼結する(特許文献2:1700℃以上、特許文献3:1600℃以上)ことが必要となる。これに対して、本発明超硬合金の製造では、上述のように低温でも十分に焼結性がよく、均一的な組織の超硬合金が得られる。また、焼結後にHIPを行うことで、焼結後の超硬合金中に残存する微細な巣(ポア)を消滅することができ、緻密な超硬合金とすることができる。特に、焼結温度を上述のように比較的低目にすることで、均一的な組織の超硬合金を製造し易い。
上述のように、粒成長の抑制のために金属炭化物を用いず、WC粉末自体にCrやVを含有したものを利用し、Niの含有量を最適化すると共に、微細なNi粉末を利用し、かつ上記製造条件で製造することで、超硬合金中のWCを微細で、均一的な粒度分布とすることができ、粗大な粒子の存在による強度の低下を抑制できる。また、上述のように超硬合金中のNiをNixWyCzとして存在させることができる。
本発明超硬合金は、高硬度、高靭性、高強度、及び耐食性をバランスよく具えるため、耐摩耗性、耐欠損性、耐食性の全てに優れる。
EBSD法を用いて観察した試料No.2のマッピング像である。 試料No.2の超硬合金中のWCの粒度分布を示すグラフである。 EBSD法を用いて観察した試料No.106のマッピング像である。 試料No.106の超硬合金中のWCの粒度分布を示すグラフである。
(試験例)
種々の原料粉末を用意して超硬合金を作製し、得られた超硬合金の組成、組織、機械的特性を調べた。また、この超硬合金から高圧水流加工用ノズルを作製し、ノズルの寿命を調べた。
[試料No.1〜5]
原料として、平均粒度が0.5μmのWC粉末、平均粒度が0.2μm及び0.6μmのNi粉末、及びカーボン粉末を用意した。上記WC粉末として、当該WC粉末に対して、Crを0.2〜1.5質量%含有するもの、Crを0.2〜1.5質量%及びVを0.2質量%含有するものを用意した。上記CrやVを含有するWC粉末、Ni粉末、及びカーボン粉末の合計質量に対して、Ni粉末:0.2〜0.9質量%となるように、カーボン粉末:上記合計質量に対して炭素の含有量が、製造される各組成の超硬合金の理論炭素量に対してそれぞれプラス0.05質量%以上0.1質量%未満となるように添加量を調整し、残部をWC粉末とした。これらの原料粉末は、いずれも市販のものが利用できる。なお、試料No.1,2には、平均粒径が0.2μmのNi粉末、試料No.3〜5には、平均粒径が0.6μmのNi粉末を用いた。
上記原料粉末に、粉末状のパラフィン(原料粉末に対して1質量%)を加えて、ビーズミル、アトライター又はボールミルを用いて、混合・粉砕を行った。ビーズミル、アトライター、ボールミルのいずれも、メディアに直径φ5mmの超硬合金製ボールを用いた。表1に、用いた粉砕分散機の種別、混合・粉砕時間を示す。特に、試料No.1〜5では、混合・粉砕開始から5時間を高速回転(25r.p.m.以上)で行い、5時間以降の残りの時間を低速回転(5r.p.m.)で行った。
上記混合・粉砕の後、造粒乾燥機を用いて原料粉末を顆粒状に造粒してから乾燥した。得られた造粒粉末をゴム型に所定の量だけ投入して、静水圧プレスを行った後、得られたプレス体の外周に機械加工を施し、直径φ8mm×長さL:80mmの丸棒材を作製した。得られた丸棒材を焼結炉内に配置し、1450℃〜1550℃×1時間、真空中で保持することにより焼結し、上記加熱温度から冷却した後、焼結炉から取り出した。得られた焼結体に1320℃,1000気圧(約101MPa)のAr雰囲気中でHIPを行い、超硬合金を得た。
得られた超硬合金に、研削加工及び放電加工を施し、外周形状の形成、水を導入する箇所のテーパー部の形成を行うと共に、超硬合金の中央に、その長手方向に延びる貫通孔(直径φ0.5mm)を形成し、高圧水流加工用ノズルを作製した。
[試料No.101〜106]
比較として、原料にCr3C2,VC,Mo2Cを用いた試料、Cr3C2,VC,Mo2Cを用いていない試料を作製した。具体的には、原料として、平均粒度が0.7μmのWC粉末(CrやVを含有しないもの)、平均粒度が0.2μm及び0.6μmのCo粉末、及びCr3C2粉末、VC粉末、Mo2C粉末(これら金属炭化物はいずれも平均粒度:0.7〜1.5μm)、並びにカーボン粉末を用意した。なお、試料No.101,103,106には、平均粒径が0.2μmのCo粉末、試料No.102,104,105には、平均粒径が0.6μmのCo粉末を用いた。これらの原料粉末の添加量を適宜調整して、試料No.1〜5と同様に、混合・粉砕→造粒→乾燥→静水圧プレス→丸棒材の作製→焼結→HIPという工程を経て、超硬合金を得た。試料No.101〜106では、混合・粉砕の全時間に亘って、高速回転(25r.p.m.以上)で混合・粉砕を行い、焼結条件やHIP条件は、試料No.1〜5と同様とした。得られた超硬合金に試料No.1〜5と同様の加工を施して、高圧水流加工用ノズルを作製した。
[組成及び組織]
得られた各超硬合金について、ICP(Inductively Coupled Plasma)分光分析及びX線回折を行い、組成及び組織を調べた。その結果を表1に示す。試料No.1〜5におけるNi,Cr及びVの含有量、並びに試料No.101〜106におけるCo,Cr,V及びMoの含有量は、超硬合金に対する質量割合である。X線回折により、WC,W2C及びNixWyCzのピーク波形のみが得られ、かつCr炭化物、V炭化物のピーク波形が検出限界により得られない場合、Cr,Vは、WC,W2C,NixWyCz中に固溶した状態で存在すると判断する。また、X線回折により、WCのピーク波形が得られ、かつW2Cのピーク波形が検出限界により得られない場合、WとCとの二元化合物は全てWCとして存在すると判断する。更に、X線回折により、NixWyCzのピーク波形(Crなどの固溶により純粋なNixWyCzのピーク波形から若干ずれたピーク波形である場合を含む)が得られ、かつ金属Niのピーク波形が検出限界により得られない場合、NiはNixWyCzとして存在すると判断する。なお、超硬合金の組成の分析は、上記ICP分光分析の他、Ni滴定などを利用することができる。また、超硬合金の組成は、配合原料の組成に実質的に等しく、表1に記載された元素以外の残部は、WとCとの二元化合物及び不可避不純物である。
原料にCrやVを含有するWC粉末を用いて作製した試料No.1〜5では、表1に示すように試料No.4を除き、超硬合金中にCr炭化物やV炭化物がX線回折により検出されず、存在していないと言える。試料No.4も、Cr3C2が若干検出されたに過ぎない。試料No.4において、Cr3C2が若干検出された理由の一つとして、Crに加えてVを含有することで、結合相などに固溶しきれずに析出されたためであると考えられる。一方、原料にCr3C2粉末などの炭化物粉末を用いて作製した試料No.102〜104,106は、Cr炭化物(Cr3C2)、V炭化物(VC)、Mo炭化物(Mo2C)が検出され、炭化物が存在すると言える。従って、原料にCrやVを含有したWC粉末を利用することで、超硬合金中にCrなどが炭化物の状態で存在しないようにすることができると言える。なお、試料No.1〜3,5のCr、試料No.4の大部分のCr及びVは、NixWyCz中やWC中に固溶していると考えられる。試料No.1〜5において、NixWyCzのx,y,zの値は、超硬合金中の炭素の含有量が異なることで変化し得る。
また、試料No.1〜5はいずれも、金属NiがX線回折により検出されなかったことから、試料No.1〜5の超硬合金中のNi成分は、NixWyCzの状態で存在していると言える。更に、試料No.1〜4はいずれもW2CがX線回折により検出されず、X線回折の検出限界を考えると、体積割合でW2C/(WC+W2C)≦0.005であると考えられる。試料No.5は、配合時のカーボン粉末の添加量を試料No.3よりも少なく設定したことで超硬合金中の炭素量が低い合金となったため、W2Cが若干検出されたが、W2C/(WC+W2C)が0.01以下であると考えられる。
[WCの粒度]
得られた各超硬合金について、組織観察を行い、WCの平均粒度、粒度の標準偏差σ、粒度(粒径)が1.0μm以上であるWCの面積割合を求めた。その結果を表2に示す。組織観察は、以下のように行った。各超硬合金を任意に切断して断面をとり、この断面を研削した後、#3000までのバフ研磨を施した。研磨した面を約5000倍の倍率で、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)によるEBSD(Electron Back-Scatter Diffraction)法を用いて観察した。観察は、研磨した面に対して任意の複数の視野(ここでは、1視野:180μm2で3視野)を選択して、視野ごとに行った。各視野中に存在する全てのWCの結晶粒について、結晶方位毎に色別(マッピング)を行い、結晶粒径を視覚的に把握できるようにした。得られたマッピング像に画像解析を行い、3つの視野に存在する全てのWCについてそれぞれ面積の円相当径を求め、この円相当径をWCの粒度(直径)とし、3つの視野に存在する全てのWCの粒度の平均を超硬合金の平均粒度とする。上記粒度の測定には、市販のEBSD装置を用いることができる。また、3つの視野に存在する全てのWCについて粒度の標準偏差を求め、この標準偏差を超硬合金の標準偏差σとする。更に、3つの視野に存在する全てのWCについて、粒度が1.0μm以上であるWCの合計面積S1.0WCを求め、3つの視野の合計面積Sfに対する面積割合R(%)=(S1.0WC/Sf)×100を求め、この割合Rを超硬合金におけるWCの面積割合Rとする。
作製した試料を代表して、試料No.2及び試料No.106について、EBSD法を用いて観察したマッピング像、及びWCの粒度分布を図1〜4に示す。図1は試料No.2のマッピング像、図2は、試料No.2の粒度分布(縦軸:各粒度の面積割合)、図3は、試料No.106のマッピング像、図4は、試料No.106の粒度分布(縦軸:各粒度の面積割合)である。図1,3では、グレースケールで示しているが、実際には、各WCにそれぞれ、赤〜青〜緑が施されている。図1,3において、白色から灰色の各塊はWCであり、図1において細かい点々はNixWyCzであり、図3において黒い塊は金属Coである。
表2に示すように、試料No.1〜5はいずれも、WCが平均粒度:0.15〜0.7μmの範囲で微粒である上に、WCの粒度の標準偏差σが0.2以下であり、粒度のばらつきが小さく、均一的である。特に、試料No.1〜5はいずれも、1.0μm以上の粗大なWCが少ない。また、図1からも超硬合金中のWCはいずれも微細で均一的な大きさであることが分かる。更に、図1に示す超硬合金は、当該超硬合金中に微細なNixWyCzが均一的に分散していることが分かる。
これに対して、図3に示すように試料No.106は、原料にCr3C2を利用していても、粗大なWCの粒子が局所的に存在している。このことは、図4のグラフからも裏付けられている。また、試料No.106は、図3に示すように局所的にCoが固まって存在し、超硬合金中のCoの厚さが不均一になっている。
なお、試料No.105の組織観察を行ったところ、巣(ポア)が多く存在した。
[機械的特性]
得られた各超硬合金について、HRA硬度、破壊靭性(KIC)、抗折力を測定した。その結果を表2に示す。HRA硬度及び抗折力は、室温で市販の装置を用いて測定した。破壊靱性(KIC)は、ビッカース法に基づく測定が可能な市販の装置を用いて測定した。
表2に示すように試料No.1〜5はいずれも、試料No.101〜106と比較して、硬度(HRA硬度)、靭性(破壊靭性)、強度(抗折力)をバランスよく具えている。特に、試料No.2,3はいずれも、HRA硬度が94〜96と高硬度であり、破壊靱性が4MPa・m1/2以上と高靭性であり、抗折力が1GPa以上と高強度である。Cr3C2が若干検出された試料No.4は、試料No.1〜3と比較して靭性及び強度が若干小さくなったものの、WCが微細であり、比較的高硬度である。W2Cが若干検出された試料No.5は、試料No.1〜3と比較して硬度が若干小さくなったものの、比較的大きなWCが存在することで、高靭性及び高強度である。また、試料No.1,2は、試料No.3〜5と比較してNiが少ないことで、焼結中におけるWのNiへの溶解及びWCの再析出が抑制されたため、WCが微粒になり比較的高硬度である。
一方、Cr3C2などを用いなかった試料No.101は、粒度が1.0μm以上の大きなWCが多く存在したことで、特に硬度が低い。超硬合金中にCr3C2が存在した試料No.102は、特に靭性及び強度が低い。試料No.103,104は、粒度が1.0μm以上の大きなWCが多く存在したものの、WCよりも高硬度なVCやMo2Cが存在したことで硬度が高い反面、靭性や強度が低い。試料No.105は、Coが少な過ぎることで焼結中のWのCoへの溶解やWCの再析出が抑制されてWCが微粒であるものの、合金全体としては靭性及び強度が低い。試料No.106は、Coが多過ぎることで、特に、硬度が低い。
更に、試料No.2の超硬合金について、室温(20℃)〜800℃までの温度域について、ビッカース硬度Hv(GPa)を測定した。その結果、室温では24.6GPaであり、600℃以上でも硬度の低下度合いが少なく、800℃でも15GPa程度を有していた。また、上記600℃以上の温度域に曝した超硬合金の表面を観察したところ、Niの溶出も見られず、表面性状に優れていた。このことから、試料No.1〜5の超硬合金は、高温域においても、高硬度を維持することができる上に表面性状が優れていることから、高温域で使用され、良好な仕上げ面品位が望まれる部材、例えば、ガラスレンズ用の金型の構成材料に好適に利用できると期待される。
[ノズルの寿命]
作製したノズルを用いて、以下のようにして寿命を調べた。その結果を表2に示す。砥粒に#120のガーネットを用い、水圧:300MPaで鉄板を切断する。一定時間ごとにノズルの貫通孔の直径を測定し、摩耗による上記直径の変化を調べる。初期の貫通孔の直径φ0.5mmに対して0.1mm増加するまで、即ち、貫通孔の直径が0.6mmになるまで鉄板を切断し、直径φが0.6mmになった時点の時間を寿命として評価した。
表2に示すように、試料No.1〜5はいずれも、試料No.101〜106に比較して寿命が非常に長い。特に、Cr炭化物やW2Cが検出されなかった試料No.1〜3では、非常に長寿命である。一方、硬度が低い試料No.101,105,106は、耐摩耗性に劣っていた。金属炭化物が存在した試料No.102〜104では、寿命試験中に欠けが生じた。
なお、上述した実施の形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、超硬合金の組成や、原料粉末の平均粒径などを適宜変更することができる。
本発明の超硬合金は、耐摩耗性、耐欠損性及び耐食性が求められる部品、例えば、高圧水流加工用ノズル、金型(パンチやダイ)などの構成材料に好適に利用することができる。また、本発明の超硬合金は、表面性状に優れ、高品位な部材の形成が望まれるカメラなどのガラスレンズ用金型の構成材料に好適に利用することができる。

Claims (6)

  1. Niを0.2質量%以上0.9質量%以下、Crを0.2質量%以上1.5質量%以下含有し、残部がWとCとの二元化合物及び不可避不純物からなり、
    前記Niは、NixWyCzの状態で存在しており、
    金属Ni及びCr炭化物がX線回折により検出されず、
    前記WとCとの二元化合物のうち、WCの平均粒度が0.15μm以上0.7μm以下であり、
    前記WCの粒度の標準偏差σがσ≦0.2である超硬合金。
  2. 粒度が1.0μm以上であるWCの面積割合が当該超硬合金に対して5%以下である請求項1に記載の超硬合金。
  3. 前記WとCとの二元化合物は、主としてWCであり、
    W2Cを含む場合、体積割合で、W2C/(WC+W2C)≦0.005である請求項1又は請求項2に記載の超硬合金。
  4. 前記超硬合金のHRA硬度が94以上96.5以下、破壊靱性(KIC)が3.5MPa・m1/2以上、抗折力が1GPa以上である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の超硬合金。
  5. 更に、Vを0.1質量%以下含有する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の超硬合金。
  6. V炭化物が、X線回折により検出されない請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の超硬合金。
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