JP5723192B2 - アルミニウム合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
方法に関するものである。以下、アルミニウムを単にAlとも言う。
よる燃費の向上が追求されている。このため、特に、自動車などの輸送機の構造材乃至構
造部品、特にアッパーアーム、ロアーアームなどの足回り部品として、AA乃至JIS の規格
で言う6000系(Al−Mg−Si系)Al合金鍛造材が使用されている。6000系
Al合金鍛造材は、高強度高靱性で、耐食性にも比較的優れている。また、6000系A
l合金自体も、合金元素量が少なく、スクラップを再び6000系Al合金溶解原料とし
て再利用しやすい点で、リサイクル性にも優れている。
求されている。この点で、アルミニウム合金鍛造材は、足回り鍛造部品して、アルミニウ
ム合金鋳造材等に比較して、強度的に優れ、信頼性が高い。
肉化させた上での高強度化や高靱性化が求められている。このため、Al合金鋳造材やA
l合金鍛造材のミクロ組織を改善することが、従来から種々行われている。
デンドライト二次アーム間隔(DAS) を40μm 以下と細かくして、Al合金鍛造材をより
高強度で高靱性化することが提案されている(特許文献1、2参照) 。
を制御することで、Al合金鍛造材をより高強度で高靱性化することも提案されている。
これらの制御は、粒界腐食や応力腐食割れなどに対しても高耐食性化できる。そして、こ
れらの晶出物の制御に合わせて、Mn、Zr、Crなどの結晶粒微細化効果を有する遷移
元素を添加して、結晶粒を微細化乃至亜結晶粒化させ、破壊靱性や疲労特性を向上させる
こともこれらの提案の中で記載されている(特許文献3、4、5参照) 。
て、加工組織が再結晶して粗大結晶粒が発生する傾向がある。これら粗大結晶粒が発生し
た場合、上記ミクロ組織を制御しても、高強度化や高靱性化が果たせず、また、耐食性も
低下する。しかも、これらの各特許文献では、鍛造における加工温度が450 ℃未満と比較
的低く、このような低温の熱間鍛造では、目標としている結晶粒を微細化乃至亜結晶粒化
させることが困難となる。
rなどの結晶粒微細化効果を有する遷移元素を添加した上で、450 〜570 ℃の比較的高温
の温度で熱間鍛造を開始することが知られている(特許文献6〜7、8〜10参照) 。
て用い、鋳塊を均質化熱処理後、メカニカル鍛造、油圧鍛造などの熱間鍛造(型鍛造)を
行い、その後、溶体化および焼き入れ処理と人工時効硬化処理との所謂T6調質処理が施
されて製造される。これに対して、耐力で350MPa以上の高強度とシャルピー衝撃値20J/cm2以上の高靭性を得るために、鍛造用の素材として、前記鋳造材を一旦熱間押出加工した押出材を用いることが提案されている(特許文献11、12、13参照)。これらの技術では、通常用いられる鋳造材の他に、鍛造材断面の肉厚中心部における組織を、平均結晶粒径が10μm以下の微細な亜結晶粒組織として、より優れた強度と靭性、あるいは耐食性を持たせている。
文献11、12、13にも大きな限界がある。すなわち、熱間鍛造により、鍛造材の部位
によって異なる肉厚減少率のうち、最小の肉厚減少率が25%を超える、大きな加工率で
熱間鍛造加工を行った場合には、鍛造材断面の肉厚中心部においても、再結晶しやすくな
って、粗大な再結晶粒が発生して、強度や靱性の低下が避けがたくなる。
いる技術(以下、押出鍛造技術という)では、耐力で350MPa以上の高強度と、シャ
ルピー衝撃値20J/cm2以上の高靭性を得るためには、最小の肉厚減少率が25%以
下の小さな加工率で熱間鍛造加工せざるを得ない。実際にも、例えば特許文献12の実施
例では、直径20mmの押出ビレット(丸棒)を、各辺が15mm長さの角R付きの角棒
形状に熱間鍛造しており、その肉厚減少率は25%程度でしかない。
記した棒形状などの単純な鍛造製品形状に、大きく限定、制約される。ただ、汎用されて
いる、アッパーアーム、ロアーアームなどの足回り鍛造部品は、略三角形の全体形状と、
平面視で略Y型形状のアーム部と、このアーム部の3つの各端部に各々ボールジョイント
部(3箇所)を有するような、複雑形状となっている。このため、必然的に、最小の肉厚
減少率が25%を超える大きな加工率となる。
に、断面が、幅狭で厚い周縁部のリブと、幅広で薄肉な中央部のウエブとからなる、略H
型の形状をしている。そして、近年では、このような自動車足回り部品を一層薄肉化、軽
量化させるために、前記ウエブを一層薄肉化したり、広幅化し、前記リブを一層幅狭化、
厚肉化させた形状( 以下、軽量化形状とも言う) となっている。このため、例えば、前記
ウエブの肉厚を10mm以下に薄肉化させた自動車足回り部品も採用され始めている。
肉厚減少率が25%を超える大きな加工率となる。このため、熱間鍛造加工を行った場合
に、前記した通りに、鍛造材断面の肉厚中心部においても、再結晶しやすくなって、粗大
な再結晶粒が発生して、強度や靱性の低下が避けがたくなる。このため、従来の押出鍛造
技術では、このような軽量化形状の自動車足回り部品を、高強度化させて、製造すること
ができない。
術を改良して、アルミニウム合金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、高強度で高
耐食性な軽量化形状の鍛造材を提供することを目的とする。
金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径が10μm以下であるとともに、この未再結晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合が75%以上であり、かつ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度が10個/μm3 以上であるとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の平均面積率が2.5%以下である
こととする。
、質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0
.5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、T
i:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg
%]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有す
るアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度範囲で均質化熱処理を施した後に、
400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、こ
の押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、
最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱
間鍛造加工を行い、更に、溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施して鍛造材を製
造し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−
EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が
15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾
角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径を10μm以下とするとともに、この未再結
晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合を75%以上とし、か
つ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子
の平均密度を10個/μm3 以上とするとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の
平均面積率を2.5% 以下としたことである。
鍛造材)など、鍛造材の部位によって異なる肉厚減少率のうち、最小の肉厚減少率が25
%を超える大きな加工率で熱間鍛造加工を行っても、鍛造材の表層部を除く断面全域に
おいて、再結晶による粗大な再結晶粒が発生せず、微細な結晶粒組織を備えるようにする
。このため、本発明では、前記押出鍛造技術において、再結晶を抑制するとともに再結晶
後の粒界移動を妨げる、微細な分散粒子をより高密度に形成するとともに、再結晶の核と
なる晶出物を抑制して、熱間鍛造での再結晶および粗大な粒成長を抑制する。これによっ
て、特に鍛造材の前記表層部を除く断面全域の結晶粒組織を微細化させる。なお、前記表
層部とは、結晶粒が粗大となっており、光学顕微鏡によって内部組織と判別が可能な薄い
表層部である。
によって、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結
晶粒だけでなく、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた、未再結晶領域全体
において、より徹底させることができる。このため、未再結晶領域全体の平均結晶粒を1
0μm以下により微細化させることができる、しかも、このような未再結晶領域(未再結
晶粒組織)が前記鍛造材の断面全域に対する平均面積割合が75%以上と多くすることが
可能である。
生せず、微細な結晶粒組織を備えるようにするためには、熱間鍛造される前の押出材の組
織において、本発明で規定する、前記微細な分散粒子が高密度に形成されるとともに晶出
物が抑制された、組織となっていることが重要となる。ただ、製造途中の中間材である押
出材では、これら分散粒子や晶出物の測定がしずらく、また、鍛造後の鍛造材であっても
、あるいは、その後調質処理が施された鍛造材であっても、前記押出材での前記分散粒子
と晶出物との大きさと密度あるいは面積割合は、大きく変化することは無い。したがって
、本発明での前記分散粒子と晶出物との組織規定は、鍛造後の鍛造材あるいはその後調質
処理が施された鍛造材で行っている。
組織規定ではなく、前記した通り、鍛造材の複数個所における断面全域の組織を規定する
。これによって、本発明では、前記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品を、より高強
度化および高耐食性化させることができるとともに、これらの特性を鍛造材の部位全体に
亘って保障することができる。
本発明におけるAl合金鍛造材、この鍛造加工用の素材であるAl合金押出材、この押
出加工用の素材であるAl合金鋳造材、この鋳造用の素材であるAl合金溶湯における、
Al合金の化学成分組成について、以下に説明する。
して、高強度、耐応力腐食割れ性などの高い耐食性乃至耐久性を保証する必要がある。こ
のため、6000系Al合金組成範囲の中でも、本発明におけるAl合金組成は、質量%
で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、
Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.
01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1
.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、
各元素量における%表示はすべて質量%の意味である。
しない範囲で、JIS規格の上限規定などに基づく通常の量を含むことは許容される。次
に、各元素の含有量について、臨界的意義や好ましい範囲について説明する。
Mgは人工時効硬化処理(時効処理)により、Siとともに、主として針状β' 相として結晶粒内に析出し、自動車足回り部品の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Mgの含有量が少な過ぎると、人工時効処理時の時効硬化量が低下する。一方、Mgの含有量が多過ぎると、強度 (耐力) が高くなりすぎ、鍛造性を阻害する。また、溶体化処理後の焼き入れ途中に多量のMg−Si化合物や単体Siが析出しやすく、却って、強度、靱性、伸び、耐食性などを低下させる。したがって、Mg含有量は0.70〜1.3%の範囲とする。
SiもMgとともに、人工時効処理により、主として針状β' 相として析出して、自動
車足回り部品使用時の高強度 (耐力) を付与するために必須の元素である。Siの含有量
が少な過ぎると、人工時効処理で十分な強度が得られない。一方、Siの含有量が多過ぎ
ると、鋳造時および溶体化処理後の焼き入れ途中で、粗大な単体Si粒子が晶出および析
出して、耐食性と靱性を低下させる。また、過剰Siが多くなって、高耐食性と高靱性、
高疲労特性を得ることができない。更に伸びが低くなるなど、加工性も阻害する。したが
って、Siの含有量は0.8〜1.3%の範囲とする。
SiとMgとは、前記した各含有量を各々満足するとともに、高強度化のために、Si
含有量である[Si%]とMg含有量である[Mg%]との関係式として、[Si%]−
[Mg%]/1.73>0.25も満足するようにする。すなわち、Mg含有量に対して
Si含有量が過剰な、過剰Si型の6000系合金として、溶体化および焼入れ処理後の
鍛造材の時効硬化性を高めて、時効処理による高強度化を図る。
Cuは固溶強化にて強度の向上に寄与する他、時効処理に際して、最終製品の時効硬化
を著しく促進する効果も有する。Cuの含有量が少な過ぎると、これらの強度向上効果が
無い。一方、Cuの含有量が多過ぎると、Al合金鍛造材の組織の応力腐食割れや粒界腐
食の感受性を著しく高め、Al合金鍛造材の耐食性や耐久性を低下させる。したがって、
Cuの含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。
Znは、人工時効処理において、Zn−Mg析出物を、微細かつ高密度に析出、形成し
て、高い強度を実現させる。また、固溶したZnは粒内の電位を下げ、腐食形態を粒界か
らではなく、全面的な腐食として、粒界腐食や応力腐食割れを結果として軽減する効果も
ある。しかし、Znの含有量が多過ぎると、耐食性が顕著に低下する。したがって、Zn
の含有量は0.005〜0.2%の範囲とする。
Feは、Mn、Crとともに、Al−Fe系金属間化合物からなる微細な分散粒子 (分
散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶
粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造
材での再結晶および粒成長を抑制する。これによって、特に鍛造材の前記表層部を除く断
面全域の結晶粒組織を本発明で規定するように微細化させる。Feの含有量が少な過ぎる
と、これらの効果が無い。一方、Feの含有量が多過ぎると、Al−Fe−Si晶出物な
どの粗大な晶出物を生成する。これらの晶出物は、破壊靱性および疲労特性などを劣化さ
せる。したがって、Feの含有量は0.01〜0.45%の範囲とする。
Mnは、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、Al−Mn系金属間化合物からなる分散粒子 (分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造材での再結晶および粒成長を抑制する。これによって、特に鍛造材の断面の肉厚中心部での結晶粒組織を、本発明で規定するように微細化させる。また、Mnはマトリックスへの固溶による強度およびヤング率の増大も見込める。Mnの含有量が少なすぎると、分散粒子が不足して、これらの効果が期待できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する。一方、Mnの過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成しやすく、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、Mnは、Cr、Zrとともに含有させるとともに、0.30%を超え、0.8%以下の範囲で含有させる。
合物は、Al−(Fe、Mn、Cr) −Siで表され、Fe、Mn、Cr、Si、Alな
どが、その含有量に応じて、選択的に結合した公知の化合物である。
Crも、Mnと同様に、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、分散粒子 (分散
相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、結晶粒
を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、鍛造材
での再結晶および粒成長を抑制する。Crの含有量が少なすぎると、これらの効果が期待
できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する。一方
、これらの元素の過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成しやす
く、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、CrはMn
、Zrとともに含有させるとともに、その含有量は0.01〜0.25%の範囲とする。
Zrも、Mn、Crと同様に、均質化熱処理時およびその後の熱間鍛造時に、分散粒子
(分散相) を生成し、再結晶後の粒界移動を妨げ、結晶粒の粗大化を防止するとともに、
結晶粒を微細化させる効果がある。すなわち、微細な分散粒子をより高密度に形成して、
鍛造材での再結晶および粒成長を抑制する。Zrの含有量が少なすぎると、これらの効果
が期待できず、熱間鍛造時に再結晶が進み、結晶粒が粗大化して、強度や靱性が低下する
。一方、これらの元素の過剰な含有は溶解、鋳造時に粗大な金属間化合物や晶出物を生成
しやすく、破壊の起点となり、靱性や疲労特性を低下させる原因となる。このため、Zr
は、Mn、Crとともに含有させるとともに、その含有量は0.01〜0.25%の範囲
とする。
Tiは、鋳塊の結晶粒を微細化し、鍛造材組織を微細な亜結晶粒とする効果がある。T
iの含有量が少な過ぎるとこの効果が発揮されない。しかし、Tiの含有量が多過ぎると
、粗大な晶出物を形成し、前記加工性を低下させる。したがって、Tiの含有量は0.0
1〜0.1%の範囲とする。
容される。水素は不純物として混入しやすく、特に、鍛造材の加工度が小さくなる場合、
水素に起因する気泡が鍛造等加工で圧着せず、ブリスターが発生し、破壊の起点となるた
め、靱性や疲労特性を著しく低下させる。特に、高強度化した足回り部品などにおいては
、この水素による影響が大きい。したがって、Al 100g 当たりの水素濃度は0.25ml以下
の、できるだけ少ない含有量とすることが好ましい。V、Hfも不純物として混入しやす
く、足回り部品の特性を阻害するので、これらの合計で0.3%未満とする。また、B は不
純物であるが、Tiと同様、鋳塊の結晶粒を微細化し、押出や鍛造時の加工性を向上させ
る効果もある。しかし、300ppmを越えて含有されると、やはり粗大な晶出物を形成し、前
記加工性を低下させる。したがって、B は300ppm以下の含有まで許容する。
以上の合金組成を前提に、本発明では、前記軽量化形状の自動車足回り鍛造部品(=鍛
造材)につき、最小の肉厚減少率が25%を超える、大きな加工率で熱間鍛造加工を行っ
ても、特に鍛造材の前記表層部を除く断面全域において、再結晶による粗大な再結晶粒組
織が発生せず、微細な未結晶粒組織を備えるようにする。これによって、本発明では、前
記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品を、より高強度化および高耐食性化させること
ができるとともに、これらの特性を鍛造材の部位全体に亘って保障することができる。
測定した場合の平均値が、前記規定する組織を満足するものとする。鍛造材は部位によっ
て、熱間鍛造加工率、すなわち、肉厚減少率が大きく異なり、この点で、組織も大きく異
なる。ただ、このような鍛造材であっても、本発明では、任意の部位を3箇所以上測定し
た場合の、複数個所の平均値として、このような規定組織を満足している。また、本発明
は、鍛造材の断面の、肉厚中心部のような一部あるいは部分的ではなく、前記表層部を除
く断面全域において、再結晶による粗大な再結晶粒組織が発生せず、微細な未結晶粒組織
を備えるようにしている。このため、前記軽量化形状をした自動車足回り鍛造部品(鍛造
材)の、ほぼ部位全体に亘って、高強度化および高耐食性化を保証できる。因みに、本発
明での前記分散粒子と晶出物とは、熱間鍛造される前の押出材の組織において、規定のよ
うになっていることが重要となる。ただ、前記した通り、鍛造後の鍛造材あるいはその後
調質処理が施された鍛造材であっても、前記押出材での前記分散粒子と晶出物との大きさ
と密度、面積割合は大きく変化することは無いので、本発明での前記分散粒子と晶出物と
の組織規定は、鍛造後の鍛造材あるいはその後調質処理が施された鍛造材で行っている。
傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結晶粒と、
傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた、未再結晶領域の同定は、鍛造材の前
記表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される。SEM
−EBSP法は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Micro
scope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP: ElectronBack Scattering (Scattered) Pa
ttern] システムを搭載した結晶方位解析法である。鍛造材の前記表層部を除く断面全域
における前記光学顕微鏡の観察によって、再結晶した結晶粒が粗大な表層領域を判別する
とともに、再結晶組織領域と未再結晶組織領域の境界を判別する。そして、特に光学顕微
鏡では境界の位置を判定することが難しい部位を優先する含む部位を5箇所切り出して、
観察用に試料を調整後、SEM−EBSPを用いて、前記した傾角が2°以上、15°未
満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた未再結晶組織領域の境界領域
を正確に解析(1視野:4mm×2mm)する。そして、前記光学顕微鏡の観察結果と併
せて、未再結晶組織領域を明確にし、上記断面全域に占める未再結晶組織領域の面積割合
(%)を算出する。
料 (断面組織)を、更に機械研磨後電解エッチングして鏡面化する。そして、FESEM
の鏡筒内にセットした、試料の鏡面化した表面に、電子線を照射してスクリーン上にEB
SPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。
コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによる
パターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オ
イラー角として、位置座標(x、y)などとともに記録される。このプロセスが全測定点
に対して自動的に行なわれるので、測定終了時には、鍛造材の断面における数万〜数十万
点の結晶方位データが得られる。
確に区別して同定される。未再結晶領域は、15°未満の小傾角粒と規定される亜結晶粒
の領域、15°以上の大傾角粒からなる領域、また大傾角粒の中に小傾角粒を有する複合
構造の領域からなり、2°以上の境界で囲まれる領域(粒)の平均サイズは10μm以下
からなる。なお、15°以上の大傾角粒からなる領域は、新たに生じた微細な再結晶粒で
はなく、押出加工時また熱間鍛造時に、加工中に生じた小傾角粒が加工中に回転し、境界
間の方位差が大きくなることにより生じるものと推定される。一方、再結晶組織領域は、
平均サイズ10μmを超える大傾角粒からなり、なかには、組織の測定対象から外してい
る前記鍛造材の表層部のように、数mmサイズの巨大な再結晶粒も生じる。そして、この
結果から、この未再結晶領域が、鍛造材断面全域に占める面積割合を求めることができる
。
M−EBSP法により同定された未再結晶領域内を、400倍の光学顕微鏡で偏光ミクロ
観察を行い、未再結晶領域内の結晶粒についき、粒径を画像解析により測定して、これら
の平均結晶粒径を算出する。
とは、通常は傾角が15°未満の小傾角粒界と規定される亜結晶粒であって、傾角が15°以上の大傾角粒界を除いた、未再結晶粒組織でしかない。すなわち、本発明でいう未再結晶粒組織とは、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界として測定あるいは規定される亜結晶粒と、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒とを含めた領域である。したがって、傾角が15°以上の大傾角粒界を含まずに、亜結晶粒組織のみを規定した前記特許文献11〜13では、未再結晶粒組織を規定しておらず、傾角が15°以上の大傾角粒界の結晶粒の大きさや、面積割合によって、必然的に、本発明の規定から外れる。
0 倍程度の光学顕微鏡のみで、しかも、サイズが大きい再結晶粒の光を反射しやすく色が
淡い特性や、サイズが小さいその他の亜結晶を含めた結晶粒の色の濃さとの、色の濃淡の
違いや、あるいは互いのサイズの違いで識別している。このため、傾角が15°以上の大
傾角粒界を除いていることも含めて、本発明のSEM−EBSP法による結晶粒組織の同
定に比して、測定が不正確とならざるを得ない。
前記軽量化形状の足回り鍛造品の熱間鍛造加工の際の、最小の肉厚減少率が25%を超
えたとしても、以上の組織を保証するため、本発明では、前記押出鍛造技術において、再
結晶を抑制するとともに再結晶後の粒界移動を妨げる、微細な分散粒子をより高密度に形
成するとともに、再結晶の核となる晶出物を抑制して、熱間鍛造での再結晶および粗大な
粒成長を抑制する。
本発明では、前記したSEM−EBSPの観察用試料における未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を測定した場合の平均値として、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度を10個/μm3 以上とする。不定形の分散粒子における、最大長さとは、最も長い軸あるいは最も長い辺の軸長さである。
結晶を抑制することが、強度、靱性を向上させる上で重要となる。したがって、本発明で
は、この最も再結晶しやすい部位における再結晶を抑制する分散粒子を規定して、再結晶
を抑制し、再結晶による結晶粒の粗大化を抑制する。これによって、再結晶化、結晶粒の
粗大化による粒界破断を抑制して、自動車足回り鍛造部品の強度、靱性を向上させる。
物である。これらの分散粒子は、微細で高密度に分散すれば、再結晶後の粒界移動を妨げ
る効果があるため、結晶粒の再結晶化や粗大化を防止するとともに、結晶粒を微細化させ
る効果が高い。しかし、通常の製造工程では、鋳造、均質化熱処理、熱間鍛造、溶体化処
理および焼入れ処理などの熱履歴において、昇温速度や冷却速度が小さ過ぎる場合に、製
造条件によっては、粗大化しやすい。このため、再結晶抑制 (結晶粒微細化) 効果が失わ
れ、却って、自動車足回り部品の破壊靱性および疲労特性を劣化させる可能性もある。
うにし、粗大化させないために、分散粒子のサイズとして、最大長さと個数(密度)を規
定する。
ここで、分散粒子の最大長と平均密度は、前記したSEM−EBSPの観察用試料にお
ける未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を、倍率20000倍のTEM(透過型電子顕
微鏡) で1断面当たり9視野観察する。これを画像解析して、各分散粒子の最大長と、最
大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度(10個/μm3 )を測定
する。この際、TEM観察部の試料厚さは200nmとほぼ一定である。
次ぎに、本発明では、前記したSEM−EBSPの観察用試料における未再結晶組織領
域の任意の部位3箇所を測定した場合の平均値として、最大長が0.5μm以上の晶出物
の平均面積率を2.5% 以下と規制する。不定形の晶出物における、最大長さとは、最
も長い軸あるいは最も長い辺の軸長さである。
結晶を抑制するためには、その部分の鍛造中の再結晶の核となる晶出物を抑制することが
、強度、靱性を向上させる上で重要となる。因みに、本発明で言う晶出物とは、代表的に
はSi、Fe、Mn、Cr、Zrなどからなる、複合金属間化合物である。本発明では、
これらの含有量が比較的多く、破壊の起点となって鍛造品の特性を劣化させる、粗大な晶
出物を組織的に生成しやすくなっているので、この点でも晶出物を規制する必要がある。
ここで、晶出物の最大長と平均面積率は、前記したSEM−EBSPの観察用試料にお
ける未再結晶組織領域の任意の部位3箇所を、倍率200倍のSEM(走査型電子顕微鏡)
で、1断面当たり25視野(1鍛造材で75視野以上)を観察して撮影し、得られた画像をデジタル処理して算出する。
次に、本発明におけるAl合金鍛造材の製造方法について述べる。本発明におけるAl
合金鍛造材の製造工程自体は、常法により製造が可能である。但し、軽量化形状した自動
車足回り鍛造部品であっても、前記した組織を有し、高強度化、高靱性化および高耐食性
化させるためには、上記組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度
範囲で均質化熱処理を施した後に、400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、この押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱間鍛造加工を行い、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施すことが好ましい。押出比は押出前の断面積A、押出後の断面積Bを用いて、ln(A/B)で定義する。また、肉厚減少率は、押出材の径A、鍛造後の肉厚Bを用いて、{(A−B)/A}×100%で定義する。Aは、押出材の断面が円形の場合は直径、他の形状では断面内の最大長さとする。
前記特定Al合金成分範囲内に溶解調整されたAl合金溶湯を鋳造する場合には、連続
鋳造圧延法、半連続鋳造法(DC鋳造法)、ホットトップ鋳造法等の通常の溶解鋳造法を
適宜選択して鋳造する。
出物の微細化と、デンドライト二次アーム間隔(DAS) を微細化させるために、平均冷却速
度を100 ℃/s以上とすることが好ましい。
鋳造した鋳塊の均質化熱処理は450〜580℃の温度範囲に2時間以上保持して行う
。均質化熱処理温度が450℃未満では、温度が低すぎて鋳塊を均質化できず、均質化熱
処理温度が580℃を超えると、鋳塊表面のバーニングが発生する。
この均質化熱処理後に、そのまま温度調節されるか、あるいは一旦室温まで冷却された
上で再加熱されて、400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の条件で、鋳塊の熱間押出加工を行い、押出材に加工する。熱間押出温度が580℃を超えると
、押出材表面のバーニングが発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高く
なる。熱間押出温度が400℃未満では、押出時の荷重が高くなり、押出材表面に傷が発
生しやすくなる。押出比が高すぎると、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなり、鍛
造材断面の前記全域や肉厚中心部でさえも結晶粒組織を微細化させることが困難となる。
反対に、押出比が小さ過ぎると、晶出物形成元素の含有量が比較的多く、晶出物を微細化
できず、伸び、靱性、疲労特性等が低くなる危険性がある。
この押出材を再加熱し、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜25
0℃の範囲、最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未
満の条件で熱間鍛造加工を行う。熱間鍛造は、メカニカルプレスによる鍛造や油圧プレス
を用いて、自動車足回り部品の最終製品形状 (ニアネットシェイプ) に鍛造加工される。
この形状とは、前記した軽量化形状であり、例えば、比較的幅狭で厚い周縁部のリブと、
肉厚が10mm以下の薄肉で比較的広幅な中央部のウエブとからなる略H型の断面形状のアー
ム部を有する自動車足回り部品に加工される。
荒鍛造、中間鍛造、仕上げ鍛造と、熱間鍛造が複数回行われる。各鍛造後、また最終の鍛
造後の材料温度が430℃未満であれば、鍛造および溶体化処理工程において、加工組織
が再結晶して粗大結晶粒が発生する可能性がある。これら粗大結晶粒が発生した場合、上
記ミクロ組織を制御しても、高強度化や高靱性化が果たせず、また、耐食性も低下する。
しかも、低温の熱間鍛造では、鍛造材断面の前記全域を目標としている結晶粒を微細化さ
せることが困難となる。一方、材料温度が550℃を超えた場合、鍛造材表面のバーニン
グが発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
程において、加工組織が再結晶して粗大結晶粒が発生する可能性がある。金型温度が25
0℃を超えた場合には、材料温度が高くなりすぎ、鍛造材表面のバーニング、焼き付きが
発生するとともに、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
記した軽量化(複雑)形状の自動車足回り部品が鍛造加工できなくなる。一方、最大の肉
厚減少率が90%以上の場合、粗大な再結晶粒が発生する可能性が高くなる。
この熱間鍛造後に、自動車足回り部品としての必要な強度および靱性、耐食性を得るた
めのT6、T7、T8等の調質処理を適宜行う。T6は、溶体化および焼き入れ処理後、最大強さ
を得る人工時効硬化処理である。T7は、溶体化および焼き入れ処理後、最大強さを得る人
工時効硬化処理条件を超えて過剰時効硬化処理である。T8は、溶体化および焼き入れ処理
後、冷間加工を行い、更に最大強さを得る人工時効硬化処理である。
度が低過ぎるか、あるいは時間が短過ぎると、溶体化が不足して、MgSi化合物の固溶
が不十分となり、強度が低下する。
れ処理を行なうことが好ましい。この平均冷却速度を確保するためには、焼き入れ処理時
の冷却は水冷により行なうことが好ましい。この焼き入れ処理時の冷却速度が低くなると
、粒界上にMgSi化合物、Si等が析出し、人工時効後の製品において、粒界破壊が生
じ易くなり、靱性ならびに疲労特性を低くする。また、冷却途中に、粒内にも、安定相M
gSi化合物、Siが形成され、人工時効時に析出するβ相、β' 相の析出量が減るため
、強度が低下する。
新たに必要となったり、矯正工程の工数が増す問題も新たに生じる。また残留応力も高く
なり、製品の寸法、形状精度が低下する問題も新たに生じる。この点、製品製造工程を短
縮し、低コスト化するためには、焼入歪みが緩和される50〜85℃の温湯焼入が好ましい。
ここで、温湯焼入温度が50℃未満では焼入歪みが大きくなり、85℃を越えると冷却速度が
低くなりすぎ、靱性ならびに疲労特性、強度が低くなる。
ために、1時間以内に、160〜210℃の温度範囲と20分〜8hrの保持時間の範囲か
ら、前記T6、T7、T8等の調質処理の条件を選択する。
宜用いられる。更に、人工時効硬化処理には空気炉、誘導加熱炉、オイルバスなどが適宜
用いられる。
、機械加工や表面処理などが適宜施されても良い。
によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加
えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
造品組成でもある)を、表2に示す各条件で、均質化熱処理、熱間押出加工、熱間鍛造加
工を行い、また、この鍛造材に溶体化および焼入れ処理と人工時効処理を施して鍛造材を
製造した。そして、この鍛造材の組織、機械的特性、耐食性を表3に示すように測定、評
価した。
は半連続鋳造法により鋳造した。なお、表1に示す各アルミニウム合金合金例は、共通し
て100gのAl中の水素濃度は全て0.10〜0.15mlであった。
示す各条件で、先ず均質化熱処理した。均質化熱処理後は、共通して、ファンを使用して
、冷却速度が100 ℃/hr 以上で強制空冷した。熱間押出は、各々表2に示す各条件で、通常の直接押出で行い、押出後はファンを使用して強制空冷した。熱間鍛造は、各々表2に示す各条件で、金型温度を100〜250℃の範囲に調節した上下金型を用いたメカニカルプレスにより行い、フラッシュランドの隙間1.5 〜3mm で、最終の肉厚まで再加熱無しに3 回鍛造した。この鍛造材を、各々表2に示す各条件で、空気炉を用いた溶体化処理および水焼入れを行った後、各々表2に示す各条件で人工時効処理を施し、T6の調質処理とした。
分にボールジョイント部(1箇所)とゴムブッシュ部(2箇所)を有し、これらを略三角形の全体形状からなるアーム部で各々繋いだ形状とした。アーム部はその幅方向の中央部にアーム部の各長手方向に亙って延在する肉厚が10mm以下と薄いウエブ部と肉厚が厚いリブ部とからなる。このような自動車足回り部品において、最大応力が発生しやすい、前記肉厚が厚いリブ部の前記1箇所のボールジョイント部に近接した部位3箇所から、各測定試料を採取した。このリブ部は、特に強度、靱性を有すべき部位であって、このリブ部分に結晶粒の粗大化が生じやすくなると、アーム部、ひいては自動車足回り部品全体としての強度を高く維持しながら軽量化を図るのが困難となる。
を切り出し、各組織を観察し平均値を、晶出物の平均面積割合(%、表3では平均面積率
と表示)、分散粒子の平均密度(個/μm3 、表3では平均個数と表示)を算出した。
そして、例え平均値として本発明で規定するこれらの組織規定を満足したとしても、前記
3箇所のうちの各1箇所当たりでは、どこの箇所も個別には本発明で規定するこれらの組
織規定を満足しないものを×、1箇所でも個別に本発明組織規定を満足するものを○、2
箇所以上(2箇所か3箇所全部か)個別に本発明組織規定を満足するものを◎と評価した
。
前記リブ部の3箇所から採取した測定試料から、引張試験片 (L方向) を作製して、引
張強度(MPa) 、0.2%耐力(MPa) 、伸び(%) などの機械的性質を各々測定し、これら3個所
(試験片3個)の各平均値を求めた。
耐食性評価のために、旧JIS-W1103 の規定に準じた粒界腐食感受性試験を、前記リブ部
の各部位3箇所から採取した測定試料(試験片3個)に対して行った。試験条件は、試験
液に規定時間の6hr浸漬後、試料を引き上げ、その後、試験片の断面を切断・研磨し、光
学顕微鏡を用いて、試料表面からの腐食深さを測定した。倍率は×100 とし、腐食深さが
200 μm 以下までを軽微な腐食として「○」と評価した。また、200 μm を超える場合を
大きな腐食として「×」と評価した。
果、発明例は、平均値とともに、少なくとも1箇所以上個別に、本発明で規定するこれら
の組織規定を満足する。この結果、発明例は引張強度が最低でも394MPa以上であり、粒界腐食感受性にも優れている。
ではあるが、本発明組織規定を満足しないか、鍛造材に製造できていない。したがって、
製造できたとしても、比較例は、強度、耐食性のいずれかが、発明例に比して著しく劣る
。
出材を熱間鍛造してなる鍛造材の強度、耐食性を向上させる臨界的な意義が分かる。
造してなる鍛造材およびこれらの特性を鍛造材の部位全体に亘って保障した鍛造材および
その製造方法を提供することができる。したがって、Al- Mg- Si系アルミニウム合
金鍛造材の、自動車足回り部品など輸送機用への用途の拡大を図ることができる点で、多
大な工業的な価値を有するものである。
Claims (2)
- アルミニウム合金押出材を熱間鍛造してなる鍛造材であって、質量%で、Si:0.8
〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0.5%、Zn:0.005
〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、C
r:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、Ti:0.01〜0.1%を
各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg%]/1.73>0.25
を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径が10μm以下であるとともに、この未再結晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合が75%以上であり、かつ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子の平均密度が10個/μm3 以上であるとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の平均面積率が2.5%以下であることを特徴とするアルミニウム合金鍛造材。 - 質量%で、Si:0.8〜1.3%、Mg:0.70〜1.3%、Cu:0.01〜0
.5%、Zn:0.005〜0.2%、Fe:0.01〜0.45%、Mn:0.30%を超え、0.8%以下、Cr:0.01〜0.25%、Zr:0.01〜0.25%、T
i:0.01〜0.1%を各々含み、かつ前記SiとMgの含有量が[Si%]−[Mg
%]/1.73>0.25を満足し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有す
るアルミニウム合金鋳塊を、450〜580℃の温度範囲で均質化熱処理を施した後に、
400〜580℃の温度で、押出比が2.4以上、3.7未満の熱間押出加工を行い、こ
の押出材を、材料温度が430〜550℃の範囲、金型温度が100〜250℃の範囲、
最小の肉厚減少率が25%を超えるとともに、最大の肉厚減少率が90%未満の条件で熱
間鍛造加工を行い、更に、溶体化および焼入れ処理と人工時効処理とを施して鍛造材を製
造し、この鍛造材の任意の3箇所以上の部位の表層部を除く断面全域における、SEM−
EBSP法による測定で同定される、傾角が2°以上、15°未満の小傾角粒界と傾角が
15°以上の大傾角粒界とを含めた、未再結晶領域を備え、この未再結晶領域における傾
角2°以上の境界で囲まれる領域の平均粒径を10μm以下とするとともに、この未再結
晶領域の前記鍛造材の表層部を除く断面全域に対する平均面積割合を75%以上とし、か
つ、この未再結晶組織領域における、最大長が10nm以上、800nm以下の分散粒子
の平均密度を10個/μm3 以上とするとともに、最大長が0.5μm以上の晶出物の
平均面積率を2.5% 以下としたことを特徴とするアルミニウム合金鍛造材の製造方法
。
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