JP5715468B2 - 機械的特性の安定性に優れた高強度鋼板の製造方法 - Google Patents

機械的特性の安定性に優れた高強度鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車用等に用いられる加工性に優れた高強度鋼板の製造方法に関し、より詳しくは、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)にて高強度と成形性を安定的に兼備する溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法に関するものである。
自動車用足回り部品に供される溶融亜鉛めっき鋼板は燃費改善を目的として軽量化を実現するため、高強度化が求められている。そのためには、鋼板強度を980MPa級以上に高強度化しつつも、プレス成形性を確保することが求められている。
980MPa級以上の高強度鋼板において、高強度化と成形性を両立させるためにはTRIP効果を活用した鋼を用いることが有効なことが知られている。しかしながら、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)においては、ベイナイト変態を利用して残留オーステナイト(以下、「残留γ」と略記することあり。)を作りこむためのオーステンパ処理の時間が長くとれないため、高強度化と成形性を両立した溶融亜鉛めっき鋼板を安定的に製造することは容易でない。
短時間のオーステンパ処理により高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法としては、例えば特許文献1および2に開示がある。この特許文献1および2に記載された高強度鋼板は、ベイナイトを主相とし、残留γを3〜50質量%含有し、残部がフェライトからなるものであり、その実施例で500〜460℃×30sという短時間のオーステンパ処理により、引張強度980MPa級で伸びが23%程度と良好な機械的特性(以下、単に「特性」ともいう。)が得られることが示されている。しかしながら、いずれもフェライトが体積分率で20%以上含まれているため、このような高い分率のフェライト導入によりオーステナイト中にCやMn等が濃化し、その結果ベイナイト変態が遅延するため、30s程度の短時間のオーステンパ処理ではベイナイト変態が停留段階に到達する前段階(後記参照)にあると考えられ、安定的に良好な特性を備えた溶融亜鉛めっき鋼板を製造することは困難であると想定される。なお、前記「ベイナイト変態の停留段階」とは、ベイニティック・フェライトの形成およびそれに伴うオーステナイトへの炭素濃化(高炭素化)の段階と、オーステナイトがフェライトおよびセメンタイトへと分解する段階との間の段階である。この停留段階から冷却することで鋼中の残留γの分率は最大化し、かつ、その後に行われる鋼板製造に係る処理工程においてもその量はほとんど変化しない。
特開2004−18970号公報 特開2004−18971号公報
そこで本発明の目的は、機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.3%、
Si:0.5〜3%、
Mn:1.0〜3%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.01%以下(0%を含む)、
Al:0.01〜0.1%、
N:0.0052〜0.03%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるとともに、
AlN=0.015%−Ac≧50を満たす成分を有する鋼材を、
熱間圧延した後、30〜70%の冷延率で冷間圧延を行い、
Ac〜TAlN=0.015%℃の均熱温度で10〜1800s保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で350〜500℃まで冷却し、350〜500℃の温度域で10〜100s保持しつつ溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却することを特徴とする、
引張強度TSと伸びELが、「980MPa≦TS<1180MPaでかつEL≧17%」、または、「TS≧1180MPaでかつEL≧14%」を満たす、
機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
ただし、
AlN=0.015%=7010/[1.68−log{([Al]−0.0099)・([N]−0.0051)}]−273
Ac=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]−15.2[Ni]+31.5[Mo]−11[Cr]−20[Cu]
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
請求項2に記載の発明は、
前記鋼材の成分組成が、更に、
Cr:0.01〜3%、
Mo:0.01〜1%、
Cu:0.01〜2%、
Ni:0.01〜2%、
B:0.00001〜0.01%
の1種または2種以上を含むものである
請求項1に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記鋼材の成分組成が、更に、
Ca:0.0005〜0.01%、
Mg:0.0005〜0.01%、
REM:0.0001〜0.01%
の1種または2種以上を含むものである
請求項1または2に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却する前に、480〜600℃の温度で1〜100s再加熱して合金化処理を行う
請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
本発明によれば、鋼中のNとAlの含有量を特定の成分範囲で制御するとともに、均熱温度をオーステナイト単相域であるAc点以上の特定の温度範囲で制御することで、炉の加熱状況やラインスピードの変化等により均熱温度が多少変動してもオーステナイト中におけるAlNの析出量を確保してこのAlN粒子のピン止め作用を有効に発揮させることにより該オーステナイト粒の粗大化を抑制して微細化したうえで、このオーステナイト単相化後にオーステンパ温度まで急冷することで、フェライトの生成を抑制して上記オーステナイト中へのCやMn等の濃化を抑制し、これにより従来よりも短時間のオーステンパ処理で、オーステナイトからのベイナイト変態の停留段階に達するため、所望量の残留γを確保でき良好な鋼板特性が得られるとともに、このように変態停留段階を利用するため、鋼板特性のオーステンパ時間依存性が低減し、ラインスピード等の製造条件の変動に対して鋼板特性が安定化する。
本発明者らは、CGLにおける短時間のオーステンパ処理でも鋼板特性を安定化させるには、オーステナイトからのベイナイト変態を促進させて従来よりも短時間で該変態の停留段階に到達させる必要があり、そのためには、該変態直前において、該オーステナイトを微細化するとともに、該オーステナイト中へのCやMn等の濃化を抑制する必要があると考えた。
そして、まず、上記オーステナイト中へのCやMn等の濃化を抑制するためには、均熱時およびその後の冷却中におけるフェライトの生成を抑制する必要があり、このためには、均熱温度をオーステナイト単相域とし、その後オーステンパ温度までを急冷すればよいと考えた。
つぎに、オーステナイト単相域加熱に際して上記オーステナイトを粗大化させることなく微細化するためには、オーステナイト粒の成長に対してピン止め作用を有するAlN粒子(鉄鋼便覧 第4版 第3巻(1)、社団法人日本鉄鋼協会、平成14年7月、7章9節1項参照)の活用が有効であることから、均熱の際にピン止め作用を有効に発揮しうるAlN析出量を確保できるような成分組成範囲および均熱温度範囲を特定すればよいと考えた。
本発明者らは、上記考察に基づき、さらに検討を進めた結果、鋼の成分組成を質量%で(以下、化学組成について同じ。)、Al:0.01〜0.1%、N:0.0052〜0.03%、TAlN=0.015%−Ac≧50(ここに、TAlN=0.015%は、AlNが0.015%析出する平衡温度である。)としたうえで、Ac〜TAlN=0.015%℃の均熱温度で処理した後、10℃/s以上で急冷することで、フェライトの生成を抑制しつつ、均熱時にAlNの析出量を確保してそのピン止め作用によりオーステナイトを微細化できることを見出した。
上記知見に基づき完成させた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係る発明(本発明)は、
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.05〜0.3%、
Si:0.5〜3%、
Mn:1.0〜3%、
P:0.1%以下(0%を含む)、
S:0.01%以下(0%を含む)、
Al:0.01〜0.1%、
N:0.0052〜0.03%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるとともに、
AlN=0.015%−Ac≧50を満たす成分を有する鋼材を、
熱間圧延した後、30〜70%の冷延率で冷間圧延を行い、
Ac〜TAlN=0.015%℃の均熱温度で10〜1800s保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で350〜500℃まで冷却し、この温度で10〜100s保持しつつ溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却することを特徴とする。
ただし、
AlN=0.015%=7010/[1.68−log{([Al]−0.0099)・([N]−0.0051)}]−273
Ac=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]−15.2[Ni]+31.5[Mo]−11[Cr]−20[Cu]
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
本発明により、CGLにおいて、炉の加熱状況やラインスピード等の製造条件が変動しても、安定した機械的特性を有する溶融亜鉛めっき鋼板が製造できるようになった。
以下、本発明を特徴付ける要件について、その設定根拠を順次説明する。
まず、本発明の製造方法で使用する鋼材の成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。
〔鋼材の成分組成〕
Al:0.01〜0.1%
AlはNと結合してAlNを形成することで、そのピン止め作用により均熱時のオーステナイト粒の成長を抑制して微細化を促進し、機械的特性の安定化に寄与する重要な元素である。0.01%未満ではAlNの形成量が不足し、上記オーステナイト粒粗大化抑制作用を有効に発揮できない。一方、0.1%を超えて含有させるとAlNが粗大化してその分散状態が低密度となりオーステナイト粒の成長抑制効果が劣化することに加え、オーステナイト単相化温度(Ac点)が高くなりすぎて製造が困難になるため0.1%を上限とする。
N:0.0052〜0.03%
NはAlと結合してAlNを形成することで、均熱時のオーステナイト粒の成長を抑制し、機械的特性の安定化に寄与する重要な元素である。0.0052%未満ではAlNの形成量が不足し、上記オーステナイト粒粗大化抑制作用を有効に発揮できない。一方、0.03%を超えると、鋳造時にブローホールが発生するなど製造が難しくなるため0.03%を上限とする。
AlN=0.015%−Ac≧50・・・式(1)
ただし、
AlN=0.015%=7010/[1.68−log{([Al]−0.0099)・([N]−0.0051)}]−273・・・式(2)
Ac=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]−15.2[Ni]+31.5[Mo]−11[Cr]−20[Cu]・・・式(3)
(式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
上記式(2)のTAlN=0.015%は、AlN析出量が0.015質量%となる平衡温度である。したがって、上記式(1)は、AlN析出量が0.015質量%となる平衡温度とAc点との差を50℃以上とすることを意味している。つまり、この式(1)を満足するように、鋼材の成分組成を調整することにより、ピン止め作用を有効に発揮しうるAlN析出量(0.015質量%)を確保するのに必要な平衡温度とAc点との差を十分に(50℃以上)とることができ、均熱の際における加熱温度の管理が容易となるので、オーステナイト単相域加熱を行いつつ、所望のAlN析出量を確保することが容易に実現できる。
ここで、上記式(2)は、第3版 鉄鋼便覧,第I巻, 基礎, p.418の図7・58中に示された、オーステナイト中のAlNの溶解度積の温度依存性のグラフ([Al]・[N]の直線)を定式化し、その式に析出AlNが0.015質量%存在するという条件を代入し以下に示すようにして導出したものである。
すなわち、上記[Al]・[N](なお、本願明細書中における各元素の全含有量を意味する[ ]との混同を避けるため、同図中の[Al]、[N]をそれぞれ《Al》、《N》と表示する。)の直線のグラフを定式化すると、
log(《Al》・《N》)=1.68−7010/T・・・式(4)
(ただし、《Al》:固溶Al濃度(質量%)、《N》:固溶N濃度(質量%)、T:温度(K))
となる。
ここで、Alの原子量は27、Nの原子量は14であるので、析出量0.015質量%のAlN中には、Alは0.015×27/(27+14)=0.0099質量%、Nは0.015×14/(27+14)=0.051質量%、それぞれ存在する。したがって、析出AlNが0.015質量%存在するという条件下においては、《Al》=[Al]−0.0099、《N》=[N]−0.051、T=TAlN=0.015%+273となる。これらを上記式(4)に代入すると、
log{([Al]−0.0099)・([N]−0.051)}=1.68−7010/(TAlN=0.015%+273)・・・式(4’)
が得られる。この式(4’)を変形することにより、
AlN=0.015%=7010/[1.68−log{([Al]−0.0099)・([N]−0.0051)}]−273
が得られ、上記式(2)が導出された。
ここで、上記式(2)の導出過程でピン止め作用を有効に発揮しうるAlN析出量を「0.015質量%」としたのは、AlおよびNの含有量ならびに冷延後のオーステナイト単相化温度を種々変化させて、オーステナイト単相からの焼入れ材を作成し、抽出残渣分析によるAlNの析出量とオーステナイト粒径との関係を調査した結果、AlNの析出量が0.015質量%以上存在すれば、所望のオーステナイト粒径が得られることを実験的に確認したことに基づく。
また、上記式(3)は、レスリー鉄鋼材料学,丸善,(1985),p.273に記載されているものを用いた。
C:0.05〜0.3%
Cは、高強度を確保しつつ、所望の主要組織(ベイニティック・フェライト+マルテンサイト+γR)を得るために必須の元素であり、このような作用を有効に発揮させるためには0.05%以上(好ましくは0.10%以上)添加する必要がある。ただし、0.3%超では溶接に適さない。
Si:0.5〜3%
Siは、γRが分解して炭化物が生成するのを有効に抑制する元素である。特にSiは、固溶強化元素としても有用である。このような作用を有効に発揮させるためには、Siを0.5%以上添加する必要がある。好ましくは0.7%以上、より好ましくは1.0%以上である。ただし、Siを3%を超えて添加すると、ベイニティック・フェライト+マルテンサイト組織の生成が阻害される他、熱間変形抵抗が高くなって溶接部の脆化を起こしやすくなり、さらには鋼板の表面性状にも悪影響を及ぼすので、その上限を3%とする。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
Mn:1〜3%
Mnは、固溶強化元素として有効に作用する他、変態を促進してベイニティック・フェライト+マルテンサイト組織の生成を促進する作用も発揮する。さらにはγを安定化し、所望のγRを得るために必要な元素である。また、焼入れ性の向上にも寄与する。このような作用を有効に発揮させるためには、1.0%以上添加することが必要である。好ましくは1.5%以上、より好ましくは1.8%以上である。ただし、3%を超えて添加すると、鋳片割れが生じる等の悪影響が見られる。好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.5%以下である。
P :0.1%以下(0%を含む)
Pは不純物元素として不可避的に存在するが、所望のγRを確保するために添加してもよい元素である。ただし、0.1%を超えて添加すると二次加工性が劣化する。より好ましくは0.03%以下である。
S :0.01%以下(0%を含む)
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となって加工性を劣化させる元素である。好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.005%以下である。
以上が本発明の製造方法で使用する鋼材を規定する必須の含有元素であって、残部は鉄および不可避的不純物である。また、さらに以下に示す元素を積極的に含有させることも有効であり、含有される化学成分(元素)の種類によって本発明の製造方法で製造される高強度鋼板の機械的特性がさらに改善される。
Cr:0.01〜3%
Mo:0.01〜1%、
Cu:0.01〜2%、
Ni:0.01〜2%、
B :0.00001〜0.01%の1種または2種以上
これらの元素は、鋼の強化元素として有用であるとともに、γRの安定化や所定量の確保に有効な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、Cr:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、Mo:0.01%以上(より好ましくは0.02%以上)、Cu:0.01%以上(より好ましくは0.1%以上)、Ni:0.01%以上(より好ましくは0.1%以上)、B:0.00001%以上(より好ましくは0.0002%以上)を、それぞれ添加することが推奨される。ただし、Crは3%、Moは1%、CuおよびNiはそれぞれ2%、Bは0.01%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはCr:2.0%以下、Mo:0.8%以下、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、B:0.0030%以下である。
Ca :0.0005〜0.01%、
Mg :0.0005〜0.01%、
REM:0.0001〜0.01%の1種または2種以上
これらの元素は、鋼中硫化物の形態を制御し、加工性向上に有効な元素である。ここで、本発明に用いられるREM(希土類元素)としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。上記作用を有効に発揮させるためには、CaおよびMgはそれぞれ0.0005%以上(より好ましくは0.0001%以上)、REMは0.0001%以上(より好ましくは0.0002%以上)添加することが推奨される。ただし、CaおよびMgはそれぞれ0.01%、REMは0.01%を超えて添加しても上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄である。より好ましくはCaおよびMgは0.003%以下、REMは0.006%以下である。
次に、本発明の製造方法における製造条件について以下に説明する。
〔製造条件〕
本発明の製造方法で製造される鋼板は、まず、上記成分組成を有する鋼材を熱間圧延(以下、「熱延」と略称することあり。)し、ついで冷間圧延(以下、「冷延」と略称することあり。)した後、熱処理とともに溶融亜鉛めっき処理を施し、さらに必要によりめっき層を合金化処理して製造する。つまり、本発明の製造方法で製造される鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板のみならず、合金化溶融亜鉛めっき鋼板をも含むものである。
[熱延条件]
本発明の製造方法では、後段の熱処理工程の均熱時においてAlNのピン止め作用により微細なオーステナイト組織を得るようにしているため、熱延工程では熱延組織の微細化を考慮する必要はなく、熱延負荷および冷延負荷ができるだけ小さくなるような熱延条件を適宜選択すればよい。
[冷延条件]
熱延終了後は酸洗してから冷延を行うが、冷延率は30〜70%とするのがよい。冷延率を30%以上に高くすると、ひずみがオーステナイトの核生成サイトとなり、オーステナイトの微細化に寄与するが、冷延率を70%超に高くしすぎると、設備の負荷が過大になり生産性が低下する。
[熱処理条件]
冷延終了後、熱処理を行うが、その熱処理条件として、Ac〜TAlN=0.015%℃の均熱温度で10〜1800s保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で350〜500℃の冷却停止温度まで冷却し、350〜500℃の温度域(オーステンパ温度)で10〜100s保持しつつ溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却する。
あるいは、溶融亜鉛めっき処理を施した後、必要により、さらに480〜600℃で1〜100s保持して合金化処理してから冷却してもよい。
<均熱温度:Ac〜TAlN=0.015%℃、保持時間:10〜1800s>
オーステナイト単相域で、AlNが所定量(0.015質量%)以上析出しうる温度範囲で一定時間加熱保持することにより、AlNによるピン止め作用が有効に発揮されて微細なオーステナイト組織を得ることができる。均熱温度がAc未満では、フェライトとオーステナイトの2相組織となり、オーステナイト中にCやMn等が濃化し、短時間のオーステンパ処理ではベイナイト変態の停留段階に達しない。一方、均熱温度がTAlN=0.015%℃を超えると、AlNの析出量が0.015質量%に満たず、ピン止め作用が十分に発揮されず、オーステナイトが粗大化し、その結果、やはり短時間のオーステンパ処理ではベイナイト変態の停留段階に達しない。
また、保持時間は短すぎるとオーステナイト単相化が不十分となり、一方保持時間が長くなりすぎると生産性が極端に悪化するので、保持時間は10〜1800sとする。
<平均冷却速度:10℃/s以上>
上記オーステナイト単相域からオーステンパ温度までの冷却過程において、オーステナイトからフェライトが生成するのを抑制し、オーステナイト中へのCやMn等の濃化を防止するため、急冷する。上述のように、オーステナイト粒が微細なため、冷却過程でフェライトが生成しやすい状態にあり、10℃/s以上の平均冷却速度が必要となる。好ましくは20℃/s以上、さらに好ましくは30℃/s以上である。
<冷却停止温度:350〜500℃>
短時間のオーステンパ処理でベイナイト変態の停留段階に到達させるには、ベイナイト変態(TTT線図)のノーズ付近でオーステンパ処理することが必要なため、冷却停止温度(オーステンパ温度に相当)を350〜500℃とする。好ましくは380〜470℃、さらに好ましくは420〜460℃である。
<350〜500℃の温度域で10〜100s保持>
この工程でオーステンパ処理を行いつつ溶融亜鉛めっきを施す。オーステンパ時間は、短すぎるとベイナイト変態の停留段階に到達せず、一方長くなりすぎると残留γの分解が開始し、特性が劣化するため、10〜100sとする。
<必要により、さらに480〜600℃で1〜100s保持>
溶融亜鉛めっき層を合金化するため、オーステンパ温度より高い温度で加熱する。保持時間は、短すぎると合金化が不十分となり、一方長くなりすぎると残留γの分解が開始し特性が劣化するので、1〜100sとする。
〔鋼板の組織〕
上記の製造方法で製造された鋼板の組織としては、旧オーステナイト粒径を円相当直径で15μm以下にすることが好ましい。旧オーステナイト粒径を微細化することで、オーステンパ処理においてベイニティック・フェライトの形成を促進させ、短時間でベイナイト変態の停留段階まで到達させて、鋼板特性の製造条件の変動に対する安定性を高めることができる。好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。なお、旧オーステナイト粒径は、オーステナイト単相化の後、焼入れ法にて測定することができる。
下記表1に示す各成分組成からなる供試鋼を溶製し、板厚30mmのスラブとした後、このスラブを1200℃に加熱し、圧延終了温度(FDT)950℃、巻取り温度650℃で熱間圧延・巻取りを模擬した。その後、冷延率r%で冷間圧延して板厚1.2mmの冷延材が得られるようにした。
そして、各冷延材に対し、下記表2〜表6に示す熱処理条件で熱処理を施した。具体的には、ソルトバスで、上記冷延材を、均熱温度T1℃まで加熱してその温度で90s保持した後、CR1℃/sの冷却速度で冷却停止温度(オーステンパ温度)T2まで冷却し、その温度でt2秒保持した後、空冷するか、もしくは、冷却停止温度(オーステンパ温度)T2℃でt2秒保持した後、さらに保持温度(合金化温度)T3℃でt3秒保持したのち、空冷した。
このようにして得られた各鋼板について、上記[発明を実施するための形態]の項で説明した測定方法により、旧オーステナイト粒径を測定した。
また、上記各鋼板について、機械的特性として、引張強度(TS)と伸び(EL)を測定したが、これらの測定は、圧延方向と直角方向に長軸をとってJIS Z 2201に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241に従って測定を行った。
製造条件の変動による鋼板特性のばらつき度合いへの影響を評価するため、製造条件が異なるそれぞれ一組の実験結果について、TSおよびELそれぞれのばらつき幅(=最大値−最小値)ΔTSおよびΔELを求めた。
〔試験1〕均熱温度T1の変動による鋼板特性のばらつきへの影響
まず、下記表2および表3に、製造条件のうち均熱温度T1だけを目標温度から高温側および低温側にそれぞれ25℃ずつ変化させた場合における鋼板特性のばらつきを評価した結果を示す。
ここで、均熱温度T1の目標温度としては、Ac点とTAlN=0.015%℃のほぼ中間の温度を採用した。また、目標温度から高温側および低温側にそれぞれ25℃ずつ変化させたのは、実機CGLにおける均熱温度の変動幅が最大50℃(目標温度±25℃)程度であるので、それを模擬したものである。
〔試験2〕オーステンパ時間t2の変動による鋼板特性のばらつきへの影響
つぎに、下記表4および表5に、製造条件のうちオーステンパ時間t2だけを、溶融亜鉛めっき工程での鋼板の滞在時間の範囲にほぼ相当する15〜90sの範囲で変化させた場合における鋼板特性のばらつきを評価した結果を示す。
〔試験3〕種々の製造条件の変動による鋼板特性のばらつきへの影響
さらに、下記表6に、表1の鋼種Bを対象に、製造条件を種々変化させた場合における鋼板特性のばらつきを評価した結果を示す。
(試験結果)
下記表2〜表6に示す結果から明らかなように、本発明で規定する、鋼材の成分組成および製造条件(冷延条件+熱処理条件)をともに充足する条件で高強度鋼板を製造した場合(鋼No.1−1〜3、1−5、1−6、1−11〜16、1−18、1−19、1−22、鋼No.2−1〜3、2−5、2−6、2−11〜16、2−18、2−19、2−22、鋼No.3−5、3−7、3−8、3−13)、製品鋼板のTSおよびEL、ならびに、これらのばらつき幅ΔTSおよびΔELは、すべて合格基準を満たし(判定:○)、鋼板特性を確保しつつそのばらつきが確実に低減されることが確認できた。
これに対し、本発明で規定する、鋼材の成分組成および製造条件の少なくともいずれかを充足しない条件で高強度鋼板を製造した場合(鋼No.1−4、1−7〜10、1−17、1−20、1−21、鋼No.2−4、2−7〜10、2−17、2−20、2−21、鋼No.3−1〜4、3−6、3−12)、条件によってはたまたま鋼板特性とそのばらつきが合格基準を満足することもあるが(鋼No.2−17)、総体的には合格基準を満足しない場合(判定:×)がほとんどであることがわかる。
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Claims (4)

  1. 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
    C:0.05〜0.3%、
    Si:0.5〜3%、
    Mn:1.0〜3%、
    P:0.1%以下(0%を含む)、
    S:0.01%以下(0%を含む)、
    Al:0.01〜0.1%、
    N:0.0052〜0.03%
    を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるとともに、
    AlN=0.015%−Ac≧50を満たす成分を有する鋼材を、
    熱間圧延した後、30〜70%の冷延率で冷間圧延を行い、
    Ac〜TAlN=0.015%℃の均熱温度で10〜1800s保持した後、10℃/s以上の平均冷却速度で350〜500℃まで冷却し、350〜500℃の温度域で10〜100s保持しつつ溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却することを特徴とする、
    引張強度TSと伸びELが、「980MPa≦TS<1180MPaでかつEL≧17%」、または、「TS≧1180MPaでかつEL≧14%」を満たす、
    機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
    ただし、
    AlN=0.015%=7010/[1.68−log{([Al]−0.0099)・([N]−0.0051)}]−273
    Ac=910−203√[C]+44.7[Si]−30[Mn]+700[P]+400[Al]−15.2[Ni]+31.5[Mo]−11[Cr]−20[Cu]
    (式中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を意味する。)
  2. 前記鋼材の成分組成が、更に、
    Cr:0.01〜3%、
    Mo:0.01〜1%、
    Cu:0.01〜2%、
    Ni:0.01〜2%、
    B:0.00001〜0.01%
    の1種または2種以上を含むものである
    請求項1に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼材の成分組成が、更に、
    Ca:0.0005〜0.01%、
    Mg:0.0005〜0.01%、
    REM:0.0001〜0.01%
    の1種または2種以上を含むものである
    請求項1または2に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記溶融亜鉛めっき処理を施した後、冷却する前に、480〜600℃の温度で1〜100s再加熱して合金化処理を行う
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械的特性の安定性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

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