JP5723192B2 - アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5723192B2
JP5723192B2 JP2011076044A JP2011076044A JP5723192B2 JP 5723192 B2 JP5723192 B2 JP 5723192B2 JP 2011076044 A JP2011076044 A JP 2011076044A JP 2011076044 A JP2011076044 A JP 2011076044A JP 5723192 B2 JP5723192 B2 JP 5723192B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
forging
less
region
recrystallized
forged
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011076044A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011225988A (ja
Inventor
中井 学
学 中井
健太郎 伊原
健太郎 伊原
稲垣 佳也
佳也 稲垣
雅是 堀
雅是 堀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2011076044A priority Critical patent/JP5723192B2/ja
Publication of JP2011225988A publication Critical patent/JP2011225988A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5723192B2 publication Critical patent/JP5723192B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Extrusion Of Metal (AREA)
  • Forging (AREA)

Description

本発明は、Al−Mg−Si系(6000系)アルミニウム合金鍛造材およびその製造
方法に関するものである。以下、アルミニウムを単にAlとも言う。
近年、排気ガス等による地球環境問題に対して、自動車などの輸送機の車体の軽量化に
よる燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車などの輸送機の構造材乃至構
造部品、特にアッパーアーム、ロアーアームなどの足回り部品として、AA乃至JIS の規格
で言う6000系(Al−Mg−Si系)Al合金鍛造材が使用されている。6000系
Al合金鍛造材は、高強度高靱性で、耐食性にも比較的優れている。また、6000系A
l合金自体も、合金元素量が少なく、スクラップを再び6000系Al合金溶解原料とし
て再利用しやすい点で、リサイクル性にも優れている。
サスペンションなどの足回り部品には、高強度・高靭性・高耐食性を実現する材料が要
求されている。この点で、アルミニウム合金鍛造材は、足回り鍛造部品して、アルミニウ
ム合金鋳造材等に比較して、強度的に優れ、信頼性が高い。
近年、これら輸送機の構造材においても、自動車のより一層の軽量化のために、一層薄
肉化させた上での高強度化や高靱性化が求められている。このため、Al合金鋳造材やA
l合金鍛造材のミクロ組織を改善することが、従来から種々行われている。
例えば、6000系Al合金鋳造材の晶出物の平均粒径を8 μm 以下と小さくし、かつ
デンドライト二次アーム間隔(DAS) を40μm 以下と細かくして、Al合金鍛造材をより
高強度で高靱性化することが提案されている(特許文献1、2参照) 。
また、6000系Al合金鍛造材の結晶粒内や粒界の晶出物の平均粒径や平均間隔など
を制御することで、Al合金鍛造材をより高強度で高靱性化することも提案されている。
これらの制御は、粒界腐食や応力腐食割れなどに対しても高耐食性化できる。そして、こ
れらの晶出物の制御に合わせて、Mn、Zr、Crなどの結晶粒微細化効果を有する遷移
元素を添加して、結晶粒を微細化乃至亜結晶粒化させ、破壊靱性や疲労特性を向上させる
こともこれらの提案の中で記載されている(特許文献3、4、5参照) 。
しかし、これら6000系Al合金鍛造材には、上記鍛造および溶体化処理工程におい
て、加工組織が再結晶して粗大結晶粒が発生する傾向がある。これら粗大結晶粒が発生し
た場合、上記ミクロ組織を制御しても、高強度化や高靱性化が果たせず、また、耐食性も
低下する。しかも、これらの各特許文献では、鍛造における加工温度が450 ℃未満と比較
的低く、このような低温の熱間鍛造では、目標としている結晶粒を微細化乃至亜結晶粒化
させることが困難となる。
一方、前記加工組織が再結晶化した粗大結晶粒の発生を抑制するため、Mn、Zr、C
rなどの結晶粒微細化効果を有する遷移元素を添加した上で、450 〜570 ℃の比較的高温
の温度で熱間鍛造を開始することが知られている(特許文献6〜7、8〜10参照) 。
これら6000系Al合金鍛造材は、通常、Al合金鋳塊(鋳造材)を鍛造用素材とし
て用い、鋳塊を均質化熱処理後、メカニカル鍛造、油圧鍛造などの熱間鍛造(型鍛造)を
行い、その後、溶体化および焼き入れ処理と人工時効硬化処理との所謂T6調質処理が施
されて製造される。これに対して、耐力で350MPa以上の高強度とシャルピー衝撃値20J/cm2以上の高靭性を得るために、鍛造用の素材として、前記鋳造材を一旦熱間押出加工した押出材を用いることが提案されている(特許文献11、12、13参照)。これらの技術では、通常用いられる鋳造材の他に、鍛造材断面の肉厚中心部における組織を、平均結晶粒径が10μm以下の微細な亜結晶粒組織として、より優れた強度と靭性、あるいは耐食性を持たせている。
特開平07−145440号公報 特開平06−256880号公報 特許3684313号公報 特開2001−107168号公報 特開2002−294382号公報 特開平05247574号公報 特開2002−348630号公報 特開2004−43907号公報 特開2004−292937号公報 特開2004−292892号公報 特開2004−68076号公報 特開2007−169699号公報 特開2007−177308号公報
しかし、これら、鍛造用素材として鋳造材を一旦熱間押出加工した押出材を用いた特許
文献11、12、13にも大きな限界がある。すなわち、熱間鍛造により、鍛造材の部位
によって異なる肉厚減少率のうち、最小の肉厚減少率が25%を超える、大きな加工率で
熱間鍛造加工を行った場合には、鍛造材断面の肉厚中心部においても、再結晶しやすくな
って、粗大な再結晶粒が発生して、強度や靱性の低下が避けがたくなる。
したがって、これら従来の鍛造用素材として鋳造材を一旦熱間押出加工した押出材を用
いる技術(以下、押出鍛造技術という)では、耐力で350MPa以上の高強度と、シャ
ルピー衝撃値20J/cm2以上の高靭性を得るためには、最小の肉厚減少率が25%以
下の小さな加工率で熱間鍛造加工せざるを得ない。実際にも、例えば特許文献12の実施
例では、直径20mmの押出ビレット(丸棒)を、各辺が15mm長さの角R付きの角棒
形状に熱間鍛造しており、その肉厚減少率は25%程度でしかない。
それゆえ、これら従来の押出鍛造技術では、小さな加工率で熱間鍛造可能な形状が、前
記した棒形状などの単純な鍛造製品形状に、大きく限定、制約される。ただ、汎用されて
いる、アッパーアーム、ロアーアームなどの足回り鍛造部品は、略三角形の全体形状と、
平面視で略Y型形状のアーム部と、このアーム部の3つの各端部に各々ボールジョイント
部(3箇所)を有するような、複雑形状となっている。このため、必然的に、最小の肉厚
減少率が25%を超える大きな加工率となる。
更に、これらサスペンションアームなどの自動車足回り部品は、より軽量化を図るため
に、断面が、幅狭で厚い周縁部のリブと、幅広で薄肉な中央部のウエブとからなる、略H
型の形状をしている。そして、近年では、このような自動車足回り部品を一層薄肉化、軽
量化させるために、前記ウエブを一層薄肉化したり、広幅化し、前記リブを一層幅狭化、
厚肉化させた形状( 以下、軽量化形状とも言う) となっている。このため、例えば、前記
ウエブの肉厚を10mm以下に薄肉化させた自動車足回り部品も採用され始めている。
このような軽量化形状あるいは複雑形状の自動車足回り鍛造部品は、必然的に、最小の
肉厚減少率が25%を超える大きな加工率となる。このため、熱間鍛造加工を行った場合
に、前記した通りに、鍛造材断面の肉厚中心部においても、再結晶しやすくなって、粗大
な再結晶粒が発生して、強度や靱性の低下が避けがたくなる。このため、従来の押出鍛造
技術では、このような軽量化形状の自動車足回り部品を、高強度化させて、製造すること
ができない。
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、前記押出鍛造技
術を改良して、アルミニウム合金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、高強度で高
耐食性な軽量化形状の鍛造材を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明アルミニウム合金鍛造材の要旨は、アルミニウム合
金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径が10μm以下であるとともに、この未再結晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合が75%以上であり、かつ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度が10個/μm以上であるとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の平均面積率が2.5%以下である
こととする。
また、上記目的を達成するために、本発明アルミニウム合金鍛造材の製造方法の要旨は
、質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0
.5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、T
i:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg
%]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有す
るアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度範囲で均質化熱処理を施した後に、
400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、こ
の押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、
最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱
間鍛造加工を行い、更に、溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施して鍛造材を製
造し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−
EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が
15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾
角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径を10μm以下とするとともに、この未再結
晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合を75%以上とし、か
つ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子
の平均密度を10個/μm以上とするとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の
平均面積率を2.5% 以下としたことである。
本発明では、前記押出鍛造技術において、前記軽量化形状の自動車足回り鍛造部品(=
鍛造材)など、鍛造材の部位によって異なる肉厚減少率のうち、最小の肉厚減少率が25
%を超える大きな加工率で熱間鍛造加工を行っても、鍛造材の表層部を除く断面全域に
おいて、再結晶による粗大な再結晶粒が発生せず、微細な結晶粒組織を備えるようにする
。このため、本発明では、前記押出鍛造技術において、再結晶を抑制するとともに再結晶
後の粒界移動を妨げる、微細な分散粒子をより高密度に形成するとともに、再結晶の核と
なる晶出物を抑制して、熱間鍛造での再結晶および粗大な粒成長を抑制する。これによっ
て、特に鍛造材の前記表層部を除く断面全域の結晶粒組織を微細化させる。なお、前記表
層部とは、結晶粒が粗大となっており、光学顕微鏡によって内部組織と判別が可能な薄い
表層部である。
ただ、この結晶粒組織の微細化も、前記微細な分散粒子の高密度な形成と晶出物の抑制
によって、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結
晶粒だけでなく、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた、未再結晶領域全体
において、より徹底させることができる。このため、未再結晶領域全体の平均結晶粒を1
0μm以下により微細化させることができる、しかも、このような未再結晶領域(未再結
晶粒組織)が前記鍛造材の断面全域に対する平均面積割合が75%以上と多くすることが
可能である。
なお、前記鍛造材の表層部を除く断面全域において、再結晶による粗大な再結晶粒が発
生せず、微細な結晶粒組織を備えるようにするためには、熱間鍛造される前の押出材の組
織において、本発明で規定する、前記微細な分散粒子が高密度に形成されるとともに晶出
物が抑制された、組織となっていることが重要となる。ただ、製造途中の中間材である押
出材では、これら分散粒子や晶出物の測定がしずらく、また、鍛造後の鍛造材であっても
、あるいは、その後調質処理が施された鍛造材であっても、前記押出材での前記分散粒子
と晶出物との大きさと密度あるいは面積割合は、大きく変化することは無い。したがって
、本発明での前記分散粒子と晶出物との組織規定は、鍛造後の鍛造材あるいはその後調質
処理が施された鍛造材で行っている。
本発明は、従来のように鍛造材の肉厚中心部などの局部的あるいは部分的な領域だけの
組織規定ではなく、前記した通り、鍛造材の複数個所における断面全域の組織を規定する
。これによって、本発明では、前記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品を、より高強
度化および高耐食性化させることができるとともに、これらの特性を鍛造材の部位全体に
亘って保障することができる。
以下に、本発明の実施態様につき具体的に説明する。
(化学成分組成)
本発明におけるAl合金鍛造材、この鍛造加工用の素材であるAl合金押出材、この押
出加工用の素材であるAl合金鋳造材、この鋳造用の素材であるAl合金溶湯における、
Al合金の化学成分組成について、以下に説明する。
本発明における6000系Al合金の化学成分組成は、前記した足回り鍛造部品などと
して、高強度、耐応力腐食割れ性などの高い耐食性乃至耐久性を保証する必要がある。こ
のため、6000系Al合金組成範囲の中でも、本発明におけるAl合金組成は、質量%
で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、
Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.
01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1
.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、
各元素量における%表示はすべて質量%の意味である。
溶解原料スクラップなどから必然的に混入される不純物元素も、本発明の諸特性を阻害
しない範囲で、JIS規格の上限規定などに基づく通常の量を含むことは許容される。次
に、各元素の含有量について、臨界的意義や好ましい範囲について説明する。
Mg:0.70〜1.3%
Mgは人工時効硬化処理(時効処理)により、Siとともに、主として針状β' 相として結晶粒内に析出し、自動車足回り部品の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Mgの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の時効硬化量が低下する。一方、Mgの含有量が多過ぎると、強度 (耐力) が高くなりすぎ、鍛造性を阻害する。また、溶体化処理後の焼き入れ途中に多量のMg−Si化合物や単体Siが析出しやすく、却って、強度、靱性、伸び、耐食性などを低下させる。したがって、Mg含有量は0.70〜1.3%の範囲とする。
Si:0.8〜1.3%
SiもMgとともに、人工時効処理により、主として針状β' 相として析出して、自動
車足回り部品使用時の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Siの含有量
が少な過ぎると、人工時効処理で十分な強度が得られない。一方、Siの含有量が多過ぎ
ると、鋳造時および溶体化処理後の焼き入れ途中で、粗大な単体Si粒子が晶出および析
出して、耐食性と靱性を低下させる。また、過剰Siが多くなって、高耐食性と高靱性、
高疲労特性を得ることができない。更に伸びが低くなるなど、加工性も阻害する。したが
って、Siの含有量は0.8〜1.3%の範囲とする。
Si含有量とMg含有量との関係
SiとMgとは、前記した各含有量を各々満足するとともに、高強度化のために、Si
含有量である[Si%]とMg含有量である[Mg%]との関係式として、[Si%]−
[Mg%]/1.73>0.25も満足するようにする。すなわち、Mg含有量に対して
Si含有量が過剰な、過剰Si型の6000系合金として、溶体化および焼入れ処理後の
鍛造材の時効硬化性を高めて、時効処理による高強度化を図る。
Cu:0.01〜0.5%
Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化
を著しく促進する効果も有する。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの強度向上効果が
無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、Al合金鍛造材の組織の応力腐食割れや粒界腐
食の感受性を著しく高め、Al合金鍛造材の耐食性や耐久性を低下させる。したがって、
Cuの含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。
Zn:0.005〜0.2%
Znは、人工時効処理において、Zn−Mg析出物を、微細かつ高密度に析出、形成し
て、高い強度を実現させる。また、固溶したZnは粒内の電位を下げ、腐食形態を粒界か
らではなく、全面的な腐食として、粒界腐食や応力腐食割れを結果として軽減する効果も
ある。しかし、Znの含有量が多過ぎると、耐食性が顕著に低下する。したがって、Zn
の含有量は0.005〜0.2%の範囲とする。
Fe:0.01〜0.45%
Feは、Mn、Crとともに、Al−Fe系金属間化合物からなる微細な分散粒子 (分
散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶
粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造
材での再結晶および粒成長を抑制する。これによって、特に鍛造材の前記表層部を除く断
面全域の結晶粒組織を本発明で規定するように微細化させる。Feの含有量が少な過ぎる
と、これらの効果が無い。一方、Feの含有量が多過ぎると、Al−Fe−Si晶出物な
どの粗大な晶出物を生成する。これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性などを劣化さ
せる。したがって、Feの含有量は0.01〜0.45%の範囲とする。
Mn:0.30%を超え、0.8%以下
Mnは、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、Al−Mn系金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造材での再結晶および粒成長を抑制する。これによって、特に鍛造材の断面の肉厚中心部での結晶粒組織を、本発明で規定するように微細化させる。また、Mnはマトリックスへの固溶による強度およびヤング率の増大も見込める。Mnの含有量が少なすぎると、分散粒子が不足して、これらの効果が期待できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する。一方、Mnの過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成しやすく、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、Mnは、Cr、Zrとともに含有させるとともに、0.30%を超え、0.8%以下の範囲で含有させる。
ここで、分散粒子である、前記Al−Mn系金属間化合物や前記Al−Fe系金属間化
合物は、Al−(Fe、Mn、Cr) −Siで表され、Fe、Mn、Cr、Si、Alな
どが、その含有量に応じて、選択的に結合した公知の化合物である。
Cr:0.01〜0.25%
Crも、Mnと同様に、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、分散粒子 (分散
相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒
を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造材
での再結晶および粒成長を抑制する。Crの含有量が少なすぎると、これらの効果が期待
できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する。一方
、これらの元素の過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成しやす
く、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、CrはMn
、Zrとともに含有させるとともに、その含有量は0.01〜0.25%の範囲とする。
Zr:0.01〜0.25%、
Zrも、Mn、Crと同様に、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、分散粒子
(分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、
結晶粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、
鍛造材での再結晶および粒成長を抑制する。Zrの含有量が少なすぎると、これらの効果
が期待できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する
。一方、これらの元素の過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成
しやすく、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、Zr
は、Mn、Crとともに含有させるとともに、その含有量は0.01〜0.25%の範囲
とする。
Ti:0.01〜0.1%
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、鍛造材組織を微細な亜結晶粒とする効果がある。T
iの含有量が少な過ぎるとこの効果が発揮されない。しかし、Tiの含有量が多過ぎると
、粗大な晶出物を形成し、前記加工性を低下させる。したがって、Tiの含有量は0.0
1〜0.1%の範囲とする。
この他、以下に記載する元素は不純物であり、各々、以下に各々記載する含有量まで許
容される。水素は不純物として混入しやすく、特に、鍛造材の加工度が小さくなる場合、
水素に起因する気泡が鍛造等加工で圧着せず、ブリスターが発生し、破壊の起点となるた
め、靱性や疲労特性を著しく低下させる。特に、高強度化した足回り部品などにおいては
、この水素による影響が大きい。したがって、Al 100g 当たりの水素濃度は0.25ml以下
の、できるだけ少ない含有量とすることが好ましい。V、Hfも不純物として混入しやす
く、足回り部品の特性を阻害するので、これらの合計で0.3%未満とする。また、B は不
純物であるが、Tiと同様、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出や鍛造時の加工性を向上させ
る効果もある。しかし、300ppmを越えて含有されると、やはり粗大な晶出物を形成し、前
記加工性を低下させる。したがって、B は300ppm以下の含有まで許容する。
(組織)
以上の合金組成を前提に、本発明では、前記軽量化形状の自動車足回り鍛造部品(=鍛
造材)につき、最小の肉厚減少率が25%を超える、大きな加工率で熱間鍛造加工を行っ
ても、特に鍛造材の前記表層部を除く断面全域において、再結晶による粗大な再結晶粒組
織が発生せず、微細な未結晶粒組織を備えるようにする。これによって、本発明では、前
記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品を、より高強度化および高耐食性化させること
ができるとともに、これらの特性を鍛造材の部位全体に亘って保障することができる。
このために、本発明では、鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域において、SEM−EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径が10μm以下であるとともに、この未再結晶領域の前記鍛造材の断面全域に対する平均面積割合が75%以上であることとする。この微細な未結晶粒組織は、傾角2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結晶粒だけでなく、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた、未再結晶領域である。本発明では、このような未再結晶領域全体の平均結晶粒を10μm以下に微細化させる。そして、このような未再結晶領域(未再結晶粒組織)が鍛造材の断面中央部に占める鍛造材断面に対する平均面積割合を75%以上と多くする。
そして、このような微細な未結晶粒組織をえるために、前記未結晶粒組織の(実際には鍛造前の押出材での前記未結晶粒組織に相当する組織であって、測定はこの押出材を鍛造した鍛造材にける前記未結晶粒組織で行う)最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度が10個/μm以上であるとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の平均面積率が2.5% 以下とする。
これらの測定は、実施例にて後述する通り、鍛造材の任意の各部位3箇所以上から前記鍛造材の断面全域を採取して、各々測定試料とする。したがって、例えば鍛造材の試料採取部位の大きさが幅4mm×高さ4mmなら、この4mm×4mmの全域が試料の大きさ=面積となり、試料の大きさは鍛造材の測定部位の断面積によって定まる。この測定試料断面(前記鍛造材の断面全域)を研磨後、化学エッチングし、400倍の光学顕微鏡を用いて、この試料断面に占める再結晶した結晶粒が粗大な表層領域(一般に試料表層から表層近傍)を判別して、測定対象から除外する。その後、光学顕微鏡により測定した、再結晶組織領域と未再結晶組織領域の境界を含む部位を5箇所切り出し(特に光学顕微鏡では境界の位置を判定することが難しい部位を優先する)、観察用に試料調整後、SEM−EBSPを用いて上記境界を含む領域を解析(1視野:4mm×2mm)し、境界の位置を明確にした後、上記断面全域に占める未再結晶組織領域の面積割合(%)を算出して、前記全測定部位(3箇所以上)の測定結果によって平均化する。一方、晶出物、分散粒子は、前記断面の未再結晶組織領域の任意の3部位より試料を切り出し、各組織を後述する各々の手段により観察して、3部位の平均によって、晶出物の平均面積率(%)、分散粒子の平均密度(個/μm)を算出する。因みに、これら晶出物、分散粒子は、前記鍛造材断面全域における前記未再結晶組織の形成に大きく関わるために、その影響や相関を調査するためには、当然ながら、前記未再結晶組織における、これらの存在状態を測定する。
これらの組織規定は、鍛造材の前記リブあるいはウエブなどの任意の部位を3箇所以上
測定した場合の平均値が、前記規定する組織を満足するものとする。鍛造材は部位によっ
て、熱間鍛造加工率、すなわち、肉厚減少率が大きく異なり、この点で、組織も大きく異
なる。ただ、このような鍛造材であっても、本発明では、任意の部位を3箇所以上測定し
た場合の、複数個所の平均値として、このような規定組織を満足している。また、本発明
は、鍛造材の断面の、肉厚中心部のような一部あるいは部分的ではなく、前記表層部を除
く断面全域において、再結晶による粗大な再結晶粒組織が発生せず、微細な未結晶粒組織
を備えるようにしている。このため、前記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品(鍛造
材)の、ほぼ部位全体に亘って、高強度化および高耐食性化を保証できる。因みに、本発
明での前記分散粒子と晶出物とは、熱間鍛造される前の押出材の組織において、規定のよ
うになっていることが重要となる。ただ、前記した通り、鍛造後の鍛造材あるいはその後
調質処理が施された鍛造材であっても、前記押出材での前記分散粒子と晶出物との大きさ
と密度、面積割合は大きく変化することは無いので、本発明での前記分散粒子と晶出物と
の組織規定は、鍛造後の鍛造材あるいはその後調質処理が施された鍛造材で行っている。
(未再結晶領域の測定)
傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結晶粒と、
傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた、未再結晶領域の同定は、鍛造材の前
記表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される。SEM
−EBSP法は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Micro
scope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP: ElectronBack Scattering (Scattered) Pa
ttern] システムを搭載した結晶方位解析法である。鍛造材の前記表層部を除く断面全域
における前記光学顕微鏡の観察によって、再結晶した結晶粒が粗大な表層領域を判別する
とともに、再結晶組織領域と未再結晶組織領域の境界を判別する。そして、特に光学顕微
鏡では境界の位置を判定することが難しい部位を優先する含む部位を5箇所切り出して、
観察用に試料を調整後、SEM−EBSPを用いて、前記した傾角が2°以上、15°未
満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた未再結晶組織領域の境界領域
を正確に解析(1視野:4mm×2mm)する。そして、前記光学顕微鏡の観察結果と併
せて、未再結晶組織領域を明確にし、上記断面全域に占める未再結晶組織領域の面積割合
(%)を算出する。
より具体的に、SEM−EBSPの前記観察用試料の調整は、前記光学顕微鏡の観察試
料 (断面組織)を、更に機械研磨後電解エッチングして鏡面化する。そして、FESEM
の鏡筒内にセットした、試料の鏡面化した表面に、電子線を照射してスクリーン上にEB
SPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。
コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによる
パターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オ
イラー角として、位置座標(x、y)などとともに記録される。このプロセスが全測定点
に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には、鍛造材の断面における数万〜数十万
点の結晶方位データが得られる。
このような鍛造材断面における結晶方位データから、未再結晶領域と再結晶領域とを明
確に区別して同定される。未再結晶領域は、15°未満の小傾角粒と規定される亜結晶粒
の領域、15°以上の大傾角粒からなる領域、また大傾角粒の中に小傾角粒を有する複合
構造の領域からなり、2°以上の境界で囲まれる領域(粒)の平均サイズは10μm以下
からなる。なお、15°以上の大傾角粒からなる領域は、新たに生じた微細な再結晶粒で
はなく、押出加工時また熱間鍛造時に、加工中に生じた小傾角粒が加工中に回転し、境界
間の方位差が大きくなることにより生じるものと推定される。一方、再結晶組織領域は、
平均サイズ10μmを超える大傾角粒からなり、なかには、組織の測定対象から外してい
る前記鍛造材の表層部のように、数mmサイズの巨大な再結晶粒も生じる。そして、この
結果から、この未再結晶領域が、鍛造材断面全域に占める面積割合を求めることができる
一方、未再結晶領域の平均結晶粒径は、前記試料の鏡面化した表面における、前記SE
M−EBSP法により同定された未再結晶領域内を、400倍の光学顕微鏡で偏光ミクロ
観察を行い、未再結晶領域内の結晶粒についき、粒径を画像解析により測定して、これら
の平均結晶粒径を算出する。
因みに、前記特許文献11〜13の平均結晶粒径が10μm以下の微細な亜結晶粒組織
とは、通常は傾角が15°未満の小傾角粒界と規定される亜結晶粒であって、傾角が15°以上の大傾角粒界を除いた、未再結晶粒組織でしかない。すなわち、本発明でいう未再結晶粒組織とは、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結晶粒と、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた領域である。したがって、傾角が15°以上の大傾角粒界を含まずに、亜結晶粒組織のみを規定した前記特許文献11〜13では、未再結晶粒組織を規定しておらず、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒の大きさや、面積割合によって、必然的に、本発明の規定から外れる。
また、前記特許文献11〜13の亜結晶粒組織の平均結晶粒径や面積割合の測定も、40
0 倍程度の光学顕微鏡のみで、しかも、サイズが大きい再結晶粒の光を反射しやすく色が
淡い特性や、サイズが小さいその他の亜結晶を含めた結晶粒の色の濃さとの、色の濃淡の
違いや、あるいは互いのサイズの違いで識別している。このため、傾角が15°以上の大
傾角粒界を除いていることも含めて、本発明のSEM−EBSP法による結晶粒組織の同
定に比して、測定が不正確とならざるを得ない。
(分散粒子と晶出物)
前記軽量化形状の足回り鍛造品の熱間鍛造加工の際の、最小の肉厚減少率が25%を超
えたとしても、以上の組織を保証するため、本発明では、前記押出鍛造技術において、再
結晶を抑制するとともに再結晶後の粒界移動を妨げる、微細な分散粒子をより高密度に形
成するとともに、再結晶の核となる晶出物を抑制して、熱間鍛造での再結晶および粗大な
粒成長を抑制する。
(分散粒子)
本発明では、前記したSEM−EBSPの観察用試料における未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を測定した場合の平均値として、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度を10個/μm以上とする。不定形の分散粒子における、最大長さとは、最も長い軸あるいは最も長い辺の軸長さである。
最小の肉厚減少率が25%を超えた場合に再結晶しやすい、鍛造材の前記断面全域の再
結晶を抑制することが、強度、靱性を向上させる上で重要となる。したがって、本発明で
は、この最も再結晶しやすい部位における再結晶を抑制する分散粒子を規定して、再結晶
を抑制し、再結晶による結晶粒の粗大化を抑制する。これによって、再結晶化、結晶粒の
粗大化による粒界破断を抑制して、自動車足回り鍛造部品の強度、靱性を向上させる。
本発明で言う分散粒子とはAl- Mn系、Al- Cr系、Al- Zr系の各金属間化合
物である。これらの分散粒子は、微細で高密度に分散すれば、再結晶後の粒界移動を妨げ
る効果があるため、結晶粒の再結晶化や粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させ
る効果が高い。しかし、通常の製造工程では、鋳造、均質化熱処理、熱間鍛造、溶体化処
理および焼入れ処理などの熱履歴において、昇温速度や冷却速度が小さ過ぎる場合に、製
造条件によっては、粗大化しやすい。このため、再結晶抑制 (結晶粒微細化) 効果が失わ
れ、却って、自動車足回り部品の破壊靱性および疲労特性を劣化させる可能性もある。
このため、本発明では、前記組織における上記分散粒子を微細で高密度に分散させるよ
うにし、粗大化させないために、分散粒子のサイズとして、最大長さと個数(密度)を規
定する。
(分散粒子の測定)
ここで、分散粒子の最大長と平均密度は、前記したSEM−EBSPの観察用試料にお
ける未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を、倍率20000倍のTEM(透過型電子顕
微鏡) で1断面当たり9視野観察する。これを画像解析して、各分散粒子の最大長と、最
大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度(10個/μm)を測定
する。この際、TEM観察部の試料厚さは200nmとほぼ一定である。
(晶出物)
次ぎに、本発明では、前記したSEM−EBSPの観察用試料における未再結晶組織領
域の任意の部位3箇所を測定した場合の平均値として、最大長が0.5μm以上の晶出物
の平均面積率を2.5% 以下と規制する。不定形の晶出物における、最大長さとは、最
も長い軸あるいは最も長い辺の軸長さである。
最小の肉厚減少率が25%を超えた場合に再結晶しやすい、鍛造材の前記断面全域の再
結晶を抑制するためには、その部分の鍛造中の再結晶の核となる晶出物を抑制することが
、強度、靱性を向上させる上で重要となる。因みに、本発明で言う晶出物とは、代表的に
はSi、Fe、Mn、Cr、Zrなどからなる、複合金属間化合物である。本発明では、
これらの含有量が比較的多く、破壊の起点となって鍛造品の特性を劣化させる、粗大な晶
出物を組織的に生成しやすくなっているので、この点でも晶出物を規制する必要がある。
(晶出物の測定)
ここで、晶出物の最大長と平均面積率は、前記したSEM−EBSPの観察用試料にお
ける未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を、倍率200倍のSEM(走査型電子顕微鏡)
で、1断面当たり25視野(1鍛造材で75視野以上)を観察して撮影し、得られた画像をデジタル処理して算出する。
(製造方法)
次に、本発明におけるAl合金鍛造材の製造方法について述べる。本発明におけるAl
合金鍛造材の製造工程自体は、常法により製造が可能である。但し、軽量化形状した自動
車足回り鍛造部品であっても、前記した組織を有し、高強度化、高靱性化および高耐食性
化させるためには、上記組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度
範囲で均質化熱処理を施した後に、400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、この押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱間鍛造加工を行い、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施すことが好ましい。押出比は押出前の断面積A、押出後の断面積Bを用いて、ln(A/B)で定義する。また、肉厚減少率は、押出材の径A、鍛造後の肉厚Bを用いて、{(A−B)/A}×100%で定義する。Aは、押出材の断面が円形の場合は直径、他の形状では断面内の最大長さとする。
(鋳造)
前記特定Al合金成分範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を鋳造する場合には、連続
鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常の溶解鋳造法を
適宜選択して鋳造する。
但し、前記特定Al合金成分範囲からなるアルミニウム合金溶湯を鋳造する際には、晶
出物の微細化と、デンドライト二次アーム間隔(DAS) を微細化させるために、平均冷却速
度を100 ℃/s以上とすることが好ましい。
(均質化熱処理)
鋳造した鋳塊の均質化熱処理は450〜580℃の温度範囲に2時間以上保持して行う
。均質化熱処理温度が450℃未満では、温度が低すぎて鋳塊を均質化できず、均質化熱
処理温度が580℃を超えると、鋳塊表面のバーニングが発生する。
(熱間押出)
この均質化熱処理後に、そのまま温度調節されるか、あるいは一旦室温まで冷却された
上で再加熱されて、400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の条件で、鋳塊の熱間押出加工を行い、押出材に加工する。熱間押出温度が580℃を超えると
、押出材表面のバーニングが発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高く
なる。熱間押出温度が400℃未満では、押出時の荷重が高くなり、押出材表面に傷が発
生しやすくなる。押出比が高すぎると、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなり、鍛
造材断面の前記全域や肉厚中心部でさえも結晶粒組織を微細化させることが困難となる。
反対に、押出比が小さ過ぎると、晶出物形成元素の含有量が比較的多く、晶出物を微細化
できず、伸び、靱性、疲労特性等が低くなる危険性がある。
(熱間鍛造)
この押出材を再加熱し、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜25
0℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未
満の条件で熱間鍛造加工を行う。熱間鍛造は、メカニカルプレスによる鍛造や油圧プレス
を用いて、自動車足回り部品の最終製品形状 (ニアネットシェイプ) に鍛造加工される。
この形状とは、前記した軽量化形状であり、例えば、比較的幅狭で厚い周縁部のリブと、
肉厚が10mm以下の薄肉で比較的広幅な中央部のウエブとからなる略H型の断面形状のアー
ム部を有する自動車足回り部品に加工される。
自動車足回り鍛造部品は、鍛造途中の再加熱無しで、あるいは必要に応じて再加熱し、
荒鍛造、中間鍛造、仕上げ鍛造と、熱間鍛造が複数回行われる。各鍛造後、また最終の鍛
造後の材料温度が430℃未満であれば、鍛造および溶体化処理工程において、加工組織
が再結晶して粗大結晶粒が発生する可能性がある。これら粗大結晶粒が発生した場合、上
記ミクロ組織を制御しても、高強度化や高靱性化が果たせず、また、耐食性も低下する。
しかも、低温の熱間鍛造では、鍛造材断面の前記全域を目標としている結晶粒を微細化さ
せることが困難となる。一方、材料温度が550℃を超えた場合、鍛造材表面のバーニン
グが発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
金型温度が100℃未満であれば、材料温度が低くなりすぎ、鍛造および溶体化処理工
程において、加工組織が再結晶して粗大結晶粒が発生する可能性がある。金型温度が25
0℃を超えた場合には、材料温度が高くなりすぎ、鍛造材表面のバーニング、焼き付きが
発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
部位によって異なる熱間鍛造の加工率として、最小の肉厚減少率が25%以下では、前
記した軽量化(複雑)形状の自動車足回り部品が鍛造加工できなくなる。一方、最大の肉
厚減少率が90%以上の場合、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
(調質処理)
この熱間鍛造後に、自動車足回り部品としての必要な強度および靱性、耐食性を得るた
めのT6、T7、T8等の調質処理を適宜行う。T6は、溶体化および焼き入れ処理後、最大強さ
を得る人工時効硬化処理である。T7は、溶体化および焼き入れ処理後、最大強さを得る人
工時効硬化処理条件を超えて過剰時効硬化処理である。T8は、溶体化および焼き入れ処理
後、冷間加工を行い、更に最大強さを得る人工時効硬化処理である。
溶体化処理は530〜570℃の温度範囲に20分〜8hr保持する。この溶体化処理温
度が低過ぎるか、あるいは時間が短過ぎると、溶体化が不足して、MgSi化合物の固溶
が不十分となり、強度が低下する。
この溶体化処理後、500℃から40℃までを25℃/s以上の平均冷却速度で焼き入
れ処理を行なうことが好ましい。この平均冷却速度を確保するためには、焼き入れ処理時
の冷却は水冷により行なうことが好ましい。この焼き入れ処理時の冷却速度が低くなると
、粒界上にMgSi化合物、Si等が析出し、人工時効後の製品において、粒界破壊が生
じ易くなり、靱性ならびに疲労特性を低くする。また、冷却途中に、粒内にも、安定相M
gSi化合物、Siが形成され、人工時効時に析出するβ相、β' 相の析出量が減るため
、強度が低下する。
ただ、一方で、冷却速度が高くなると、焼入歪み量が多くなり、焼入後に、矯正工程が
新たに必要となったり、矯正工程の工数が増す問題も新たに生じる。また残留応力も高く
なり、製品の寸法、形状精度が低下する問題も新たに生じる。この点、製品製造工程を短
縮し、低コスト化するためには、焼入歪みが緩和される50〜85℃の温湯焼入が好ましい。
ここで、温湯焼入温度が50℃未満では焼入歪みが大きくなり、85℃を越えると冷却速度が
低くなりすぎ、靱性ならびに疲労特性、強度が低くなる。
溶体化および焼入れ処理後の人工時効硬化処理は、焼入れ処理後、室温時効を進めない
ために、1時間以内に、160〜210℃の温度範囲と20分〜8hrの保持時間の範囲か
ら、前記T6、T7、T8等の調質処理の条件を選択する。
なお、前記した、均質化熱処理、溶体化処理には空気炉、誘導加熱炉、硝石炉などが適
宜用いられる。更に、人工時効硬化処理には空気炉、誘導加熱炉、オイルバスなどが適宜
用いられる。
本発明自動車足回り部品は、これら調質処理の前後に、自動車足回り部品として必要な
、機械加工や表面処理などが適宜施されても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例
によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加
えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1に示すアルミニウム合金組成の鋳塊(最終の鍛
造品組成でもある)を、表2に示す各条件で、均質化熱処理、熱間押出加工、熱間鍛造加
工を行い、また、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理を施して鍛造材を
製造した。そして、この鍛造材の組織、機械的特性、耐食性を表3に示すように測定、評
価した。
より具体的に、表1に示すアルミニウム合金組成の鋳塊(最終の鍛造品組成でもある)
は半連続鋳造法により鋳造した。なお、表1に示す各アルミニウム合金合金例は、共通し
て100gのAl中の水素濃度は全て0.10〜0.15mlであった。
これら各Al合金鋳塊の外表面を厚さ3mm 面削して、長さ500mm に切断後、各々表2に
示す各条件で、先ず均質化熱処理した。均質化熱処理後は、共通して、ファンを使用して
、冷却速度が100 ℃/hr 以上で強制空冷した。熱間押出は、各々表2に示す各条件で、通常の直接押出で行い、押出後はファンを使用して強制空冷した。熱間鍛造は、各々表2に示す各条件で、金型温度を100〜250℃の範囲に調節した上下金型を用いたメカニカルプレスにより行い、フラッシュランドの隙間1.5 〜3mm で、最終の肉厚まで再加熱無しに3 回鍛造した。この鍛造材を、各々表2に示す各条件で、空気炉を用いた溶体化処理および水焼入れを行った後、各々表2に示す各条件で人工時効処理を施し、T6の調質処理とした。
製造した鍛造材は、前記軽量化形状である自動車足回り部品として、各三角形の頂点部
分にボールジョイント部(1箇所)とゴムブッシュ部(2箇所)を有し、これらを略三角形の全体形状からなるアーム部で各々繋いだ形状とした。アーム部はその幅方向の中央部にアーム部の各長手方向に亙って延在する肉厚が10mm以下と薄いウエブ部と肉厚が厚いリブ部とからなる。このような自動車足回り部品において、最大応力が発生しやすい、前記肉厚が厚いリブ部の前記1箇所のボールジョイント部に近接した部位3箇所から、各測定試料を採取した。このリブ部は、特に強度、靱性を有すべき部位であって、このリブ部分に結晶粒の粗大化が生じやすくなると、アーム部、ひいては自動車足回り部品全体としての強度を高く維持しながら軽量化を図るのが困難となる。
前記3箇所から採取した測定試料における各断面を研磨後、化学エッチングし、400倍の光学顕微鏡を用いて、試料断面に占める再結晶した表層領域を判別して、測定対象から除外した。その後、再結晶組織領域と未再結晶組織領域の境界を含む部位であって、光学顕微鏡では境界の位置を判定することが難しい部位を優先して5箇所切り出し、観察用に試料調整後、SEM−EBSPを用いて上記境界を含む領域を解析(1視野:4mm×2mm)し、境界の位置を明確にした後、上記断面に占める未再結晶組織領域の面積割合(%)を算出した。そして、この未再結晶領域の平均結晶粒径を、前記光学顕微鏡で偏光ミクロ観察を行い、画像解析により測定、算出した。この結果、鍛造材断面に未再結晶領域を有する例では、発明例、比較例を含めて、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径は、すべて10μm以下であった。
一方、晶出物、分散粒子は、前記断面の未再結晶組織領域より、任意の3部位から試料
を切り出し、各組織を観察し平均値を、晶出物の平均面積割合(%、表3では平均面積率
と表示)、分散粒子の平均密度(個/μm、表3では平均個数と表示)を算出した。
そして、例え平均値として本発明で規定するこれらの組織規定を満足したとしても、前記
3箇所のうちの各1箇所当たりでは、どこの箇所も個別には本発明で規定するこれらの組
織規定を満足しないものを×、1箇所でも個別に本発明組織規定を満足するものを○、2
箇所以上(2箇所か3箇所全部か)個別に本発明組織規定を満足するものを◎と評価した
(機械的特性)
前記リブ部の3箇所から採取した測定試料から、引張試験片 (L方向) を作製して、引
張強度(MPa) 、0.2%耐力(MPa) 、伸び(%) などの機械的性質を各々測定し、これら3個所
(試験片3個)の各平均値を求めた。
(粒界腐食感受性)
耐食性評価のために、旧JIS-W1103 の規定に準じた粒界腐食感受性試験を、前記リブ部
の各部位3箇所から採取した測定試料(試験片3個)に対して行った。試験条件は、試験
液に規定時間の6hr浸漬後、試料を引き上げ、その後、試験片の断面を切断・研磨し、光
学顕微鏡を用いて、試料表面からの腐食深さを測定した。倍率は×100 とし、腐食深さが
200 μm 以下までを軽微な腐食として「○」と評価した。また、200 μm を超える場合を
大きな腐食として「×」と評価した。
表3から明らかな通り、各発明例は、組成と製造条件が好ましい範囲内である。この結
果、発明例は、平均値とともに、少なくとも1箇所以上個別に、本発明で規定するこれら
の組織規定を満足する。この結果、発明例は引張強度が最低でも394MPa以上であり、粒界腐食感受性にも優れている。
これに対し、最適製造条件から外れて製造された比較例16〜25は、本発明範囲内の組成
ではあるが、本発明組織規定を満足しないか、鍛造材に製造できていない。したがって、
製造できたとしても、比較例は、強度、耐食性のいずれかが、発明例に比して著しく劣る
比較例16は均熱温度が高過ぎ局部的な溶融(バーニング)が生じた。比較例17は均熱温度が低過ぎ、均質化熱処理が不十分で晶出物の面積率が大きくなり伸びが低下した。比較例18は押出温度が高過ぎ、試料表層にバーニングが生じた。比較例19は押出温度が低過ぎ、押出荷重が高くなり、表層に傷が多発した。比較例20は押出比が高過ぎ、再結晶した領域が大きくなり強度、伸びが低下した。比較例21は押出比が低過ぎ、晶出物の面積率が大きくなり伸びが低下した。比較例22は鍛造温度が高過ぎ、前記バーニング、焼付きが生じた。比較例23は鍛造温度が低過ぎ、再結晶した領域が大きくなり、特に強度が低下した。比較例24は鍛造加工率が高過ぎ、再結晶した領域が大きくなり強度、伸びが低下した。比較例25は溶体化温度が高過ぎ、前記バーニングが生じた。これらバーニングや傷が生じた比較例は、発明例のような組織や特性の測定、調査を省いた。
また、本発明範囲外の組成のAl合金である比較例1 〜15は、最適製造条件内で製造されているものの、強度、耐食性のいずれかが、発明例に比して著しく劣る。
比較例1 はZr過少である。比較例2はCr過少である。比較例3 はMn過少である。このため、表3の通り、再結晶した領域が大きくなり強度、伸び、耐食性が低下している。比較例4 はZr過多である。比較例5はCr過多である。比較例6 はMn過多である。このため、表3の通り、晶出物の面積率が大きくなり特に伸びの低下が著しい。比較例7はSi過多で、表3の通り、晶出物の面積率が大きくなり、伸びが低下している。比較例8 はSi過少で、表3の通り、強度が低くなっている。比較例9 はFe過多で、表3の通り、晶出物の面積率が大きくなり、伸びが著しく低くなっている。比較例10はFe過少で、表3の通り、再結晶した領域が大きくなり、強度が低くなっている。比較例11はCu過多で、表3の通り、耐食性は著しく低下する。比較例12はCu過少で表3の通り、強度は低くなる。比較例13はZn過多で、表3の通り、耐食性は著しく低下する。比較例14はTi過多で、表3の通り、粗大な金属間化合物を生成し、押し出し時に金属間化合物を起点に表面欠陥を多発する。比較例15はTi過少で、表3の通り、鋳塊の再結晶粒は粗大化し、押し出し時に割れを生じる。
以上の結果から、本発明組成、組織規定あるいは最適製造条件の、アルミニウム合金押
出材を熱間鍛造してなる鍛造材の強度、耐食性を向上させる臨界的な意義が分かる。
Figure 0005723192
Figure 0005723192
Figure 0005723192
本発明によれば、高強度化および高耐食性化させた、アルミニウム合金押出材を熱間鍛
造してなる鍛造材およびこれらの特性を鍛造材の部位全体に亘って保障した鍛造材および
その製造方法を提供することができる。したがって、Al- Mg- Si系アルミニウム合
金鍛造材の、自動車足回り部品など輸送機用への用途の拡大を図ることができる点で、多
大な工業的な価値を有するものである。

Claims (2)

  1. アルミニウム合金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、質量%で、Si:0.8
    〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、Zn:0.005
    〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、C
    r:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.1%を
    各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1.73>0.25
    を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径が10μm以下であるとともに、この未再結晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合が75%以上であり、かつ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度が10個/μm以上であるとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の平均面積率が2.5%以下であることを特徴とするアルミニウム合金鍛造材。
  2. 質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0
    .5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、T
    i:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg
    %]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有す
    るアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度範囲で均質化熱処理を施した後に、
    400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、こ
    の押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、
    最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱
    間鍛造加工を行い、更に、溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施して鍛造材を製
    造し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−
    EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が
    15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾
    角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径を10μm以下とするとともに、この未再結
    晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合を75%以上とし、か
    つ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子
    の平均密度を10個/μm以上とするとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の
    平均面積率を2.5% 以下としたことを特徴とするアルミニウム合金鍛造材の製造方法
JP2011076044A 2010-03-31 2011-03-30 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 Active JP5723192B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011076044A JP5723192B2 (ja) 2010-03-31 2011-03-30 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010082997 2010-03-31
JP2010082997 2010-03-31
JP2011076044A JP5723192B2 (ja) 2010-03-31 2011-03-30 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011225988A JP2011225988A (ja) 2011-11-10
JP5723192B2 true JP5723192B2 (ja) 2015-05-27

Family

ID=45041682

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011076044A Active JP5723192B2 (ja) 2010-03-31 2011-03-30 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5723192B2 (ja)

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5973717B2 (ja) * 2011-12-16 2016-08-23 株式会社Uacj アルミニウム合金複合材及びその製造方法、アルミニウム合金鍛造品
JP5863626B2 (ja) * 2012-02-02 2016-02-16 株式会社神戸製鋼所 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5872443B2 (ja) * 2012-03-30 2016-03-01 株式会社神戸製鋼所 自動車用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5698695B2 (ja) * 2012-03-30 2015-04-08 株式会社神戸製鋼所 自動車用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
KR102154132B1 (ko) 2012-04-25 2020-09-10 노르스크 히드로 아에스아 특성이 향상된 Al-Mg-Si 알루미늄 합금
WO2014084424A1 (ko) * 2012-11-30 2014-06-05 인하대학교 산학협력단 고방열 고강도 알루미늄 합금
JP5837026B2 (ja) * 2013-03-29 2015-12-24 株式会社神戸製鋼所 自動車用アルミニウム合金鍛造材及びその製造方法
KR101511544B1 (ko) 2013-11-15 2015-04-13 현대자동차주식회사 열간단조용 알루미늄 합금을 이용한 단조품의 제조방법
CN107282666A (zh) * 2017-06-16 2017-10-24 航天精工股份有限公司 一种高强度铝或铝合金紧固件及其制造方法
JP7380134B2 (ja) 2019-11-27 2023-11-15 株式会社レゾナック 自動車足回り用アルミニウム合金鍛造材の製造方法
CN111014539B (zh) * 2019-12-24 2022-03-15 陕西宏远航空锻造有限责任公司 一种使铝合金锻件的电导率与纵向屈服强度匹配的方法
CN114369747A (zh) * 2022-01-07 2022-04-19 山东创新精密科技有限公司 船舶用铝合金带劲板及其挤压工艺
JP2023104587A (ja) * 2022-01-18 2023-07-28 株式会社レゾナック アルミニウム合金鍛造品及びその製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3684313B2 (ja) * 1998-08-25 2005-08-17 株式会社神戸製鋼所 自動車のサスペンション部品用高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材
JP2007169699A (ja) * 2005-12-21 2007-07-05 Toyota Motor Corp 耐食性に優れた高強度、高靭性アルミニウム合金鍛造材とその製造方法、およびサスペンション部品
JP4757022B2 (ja) * 2005-12-28 2011-08-24 住友軽金属工業株式会社 耐食性に優れた高強度、高靭性アルミニウム合金押出材および鍛造材、該押出材および鍛造材の製造方法
JP5180496B2 (ja) * 2007-03-14 2013-04-10 株式会社神戸製鋼所 アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011225988A (ja) 2011-11-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5723192B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5110938B2 (ja) 自動車足回り部品およびその製造方法
JP5901738B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5180496B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5698695B2 (ja) 自動車用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5431233B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP5863626B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
EP2899287B1 (en) Aluminum alloy plate for automobile part
JP6022882B2 (ja) 高強度アルミニウム合金押出材及びその製造方法
JP5830006B2 (ja) 強度に優れたアルミニウム合金押出材
JP3997009B2 (ja) 高速動部品用アルミニウム合金鍛造材
JP2017155251A (ja) 強度と延性に優れたアルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP6182490B2 (ja) アルミニウム合金鍛造材
KR20090089905A (ko) 고강도 알루미늄 합금재 및 그 제조 방법
WO2016204043A1 (ja) 高強度アルミニウム合金熱間鍛造材
JP3684313B2 (ja) 自動車のサスペンション部品用高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材
JP2004292937A (ja) 輸送機構造材用アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法
JP2004084058A (ja) 輸送機構造材用アルミニウム合金鍛造材の製造方法およびアルミニウム合金鍛造材
JP2006257522A (ja) Zrを含むAl−Zn−Mg−Cu系アルミニウム合金及びその製造方法
WO2009123084A1 (ja) マグネシウム合金およびその製造方法
JP6223670B2 (ja) 自動車部材用アルミニウム合金板
JP2001107168A (ja) 耐食性に優れた高強度高靱性アルミニウム合金鍛造材
JP4088546B2 (ja) 高温特性に優れたアルミニウム合金鍛造材の製造方法
JP2001181771A (ja) 高強度耐熱アルミニウム合金材
JP2018111864A (ja) アルミニウム合金鍛造材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130902

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140729

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140916

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150324

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150327

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5723192

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150