JP5737702B2 - Arf6遺伝子機能喪失動物及びその利用方法 - Google Patents

Arf6遺伝子機能喪失動物及びその利用方法 Download PDF

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Description

本発明は、Arf6遺伝子の機能が喪失した、Arf6遺伝子機能喪失動物に関する。また、本発明は、Arf6阻害剤を有効成分として含む腫瘍治療用の医薬組成物及び腫瘍治療薬のスクリーニング方法に関する。さらに、本発明は、前記動物を用いた薬剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法、血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤のスクリーニング方法及びArf6関連疾患の治療剤のスクリーニング方法に関する。
癌は DNA の障害等によって発症する疾病であるが、癌遺伝子又は癌抑制遺伝子が多数同定されている。このことは、癌は単一の原因による疾患ではないことを示している。このため、それぞれの患者が持つ癌、すなわち腫瘍細胞の性質は多様であり、各腫瘍細胞の性質に即した治療法の適用が求められる(非特許文献1)。従って、個々の癌がどのような性質を持ち、どのような抗腫瘍剤に感受性があるのかを知ることは、治療戦略を構築する上で非常に重要なインフォメーションとなる。また抗腫瘍剤に関しても、異なるメカニズムで作用する多様な薬剤を保有することが、オーダーメイド治療を考える上でのベースとなると考えられる。
抗腫瘍剤のターゲットとしては、腫瘍細胞そのものの増殖抑制(細胞周期や微小管をターゲットとしたもの)、又は腫瘍組織内の血管新生阻害が挙げられる。腫瘍細胞の増殖抑制をターゲットとする薬剤を投与した場合、他の正常細胞への増殖阻害効果が無視できず、投与された患者が副作用に苦しむことが多い。
一般的に癌細胞の増殖は、癌組織内への酸素及び栄養素供給のために血管新生を必要とする。そこで、癌組織内への酸素及び栄養素供給を断ち、また癌細胞が血流を介して転移を起こすのを防ぐことを目的として、血管新生を阻害することが抗腫瘍剤のターゲットとして重要となる。血管新生阻害をターゲットとする場合は、癌組織の増殖を抑えられる一方で、癌細胞自体の死を誘導しないことから、臨床的には癌細胞自身をターゲットとする薬剤との併用が望ましいと考えられている。癌組織内への血管新生には血管成長因子である血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF)及び肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor: HGF)が重要な役割を果たしていると考えられている。既に抗VEGF 薬は臨床に用いられている。抗HGF 薬は現時点では前臨床段階にあるが、実用化が期待されている(非特許文献2)。
Heng, H. H. et al., J Cell Physiol 220, 538-547 (2009) You, W. K. and McDonald, D. M., BMB Rep 41, 833-839 (2008)
このような状況下、新たな腫瘍治療剤及びそのスクリーニング方法、並びに血管新生阻害剤に対する腫瘍の感受性を簡便に検査する方法及び血管新生阻害剤と併用投与可能な腫瘍増殖阻害剤のスクリーニング方法の開発が必要とされる。
本発明者らは、過去に低分子量 G 蛋白質であるadenosine diphosphate (ADP)-ribosylation factor 6(Arf6)の生理的役割を解明する目的で、Arf6遺伝子ノックアウト(KO)マウスを作製し、その解析を行ったが、これらのKOマウスは、胎生期13.5 日目頃から死亡し、出生までにほぼ全ての個体が死に至るものであった(Suzuki, T. et al., Mol Cell Biol 26, 6149-6156 (2006))。KOマウスの胎児を解析した結果、当該KO マウスの死因は肝臓の形成不全であると認定された。また、同時に、当該 KO マウスが血管形成異常を持ち合わせることも判明した。以上の知見に基づき、本発明者らは、今回初めて血管内皮細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウス(cKO)(Tie2-Cre: Arf6-flox/flox)を作製し、該cKOマウスの生態を鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] Arf6遺伝子の機能を喪失させた、非ヒト哺乳動物。
[2] Arf6遺伝子の機能が、染色体上の少なくとも一方のアレルで喪失したものである、前記[1]に記載の非ヒト哺乳動物。
[3] 血管内皮細胞で特異的に発現する遺伝子のプロモーターにより制御されたCre遺伝子を有するトランスジェニック動物である、前記[2]に記載の非ヒト哺乳動物。
[4] 前記血管内皮細胞で特異的に発現する遺伝子のプロモーターが、Tie2遺伝子のプロモーターである、前記[3]に記載の非ヒト哺乳動物。
[5] げっ歯類動物である、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
[6] Arf6阻害物質を有効成分として含む、腫瘍を治療するための医薬組成物。
[7] 前記腫瘍がArf6を発現するものである、前記[6]に記載の医薬組成物。
[8] 前記腫瘍が乳癌である、前記[6]に記載の医薬組成物。
[9] 前記Arf6阻害物質が、以下の(a)又は(b)から選択されるものである、前記[6]〜[8]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(a)腫瘍細胞におけるARF6タンパク質を介するシグナル伝達の阻害物質
(b)Arf6遺伝子の発現の阻害物質
[10] 以下の工程を含む、血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法。
(a)前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に腫瘍細胞又は腫瘍組織を移植する工程
(b)前記移植した腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖率を測定する工程
[11] 前記血管新生抑制剤が、Arf6阻害剤又はHGF阻害剤である、前記[10]に記載の方法。
[12] 以下の工程を含む、血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤のスクリーニング方法。(a)前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に腫瘍細胞又は腫瘍組織を移植する工程
(b)前記動物に候補薬剤を投与する工程
(c)前記移植した腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖率を測定する工程
[13] 前記血管新生抑制剤が、Arf6阻害剤又はHGF阻害剤である、前記[12]に記載の方法。
[14] 前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のArf6遺伝子機能喪失動物に候補薬剤を投与する工程を含む、Arf6関連疾患の治療剤のスクリーニング方法。
本発明により、新たな腫瘍治療剤及びそのスクリーニング方法が提供される。また、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物は、Arf6遺伝子及び該遺伝子にコードされるタンパク質の生体機能の解明に有用である。本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に、患者から採取した腫瘍を投与することにより、血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を簡便に検査することができる。さらに、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に抗腫瘍増殖剤の候補化合物を投与することにより、血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤として最適な薬剤を簡便にスクリーニングすることができる。さらに、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に、候補化合物を投与することにより、Arf6関連疾患の治療剤を簡便にスクリーニングすることができる。
Arf6-floxedマウスの作製方法を示す図である。 Tie2-Arf6-cKO胎児における血管密度の減少を示す図である。(A) 野生型、Arf6-KO、Arf6-flox/flox、Tie2-Arf6-cKOマウス胎児の血管を、E11.5およびE13.5で観察した結果を示す。矢頭はArf6-KOで短い血管を示し、右図の赤枠は観察した部位を示す。(B) E11.5日目の頭部の血管の長さを定量した結果を示す図である。(C) E13.5日目の背部の血管の長さを定量した結果を示す図である。 Tie2-Arf6-cKOマウス及びコントロールマウスに移植したB16メラノーマの癌組織増大を示す図である。(A) Tie2-Arf6-cKOマウスおよびコントロールマウスの背部皮下に、B16メラノーマ細胞を注入し、14日後の癌組織を体外より観察した結果を示す。(B) 注入後14日の癌組織の大きさを比較した結果を示す。(C) 癌組織の大きさを経時的に定量した結果を示す。 Tie2-Arf6-cKOマウスにおける腫瘍組織内の血管構造を示す図である。(A) マウス皮下に注入後14日で、癌組織を取り出し、切片を抗PECAM1抗体を用いて免疫染色を行った結果を示す。(B) (A)で染色した切片から、一視野中の血管の占める面積を定量した結果を示す。 Arf6-floxedマウスより単離及び培養した血管内皮細胞に、Creリコンビナーゼタンパク質を発現するアデノウイルス又はコントロールアデノウイルスを感染させ、VEGF又はHGFで刺激した時のチューブ形成を示す図である。
1. Arf6遺伝子機能喪失動物
本発明は、Arf6遺伝子の機能を喪失させた、非ヒト哺乳動物を提供する。
本発明において、「Arf6遺伝子」とは、adenosine diphosphate (ADP)-ribosylation factor 6をコードする遺伝子を意味する。Arf6遺伝子にコードされるARF6タンパク質は、各種細胞でユビキタスに発現するグアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質であり、膜輸送及びアクチン細胞骨格の構成を制御する(D’Saura-Schorey C and Chavrier P, Nat Rev Mol Cell Biol 7: 347-358 (2008)、Myers KR and Casanova JE, Trends Cell Biol 18: 184-192 (2008))。
Arf6遺伝子は、広範囲の動物種において保存されており、複数の動物種のArf6遺伝子については既に塩基配列が解析され、その配列情報がデータベースに登録されている(表1参照)。
従って、本発明において「Arf6遺伝子」とは、各種哺乳動物のArf6遺伝子のオーソログを含むものであり、さらに、ゲノム遺伝子だけではなく、メッセンジャーRNA(mRNA)及びcDNAも含むものである。ヒトのArf6遺伝子のCDS配列及びARF6タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び2に示す。また、マウスのArf6遺伝子のCDS配列及びARF6タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号3及び4に示す。
本発明において、「Arf6遺伝子の機能を喪失させた」とは、Arf6遺伝子の正常な機能を喪失させることを意味する。このような状態の例としては、Arf6遺伝子産物が全く発現されない状態だけでなく、当該遺伝子の発現産物(例えば、hnRNA、mRNA又はタンパク質)がその正常な機能を有しない状態が挙げられる。このようなArf6遺伝子の機能喪失は、Arf6遺伝子又はその転写調節領域若しくはプロモーター領域を含む発現制御領域上における1又は複数のヌクレオチドの欠失、置換、及び/又は挿入等によって生じさせることができる。なお、前記欠失、置換、及び/又は挿入を行う部位や、欠失、置換、及び/又は挿入される配列は、Arf6遺伝子の正常な機能が喪失しうる限り、特に限定されないが、好ましくは、Arf6遺伝子の少なくとも1つのエクソンが欠失していることが好ましい。
本発明のArf6遺伝子機能喪失動物は、前記Arf6遺伝子の機能が、染色体上の少なくとも一方のアレル(ヘテロ接合)で喪失していればよいが、好ましくは、両アレルで喪失していること(ホモ接合)が好ましい。
また、本発明にかかる「非ヒト哺乳動物」は、ヒト以外の哺乳動物であれば特に限定されないが、遺伝子組換及び交配による次世代動物取得の容易性の観点からマウス、ラット、モルモット、ウサギ等のげっ歯類動物が好ましい。
2.Arf6遺伝子欠損動物の作製方法
本発明のArf6遺伝子機能喪失動物は、ジーンターゲティング、Cre-loxPシステム、体細胞クローン、RNAi等の技術を利用することにより作製することができる。
2.1 ジーンターゲティング
ジーンターゲティングは、相同組換えを利用して染色体上の特定遺伝子に変異を導入する手法である(Capeccchi, M.R. Science, 244, 1288-1292, 1989)。
(1)ターゲティングベクターの構築
まず、Arf6遺伝子機能を喪失させるためのターゲティングベクターを構築するために、対象動物のゲノムDNAライブラリーを調製する。このゲノムDNAライブラリーは、多型等による組換え頻度の低下が起こらないよう、使用するArf6遺伝子機能喪失動物と同系統の動物に由来するゲノムDNAから作製したライブラリーを用いることが好ましい。そのようなライブラリーとしては、市販のものを用いてもよい。あるいは、Arf6 cDNA又はその部分配列をプローブとしてスクリーニングを行い、Arf6ゲノム遺伝子のDNA配列をクローニングすることにより調製することができる。ゲノムDNAライブラリーの調製方法の詳細については、以下を参照できる。"Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001"、"Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997"
次に、クローニングされたゲノムDNAを、シークエンシング、サザンブロッティング、制限酵素消化等によって解析してエクソンの位置及び制限酵素サイトを同定する。このような解析により得られた配列情報を基に変異導入部位等を決定する。
本発明において、染色体上に導入する変異(欠失、置換、及び/又は挿入)はArf6遺伝子の正常な機能が損なわれる限り特に限定されず、これらの変異は、Arf6遺伝子のイントロン領域、エクソン領域又はArf6遺伝子の発現制御領域に存在していてよい。前記変異は、Arf6遺伝子のエクソン領域に存在することが好ましく、さらに好ましくは、Arf6遺伝子の少なくとも1つのエクソンが欠失した変異、最も好ましくは全てのエクソンが欠失した変異である。このような変異であれば、確実にArf6遺伝子の機能を欠損させることができるからである。
ターゲティングベクターは、変異導入部位の3’及び5’側の相同領域(それぞれ3’アーム及び5’アーム)に加え、組み換え体のセレクション用の選択マーカーを含んでいてもよい。選択マーカーの例としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等のポジティブセレクションマーカー、LacZ、GFP(Green Fluorescence Protein)及びルシフェラーゼ遺伝子などの破壊対象遺伝子の発現レポーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-TK)、ジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)等のネガティブセレクションマーカー等が挙げられるが、これらに限定されない。また、ベクターは相同領域の外側に、ベクターを直鎖化するための適当な制限酵素切断部位を含んでいてもよい。
図1に、マウスArf6遺伝子機能喪失用のターゲティングベクターの一例を示す。このコンストラクトは、Arf6ゲノム遺伝子のエクソン1及び2を含む配列を、ネオマイシン耐性遺伝子を含む相同領域で置換するように構築されている。さらに前記ベクターには、ネガティブセレクションマーカーとしてDTAが挿入されている。このようなターゲティングベクターは、市販のプラスミドベクター(例えば、pBluescriptII (Stratagene製)等)をベースにして構築することができる。
(2)多能性幹細胞へのターゲティングベクターの導入
次に、構築されたターゲティングベクターを、生殖細胞に分化可能な多能性幹細胞に導入する。このような幹細胞の例としては、人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cell: iPS細胞)又は胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞)が挙げられる。iPS細胞は、マウス、ラット、イヌ、ブタ、カニクイザル等の細胞で樹立されており、一方で、ES細胞は、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ウシ、カニクイザル等の細胞で樹立されている。
ターゲティングベクターは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、ウィルス感染等、公知の遺伝子導入法により前記多能性幹細胞へ導入することができる。遺伝子導入法の詳細については、前記Cold Spring Harbor Laboratory Press等を参照することができる。
ターゲティングベクターが導入された多能性幹細胞は、ベクター中に挿入されたマーカーにより容易に選択することができる。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子をマーカーとして導入した細胞であれば、G418を加えた培地中で培養することにより、一次セレクションを行うことができる。また、ターゲティングベクターがGFP等の蛍光タンパク質の遺伝子をマーカーとして含む場合には、薬剤耐性によるセレクションに加えて、FACS(Fluorescence Activated Cell Sorter)等を用いた蛍光タンパク質発現細胞のソーティングを行ってもよい。
ターゲティングベクターが導入された多能性幹細胞では、相同組み換えによって、染色体上のArf6遺伝子の一部が該ベクターの相同組換え配列で置換され、内因性のArf6遺伝子が破壊される。所望の相同組換えが生じたか否かは、サザンブロティングやPCR法等を利用したジェノタイプ解析によって判定できる。サザンブロッティングによるジェノタイプ解析は、組換え細胞のみに含まれる薬剤耐性遺伝子又は蛍光タンパク質遺伝子等の配列をプローブとして用いることにより行うことができる。PCR法によるジェノタイプ解析も、組換え細胞のみに含まれる薬剤耐性遺伝子又は蛍光タンパク質遺伝子等の配列に相補的なプライマーを作製し、これらのプライマーでPCR増幅を行うことで、組換え細胞を検出することができる。
(3)キメラ動物の作製
ターゲティングベクターが導入された多能性幹細胞は、該多能性幹細胞が由来する系統とはコートカラーが異なる系統由来の初期胚に導入し、キメラ動物として発生させる。例えば、マウスのES細胞を相同組換えする場合であれば、アグーチ色の毛色を有する129系由来のES細胞と、体毛が黒色のC57BL/6マウス等の初期胚とを用いることできる。このように別系統に由来する多能性幹細胞と初期胚とを用いてキメラ動物を作製すれば、その毛色によって、キメラ率を判断することができる。
多能性幹細胞の初期胚への導入は、マイクロインジェクション法(Hogan, B. et al. ”Manipulating the Mouse Embryo” Cold Spring Habor Laboratory Press, 1988)又はアグリゲーション法(Andra, N. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 8424-8428, 1993, Stephen, A.W. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 4582-4585, 1993)等により行うことができる。
マイクロインジェクション法は、多能性幹細胞を初期発生段階の胚(例えば、8細胞期胚から胚盤胞(blastocyst)に直接注入する方法である。この方法では、動物から採取した胚に、マイクロマニピュレーター等を用いて組換え多能性幹細胞を顕微鏡下で直接注入してキメラ胚を作製する。一方、アグリゲーション法では、透明帯を除去した1〜2個の8細胞期胚と多能性幹細胞との共培養で細胞を凝集させることによりキメラ胚を得る。
このようにして作製されたキメラ胚を、仮親(偽妊娠動物)の子宮に移植して発生させることにより所望のキメラ動物を得ることができる。
(4)Arf6遺伝子機能喪失動物の作製
仮親から得られたキメラ動物を、さらに同系の野性型動物と交配させることにより、Arf6遺伝子機能喪失のヘテロ接合動物を得ることができる。各個体のジェノタイプは、毛色等の外見上の特徴で一時判定できるほか、前述したサザンブロッティングやPCR法を利用したジェノタイプ解析によって決定することができる。次に、ヘテロ型のArf6遺伝子機能喪失動物同士を交配させることで、ホモ接合動物を得ることができる。
上記のようにして作製されたArf6遺伝子機能喪失動物の子孫も、染色体上のArf6遺伝子の機能が喪失している限り、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に含まれる。
2.2 Cre-loxPシステムの利用
先に述べたように、本発明者らは、Arf6のノックアウト(KO)マウスを作製し、その解析を行った結果、これらのKOマウスが、胎生期13.5 日目頃から死亡し、出生までにほぼ全ての個体が死に至るという知見を得ている(Suzuki, T. et al., Mol Cell Biol 26, 6149-6156 (2006))。上記知見から、発生初期段階から全身においてArf6遺伝子機能が欠損している場合は、そのArf6遺伝子機能喪失動物は、出産後に生存することができないと考えられる。従って、本発明において、Arf6遺伝子機能喪失動物は、該遺伝子の機能喪失が、時間特異的又は組織特異的に制御されていることが好ましい。このようにArf6遺伝子の機能喪失を時間特異的又は組織特異的に制御できる動物の例としては、Arf6遺伝子のコンディショナルノックアウト(Conditional Knock Out: cKO)動物が挙げられる。
cKO動物は、Cre-loxPシステムを利用して、時間特異的又は組織特異的に標的遺伝子を欠損させた動物である(Kuhn R. et al., Science, 269, 1427-1429, 1995)。loxP(locus of X-ing-over)配列は34塩基対からなるDNA配列であり(5’-ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT-3’:配列番号5)、Cre(Causes recombination)組換え酵素により認識される配列である。遺伝子上の2つのloxP配列はCreタンパク質の存在下で特異的組換えを生じる。従って、宿主細胞(多能性幹細胞等)のゲノムArf6遺伝子を、2つのloxPサイト間にArf6遺伝子の一部(好ましくは、1つ以上のエクソン)を含むターゲティングベクターによって相同組換し、さらに前記宿主細胞に時期特異的又は組織特異的に発現が制御されたCre発現ベクターを同宿主細胞に組み込めば、時期特異的又は組織特異的なCreタンパク質の発現によりloxP間のArf6遺伝子部分を欠失させることができる。
Cre発現を時期特異的又は組織特異的に制御する方法の具体例としては、動物が一定の段階に成長して初めて活性化される遺伝子(例えば、生殖細胞マーカー遺伝子等)のプロモーター、あるいは、特定の組織に特異的に発現する遺伝子(例えば、血管内皮細胞マーカー遺伝子)のプロモーターの制御下にCre遺伝子を挿入する方法が挙げられる。時期特異的な発現制御を可能にするプロモーターの具体例としては、例えば、Neuron specific enolase遺伝子(生後3日以降に神経細胞内で発現)及びPcp2遺伝子(生後6日以降に小脳プルキンエ細胞内で発現)のプロモーター等が挙げられる。また、組織特異的な発現制御を可能にするプロモーターの具体例としては、例えば、アルブミン遺伝子(肝細胞で特異的に発現)、インスリン遺伝子(膵β細胞で特異的に発現)及びNestin遺伝子(神経幹細胞及びグリア細胞に特異的に発現)のプロモーター等が挙げられる。
また、エストロゲン受容体(Estrogen Receptor:ER)のリガンド結合ドメインとCreタンパク質との融合タンパク質であるCreER又はCreERT2(以下において、「CreER等」)を用いることで、Creタンパク質の核内移行を時期特異的に調節することができる。CreER等は、不活性状態では細胞質に留まり、核内に移行することはない。しかしながら、タモキシフェン(エストロゲンの誘導体)の存在下において、CreER等は活性化され、核に移行してloxPで挟まれた配列を切り出す。この性質を利用し、組織及び時期の両パラメーターを制御しながら遺伝子をノックアウトすることができる。まず、CreER等をコードする遺伝子を、上記の組織特異的な発現制御を可能にするプロモーターの制御下に組み込んでCreER等を組織特異的に発現させる発現ベクターを作製し、このベクターを導入した細胞から動物を発生させることにより、組織特異的にCreER等を発現させるトランスジェニック動物を作製する。次に、この動物を、Arf6遺伝子がloxP配列で挟まれた配列を有するトランスジェニック動物と交配させて、CreER等を組織特異的に発現し、かつArf6遺伝子がloxP配列で挟まれた配列を有するダブルトランスジェニック動物を作製する。この動物に所望のタイミングでタモキシフェンを投与することにより、CreER等が活性化され、Arf6遺伝子を組織特異的及び時期特異的にノックアウトすることができる。CreER等を用いたコンディショナルノックアウト動物の作製については、以下を参照することができる:Nestin遺伝子プロモーターによるCreERT2発現系(Forni et al.,J Neurosci 26, 9593-9602 (2006))、VE-cadherin遺伝子プロモーターによるCreERT2発現系(Monvoisin et al.,Dev Dyn 12, 3413 - 3422 (2006))及びNaV1.8遺伝子プロモーターによるCreERT2発現系(Zhao et al.,Genesis 18, 364 - 371 (2006))。
本発明者らは、本願実施例において、血管内皮細胞で特異的に発現するTie2遺伝子のプロモーター制御下にCre遺伝子が挿入されたベクターを用いている。Tie2遺伝子は、TEK受容体チロシンキナーゼとも呼ばれるチロシンキナーゼ受容体をコードしており、内皮細胞において特異的に発現することが知られている。Tie2遺伝子のプロモーターに関する情報及びTie2-Creマウスの作製方法については、それぞれ以下を参照することができる:Schlaeger et al., Proc Natl Acad Sci USA 94, 3058-3063 (1997)及びKisanuki et al., Dev Biol 230, 230-242 (2001)。
Cre-loxPシステムによりcKO動物を作製する第1の方法として、2つのloxPサイト間にArf6遺伝子の一部(好ましくは、1つ以上のエクソン)を含むターゲティングベクターによって多能性幹細胞を相同組換し、該細胞に、さらに時間特異的又は組織特異的に発現が制御されたCre発現ベクターを導入することでダブルトランスジェニック多能性幹細胞を作製し、該ダブルトランスジェニック細胞を初期胚に導入してキメラ動物を作製し、該キメラ動物同士の交配によりcKO動物を作製する方法が挙げられる。あるいは第2の方法として、上記loxPターゲティングベクターで相同組換えしたシングルトランスジェニック多能性幹細胞を初期胚に導入してキメラ動物を作製し、該キメラ動物を交配させて、loxP相同組換動物を作製する。他方、Cre発現ベクターを導入したCre発現組換え動物を作製する。そして、前記loxP相同組換動物とCre発現組換え動物とを交配させることによって、Cre-loxP組換え動物を作製する。
2.3 体細胞クローン
多能性幹細胞が利用できない動物の場合、体細胞クローン(I. Wilmut et al, Nature, Vol.385, 810-813, 1997、A. E. Schnieke et al, Science, Vol.278, 2130-2133, 1997)を利用してArf6遺伝子欠損動物を作製することも可能である。体細胞クローンとは、体細胞から取り出した核を、脱核した未受精卵に移植してクローン胚を作製し、このクローン胚を仮親の子宮に移植して発生させたクローンである。従って、体細胞に前述の遺伝子組換えを行ってArf6遺伝子の機能喪失を生じさせ、該体細胞の核を取り出し、これを脱核した未受精卵に移植して、クローン胚を作製することができる。次に、このクローン胚を仮親(偽妊娠動物)の子宮に移植して発生させれば、Arf6遺伝子の機能喪失を有する体細胞クローン動物を得ることができる。
2.4 RNAi
上記以外にも、Arf6遺伝子の機能を欠損させる方法として、siRNA(small interfering RNA)等を用いたRNA干渉(RNA interference: RNAi)法が挙げられる。RNAi は、複数の段階を経て行われるマルチステッププロセスである。最初に、RNAi発現ベクターから発現した二本鎖RNA(Double Stranded RNA: dsRNA)又はヘアピン状のshRNA(Small Hairpin RNA)が Dicerによって認識され、21〜23 ヌクレオチドの siRNAs に分解される。次に、siRNAs は RNA 誘導型サイレンシング複合体 (RNA-Induced Silencing Complex: RISC) と呼ばれる RNAi 標的複合体に組み込まれ、RISC とsiRNAsとの複合体がsiRNAの配列と相補的な配列を含む標的mRNAに結合し、mRNAを分解する。標的mRNAは、siRNAに相補的な領域の中央で切断され、最終的に標的mRNAが速やかに分解されてタンパク発現量が低下する。最も効力の高い siRNA 二重鎖は、19bpの二重鎖の各3’末端にウリジン残基2個の突出部分を持つ 21 ヌクレオチド長の配列であることが知られている(Elbashir S.M. et al., Genes and Dev, 15, 188-200 (2001))。
従って、Arf6遺伝子ノックダウン動物を得るには、まず、配列番号1に示すArf6遺伝子配列の一部と相補的な配列を含むヌクレオチドを、適切なRNAi発現ベクターにdsRNA又はshRNAとして発現可能な状態で挿入してRNAiベクターを作製する。次に、該ベクターを多能性幹細胞に導入し、該多能性幹細胞からヘテロ動物を発生させ、該へテロ動物同士を交配させる。これにより、Arf6遺伝子ノックダウン動物を得ることができる。Arf6をターゲットとするsiRNAの配列については、例えば、Balana ME et al.,( Journal of Cell Science 118, 2201-2210 (2005))を参照できる。
dsRNA又はshRNAの設計及び合成は、市販のDNA/RNAシンセサイザー、例えば、Applied Biosystems394型で行うことも可能であり、あるいは第三者機関(例えば、TAKARA Bio)に委託することもできる。
また、Dickins RA. et al.,(Nature Genetics, 39(7): 914-921 (2007))に報告されるように、RNAiによる時期特異的又は組織特異的な発現抑制も可能である。具体的には、まず、テトラサイクリン感受性(Tet-On)のプロモーター制御下で、Arf6遺伝子ターゲティング用のdsRNA又はshRNAを発現できるようにRNAi発現ベクターを作製する。次に前記RNAi発現ベクターを多能性幹細胞にトランスフェクションして、トランスジェニック多能性幹細胞を作製する。一方で、先の「2.2 Cre-loxPシステムの利用」の項目で述べたような時期特異的又は組織特異的に活性化されるプロモーターの制御下でテトラサイクリントランスアクチベーター(tetracycline trans-activator: tTA)を発現するtTA発現ベクター作製し、該tTA発現ベクターを前記トランスジェニック多能性幹細胞に導入する。さらに、得られたダブルトランスジェニック多能性幹細胞からキメラ動物を発生させ、該キメラ動物同士を交配させて、Arf6コンディショナルノックアウトのヘテロ接合型動物を作製し、該動物同士を交配させることにより、Arf6遺伝子の両方のアレルを時期特異的又は組織特異的にノックダウン可能な動物を作製することができる。
あるいは、前記RNAi発現ベクターを導入した第1のトランスジェニック動物と、前記tTA発現ベクターを導入した第2のトランスジェニック動物を別々に作製し、これら第1及び第2の動物同士を交配させることによって、時期特異的又は組織特異的にArf6遺伝子をノックダウン可能な動物を作製することもできる。
テトラサイクリン感受性のRNAi発現ベクターは、市販のもの(例えば、KnockoutTM Tet RNAi System P(Clontech))を用いてもよく、又はDickins RA. et al.,(Nature Genetics, 39(7): 914-921 (2007))に記載の方法で作製してもよい。
3.Arf6遺伝子機能喪失動物の表現型
本発明のArf6遺伝子機能喪失動物において、同系統の野生型動物とは異なる表現型が現れた場合、それはArf6遺伝子の機能喪失に起因することが予測される。例えば、Arf6遺伝子機能喪失マウスでは、以下に代表される変化が認められた。
(1)血管新生の低下
(2)移植した腫瘍細胞の増殖率の低下
血管新生の低下については、特に、HGF誘導による血管新生が顕著に低下することが判明した(図5)。
従って、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物の表現型を解析することにより、Arf6遺伝子の生体機能について知見を得ることができる。
4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤
本発明者らは、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物の表現型を詳細に観察した結果、Arf6遺伝子の機能を阻害することにより、該動物体内の腫瘍細胞の増殖率が低下することを見出した。従って、Arf6遺伝子又はARF6タンパク質の阻害物質を含む医薬を腫瘍患者に投与すれば、腫瘍患者の体内において、Arf6遺伝子又はARF6タンパク質の機能が阻害されることになり、結果として腫瘍治療効果を得ることができる。
従って、本発明は、Arf6阻害物質を有効成分として含む、腫瘍を治療するための医薬組成物を提供する。
本発明の医薬組成物の治療対象となる腫瘍の種類は、特に限定されず、良性腫瘍又は悪性腫瘍のいずれでもよい。このような腫瘍の例としては、(1)骨肉腫や軟部組織肉腫等の肉腫、(2)乳癌腫、肺癌腫、膀胱癌腫、甲状腺癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、結腸直腸癌腫、膵臓癌腫、胃癌腫、肝臓癌腫、子宮癌腫、子宮頸癌腫、卵巣癌腫等の癌腫、(3)ホジキンや非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、(4)神経芽細胞腫、(5)メラノーマ、(6)ミエローマ、(7)ウィルムス腫瘍、(8)急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)及び慢性リンパ性白血病(CLL)等の白血病、(9)グリオーマ、(10)網膜芽細胞腫等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、腫瘍は、血管新生を伴う腫瘍であり、最も好ましくは、Arf6を発現している腫瘍である。ヒト乳癌でも、転移能の高い癌で高頻度にArf6の活性化因子の発現上昇がみられることが報告されている(Sabe et al., Traffic 10, 982-993 (2009))。
本発明において、「Arf6阻害物質」としては、Arf6の機能を阻害する効果を有する薬剤又は化合物を意味する。「Arf6の機能阻害」としては、(a)腫瘍細胞におけるARF6タンパク質を介するシグナル伝達の阻害、及び(b)Arf6遺伝子の発現の阻害が考えられる。
ARF6タンパク質を介するシグナル伝達の阻害としては、ARF6タンパク質には、GDPに結合した不活性型とGTPに結合した活性型が存在するため、特に好ましくは、GTP結合型ARF6タンパク質の機能の阻害が挙げられる。このような阻害効果を有する物質には、GTP結合型ARF6タンパク質に結合してその機能を喪失させる化合物又は中和抗体、あるいはGTP結合型ARF6タンパク質を不活性化させる物質が含まれる。
GTP結合型ARF6タンパク質に結合してその機能を喪失させる化合物又は中和抗体としては、ARF6タンパク質のGTP結合部位に結合することにより、ARF6タンパク質とGTPとの結合を阻害する化合物又は抗体が考えられる。ARF6タンパク質のGTP結合部位をエピトープとする抗体は、ARF6タンパク質のGTP結合部位を含むペプチドで適切な抗体産生動物(例えば、モルモット及びウサギ等のげっ歯類動物)を免疫し、その血清から定法に従って精製することで作製できる。また、このような抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましく、さらにヒト化モノクローナル抗体であることが好ましい。ヒト化モノクローナル抗体の作製方法については、例えば、特許公報第2912618号を参照できる。
GTP結合型ARF6タンパク質を不活性化させる物質としては、例えば、G Protein-Coupled Receptor Kinase-Interacting Protein 1(GIT1)が挙げられる(Meyer MZ et al., J.B.C. March 24, Vol. 281, Number 12, 7919-7926 (2006))。
一方、Arf6遺伝子の発現を阻害する物質としては、例えば、Arf6遺伝子の発現産物、例えば、Arf6のhnRNA、mRNA及びペプチドの合成を阻害する物質又はこれら発現産物を分解する物質が挙げられる。このような物質の具体例としては、ARF6の変異体タンパク質(例えば、アミノ酸配列の27番目のトレオニンがアスパラギンで置換されたT27N変異体、又は特定のタンパク質との結合能を失ったエフェクター領域変異体等)、cytohesin(ARF6の活性因子Guanine-nucleotide Exchange Factor(ARF6-GEF)の一つ)を阻害するSecinH3及びその類似化合物、ARF6-GEFであるARF-GEP100(Guanine-nucleotide Exchange Protein 100)又はEFA6(Exchange Factor for Arf6)の活性欠失型変異体、ARF6-GAP(GTPase-activating protein)、並びに上記項目「2.4 RNAi」で述べた、siRNAが挙げられる。
患者は、腫瘍を有する哺乳動物であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。
本発明の医薬組成物の投与経路は、該候補薬剤の投与に一般的に採用されている経路であれば、特に限定はされないが、具体例としては、経口、舌下、経鼻、経肺、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射、外科的移殖が挙げられ、好ましくは静脈内注射である。
腫瘍の「治療」とは、患者体内に存在する腫瘍の増殖率を低下させることを意味する。腫瘍は、本発明の医薬組成物を投与した場合に、投与しなかった場合と比べて腫瘍の増殖速度が低下していれば、該腫瘍は本発明の医薬組成物によってその「増加率が低下した」と判断できる。
患者体内の腫瘍の増殖は、MRI(磁気共鳴画像)又はエコー等の診断機器を用いて容易にトレースすることができる。
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、粉末等の固形剤であってもよく、溶液、懸濁液若しくは乳液等の液剤、又は軟膏、クリーム若しくはペースト等の半液体製剤であってもよい。
上記有効成分は、単独で使用してもよく、又は薬理学的に許容可能な他の成分と共に調合してもよい。薬理学的に許容可能な他の成分の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、抗酸化剤、保存剤、補助剤、滑沢剤、甘味剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の医薬組成物は、有効成分であるArf6阻害物質を治療上有効量で含み得る。ここで、「治療上有効量」とは、その量の有効成分を対象に投与することにより、腫瘍の増加率を低下させることが可能な量を意味する。例えば、静脈内注射剤の場合、治療上有効量は、0.001〜10重量%であり、好ましくは、0.01〜5重量%であり、より好ましくは、0.1〜2重量%である。
本発明の医薬組成物の投与量及び投与頻度は、対象の種、体重、性別、年齢、腫瘍疾患の進行度、投与経路といった種々の要因に依存して変化するが、医師、獣医師、歯科医師又は薬剤師等の当業者であれば、それぞれの要因を考慮して投与量を決定することができる。例えば、本発明の医薬組成物を体重60kgの成人に局所投与する場合、毎日1〜4回、好ましくは1又は2回投与してもよく、1回あたりの投与量は、0.1〜150 mgであり、好ましくは1〜50 mgである。
上記の治療上有効量、投与量及び投与頻度は、典型的な数値を列挙したものであり、これを超える数値又は下回る数値であっても腫瘍の増加率が低下する場合も十分に考えられる。従って、上記の治療上有効量、投与量及び投与頻度を超える数値又は下回る数値であっても、本発明の医薬組成物の治療上有効量、投与量及び投与頻度として包含される。
5.腫瘍治療剤のスクリーニング方法
本発明者らは、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物の表現型を詳細に観察した結果、Arf6遺伝子の機能を阻害することにより、該動物体内の腫瘍細胞の増殖率が低下することを見い出した。この知見に基づき、任意の化合物について、Arf6阻害効果を有することを確認できれば、その化合物を投与した動物体内ではArf6遺伝子又はARF6タンパク質の機能が阻害されることになるため、該動物体内の腫瘍の増加率も低下すると予測される。ゆえに、このようなArf6阻害効果を有する化合物は、腫瘍の増加率を低下させる作用を有するものと判断することができる。
従って、本発明は、以下の工程を含む、腫瘍の治療剤のスクリーニング方法を提供する。
(a)腫瘍細胞と候補化合物とを接触させる工程
(b)Arf6の機能阻害効果を検出する工程
本発明において、「腫瘍細胞」の「腫瘍」は、上記「4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤」の項で述べた通りである。従って、腫瘍細胞とは、前記腫瘍に含まれる細胞を意味する。また、腫瘍細胞は、Arf6遺伝子が発現されているものが好ましい。
候補化合物は、特に限定されないが、具体例としては、Arf6の活性低下と関連性が示唆されている化合物、例えば、ARF6タンパク質のGDP/GTPサイクルのメディエーター等が考えられる。候補化合物は、ペプチド、低分子化合物、高分子化合物、これらの塩又は前駆体等のあらゆる形態にあってもよい。
本発明において、「腫瘍細胞と候補化合物とを接触させる」とは、該候補化合物が、腫瘍細胞表面の分子と相互作用を生じさせる程度に接近するか、該分子と結合するか、又は該腫瘍細胞内に取り込まれる条件を調整することを意味する。腫瘍細胞が、培養細胞である場合、該細胞が接している培養培地に該候補化合物を一定濃度以上で添加することにより、該細胞と候補化合物とを接触させることができる。一方、腫瘍細胞が動物体内に存在する場合、該動物に候補化合物を一定量で投与することにより、該腫瘍細胞と候補化合物とを接触させることができる。この場合、投与経路は、上記「4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤」の項で述べた通りである。
本発明において、「Arf6の機能阻害」は、上記項目「4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤」で述べた通りである。候補化合物によるArf6の機能阻害効果は、候補化合物の投与によるArf6遺伝子の発現量の低下又はARF6タンパク質量の低下として確認することができる。Arf6遺伝子の発現量は、腫瘍細胞抽出物を用いたRT-PCR法及びアガロースゲル電気泳動、Real-Time PCR法、ノーザンブロッティング法、マイクロアレイ解析並びに質量分析法等によって測定することができる。これらの測定方法に用いるプライマー又はプローブは、GenBank等のデータベースに登録されるArf6遺伝子の配列に基づいて設計及び合成することができる。
一方、ARF6タンパク質の量は、腫瘍細胞抽出物を用いたSDS-PAGE、2次元電気泳動解析、ウェスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴法及び各種クロマトグラフィー法等により測定することができる。これらの測定方法に用いる抗体又はその断片は、市販の抗ARF6抗体(例えば、Sigma、A5230)を用いてもよく、あるいは、上記「4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤」の項に記載の方法で作製した抗体を用いてもよい。
ARF6タンパク質には、GDPに結合した不活性型とGTPに結合した活性型が存在するため、「Arf6の機能阻害」の確認においては、GTP結合型ARF6タンパク質量の測定を行うことが好ましい。本発明者らは、JNK-interacting protein(JIP)であるJIP3及びJIP4のロイシンジッパー領域(それぞれLZ領域及びLZII領域)が、GTP 結合型ARF6タンパク質と特異的に結合し、他のARFファミリータンパク質又はGDP結合型ARF6タンパク質とは相互作用を起こさないことを見い出し、JIP3のLZ領域及びJIP4のLZII領域を用いたGTP 結合型ARF6タンパク質の定量方法を完成させている。従って、GTP結合型ARF6タンパク質量は、上記定量方法によって測定することができる。
6.血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法
本発明は、上記Arf6遺伝子機能喪失動物を用いた、血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法を提供する。
抗腫瘍治療においては、腫瘍細胞の増殖を抑制する腫瘍増殖抑制剤及び/又は血管新生を抑制する血管新生抑制剤を投与する化学療法が行われているが、腫瘍増殖抑制剤は腫瘍化していない正常細胞の活動も阻害するため、可能な限り投与量を抑えることが好ましい。そこで、治療に先立って、患者の腫瘍が、血管新生抑制剤に対して高い感受性を示すと判断できる場合には、血管新生抑制剤による作用を主たる抗腫瘍効果とした治療計画を立て、腫瘍増殖抑制剤の投与量を抑制することが可能になる。
前述の通り、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物は、同系統の野生型動物と比較して、血管新生のレベルが低下するという表現型を示す。従って、患者から採取した腫瘍を本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に移植し、その増殖率が低下したと判断される場合には、同腫瘍の増殖は血管新生に対する依存度が高いものと考えられるため、血管新生抑制剤の投与により該腫瘍の増殖を抑制できることが期待される。
本方法の具体的な工程としては、患者から摘出された腫瘍組織又は該組織に含まれる細胞を本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に移植する工程、移植した腫瘍組織又は細胞をArf6遺伝子機能喪失動物から再摘出し、腫瘍組織又は細胞の増殖率を測定する工程等が挙げられる。
患者は、腫瘍を有する哺乳動物であれば特に限定されないが、好ましくはヒトである。
腫瘍の種類は、上記「4.Arf6阻害物質を有効成分として含む抗腫瘍剤」の項で述べたとおりである。
これらの腫瘍組織を摘出後に直ぐに本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に移植してもよく、あるいは摘出した腫瘍組織から腫瘍細胞を単離し、一定数に調整した細胞をArf6遺伝子機能喪失動物に移植してもよい。移植方法は特に限定されないが、移植した腫瘍細胞の再摘出の容易性から、皮下注射又は腹腔内注射が好ましい。
腫瘍組織を直接移植する場合、増殖率(%)は、腫瘍組織の体積若しくは重量又は腫瘍細胞の細胞数の増加率を指標に測定することができるが、体積を基準に測定する場合には、以下の式により増殖率を求めることができる。
腫瘍増殖率(%)=[{(再摘出時の腫瘍の体積)−(移植時の体積)}/(移植時の体積)]x 100
また、腫瘍組織の体積は、以下の式により求めることができる。
腫瘍体積 = 長さ x 幅2 x 0.52
Arf6遺伝子機能喪失動物に移植した腫瘍の増加率が、該Arf6遺伝子機能喪失動物と同系統の野生型動物(対照動物)に移植した腫瘍の増加率よりも小さい場合には、前記腫瘍は、血管新生抑制剤に対して感受性を有するものと判断することができる。
Arf6遺伝子機能喪失動物と対照動物とに移植した腫瘍の増殖率の比較は、患者から採取した腫瘍組織の一部をArf6遺伝子機能喪失動物に移植し、残りの組織(又はその一部)を対照動物に移植して、並行して腫瘍の増殖過程を観察することにより行ってもよい。あるいは、サンプルの腫瘍と同一種類の腫瘍に関し、既に本発明のArf6遺伝子機能喪失動物体内での増加率について複数のデータが存在する場合には、そのデータを統計処理して得られる平均値、標準偏差等から導き出される基準値と比較して判断してもよい。
腫瘍の増殖率の平均値、標準偏差等は、種々の統計方法によって得ることができるが、具体的には、使用したマウスの移植時の体重及び腫瘍の重量、体積又は細胞数をパラメーターとして、IBM SSPS Statistics 18(SSPS)等の統計解析ソフトでtwo-way ANOVA解析することにより求めることができる。本発明の方法の実施により得られた腫瘍サンプルの増殖率を新たなデータとして統計解析用の母集団に加えて母数を大きくすることにより、さらに解析の精度を向上させることができる。
本方法において、「血管新生抑制剤」は、特に限定されないが、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物では、Arf遺伝子の機能が喪失しており、また、HGF刺激性の血管新生が特に低下しているので、血管新生抑制剤の好ましい例としては、Arf6阻害剤又はHGF阻害剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。Arf6の活性化阻害剤の具体例としては、例えば、cytohesinの阻害剤であるSecinH3(Hafner, M. et al., Nature 444, 941-944 (2006))及びArf6をターゲットとするsiRNAが挙げられるが、これに限定されるものではない。一方、HGF阻害剤の例としては、HGF中和抗体(Cao, B. et al., Proc Natl Aad Sci USA 98, 7443-7448 (2001))、c-Metキナーゼ活性阻害剤であるPHA-665752(Christensen, J.G. et al., Cancer Res 63, 7345-7355 (2003))、c-MetデコイペプチドであるSoluble Met(Michieli, P. et al., Cancer Cell 6, 61-73 (2004))、HGFの拮抗的阻害剤であるNK4(Brockmann M.A. et al., Clin Cancer Res 9, 4578-4585 (2003))、並びにHGF及びc-Metの発現抑制を目的としたU1 snRNA/ribosome(Abounader, R. et al., J Natl Cancer Inst 91, 1548-1556 (1999))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
7.血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤のスクリーニング方法
本発明は、上記Arf6遺伝子機能喪失動物を用いた、血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤のスクリーニング方法を提供する。
前述の通り、腫瘍増殖抑制剤は、副作用が強いため、投与量を最小限度に留めることが、患者の負担軽減につながる。従って、実際の治療に先立って、患者に特有の腫瘍に対して最も効果的に腫瘍縮小を促す腫瘍増殖抑制剤をスクリーニングすることができれば、腫瘍増殖抑制剤の投与量を少量に抑えることができ、患者の負担を大きく軽減することが可能になる。しかしながら、抗腫瘍治療においては、腫瘍増殖抑制剤及び血管新生抑制剤の併用投与による化学療法が一般的に行われており、これらの薬剤は両者とも抗腫瘍効果を有するため、実際に観察された腫瘍縮小に対する腫瘍増殖抑制剤単独の寄与率を判断することは困難である。
しかしながら、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物を腫瘍増殖抑制剤のスクリーニングに用いた場合、該動物では血管新生が抑制されているので、血管新生抑制剤を投与する必要がなく、腫瘍増殖抑制剤単独の抗腫瘍効果を観察することができる。即ち、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物の複数の個体に患者の腫瘍組織又は腫瘍細胞を移植し、前記動物に各候補薬剤を投与し、移植した腫瘍細胞の増殖率を測定し、腫瘍縮小効果を示した薬剤を、その患者の腫瘍の治療に適切な薬剤として選択することができる。
血管新生抑制剤については、先の「6.血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法」の項で述べた通りである。
候補薬剤の例としては、既に抗腫瘍効果が確認されている薬剤及び抗腫瘍作用を潜在的に有する化合物等が挙げられる。このような薬剤又は化合物の具体例としては、代謝拮抗剤(例えば、5-フルオロウラシル (5-FU))、葉酸代謝拮抗薬(例えば、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ阻害薬であるスルファジアジン及びスルファメトキサゾール、ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬(DHFR阻害薬)であるメソトレキセート、トリメトプリム、ピリメタミン、)、ピリミジン代謝阻害薬(例えば、チミジル酸シンターゼ阻害薬である5-FU、フルシトシン(5-FC)) 、プリン代謝阻害薬(例えば、IMPDH阻害薬である6-メルカプトプリン及びそのプロドラッグであるアザチオプリン)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)阻害薬)(例えば、ペントスタチン)、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬(リボヌクレオチドレダクターゼ阻害薬であるヒドロキシウレア)、ヌクレオチドアナログ(プリンアナログであるチオグアニン、リン酸フルダラビン及びクラドリビン、ピリミジンアナログであるシタラビン及びゲムシタビン)、L−アスパラギナーゼ、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタードであるシクロホスファミド、メルファラン及びチオテパ、白金製剤であるシスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン、ニトロソウレアであるダカルバシン、プロカルバシン及びラニムスチン)抗腫瘍性構成物質(ザルコマイシン、マイトマイシンC、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン)、トポイソメラーゼ阻害剤(イリノテカン、ノギテカン、ドキソルビシン、エトポシド、レボフロキサシン、シプロフロキサシン)、微小管重合阻害剤(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン)、コルヒチン、微小管脱重合阻害薬(パクリタキセル、ドセタキセル)、分子標的剤(トラスツズマブ、リツキシマブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、エルロチニブ)、デキサメサゾン等のステロイド薬、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤及びタモキシフェン並びにこれらの組合せが挙げられるが、以上に限定されるものではない。
「投与」とは、Arf6遺伝子機能喪失動物に移植した腫瘍組織と候補薬剤とを接触させることを意味する。抗腫瘍増殖剤の候補薬剤の投与経路は、該候補薬剤の投与に一般的に採用されている経路であれば、特に限定はされないが、具体例としては、経口、舌下、経鼻、経肺、経消化管、経皮、点眼、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、局所注射、外科的移殖が挙げられる。
腫瘍組織又は腫瘍細胞の移植方法及び増殖率の測定方法は、先の「6.血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法」の項目で述べた通りである。
8.Arf6関連疾患の治療剤のスクリーニング方法
本発明は、上記Arf6遺伝子機能喪失動物を用いたArf6関連疾患の治療剤のスクリーニング方法を提供する。
本発明のArf6遺伝子機能喪失動物は、Arf6遺伝子の機能が喪失しており、同系統の野生型動物と異なる表現型を呈するため、任意の薬剤をArf6遺伝子機能喪失動物に投与して前記動物が有する機能障害(例えば、血管形成の低下)等が軽減される場合には、前記薬剤は、Arf6関連疾患に対して治療効果があると判断することができる。従って、本発明のArf6遺伝子機能喪失動物に、Arf6関連疾患治療の候補薬剤を投与し、前記動物の表現型の変化を観察することにより、Arf6関連疾患の治療剤をスクリーニングすることができる。
本発明において、「Arf6関連疾患」とは、主に、Arf6遺伝子の機能喪失により生じる疾患又は障害を意味するが、他にも、Arf6遺伝子が正常な機能を有し、正常な機能を有するARF6タンパク質が発現される場合に、該遺伝子若しくはタンパク質の発現量の異常(即ち、野生型との比較における発現量の低下若しくは増加)と関連性を有する疾患若しくは障害、ARF6タンパク質の異常な活性化若しくは不活性化により生じる疾患若しくは障害、並びにArf6遺伝子若しくはタンパク質の活性化因子又は阻害因子の細胞内濃度の増加若しくは低下を伴う疾患若しくは障害も包含する。
ARF6タンパク質については、腫瘍細胞の転移能において重要な働きを担っていることが示唆されており(Hashimoto et al., Proc Natl Acad Sci USA 101, 6647-6652 (2004); Sabe et al., Traffic 10, 982-993 (2009))、ヒト乳癌でも、転移能の高い癌で高頻度にArf6の活性化因子の発現上昇がみられることが報告されている(Sabe et al., Traffic 10, 982-993 (2009))。従って、Arf6関連疾患の具体例としては、腫瘍、特に乳癌が挙げられる。Arf6関連疾患の他の具体例としては、Niemann-Pick Type C Disease、各種感染症(特にChlamydia感染等)、インスリン抵抗性糖尿病、Dent 病及びファンコニー症候群が挙げられる。例えば、Schweitzer, J.K. et al(PLoS One 4, e5193)には、Arf6の活性を上昇させるとNiemann-Pick Type C Diseaseの病態が抑制されることが記載され、また、Balana, M.E.(J Cell Sci 118, 2201-2210 (2005))には、Chlamydiaをはじめとする各種バクテリアの感染にArf6が必要であることが記載されている。さらに、Hafner, M. et al(Nature 444, 941-944 (2006))では、Arf6の活性を抑制するとインスリン抵抗性の糖尿病様病態を示すことが報告され、Annan L.E. et al(Am J Physiol Cell Physiol 286, C768 (2004))では、Arf6 によるClC-5 クロライドチャネルの細胞内輸送の調節が、ファンコニー症候群の病態の悪化に関与していることが報告されている。また、Dent 病とARF6との関連性については、以下を参照することができる(Marshansky V et al., Biochem Cell Biol 79, 678 (2001))。
Arf6と関連性を有する疾患又は障害については、上記で述べたもの以外にも更に多くの種類のものが今後の本発明のArf6遺伝子機能喪失動物を用いた研究により同定されると期待される。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
実験方法
cKO マウスの作製
マウス Arf6 遺伝子は12 番染色体上に存在し、2つのエクソンより成るが、その両者を挟むようにloxPサイトを挿入したターゲティングベクターを構築した(図1)。組換え体選別のためのネオマイシン耐性遺伝子(Neo)は両端にFRT配列がフランキングしているため、フリッパーゼ存在下で除去することが可能である(Floxed allele)。Creリコンビナーゼ存在下ではloxPに挟まれた領域が欠損し、Knockout alleleとなる。。このように作製したベクターをエレクトロポレーション法によってマウスES 細胞株(TT2)にトランスフェクションし、相同組換え体を単離した。
正しく相同組み換えを起こしたES 細胞をネオマイシン耐性遺伝子によってポジティブ選択し、DTA遺伝子でネガティブ選択した。このようにして得られた相同組換えES細胞を胚盤胞に注入し、この胚盤胞を仮親に移植して、キメラマウスを作製した。生まれたキメラマウスのオスをC57BL/6Jメスマウスと交配させ、ヘテロマウス(Arf6-flox/+)を得た。このヘテロマウス(Arf6-flox/+)の雄及び雌を交配させ、ホモマウス(Arf6-flox/flox)を得た後、このホモマウスをTie2-Creマウスと交配させることによりTie2-Cre; Arf6-flox/+マウスを得た。このTie2-Cre; Arf6-flox/+マウスとホモマウス(Arf6-flox/flox)を交配させることにより、血管特異的Arf6-cKOマウス(Tie2-Cre-Arf6-cKO)を得た。
マウス血管内皮細胞の株化
Arf6-flox/flox マウス由来の血管内皮細胞を、Balconi G et al.,(Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:1443-1451 (2000))に記載の方法に従い、polyoma middle T 抗原を用いて株化した。Arf6-flox/flox マウスのE11.5 胎児をコラゲナーゼ/ディスパーゼ溶液(GIBCO)で処理したのち、0.1% ゼラチン(Sigma)でコートティングしたディッシュ上で、37℃、5%CO2条件下で24 時間培養した。その後、polyoma middle T 抗原を発現するレトロウイルスを感染させた。この抗原は血管内皮細胞を特異的に不死化することが可能である。1〜2 週間後に不死化した血管内皮細胞のコロニーを顕微鏡下で観察し、それ以外の細胞を機械的に除去することで純化した血管内皮細胞株を樹立した。樹立した血管内皮細胞は、VE-Cadherin の免疫染色(clone: c-19, Santa Cruz Biotechnology)、及びVEGF 受容体、エンドグリン、PECAM1 のRT-PCR により血管内皮細胞の性質を保持していることを確認した。VEGF 受容体、エンドグリン、PECAM1のPCRに用いたプライマーの配列は、それぞれ以下の通りである。
VEGFR1 sense primer:TATGGTCTGTGTGCTTAGGTCGTGC(配列番号6)
VEGFR1 antisense primer:CTGCTGTTCTCATCCGTTTCTCTGG(配列番号7)
VEGFR2 sense primer:GGAGAATCAGACAACAACCATTGGCG(配列番号8)
VEGFR2 antisense primer:CATCATAAGGCAAGCGTTCACAGCG(配列番号9)
Endoglin sense primer:CCACAGGTGAATACTCCGTCAAG(配列番号10)
Endoglin antisense primer:GCTACTCAGGACAAGATGGTCGTC(配列番号11)
PECAM1 sense primer:GTCATGGCCATGGTCGAGTA(配列番号12)
PECAM1 antisense primer:CTCCTCGGCATCTTGCTGAA(配列番号13)
また、PCR反応条件は、以下の通りである。
反応液組成:
鋳型DNA 適当量
dATP 0.2 mM
dGTP 0.2 mM
dTTP 0.2 mM
dCTP 0.2 mM
Sense Primer 1 μM
Antisense Primer 1 μM
Blend Taq Buffer (Toyobo) 1x Conc
Blend Taq Enzyme (Toyobo) 0.25 unit/30μL

反応サイクル:
95℃ 30秒
60℃ 30秒
72℃ 30秒
を1サイクルとし、30サイクル。
細胞培養
B16 メラノーマ細胞は、10% ウシ胎児血清(FCS)、50 μg/ml ストレプトマイシン、50 units/ml ペニシリンを含むダルベッコ変法イーグル(DMEM)培地中で37℃、5%CO2条件下で培養した。株化したマウス由来培養血管内皮細胞は 10% FCS、1mM Na-pyruvate、100 μM 非必須アミノ酸、55 μM 2-メルカプトエタノール、50 μg/ml ストレプトマイシン、50 units/ml ペニシリン、50 μg/ml ヘパリン、20 μg/ml Endothelial cell growth factor (Roche)を含むダルベッコ変法イーグル培地中で37℃、5%CO2条件下で培養した。
癌細胞移植実験
8 週齢雄マウスの右背中に、5 x 105 細胞のB16 メラノーマを皮下注射した。その後2 日おきにデジタルキャリパーを用いて腫瘍の大きさを測定した。腫瘍の体積は、下記の計算式を用いて算出した。

腫瘍体積 = 長さ x 幅2 x 0.52

コントロールマウス(Cre(-); Arf6(flox/flox))9匹及びTie2-Arf6-cKOマウス8匹を用いて移植実験を行った。
免疫化学染色
B16 メラノーマ細胞の皮下注射から14 日後に、B16 メラノーマ細胞に由来する腫瘍を取り出した。腫瘍は細切して4%パラホルムアルデヒドで固定した後、定法に従って凍結切片を作製した。腫瘍中に伸展している血管内皮細胞は、ラット抗PECAM1 抗体(MEC13.3, BD pharmingen)、ビオチン-抗ラット二次抗体(Vector)、ストレプトアビジン-HRP(Vector)を用いて染色した。
チューブ形成アッセイ
Growth Factor Reduced Matrigel(BD pharmingen)を24 well プレート上に充填し、37℃で 30 分間重合させた。マウス由来血管内皮細胞を、重合させたMatirgel 上に播種し、2% FCS を含む DMEM 中で50 ng/ml VEGF (Peprotech)又は50 ng/ml HGFのいずれかの存在下、あるいは非存在下において37℃、5%CO2で8 時間培養した。形成されたチューブを実体顕微鏡下で観察し、チューブの長さを計測した。
結果
Arf6 ストレートノックアウトマウスで血管形成の異常が観察されたが、当該マウスが胎生致死であり、解析に不向きであるため、組織特異的なノックアウトマウスを作製することを試みた。まず定法に従ってArf6-floxed マウスを作製した。作製されたfloxed マウスをTie2-Cre マウスと交配することにより、Tie2-Arf6-cKO を得た。このTie2-Arf6-cKO マウスは成体まで成長し、形態学的、行動学的に特に目立った異常は観察されなかった。しかし、胎生期13.5 日目の胚を観察したところ、頭部および背部に血管密度の減少が見られた(図2)。
次に、Tie2-Arf6-cKO マウスにおいて腫瘍組織の成長時における血管新生が受ける影響を検討した。培養したB16 メラノーマ細胞をマウス背部の皮下に移植し、腫瘍組織の大きさを定量した。その結果、Tie2-Arf6-cKO マウスではコントロールのArf6-flox/flox マウスに比べて腫瘍の増大が抑制されていることが分かった(図3)。また腫瘍組織内の血管を免疫染色法で検討したところ、PECAM1陽性の成熟血管が少ないことが分かった(図4)。従って、B16 メラノーマ細胞による腫瘍組織の増殖には、Arf6 依存的な血管新生が必要であると考えられた。
また、GTP 結合型Arf6 がHGF 又はVEGF誘導性の血管新生に関与しているかどうかを検討した。培養血管内皮細胞のチューブ形成は、血管新生の試験管内実験法として一般的に利用されるので、この実験系を用いた。本実施例で作製したArf6-floxed/floxed マウスでは、Cre リコンビナーゼ存在下でArf6 遺伝子が欠損する。そこで、Arf6-floxed/floxed マウスより調製した培養血管内皮細胞にCre リコンビナーゼ発現ウイルス(若しくはコントロールウイルス)を処理することにより、Arf6 が欠損した血管内皮細胞を調製し、HGF 若しくはVEGF によるチューブ形成が影響されるかを検討した(図5)。その結果、Arf6 の欠損はHGF によるチューブ形成を阻害したが、VEGF によるチューブ形成は阻害しなかった。
以上の結果をまとめると、Arf6 はHGF により活性化され(GTP 結合型への変換)、その血管新生作用に関与する一方、VEGF によっても短時間で活性化されるが、この活性化はVEGF による血管新生には重要ではないと考えられる。
今回の解析より、マウス由来B16 メラノーマ細胞による腫瘍組織増大にはArf6 依存的な血管新生が必要であることが分かった。すなわち、Arf6 の活性を抑えることができれば、腫瘍の増大を抑えることができると考えられる。
配列番号5: 合成DNA
配列番号6: 合成DNA
配列番号7: 合成DNA
配列番号8: 合成DNA
配列番号9: 合成DNA
配列番号10: 合成DNA
配列番号11: 合成DNA
配列番号12: 合成DNA
配列番号13: 合成DNA

Claims (9)

  1. 血管内皮細胞で特異的に発現する遺伝子のプロモーターにより制御されたCre遺伝子の発現によりArf6遺伝子の機能を喪失させた、コンディショナルノックアウト非ヒト哺乳動物。
  2. Arf6遺伝子の機能が、染色体上の少なくとも一方のアレルで喪失したものである、請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。
  3. 前記血管内皮細胞で特異的に発現する遺伝子のプロモーターが、Tie2遺伝子のプロモーターである、請求項1又は2に記載の非ヒト哺乳動物。
  4. げっ歯類動物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物。
  5. 以下の工程を含む、血管新生抑制剤に対する腫瘍の応答性を検査する方法。
    (a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に腫瘍細胞又は腫瘍組織を移植する工程
    (b)前記移植した腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖率を測定する工程
  6. 前記血管新生抑制剤が、Arf6阻害剤又はHGF阻害剤である、請求項5に記載の方法。
  7. 以下の工程を含む、血管新生抑制剤と併用投与する抗腫瘍増殖剤のスクリーニング方法。(a)請求項1〜6のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に腫瘍細胞又は腫瘍組織を移植する工程
    (b)前記動物に候補薬剤を投与する工程
    (c)前記移植した腫瘍細胞又は腫瘍組織の増殖率を測定する工程
  8. 前記血管新生抑制剤が、Arf6阻害剤又はHGF阻害剤である、請求項7に記載の方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の非ヒト哺乳動物に候補薬剤を投与する工程を含む、Arf6関連疾患の治療剤のスクリーニング方法。
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