JP5707230B2 - プロセスの状態予測方法 - Google Patents
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Description
一方、稀にしか発生しないようなケースを要求点ベクトルとした場合には、近傍データベクトルの数が多くなり過ぎると、関連性の低いデータベクトルまで使用して局所モデルを構築することになる。例えば、特許文献1、2に記載されたプロセスの状態予測方法では、ステップワイズ法で選択した変数について、予め設定した数(特許文献2では6個)だけ要求点の近傍データベクトルを取得しているため、予測精度が不安定であった。
前記近傍データベクトルが格納された近傍データベクトル集合を該近傍データベクトルの数を変えて複数作成する工程と、前記複数の近傍データベクトル集合について主成分分析を実施して該各近傍データベクトル集合ごとに前記要求点ベクトルに対するQ統計量を算出する工程と、前記Q統計量が最小となる前記近傍データベクトル集合を選択して前記局所モデルを構築する工程とを備えることを特徴としている。
先ず、本発明の一実施の形態に係るプロセスの状態予測方法の概略手順を以下に示す。
(A1)プラント設備におけるプロセスの操業状態を示す観測データから構成される入力ベクトル及び出力ベクトルが対となったデータベクトルが蓄積されたデータベースを作成する。
(A2)予測したい時点における出力ベクトルに対応する入力ベクトルからなる要求点ベクトルに類似するデータベクトルを近傍データベクトルとしてデータベースから少なくとも1つ以上取得する。そして、近傍データベクトルが格納された近傍データセット(近傍データベクトル集合)を近傍データベクトルの数(以下では、単に「近傍データ数」と記載する。)を変えて複数作成する。
(A3)複数の近傍データセットについて主成分分析を実施して各近傍データセットごとに要求点ベクトルに対するQ統計量を算出し、Q統計量が最小となる近傍データセットを選択して局所モデルを構築する。そして、当該局所モデルを用いて、予測したい時点における出力ベクトルの推定値を得る。
[JITモデリング]
現在の挙動と近似した挙動が過去に観測されていたならば、現在の挙動が進展する様子は過去のものと近似したものになるであろうと考えることができる。この考え方を再現した予測手法の1つがJust-In-Time(JIT)モデリングである。JITモデリングは決まったモデルを持たない代わりに、過去のデータベクトルをそのままデータベースとして保持する。プロセスの予測が必要となったとき、過去データが蓄積されたデータベースから、要求点ベクトルと類似性の高いデータベクトルを検索し、局所モデルを構築して出力の推定を行う手法である。
ステップワイズ法は、目的変数に対する影響(寄与率)が小さい説明変数を除外するものであり、変数増加ステップと変数減少ステップとから構成される。以下、ステップワイズ法の手順について説明する。
(B3)最大のF値が、前もって決めているFin以上である場合は、その説明変数を現モデルに追加する。最大のF値がFin未満の場合は、ステップワイズ法による選択手順を終了する。
(B5)最小のF値が、前もって決めているFout(Fin≧Fout)未満である場合は、その説明変数を現モデルから削除する。説明変数を削除した場合は、(B4)、(B5)を繰り返し、さらに他の説明変数が削除できないか探索する。最小のF値がFout以上の場合は、(B2)のステップに戻る。
主成分分析は、データの特徴抽出及び低次元化を目的とする多変量解析手法であり、変数間の相関関係を捉えるため、変数の線形結合によって得られる主成分と呼ばれる合成変数を使用する。主成分分析では、データを最も良く表現できる方向に第1主成分を設定し、第1主成分と直交する空間上で、第1主成分では表現できないデータの変動を最も良く表現できる方向に第2主成分を設定するという手順で、主成分を次々と設定していく。ここで、データを最も良く表現する方向というのは、主成分得点の分散が最大となる方向という意味である。また、主成分得点とは、主成分が張る部分空間へデータを射影した値である。
Q統計量は、データベクトルのうち、主成分によって張られる部分空間では表現できない部分を表す。Q統計量は二乗予測誤差とも呼ばれ、以下のように定義されている。
N行×M列のデータ行列Xがあるものとする。ここで、Mは変数の数、Nはサンプル数であり、各変数は標準化されている。
データ行列Xを特異値分解すると次式のようになる。
第r主成分得点trは(10)式で与えられ、第R主成分得点までをまとめて表現すると、(11)式となる。
続いて、図1のフローチャートに基づいて本実施の形態に係るプロセスの状態予測方法の手順について詳細に説明する。
(C1)プラント設備におけるプロセスの操業状態を示す観測データから構成される入力ベクトルxk及び出力ベクトルykのデータベクトルの組(xk,yk)(k=1,2,…)が蓄積された大規模データベース10を作成する。
(C2)大規模データベース10について、ステップワイズ法を用いて目的変数に対する寄与率が高い変数を選択して当該変数からなる新たなデータベース11を作成する(ST1)。目的変数と説明変数の間に時間遅れが存在する可能性がある場合は、見込まれる最大の時間遅れ変数まで全て選択対象に加える。
作成されるデータベース11(データセット)の構成を図2に示す。このデータベース11では、入力変数の数がM個、出力変数の数がL個、各変数のサンプル数がK個とされている。各データは日時に応じたIDが付けられ、同じIDに属するデータは1つのデータベクトルとして扱われる。
(C4)データベース11に格納されている各データベクトルと要求点ベクトルとのベクトル間距離を(4)式や(5)式を用いて計算し、ベクトル間距離が小さいものから順にNNMAX個の近傍データベクトルを全て収集する。そして、収集した近傍データベクトルを、ベクトル間距離が近い順に近傍データセットAとして保存する(ST3)。図4に近傍データセットAの構成を示す。図4において「No.」が近傍データ数を表している。
(C5)近傍データセットAの中から近傍データ数(No.)が1〜NNMINまでの近傍データベクトルを選択して近傍データセットB0を作成する(ST4)。即ち、要求点ベクトルとのベクトル間距離が近いものから順にNNMIN個の近傍データベクトルを選択する。図5に近傍データセットB0の構成を示す。
(C7)要求点ベクトルxqが(14)式で表されるとすると、要求点ベクトルxqを再構築した再構築ベクトルx^qは、負荷量行列VRを用いて(15)式により算出される。従って、近傍データセットB0に対するQ統計量は、(16)式より得ることができる(ST6)。算出されたQ統計量は、図6に示すQ値テーブルに保存される。
(C9)一方、近傍データ数がNNMAX以上になった場合は、Q値テーブルに基づいて、Q統計量が最小となったデータセットBkをデータセットAから選択する。そして、データセットBkに対応する出力ベクトルを、データセットBkのIDに基づいてデータベース11から取得して、重回帰モデルや重み付き線形平均法などを用いて局所モデルを構築し、要求点ベクトルに対する出力の推定値を算出する(ST8)。
全ての変数に対してステップワイズ法を適用した場合、厖大な処理時間とコンピュータメモリが必要となると共に、不要な変数はモデリング精度低下の原因となる。そのため、予め炉頂ガス温度と関係があると考えられる説明変数を37個に絞った後、各変数の遅れ時間を0から50時間としてステップワイズ法による変数選択を実施した。その結果、27個の説明変数を選択し、1時間後の炉頂ガス温度の予測を行った。
一方、従来型LOMにおける近傍データ数は、試行錯誤的に最も良い結果が得られる数値とした。
なお、近傍データ数逐次可変型LOMも従来型LOMも、局所モデルの構築には重回帰モデルを使用した。
なお、図7以降において、目盛に表示されている「T」は基準温度を表している。即ち、基準温度Tからの変化量で表している。
これらの図から、近傍データ数を1200個とした場合には難しかった急激な温度上昇(時刻歴グラフの5時間目参照)が近傍データ数逐次可変型LOMでは捉えられていることがわかる。また、近傍データ数逐次可変型LOMでは、近傍データ数を1200個とした場合に比べて全体的な誤差も小さくなっている。
Claims (2)
- プラント設備におけるプロセスの操業状態を示す観測データから構成される入力ベクトル及び出力ベクトルが対となったデータベクトルが蓄積されたデータベースを作成し、予測したい時点における出力ベクトルに対応する入力ベクトルからなる要求点ベクトルに類似する前記データベクトルを近傍データベクトルとして前記データベースから少なくとも1つ以上取得し、前記近傍データベクトルから局所モデルを構築して、前記予測したい時点における出力ベクトルを推定するプロセスの状態予測方法において、
前記近傍データベクトルが格納された近傍データベクトル集合を該近傍データベクトルの数を変えて複数作成する工程と、前記複数の近傍データベクトル集合について主成分分析を実施して該各近傍データベクトル集合ごとに前記要求点ベクトルに対するQ統計量を算出する工程と、前記Q統計量が最小となる前記近傍データベクトル集合を選択して前記局所モデルを構築する工程とを備えることを特徴とするプロセスの状態予測方法 - 請求項1記載のプロセスの状態予測方法において、前記近傍データベクトルの数が異なる前記複数の近傍データベクトル集合を作成する際、前記要求点ベクトルとのベクトル間距離が近い前記近傍データベクトルから順に格納して前記近傍データベクトル集合を作成することを特徴とするプロセスの状態予測方法。
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