以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。
まず、図1を参照しつつ、本発明に係る汚染土壌浄化装置の全体構成を説明する。図1に示すように、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sにおいては、有害金属等(有害金属及び/又はその化合物)で汚染され、場合によってはその他の汚染物質(例えば、フッ素、ホウ素、シアン等の第二種特定有害物質)で汚染された地盤の掘削等により採取された土壌(汚染土壌)が、投入ホッパ1に受け入れられる。そして、投入ホッパ1内の土壌はまず混合装置2に投入され、混合装置2内で循環水ないしは処理水と混合される。ここで、土壌は、細粒土(粒径が0.075mm以下のシルト又は粘土)を含むとともに、種々の粒径の土石ないしは土砂、例えば石(粒径が75mm以上)、礫(粒径が2ないし75mm)及び/又は砂(粒径が0.075ないし2mm)等を含むものである。
そして、投入ホッパ1内の土壌は有害金属等で汚染され、場合によってはさらにその他の汚染物質で汚染されている。ここで、有害金属等としては、例えばクロム、鉛、カドミウム、セレン、水銀、金属砒素及びこれらの化合物などが挙げられる。その他の汚染物質としては、例えば、フッ素又はその化合物、ホウ素又はその化合物、シアン化合物等の第二種特定有害物質などが挙げられる。
混合装置2で生成された土壌と循環水の混合物(以下「土壌・水混合物」という。)はミルブレーカ3に移送される。ミルブレーカ3としては、例えばロッドミルを用いることができる。ロッドミルは、詳しくは図示していないが、ドラムの中に複数のロッド(例えば、10本の75mmφ×2mのスチールロッド)が配置された破砕装置であり、ドラムの回転によってロッドが互いに平行に転動して線接触し、その衝撃力、剪断力、摩擦力等により比較的粒径の大きい石、礫、砂等を破砕するとともに、これらに付着し又は含まれている有害金属等あるいはその他の汚染物質を剥離して水中に離脱させる。
水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着する(環境省、水・大気環境局、土壌環境課「汚染土壌処理業の許可審査等に関する技術的留意事項」第21頁、平成25年8月発行、参照)。すなわち、土壌中の有害金属等あるいはその他の汚染物質の大部分は、細粒土の表面に集約される。なお、ロッドミルのほかにボールミルも用いることができる。
ミルブレーカ3から排出された土壌・水混合物はトロンメル4に導入される。トロンメル4は、詳しくは図示していないが、水を貯留することができる受槽と、水平面に対して傾斜して配置された略円筒形のドラムスクリーンとを有する篩分装置であって、ドラムスクリーンは、モータによりその中心軸(円筒の中心軸)まわりに回転することができるようになっている。また、ドラムスクリーン内に、水をスプレー状で噴射することができるようになっている。
トロンメル4の回転しているドラムスクリーンの内部を土壌・水混合物が流れる際に、ドラムスクリーンの網目より細かい土壌粒子は、循環水とともにドラムスクリーンの網目を通り抜け、ドラムスクリーン外に出て受槽内に入る。他方、ドラムスクリーンの網目より粗い土壌粒子は、ドラムスクリーンの網目を通り抜けることができないので、ドラムスクリーンの下側の開口端を経由して、ドラムスクリーン外に排出される。トロンメル4内では、土壌・水混合物中の土壌粒子同士が互いに擦れ合うので、土壌粒子の表面に残留・付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が剥離され、水中に離脱させられる。このように水中に離脱した有害金属等あるいはその他の汚染物質の一部ないしは大部分は、比較的粒径が小さい細粒土の表面に付着する。
この実施形態では、ドラムスクリーンの網目の分級径(目開き)は、粒径が2mm未満の土壌粒子がドラムスクリーンの網目を通り抜けるように設定されている。したがって、このトロンメル4では、粒径が2mm以上の土壌粒子(主として礫)が土壌・水混合物から分離される。前記のとおり、比較的粒径が大きい土壌粒子に付着している有害金属等あるいはその他の汚染物質が水中に剥離されるので、粒径が2mm以上の土壌粒子は、ほとんど汚染物質を含まない。このため、トロンメル4で分離された粒径が2mm以上の土壌粒子は、例えばコンクリート用の骨材ないしは粗骨材として用いることができ、あるいは販売することができる。
また、このような粒径が2mm以上の骨材ないしは粗骨材を、例えば篩分装置を用いて分級し、粒径が異なる複数種の骨材ないしは粗骨材を生産してもよい。例えば、粒径が5mm未満の比較的細かい骨材と、粒径が5mm以上の比較的粗い粗骨材に分級してもよい。なお、トロンメル4のドラムスクリーンの網目の寸法(目開き)は前記のものに限定されるわけではなく、得ようとする比較的粒径が大きい土壌粒子の粒径に応じて、任意に設定することができるのはもちろんである。
トロンメル4の受槽内に収容された粒径が2mm未満の土壌粒子と循環水とを含む土壌・水混合物はサイクロン5に導入される。サイクロン5は、詳しくは図示していないが、下方に向かって狭まる略円錐状のシリンダ内に土壌・水混合物をポンプで圧送して旋回流を生じさせ、これによって生じる遠心力を利用して、土壌・水混合物を、比較的粒径が小さい(例えば0.075mm未満)細粒土と水の混合物と、比較的粒径が大きい(例えば0.075mm以上)土壌粒子とに分離する。そして、細粒土と水の混合物(以下「細粒土含有水」という。)はサイクロン5の上端部から排出され、比較的粒径が大きい土壌粒子はサイクロン5の下端部から排出される。ここで、細粒土含有水はシールタンク6(中間貯槽)に一時的に貯留される。細粒土含有水に含まれる細粒土は、例えばその粒径が0.075mm未満のシルト又は粘土である。
他方、サイクロン5の下端部から排出された比較的粒径が大きい土壌粒子は分級機7に導入される。なお、この比較的粒径が大きい土壌粒子は、例えばその粒径が0.075〜2mmの砂であり、ある程度の水を含んでいる。この実施形態では、分級機7としてサンドスクリーンを用いている。分級機7(サンドスクリーン)は、所定の圧力及び水量で循環水を流動させて、比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち砂にすすぎ洗浄処理を施すとともに、残留している浮遊物ないしは異物を捕集する。分級機7で捕集された浮遊物ないしは異物は、可燃物であれば燃料として再利用される(サーマルリサイクル)。また、すすぎ洗浄処理が施された比較的粒径が大きい土壌粒子すなわち洗い砂は、汚染物質をほとんど含んでいないので、再生砂として使用され、あるいは販売される。分級機7(サンドスクリーン)から排出された洗浄水は、フィードタンク8(中間貯槽)に一時的に貯留される。
シールタンク6に一時的に貯留された細粒土含有水はpH調整槽9に導入される。また、フィードタンク8に一時的に貯留された洗浄水もpH調整槽9に導入され、細粒土含有水に加えられる。そして、pH調整槽9では、細粒土含有水(加えられた洗浄水を含む)のpHが、pH調整剤、例えば酸性液(例えば、硫酸、塩酸等)及びアルカリ性液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液等)を用いて、ほぼ中性又は所定のpH(例えば、pH7〜8)となるように調整される。なお、図示していないが、pH調整槽9では、細粒土含有水のpHは、pHメータ等を備えたpH自動制御装置により自動的に調整される。
pH調整槽9でpHが調整された細粒土含有水は原水槽10に一時的に貯留される。原水槽10では、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液(PAC)と、高分子凝集剤と、pH調整剤(酸性液又はアルカリ性液)とが添加される。これにより、原水槽10内に非水溶性の金属水酸化物と細粒土とが混在する多数のフロックが生成される。その際、循環水中の有害金属等あるいはその他の汚染物質がフロックに吸着され又はフロックに付着する。その結果、循環水はほとんど有害金属等あるいはその他の汚染物質を含まなくなる。なお、ポリ塩化アルミニウム液及び高分子凝集剤を、原水槽10ではなく、pH調整槽9で細粒土含有水に添加してもよい。また、pH調整槽9と原水槽10の間に、細粒土含有水にポリ塩化アルミニウム液と高分子凝集剤とpH調整剤とを添加する反応槽を設けてもよい。
原水槽10内の細粒土含有水は、浮遊物回収装置11により浮遊物が除去された後、シックナ12に導入される。シックナ12は、詳しくは図示していないが、細粒土含有水がほぼ静止している状態で非水溶性のフロックないしは細粒土を重力により沈降させ、下部に位置するスラッジ層(例えば、固形分の比率が5〜10%)と、上部に位置しほとんどフロックないしは細粒土を含まない上澄水(循環水)とを形成する。なお、上澄水の表面に浮遊している浮上油は、少量の上澄水をシックナ12の上部から溢流させることにより除去される。
シックナ12内の上澄水は、処理水槽13に導入されて貯留される。ここで、処理水槽13が満杯になったときには予備水槽14が使用される。処理水層13ないしは予備水槽14に貯留されている処理水は、活性炭吸着塔15でさらに浄化された後、循環水として混合装置2、トロンメル4及び分級機7(サンドスクリーン)に供給される。なお、処理水槽13に貯留されている処理水ないしは循環水が、蒸発等により減少したときには、適宜に処理水槽13に水道水が補給される。
他方、シックナ12の下部に堆積しているスラッジは、中間タンク16に移送され、一時的に貯留される。そして、中間タンク16内のスラッジは、適宜に又は連続的に、フィルタプレス17に移送される。フィルタプレス17は、詳しくは図示していないが、バッチ式又は半連続式の加圧式濾過器であって、中間タンク16から受け入れたスラッジを加圧濾過し、濾過ケークと濾液とを生成する。フィルタプレス17の濾過圧力は、例えば濾過ケークの含水率が30〜40%となるように好ましく設定される。ここで、フィルタプレス17の濾液はシックナ12に戻される。なお、フィルタプレス以外の濾過器、例えば真空濾過器(オリバー式濾過器)等を用いてもよい。フィルタプレス17から排出された濾過ケークは、キレート剤洗浄装置20に移送され、濾過ケークに含まれる有害金属等(場合によっては、その他の特定の汚染物質も)、すなわち主として濾過ケーク中の細粒土に付着している有害金属等が除去される。
以下、図2を参照しつつ、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sのキレート剤洗浄装置20の概括的な構成及び機能を説明する。図2に示すように、キレート剤洗浄装置20においては、まず混合分散装置21に、フィルタプレス17から排出された濾過ケークと、洗浄液貯槽25内のキレート剤を含む洗浄液とが供給される。前記のとおり、濾過ケークの固体成分である細粒土の表面には、元の汚染土壌に含まれていた有害金属等あるいはその他の汚染物質が集約されて付着している。そして、混合分散装置21は、濾過ケークと洗浄液とを混合し、洗浄液中に細粒土ないしは細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒土スラリーを生成する。
混合分散装置21により生成された細粒土スラリーは細粒土洗浄装置22に移送される。細粒土洗浄装置22は、細粒土スラリーを、攪拌しつつ予め設定された滞留時間(例えば、0.5〜2時間)を確保できるようにプラグフローで流すことにより、細粒土に付着している有害金属等(場合によっては、その他の特定の汚染物質も)を細粒土から離脱させて洗浄液中のキレート剤に捕捉させる。これにより、細粒土スラリー中の細粒土の表面に付着している有害金属等はほとんど除去される。本明細書において、「プラグフロー」は、例えば川の水の流れのように、流体が細長い(部分的に湾曲又は屈曲している場合を含む)流路を全体的には上流側から下流側に向かって一方的に流れる流動状態を意味するものとする。なお、このようなプラグフローにおいて、局所的には、細粒土スラリーの攪拌等により、流れ方向に沿って細粒土スラリーが前後に乱れて移動する流れ、及び流れ方向と垂直な方向の乱れた流れが生じるのはもちろんである。
ここで、洗浄液に用いられるキレート剤としては、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、あるいは生分解性を有するHIDS(3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸)、IDS(2,2’−イミノジコハク酸)、MGDA(メチルグリシン二酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジ酢酸)又はGLDA(L−グルタミン酸ジ酢酸)のナトリウム塩などが挙げられる。これらのキレート剤は、いずれも細粒土スラリーないしは細粒土に含まれている有害金属等を有効に捕捉する(キレートする)ことができものである。なお、細粒土に含まれる有害金属等の種類に応じて、その処理に適したキレート剤が選択され、又は複数種のキレート剤が用いられる。
細粒土洗浄装置22から排出された細粒土スラリーは濾過装置23に移送される。濾過装置23は、細粒土スラリーを濾過し、含水率が30〜40パーセントのケークと濾液とを生成する。なお、このような濾過装置23としては、フィルタプレスや真空濾過機などを用いることができる。濾過装置23から排出されたケークは、有害金属等あるいはその他の汚染物質をほとんど含まないので、必要に応じて乾燥処理を施し、改良土として使用し、又は販売することができる。
濾過装置23から排出された濾液は、洗浄液再生装置24に導入される。洗浄液再生装置24は、キレート剤よりも錯生成力が高く濾過装置23から排出された濾液と接触したときに濾液中の有害金属等を吸着又は抽出する固相吸着材又は該固相吸着材が固定された小片ないしは粒状物をその内部に有し、濾液中のキレート剤から有害金属等を除去し、濾液を洗浄液として再生する装置である。
洗浄液再生装置24では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含む洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材と接触させられる。固相吸着材は、担体に環状分子を担持させ、環状分子にキレート配位子を修飾した配位結合及び水素結合による多点相互作用を有するとともに有害金属等のイオンを選択的に取り込むものである。これにより、キレート剤に捕捉されている有害金属等はキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着又は抽出される。これにより、洗浄液(キレート剤)から有害金属等が除去・回収される一方、洗浄液(キレート剤)は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、再生される。
このように再生された洗浄液は、洗浄液貯槽25に一時的に貯留された後、洗浄液還流機構(後記のポンプ34、管路35等)により、混合分散装置21に還流させられる。つまり、キレート剤を含有する洗浄液は、細粒土の浄化とキレート剤の再生とを繰り返しつつ、キレート剤洗浄装置20内を循環する。このようにキレート剤を再生しつつ循環使用するので、基本的にはキレート剤を供給する必要はなく、少量の目減り分を適宜に補充するだけでよい。
キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材は、例えばゲル等の固体状のものであり、一般に、金属を捕捉しているキレート剤を含む水溶液と接触したときに、キレート剤と配位結合している金属イオンをキレート剤から離脱させて該固相吸着材に移動させることができる程度の共有結合以外の強い結合力を有しているものである。このような固相吸着材は、例えばキレート剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いる場合、濃度が10mM/lであるEDTA水溶液から、ほぼ100%の金属イオンを回収することができる強い結合力を有するものである。
このような固相吸着材としては、例えばシリカゲルや樹脂等の担体に環状分子を密に担持させ、この環状分子にキレート配位子を修飾させたものなどが挙げられる。このような固相吸着材を用いる場合、隣り合う環状分子及びキレート配位子により、配位結合、水素結合などの複数の様々な結合や相互作用が生じて多点相互作用が生じ、金属イオンに対してキレート剤よりも強い化学結合が生じるとともに環状分子の性状により金属イオンを選択的に取り込むことができる。
このような洗浄液の再生に伴って、固相吸着材における有害金属等の吸着量は経時的に増加してゆくが、固相吸着材の吸着量には上限がある。このため、固相吸着材における有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したときには、固相吸着材は、固相吸着材再生機構(後記の酸液貯槽26、ポンプ68、管路69、65、66、70等)によって再生される。すなわち、固相吸着材再生機構は、濾液ないしは洗浄液が排除された状態で洗浄液再生装置24に酸液を流し、固相吸着材に吸着された有害金属等を酸液により除去して固相吸着材を再生する。かくして、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。なお、固相吸着材は、酸液によって再生された後、水洗浄機構(後記の洗浄水貯槽27、ポンプ71、管路72、65、66、73等)により水洗され、固相吸着材に付着している微量の酸液が除去される。
以下、キレート剤洗浄装置20の具体的な構成及び機能を説明する。
まず、図3を参照しつつ、キレート剤洗浄装置20の構成要素である混合分散装置21の具体的な構成及び機能を説明する。図3に示すように、混合分散装置21は、フィルタプレス17から排出された濾過ケークを解砕する解砕機31と、解砕機31によって解砕された濾過ケークの小片と洗浄液とを予混合する予混合槽32と、予混合槽32によって生成された混合物を攪拌して細粒土ないしは細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)を洗浄液中に分散ないしは懸濁させるラインミキサ33とを有している。
そして、混合分散装置21においては、フィルタプレス17から排出された濾過ケークが解砕機31に供給され、濾過ケークは高速回転するブレード31aによって、例えば粒径が数mm(例えば、1〜5mm)の多数の濾過ケーク細片に解砕される。他方、解砕機31へは、洗浄液貯槽25内の洗浄液が、ポンプ34により管路35を介して供給される。詳しくは図示していないが、洗浄液は、ブレード31aにより解砕された直後の多数の濾過ケーク細片に対して噴射ないしは供給され、濾過ケーク細片同士が互いに付着し合うのを防止する。なお、このように濾過ケークを解砕する解砕機31としては、例えば大平洋機工株式会社に係る「脱水ケーキ解砕機」あるいは株式会社氣工社に係る「脱水ケーキリサイクル装置」などを用いることができるが、このような市販の解砕機を用いる場合は、解砕された直後の多数の濾過ケーク細片に対して洗浄液を噴射ないしは供給する機構を付設する必要がある。
解砕機31内の洗浄液及び濾過ケーク細片は予備混合槽32に移送される。予混合槽32内の洗浄液と濾過ケーク細片とは、モータによって回転駆動される攪拌機36によって攪拌され予混合される。そして、予混合槽32内の洗浄液と濾過ケーク細片の混合物は、ポンプ37により管路38を介してラインミキサ33に移送される。ラインミキサ33は、横置き型の略円筒形の攪拌室内に、モータによって非常に高速で回転駆動されるブレードが配置された流通式混合器であり、洗浄液と濾過ケーク細片とを非常に激しく攪拌し、洗浄液中に細粒土又は細粒土の小片(例えば、粒径が数0.1〜0.5mm程度、あるいは0.1〜1mm程度の粒子)がほぼ均一に分散(懸濁)されてなる細粒土スラリーを生成する。この細粒土スラリーは細粒土洗浄装置22に移送される。このようなラインミキサ33としては、例えば、佐竹化学機械工業株式会社に係る「サタケマルチラインミキサー」などを用いることができる。
以下、図4(a)〜(d)を参照しつつ細粒土洗浄装置22の具体的な構成及び機能を説明する。図4(a)〜(c)に示すように、細粒土洗浄装置22は、4つの平板状の仕切り壁41〜44で仕切ることにより形成された互いに平行に伸びる5つの細長い直方体状ないしは角柱状の水路45〜49を備えた貯槽40を有している。ここで、貯槽40は、例えば地上に設置した鉄製の直方体状の角型タンクであってもよく、またコンクリート製の直方体状のピットであってもよい。また、仕切り壁41〜44は、例えば複数の鉄板又はプラスチック板を水路の伸びる方向に連結することにより形成したものであってもよい。
これらの水路45〜49において隣り合う2つの水路は水路長手方向(図4(a)、(b)における位置関係では左右方向)の一端の連通部(図4(a)中に4つの曲線状の矢印で示された部位)で互いに連通している。すなわち、これらの連通部には仕切り壁41〜44が存在せず、隣り合う水路同士が連通している。かくして、5つの水路45〜49は各連通部で180°折り返す九十九折り状の流通経路を形成している。なお、仕切り壁41〜44及び水路45〜49の数は前記のものに限定されるわけではなく、予め設定される水路内の細粒土スラリーの流速及び滞留時間に応じて任意に設定することができるのはもちろんである。
各水路45〜49の底部には、それぞれ、細粒土スラリー中に空気を放出して該細粒土スラリーを攪拌する空気放出管51〜55が配設されている。各空気放出管51〜55は水路長手方向に伸び、周壁の底部(下側)において水路長手方向に並ぶ複数の空気放出孔が形成された多孔管であり、その中空部は、詳しくは図示していないが、圧縮空気を供給するコンプレッサないしは送風機に接続されている。空気放出管51〜55に加圧された空気が供給されたときには、この空気が空気放出孔から気泡となって細粒土スラリー中に放出されて浮上し、この気泡によって細粒土スラリーが攪拌される。なお、空気放出孔を空気放出管51〜55の周壁の底部(下側)に設けるのは、空気放出管51〜55内に細粒土が堆積するのを防止するためである。
図4(d)は、細粒土スラリーの流れ方向(図4(a)中に曲線状の矢印及び直線状の矢印で示す方向)にみて最も上流側の水路45の断面を示している。図4(d)から明らかなとおり、空気放出管51は、水路45の一方の側面の近傍において水路底部近傍に配置されている。このため、空気放出管51から放出された気泡はこの側面の近傍で上昇する。その結果、水路45内には、水路長手方向と垂直な平面内において矢印Pで示す方向に流れる循環流が形成され、細粒土スラリーが有効に攪拌される。
貯槽40及び各水路45〜49の形状、寸法、容量等、並びに空気放出管51〜55への加圧空気の供給量等は、細粒土洗浄装置22において予め設定される細粒土スラリーの、含水率、流量、滞留時間、流速、流れの乱流度(例えば、レイノルズ数)等に対応して好ましく設定される。例えば、細粒土スラリーの含水率が90wt%であり、流量が140m3/時であり、滞留時間が120分であり、流速が50m/時である場合は、図4に示すような5水路型の貯槽40は、有効容量を280m3とし、長さを20mとし、幅を10mとし、有効深さを1.4mとすることになる。なお、流速をこれより大きくする必要がある場合は、貯槽40の形状を変えることなく、必要な流速に応じて仕切り壁の数、ひいては水路の数を増やせばよい(個々の水路を狭くする。)。
以下、図5を参照しつつ洗浄液再生装置24及びこれに関連する装置の具体的な構成及び機能を説明する。図5に示すように、洗浄液再生装置24は、内部に固相吸着材の粒子又は固相吸着材が固定された小片もしくは粒状物(以下、これらを「固相吸着材粒子」と総称する。)が収容される一方、濾過装置23から排出された濾液すなわち再生すべき洗浄液(以下、単に「洗浄液」という。)が下側から上側に向かって流通し、固相吸着材粒子が洗浄液の上昇流によって流動化される液系流動層60を有している。この液系流動層60には略円筒形の外套60a(シェル)が設けられ、その内部において上部に上側多孔板60bが配設される一方、下部に下側多孔板60cが配設されている。なお、下側多孔板60cの下側に洗浄液を整流する整流部材60dが配設されている。
両多孔版60b、60cは、これらを厚み方向に貫通する多数の貫通孔が形成された円板である。貫通孔の口径は、固相吸着材粒子が通り抜けるのを防止できる範囲の好ましい値に設定されている。なお、多孔板に代えて、網目部材(メッシュ)を用いてもよい。そして、両多孔板60b、60c間の中空部に固相吸着材粒子が収容されている。ここで、固相吸着材粒子の粒径は、液系流動層60内を流れる洗浄液の流速に応じて、固相吸着材粒子が動的にサスペンドして流動層を形成することができる範囲の好ましい値に設定されている。
また、洗浄液再生装置24には、液系流動層60により再生すべき洗浄液を一時的に貯留する中間貯槽62が設けられている。この中間貯槽62には、濾過装置23から排出され清澄濾過器61(例えば砂濾過器)で濾過されて懸濁物質が除去された洗浄液が貯留される。そして、洗浄液(キレート剤)を再生するときに、中間貯槽62に貯留された洗浄液を液系流動層60に移送する一方、液系流動層60で再生された洗浄液を洗浄液貯槽25に移送するためのポンプ63及び複数の管路64〜67が設けられている。なお、液系流動層60は、懸濁物質によって目詰まりが生じる可能性はないので、清澄濾過器61は省略してもよい。
さらに、洗浄液再生装置24には、固相吸着材を再生する際に、酸液貯槽26に貯留された酸液を液系流動層60に移送する一方、液系流動層60から排出された酸液を酸液貯槽26に戻すためのポンプ68及び複数の管路69、70が設けられている。また、洗浄液再生装置24には、酸液で再生された固相吸着材を水洗する際に、洗浄水貯槽27に貯留された洗浄水を液系流動層60に移送する一方、液系流動層60から排出された洗浄水を洗浄水貯槽27に戻すためのポンプ71及び複数の管路72、73が設けられている。
ここで、液系流動層60に洗浄液、酸液又は洗浄水を移送するための管路64、65、69、72には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ74、75、76、77が介設されている。他方、液系流動層60から洗浄液、酸液又は洗浄水を排出するための管路66、67、70、73には、それぞれ、対応する管路を開閉するバルブ78、79、80、81が介設されている。これらのバルブ74〜77、78〜81の開閉状態を切り換えることにより、液系流動層60に対して、洗浄液、酸液又は洗浄水のいずれかを給排することができる。なお、これらのバルブ74〜77、78〜81の開閉は、図示していないコントローラによって自動的に制御される。
以下、図5に示す洗浄液再生装置24の運転手法の一例を説明する。なお、以下で説明する運転手法は単なる例示であって、本発明に係る洗浄液再生装置24の運転手法が以下のものに限定されるものではないのはもちろんである。洗浄液(キレート剤)を再生する際には、管路64〜67に介設されたバルブ74、75、78、79が開かれる一方、その他のバルブ76、77、80、81が閉じられ、ポンプ63が運転される。これにより、中間貯槽62内の洗浄液が、液系流動層60を流通して洗浄液貯槽25に移送される。
かくして、液系流動層60内では、有害金属等を捕捉しているキレート剤を含む洗浄液が、キレート剤より錯生成力が高い固相吸着材(固相吸着材粒子)と接触させられる。その結果、キレート剤に捕捉されている有害金属等がキレート剤から離脱させられ、固相吸着材に吸着される。これにより、洗浄液から有害金属等が除去・回収される一方、キレート剤は再び有害金属等を捕捉することができる状態となり、洗浄液が再生される。洗浄液貯槽25に貯留された洗浄液は、ポンプ34によって、管路35を介して混合分散装置21に供給される。
液系流動層60内の固相吸着材の有害金属等の吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達して固相吸着材を酸液で再生する際には、管路69、65、66、70に介設されたバルブ76、75、78、80が開かれる一方、その他のバルブ74、77、79、81が閉じられ、ポンプ68が運転される。これにより、酸液貯槽26内の酸液が、液系流動層60を流通して酸液貯槽26に還流する。固相吸着材の再生操作を開始する前には、液系流動層60内の洗浄液は排除される。なお、複数の液系流動層60を並列に配設すれば、一部の液系流動層60への洗浄液の供給が停止されているときでも、洗浄液を連続的に再生することができる。固相吸着材の有害金属吸着量が飽和状態ないしはその近傍に達したか否かは、液系流動層60から排出された洗浄液中の有害金属等の含有量を検出することにより判定することができる。
液系流動層60内に酸液を流す時間は、液系流動層60の寸法ないしは形状、固相吸着材粒子の寸法等に応じて好ましく設定される。酸液は、酸液貯槽26と液系流動層60とを循環して流れる。その際、液系流動層60内の固相吸着材は酸液と接触し、固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液中に離脱させられる。すなわち、有害金属等が酸液によって回収される一方、固相吸着材は再生されて再び有害金属等を吸着することが可能な状態となる。
酸液による固相吸着材の再生が終了した後に固相吸着材を水洗する際には、管路72、65、66、73に介設されたバルブ77、75、78、81が開かれる一方、その他のバルブ74、75、79、80が閉じられ、ポンプ71が運転される。これにより、洗浄水貯槽27内の洗浄水が、液系流動層60を流通して洗浄水貯槽27に還流する。このような固相吸着材の水洗操作を開始する前には、液系流動層60内の酸液は排除される。洗浄水は、洗浄水貯槽27と液系流動層60との間を循環して流れる。その際、液系流動層60内の固相吸着材は水と接触し、固相吸着材に付着している酸液が洗浄される。この後、洗浄液の再生が再開される。
以下、図6を参照しつつ、もう1つの実施形態に係る洗浄液再生装置24’及びこれに関連する装置の具体的な構成及び機能を説明する。ただし、図6に示す洗浄液再生装置24’の構成は、図5に示す洗浄液再生装置24の構成と大部分が共通であるので、説明の重複を避けるため、以下では主として図5に示す洗浄液再生装置24との相違点を説明する。なお、図6に示す洗浄液再生装置24’の構成要素において、図5に示す洗浄液再生装置24の構成要素と共通ないしは対応する構成要素には、図5に示す洗浄液再生装置24と同一の参照番号を付している。
図6に示す洗浄液再生装置24’では、洗浄液を再生する手段として、液系流動層ではなく、その内部に固相吸着材粒子、又は固相吸着材が固定された充填物(パッキング)が充填された充填塔90が設けられている。そして、管路64〜67、69、70、72、73及びバルブ74〜77、78〜81は、洗浄液、酸液又は洗浄水が充填塔90内を上側から下側に向かって流れるように配設されている。その他の点については、図5に示す洗浄液再生装置24と同様である。なお、充填塔90は、懸濁物質によって目詰まりが生じる可能性が高いので、清澄濾過器61(例えば、砂濾過器)は必須である。
本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄液再生装置24、24’によれば、細粒土スラリー中の細粒土に付着している有害金属等、場合によってはその他の汚染物質が洗浄液に含まれるキレート剤により除去されるので、細粒土スラリーを濾過装置23で濾過することにより生成されるケークは、有害金属等をほとんど含まず、例えば改良土として利用することができる。一方、汚染土壌に付着している有害金属等は、汚染土壌を水洗浄する際に細粒土の表面に集約され、細粒土以外の土壌成分、例えば石、礫又は砂は有害金属等をほとんど含まない。したがって、有害金属等で汚染された汚染土壌から、有害金属等をほとんど含まず再使用することができる石もしくは礫(骨材、粗骨材)、砂及び/又は細粒土を生成することができる。
また、細粒土洗浄装置22で使用されるキレート剤を含む洗浄液は循環して使用されるが、循環の途中でキレート剤に捕捉されている有害金属等が固相吸着材により除去され、また適宜に固相吸着材に吸着されている有害金属等が酸液により除去される。このため、キレート剤をほとんど補充することなく、有害金属等で汚染された大量の土壌を連続的に浄化して、清浄な骨材ないしは粗骨材、砂、改良土等を生成することができる。
よって、本発明に係る汚染土壌浄化装置Sないしは洗浄液再生装置24、24’によれば、特許文献4に記載された発明に係る有害金属汚染物の浄化方法を利用して、大量の有害金属汚染土壌、さらには有害金属等以外の所定の汚染物質をも含む有害金属汚染土壌を事業として現実に浄化することが可能となる。