JP5724727B2 - 高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法 - Google Patents

高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電動機、発電機、変圧器の磁心等の用途に好適であり、これらの磁心の小型化やエネルギー損失低減に貢献できる高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法に関する。
従来から電動機、発電機、変圧器等の磁心にはケイ素などを合金化した電磁鋼板が用いられている。電磁鋼板のうち、結晶方位が比較的ランダムな無方向性電磁鋼板は安価なコストで製造できるため、家電などのモータや変圧器などに汎用的に使用されている。この無方向性電磁鋼板の結晶方位はランダムなため、高い磁束密度は得られない。これに対し、結晶方位を揃えた方向性電磁鋼板は、高い磁束密度が得られるため、HV車などの駆動用モータなどハイエンド用途へ適用されている。しかし、現在工業化されている方向性電磁鋼板の製造には、長時間の熱処理が必要とされコストの高いものとなっている。
工業化されている方向性電磁鋼板の製造方法以外の方法、特に、仕上焼鈍の昇温過程で、再結晶途中や再結晶後に磁場を印加して特定の結晶方位の集積度を高める技術として、次のような技術がある。
特許文献1には、無方向電磁鋼板の製造方法において、Si:2〜4mass%を含む珪素鋼板の冷間圧延仕上げ焼鈍時の回復ないし再結晶の初期段階に磁場を印加させて、集合組織をランダム化して磁気特性を向上させる技術が開示されている。この技術では、磁場の印加方向は、鋼板の圧延方向と同じであり、{hk0}〜{100}<001>の集積度が高まり、{111}面方位の集積度を低減することにより、板面内の全方向にわたって磁化されることを目的としている。
特許文献2には、一方向電磁鋼板の製造方法において、再結晶の際に圧延方向に磁場を印加し、圧延方向への結晶配向を<001>に促進することを目的とする技術が開示されている。
特許文献3には、二方向性電磁鋼板の製造方法において、被処理鋼板をキューリー温度以下250℃以上の温度域で磁化容易方向に静磁界もしくは交番磁界を加えながら熱処理して、磁歪や鉄損を低減することを目的とする技術が開示されている。
非特許文献1には、アームコ鉄を熱間鍛造して、冷間圧延した板を最大1.5Tの磁場を印加しながら、700℃で熱処理して再結晶した結果、磁場印加方向と平行に<100>方位をもつ集合組織が増加することが報告されている。
しかしながら、特許文献3のような既に再結晶した鋼板の磁化容易方向に磁場をかけるだけでは満足な磁気特性を得られない。また、特許文献1、2や非特許文献1のような、鋼板の圧延方向や磁化容易方向に磁場をかけながら再結晶させる場合でも、それだけでは満足な磁気特性を得られない。
特開平5−33062号公報 特開平10−158741号公報 特開2009−127073号公報
Scandinavian Journal of Metallurgy 10(1981)P.3-8
高磁束密度、低鉄損の電磁鋼板を実現するためには、脱炭や焼鈍などに長時間の熱処理や、高圧下率で冷延する必要があり、高コスト化の原因となっていた。
そこで、本発明の課題は、高い{200}集合組織を有し、さらに、高い電気抵抗が付与されたFe系金属板を、短時間の熱処理や通常圧下率の冷延板を用いて、効率的かつ安定的に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記先行文献で開示されているような磁場中熱処理により{100}面の集積度を高める方法に基づき、さらにα−Fe相の{200}面集積度を高める方法について検討した。その結果、磁場の印加だけでは集積度の向上に限界があり、磁場中での回復・再結晶により形成された{100}面の集積度を高めた集合組織を板全体でさらに高めるために、別の手段と組み合わせる必要があることを知見した。
そしてさらに検討した結果、磁場中熱処理によって{100}面の集積度を高めた鉄板をA点以上の温度に加熱し、表面からFe以外の異種金属を鉄板内に拡散させて合金化させ、その後冷却すると、鉄板の{200}面集積度が高くなることを見出した。
そのような検討の結果なされた本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)高い{200}面集積度を有するFe系金属板を製造する方法であって、
(a)α−γ変態成分系のFe系金属よりなり、加工組織を有する母材金属板を準備する工程と、
(a2)準備した母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着する工程と、
(b)フェライト生成元素の付着した母材金属板を、キューリー温度以下では磁場を印加させながら母材のA点まで加熱し、母材金属板内の一部または全体にフェライト生成元素を拡散させ、合金化させる工程と、
(c)母材金属板をA点以上1300℃以下の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素の拡散によって合金化されたα−Fe相の{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
(d)母材金属板をA点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該領域の{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となるようにする工程
とを有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(2)前記(1)に記載のFe系金属板を製造する方法において、前記(a2)、(b)の工程に代えて、次の
(e)準備した母材金属板に磁場を印加させながら前記Fe系金属のキューリー温度(℃)±50℃の温度まで加熱する熱処理を行う工程と、
(f)該熱処理後の母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着する工程と、
(g)フェライト生成元素の付着した金属板を母材のA点まで加熱して、母材金属板内の一部または全体にフェライト生成元素を拡散させ、合金化させる工
を有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(3) 前記母材金属板に、磁束密度で0.01T以上の磁場を圧延方向と垂直に印加することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
(4) 前記母材金属板に、磁束密度で0.01T以上の磁場を圧延方向と垂直に印加するとともに、磁束密度で0.2T以上の磁場を圧延方向と平行に印加することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
本発明によれば、圧延面内あるいは圧延面内とそれに垂直な面内の両方に、α−Feの{200}面が高集積化したFe系金属板を、従来のように長時間の熱処理を必要とせずに製造することができる。また、得られるFe系金属板は、<100>軸が圧延面内やそれに垂直な面内に集積しているため、同じ磁界を印加された場合により高い磁束密度が得られる。
さらに、少なくとも表層部に電気抵抗を増加する異種金属の拡散層を有するFe系金属板が得られるため、高周波鉄損の低減にも大きな効果が期待される。
{200}面集積度を高めたFe系金属板を得るための過程を説明する図である。 {200}面集積度を高めたFe系金属板の形態を説明する図である。
本発明は、高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法として、少なくとも金属板の表層部に{100}集合組織が形成させられるようにし、表面からこの領域の一部または全部にフェライト生成元素を加熱拡散させて、冷却時にFe系金属板全体の{200}集合組織の集積度をさらに高めるようにする。
このような本発明は、本発明者らが、表面に形成された集合組織における{100}結晶粒は、フェライト形成元素の拡散のための加熱過程のA点以上において優先的に粒成長することを見出したこと、さらには、フェライト形成元素を内部に拡散合金化させた後冷却すると、Fe系金属板の板面の{200}面集積度が高くなることを見出したことに基づいている。
本発明の基本原理の説明
まず、高い{200}面集積度が得られる本発明の基本原理を、図1に基づいて説明する。
(a)母材金属板の準備
α−γ変態成分系のFe系金属よりなり、圧延した状態の加工組織を有する母材金属板を準備し、その金属板の片面あるいは両面に、フェライト形成元素を蒸着法などを利用して付着させる。(図1−aの状態参照)
以下、母材金属板として純鉄板を、フェライト形成元素としてAlを用いた場合を例に説明する。
(b)集合組織の種付け、芽の形成
フェライト生成元素としてAlの付着した母材純鉄板を、母材のA点まで加熱して再結晶させるとともに、純鉄板内の一部または全体にAlを拡散させ母材に合金化させる。その際、キューリー温度以下の温度では、圧延方向と垂直に磁場を印加しながら加熱する。
加熱の昇温過程の回復あるいは再結晶初期の段階で磁場を印加することによって、純鉄板の表層部もしくは板厚方向全体に、磁場印可方向と垂直(圧延方向と平行)に{100}集合組織が形成される。(図1−b1の状態参照)
また、Alが拡散して合金化した領域ではα単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。その際、回復再結晶の過程で形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
(c)集合組織の保存、高集積化
純鉄板をさらにA点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。
α単相成分の領域は、γ変態しないα−Fe相であるために、{100}結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}粒が優先成長して{200}面集積度が増加する。また、α単相成分でない領域はα相からγ相に変態する。
保持時間を長くすると、{100}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。この結果、{200}面集積度はさらに増加する。また、Alの拡散に伴い、Fe−Al合金化した領域ではγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{100}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これらにより、保持時間が長くなるとともに{200}面集積度がさらに増加する。(図1−cの状態参照)
(d)集合組織の成長
純鉄板をA点未満の温度へ冷却する。この時、合金化していない内部の領域のγ−Fe相は、α−Fe相へ変態する。この内部の領域は、A点以上の温度域において既に{100}に配向したα粒となっている領域に隣接しており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継いで変態する。このため、その領域でも{200}面集積度が増加する。
この現象によって、合金化していない領域でも高い{200}面集積度が得られるようになる。
前の(c)の段階で、板全体にわたり合金化されるまでA点以上で保持された場合には、板全体にわたりすでに高い{200}面集積度の組織が形成されているので、冷却開始時の状態を保持したまま冷却される。
この例では、フェライト形成元素を母材に先に付着させてから、加熱処理を行ったが、まず、(e)前記の母材の純鉄板に磁場を印加させながら鉄のキューリー 温度±50℃温度までに加熱する熱処理工程を行い、次いで、(f)該熱処理後の純鉄板の片面あるいは両面にAlを付着した後に、(g)Alの付着した純鉄板を、母材のA 点まで加熱して、純鉄板の一部または全体にAlを拡散させ母材に合金化させ、その後、上記(c)、(d)の段階を行うようにしてもよい。
また、磁場を母材金属板の圧延方向と垂直な方向に印加したが、垂直な方向に加えさらに圧延方向と平行な方向に印加してもよい(図1−b2の状態参照)。
圧延方向と平行な方向に磁場を印加することにより、フェライト生成元素を拡散させて、冷却した後に圧延方向と垂直な面方向にも{100}集合組織を形成することができるので、圧延方向と平行な方向及び垂直な方向の2方向に{100}集合組織を形成することができる。
以上、本発明の基本的な原理について説明したが、さらに、本発明の製造方法を規定する個々の条件の限定理由及び本発明を実施するに当たり好ましい条件について説明する。なお、以下の記載において、元素の含有量の%は質量%を意味するものとする。
母材となるFe系金属板
(Fe系金属の基本的要件)
本発明では、まず、加工組織を有するFe系金属よりなる母材金属板の表層部あるいは板内に、{200}面集積度を高めるための芽となる{100}に配向した結晶粒を形成し、ついで、最終的には、その芽となるα粒の結晶方位を引き継ぐ形で板内にγ−α変態を進行させて、板全体の{200}面集積度を高める。
このため、母材金属板に用いるFe系金属は、加工組織を有し、α−γ変態成分系の組成を有する必要がある。母材金属板に用いるFe系金属が、加工組織を有しておれば、加熱によって回復・再結晶する際に磁場の作用により{100}に配向した集合組織の芽を形成することができ、また、α−γ変態系の成分であれば、フェライト形成元素を板内に拡散合金化することによって、α単相系成分の領域を形成することができる。
なお、α−γ変態系は、例えば、約600℃〜1000℃の範囲内にA点を有し、A点未満ではα相が体積比率で50%を超える主相となり、A点以上ではγ相が主相となる成分系である。
(母材金属板の組成)
本発明は、原理的に、α−γ変態系の成分を有するFe系金属に適用可能であるので、特定の組成範囲のFe系金属に限定されるものではない。
α−γ変態系の成分代表的なものとして、純鉄(工業的に生産される比較的純度の高い鉄であって、純度が99.9%以上のものも含むものとする。)や普通鋼などの鋼が例示される。
例えば、C:1ppm〜0.2%、残部Fe及び不可避不純物よりなる純鉄や鋼を基本とし、適宜、添加元素を含有させたものである。
その他、C:0.1%以下、Si:0.1〜2.5%を基本成分とするα−γ変態系成分のケイ素鋼でもよい。
また、その他の不純物としては、微量のMn、Ni、Cr、Al、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O、P、Sなどが含まれる。
(加工組織の形成)
母材金属板の加工組織は、圧延など常法にしたがって形成すればよい。例えば、α−γ変態成分系の組成を有するFe系金属よりなる鋳片(スラブ)から熱間圧延した素材金属板、あるいは熱間圧延後さらに冷間圧延した素材金属板を用い、その金属板に最終的に冷間圧延を施して加工組織を残留させればよい。その場合の冷延率は40%以上が好ましい。冷延率がその値未満では、{200}に配向した集合組織の芽を十分に形成できない。
(母材金属板の厚み)
母材金属板の厚みは、10μm以上、5mm以下とする。厚みが10μm未満であると、積層させて磁心として使用する際に、積層枚数が増加して隙間が多くなり高い磁束密度が得られない。また、厚みが5mm超であると、拡散処理後の冷却後に{100}集合組織を十分に成長させられず、高い磁束密度が得られない。
異種金属
(異種金属の種類)
上記母材金属板に、Fe以外の異種金属を拡散させ、鋼板厚み方向へ{100}化領域を増加させる。用いられる異種金属としては、フェライト生成元素が選ばれる。
そのために、α−γ変態系成分のFe系金属よりなる母材金属板の片面あるいは両面に異種金属を第二層として層状に付着させ、その元素が拡散して合金化した領域をα単相系の成分にして、α相に変態した領域以外にも、板内の{200}面集積度を高めるための{100}配向の芽として保存できるようにする。
そのようなフェライト形成元素として、Al、Cr、Ga、Ge、Mo、Sb、Si、Sn、Ti、V、W、Znの少なくとも1種を単独であるいは組み合わせて使用できる。
(異種金属の付着方法)
異種金属を層状で母材金属板の表面に付着させる方法としては、溶融めっきや電解めっきなどのめっき法、圧延クラッド法、PVDやCVDなどのドライプロセス、さらには粉末塗布など種々の方法を採用することができる。工業的に実施するための効率的に異種金属を付着させる方法としては、めっき法あるいは圧延クラッド法が適している。
異種金属の加熱前の付着厚みは、0.05μm以上、1000μm以下であることが望ましい。厚みが0.05μm未満では十分な{200}面集積度を得ることができない。また、1000μm超であると、異種金属を表面に残留させる場合でもその厚みが必要以上に厚くなる。
磁場の印加・熱処理条件
(磁場の印加時期)
本発明では、先に説明したように、冷延後の加工組織を有するFe系金属板を熱処理して、昇温過程の回復あるいは再結晶初期の段階で磁場を印加することによって、Fe系金属板の表層部もしく板厚方向全体に、磁場印加方向に対して垂直方向に{100}集合組織を形成し、{100}集合組織の形成と同時に、あるいは{100}集合組織を形成した後に、表面から{100}集合組織を形成した領域の一部または全部に異種金属を拡散させて、冷却時にFe系金属板全体を{100}化させる。
したがって、磁場を印加して熱処理する工程は、異種金属をFe系金属板に付着させる前に単独で行ってもよいし、先に異種金属を付着させた金属板を加熱して異種金属を拡散させる際の昇温過程で行ってもよい。どちらで行っても同じ効果が得られる。
(磁場を印加する際の加熱条件)
磁場を印加する温度範囲は、キューリー温度より高い温度ではFe系金属板が磁化しないため結晶配向の効果が得られないので、キューリー温度(純鉄で770℃)まででよいが、キューリー温度を超えて磁場を印加しても特に問題はない。また、200℃以下では回復や再結晶が起こりにくく、磁場を印加する効果がないので、200℃以上で磁場を印加するのがよい。異種金属の拡散より先に単独で行う場合には、200℃〜(母材のキューリー温度±50)℃の温度範囲で行うのがよい。
加熱時の昇温速度は、0.1℃/sec以上500℃/sec以下であるのが好ましい。この範囲の昇温速度において{200}面配向の芽が効率的に形成される。
(磁場の印加方法と強さ)
磁場は、冷間圧延されたFe系金属板に対して、キューリー温度以下の温度範囲で、冷間圧延方向と垂直な方向(板厚方向)に印加する。あるいは、垂直な方向に加えてさらに圧延方向と平行な方向(板の長尺方向)に印加する。
この磁場の作用によって、冷間圧延されたFe系金属板が回復あるいは再結晶する時に、Fe系金属板に{100}方位に配向した集合組織が形成される。
磁場を冷間圧延方向と垂直な方向(板厚方向)に印加した場合は、板面に平行な方向に{100}方位に配向した集合組織が形成され、磁場を冷間圧延方向と平行な方向(板の長尺方向)に印加した場合は、板面に垂直な方向に{100}方位に配向した集合組織が形成される。このため、磁場を両方の方向に印加した場合は、板面に平行な方向と板面の垂直な方向の2方向に{100}方位に配向した集合組織が形成される。
このような集合組織が形成される詳細なメカニズムは明らかではないが、回復あるいは再結晶の際に、冷延時の蓄積エネルギーに加えて、磁場のエネルギーを駆動力として、結晶回転もしくは結晶化することが考えられる。磁場の作用として、磁場を印加した方向と磁化容易方向が平行になるような優先方位をもつ結晶回転もしくは結晶化される。Fe系金属板では、磁化容易軸が<100>であるために、磁場印加方向と垂直な面が{100}になる傾向を示す。
その結果、圧延方向と垂直な方向に磁場を印加すると、圧延方向と平行に{100}集合組織が形成され、圧延方向と平行な方向に磁場を印加すると、圧延方向と垂直に{100}集合組織が形成されるものと考えられる。
磁場を形成するために印可する磁界は静磁界でも交番磁界でもよい。磁界を加える方法としては、よく知られている通常の方法を使用すればよい。圧延方向と垂直に磁場を印可するには、母材金属板の各圧延面に対向させて磁石を配置する方法などがあり、圧延方向と平行に磁場を印可するには、直流もしくは交流電流を流したコイル中に母材金属板を配置する方法などがある。
印加する磁場の強さは、磁場を圧延方向と垂直に印加する場合は、磁束密度で0.01T以上、10T以下が好ましい。0.01T未満では{200}面集積度を20%以上とすることが困難であり。10T以上では効果が飽和する。
また、磁場を圧延方向と平行に印加する場合は、同様な理由により磁束密度で0.2T以上、10T以下が好ましい。
({200}面集積度)
以上のような条件で磁場を印加することにより、母材金属板の一部あるいは全体の領域に、圧延方向の{200}面集積度を高めた領域、あるいは、板厚方向及び圧延方向の2方向の{200}面集積度を高めた領域を形成する。その領域における{200}面集積度は、20%以上60%以下が好ましい。その集積度が20%未満では拡散熱処理後に{200}面集積度を30%以上とすることが困難であり、60%超では加熱拡散熱処理後に磁気特性は飽和する。
なお、上記方位面の面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折で行うことができる。
詳細に述べると、各試料について、試料表面に対して平行なα−Fe結晶の11ある方位面({110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442})の積分強度を測定し、その測定値それぞれを、ランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{110}あるいは{222}強度の比率を百分率で求める。
その際、例えば、{110}強度比率では、以下の式(I)で表される。
{200}面集積度=[{i(110)/I(110)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 ・・・ (I)
ただし、記号は以下のとおりである。
i(hkl): 測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl): ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ: α−Fe結晶の11の方位面についての和
ここで、ランダム方位を持つ試料の積分強度は、試料を用意して実測して求めてもよい。
加熱拡散処理
本発明では、異種金属としてフェライト生成元素、例えばAlを付着させた母材金属板を、母材金属板のA点(例えば、純鉄では910℃)まで加熱して、母材金属板に形成された{100}集合組織の領域の一部または全体にAlを拡散させ、母材に合金化させる。
以下、磁場を板厚方向に印加して、圧延方向に{100}集合組織が形成される母材金属板を用いた場合を例に、異種金属が拡散するときの変化の様子を説明するが、磁場を板厚方向と圧延方向に印加して、圧延方向と板厚方向の2方向に{100}集合組織が形成される母材金属板を用いた場合でも変化の様子は基本的に同様である。
Alを合金化した領域ではα単相成分となり、その領域ではγ相からα相に変態していく。先に、{100}集合組織が形成されている母材金属板を用いた場合には、γ相からα相に変態する際に、すでに形成された{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
この結果、合金化された領域では、α−Fe相の{200}面集積度が25%以上99%以下となり、それに応じて{222}面集積度が0.1%以上40%以下となった組織が形成される。
また、{100}集合組織が形成されていない母材金属板を用いた場合には、加熱拡散工程の昇温過程で、前記のように磁場を印加する。それにより、温度の上昇とともに、{100}に配向した結晶粒が形成される。また、その際にAlの拡散も同時に起こり、γ相からα相に変態する際に、{100}集合組織の配向を引き継いで変態するため、合金化した領域でも{100}に配向した組織が形成される。
母材金属板をさらにA点以上1300℃以下の温度に加熱、保持する。それによって、Fe系金属板全体の{200}面集積度が図2に示すようにさらに高まる。
加熱温度がA点を超えるとα単相成分でない領域はγ変態する。また、すでに合金化されている領域ではγ変態しないα単相の組織となっているため、{100}結晶粒はそのまま保存され、その領域の中で{100}粒が優先成長して{200}面集積度が増加する。
保持時間を長くすると、{100}結晶粒は粒の食い合いによって優先的に粒成長する。この結果、{200}面集積度はさらに増加する。また、Alの拡散に伴い、Fe−Al合金化した領域ではγ相からα相に変態していく。その際、変態する領域に隣接する領域ではすでに{100}に配向したα粒となっており、γ相からα相に変態する際に、隣接するα粒の結晶方位を引き継ぐかたちで変態する。これらにより、保持時間が長くなるとともに{200}面集積度が増加する。また、その結果として{222}面集積度は低下する(図2−aの状態)。
なお、最終的に50%以上のより高い{200}面集積度とするためには、保持時間を調整して、この段階において、α−Fe相の{200}面集積度が30%以上で、かつ、{222}面集積度が30%以下とするのが好ましい。
また、板全体が合金化されるまでA点以上で保持された場合には、板中心部までα単相組織となり、{100}に配向した粒組織が板中心に到達する。(図2−cの状態)
加熱拡散処理において、磁場を印加する場合、A点まで昇温する昇温速度は、0.1℃/sec以上500℃/sec以下であるのが好ましい。この範囲の昇温速度において{200}面配向の芽が効率的に形成される。また磁場を印加しない場合の昇温速度も同様である。
昇温後の保持温度は、A点以上1300℃以下とするのが好ましい。1300℃を超える温度で加熱しても磁気特性に対する効果は飽和する。また、加熱保持時間は、保持温度に到達後直ちに冷却を開始してもよい(実質的には0.01秒以上保持)、600分以下の時間で保持して冷却を開始してもよい。600分を超えて保持しても効果が飽和する。
この条件を満たすと、{200}面配向の芽の高集積化がより進行し、より確実に冷却後にα−Fe相の{200}面集積度を30%以上とすることができる。
加熱拡散処理後の冷却
拡散処理後、Alが合金化されていない領域が残った状態で、冷却すると、合金化していない領域では、γからαへの変態の際に、すでに{100}に配向したα粒となって領域の結晶方位を引き継ぐかたちで変態し、{200}面集積度が増加し、α−Fe相の{200}面集積度が30%以上99%以下で、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下の集合組織を有する金属板が得られる(図2−bの状態)。
また、図2−cのように、板全体が合金化されるまでA点以上で保持され、{100}に配向した粒組織が板中心に到達した場合には、そのまま冷却して{100}に配向した粒組織が板中心まで到達した集合組織を得る。(図2−dの状態)
これにより、異種金属が板全体に合金化され、α−Fe相の{200}面集積度が30%以上99%以下で、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下の集合組織を有する金属板が得られる。
{200}面集積度の値や母材金属板表面の異種金属の残留の状態は、A点以上の保持時間や保持温度により変化し、図2bでは、{100}に配向した粒組織が板中心までは到達せず、異種金属も表面に残留した状態にあるが、板中心まで{100}に配向した粒組織とし、表面の第二層の全部を合金化することもできる。
なお、拡散処理後の冷却の際、冷却速度は0.1℃/sec以上500℃/sec以下が好ましい。この温度範囲で冷却すると、{200}面配向の芽の成長がより進行する。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
本実施例では母材に純鉄を、第二層にAlを適用して、製造条件と{200}面集積度の関係について調べた結果を示す。
母材となる材質は純鉄であり、その他の成分は質量%でC:0.0001%、Si:0.0001%、Al:0.0002%、および不可避的不純物を含んでいた。この母材は、真空溶解によってインゴットを溶製し、それを熱間圧延し、その後冷間圧延によって所定の厚みに加工したものである。
熱間圧延は1000℃に加熱した厚み230mmのインゴットを厚み50mmまで薄肉化した。この熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、各種冷延率による冷間圧延で母材を得た。その結果、得られた母材の厚みは10μm〜800μmの範囲であった。
得られた冷延板について組織を観察したところ、母材の常温での主相はαFe相であった。α−γ変態を起こすA点は測定の結果911℃であった。
各母材には、第二層として、イオンプレーティング(以下IP法)、あるいは、溶融めっき法によって両面にAlを皮膜した。0.06μmの皮膜厚み(両面合計)のものはIP法で行い、その他は溶融めっき法で行なった。これらの厚みは片面のみで測定した値である。
次に第二層を付着させた母材金属板に各種条件で熱処理を施す実験を行なった。熱処理にはゴールドイメージ炉を用い、プログラム制御により各種昇温速度、保持時間を制御した。昇温、保持の間は10-3Paレベルまで真空引きした雰囲気中で行なった。また、昇温過程において母材金属板の圧延方向に垂直に磁場を印加した。
母材金属板の冷却時には、Arガスを導入して流量の調整によって冷却速度を制御した。
昇温過程における{100}配向の芽の形成(種付け)、保持過程における{100}配向粒の保存・高集積化、冷却過程における成長に関して、同じ母材−Al皮膜条件の組み合わせの母材金属板を3つ用意して、それぞれの過程毎で熱処理実験を行なって集合組織の変化を調べた。
昇温過程の種付けに関する試料は、母材金属板を所定の昇温速度で室温からA点である911℃まで加熱し、また、一部の試料では890℃まで加熱し、保持時間無しで室温まで冷却して作製した。加熱の昇温過程の200〜800℃の温度範囲において、1.2Tの磁場を試料の圧延方向に垂直に印加した。冷却速度は100℃/secとした。集合組織の測定は前述したX線回折法による方法で行い、X線は表面から照射し、α−Fe相の{200}、{222}面集積度を求めた。
保持過程における保存・高集積化に関する試料は、母材金属板を種付けに関する試料と同じ方法で加熱し、10秒の保持時間の後に室温まで冷却して作製した。ここで、冷却速度は100℃/secとした。集合組織の測定は前述したX線回折法による方法で行い、X線は表面から照射し、α−Fe相の{200}、{222}面集積度を求めた。
冷却過程における成長に関する試料は、保存・高集積化に関する試料と同じ方法で作製した。合金化されてない位置の{200}、{222}面集積度を評価するため、合金化されていない位置が評価面となるように、作製した試料の表面から所定の距離までの層を除去した試験片を作製した。板全体に合金化されている場合は、板厚の1/2tの位置とした。
集合組織の測定は前述したX線回折法による方法で行い、X線は、試験片の表面と、層を除去された試験片の所定の面からそれぞれ照射し、それぞれのα−Fe相の{200}、{222}面集積度を求めた。
得られた製品の評価は磁気測定によって行なった。まずSST(Single Sheet Tester)を用いて5000A/mの磁化力に対する磁束密度B50を求めた。この時、測定周波数は50Hzとした。次に、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて飽和磁束密度Bsを求めた。この際に印加した磁化力は0.8×106A/mであった。評価値は飽和磁束密度に対するB50の比率B50/Bsとした。
また、第二層の合金化割合とα単相領域の割合は次のように定義して求めた。
L断面においてL方向1mm×全厚みの視野でEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)法を用いてFe含有量の面分布とAl含有量の面分布を測定した。
第二層の合金化割合は、熱処理の前後における、Fe≦0.5mass%、かつ、Al≧99.5mass%となる領域の面積を求め、Alを皮膜し熱処理を施していない場合の面積をS0、全ての熱処理が完了した製品での面積をSとすると、第二層の合金化率は(S0−S)/S0×100で定義した。
α単相領域の割合は、L断面で観察した熱処理後の金属板断面の面積をT0、熱処理後の異種金属の拡散領域の面積をTとすると、(T/T0)×100で定義した。第二層がAlの場合には、TはAl≧0.9mass%となる領域の面積とした。
表1、2に、母材金属板の条件や熱処理の条件、製造途中のそれぞれの過程において及び製造後において測定した{200}面集積度と{222}面集積度を示した。また、得られた製品金属板の第二層の合金化割合や磁気測定評価結果などを示した。
表1、2に示すように、本発明例では、いずれもα−Fe相の{200}面集積度が30%以上、および、{222}面集積度が30%以下の製品金属板が得られており、かつ、その金属板は、B50/Bs値が0.88以上の優れた磁気特性が得られていることが確認できる。
また、そのような金属板は、表1、2に示すように、純鉄よりなる金属板に他の金属を付着して第二層を形成し、それをA点以上の温度に加熱して冷却する熱処理を施すこと及び加熱の昇温過程で磁場を印加することにより、熱処理の各段階においてα−Fe相の{200}面が高集積化し、本発明例の製品金属板が得られることが確認できる。
さらに、本発明例では、母材金属板と第二層の厚み、昇温速度、加熱保持温度と保持時間の組み合わせに基づく、幅広い合金化割合およびα単相領域割合の範囲で優れた磁気特性の製品金属板が得られることが確認できる。
これに対し、磁場を印可しながら加熱して冷却する熱処理を施しても、第二層の金属を用いないNo.1の例や、A点以上の温度に加熱しないNo.2の例では、本発明例のような高い{200}面集積度の金属板は得られず、その結果、得られた磁気特性も劣っている。
Figure 0005724727
Figure 0005724727
(実施例2)
本実施例では母材にFe系金属板を、第二層にSi、Sn、Ti、W、Ga、Zn、Ge、Cr、Mo、Sb、V、92Al8Si(質量%)合金を適用して、製造条件と{200}面集積度の関係について調べた結果を示す。
母材となるFe系金属板としては7種類の成分系A〜Gを用意し、具体的な成分は表3に示した。これらの母材の製造としては、真空溶解によってインゴットを溶製し、それを熱間圧延し、その後冷間圧延によって所定の厚みに加工したものである。
熱間圧延は1000℃に加熱した厚み230mmのインゴットを厚み50mmまで薄肉化した。この熱延板から機械加工によって各種厚みの板材を切り出した後に、各種冷延率の冷間圧延を実施し、各種厚みの母材金属板を製造した。その結果、得られた母材の厚みは10μm〜700μmの範囲であった。
得られた冷延板について組織を観察したところ、いずれの母材の常温での主相はαFe相であった。また、α−γ変態を起こすA点を測定し表3に示した。
各母材へ第二層であるSi、Sn、Ti、W、Ga、Zn、Ge、Cr、Mo、Sb、V、92Al8Si合金を皮膜させる方法としては、溶融めっき法、蒸着法(IP法、スパッタ法)を適用した。そして、Sn、Znでは溶融めっき法により皮膜し、その他の金属については、蒸着法で皮膜した。
それぞれの異種金属の皮膜の厚みを母材の両面合計で表4、6に示した。
引き続き、磁場の印加時期を除いて実施例1で用いた同じ方法により各種条件で熱処理を施し、製造途中の各過程において状態を評価する実験を行った。
本発明例53、54、55、56、58、59、60、61、64、65、66、67、70、71、72、および、比較例51、52、56、57、62、63、68、69は、第二層を皮膜するより先に、200〜800℃で磁場を印加して昇温する熱処理した後に、室温まで冷却し、その後第二層の皮膜を形成してから熱処理して種付けを行ったものである。その他の比較例、本発明例は、実施例1と同じ順番で保存、集積化及び成長を行った。
ここで、第二層の合金化割合とα単相領域の割合は次のように求めた。
第二層の合金化割合では、第二層の金属元素を[M]とすると、いずれの元素の場合も、Fe≦0.5mass%、かつ、[M]≧99.5mass%となる領域の面積を求めた。そして、第二層の元素を皮膜し熱処理を施していない場合の面積をS0、全ての熱処理が完了した製品での面積をSとし、第二層の合金化割合を(S0−S)/S0×100から求めた。
α単相領域の割合では、L断面で観察した熱処理後の金属板断面の面積をT0、熱処理後の異種金属の拡散領域の面積をTとすると、(T/T0)×100で定義した。第二層がSiの場合には、TはSi≧1.9mass%となる領域の面積から求めた。同様に、Snの場合にはSn≧3.0mass%となる領域、Tiの場合には、Ti≧3.0mass%となる領域、Wの場合には、W≧6.6mass%となる領域、Gaの場合には、Ga≧4.1mass%となる領域、Znの場合には、Zn≧7.2mass%となる領域、Geの場合には、Ge≧6.4mass%となる領域、Crの場合には、Cr≧14.3mass%となる領域、Moの場合には、Mo≧3.8mass%となる領域、Sbの場合には、Sb≧3.6mass%となる領域、Vの場合には、V≧1.8mass%となる領域、92Al8Si合金の場合には、Al≧0.9mass%かつSi≧0.1mass.%となる領域それぞれの面積を求めた。
表4〜7には、母材金属板の条件や熱処理の条件、製造途中のそれぞれの過程で及び、製造後において測定した{200}面集積度と{222}面集積度を示した。また、得られた製品金属板の第二層の合金化割合や磁気測定評価結果などを示した。
表4〜7に示すように、本発明例では、種々のα−γ変態系の化学組成からなる鋼を用い、種々の異種金属を用いたいずれの場合においても、α−Fe相の{200}面集積度が30%以上、および、{222}面集積度が30%以下の条件を満たす製品金属板が得られており、かつ、その金属板は、B50/Bs値が0.87以上の優れた磁気特性が得られていることが確認できる。
また、そのような金属板は、表4〜7に示すように、予め磁場中熱処理を施した母材金属板に、他の金属を付着して第二層を形成し、それをA点以上の温度に加熱して冷却する熱処理を施すことにより、あるいは、第二層を形成した母材金属板をA点以上の温度に加熱する際に磁場を印加し、その後冷却して冷却する熱処理を施すことにより、熱処理の各段階においてα−Fe相の{200}面が高集積化し、本発明例の製品金属板が得られることが確認できる。
さらに、本発明例では、母材金属板と第二層の厚み、昇温速度、加熱保持温度と保持時間の組み合わせに基づく、幅広い合金化割合およびα単相領域割合の範囲で優れた磁気特性の製品金属板が得られることが確認できる。
これに対し、磁場を印可しながら加熱して冷却する熱処理を施しても、第二層の金属を用いないNo.29、35、41、46、51、57、62、68、73、79、85、90の例や、A点以上の温度に加熱しないNo.30、36、42、47、52、58、63、69、74、80、86、91の例では、本発明例のような高い{200}面集積度の金属板は得られず、その結果、得られた磁気特性も劣っている。
Figure 0005724727
Figure 0005724727
Figure 0005724727
Figure 0005724727
Figure 0005724727
(実施例3)
実施例1において、No.1〜3、6、8、9、13、15、17、20、21、24、25の条件で、母材金属板の製造、第二層の付着、種付け、保存高集積化、成長の各工程を行って製品金属板を作成する際、種付け工程の磁場の印加方法として、圧延方向に垂直に印可するのに加えて、圧延方向に平行にも印加する方法を行った。
表8に、実施例1で用いた製造条件の一部に圧延方向に平行に印加した磁場の大きさと磁場を印可した温度範囲を追加して示すとともに、製造後に測定した板厚方向と板面に平行方向(圧延方向)の{200}面集積度と{222}面集積度、及び磁気測定評価結果を示した。なお、表8では、1a、2a・・・というように、対応する実施例1のNoにaを付して表8のNo.とした。
表8に示すように、本発明例では、α−Fe相の板厚方向及び圧延方向の{200}面集積度が、いずれも30%以上99%以下で、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となり、B50/Bsの値が、板厚方向及び圧延方向の2方向で0.87以上の優れた磁気特性鋼板が得られることが確認できた。
これに対し、磁場を2方向から印可しながら加熱して冷却する熱処理を施しても、第二層の金属を用いないNo.1aの例や、A点以上の温度に加熱しないNo.2aの例では、本発明例のような2方向に高い{200}面集積度を有する金属板は得られず、その結果、得られた磁気特性も劣っている。
Figure 0005724727
(実施例4)
実施例2の31、33、37、39、42、45、48、50、53、56、59、61、64、67、70、72、75、78、81、84、87、89、92、94の条件で製品金属板を作成する際、種付け工程の磁場の印加方法として、圧延方向に垂直に印可するのに加えて、実施例3と同様に圧延方向に平行にも印加する方法を行った。
表9に、実施例2で用いた製造条件の一部に圧延方向に平行に印加した磁場の大きさと磁場を印可した温度範囲を追加して示した。また、表10に、製造後に測定した板厚方向と圧延方向の{200}面集積度と{222}面集積度、及び磁気測定評価結果を示した。なお、実施例のNoは、表8と同様に付した。
表10に示すように、本発明例では、α−Fe相の板厚方向及び圧延方向の{200}面集積度が、いずれも30%以上99%以下で、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となり、B50/Bsの値が、板厚方向及び圧延方向の2方向で0.8以上の優れた磁気特性鋼板が得られることが確認できた。
Figure 0005724727
Figure 0005724727
本発明のFe系金属板は、ケイ素鋼板が使用されるような変圧器などの磁心等へ好適であり、これらの磁心の小型化やエネルギー損失低減に貢献できる。

Claims (4)

  1. 高い{200}面集積度を有するFe系金属板を製造する方法であって、
    (a)α−γ変態成分系のFe系金属よりなり、加工組織を有する母材金属板を準備する工程と、
    (a2)準備した母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着する工程と、
    (b)フェライト生成元素の付着した母材金属板を、キューリー温度以下では磁場を印加させながら母材のA点まで加熱し、母材金属板内の一部または全体にフェライト生成元素を拡散させ、合金化させる工程と、
    (c)母材金属板をA点以上1300℃以下の温度に加熱、保持して、フェライト生成元素の拡散によって合金化されたα−Fe相の{200}面集積度を増加させるとともに{222}面集積度を低下させる工程と、
    (d)母材金属板をA点未満の温度へ冷却し、合金化していない領域のγ−Fe相がα−Fe相へ変態する際に、該領域の{200}面集積度が30%以上99%以下となり、かつ、{222}面集積度が0.01%以上30%以下となるようにする工程
    とを有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
  2. 前記請求項1に記載のFe系金属板を製造する方法において、前記(a2)、(b)の工程に代えて、次の
    (e)準備した母材金属板に磁場を印加させながら前記Fe系金属のキューリー温度(℃)±50℃の温度まで加熱する熱処理を行う工程と、
    (f)該熱処理後の母材金属板の片面あるいは両面にフェライト生成元素を付着する工程と、
    (g)フェライト生成元素の付着した金属板を母材のA点まで加熱して、母材金属板内の一部または全体にフェライト生成元素を拡散させ、合金化させる工
    を有することを特徴とする高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
  3. 前記母材金属板に、磁束密度で0.01T以上の磁場を圧延方向と垂直に印加することを特徴とする請求項1または2に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
  4. 前記母材金属板に、磁束密度で0.01T以上の磁場を圧延方向と垂直に印加するとともに、磁束密度で0.2T以上の磁場を圧延方向と平行に印加することを特徴とする請求項1または2に記載の高い{200}面集積度を有するFe系金属板の製造方法。
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