JP5716325B2 - 糖液の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースを含有するバイオマスから糖液を製造する方法及び糖液を製造する装置に関する。
糖を原料とした化学品の発酵生産プロセスは、種々の工業原料生産に利用されている。この発酵原料となる糖として、現在、さとうきび、澱粉、テンサイなどの食用原料に由来するものが工業的に使用されているが、今後の世界人口の増加による食用原料価格の高騰、あるいは食用と競合するという倫理的な側面から、再生可能な非食用資源、すなわちバイオマスより効率的に糖液を製造するプロセス、あるいは得られた糖液を発酵原料として、効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が今後の課題となっている。
バイオマスから糖を得る従来技術としては、濃硫酸を用いて、バイオマス中のセルロースやヘミセルロースをグルコース、キシロースに代表される単糖まで加水分解する方法(特許文献1、2)や、バイオマスの反応性を向上させる前処理を施した後に、酵素反応により加水分解する方法が一般的に知られている(特許文献3,4)。
しかし、これらの従来の方法で得られるバイオマス由来の糖液は、糖濃度が低いため発酵工程において時間を要し、また後工程の蒸留工程で余分なエネルギーを消費するという課題があった。また、バイオマス由来の発酵阻害物質も多く含まれているため、発酵効率が悪いという課題もあった。
これらの課題を解決する1つの方法として、並行複発酵技術が検討されている(特許文献5)。固液分離を行わない該技術は、平衡反応である酵素反応において糖が発酵により消費されるため、糖の生成速度が速いという利点があるが、バイオマス由来の発酵阻害物質が蓄積してしまうため、化学品の蓄積濃度が上がらず生産効率が上がらない課題があった。
一方、糖液を得るプロセスにおいて、糖の濃縮又は精製に、ナノ濾過膜や逆浸透膜を使用する方法が開示されている(特許文献6)。しかし、これらの膜を用いて濾過する場合、糖液中に含まれてくるバイオマス由来の固形物により、膜の目詰まりを起こして濾過が困難になるという問題があった。そのため、膜濾過に供する前に、この固形物を除去する方法として、例えばスクリュープレスやフィルタプレスを用いる方法(特許文献7)、遠心分離を用いる方法(特許文献8)、不織布により濾過する方法(特許文献9)等が検討されている。しかし、これらの方法では、バイオマス由来の糖液中に含まれる固形分を十分に除去することができず、ナノ濾過膜又は逆浸透膜を使用して糖液を濾過するときの膜の目詰まりという課題は未解決であった。
特表平11−506934号公報 特開2005−229821号公報 特開2001−95597号公報 特許第3041380号公報 特開2009−22165号公報 国際公開第2009/110374号 特表平9−507386号公報 特開昭61−234790号公報 特開2009−240167号公報
本発明は、上記の課題を解決するものであって、バイオマス由来の糖液をナノ濾過膜や逆浸透膜にて濃縮し、精製するときに、バイオマス由来の固形分による膜の目詰まりなく濾過することを可能にする。
前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜により糖濃縮し、精製するに際して、前記膜の濾過を妨げる原因となる物質を見出し、特定の平均細孔径を有する多孔性精密濾過膜を用いてこれを除去することにより濾過膜の目詰まりを防ぐことができることを見出し、本発明を完成させた。さらに、多孔性精密濾過膜による濾過の際に加水処理を行うことにより、精密濾過膜濾過における膜目詰まりが改善され、発酵阻害物質濃度を低減させた高品質の糖液を効率よく得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]の構成を有する。
[1]セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法であって、
セルロース含有バイオマスを前処理して得られた前処理物に糖化酵素を添加して酵素糖化液を得る工程(1)、工程(1)で得られる酵素糖化液を、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜に通じてクロスフロー濾過し、膜透過画分として糖溶液を得る工程(2)、工程(2)で得られる糖溶液をナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜に通じて濾過し、膜非透過画分として精製された糖液を得る工程(3)、を含む糖液の製造方法。
[2]工程(2)において、クロスフロー濾過する前又はクロスフロー濾過中に加水処理を行う、[1]に記載の糖液の製造方法。
[3]工程(2)において、クロスフロー濾過する前又はクロスフロー濾過中に、酵素糖化液のMLSS濃度が40000mg/L以下となるように加水処理を行う、[1]又は[2]に記載の糖液の製造方法。
[4]工程(2)において、酵素糖化液のpHを変化させた後でクロスフロー濾過する[1]から[3]のいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
[5]工程(1)において、前処理が水熱処理であり、熱水可溶分を含む前処理物を使用する、[1]から[4]のいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
[6]工程(1)の酵素糖化液の固形物含有が0.1%以上10%以下である、[1]から[5]のいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
[7]工程(2)の前工程として、工程(1)で得られる酵素糖化液に、遠心分離、沈降分離及び浮上分離から選ばれる1以上の固液分離処理を行う、[1]から[6]のいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
[8]セルロース含有バイオマスから糖液を製造する装置であって、
セルロース含有バイオマスの前処理物を供給する前処理物供給部と、糖化酵素を供給する糖化酵素供給部とを有する酵素糖化槽、
酵素糖化液の粘度を測定する粘度計と、酵素糖化液の粘度測定値に応じて加水及び/又は排液を行う加水・排液制御部と、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜とを有し、酵素糖化槽で得られた酵素糖化液をクロスフロー濾過して膜透過画分として糖溶液を得る膜分離槽、及び
ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜を有し、膜分離槽で得られた糖溶液を濾過して膜非透過画分として精製された糖液を得る糖液精製部、
を備える糖液の製造装置。
本発明によれば、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜にて濾過して糖液を製造する場合に、バイオマス由来の固形分を十分に除去することができるので、これによる膜の目詰まりなく濾過することが可能になり、化学品の発酵生産に用いる高品質のバイオマス由来の糖液を効率よく製造することができる。
本発明の糖液の製造装置の1例を示す概略図である。 本発明の糖液の製造装置の1例を示す概略図である。 本発明の糖液の製造装置の1例を示す概略図である。 本発明の糖液の製造装置の1例を示す概略図である。 水熱処理糖化液に含まれている粒子成分の粒径分布を示すグラフである。 濾過後のナノ濾過膜に付着した粒子成分を観察した電子顕微鏡写真である。
本発明は、前処理を行ったセルロース含有バイオマスの前処理物に糖化酵素を添加して酵素糖化液を得、これを多孔性の精密濾過膜を用いてクロスフロー濾過した後、膜透過画分として得られる糖溶液をナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜に供して発酵阻害物質を除去し、膜非透過画分として精製された糖液を得る、糖液の製造方法である。
本発明において、セルロース含有バイオマスは、セルロースを5%以上含む生物由来の資源である。具体的には、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、稲わら、麦わらなどの草本系バイオマス、樹木、廃建材などの木質系バイオマスなどを例として挙げることができる。これらのセルロース含有バイオマスは、芳香族高分子であるリグニン及びセルロース・ヘミセルロースを含有していることから、リグノセルロースとも呼ばれる。セルロース含有バイオマスに含まれる多糖成分であるセルロースやヘミセルロースを加水分解することにより発酵原料として利用可能な単糖を含む糖液を得ることができる。
本発明の糖液の製造方法において、工程(1)は、セルロース含有バイオマスを前処理し、その結果得られた前処理物を糖化酵素の共存下で加水分解し、酵素糖化液を得る工程である。
工程(1)の前処理は、糖化酵素による加水分解効率を向上させるために物理的、化学的処理をセルロース含有バイオマスに施すものである。この前処理としては、高温高圧の希硫酸、亜硫酸塩等で処理する酸処理、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ性水溶液で処理するアルカリ処理、液体アンモニア又はアンモニアガスで処理するアンモニア処理、加圧熱水で処理する水熱処理、カッターミルや、ハンマーミル、グラインダーなどを用いて機械的に繊維を切断する微粉砕処理、水蒸気によって短時間蒸煮し、瞬時に圧力を開放して体積膨張により粉砕する蒸煮爆砕処理などが挙げられるが、これらに限らない。
工程(1)の前処理のうち、酸処理は、硫酸や亜硫酸塩などの酸性水溶液とセルロース含有バイオマスを高温高圧の条件下で処理して前処理物を得る処理方法である。酸処理は、一般に、リグニンを溶解させ、さらにまず結晶性の低いヘミセルロース成分から加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有するので、ヘミセルロース由来のキシロースを多く含有する液を得ることが可能である。また、2段階以上の工程を設定することで、ヘミセルロース、セルロースに適した加水分解条件が設定でき、分解効率及び糖収率を向上させることが可能になる。
酸処理において用いる酸は、加水分解を起こすものであれば特に限定はされないが、経済性の観点から硫酸が望ましい。酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量%である。反応温度は100〜300℃の範囲で設定することができる。反応時間は1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は特に限定されず、1回以上行えばよい。酸処理後の糖化酵素による分解は、酸処理後に得られる前処理物のうち固形分と液成分とを分けてそれぞれ行っても良いし、固形分と液成分とが混合したまま行っても良い。酸処理によって得られる固形分及び液成分には用いた酸が含まれているので、糖化酵素による加水分解反応を行うためには中和を行う。
工程(1)の前処理のうち、水熱処理は、100〜400℃の加圧熱水で、1秒〜60分処理する方法である。通常、処理後のセルロース含有バイオマスが0.1〜50重量%の濃度になるように行われる。圧力は処理温度に依存されるため特に限定されないが、好ましくは0.01〜10MPaである。
水熱処理では、加圧熱水の温度により熱水への溶出成分が異なる。一般に、加圧熱水の温度を上昇させていくと、セルロース含有バイオマスからは最初にタンニン、リグニンの第1グループが流出し、次に140−150℃以上でヘミセルロースの第2グループが流出し、更に約230℃を越えるとセルロースの第3グループが流出する。また、流出と同時にヘミセルロース、セルロースの加水分解反応が起こることもある。加圧熱水の温度による流出成分の違いを利用して、セルロース、ヘミセルロースに対する糖化酵素の反応効率を向上させるために処理温度を変えて多段階の処理をしてもよい。ここで、水熱処理によって得られる画分のうち、加圧熱水へ溶出した成分を含む水溶物を熱水可溶分、熱水可溶分を除いたものを熱水不溶分という。
熱水不溶分は、多くのリグニンとヘミセルロース成分が溶出された結果得られる、主に二糖以上のセルロース(C6)成分を含んだ固形分である。主成分のセルロースにほか、ヘミセルロース成分、リグニン成分が含まれることもある。これらの含有比率は、水熱処理の加圧熱水の温度や処理バイオマスの種類によって変化する。熱水不溶分の含水率は10%から90%、より好ましくは20%から80%である。
熱水可溶分は液体状態又はスラリー状態である加圧熱水に溶出したヘミセルロース、リグニン、タンニン、一部のセルロース成分を含む水溶物であり、液体状態又はスラリー状態である。熱水可溶分中の溶出成分の含有率は、通常0.1%以上10%以下(重量%)である。ここで、熱水可溶分中の溶出成分の含有率の測定は、含水率計(例えば、ケット科学研究所製 赤外線水分計FD720)を用いて行うことができる。具体的には、測定する熱水可溶分に関して含水率計で得られた含水率を100%から引いた値を用いることができる。溶出成分は、単糖、オリゴ糖などの水溶成分に限らず、水の中に混入している全ての成分であり、静置した後に生じた沈殿や、沈殿はしないが液中に分散しているコロイド成分も含まれる。
特に熱水可溶分は、発酵阻害物質であるギ酸や酢酸などの有機酸、HMFやフルフラールなどのフラン系、芳香族系化合物を多く含んでいるため、熱水可溶分を糖化酵素で処理した糖溶液をそのまま用いて、化学品の発酵生産を行うことは通常困難である。また、熱水可溶分に含まれる成分は、コロイド成分・微粒子成分を多量に含んでおり、膜を用いた濾過においてこれらが膜目詰まりの要因ともなり得る。
工程(1)の前処理のうち、アルカリ処理は、アルカリ水溶液、通常は水酸化物塩(但し、水酸化アンモニウムを除く)の水溶液でセルロース含有バイオマスを反応させる処理方法ある。アルカリ処理により、主にセルロース・ヘミセルロースの糖化酵素による反応を阻害するリグニンを除去することができる。使用する水酸化物塩としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、0.1〜60重量%の範囲が好ましく、これをセルロース含有バイオマスに添加し、通常100〜200℃、好ましくは110℃〜180℃の温度範囲で処理する。処理回数は特に限定されず、1回又は複数回行ってもよい。2回以上行う場合は、各回の処理を異なる条件で実施してもよい。アルカリ処理によって得られた前処理物は、アルカリを含むため、糖化酵素による加水分解を行う前に、中和を行う。
工程(1)の前処理のうち、アンモニア処理は、アンモニア水溶液又は100%アンモニア(液体又は気体)をセルロース由来バイオマスと反応させる処理方法である。例えば、特開2008−161125又は特開2008−535664に記載の方法を用いることができる。アンモニア処理では、アンモニアがセルロース成分と反応することにより、セルロースの結晶性が崩れることにより、糖化酵素との反応効率が大幅に向上すると言われている。通常、セルロース含有バイオマスに対して0.1〜15重量%の範囲の濃度となるようにセルロース含有バイオマスにアンモニアを添加し、4℃〜200℃、好ましくは60℃〜150℃で処理する。処理回数は特に限定されず、1回又は複数回行ってもよい。アンモニア処理によって得られた前処理物は、糖化酵素による加水分解反応を行う前に、アンモニアの中和又はアンモニアの除去を行う。中和に使用する酸試薬は特に限定されない。例えば塩酸、硝酸、硫酸などの酸により中和することができるが、プロセス配管の腐食性及び発酵阻害因子とならないことを考慮して、硫酸が好ましい。アンモニアの除去は、アンモニア処理物を減圧状態に保つことでアンモニアを揮発させて除去することができる。
本発明の工程(1)では、上記の前処理を施して得られた前処理物に、糖化酵素を添加して加水分解反応を行い、酵素糖化液を得る。
糖化酵素による加水分解反応は、pHが3〜7の付近で行うことが好ましく、より好ましくはpH4.0以上6.0以下である。反応温度は、40〜70℃であることが好ましい。pHの調整は、適宜酸、アルカリを添加することにより、又は例えば酢酸塩、クエン酸塩等のpH緩衝剤を添加することにより行うことができる。好ましくは、経済的観点及び発酵阻害の観点から、酸として硫酸、アルカリとして水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム又はアンモニアのいずれかの水溶液を用い、反応中にpHを測定しながら所望のpHとなるように経時的に前記の酸、アルカリを適宜添加する方法が好ましい。糖化酵素による加水分解反応の時間は、収率の観点から1時間以上72時間以内が好ましく、より好ましくは使用エネルギーの観点から3時間以上24時間以内である。加水分解に使用する反応装置は1段でも多段でも良く、連続式でも構わない。
本発明において、糖化酵素とは、セルロース又はヘミセルロースを分解する活性を有する、あるいはセルロース又はヘミセルロースの分解を補助する酵素成分のことを指す。具体的な酵素成分としては、セルビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼ、バイオマス膨潤酵素などを例示することができる。また、糖化酵素は、これらの成分の複数種を含む酵素混合物であることが好ましい。例えば、セルロース、ヘミセルロースの加水分解は、こうした複数の酵素成分の協奏効果あるいは補完効果により効率よく実施することができるため、本発明において好ましく使用される。
本発明において、糖化酵素は微生物により産生されるものを好ましく用いることができる。例えば、一種の微生物が産生する複数の酵素成分を含む糖化酵素であってもよく、また複数の微生物から産生される酵素成分の混合物であってもよい。
糖化酵素を産生する微生物は、糖化酵素を細胞内又は細胞外に産生する微生物であって、好ましくは細胞外に糖化酵素を産生する微生物である。細胞外に産生する微生物の方が糖化酵素回収が容易だからである。
糖化酵素を産生する微生物は、上記の酵素成分を産生するものであれば特に限定されない。特にトリコデルマ属に分類される糸状菌は、細胞外に、多種の糖化酵素を大量に分泌するので、糖化酵素を産生する微生物として特に好ましく用いることができる。
本発明で使用する糖化酵素は、好ましくはトリコデルマ属菌に由来する糖化酵素である。具体的には、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)に由来する糖化酵素であることがより好ましく、より具体的にはトリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reeseiQM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC−30(Trichoderma reeseiRut C−30)、トリコデルマ・リーセイPC3−7(Trichoderma reesei PC3−7)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reeseiCL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reeseiMCG80)、トリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride9123)などのトリコデルマ属菌由来の糖化酵素であることが好ましい。また、トリコデルマ属糸状菌を変異剤又は紫外線照射などで変異処理を施し、糖化酵素の生産性を向上させた変異株由来の糖化酵素であってもよい。例えば、トリコデルマ属糸状菌を一部の酵素成分が多く発現するよう改変した変異株に由来する、糖化酵素の組成比率が変更された糖化酵素であってもよい。
市販されているトリコデルマ属菌由来の糖化酵素を用いてもよい。例えば、ノボザイム社の「セリック・シーテック」や、ジェネンコア協和社の「アクセルレース1000」、「アクセルレース1500」、シグマ・アルドリッチ社の「セルラーゼ from Trichoderma reesei ATCC 26921」、「セルラーゼfrom Trichoderma viride」、「Cellulase from Trichoderma longibrachiatum」などを例示できる。
トリコデルマ属菌由来の糖化酵素は、酵素成分を産生するよう調製した培地中で、任意の期間、トリコデルマ属菌を培養することで得ることができる。使用する培地成分は特に限定されないが、糖化酵素の産生を促進するために、セルロースを添加した培地が好ましく使用できる。また、培養液をそのまま、又はトリコデルマ菌体を除去した培養上清が好ましく使用される。さらに、酵素安定化のために添加剤としてプロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤、安定化剤などを添加したものであってもよい。
トリコデルマ属菌由来の糖化酵素中の各酵素成分の種類、その成分比は特に限定されない。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来の培養液には、セルビオハイドロラーゼ、βグルコシダーゼ等が含まれている。トリコデルマ属菌の場合、活性の高いセルビオハイドロラーゼは培養液中に生産されるが、βグルコシダーゼは、細胞内又は細胞表層に保持されるため、培養液中のβグルコシダーゼ活性は低くなるので、この場合は、培養上清中にさらに異種又は同種のβグルコシダーゼを添加してもよい。ここで添加する異種のβグルコシダーゼとしては、アスペルギルス属菌由来のβグルコシダーゼが好ましく使用できる。アスペルギルス属菌由来のβグルコシダーゼとして、例えばノボザイム社より市販されている「Novozyme188」などを例示することができる。
本発明の糖液の製造方法の工程(2)で用いる精密濾過膜は、機能面の平均細孔径が0.25μm以下の多孔性の膜である。平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜を用いることで、本発明の工程(2)及び工程(3)において固定分、酵素糖化液中や糖溶液中の固形成分による目詰まり等がなく安定した濾過が可能になり、その結果発酵阻害物質を効率よく除去することが可能になるので、高品質の発酵用糖液を得ることができる。糖化酵素の濃度が高い溶液を濾過する際の操作性及び糖収率の低下を防ぐ観点から、平均細孔径が0.01μm以上0.25μm以下の多孔性精密濾過膜を用いることが好ましい。
本発明の工程(2)で用いる精密濾過膜は、機能面が多孔性の膜である。多孔性の精密濾過膜とは、機能面が互いに連通する空隙が形成された三次元網目構造をなしている膜を言う。例えば、膜機能面が織布、不織布であるものは含まない。ただし、機能面でない基材には織布、不織布が使用されていても構わない。膜機能面が織布、不織布であると、粒径0.25μm以上の粒子成分を効果的に除去することが難しいことが本発明において判明したからである。
精密濾過膜の平均細孔径は、各分離膜メーカーが提示の公称径を採用してもよいし、実際に測定してもよい。精密濾過膜の細孔径を測定する方法として、直接観察法やバブルポイント法を適用できる。直接観察法では、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、精密濾過膜の表面の10μmx9μmの範囲内に存在する表面細孔を観察し、その直径を実測し、平均値を求めることで平均細孔径を算出することができる。また、バブルポイント法では、膜二次側から空気圧をかけて、膜表面に気泡の発生が観察できる最小圧力を測定し、使用した液体の表面張力と圧力との関係式から平均細孔径を算出することができる。より具体的には、ASTM F316−03(バブルポイント法)に準拠して測定することが可能であり、例えば、日本ベル株式会社製の貫通細孔分布/ガス透過性解析装置を用いて測定することができる。
本発明で使用する精密濾過膜の材質としては、例えばセルロース系、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニルデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックス、金属などを用いることができる。これらのうち、酵素糖化液に含まれる糖化酵素による影響を受けず、また不溶性固形分の除去性がよいことから、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニルデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、特にポリフッ化ビニルデンが好ましい。
本発明の工程(2)で行うクロスフロー濾過は、ポンプによる原液循環や、曝気による液流を用いて、膜表面に対して平行な液流れを作り液面を洗いながら濾過する方法である。ポンプによる原液循環では、中空糸膜や中空膜のモジュールを用いるのが好ましく、曝気による液流では浸漬型の平膜モジュールを用いるのが好ましい。より好ましくは、ポンプで原液循環しながら曝気による膜の機械的振動を起こすことが可能である中空糸型のモジュールを用いる。中空糸型モジュールを使用する際は、遠心分離などを利用して固液分離を事前に行うことが好ましい。遠心分離により、セルロース成分が中空糸に絡まって長期的な運転を阻害する可能性を防ぐことができる。曝気に用いる気体は空気が一般的であるが、反応性ガス、例えばオゾンガスにより膜面を洗浄して、膜面付着物を除去してもよい。また、二酸化炭素を用いて曝気することにより、濾過する酵素糖化液のpHを低下させることができる。
本発明の工程(2)で行うクロスフロー濾過は、膜目詰まりを防止する観点から、膜透過流束(後記)を0.75m/day以下、より好ましくは0.5m/day以下に制御するのが好ましい。例えば、水熱処理の熱水可溶分を含む酵素糖化液においては、膜透過流束0.1m/day以下で運転することが特に好ましい。クロスフロー濾過の膜透過流束を容易に制御できるようにするために、クロスフロー濾過の前又はクロスフロー濾過中に後記する加水処理を行うこと、又はクロスフロー濾過の前にする固液分離処理(後記)を行うことが有効である。固液分離処理を行う場合は、加水処理は固液分離処理後に行うことが好ましい。
本発明の工程(2)における精密濾過膜を用いるクロスフロー濾過の前に又はクロスフロー濾過中に、加水処理を行うことが好ましい。加水処理は、酵素糖化液に濁度が10NTU以下の水を加える処理である。加える水として、製造工程中の水の使用量を低減する観点から、工程(3)での濾液をさらに逆浸透膜処理を行ったものを再利用してもよい。
本発明の工程(2)において加水処理を行う場合は、所望のMLSS濃度となるように加水量を決めるのが好ましい。MLSS(Mixed Liquor Suspended Solid)濃度は、一般に液中の不溶性の固形分に関する濃度を表すものであって、JIS K0102 14.1(2008年)の規格に定められた方法に従って測定することができる。MLSS濃度が一定以上になると、特に一定時間以上連続してクロスフロー濾過を行う際に濾過性が低下することから、MLSS濃度が一定値以下になるように加水処理を行うのが好ましい。具体的には、酵素糖化液のMLSS濃度は40000mg/L以下であることが好ましい。好ましいMLSS濃度の範囲としては、500mg/L以上40000mg/L以下が好ましく、より好ましくは1000mg/L以上20000mg/L以下である。MLSS濃度が500mg/L以下である場合は、濾過性の低下は顕著に現れないから、加水処理を行わなくてもよい。
酵素糖化液のMLSS濃度は、例えば連続運転している場合には直接測定することが難しいため、MLSS濃度に代わり、MLSS濃度と相関関係のある粘度を測定し、これを指標として加水量を決めることができる。酵素糖化液の粘度の測定方法は特に限定されない。例えば、一般に入手可能な粘度計を用いて測定することができる。
加水処理で添加する水の量は、上記のように酵素糖化液のMLSS濃度や粘度を測定することにより決めることができるが、通常は、酵素糖化液の原液に対して0.5倍量〜10倍量が好ましく、より好ましくは1.0倍量〜5.0倍量である。
また、加水処理は、工程(2)のクロスフロー濾過前又は濾過中に行うことがよい。加水は、精密濾過膜の非透過側又は透過側のいずれにおいて行ってもよい。透過側において加水を行う場合は、膜の逆洗の効果も得ることができるので、別途薬品を使用しないで逆洗運転可能な状態であれば発酵に利用する際の薬剤による発酵阻害の影響を抑えることができる。また、非透過側において加水する場合は、膜表面が洗浄される効果が期待できる。
加水処理は、工程(3)のナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜での濾過による発酵阻害物質の除去効果にも関係している。例えば、発酵阻害物質であるフルフラール濃度0.5g/L(本発明により得られる糖液を用いてエタノール発酵を行う場合に、その発酵効率の低下を起こさない程度の低濃度。J.P.Delgenes et. al. 1996,vol19,220−225, 「Enzyme and Microbial Technology」参照)となるように加水量を規定すると、工程(2)におけるクロスフロー濾過の運転性が向上し、工程(3)において効果的に発酵阻害物質を除去することができる。
本発明の工程(2)におけるクロスフロー濾過の前に、酵素糖化液に固液分離処理を行ってもよい。固液分離処理とは、酵素糖化液に存在する不溶成分の一部を除去する処理である。具体的な固液分離処理の方法としては、『食品工学基礎講座 固液分離』(光琳)によれば、遠心分離方式、圧搾分離方式、濾過方式、浮上分離方式、沈降分離方式が挙げられる。これらのうち、不溶成分による濾過時のフィルタや膜の目詰まりの心配がないことから、遠心分離、沈降分離又は浮上分離、あるいはこれら複数の組合せが好ましく、より好ましくは専有面積・設備費の観点から遠心分離である。固液分離処理は、断続的に行っても連続的に行ってもよい。また、固液分離処理の前に凝集剤処理を行っても良い。凝集剤により固形分の除去をより効率的に行うことが出来るからである。凝集剤としては特に限定されないが、例えばPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド、ポリシリカ鉄、塩化第二鉄、高分子凝集剤などが例示できる。
本発明の工程(2)におけるクロスフロー濾過の前に、酵素糖化液のpHを変化させることが好ましい。ここで、pHを変化させるとは、酵素糖化液に酸又はアルカリを添加して、酵素糖化液のpHを低下又は上昇させることをいう。pHを変化させることにより、溶解していた発酵阻害物質等の高分子成分(不純物)が不溶となって凝集することにより、工程(2)における精密濾過膜を用いるクロスフロー濾過でこれを除去することができる。工程(2)のクロスフロー濾過で不要の不純物を除去することにより、工程(3)において、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜の長期運転性を向上させることができる。pHを変化させる工程は、精密濾過膜によるクロスフロー濾過をする前であれば特段限定はされないが、工程(2)の前工程として固液分離処理をする場合は、固液分離処理の前にpHを変化させることが好ましい。
酵素糖化液のpHを変化させる場合、pHは1以上9以下の範囲で行うことが好ましく、1以上7以下の範囲がより好ましく、1以上4.5以下にすることがさらに好ましく、糖化酵素が失活しないpH3以上pH4.5以下で行うことが特に好ましい。これらの酸性の範囲のpHに低下させる場合、工程(3)において有機酸が膜透過画分に除去できる効果も期待できる。酵素糖化液のpHを低下させることは、例えば硫酸や塩酸等の酸を添加することで行うことができる。また、酵素糖化液のpHを上昇させることは、例えば水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを添加することで行うことができる。
本発明の工程(2)における精密濾過膜を用いるクロスフロー濾過の運転方法は、特に限定されないが、逆洗運転又は間欠運転を行うことが好ましい。これらの運転を行うことにより、膜表面に堆積、濃縮されて膜を閉塞される成分が、逆洗運転の逆洗時又は間欠運転の停止時に膜から離れて長期運転性を向上させることができる。逆洗に使用する液体としては特に限定されないが、好ましくは水又は濾過液である。水は水道水でもよく、純水でも構わない。さらに長期安定的に濾過する場合は薬剤を用いて定期的に洗浄することが好ましい。薬剤としては、酸やアルカリ、界面活性剤、酵素など特に限定されないが、好ましくはアルカリ含有水溶液である。さらに好ましくは水酸化ナトリウム含有水溶液である。洗浄方法としては、膜の非透過側から洗浄する順洗でも透過側から洗浄する逆洗でもよい。
本発明において、発酵阻害とは、セルロース含有バイオマスを原料とする糖液を発酵原料として使用して化学品を製造する際に、試薬単糖を発酵原料として使用する場合と比較して、発酵阻害物質に起因して化学品の生産量、蓄積量又は生産速度が低下する現象のことをいう。こうした発酵阻害の程度は、糖液中に存在する発酵阻害物質の種類、及びこれらの量により異なり、また使用する微生物種、あるいはその生産物である化学品の種類によっても異なる。本発明の工程(2)で得られる糖溶液には、工程(1)や工程(2)の実施条件やセルロース含有バイオマスの種類等により成分やその含量に差があるものの、いずれも発酵阻害物質を含んでおり、糖溶液を工程(3)に供することにより、発酵阻害物質を除去することができる。
発酵阻害物質とは、セルロース含有バイオマスの前処理工程や糖化酵素による加水分解工程で生成する物質であり、かつ本発明の製造方法によって得られる糖液を原料とする発酵工程において前記の通り発酵阻害する物質であり、有機酸、フラン系化合物、フェノール系化合物に大きく分類される。
有機酸としては、酢酸、ギ酸、レブリン酸などが具体例として挙げられる。フラン系化合物としては、フルフラール、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)などが挙げられる。これら有機酸あるいはフラン系化合物は、単糖であるグルコースあるいはキシロースの分解による産物である。また、フェノール系化合物としては、バニリン、アセトバニリン、バニリン酸、シリンガ酸、没食子酸、コニフェリルアルデヒド、ジヒドロコニフェニルアルコール、ハイドロキノン、カテコール、アセトグアイコン、ホモバニリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル誘導体(Hibbert‘s ketones)などが具体例として挙げられ、これらのフェノール系化合物はリグニン又はリグニン前駆体に由来する。
セルロース含有バイオマスとして廃建材あるいは合板などを使用する際は、製材工程で使用された接着剤、塗料などの成分が発酵阻害物質として含まれる場合がある。接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリアメラミン共重合樹脂などが挙げられる。こうした接着剤に由来する発酵阻害物質として、酢酸、ギ酸、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
本発明の工程(1)で得られる酵素糖化液には、発酵阻害物質として前記物質のうち少なくとも1種が含まれており、通常は複数種含まれている。なお、これらの発酵阻害物質は、薄相クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの一般的な分析手法により検出及び定量することが可能である。
本発明の工程(3)で使用するナノ濾過膜は、ナノフィルター(ナノフィルトレーション膜、NF膜)とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。
本発明の工程(3)で使用する逆浸透膜は、RO膜とも呼ばれるものであり、「1価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般に定義される膜である。数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。
本発明の工程(3)は、工程(2)で得られた糖溶液を、ナノ濾過膜、逆浸透膜又はこれら両方の膜に通じて濾過し、膜非透過画分として精製された糖液を得る工程である。工程(3)によって、糖溶液に溶解している糖、特にグルコースやキシロースといった単糖を膜非透過側に阻止又は濾別し、発酵阻害物質を膜透過画分(濾液)として透過させて除去することができる。
本発明の工程(3)で使用するナノ濾過膜、逆浸透膜の性能は、糖溶液に含まれる評価の対象化合物(発酵阻害物質あるいは単糖など)の透過率(%)を算出することで評価できる。透過率(%)の算出方法を式1に示す。
透過率(%)=(透過側の対象化合物濃度/非透過液の対象化合物濃度)×100
・・・(式1)。
式1における対象化合物濃度の測定方法は、高い精度と再現性を持って測定可能な分析手法であれば特に限定されないが、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどが好ましく使用できる。本発明の工程(3)で使用するナノ濾過膜、逆浸透膜は、いずれも単糖の透過率が低い方が好ましく、発酵阻害物質の透過率が高いものが好ましい。
また、ナノ濾過膜及び逆浸透膜の透過性能としては、0.3MPaの圧力で500mg/L塩化ナトリウム水溶液を供給して濾過させた時に、膜単位面積当たりの透過流量、すなわち膜透過流束が0.5m/m/day以上の膜が好ましく用いられる。膜透過流束は、透過液量、透過液量を採水した時間及び膜面積を測定することで、式2によって算出することができる。
膜透過流束(m/m/day)=透過液量/膜面積/採水時間・・・(式2)。
一般に、ナノ濾過膜は逆浸透膜に比べて孔径が大きいため、工程(3)においてナノ濾過膜を用いる場合は、膜透過させて除外する発酵阻害物質量が逆浸透膜に比べて多い反面、目的産物である単糖についても透過側に透過して損失する量も多いと考えられる。特に糖濃度が高い場合には、この傾向が強く現れる。一方、工程(3)において逆浸透膜を用いた場合は、ナノ濾過膜と比べて孔径が小さいことから、分子量の大きい発酵阻害物質の除去量が減少すると考えられる。従って、工程(3)においては、工程(2)で得られた糖溶液中の主な発酵阻害物質の含量や分子量に応じて、ナノ濾過膜及び逆浸透膜の中から適切な膜を選択して利用することが好ましい。選択する膜の種類は1種に限らず、糖溶液の組成に応じてナノ濾過膜及び逆浸透膜の中から組み合わせて多種類の膜を利用しても良い。
工程(3)においてナノ濾過膜を用いる場合、ナノ濾過膜の非透過側(濃縮側)に捕捉されていた単糖の濃度が高まるにつれて、単糖が透過側(濾液側)に損失する割合が急激に高くなることがある。一方、逆浸透膜を使用する場合、通常、膜非透過側の単糖濃度が高まっても単糖の損失は殆どないが、発酵阻害物質除去の観点からはナノ濾過膜の方が逆浸透膜よりも性能が優れている。そこで、工程(3)において、ナノ濾過膜と逆浸透膜とを組み合わせて使用する場合は、まず膜透過側への糖損失が小さいと判断する濃度までナノ濾過膜を用いて発酵阻害物質の除去を行い、次いで単糖を損失無く濃縮することが可能な逆浸透膜を使用することが好ましい。
本発明の工程(3)で使用されるナノ濾過膜は、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコールなどのビニルポリマー、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホンなどの高分子素材からなる膜を使用することができ、またこれらの複数の素材を含む膜であってもよい。また、膜構造としては、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部又はもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。複合膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノフィルターを構成させた複合膜を用いることができる。
これらのナノ濾過膜の中でも、高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなる複合半透膜が適している。
ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの混合物がより好ましい。
前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3’,4−トリアミノビフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニルエーテル、3,3’−ジオキシベンジジン、1,8−ナフタレンジアミン、m(p)−モノメチルフェニレンジアミン、3,3’−モノメチルアミノ−4,4’−ジアミノビフェニルエーテル、4,N,N’−(4−アミノベンゾイル)−p(m)−フェニレンジアミン−2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾイミダゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾオキサゾール)、2,2’−ビス(4−アミノフェニルベンゾチアゾール)等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジン又はこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられる。これらの中でもピペラジン又はピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は、耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられる。
より好ましくは、前記架橋ピペラジンポリアミド又は架橋ピペリジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドである。さらに好ましくは、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドである。また、化学式(1)中、n=3のものが特に好ましく用いられる。架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ化学式(1)で示される構成成分を含有するポリアミドを機能層とするナノ濾過膜としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載のものが挙げられ、具体例として、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式(1)中、n=3のものを構成成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系ナノ濾過膜のUTC60が挙げられる。
ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜エレメントとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜エレメントとして好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜エレメントの具体例としては、例えば、酢酸セルロース系のナノ濾過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepaDKシリーズ、HLシリーズ、DLシリーズ、スルホン化ポリスルホンを機能膜とする日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450、ポリビニルアルコールを機能膜とする日東電工株式会社製のNTR−725HF、NTR7250、NTR725HF、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99又はNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200、NF−270又はNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600又はSU−610が挙げられる。より好ましくは、ポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99又はNF99HF、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200又はNF−400、あるいは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600又はSU−610であり、さらに好ましくは架橋ピペラジンポリアミドを主成分として含有するポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製ナノ濾過膜モジュールSU−210、SU−220、SU−600又はSU−610である。
工程(3)におけるナノ濾過膜による濾過は、工程(2)で得られた糖溶液を、圧力0.1MPa以上8MPa以下の範囲でナノ濾過膜に供給することが好ましい。圧力が0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。また、圧力が0.5MPa以上6MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、糖溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1MPa以上4MPa以下で用いることが特に好ましい。
本発明の工程(3)で使用される逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう。)又はポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族及び/又は芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマー又は架橋ポリマーが挙げられる。
本発明の工程(3)で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである超低圧タイプのSUL−G10,SUL−G20、低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720P、TMG10、TMG20−370、TMG20−400の他、高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工(株)製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GE製GE SepaAGシリーズ、AKシリーズ、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040、KOCH製TFC−HR、TFC−ULP、TRISEP製ACM−1、ACM−2、ACM−4などが挙げられる。
本発明の工程(3)においては、ポリアミド系の材質を有する逆浸透膜が好ましく使用される。酢酸セルロース系の膜は、長時間使用時に前工程で使用する酵素、特にセルラーゼ成分の一部が透過して膜素材であるセルロースを分解する恐れがあるためである。
工程(3)で用いられる逆浸透膜の膜形態としては、平膜型、スパイラル型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。
ポリアミドを機能層とする逆浸透膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分やアミン成分は、上述したポリアミドを機能層とするナノ濾過膜と同様である。
工程(3)における逆浸透膜による濾過は、工程(2)で得られた糖溶液を、圧力1MPa以上8MPa以下の範囲で逆浸透膜に供給することが好ましい。圧力が1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるおそれがある。また、濾過圧が2MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、糖溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、3MPa以上6MPa以下で用いることが特に好ましい。
工程(3)において、発酵阻害物質はナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜を透過することにより糖溶液から除去される。発酵阻害物質の中でも、HMF、フルフラール、酢酸、ギ酸、レブリン酸、バニリン、アセトバニリン又はシリンガ酸が好ましく透過・除去されうる。一方、糖溶液に含まれる糖分は、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜の非透過側に阻止又は濾別される。
工程(3)で得られる精製された糖液(以下、精製糖液ともいう。)に含まれる糖成分は、セルロース含有バイオマスに由来する糖であり、本質的には、工程(1)の加水分解で得られる糖成分と大きな変化はない。すなわち、本発明の精製糖液に含まれる単糖としてはグルコース、キシロースが主成分として含まれるが、工程(1)の加水分解において単糖まで完全に分解されなかった二糖、オリゴ糖などの糖成分も含まれうる。グルコースとキシロースの比率は、工程(1)の加水分解の工程により変動しうるものであり、本発明で限定されるものではない。すなわち、ヘミセルロースを主として加水分解を行った場合は、キシロースが主要な単糖成分となり、ヘミセルロース分解後、セルロース成分のみを分離して加水分解を行った場合は、グルコースが主要な単糖成分となる。また、ヘミセルロースの分解、及びセルロースの分解を、特段の分離を行わない場合は、グルコース、及びキシロースが主要な単糖成分として含まれる。
なお、工程(3)で得られる精製糖液を発酵原料として使用する前に、一旦エバポレーターに代表される濃縮装置を用いて濃縮してもよく、また、精製糖液を、さらに、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜で濾過して濃度を高めてもよいが、濃縮のためのエネルギー削減という観点から、ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜で濾過して精製糖液濃度をさらに高める工程が好ましく採用できる。この濃縮工程で使用する膜とは被処理水の浸透圧以上の圧力差を駆動力にイオンや低分子量分子を除去する濾過膜であり、例えば酢酸セルロースなどのセルロース系や、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を設けた膜などが採用できる。ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜表面の汚れすなわちファウリングを抑制するために、酸ハライド基と反応する反応性基を少なくとも1個有する化合物の水溶液をポリアミド分離機能層の表面に被覆して、分離機能層表面に残存する酸ハロゲン基と該反応性基との間で共有結合を形成させた主に下水処理用の低ファウリング膜なども好ましく採用できる。この濃縮工程で使用するナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜としては、少なくとも、工程(3)で使用するナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜のうち、グルコース又はキシロースといった単糖の阻止率がより高いものがより好ましく採用できる。濃縮に使用するナノ濾過膜及び逆浸透膜の具体例は、前記のナノ濾過膜及び逆浸透膜に準ずる。
本発明の糖液の製造方法において、工程(2)の精密濾過膜によるクロスフロー濾過の後、得られた糖溶液を限外濾過膜に通じて非透過画分として糖化酵素を除去して、透過画分を工程(3)のナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜による濾過工程に供してもよい。ここで除去した糖化酵素は、経済性の観点から酵素糖化槽に投入して再利用することができる。ここで用いる限外濾過膜は、分画分子量が通常500〜100000である膜であり、ウルトラフィルトレーション、UF膜などと略称されるものである。限外濾過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡等で計測することが困難であることから、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。例えば、分画分子量について、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』(日本膜学会編、「膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編」、92頁、編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤、1993年、共立出版)とあるように、限外濾過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。
本発明の糖液の製造方法において、より好ましくは、分画分子量500〜40000の範囲の限外濾過膜を使用することで、酵素糖化に使用する糖化酵素を効率的に回収することができる。糖化酵素は、多種類の成分の混合物であり、混合物内の糖化酵素群のうち、分子量の小さい糖化酵素が分子量40000程度であるからである。使用する限外濾過膜の形態は特に限定されるものではなく、スパイラル型、中空糸型、チューブラー型、平膜型のいずれであってもよい。回収された糖化酵素は、工程(1)の加水分解に再利用することで、酵素使用量を削減することができる。
限外濾過膜の材質としては、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等の有機材料、ステンレス等の金属、又はセラミック等無機材料が挙げられる。限外濾過膜の材質は、加水分解物の性状やランニングコストを鑑みて適宜選択すればよいが、有機材料であることが好ましく、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンであることがより好ましい。具体的には、DESAL社のG−5タイプ、G−10タイプ、G−20タイプ、G−50タイプ、PWタイプ、HWS UFタイプ、KOCH社のHFM−180、HFM−183、HFM−251、HFM−300、HFM−116、HFM−183、HFM−300、HFK−131、HFK−328、MPT−U20、MPS−U20P、MPS−U20S、Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30、旭化成社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズ分画分子量3000から100000に相当するもの、日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450などが挙げられる。
本発明の糖液の製造装置は、セルロース含有バイオマスの前処理物を糖化酵素による加水分解して酵素糖化液を得るための酵素糖化槽、酵素糖化液を平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜に通じてクロスフロー濾過して膜透過画分として糖溶液を得るための膜分離槽、及び膜分離槽で得られた糖溶液をナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜を用いて濾過して膜非透過画分として精製された糖液を得る糖液精製部、を備える。
本発明の糖液の製造装置は、上記の本発明の糖液の製造方法を実施するために用いることができる。具体的には、セルロース含有バイオマスを前処理して得られた前処理物に糖化酵素を添加して酵素糖化液を得る工程(1)は酵素糖化槽において、工程(1)で得られる酵素糖化液を、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜に通じてクロスフロー濾過し、膜透過画分として糖溶液を得る工程(2)は膜分離槽において、工程(2)で得られる糖溶液をナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜に通じて濾過し、膜非透過画分として精製された糖液を得る工程(3)は糖液精製部において、それぞれ実施することができる。
本発明の糖液の製造装置の例を図1〜図4に示す。なお、本発明の糖液の製造装置は、これらの例に限定されるものではない。以下、図1〜図4に示す糖液の製造装置の例を用いて、本発明の糖液の製造装置について説明する。
図1に示す糖液の製造装置の例は、酵素糖化槽1と膜分離槽10とが、及び膜分離槽10と糖液精製部11とが、それぞれ送液ポンプを備えたラインで連結されている。酵素糖化槽1は、セルロース含有バイオマスの前処理物を供給するための前処理物供給部17と、糖化酵素を供給するための糖化酵素供給部2を有する。
膜分離槽10は、酵素糖化液の粘度を測定するための粘度計4を槽内に有する。これにより、槽内の酵素糖化液の粘度を測定し、酵素糖化液のMLSS濃度を間接的に検知することができる。また、膜分離槽10には、酵素糖化液の粘度測定値に応じて、加水処理又は排液処理又はその両処理を行い、酵素糖化液の粘度を予め設定した範囲内に維持するように制御する加水・排液制御部3を有する。すなわち、粘度の設定範囲の上限値を超えた場合には、加水口5から加水処理を行い、及び/又は排出口6から一部の酵素糖化液を排出することで、粘度を設定範囲内に維持するように制御される。ここで、排出された酵素糖化液は、例えば連続遠心分離機などの固液分離手段(図示せず)に断続的又は連続的に供して固体分等を除去した後に、再び膜分離槽10内に戻すことが好ましい。
また、膜分離槽10には、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜を備えた精密濾過膜ユニット8を槽内に有する。酵素糖化液を多孔性精密濾過膜に通じてクロスフロー濾過し、膜透過画分として糖溶液を得る。さらに、好ましくは、図1に示すように、多孔性精密濾過膜でクロスフロー濾過する際に、気体を多孔性精密濾過膜に曝気するための散気管9、液流れを整流するための整流板7を有する。整流板7は、酵素糖化液の流れが整流板の表裏で反対方向に生じて液が循環するように設置される。
図1に示す糖液精製部11は、ナノ濾過膜又は逆浸透膜を備える膜ユニット又はその両者を有する。膜分離槽10から送液される糖溶液をこれらの膜を通じて濾過して、膜非透過画分として精製された糖液を得ることができる。
図2に示す糖液の製造装置の例においては、酵素糖化槽1に、槽内の液のpHを測定するためのpH計13、及び槽内に酸を添加して液のpHを低下させるための酸供給部12を備える。pH計13と酸供給部12とは、予め設定した上限値以下にpHを制御するように互いに連動していてもよい。また、酵素糖化槽1と膜分離槽10とを連結するラインに、固液分離手段14を備える。固液分離手段14としては、断続的又は連続的に固体成分を除去できるものを使用できるが、連続的であるものが好ましく、特に連続遠心分離装置を用いることが好ましい。連続遠心分離装置としては、例えば、スケールアップの容易さからスクリューデカンタ型が好ましい。また、分離板型(デラバル型)を用いてもよい。分離板型を用いる場合は、繊維成分が装置内に滞留して装置の長期運転性を阻害される可能性があるので、前段階としてスクリューデカンタ型遠心分離と組み合わせて行うことがより好ましい。
図3に示す糖液の製造装置の例においては、酵素糖化槽1と膜分離槽10とが一体化した酵素糖化・膜分離槽16を有する。酵素糖化・膜分離槽16には、図1又は図2に示す装置の例と同様に、糖化酵素供給部2、前処理物供給部17、精密濾過膜ユニット8、整流板7、散気管9を備える。また、図2に示す装置の例と同様に、酵素糖化・膜分離槽16内のpHを測定してpHを調整するために、pH計13及び酸供給部12を備えていてもよい。
また、図3に示す糖液の製造装置の例においては、酵素糖化・膜分離槽16に、酵素糖化液の粘度を予め設定した範囲内に維持するように制御するために、酵素糖化液を固液分離手段14を経由して循環させる循環ラインを備える。この循環ライン上の送液ポンプは、固液分離制御部15によって制御されており、粘度計4で測定された酵素糖化液の粘度測定値が設定範囲の上限値を超えた場合に稼動して、酵素糖化液が循環ラインの固液分離手段14によって固液分離が行われる。さらに、酵素糖化・膜分離槽16には、槽内の酵素糖化液の容積を一定に維持するために、加水処理を行うための加水口5を有する。この加水口5の開閉は、酵素糖化・膜分離槽16内に設置された液量計(図示せず)と連動して制御されてもよい。
図4に示す糖液の製造装置の例においては、膜分離槽10と糖液精製部11との間に、さらに限外濾過膜ユニット19及び限外濾過膜供給槽18を備える。精密濾過膜ユニット8でクロスフロー濾過して得られた糖溶液を限外濾過膜ユニット19に通じて濾過することで、糖化酵素を除去することができる。また、限外濾過膜ユニット19の膜非透過画分は、回収酵素戻しライン20を経由して酵素糖化槽1にある糖化酵素供給部2に戻して、再度酵素糖化を行う工程に用いることができる。
また、図4に示す糖液の製造装置の例においては、精密濾過膜ユニット8が膜分離槽10の外部に存在し、ポンプ送液(図示せず)により酵素糖化液を精密濾過膜ユニット9に外部循環させてクロスフロー濾過を行うことができる。この場合の精密濾過膜ユニット8は、スパイラル型であるとスペーサ部に固形分が堆積する可能性があるので、中空糸型またはチューブラー型が好ましい。特に、中空糸型の場合はセルロース含有バイオマスの繊維成分が糸に巻きつく可能性があるので、膜分離槽10の前段部分に固液分離手段14を備えるのが好ましい。
さらに、図4に示す糖液の製造装置の例においては、限外濾過膜ユニット19に通じて濾過して得られた糖溶液は、糖濃縮槽21に送液される。糖濃縮槽21に送液された糖溶液は、糖液精製部(ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜)11に送液され、これらの膜を通じて濾過されて膜非透過画分として精製された糖液を得ることができる。ここで、精製された糖液を再び糖濃縮槽21に戻すことで、精製された糖液を濃縮することができる。
以下、本発明の糖液の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。
(参考例1)単糖濃度の測定方法
各実施例、比較例において得られた糖液に含まれる単糖濃度(グルコース濃度、キシロース濃度)は、以下に示す条件でHPLCにより分析し、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH2(Phenomenex社製)
移動相:超純水:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例2)発酵阻害物質の濃度の測定方法
糖液に含まれる発酵阻害物質のうち、フラン系発酵阻害物質(HMF、フルフラール)及びフェノール系発酵阻害物質(バニリン、アセトバニリン、シリンガ酸、レブリン酸、4−ヒドロキシ安息香酸)の濃度は、以下に示す条件でHPLCにより分析し、標品との比較により定量した。
カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex社製)
移動相:アセトニトリル−0.1%HPO(流速1.0mL/min)
検出方法:UV(283nm)
温度:40℃。
糖液に含まれる発酵阻害物質のうち、有機酸(酢酸、ギ酸)は、以下に示す条件でHPLCにより分析し、標品との比較により定量した。
カラム:Shim−Pack SPR−HとShim−Pack SCR101H(株式会社島津製作所製)の直列
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
(参考例3)濁度の測定方法
糖液の濁度は、HACH社製室内用高度濁度計(2100N)を用いて定量した。なお、この濁度計は、1000NTU以下の濁度でなければ測定できないため、必要に応じて糖液を蒸留水で希釈し、測定を行った。
(参考例4)固形分含量の測定方法
糖液中の固形分含有は、含水率計(ケット科学研究所 赤外線水分計FD720)を用いて測定物である糖液を10mLアプライし、その含水率(重量%)を求め、この含水率を100%から引いた値として求めた。
(参考例5)MLSS濃度の測定方法
糖液のMLSS濃度は、JIS K0102 14.1(2008年)に準拠して測定した。ガラス繊維ろ紙(ADVANTEC社製GS−25)を105℃で2時間加熱し、ガラス繊維ろ紙の重量(重量a)を測定した。乾燥させたガラス繊維ろ紙を濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製KP−47S)にセットし、サンプル液VmL(2〜10mL)を吸引濾過した。再度ガラス繊維ろ紙を105℃で2時間加熱した後に重量(重量b)を測定し、MLSS濃度を次の式3にて算出した。
MLSS濃度[mg/L]=(b−a)[mg]/V[mL]×1000 (式3)。
(参考例6)粘度の測定方法
糖液の粘度は、十分沈殿物を攪拌して浮遊させた状態の糖液を回転円筒式粘度計(リオン社製、ビスコテスタVT−03F)を用いて測定した。
(実施例1)
工程(1)として、セルロース含有バイオマスとして稲藁を使用し、これを水熱処理して、以下のようにして酵素糖化液を得た。まず、稲藁を水に浸し、撹拌しながら200℃で15分間オートクレーブ処理(日東高圧製)した。処理後、1時間静置の後、上清成分の熱水可溶分を水熱処理液(前処理物)として使用した。次に、この水熱処理液に糖化酵素としてトリコデルマセルラーゼ(シグマ・アルドリッチ・ジャパン)及びノボザイム188(アスペルギルスニガー由来βグルコシダーゼ製剤、シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を添加し、50℃で1日間攪拌混合しながら、加水分解反応を行い、水熱処理糖化液(酵素糖化液)を得た。得られた水熱処理糖化液に含まれる単糖及び発酵阻害物質の濃度はそれぞれ表1、2の通りであった。また、水熱処理糖化液の濁度は12000NTUであった。固形分含量は、6.0%であった。
次に工程(2)として、工程(1)で得られた水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとし、濁度を6000NTUとした後、30kPaの圧力で、温度25℃で多孔性精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過し、膜透過側からペリスタポンプを用いて一定濾過流量運転で1.8Lの糖溶液を回収した。ここで、クロスフロー濾過の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、精密濾過膜は平膜試験装置にセットして膜透過流束0.1m/dayの条件下で濾過を行った。多孔性精密濾過膜としては、東レ株式会社製精密濾過膜“メンブレイ”(登録商標)TMR140に使用されている公称平均細孔径0.08μmのポリフッ化ビニルデン製平膜を切り出して使用した。上記工程(2)で得た糖溶液の濁度は1NTU以下で、固形分含量は2.4%であった。
工程(3)として、上記工程(2)で得た糖溶液1.8Lを、3MPaの圧力で、温度25度でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過した。膜非透過側から精製糖液を回収し、膜透過側から発酵阻害物質を含む透過水を除去して、0.225Lの精製糖液を得た。この操作により、工程(2)で得られた糖溶液を8倍に濃縮、工程(2)の加水前の原液濃度換算で4倍に濃縮したことになる。ここで、ナノ濾過膜としては東レ株式会社製ナノ濾過膜“SU−610”に使用されている“UTC−60”の平膜を切り出して使用した。このときに要した処理時間は6時間であった。膜非透過分として得られた精製糖液に含まれる単糖及び発酵阻害物質の濃度はそれぞれ表3、4の通りであった。
(比較例1)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液(酵素糖化液)1Lに等量の水を加えて2Lとした後、工程(2)として、クロスフロー濾過の代わりに、フィルタプレス(薮田産業製MO−4)を用いて圧入圧力最大0.2MPa、圧搾圧力0.5MPaで濾過を行った。
多孔性精密濾過膜として、ユアサ製の精密濾過膜(平均細孔径1.0μm)を用いてフィルタプレスで濾過を行ったところ、1時間の圧入処理において50mL程度しか濾液を回収することは出来ず操作を中止した。
また、濾液として得られた糖溶液をユアサ製の精密濾過膜(平均細孔径0.1μm)を用いてフィルタプレスで濾過を行ったところ、1時間の圧入処理において20mL程度しかろ液を回収することは出来ず処理を中止した。
(比較例2)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとして濁度を6000NTUとした後、工程(2)として、多孔性精密濾過膜の代わりに不織布膜を用いて、30kPaの圧力で、温度25℃で不織布膜に供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側から1.8Lの糖溶液を回収した。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.1m/dayの条件下で濾過を行った。不織布膜としては、東レ株式会社製精密濾過膜“アクスター”(登録商標)に使用されているポリエステル製不織布膜M−2080−3T(厚み0.36mm、通気度50cc/cm・sec)、G−2260−3S(厚み0.62mm、通気度11cc/cm・sec)及びポリプロピレン製不織布FC305(薮田産業製、厚み0.80mm、通気度5.0cc/cm・sec)をそれぞれ切り出して使用した。いずれの不織布膜を用いた場合でも1.8Lの糖溶液を回収することができたが、濁度はそれぞれ表5の通りであった。
工程(3)として、これらの不織布膜を透過した糖溶液1.8Lを、それぞれ3MPaの圧力で、温度を25度で実施例1と同様にナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。しかし、いずれの場合も10分以内に膜が閉塞し濾過することが出来なくなった。
(比較例3)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとし、濁度を6000NTUとした後、工程(2)として、多孔性精密濾過膜の代わりに織布膜を用いて、30kPaの圧力で、温度25℃で織布膜に供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側から16Lの糖溶液を回収した。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.1m/dayの条件下で濾過を行った。織布膜としては、薮田産業製織布T2731C(ポリエステル製、二重織、厚み0.59mm、通気度1.67cc/cm・sec)、T1005C(ポリエステル製、二重織、厚み0.56mm、通気度1.2cc/cm・sec)及びTF7104C(ポリエステル製、緯畝織、厚み0.70mm、通気度0.5cc/cm・sec)をそれぞれ切り出して使用した。いずれの織布膜を用いた場合でも1.8Lの糖溶液を回収することができたが、いずれの織布膜においても膜透過側に気泡が発生しており、閉塞が顕著であった。濁度はそれぞれ表6の通りであった。
工程(3)として、これらの織布膜を透過した糖溶液のうち1.5Lを、3MPaの圧力で、温度を25度で実施例1と同様にナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。しかし、いずれの場合も10分以内に膜が閉塞し濾過することが出来なくなった。
(実施例2)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとし、濁度を6000NTUとした後、工程(2)として、30kPaの圧力で、温度25℃で平均細孔径の異なる多孔性精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側から1.8Lの糖溶液を回収した。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、0.1m/day、膜透過流束0.25m/dayの条件下でそれぞれ精密濾過膜をセットして濾過を行った。多孔性精密濾過膜としては、ミリポア社製“アイソポア”(登録商標)VMTP(平均細孔径0.05μm・ポリカーボネート製)、GE製EWシリーズ(平均細孔径:0.04μm・ポリサルホン製)、ユアサ株式会社製精密濾過膜“ユミクロン メンブレンフィルター”(登録商標)のMF−10(平均細孔径0.1μm)、MF―20(平均細孔径0.2μm)、ミリポア社製“デュラポア”(登録商標)GVWP(平均細孔径0.22μm)からそれぞれ精密濾過膜を切り出して使用した。実施例1と同様、0.1m/dayにおいてはいずれもの場合も膜閉塞無く1.8Lの糖溶液を回収することができた。また0.25m/dayの条件下では、MF―20(平均細孔径0.2μm)、GVWP(平均細孔径0.22μm)の2種に関して1.6L透過した時、膜透過流束が0.2m/dayまで低下したが、最終的には1.8L回収することができ、この2種以外はいずれもの場合も膜閉塞なく1.8Lの糖溶液を回収することができた。
工程(3)として、上記工程(2)で得た糖溶液1.6Lを、実施例1と同様にして、それぞれ3MPaの圧力で、温度を25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。膜非透過側から精製糖液を回収しつつ、膜透過側から発酵阻害物質を含む透過水を除去して、それぞれ2Lの精製糖液を得た。この操作により、工程(2)で得られた糖溶液を8倍に濃縮、工程(2)の加水前の原液濃度換算で4倍に濃縮したことになる。このときに要した処理時間は実施例1と同様10時間であった。膜非透過分として得られた精製糖液に含まれる単糖及び発酵阻害物質の濃度は、いずれも実施例1と同様の表7、8の通りであった。
(比較例4)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとし、濁度を6000NTUとした後、工程(2)として、平均細孔径の異なる多孔性精密濾過膜に30kPaの圧力で、温度25℃で供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側から1.8Lの糖溶液の回収を試みた。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.1m/dayの条件下でそれぞれ精密濾過膜をセットして濾過を行った。多孔性精密濾過膜としては、ユアサ株式会社製精密濾過膜“ユミクロン メンブレンフィルター”(登録商標)のMF−40(平均細孔径0.4μm)、MF−60(平均細孔径0.6μm)、MF−90(平均細孔径0.9μm)、MF−250(平均細孔径2.5μm)、ミリポア社製“デュラポア”(登録商標)HVLP(平均細孔径0.45μm)からそれぞれ精密濾過膜を切り出して使用した。いずれの場合も、膜透過流束0.1m/dayにおいて途中で膜が閉塞してしまい糖溶液を回収することが出来なかった。膜透過流束0.1m/day(実施例1の場合、通常処理時間:30時間)の濾過条件において濾過速度が保てず気泡が発生して、実際の濾過流量が半分(膜透過流束0.05m/day)となった時間を膜閉塞時間として測定したところ、表9のような結果となった。MF−40(平均細孔径0.4μm)の膜の場合は、目標の1.8Lまで到達できずに膜が閉塞したが、1.6Lの糖溶液を得られた。
工程(3)として、上記MF−40の場合に得た糖溶液1.6Lを、実施例1と同様にして、3MPaの圧力で、温度を25度でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過した。しかし、3時間で0.8L濾過した時点で膜フラックスが急激に落ちて濾過が難しくなり濾過を中止した。この0.8L濾過した後の非透過側の糖液中の単糖及び発酵阻害物質の濃度を測定した(表10、11)が、精製・濃縮が不十分であった。
(比較例5)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液1Lに等量の水を加えて2Lとし、濁度を6000NTUとした後、工程(2)として、多孔性精密濾過膜の代わりに、30kPaの圧力で、温度25℃で限外濾過膜に供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側から1.8Lの糖水溶液の回収を試みた。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.1m/dayの条件下で限外濾過膜をセットして濾過を行った。限外濾過膜としては、KOCH社製限外濾過膜HFM−300(分画分子量:100000・ポリフッ化ビニルデン製)、HFK−131(分画分子量:10000・ポリエーテルサルホン製)をそれぞれ切り出して使用した。いずれの限外濾過膜の場合も、膜透過流束0.1m/day(実施例1の場合、通常処理時間:30時間)の濾過条件において濾過速度が保てなかった。実際の濾過流量が半分(膜透過流束0.05m/day)となった時間を膜閉塞時間として測定したところ、表12のような結果となった。
(参考例5)膜の閉塞要因の検討(1)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液を10000Gで30分間超遠心分離した後、動的光散乱法(大塚電子製、ゼータ電位・粒径測定システムELSZ−2)を用いて、液内の粒径分布を測定した。この超遠心分離処理により得られた液の濁度は300NTUであった。その結果、図5に示すとおり、粒径0.24μm〜0.48μmの間に顕著な粒子性のピークが見られた。
この粒子成分が、工程(2)において平均細孔径が0.25μmより大きい多孔性精密濾過膜又は多孔性でない精密濾過膜(織布膜、不織布膜等)を用いて濾過する際に、あるいはその後の工程(3)においてナノ濾過膜又は逆浸透膜で濾過する際に閉塞する要因であると推定された。すなわち、本発明の糖液の製造方法の工程(2)においては、この粒子成分よりも平均細孔径が小さい0.25μm以下の多孔性精密濾過膜を使用することが重要であることが判明した。
(参考例6)膜の閉塞要因の検討(2)
参考例5の超遠心分離にて得られた液1Lを、実施例1の工程(3)と同様に3MPaの圧力で、温度を25度でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過させた。しかし、1時間で0.25L濾過した時点で膜フラックスが急激に落ちて濾過が難しくなり濾過を中止した。濾過後の膜を走査型電子顕微鏡(日立製S−4800)にて観察したところ、図6のように膜全体に粒子成分が付着して濾過を阻害していることが判明した。さらにこの付着している粒子成分は、電子顕微鏡付設のSEM−EDX検出器により測定した結果、シリカ(二酸化ケイ素)粒子であることが判明した。
(実施例3)
実施例1の工程(2)において、加水量を変化させて膜濾過性を検討した。実施例1の工程(1)で得られた水熱処理糖化液1Lに対して、0.5LのRO水を添加した場合(加水処理A)、1LのRO水を添加した場合(加水処理B:実施例1と同じ)、4LのRO水を添加した場合(加水処理C)、9LのRO水を添加した場合(加水処理D)の4条件で、実施例1と同様にして、30kPaの圧力で、温度25℃で多孔性精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過させ、膜透過側からペリスタポンプを用いて一定濾過流量運転で装置のデッドボリュームである膜非透過水が0.2Lになるまで糖溶液を回収した。ここでクロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.1m/day(実施例1と同じ)、0.25m/dayの各濾過流量条件下でそれぞれ精密濾過膜を平膜試験装置にセットして濾過を行った。精密濾過膜としては、東レ株式会社製精密濾過膜“メンブレイTMR140”(登録商標)に使用されている公称平均細孔径0.08μmのポリフッ化ビニルデン製平膜を切り出して使用した。
加水処理A〜Dの場合の各膜透過流束(濾過流量条件)での結果を表13にまとめた。表中の「○」は流量の変化無く濾過できたことを示し、「×」は途中で濾過できなくなったことを示す。「△」は流量を一定に保つことはできなかったが、膜非透過側が0.2Lになるまで濾過できたことを示す。
工程(3)として、加水処理A〜Dで膜透過流束0.1m/dayの濾過条件で得られた各糖溶液を、実施例1と同様に、東レ株式会社製ナノ濾過膜“SU−610”に使用されている“UTC−60”の平膜を切り出しセットして、3MPaの圧力で、温度を25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過した。それぞれ糖濃度が工程(2)の加水処理前の水熱処理糖化液に比較して4倍となるように濾過を行った。各加水処理時の場合の膜非透過側の糖液(濃縮液)の糖濃度、液量、発酵阻害物質濃度を表14、15に示した。糖濃度はグルコース、キシロースとも変化ないが、加水処理によって得られる液量が異なり糖の収率が向上することが分かった。さらに加水処理量が多い場合は、糖液中の発酵阻害物質濃度も低下することが分かった。
(実施例4)
実施例1の工程(1)で得られた水熱処理糖化液を、3000Gで1分間遠心分離を行って沈殿物を除いた酵素糖化液を用いて、実施例3と同様に工程(2)において加水量を変化させて膜濾過性を比較した。遠心分離後の水熱処理糖化液の固形分含量は5.7%であった。遠心分離後の水熱処理糖化液1Lに対して0.5LのRO水を添加した場合(加水処理E)、1LのRO水を添加した場合(加水処理F:実施例1と同じ)、4LのRO水を添加した場合(加水処理G)、9LのRO水を添加した場合(加水処理H)の4条件に対して、実施例3と同様に工程(2)の多孔性精密濾過膜による濾過を行った。
加水処理E〜Hの場合の各膜透過流束(濾過流量条件)での結果を表16にまとめた。表中の「○」、「×」、「△」は実施例3の場合と同じである。実施例3(表13)と比較して、工程2の前に遠心分離工程を行うことにより、固体分を事前に除去できるので、加水処理による膜濾過性能の向上がさらに顕著になった。
工程(3)として、加水処理E〜Hで膜透過流束0.1m/dayの濾過条件で得られた各糖溶液を、5%硫酸水溶液によりpH3.0に調整した後、東レ株式会社製超低圧逆浸透膜“SUL−G10”の平膜を切り出しセットして、4MPaの圧力で、温度を25℃で逆浸透膜に供給してクロスフロー濾過した。それぞれ糖濃度が工程(2)の加水処理前の水熱処理糖化液に比較して4倍となるように濾過を行った。各加水処理時の場合の膜非透過側の糖液(濃縮液)の糖濃度、液量、発酵阻害物質濃度を表17、18に示した。糖濃度はグルコース、キシロースとも変化ないが、加水処理によって得られる液量が異なり糖の収率が向上することが分かった。さらに加水処理量が多い場合は、糖液中の発酵阻害物質濃度も低下することが分かった。
(参考例7)酵母によるエタノール発酵
比較例7,実施例5では、次のようにして酵母株(OC2、サッカロマイセス・セレビシエ、ワイン酵母)によるエタノール発酵を行い、得られた糖液の評価を行った。
発酵用培地は、以下のの組成で調製し、フィルター滅菌(ミリポア、ステリカップ0.22μm)したものを発酵に用いた。
<発酵用培地>
グルコース: 30g/L
ドロップアウトMX: 3.8g/L
Yeast NTbase: 1.7g/L。
グルコース濃度の定量には、グルコーステスト和光(和光純薬工業)を使用した。また、各培養液中に産生されたエタノール量は、ガスクロマトグラフ法(Shimadzu GC−2010キャピラリーGC TC−1(GL science) 15 meter L.*0.53mm I.D., df 1.5μm)を用いて、水素炎イオン化検出器により測定した。
酵母(OC2株)を試験管で5mlの上記発酵用培地(前培養培地)で一晩振とう培養した(前培養)。前培養液から酵母を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。洗浄した酵母を、上記発酵用培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(本培養)。
(比較例6)
実施例1の工程(1)で得られた水熱処理糖化液1Lを0.25Lになるまでエバポレータにて濃縮した後、得られた蒸留濃縮液をグルコース源として使用して発酵用培地を調製し、参考例7に記載のように前培養、本培養を行ってエタノール発酵を行った。なお、前培養では試薬単糖を用い、本培養時のみ蒸留濃縮液を用いた。以上のエタノール発酵の結果として、グルコース消費量及びエタノール蓄積濃度を表19に示した。
(実施例5)
実施例3の加水処理A〜Dの条件で得られた精製糖液各約100mL、及び比較対照として試薬グルコースをグルコース源として使用して発酵用培地を調製し、参考例7に記載のように前培養、本培養を行ってエタノール発酵を行った。なお、前培養では試薬単糖を用い、本培養時のみ各精製糖液を用いた。
以上のエタノール発酵の結果として、グルコース消費量及びエタノール蓄積濃度を表20に示した。実施例3のように多孔性精密濾過膜及びナノ濾過膜で濾過することにより、比較例7の蒸留濃縮液の場合に比べて、発酵阻害が抑制され、エタノールの蓄積濃度が改善した。
(実施例6)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液を用いて、MLSS濃度が異なる酵素糖化液を用意した。実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液10L(以下、原液)、水熱処理糖化液1LにRO水を1L加水処理した合計2Lの液(以下、加水処理液)、水熱処理糖化液を1500Gにて2分間遠心処理して沈澱物を除去した液を10L(以下、遠心処理液)、水熱処理糖化液を1500Gにて2分間遠心処理して沈澱物を除去した液1LにRO水を1L加水処理した合計2Lの液(以下、遠心加水処理液)をそれぞれ準備した。それぞれのMLSS濃度、粘度を測定した結果は表21の通りであった。この結果より、MLSS濃度と粘度との間には、一定の正の相関関係があることがわかった。
工程(2)として、原液及び遠心処理液の2種を72kPaの圧力で、温度25℃で多孔性精密濾過膜に供給して、膜透過側からペリスタポンプを用いて一定濾過流量の間欠運転(9分運転1分停止)で濾過側圧力を測定しながらクロスフロー濾過した。ここで、クロスフロー濾過時の膜面線速度は30cm/秒となるようにし、膜透過流束0.12m/dayの濾過条件下でそれぞれ精密濾過膜をセットして濾過を行った。多孔性精密濾過膜としては、実施例1と同様に、東レ株式会社製精密濾過膜“メンブレイ”(登録商標)TMR140に使用されている公称平均細孔径0.08μmのポリフッ化ビニルデン製平膜を切り出して使用した。
原液及び遠心処理液の2種の濾過において、それぞれMLSS濃度が20000mg/L、30000mg/L、40000mg/L、50000mg/Lとなった時点の膜非透過側の液を200mLずつ採取した。採取した各液濾過量と等量の水を加水しながらMLSS濃度を一定に保ちながら連続的に濾過を継続し、濾過開始時と濾過開始後1時間後の膜透過側圧力を測定した。その結果を表22に示した。
この結果、原液、遠心処理液のいずれの場合も、MLSS濃度が高いと、膜目詰まり成分が多いため、膜透過側圧力が低かった。また、濾過開始時の膜透過側圧力と、MLSS濃度を一定に保った状態で膜透過量と等量の水を加水しながら連続的に1時間濾過した後の膜透過側圧力との差をを比較したところ、MLSS濃度が40000mg/L以下の場合は圧力差が生じなかったが、MLSS濃度が50000mg/Lの場合は濾過側圧力がいずれも15kPa低下し、すなわち膜の目詰まりの兆候が見られた。従って、膜を長期安定的に濾過するためには、酵素糖化液のMLSS濃度を40000mg/L以下の状態に維持しながら濾過することが好ましいことがわかった。
(実施例7)
実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液(酵素糖化液)に硫酸を入れてpH3.0、4.0、4.5に変化させたもの、pH5.0のままのもの、および水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に変化させたものの5種の酵素糖化液を用いて(濾過前pH変化)、工程(2)として、実施例1と同様に多孔性精密濾過膜に供給してクロスフロー濾過し、各糖溶液を回収した。
工程(3)として、各糖溶液を、実施例1と同様に、東レ株式会社製ナノ濾過膜“SU−610”に使用されている“UTC−60”の平膜を切り出しセットして、操作圧力が3MPaの操作圧力で、温度25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過した。それぞれ糖濃度が水熱処理糖化液に比較して4倍となるように濾過を行った。4倍となった点での膜透過流束を表23に示した。
この結果、酵素糖化液のpHを酸性に低下させて精密濾過膜でクロスフロー濾過したほうが、工程(3)のナノ濾過膜を用いた濾過の際の膜透過流束が高くなり、糖溶液の濃縮における長期運転性が向上したことが判明した。
一方、実施例1の工程(1)で得た水熱処理糖化液(pH5.0)を実施例1の工程(2)と同じく多孔性精密濾過膜でクロスフロー濾過した後に、硫酸又は水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを3.0、4.0、4.5、5.0(未調整)、7.0に変化させた5種の糖溶液(濾過後pH変化)を用いて、工程(3)として、各糖溶液を、実施例1と同様に、“UTC−60”の平膜を切り出しセットして、操作圧力が3MPaの操作圧力で、温度25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過し、糖濃度4倍となるように濾過を行った。4倍となる点での膜透過流束を表24に示した。
以上の結果、pHの同じ表23の結果(濾過前pH変化)と表24の結果(濾過後pH変化)とを比較すると、工程(2)の精密濾過膜によるクロスフロー濾過を行った後で酵素糖化液のpHを変化させた場合よりも、酵素糖化液のpHを変化させてから工程(2)の多孔性精密濾過膜によるクロスフロー濾過処理を行った方が、工程(3)のナノ濾過膜を用いたの糖溶液の濃縮において、膜の長期運転性が向上することが判明した。
さらに、酵素糖化液のpHを変化させてから工程(2)の精密濾過膜によるクロスフロー濾過処理を行った場合(表23)について、工程(3)で得られた糖液中の発酵阻害物質の成分濃度を表25に示した。この結果から、pHを酸性に変化させることにより、ギ酸や酢酸などの有機酸濃度を低下させることが可能であることがわかった。
(実施例8)
工程(1)として、セルロース含有バイオマスとして稲藁を使用し、これを以下のようにしてアンモニア処理(前処理)して酵素糖化液を得た。稲藁を小型反応器(耐圧硝子工業製、TVS−N2 30ml)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、稲藁を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバス中にて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで真空引きし、アンモニア処理物を乾燥させた。このアンモニア処理物(前処理物)に固形分濃度が15重量%となるように純水を混合して攪拌した後、硫酸を加えて、pHを5付近に調整した。この混合液に、糖化酵素としてトリコデルマセルラーゼ(シグマ・アルドリッチ・ジャパン)及びノボザイム188(アスペルギルスニガー由来βグルコシダーゼ製剤、シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を添加し、50℃で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、アンモニア処理糖化液(酵素糖化液)を得た。
以上のようにして得た酵素糖化液を、遠心分離(1500G、2分)を行い、工程(2)として、実施例1と同様にして多孔性精密濾過膜を用いたクロスフロー濾過を行い、固形分を分離除去した糖溶液を得た。この糖溶液を分子量10000の限外濾過膜(GE製PWシリーズ)を用いて膜非透過側の液量が処理前の10分の1になるまでろ過し、糖溶液より糖化酵素を除去した。
上記のように限外濾過膜処理をした糖溶液に対して、硫酸を入れてpHを3.0に変化させたもの、5.0のままのもの、および水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを7.0に変化させたもの3種を用意し(濾過前pH変化)、それぞれの糖溶液について工程(2)として、実施例1と同様にして多孔性精密濾過膜を用いたクロスフロー濾過を行った。得られた3種の各糖溶液について、工程(3)として、実施例1と同様に、東レ株式会社製ナノ濾過膜“SU−610”に使用されている“UTC−60”の平膜を切り出しセットして、操作圧力が5MPaの操作圧力で、温度を25℃で各糖溶液をナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過した。それぞれ糖濃度が糖溶液の3倍となるように濾過を行った。3倍となった時点での膜透過流束を表26に示した。
一方、上記のようにして得た限外濾過膜処理をした酵素糖化液(pH5.0)に対して、工程(2)として、実施例1と同様にして多孔性精密濾過膜を用いたクロスフロー濾過を行った後に、得られた糖溶液に硫酸又は水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを3.0、7.0に変化させた糖溶液(濾過後pH変化)を用いて、工程(3)として、各糖溶液を、実施例1と同様に、“UTC−60”の平膜を切り出しセットして、操作圧力が5MPaの操作圧力で、温度を25℃でナノ濾過膜に供給してクロスフロー濾過し、糖濃度3倍となるように濾過を行った。3倍となる点での膜透過流束を表27に示した。
以上の結果、pHの同じ表26の結果と表27の結果とを比較すると、前処理としてアンモニア処理を行った酵素糖化液の場合においても、pHを変化させてから工程(2)の多孔性精密濾過膜によるクロスフロー濾過処理を行った方が、工程(3)のナノ濾過膜を用いた糖溶液の濃縮において、膜の長期運転性が向上することが判明した。
本実施例においては、限外濾過膜工程後にpHを変化させたが、pH変化させて精密濾過膜処理する工程は、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜による濾過を行う前であれば特に限定されない。本実施例において、例えば限外濾過膜工程前に行ってもよい。また、pH変化と精密濾過膜処理の間に別工程があってもよい。例えば、酵素糖化後にpH変化を行った後、遠心分離処理を行い、精密濾過膜処理を行ってもよい。前記の工程にすることで、精密濾過膜又は限外濾過膜への目詰まり物質の濃度を低下させて、膜の長期運転性が向上すると言える。
1 酵素糖化槽
2 糖化酵素供給部
3 加水・排液制御部
4 粘度計
5 加水口
6 排出口
7 整流板
8 精密濾過膜ユニット
9 散気管
10 膜分離槽
11 糖液精製部(ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜)
12 酸供給部
13 pH計
14 固液分離手段
15 固液分離制御部
16 酵素糖化・膜分離槽
17 前処理物供給部
18 限外濾過膜供給槽
19 限外濾過膜ユニット
20 回収酵素戻しライン
21 糖濃縮槽

Claims (7)

  1. セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法であって、
    セルロース含有バイオマスを前処理して得られた前処理物に糖化酵素を添加して酵素糖化液を得る工程(1)、
    工程(1)で得られる酵素糖化液を、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜に通じてクロスフロー濾過し、膜透過画分として糖溶液を得る工程(2)、
    工程(2)で得られる糖溶液をナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜に通じて濾過し、膜非透過画分として精製された糖液を得る工程(3)、
    を含み、
    工程(1)において、前処理が水熱処理であり、熱水可溶分を含む前処理物を使用する、糖液の製造方法。
  2. 工程(2)において、クロスフロー濾過する前又はクロスフロー濾過中に加水処理を行う、請求項1に記載の糖液の製造方法。
  3. 工程(2)において、クロスフロー濾過する前又はクロスフロー濾過中に、酵素糖化液のMLSS濃度が40000mg/L以下となるように加水処理を行う、請求項1又は2に記載の糖液の製造方法。
  4. 工程(2)において、酵素糖化液のpHを変化させた後でクロスフロー濾過する、請求項1から3のいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
  5. 工程(1)の酵素糖化液の固形物含有が0.1%以上10%以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
  6. 工程(2)の前工程として、工程(1)で得られる酵素糖化液に、遠心分離、沈降分離及び浮上分離から選ばれる1以上の固液分離処理を行う、請求項1からのいずれか1項に記載の糖液の製造方法。
  7. セルロース含有バイオマスから糖液を製造する装置であって、
    セルロース含有バイオマスを供給する前処理物供給部と、糖化酵素を供給する糖化酵素供給部とを有する酵素糖化槽、
    酵素糖化液の粘度を測定する粘度計と、酵素糖化液の粘度測定値に応じて加水及び/又は排液を行う加水・排液制御部と、平均細孔径が0.25μm以下の多孔性精密濾過膜とを有し、酵素糖化槽で得られた酵素糖化液をクロスフロー濾過して膜透過画分として糖溶液を得る膜分離槽、及び
    ナノ濾過膜及び/又は逆浸透膜を有し、膜分離槽で得られた糖溶液を濾過して膜非透過画分として精製された糖液を得る糖液精製部、
    を備え、前処理物が水熱処理物である、糖液の製造装置。
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