JP5701428B1 - 塗型構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳造欠陥である焼着欠陥や割れ欠陥の発生を効果的に抑制乃至は阻止し得ると共に、鋳造品の表面状態を改善し、凹凸のない良好な鋳肌を実現することの出来る塗型構造と、そのような塗型構造を有する鋳造用鋳型を提供すること。【解決手段】鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に、平均粒子径が2μm乃至15μmであるFe3O4微粒子を基材の少なくとも一つとして用い、そのようなFe3O4微粒子の全基材中の割合が10〜100重量%となるように調製された下塗り塗型剤にて下塗り塗型層を形成する一方、かかる下塗り塗型層の上に、前記Fe3O4微粒子を含む鉄酸化物とは異なる材質の耐火性基材であって、平均粒子径が15μmよりも大きなものを用いて得られる上塗り塗型剤にて、少なくとも0.5mm以上の塗膜厚みにおいて上塗り塗型層を形成して、塗型構造を構成した。【選択図】なし

Description

本発明は、鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に形成される鋳型構造に係り、特に、鋳造欠陥とされる焼着欠陥及び割れ欠陥を抑制する機能が有利に付与されてなる塗型構造に関するものである。
従来から、鋳造用鋳型は、耐火性粒子と有機系や無機系等の粘結剤とを用いて造形された後に、その金属溶湯との接触面(鋳型面)に、所定の塗型剤の塗布によって塗型層を形成することにより、作製されてきており、そしてその作製された鋳型へ、アルミニウムや鋳鉄、鋳鋼等の金属溶湯が注湯されて、その冷却・凝固が行われた後に、かかる鋳型を解体することで、目的とする鋳物(鋳造品)が得られることとなるのであるが、そのような工程に従って得られる鋳物には、鋳造欠陥と呼ばれる、鋳物表面や内部に欠陥が生じる場合があり、そしてそれらの鋳造欠陥は、鋳物品質や後処理工程に大きな影響を及ぼすこととなるところから、その低減乃至は抑制が切望されているのである。
ところで、そのような鋳造欠陥の主たるものとしては、焼着欠陥と割れ欠陥とが挙げられ、その中で、焼着欠陥は、物理的焼着と化学的焼着の2種類に分類されている。そこにおいて、物理的焼着は、金属溶湯が鋳型内に浸透、固着して惹起されるものであり、一方化学的焼着は、鋳型材と溶湯との界面で反応生成物を形成して、鋳肌に固着することにより、惹起されるものである。また、割れ欠陥は、凝固過程において固体と液体が共存する状態にある金属に応力が加わるとき、この状態の金属には延性がないところから、それによって惹起される亀裂に由来する欠陥である。
そして、それらの欠陥の対策として、従来においては、鋳型を構成する耐火性粒子である鋳物砂として、クロマイト砂、オリビン砂、ジルコン砂等の特殊砂を用いることが考えられているのであるが、そのような鋳物砂を用いても、充分な解決策となっていないのが、現状である。
なお、特開2011−230176号公報には、鋳物砂と共に、Fe34とFeOからなる球状酸化鉄を用いて、鋳型の造型を行うことにより、鋳造欠陥である焼着欠陥や割れ欠陥に対する抑制効果を発揮せしめ得ることが明らかにされているが、そのような球状酸化鉄の鋳物砂への添加は、バッチミキサーで用いる場合において、事前に必要重量を秤量した後、均一に混合せしめる必要があるところから、従来の混練作業よりも、時間と手間がかかることに加えて、鋳物砂全体に対する混合のために、必然的に、その使用量が大量となり、コスト上昇を招く等という経済的な問題も内在するものであった。また、添加された球状酸化鉄は、鋳型として用いられた後に、鋳物砂が再生される際に、磁選除去せしめられる必要があり、これに反して、完全に除去されずにライン砂に混入した場合には、ライン砂の性状劣化につながるリスクも、内在するものであった。
一方、鋳型に塗布される塗型剤は、鋳型の直接溶湯に接する部位(鋳型面)に使用される材料であるところから、鋳造に際して非常に重要な役割を果たしており、この塗型剤の良否により、鋳物(鋳造品)の表面状態の良否が決定されることとなると考えられているのであって、例えば、特開平7−132344号公報においては、浸硫の抑制の目的をもって、鉄酸化物を基材全量の40〜100重量%含有させた塗型剤を塗布して、第1塗型層を形成し、次いでその第1塗型層の上に、焼着防止用塗型剤の塗布により、第2塗型層を形成してなる構造の有機自硬性鋳型が、提案されている。
また、特開昭58−44945号公報には、ジルコンフラワー、ムライトフラワー、アルミナフラワー、シャモットフラワー、クロマイトフラワーのうちの1種又は2種以上を含有する塗型剤に、Fe23、CaO及びSiO2 を同時に添加してなる、有機自硬性鋳型に用いられる浸炭及び浸硫防止用塗型剤が、明らかにされている。
さらに、特開2003−62640号公報においては、ベーニング低減効果の高い塗型組成物として、珪酸質粉末と炭素質粉末を含む耐火性骨材、並びに鉄酸化物を含有する鋳造用塗型剤組成であって、それら珪酸質粉末と鉄酸化物の合計量に対して、珪酸質粉末の比率が70〜90重量%、鉄酸化物の比率が10〜30重量%であり、且つ炭素質粉末の比率が、珪酸質粉末と鉄酸化物の合計量に対して40〜130重量%である鋳造用塗型剤組成物が、提案されている。
しかしながら、上記3件の公報において提案されている塗型剤に係る先行技術は、何れも、単に、浸硫防止や浸炭及び浸硫防止を目的としたり、またベーニング低減効果を発揮させたりするに過ぎないものであって、そこで用いられている基材成分が、鋳造欠陥における焼着欠陥や割れ欠陥に対して、如何なる作用乃至は効果をもたらし得るかについて、何等明らかにしておらず、また塗型剤における基材(骨材)の一つの構成成分として、酸化鉄を含有せしめるものではあるものの、酸化鉄種について、特定のものを用いた場合において、換言すれば四三酸化鉄(Fe34)を用いた場合において、如何なる作用・効果が奏され得るかについても、何等明らかにされてはいないのである。
特開2011−230176号公報 特開平7−132344号公報 特開昭58−44945号公報 特開2003−62640号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、鋳造欠陥である焼着欠陥や割れ欠陥の発生を効果的に抑制乃至は阻止し得ると共に、鋳造品の表面状態を改善し、凹凸のない良好な鋳肌を実現することの出来る塗型構造と、そのような塗型構造を有する鋳造用鋳型を提供することにある。
そこで、本発明者らは、上述の如き状況下、鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に形成される塗型層について鋭意研究を行った結果、酸化鉄種としてFe34を用いると共に、かかるFe34の特定粒径の微細な粒子を、下塗り塗型層と上塗り塗型層からなる塗型構造において、鋳型面側に位置せしめられる下塗り塗型層を与える基材の少なくとも一つとして、所定割合において用いる一方、上塗り塗型層を、そのようなFe34微粒子とは異なる材質であって、それよりも平均粒子径の大きな耐火性基材を用いて、所定厚さの塗膜厚みにおいて形成するようにすることによって、鋳造欠陥としての焼着欠陥や割れ欠陥の発生が、効果的に抑制乃至は阻止され得ると共に、得られる鋳造品の表面状態が、著しく改善され得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
従って、かかる知見に基づいて完成された本発明は、上記した課題の解決のために、又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても、採用可能であることは言うまでもないところである。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
(1)鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に形成された下塗り塗型層と該下塗り塗型層の上に形成された上塗り塗型層とからなる塗型構造にして、
平均粒子径が2μm乃至15μmであるFe34微粒子を、基材の少なくとも一つとして用い、かかるFe34微粒子の全基材中の割合が10〜100重量%となるように調製された下塗り塗型剤にて、前記下塗り塗型層が形成されている一方、
前記上塗り塗型層が、該Fe34微粒子を含む鉄酸化物とは異なる材質の耐火性基材であって、平均粒子径が15μmよりも大きなものを用いて得られる上塗り塗型剤にて、少なくとも0.5mm以上の塗膜厚みにおいて形成されていることを特徴とする塗型構造。
(2)前記下塗り塗型層が、前記鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面から鋳型内に0.1〜5mmの深さで浸透している前記態様(1)に記載の塗型構造。
(3)前記Fe34微粒子が、Fe34粒子の微粉砕によって形成されたものである前記態様(1)又は前記態様(2)に記載の塗型構造。
(4)前記下塗り塗型剤における基材が、前記Fe34微粒子と共に、該Fe34微粒子よりも平均粒子径の大なるFe34粒子を含有している前記態様(1)乃至前記態様(3)の何れか1つに記載の塗型構造。
(5)前記下塗り塗型剤における基材として、前記Fe34微粒子と共に、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、クロマイト粉末及びオリビン粉末のうちの少なくとも1種が用いられている前記態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の塗型構造。
(6)前記上塗り塗型剤における耐火性基材として、クロマイト粉末、オリビン粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、黒鉛粉末及びシリカ粉末のうちの少なくとも1種が用いられている前記態様(1)乃至前記態様(5)の何れか1つに記載の塗型構造。
(7)前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載の塗型構造を有する鋳造用鋳型。
このように、本発明にあっては、下塗り塗型層と上塗り塗型層とからなる塗型構造において、かかる下塗り塗型層中に、特定の微細な粒径を有するFe34微粒子を、基材の少なくとも一つとして、所定割合において存在せしめると共に、上塗り塗型層が、Fe34微粒子とは異なる材質で、粒径の大きな耐火性基材を用いて、所定厚さの塗膜厚みにおいて、形成されるようにしたものであるが、そこにおいて、下塗り塗型層における基材として用いられる酸化鉄種であるFe34は、酸化鉄種の別のものであるFe23に比べて、化学的に不安定であるところから、有機自硬性鋳型の如く、鋳造時に高温下で還元性雰囲気となる場合において、還元反応が惹起され、Fe34からFeOへ、更にFeOからFeへ、還元されることとなる。なお、酸化鉄種の中でも、化学的に最も安定な形態であるFe23には、そのような還元反応は惹起され難いのである。そして、かかる還元反応に伴う生成熱は、吸熱反応であるために、周囲から熱を奪うことになるが、塗型剤は溶湯と接する部位に塗布される材料であるところから、熱を奪う対象は溶湯ということになり、そこに注湯された溶湯が冷却されることになるのである。この現象は、鋳造欠陥低減に対して良好に作用するものである。なぜならば、鋳造品表面を早く凝固させることにつながるためである。つまり、鋳造品表面を早く凝固させることで、溶湯が鋳型側へ浸透していくという、所謂焼着欠陥の発生を抑制する作用をもたらすことになるのである。
また、そのような冷却効果は、割れ欠陥に対しても、良好な作用を示すものとなるのである。即ち、鋳型に注湯された金属溶湯が半溶融状態、つまり液体から固体へ変化する際においては、その中間の状態である固液共存領域が存在することとなるが、その固液共存領域にある材料には、金属特有である延性がなく、外部からの応力により、容易に変形・破壊が惹起され得るところから、これが、鋳造して得られる鋳造品における割れ欠陥につながっているのである。そして、鋳造品の場合においては、鋳型の膨張等が外部からの応力に相当し、それらにより、鋳造品は変形したり、破壊が惹起されたりするのであって、これが、熱間割れの原因となるのであるが、本発明にあっては、Fe34の還元反応に伴う冷却効果により、固液共存領域にある時間を短縮し、速やかに凝固させることで、鋳造品の熱間割れの抑制にも、大きな効果を示すようになるものと推察されている。
なお、本発明において用いられるFe34の微細な粒子は、耐熱性が低いために、高温の金属溶湯に接触すると、それと反応して、焼着現象が生じることにより、鋳造不良となる恐れがあるのであるが、本発明にあっては、かかるFe34微粒子を、下塗り塗型層の基材として用いる一方、そのような下塗り塗型層の上に形成される上塗り塗型層を、そのようなFe34微粒子を含む酸化鉄種とは異なる材質で、粒子径の大きな耐火性基材を用いて、塗膜厚みを厚くして形成していることにより、かかる上塗り塗型層が、下塗り塗型層におけるFe34微粒子と溶湯との反応を効果的に阻止して、焼着現象の発生を有利に防止せしめると共に、得られる鋳造品における鋳肌の状態を美しく仕上げ、凹凸のない美麗な鋳肌面が、有利に形成されることとなるのである。
従って、本発明に従う塗型構造を備えた鋳型を用いて鋳造を行うことによって、鋳造欠陥とされる焼着欠陥や割れ欠陥の発生が効果的に抑制乃至は阻止され得ることとなったのであり、また鋳肌面を改善して、凹凸のない、美しい鋳肌を有する鋳造品を有利に得ることが出来ることとなったのである。
ところで、本発明に従って、鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に形成される塗型構造は、かかる鋳型面上に直接に形成される下塗り塗型層と、この下塗り塗型層の上に形成される上塗り塗型層とから構成され、それら2つの塗型層が、それぞれ、特定の基材(耐火性の粒子)を含有する下塗り塗型剤及び上塗り塗型剤を用いて、形成されているところに、一つの大きな特徴を有しているのである。
すなわち、本発明にあっては、下塗り塗型層を与える下塗り塗型剤には、その基材の少なくとも一つとして、平均粒子径が2μm乃至15μmであるFe34微粒子が用いられており、そしてこのFe34微粒子の全基材中の割合が、10〜100重量%となるようにして、かかる下塗り塗型剤が調製されているのである。
ここで、そのような平均粒子径が2μm乃至15μmであるFe34微粒子としては、人工的に製造される四三酸化鉄(Fe34)が好適に用いられることとなるが、天然に算出する砂鉄等も使用することが可能である。そして、それら人工又は天然のFe34は、必要に応じて、適当な粉砕手段を用いて微粉砕されることにより、目的とする粒径の微粒子に調製されて、用いられることとなる。なお、ここで用いられるFe34微粒子の粒度が粗くなり、その平均粒子径が15μmを超えるようになると、Fe34の存在によって期待される効果が充分に得られ難くなるのであり、またFe34微粒子が2μmよりも小さな平均粒子径となる細かい粒度となると、鋳型への浸透層が過度に大きくなり、作業性が低下する等の問題を惹起する他、粉砕によって粒度調整するに際して、その粉砕過程で多大なエネルギーが必要となる等、経済的にも好ましくないのである。また、そのようなFe34微粒子の好ましい平均粒子径としては、5〜10μm程度が採用されることとなる。
また、このようなFe34微粒子の下塗り塗型剤への配合量としては、鋳物の鋳込み温度や鋳物の鋳込み重量等により、それに適した配合量が適宜に決定されることとなるが、それは、基材の一つとして加えられるものであるところから、全基材中の割合が10〜100重量%となるように、好ましくは35〜100重量%となるように、下塗り塗型剤が調製されることとなる。なお、このFe34微粒子の配合量が少なくなり過ぎると、期待される効果が得られなくなるからである。また、その配合量が多くなるほど、割れ欠陥に対しては、その効果が良好に発揮されることとなるが、焼着欠陥を助長しない程度に配合することが望ましい。
また、かかる下塗り塗型剤における基材として、上記したFe34微粒子と共に、他の耐火性粒子(骨材)を組み合わせて、用いることが出来る。そのような耐火性粒子としては、従来から塗型剤の基材として用いられている公知のものが、適宜に選択されることとなるが、中でも、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、クロマイト粉末及びオリビン粉末のうちの少なくとも1種が選択されて、Fe34微粒子と共に、用いられることとなる。なお、そのようなFe34微粒子に組み合わされる他の基材である耐火性粒子は、一般に、2〜30μm程度の平均粒子径を有するものである。
特に、本発明にあっては、上記したFe34微粒子と共に、下塗り塗型剤の基材の他の一つとして、そのようなFe34微粒子よりも粒径の大きな、例えば平均粒子径が50〜200μm程度となるFe34粒子を組み合わせることも、有利に採用されるところである。例えば、鋳込み重量が非常に大きな鋳造品や非常に厚肉の鋳造品を製造する際には、塗型剤の耐熱性が必要となるところから、本発明に従う小さな粒径のFe34微粒子を配合せしめる量が限定されてしまうようになる。然るに、粒径の大きな粒子状の四三酸化鉄(Fe34)は、粒径の小さなFe34微粒子よりも反応性に乏しく、時間をかけて反応が進行するようになるため、それら粒径の小さなFe34微粒子と粒径の大きなFe34粒子とを組み合わせることで、反応を任意にコントロールすることが出来、以て鋳造欠陥の低減効果を有利に発揮せしめることが可能となる。
そして、上述の如き構成の下塗り塗型剤を用いて形成された下塗り塗型層の上には、Fe34の如き酸化鉄を含有しない、換言すればFe34微粒子を含む鉄酸化物とは異なる材質の耐火性基材であって、平均粒子径が15μmよりも大きい、即ち下塗り塗型剤中のFe34微粒子よりも平均粒子径の大きなものを基材とする上塗り塗型剤の塗布により、上塗り塗型層が形成され、これによって、Fe34微粒子を含有する下塗り塗型層が、鋳肌面に直接に接することがないようにして、鋳肌の表面荒れの発生が効果的に阻止せしめられ得るようになっている。このため、かかる上塗り塗型層は、少なくとも0.5mm以上の塗型厚みを確保する必要がある。また、そのような厚さの塗型厚みを確保する上において、上塗り塗型剤中に含有せしめられる耐火性基材は、下塗り塗型剤におけるFe34微粒子よりも粒径を大きくする必要があり、そのため、平均粒子径が15μmよりも大きな基材として、用いられることとなる。なお、この耐火性基材の平均粒子径が15μm以下となると、浸透し易くなり、所定の塗型厚みを確保し難く、また塗型厚みを確保しようとすると、塗型層表面にクラックが入りやすくなるため、望ましくないのである。なお、このような上塗り塗型層の厚みの上限としては、一般に、5mm程度とされ、その厚みが過度に厚くなると、塗型層の剥離が惹起される等の問題を生じるようになる。
また、かかる上塗り塗型剤における耐火性基材としては、従来の塗型剤における基材として用いられているものの中から、適宜に選択されるところであるが、通常、クロマイト粉末、オリビン粉末、黒鉛粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、シリカ粉末等が、鋳造される鋳鉄や鋳鋼等の目的に応じて、単独で又は組み合わせて、用いられることとなる。なお、それら耐火性基材の平均粒子径の上限は、上塗り塗型層の性状に応じて適宜に決定されるところであるが、一般に、50μm程度とされることとなる。
ところで、上述の如き基材を含有する下塗り塗型剤や上塗り塗型剤は、一般の塗型剤と同様に、基材を適当な分散媒に分散させてなる液状の混合物の形態において、調製されることとなる。なお、用いられる分散媒としては、水性のものの他、有機系のものであってもよいが、鋳造品の形状や重量等に応じて、浸透を目的とする下塗り塗型剤の場合には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、キシレン、トルエン等の芳香族溶剤、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤等が使用され得、好ましくは低級アルコール類が用いられ、そして、焼着防止を目的とする上塗り塗型剤の場合には、水が、主分散媒として、用いられることとなる。
また、そのような下塗り塗型剤や上塗り塗型剤には、従来からの塗型剤に用いられているような公知の各種の添加剤(助剤)も、適宜に含有せしめられることとなる。例えば、増粘等の目的を持って配合される粘結剤としては、常温で強い塗膜を形成することの出来るフェノール樹脂、ロジン、石油樹脂のような有機粘結剤や、鋳込み時に塗膜の熱間強度を向上せしめ得るベントナイト、エチルシリケート、珪酸ソーダ等の無機粘結剤を挙げることが出来、また塗型剤(基材)の鋳型中への浸透を助ける界面活性剤等の浸透助剤、沈降防止のための分散剤、安定剤、チキソトロピー性を付与するための助剤、熱間強度を上げるための助剤等が、適宜に添加含有せしめられるのである。
そして、かくの如き下塗り塗型剤や上塗り塗型剤を用いて、本発明に従う塗型構造を実現するには、先ず、下塗り塗型剤を、所定の鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に対して、刷毛塗り、ディッピング、ぶっかけ、スプレー等の公知の手法にて塗布せしめ、かかる下塗り塗型剤を、鋳型面から鋳型内部に浸透させると共に、鋳型面上に200〜300μm程度の厚さにおいて下塗り塗型層が形成されることとなるが、本発明においては、そのような下塗り塗型層は、塗型剤の粘度の調整や浸透助剤の使用等によって、0.1〜5mmの深さで、鋳型内部に浸透せしめられていることが望ましい。なお、このような下塗り塗型剤の塗布は、必要に応じて複数回に亘って行われることとなる。
このように、本発明にあっては、下塗り塗型剤は、鋳型内部に、ある程度浸透せしめられていることが望ましく、その理由は、次のように考えられている。即ち、Fe34微粒子は、鋳型中の還元性雰囲気によりFeOへ、更にFeに還元されるようになるが、FeOは、あらゆる物質との反応性が高いために、鉄酸化物を形成することになる。そこで、Fe34微粒子と鋳型材料とを反応させることにより、鉄酸化物を形成させるようにすれば、鋳型表面の緻密化を促進させることになり、そしてそれと同時に、下塗り塗型剤と鋳型材料との接着性を高め、更に下塗り塗型剤と上塗り塗型剤との接着性を高めることで、塗型剤が溶湯に洗い流される現象を防止する作用を発揮せしめ、以て、塗型剤としての機能を充分に発揮させることの助けとなるようにすることが出来るのである。なお、この浸透厚み(深さ)が0.1mmよりも少なくなると、期待される効果が発揮され難くなり、また5mmを超えるようになると、分散媒であるアルコールや水が鋳型を硬化させている粘結剤と反応して、鋳型強度を著しく低下させる等の問題を惹起する恐れが生じるようになる。
次いで、かくの如くして形成された下塗り塗型層の上には、更に、前述した上塗り塗型剤を用いて、下塗り塗型層の形成の場合と同様な塗布手法を採用して、上塗り塗型層が形成されることとなるが、そのような上塗り塗型層は、少なくとも0.5mm以上の塗膜厚みにおいて、形成されている必要がある。このような塗膜厚みを採用することによって、下塗り塗型層による金属溶湯への悪影響を阻止して、鋳肌の表面性状が効果的に向上せしめられることとなるのである。なお、そのような上塗り塗型層の塗膜厚みは、下塗り塗型剤における基材(Fe34微粒子)よりも大きな粒径を有する基材を用いると共に、塗型剤の粘度等を調整することにより、また塗布操作を必要に応じて繰り返すことによって、容易に実現することが可能である。また、そのような上塗り塗型層の塗膜厚みの上限としては、鋳造条件等によって適宜に選定されるところであるが、一般に、5mm程度とされることとなる。この塗膜厚みが厚くなり過ぎると、塗型層の剥がれが惹起される等の問題を生じる恐れがあるからである。
なお、本発明に従う鋳型構造の対象とされる鋳造用鋳型としては、よく知られているように、鋳物砂(耐火粒子)と無機系・有機系粘結剤を用いて、シェルモールド法、ホットボックス法、ウォームボックス法等により形成される熱硬化鋳型や、水ガラス−CO2 鋳型、有機CO2 鋳型、アミン・コールドボックス法、SO2 コールドボックス法、FRC・コールドボックス法、エステル・コールドボックス法等によって得られるガス硬化鋳型の他、無機自硬性鋳型、有機自硬性鋳型の如き自硬性鋳型、更には消失模型鋳造法やVプロセス鋳造法、凍結鋳型、塩型等を挙げることが出来る。そして、それら各種の公知の鋳型は、従来と同様にして造型されて、所定構造の鋳型構造物と為され、その鋳型面(金属溶湯と接触する面)に対して、本発明に従う塗型構造が形成されるのである。
以下に、本発明の実施例の幾つかを示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
また、以下の実施例において、基材の一つとして用いられるFe34粒子には、市販のSphereOx#200(米国:Chesapeake Specialty Products,INC.製、球状Fe34粒子、平均粒子径:85μm)がそのまま用いられたり、或いはそれを微粉砕して、平均粒子径が5μm、10μm又は30μmの微粒子として、用いられた。
さらに、実施例において採用される下塗り塗型剤及び上塗り塗型剤の基本配合は、以下の表1に示される通りとした。なお、それぞれの塗型剤における基材の種類は、以下の実施例に示される通りであり、また、有機粘結剤としてフェノール樹脂、安定剤としては含水珪酸マグネシウムをそれぞれ用い、浸透助剤としては界面活性剤を用いると共に、分散媒としては、下塗り塗型剤ではエタノール、上塗り塗型剤では水を、それぞれ、下表に示される割合において用いた。
Figure 0005701428
−実施例1−
上記表1に示される下塗り塗型剤の基本配合において、基材として、下記表2に示される如く、ジルコン粉末、球状Fe34粒子及びFe34微粒子をそれぞれ組み合わせて、全基材量が100重量部となるように配合せしめることによって、A1−1〜A1−4及びB1−1〜B1−4の各種の下塗り塗型剤を準備すると共に、上塗り塗型剤として、上記表1に示される基本配合において、基材として、平均粒子径が16μmであるジルコン粉末のみを用いてなる、Fe34の如き酸化鉄を含有しない塗型剤を準備した。
次いで、それら下塗り塗型剤と上塗り塗型剤を用いて、公知の焼結系人工砂(伊藤忠セラテック株式会社製、セラビーズ)を使用して造型されてなるフラン鋳型に対する塗型を行った。即ち、かかるフラン鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に対して、先ず、下記表2に示される各種の下塗り塗型剤を塗布して、約200μmの厚さの下塗り塗型層を形成した後、それぞれの下塗り塗型層の上に、下記表2に示される上塗り塗型剤をそれぞれ塗布することにより、塗膜厚さが約0.6mmの上塗り塗型層を形成することにより、下塗り塗型層の構成が異なる二層構造の塗型層を有する各種の鋳型を得た。
そして、この得られた各種の塗型構造の鋳型を、鋳込み重量:10トンの鋳鋼品の中子として用い、材質:SC410溶湯を、鋳込み温度:1570℃の条件下にて、鋳造を行った。更に、そのような鋳造の後、型ばらしを実施して、鋳造品を取り出す際に、当該鋳造品における焼着欠陥の程度や鋳肌の状態を目視観察して、焼着欠陥の激しいものや凹凸の激しい鋳肌面であるものは「×」、それが軽微なものは「△」、更にそれが存在しないものや平滑な鋳肌面を呈するものは「○」として、それぞれ評価し、その結果を、下記表2に併せ示した。
Figure 0005701428
かかる表2の結果から明らかなように、本発明に従ってFe34微粒子の所定量がジルコン粉末に配合されてなる基材や、そのようなFe34微粒子からなる基材を用いたA1−1〜A1−4においては、何れも、焼着欠陥が認められず、また鋳肌も改善されて、特にA1−3やA1−4においては、凹凸もなく、美麗な鋳肌面に仕上がっていることを認めた。
これに対して、下塗り塗型剤の基材がジルコン粉末のみからなる場合や、Fe34材質であっても、平均粒子径の大きな球状Fe34粒子を用いたものであるB1−1〜B1−4においては、得られた鋳造品に、激しい焼着欠陥が認められ、また鋳肌の状態も荒れたものとなっていることを確認した。
−実施例2−
下塗り塗型剤における基材の一部として、平均粒子径が5μm又は10μmのFe34微粒子を用いたことや、酸化鉄であっても、Fe34とは異なる材質であるFe23の粉末として、顔料用として広く用いられているベンガラ(平均粒子径:2μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、下記表3及び表4に示される如き骨材組成の異なる各種の下塗り塗型剤や上塗り塗型剤をそれぞれ準備した。
そして、それら準備された下塗り塗型剤と上塗り塗型剤を用いて、実施例1と同様にして、焼結系人工砂を用いたフラン鋳型の鋳型面に塗布して、それぞれ、各種の塗型構造を有する鋳型とした後、それを鋳込み重量:30トンの大物鋳鋼品の中子として用い、鋳込み温度:1570℃、溶湯材質:SC410の下で、鋳鋼製品の鋳造を行い、更にその鋳造の後に型ばらしを行って、実施例1と同様に、焼着欠陥の程度及び鋳肌の状態を目視観察して、その結果を、下記表3及び表4に併せ示した。
Figure 0005701428
Figure 0005701428
かかる表3の結果から明らかなように、平均粒子径が10μmのFe34微粒子を全基材中に10%、30%の割合で配合してなるA2−1、A2−2及び平均粒子径が5μmのFe34微粒子を全基材中に10%の割合で配合したA2−4においては、僅かに焼着が認められたものの、ハンマー等で軽く叩くことにより、容易に除去することが出来るレベルであり、また鋳肌についても、僅かに荒れが認められたが、軽い表面処理で平坦な鋳物表面を得ることが出来るものであった。また、平均粒子径が10μmのFe34微粒子を全基材中50%の割合で配合してなるA2−3や、平均粒子径が5μmであるFe34微粒子を全基材中30%、50%の割合で配合してなるA2−5、A2−6においては、焼着欠陥は何等認められず、鋳肌の状態も凹凸無く、美しい仕上がりとなった。
一方、表4から明らかな如く、基材としてジルコン粉末のみを用いて準備された下塗り塗型剤及び上塗り塗型剤にて、上下2層の塗型層が形成されてなるB2−1においては、激しい焼着欠陥が認められ、鋳肌の状態も荒れたものとなっており、また酸化鉄としてFe23(ベンガラ)を用いたB2−2〜B2−4にあっては、Fe23配合量の比較的少ないB2−2においては、焼着欠陥の発生は僅かではあるが、鋳肌が著しく荒れたものとなっており、更にB2−3やB2−4にあっては、何れも、激しい焼着欠陥が認められ、鋳肌の状態も荒れたものとなっていることを認めた。そして、基材として用いられるFe34微粒子にあっても、その平均粒子径が30μmとなるB2−5〜B2−7においては、その配合量が多くなるに従って、焼着欠陥が低減される傾向はあるものの、焼着欠陥がなくなることはなく、更に鋳肌の状態は、何れの場合においても、著しく荒れたものとなっているのである。
−実施例3−
下記表5に示される各種の下塗り塗型剤と上塗り塗型剤を、実施例1と同様にして準備した後、それら塗型剤にて形成される塗型構造による割れ欠陥の抑制効果を明確にするために、割れ欠陥が生じ易い格子状形状の試験鋳型を、焼結系人工砂を使用したフラン鋳型によって作製し、鋳造試験を実施した。なお、作製された鋳型は、鋳込み重量:500kg、鋳込み温度:1570℃、溶湯材質:SC410において鋳造試験を行い、そしてその鋳造後に型ばらしを実施して、カラーチェックにより、割れ欠陥の度合いを目視観察した。その結果、割れ欠陥の激しいものは「×」、軽微なものは「△」、なしのものは「○」として評価し、下記表5に、その結果を併せ示した。
Figure 0005701428
かかる表5の結果から明らかなように、骨材としてジルコンのみを含む塗型剤を用いて得られた鋳型を使用したB3−1においては、激しい割れ欠陥が発生することを認めた。一方、平均粒子径が10μmであるFe34微粒子を全基材中10%、30%の割合で配合したA3−1、A3−2及び平均粒子径が5μmのFe34微粒子を全基材中10%の割合で配合したA3−4にあっては、僅かに割れ欠陥が認められるに過ぎないものであった。更に、平均粒子径が10μmであるFe34微粒子を全基材中50%の割合で配合してなるA3−3や、平均粒子径が5μmであるFe34微粒子を全基材中30%、50%の割合で配合してなるA3−5、A3−6においては、何れも、割れ欠陥が全く認められないものであった。
−実施例4−
下塗り塗型剤中の基材を、ジルコン粉末から他の材質、即ちアルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末又はジルコニア粉末へ変更した場合の影響を調べた。なお、Fe34微粒子の平均粒子径は10μmとして、その配合量は、全基材中30%の一定とし、そのようなFe34微粒子の配合の有無において、比較した。
下記表6に示されるそれぞれの下塗り塗型剤を、焼結系人工砂を使用したフラン鋳型に対して塗布し、更にその上に、下記表6に示される上塗り塗型剤を塗布することにより、2層構造の塗型層を鋳型面に形成した。なお、比較のために、酸化鉄成分を基材として含まない下塗り塗型剤及び上塗り塗型剤をそれぞれ用いて、塗型層を形成してなる従来のジルコン系塗型の鋳型も準備した。そして、その作製された各種の鋳型を、鋳込み重量:30トンの大物鋳鋼品の中子として用い、鋳込み温度:1570℃、溶湯材質:SC410の下において、目的とする鋳物製品を鋳造した。そして、その鋳造後に型ばらしを行い、その際に、焼着欠陥の程度及び鋳肌の状態をそれぞれ目視観察して、実施例1と同様にして評価し、その結果を、下記表6に併せ示した。
Figure 0005701428
かかる表6の結果から明らかな如く、Fe34微粒子を基材の一つとして用いていない下塗り塗型剤を用いたB4−1〜B4−5においては、何れも、激しい焼着欠陥が認められ、鋳肌の状態も荒れたものとなっていることを認めた。これに対して、平均粒子径が10μmのFe34微粒子を基材中30%の割合で配合し、更に基材にムライト粉末を用いてなるA4−2においては、僅かに焼着欠陥が認められたものの、鋳肌の状態は美しく仕上がったものとなり、同様に、基材にマグネシア粉末を用いたA4−3においては、僅かに焼着欠陥が認められ、また鋳肌の状態にも、僅かに凹凸が認められたが、実用上問題ない程度であるものと判断された。更に、同様に、基材にアルミナ粉末やジルコニア粉末を用いてなるA4−1やA4−4においては、焼着欠陥が何等認められず、鋳肌の状態も、凹凸が無く、美しく仕上がっていることを認めた。
−実施例5−
鋳型を作製する際に用いられる鋳物砂を、焼結系人工砂から再生クロマイト砂に変更した場合の影響を調べた。また、塗型剤の適用部位を、押し湯周囲としたこと以外は、実施例2の適用方法に準じて、下塗り塗型剤と上塗り塗型剤の塗布を行った。なお、Fe34微粒子としては、平均粒子径が10μmのものを用い、その配合量は、基材中10%又は20%の割合とした。更に、そのようなFe34微粒子に対して、平均粒子径の大きな球状Fe34粒子を組み合わせて用いた場合も、実施した(A5−3)。その結果を、下記表7に示す。
Figure 0005701428
かかる表7の結果から明らかな如く、本発明に従ってジルコン粉末に微細なFe34微粒子の所定量を配合してなる下塗り塗型剤を用いた場合にあっては、焼着欠陥は何等認められず、また鋳肌の状態においても、良好な結果が得られた。更に、微細なFe34微粒子と共に、粒径の大きなFe34粒子を組み合わせて用いた場合(A5−3)にあっては、焼着欠陥は何等認められず、また鋳肌の状態も凹凸無く、美しく仕上がっていることを認めた。
−実施例6−
下塗り塗型剤や上塗り塗型剤の塗布回数を、それぞれ、下記表8に示される回数としたこと以外は、実施例2と同様にして、フラン鋳型の鋳型面に、それぞれの塗型剤の塗布を行った。なお、下塗り塗型剤は、分散媒としてアルコールを用いることにより、アルコール性とする一方、上塗り塗型剤は、分散媒として水を用いることにより、水性とした。また、A6−1〜A6−3における各下塗り塗型剤は、基材として、ジルコン粉末の70%と、平均粒子径が10μmのFe34微粒子の30%とを用いて得られたものにて、構成した。更に、B6−1における下塗り塗型剤は、表4のB2−1と同様の構成とした。加えて、各上塗り塗型剤には、先の実施例と同様なジルコン粉末のみが、基材とされた。なお、下塗り回数や上塗り回数が2回となることにより、それぞれの塗膜厚みは、1回の場合の約2倍の厚みとなっている。
Figure 0005701428
かかる表8の結果から明らかな如く、基材としてジルコン粉末のみを用いて準備された下塗り塗型剤及び上塗り塗型剤を用いたB6−1の場合にあっては、激しい焼着欠陥が認められ、また鋳肌の状態も荒れたものとなっていることが認められる。これに対して、平均粒子径が10μmのFe34微粒子を基材中30%の割合で配合してなる下塗り用塗型剤を用い、下塗り1回、そしてジルコン粉末のみを基材とした上塗り塗型剤を用いた上塗り1回において、塗型構造を形成した場合(A6−1)にあっては、僅かに焼着欠陥が認められ、また鋳肌の状態も僅かに荒れが観察された。また、そのような下塗り塗型剤を下塗り2回、上塗り塗型剤を上塗り1回において塗布してなるA6−2の場合にあっては、焼着欠陥が何等認めらなかったものの、僅かに鋳肌表面に荒れが認められるものとなった。更に、そのような下塗り塗型剤を下塗り2回、上塗り塗型剤を上塗り2回において塗布して、鋳型構造を形成せしめてなるA6−3の場合にあっては、焼着欠陥は何等認められず、また鋳肌表面も凹凸無く、美しい仕上がりとなっていることを確認した。
−実施例7−
下塗り塗型剤において用いられる粘結剤、浸透助剤及び分散媒の割合を変化させること以外は、実施例1におけるA1−2の場合と同様にして、塗型構造を形成し、その下塗り塗型層の浸透厚み(深さ)を評価する一方、基材としてジルコン粉末のみを用いたB1−1の場合における浸透厚みを評価して、その結果を、下記表9に示した。また、それら各種の浸透厚みを有する鋳型を用いて、実施例1と同様な鋳造実験を行い、得られた鋳造品における焼着欠陥や鋳肌の状態を評価し、その結果を、下記表9に併せ示した。
Figure 0005701428
かかる表9の結果から明らかな如く、微細なFe34微粒子を骨材の一部として含有する下塗り塗型剤を用いて、下塗り塗型層を形成せしめた場合にあっては、その下塗り塗型層の鋳型内部への浸透厚み(深さ)が大きくなるに従って、焼着欠陥や鋳肌表面の状態も改善されていることを認めることが出来る。

Claims (7)

  1. 鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面に形成された下塗り塗型層と該下塗り塗型層の上に形成された上塗り塗型層とからなる塗型構造にして、
    平均粒子径が2μm乃至15μmであるFe34微粒子を、基材の少なくとも一つとして用い、かかるFe34微粒子の全基材中の割合が10〜100重量%となるように調製された下塗り塗型剤にて、前記下塗り塗型層が形成されている一方、
    前記上塗り塗型層が、該Fe34微粒子を含む鉄酸化物とは異なる材質の耐火性基材であって、平均粒子径が15μmよりも大きなものを用いて得られる上塗り塗型剤にて、少なくとも0.5mm以上の塗膜厚みにおいて形成されていることを特徴とする塗型構造。
  2. 前記下塗り塗型層が、前記鋳造用鋳型の金属溶湯に接する鋳型面から鋳型内に0.1〜5mmの深さで浸透している請求項1に記載の塗型構造。
  3. 前記Fe34微粒子が、Fe34粒子の微粉砕によって形成されたものである請求項1又は請求項2に記載の塗型構造。
  4. 前記下塗り塗型剤における基材が、前記Fe34微粒子と共に、該Fe34微粒子よりも平均粒子径の大なるFe34粒子を含有している請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の塗型構造。
  5. 前記下塗り塗型剤における基材として、前記Fe34微粒子と共に、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、クロマイト粉末及びオリビン粉末のうちの少なくとも1種が用いられている請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の塗型構造。
  6. 前記上塗り塗型剤における耐火性基材として、クロマイト粉末、オリビン粉末、アルミナ粉末、ムライト粉末、マグネシア粉末、ジルコン粉末、ジルコニア粉末、黒鉛粉末及びシリカ粉末のうちの少なくとも1種が用いられている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の塗型構造。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の塗型構造を有する鋳造用鋳型。
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