第1の発明は、着座面を有し内部に発熱体を有する便座と、前記発熱体の通電を制御する制御手段と、トイレ室内へ入室した人体を検知する人体検知手段と、前記便座への使用者の着座を検知する着座検知手段と、便座温度を検知する温度検知手段と、前記便座の使用時における、前記発熱体への通電形態を選択する使用者が操作する通電選択手段とを備え、前記通電選択手段で所定の通電形態が選択されると、前記制御手段は、前記人体検知手段により人体を検知して前記発熱体を駆動し便座部温度の昇温を開始し、前記温度検知手段による便座温度が通常の設定温度よりも低い所定の温度に達すると前記発熱体への通電を停止し、前記所定の温度に達する前に、前記着座知手段により使用者の着座を検知すると前記発熱体の通電を停止し、前記人体検知手段により人体が検知されている間は前記発熱体への再通電を行わないものである。
これにより、あらかじめ設定した低い温度に便座温度が達したらヒータの通電をきることができるので、確実に快適な便座温度を実現することができるとともに、着座直前にヒータの通電を停止し、着座中には再通電を行わないようにすることで、着座するまでに便座の昇温を完了させ、着座時には便座の昇温が生じないので、便座の使用時にのみ、使用
者に適温の着座部の暖房が可能で、着座した瞬間も、着座中に快適で省エネルギーな便座装置とすることができる。
また、便座面を着座直前に暖めることにより、人体の腿部温度との温度差を少なくすることで、人体腿部から便座への熱の移動を抑え、皮膚が便座に接触した瞬間の冷たいという不快感を低減させる。これは便座に熱伝導率の高い材料や熱容量の低い構成を採用した際に特に有効である。逆に着座後は加温を停止することで便座と人体腿部との熱の移動をなくすことができるため、使用者が暑く感じることがなくなる。
第2の発明は、着座面を有し内部に発熱体を有する便座と、
前記発熱体の通電を制御する制御手段と、便座装置への人体の接近距離を検知する距離検知手段とを備え、制御手段は、前記距離検知手段により第1の範囲に人体を検知すると前記発熱体を駆動し便座部温度の昇温を開始し、前記距離検知手段により前記第1の範囲より近い第2の範囲に人体を検知すると前記発熱体の通電を停止し、前記距離検知手段により前記第1の範囲または前記第2の範囲に人体が検知されている間は前記発熱体への再通電を行わないものである。
これにより、使用者がトイレに入室した時点で発熱体の通電を開始し、便座に近づいた時点で通電を切ることができるので、確実に着座前に通電を停止でき、より快適な便座を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
<1> 衛生洗浄装置およびそれを備えるトイレ装置の外観
図1は本発明の第1の実施の形態に係る便座装置およびそれを備えた衛生洗浄装置を示す外観斜視図である。衛生洗浄装置はトイレットルーム内に設置される。
衛生洗浄装置100は便器700の上面に取り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、図示しない洗浄装置と洗浄水供給機構が設けられるとともに、後述の制御部90が内蔵される。
図1では、本体部200の正面の便座の上面よりも上部に設けられる着座センサ610が示されている。この使用検知手段である着座センサ610は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより、使用者が便座部400に着座しようとして接近した時点より便座部400より立ち上がるまで使用者の存在を検知する。
さらに、図1では、本体部200の正面下部に設けられる洗浄装置の便器ノズル40が便器700の内側に突出している状態が示されている。この便器ノズル40は、上述の洗浄水供給機構に接続されている。
衛生洗浄装置100の各構成要素のから、上記便器ノズルとノズル部および洗浄水供給機構などの洗浄装置を除いた要素が便座装置110を構成する。
洗浄水供給機構は、図示しない水道配管に接続されている。これにより、洗浄水供給機
構は、水道配管から供給される洗浄水を便器ノズル40に供給する。それにより、便器ノズル40から便器700の内面の広い範囲に洗浄水が噴出される(便器プレ洗浄)。または、便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される(便器後部洗浄)。詳細は後述する。
また、洗浄水供給機構は、図示しない洗浄装置のお尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルと、ノズル洗浄噴出口に切替弁を介して接続されている。これにより、洗浄水供給機構は、水道配管から供給される洗浄水を加熱手段で温水にし、各ノズルに供給する。それにより、お尻洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルから噴出した温水で使用者の局部を洗浄する。また、ノズル洗浄噴出口から洗浄水を噴出させてお尻洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルをセルフクリーニングする。
遠隔操作装置300には、複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
人体検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。人体検知センサ600は、例えば反射型の赤外線センサである。この場合、人体検知センサ600は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
本体部200の制御部90は、遠隔操作装置300、人体検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
<2> 遠隔操作装置の構成
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には乾燥スイッチ320、強さ調整スイッチ322,323および位置調整スイッチ325,326が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
使用者により、上記各スイッチが操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、ノズル部から使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、ノズル部から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止される。
使用者が乾燥スイッチ320を操作することにより、使用者の局部に後述する乾燥ユニット210から温風が噴出される。また、使用者が強さ調整スイッチ322,323を操作することにより、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力等が調整される。
さらに、使用者が位置調整スイッチ325,326を操作することにより、局部を洗浄するおしりノズルまたは後述するビデノズルの位置が調整される。それにより、使用者の局部への洗浄水の噴出位置が調整される。
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、自動開閉スイッチ331、水温調整スイッチ332、便座温度調整スイッチ333、夏季スイッチ335および便器洗浄スイッチ336が設けられている。
これらのスイッチが操作される場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部90は、受信した信号に基づいて本体部200および便座部400の各構成部の動作を制御する。
自動開閉スイッチ331はつまみにより構成されている。使用者が自動開閉スイッチ331のつまみを操作することにより、蓋部500(図1)の開閉動作が設定される。すなわち、自動開閉スイッチ331のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて蓋部500が開閉される。
使用者が水温調整スイッチ332を操作することにより、ノズル部から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座部400の温度が調整される。
また、使用者が節電スイッチを押した場合、所定の時間便座ヒータ450への通電を停止し、省エネ性を向上させる。ここで所定の時間とは就寝時および日中の外出時を想定しているため3〜9時間程度である。
また、通電選択手段である夏季スイッチ335を押した場合、便座の設定温度が前記便座温度調整スイッチ333で設定した温度より低い温度(例えば腿部に近い32℃)に設定されるとともに、着座時は便座ヒータ450に通電されない制御となる。
自動開閉スイッチ331と同様に、便器洗浄スイッチ336はつまみにより構成されている。使用者が便器洗浄スイッチ336のつまみを操作することにより、便器ノズル40による便器プレ洗浄および便器後部洗浄の動作が設定される。
すなわち、便器洗浄スイッチ336のつまみがオンの位置にある場合、使用者のトイレットルームへの入室に応じて便器ノズル40から便器700内部の広い範囲に洗浄水が噴出される。また、使用者の便座部400への着座中に便器ノズル40から便器700の内面の背面側に洗浄水が噴出される。
<3>便座装置
(3−1)便座装置の構成
図3は、便座装置110の構成を示す模式図である。上述のように、便座装置110は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および人体検知センサ600を備える。
図3に示すように、本体部200は、制御部90、温度測定部401、ヒータ駆動部402、便座温調ランプRA1および着座センサ610を含む。
また、便座部400は便座ヒータ450およびサーミスタ401aを備える。
制御部90は、例えばマイクロコンピュータからなり、使用者の入室および便座部400の温度等を判定する判定部、タイマ機能を有する計時部、種々の情報を記憶する記憶部、ならびに、ヒータ駆動部402の動作を制御するための通電率切替回路等を含む。
本体部200の温度測定部401は、便座部400のサーミスタ401aに接続されている。これにより、温度測定部401は、サーミスタ401aから出力される信号に基づいて便座部400の温度を測定する。以下、サーミスタ401aを通じて温度測定部401により測定される便座部400の温度を測定温度値と称する。
また、本体部200のヒータ駆動部402は、便座部400の便座ヒータ450に接続されている。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動する。
本実施の形態において、便座装置110は次のように動作する。初期設定時では、制御部90がヒータ駆動部402を制御することにより、便座部400が例えば約18℃となるように温度調整される。このときの温度を待機温度と称する。
ここで、使用者が遠隔操作装置300の便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座設定温度が制御部90に送信される。制御部90は、遠隔操作装置300から受信した便座設定温度を記憶部に記憶する。
使用者がトイレットルームに入室すると、人体検知センサ600が使用者の入室を検知する。それにより、使用者の入室検知信号が制御部90に送信される。
通電選択手段が選択されていない通常の使用時の動作について説明する。制御部90の判定部は、人体検知センサ600からの入室検知信号により使用者のトイレットルームへの入室を検知する。そこで、判定部は、便座部400の測定温度値、および記憶部に記憶された便座設定温度に基づいて便座ヒータ450の駆動に関する特定のヒータ制御パターンを選択する。
通電率切替回路は、選択されたヒータ制御パターンおよび計時部により得られる時間情報に基づいてヒータ駆動部402の動作を制御する。
それにより、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され、便座部400の温度が便座設定温度へと瞬時に上昇され、使用中(着座中)は設定温度が持続されるよう通電を行う。
一方、通電選択手段である夏季スイッチ335が選択されている場合は、同じく人体検知センサ600が使用者の入室を検知する。すると、ヒータ駆動部402により便座ヒータ450が駆動され便座部400の温度が腿部に近い32℃程度まで瞬時に上昇し、使用者が着座する前に通電を停止し、着座中は通電を行わない。
(3−2)便座部の構成
図4は、便座部400の分解斜視図である。図5(a)は、第1の例の便座部400の便座ヒータ450の平面図、図5(b)は、図5(a)の領域C72の拡大図である。図6は、第1の例の便座部400の平面図である。図7は、図6の便座部400のC73−C73断面図である。
図4に示すように、便座部400は、主としてアルミニウムにより形成された略楕円形状の上部便座ケーシング410、略馬蹄形状の便座ヒータ450および合成樹脂により形成された略楕円形状の下部便座ケーシング420を備える。
以下、着座した使用者から見て前方側を便座部400の前部とし、着座した使用者から見て後方側を便座部400の後部とする。
図5(a)および図6に示すように、便座ヒータ450は、前部の一部が切り取られた略馬蹄状に形成される。なお、便座ヒータ450は、略楕円形状を有してもよい。便座ヒータ450は、例えばアルミニウムからなる金属箔451,453および線状ヒータ460を含む。
線状ヒータ460は、シート中央部SE3からシート一方端部SE1までの領域およびシート中央部SE3からシート他方端部SE2までの領域において上部便座ケーシング410の形状に合わせて蛇行形状に配設される。
具体的には、線状ヒータ460は、左右6列程度のU字状部を有するように形成される。これらのU字状部は、着座した使用者の大腿部の方向にほぼ沿って並行に配置される。各U字状部における線状ヒータ460の間隔は5mm程度である。
線状ヒータ460のヒータ始端部460aおよびヒータ終端部460bは、便座部400の後部の一方側から引き出されるリード線470にそれぞれ接続される。
さらに、図5(b)に示すように、蛇行形状の線状ヒータ460の経路中に熱応力緩衝部となる複数の折曲部CUが設けられる。
図7に示すように、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1における線状ヒータ460の間隔ds1および内側の側辺に沿った領域G3における線状ヒータ460の間隔ds3は、上部便座ケーシング410の中央部の領域G2における線状ヒータ460の間隔ds2よりも小さく設定される。それにより、上部便座ケーシング410の外側の側辺に沿った領域G1および内側の側辺に沿った領域G3では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。
(3−3)便座ヒータの構造
図8は、上部便座ケーシング410に取り付けられる便座ヒータ450の第1の構造の例を示す断面図である。
図8に示すように、上部便座ケーシング410は、例えば厚さ1mmのアルミニウム板413により形成される。アルミニウム板413の上面には、アルマイト層412および表面化粧層411が形成される。表面化粧層411の上面が着座面410Uとなる。また、アルミニウム板413の下面には、塗装膜414が形成される。塗装膜414は、例えば膜厚40μmおよび150℃の耐熱性を有するポリエステル粉体塗装膜である。
なお、アルミニウム板413の代わりに、銅板、ステンレス板、アルミニウムめっき鋼板および亜鉛アルミニウムめっき鋼板のうちいずれかまたは複数を用いてもよい。
塗装膜414の下面に粘着層452aを介して例えばアルミニウムからなる金属箔451が貼着される。金属箔451の膜厚は、例えば50μmである。
線状ヒータ460は、断面円形の発熱線463a、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462により構成される。断面円形の発熱線463aの外周面がエナメル層463bおよび絶縁被覆層462で順に被覆される。発熱線463aおよびエナメル層463bによりエナメル線463が構成される。
発熱線463aは、例えば0.16〜0.25mmの直径を有し、銅または銅合金からなる。本例では、発熱線463aとして、直径0.176mmの4%Ag−Cu合金からなる高抗張力型ヒータ線が用いられる。抵抗値は0.833Ω/mである。
エナメル層463bは、例えば180〜300℃の耐熱性を有するポリエステルイミド(PEI)からなる。エナメル層463bの膜厚は、20μm以下であり、本例では12〜13μmである。このようなエナメル線463は、エナメル層463bの膜厚が極薄い0.01〜0.02mm程度であっても、電気用品技術基準である1000Vで1分間以上の電気絶縁耐圧性能を十分確保することができる。また、エナメル層463bの材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
絶縁被覆層462は、例えば260℃の耐熱性を有するパーフロロアルコキシ混合物(以下PFAと称する)等のフッ素樹脂からなる。絶縁被覆層462の厚みは、例えば0.1〜0.15mmである。PFAからなる絶縁被覆層462の形成は、押出し加工により行うことができる。この場合、絶縁被覆層462の厚みが0.05〜0.1mmと薄くても、雷サージにも耐える電気絶縁耐圧性能を確保することができる。
なお、絶縁被覆層462の材料として、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)を用いてもよい。
線状ヒータ460の外径は、例えば0.46〜0.50mmである。線状ヒータ460の電力密度は、例えば0.95W/cm2である。
線状ヒータ460は、粘着層452bおよび例えばアルミニウムからなる金属箔453で覆うように金属箔451に取り付けられる。金属箔453の膜厚は、例えば50μmである。
このように、単一のエナメル線463上に絶縁被覆層462を形成することにより二重の絶縁構造を確保することができる。
また、絶縁被覆層462は比較的薄くても十分な絶縁性が得られる。したがって、絶縁被覆層462の厚さを薄くすることができる。上記の例では、線状ヒータ460の樹脂層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の厚さは、0.12mm程度であり、極めて薄い。この場合、発熱線463aから金属箔451および便座ケーシング410への熱伝導を極めて俊敏に行うことができる。
ちなみに従来の便座装置においては、線状ヒータのシリコーンゴムまたは塩化ビニール等からなる被覆チューブの厚さは、上記の例の約10倍の1mm程度ある。このような被覆チューブの熱伝導速度は桁違いに遅く、便座の昇温速度を速くすることはできなかった。
従来の便座装置において便座の昇温速度を無理やり速くするためにヒータ線に大きい電力を供給した場合、断熱状態でヒータ線の温度を高くした場合と同様に、被覆チューブが溶融および焼損する。そのため、このような方法による便座の昇温は実用できなかった。
一方、本例のように耐熱性能に優れたエナメル線463をヒータ線として使用した場合、十分短時間で便座を昇温でき、かつ電気絶縁性および安全性を確保できる。したがって、本例の構造は、種々の便座装置に有効に実用することができる。
また、本例の構造では、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462等からなる樹脂層を0.1〜0.4mm程度の薄い厚さで形成できる。それにより、発熱線463aおよび樹脂層の絶対温度が低い温度に維持された状態で、便座を急速に昇温させることができる。その結果、高価な耐熱絶縁材料でなく比較的安価な絶縁材料を用いることができる。
また、本例においては、線状ヒータ460の熱を便座ケーシング410に効率よく伝達するために、線状ヒータ460をアルミ箔451,452で挟んでいる。ここで、本例の線状ヒータ460においては、エナメル層463bおよび絶縁被覆層462を薄くできるので、線状ヒータ460の外径を細く(約φ0.2〜φ0.4)できる。この場合、アルミ箔451とアルミ箔452とを貼り合わせる際に、アルミ箔451とアルミ箔452との間の空気層を小さくすることができるとともに、アルミ箔451,452のしわを少なくすることができる。それにより、エナメル線463の局所高熱が抑制され、エナメル線463の断線および電気絶縁層(エナメル層463bおよび絶縁被覆層462)の損傷が防止される。その結果、便座装置110の長寿命化が可能になる。
また、エナメル線463を細くできるので、便座ヒータ450の重量を低減でき、便座開閉トルクを小さくすることができる。それにより、便座開閉用の電動開閉ユニットを小型化でき、便座装置110の小型化が可能となる。
(3−4)便座ヒータ450の動作
次に、便座ヒータ450の動作について説明する。便座ヒータ450のヒータ始端部460aとヒータ終端部460bとの間に一定の電圧が印加されると、内部の発熱線463aを電流が流れ、この発熱線463aが発熱する。このとき、発生した熱は、発熱線463aからエナメル層463bおよび金属箔451,453を通って上部便座ケーシング410の着座面410Uに伝導する。
線状ヒータ460は、絶縁被覆層462が260℃程度の耐熱性を有するPFAにより形成されるため、絶縁被覆層462の厚みが例えば0.1〜0.15mmと薄くても、発熱線463aの100〜150℃への急速昇温時にもエナメル層463bが破壊されることが防止される。したがって、線状ヒータ460から着座面410Uへの熱伝導を迅速に進行させることにより、着座面410Uを急速に昇温させることができる。
この場合、線状ヒータ460への通電開始から所定の最適温度に到達するのは5〜6秒と短時間であり、例えば、使用者がトイレットルームに入室して着座面410Uに着座するまでに要する7〜8秒より短時間である。したがって、使用者がトイレットルームに入室したことを人体検知センサ600により検知されると同時に線状ヒータ460に通電を開始しても、使用者が着座するまでには着座面410Uを十分に最適温度に到達させることができる。
さらに、図7の着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1は、中央部の領域G2に比べて放熱性が高い。本実施の形態では、内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460が密に配列される。したがって、使用者が着座面410Uに着座した瞬間に温度むらおよび冷感を感じることがない。
一方、線状ヒータ460は、全長10m程度と長く、発熱線463aの急速昇温に伴って急速な膨張が発生し、結果として長さ方向に伸張する。また、通電が停止された場合は、発熱線463aの温度が低下し、収縮により元の長さに戻る。つまり、発熱線463aには熱膨張および熱収縮による熱応力歪が反復して形成される。
線状ヒータ460と金属箔451,453との密着が弱く、または線状ヒータ460と
着座面410Uとの間に隙間が形成された場合、熱応力歪全体がそれらのうちの最も動きやすい箇所に集中する。その結果、線状ヒータ460に比較的強い屈伸運動が発生し、その応力疲労の蓄積により発熱線463aの破断といった線状ヒータ460の破損が発生する。
本例では、線状ヒータ460に熱応力緩衝部として複数の折曲部が形成されるので、これらの折曲部が全体の熱応力歪を細かく分散させるとともに、折曲部が熱応力歪を吸収する作用をも果たす。したがって、折曲部での熱応力は極めて小さく、結果として微小な屈伸の発生に留まる。その結果、発熱線463aの破断という事態には至らず、線状ヒータ460の長寿命化および耐久性が向上する。
なお、比較的放熱の多い着座面410Uの内側の領域G3および外側の領域G1では、中央部の領域G2に比べて線状ヒータ460の間隔を大きくし、折曲部の数を少なくてもよい。
上記のように、線状ヒータ460の全長はほぼ10mと長く、かつ線状ヒータ460には折曲部が形成される。そのため、着座面410Uへの線状ヒータ460の装着時に、これらの線状ヒータ460の配列を維持および固定化する必要がある。線状ヒータ460を金属箔451,453で挟持した状態で線状ヒータ460を金属箔451,453に密着させることによりユニット化された便座ヒータ450が構成される。したがって、線状ヒータ460の配列を強固に維持した状態で線状ヒータ460を着座面410Uに接着することができる。
また、金属箔451,453により線状ヒータ460が挟持されるように構成されるので、金属箔451,453により均等に熱分散が行われる。それにより、線状ヒータ460が高温化することを防止することができる。また、着座面410Uが均熱化されるとともに、便座ヒータ450の破損が防止される。
(3−5)便座装置の通電シーケンス
まず、通電選択手段である夏季スイッチ335が選択されていない、通常の場合の通電シーケンスについて説明する。
便座ヒータ450の駆動の制御は、便座ヒータ450を駆動する電力を大きく3つに変化させることにより行う。
例えば、便座部400を第1の温度勾配で昇温させる場合、図3のヒータ駆動部402は約1200Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(1200W駆動)。
前述のように、便座ヒータ450の抵抗値は0.833Ω/mであり、全長10mである。したがって、便座ヒータ450の抵抗値は8.33Ωとなる。この抵抗値を有する便座ヒータ450に交流100Vが印加されると、(100V×100V)÷8.33Ω=1200Wの電力が発生する。すなわち、便座ヒータ450に交流電源の全周期に渡って電流を流すことにより、1200Wの電力が発生する。
また、便座部400を第1の温度勾配よりもやや緩やかな第2の温度勾配で昇温させる場合、ヒータ駆動部402は約600Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(600W駆動)。さらに、便座部400の温度を一定に保つ場合、ヒータ駆動部402は約50Wの電力で便座ヒータ450を駆動する(低電力駆動)。なお、低電力駆動とは、1200W駆動および600W駆動に比べて十分に低い電力(例えば、0W〜50Wの範囲内の電力)により便座ヒータ450を駆動することをいう。
1200W駆動、600W駆動および低電力駆動の切替えは、制御部90の通電率切替回路が、ヒータ駆動部402から便座ヒータ450への通電を制御することにより行われる。
ヒータ駆動部402には図示しない電源回路から交流電流が供給されている。そこで、ヒータ駆動部402は、通電率切替回路から与えられる通電制御信号に基づいて供給された交流電流を便座ヒータ450に流す。
図9は、便座ヒータ450の駆動例および便座部400の表面温度の変化を示す図である。
図9においては、便座部400の表面温度と時間との関係を示すグラフと、便座ヒータ450を駆動する際の通電率と時間との関係を示すグラフとが示されている。これら2つのグラフの横軸は共通の時間軸である。
本例では、使用者が予め暖房機能をオンし、便座設定温度を高く(38℃)設定した場合を想定する。
冬季等室温が待機温度である18℃よりも低い場合、制御部90(図3)は、便座部400の温度を18℃となるように温度調整する。このように、制御部90は、人体検知センサ600により使用者の入室が検知されるまでの待機期間D1の間、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように、便座ヒータ450の低電力駆動を行う。
制御部90は、時刻t1で人体検知センサ600により使用者の入室が検知された場合、突入電流低減期間D2の間、600W駆動を行う。なお、この600W駆動は、突入電流を十分に低減するために行う。この場合、便座部400の表面温度はやや緩やかな第2の温度勾配で上昇される。
その後、制御部90は、突入電流低減期間D2の経過後の時刻t2で、便座ヒータ450の1200W駆動を開始し、第1の昇温期間D3の間便座ヒータ450の1200W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第1の温度勾配で上昇される。
ここで、便座部400の表面温度は急激に上昇される。便座ヒータ450の1200W駆動は、便座部400の表面温度が所定温度(例えば30℃)に達するまで行われる。もちろん、この所定温度は暖房温度として設定された温度であってもよいが、この所定温度は暖房温度にまで十分に上昇した温度でなく、それよりも低くても、使用者が着座した際に冷たいという不快感情を生じない最低限界の温度(限界温度)であればよい。この限界温度は、発明者らの実施した被験者実験により約29℃であることがわかっている。
このように、第1の昇温期間D3においては、便座部400の表面温度が1200W駆動により迅速に所定温度まで上昇される。それにより、使用者は便座部400を冷たいと感じることなく便座部400に着座することができる。
また、上述のように、便座部400の表面温度を急激に上昇させると、その温度変化にオーバーシュートが生じる。しかしながら、本例では、便座部400の表面温度が所定温度に達したときに便座ヒータ450の1200W駆動を600W駆動に切替える。したがって、便座部400の表面温度の変化がオーバーシュートした場合でも、その表面温度は便座設定温度を超えない。その結果、使用者が着座時に便座部400を熱いと感じること
が防止される。
続いて、制御部90は、第1の昇温期間D3の経過後の時刻t3で、便座ヒータ450の600W駆動を開始し、第2の昇温期間D4の間便座ヒータ450の600W駆動を継続する。この場合、便座部400の表面温度は上述の第2の温度勾配で上昇される。
便座ヒータ450の600W駆動は、便座部400の表面温度が便座設定温度(38℃)に達するまで行われる。
第2の温度勾配は第1の温度勾配よりも緩やかである。これにより、便座部400の表面温度の変化に大きなオーバーシュートが生じることが防止される。
制御部90は、第2の昇温期間D4の経過後の時刻t4で、便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、第1の維持期間D5の間便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。それにより、便座部400の表面温度が便座設定温度で一定となる。
制御部90は、時刻t5で着座センサ610により使用者の便座部400への着座が検知された場合、低電力駆動の通電率を低下させ、第1の着座期間D6の間便座部400の表面温度が便座設定温度を維持するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第1の着座期間D6は約10分に設定される。
また、制御部90は、第1の着座期間D6の経過後の時刻t6で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の着座期間D7の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)に低下するように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。本例では、第2の着座期間D7は約2分に設定される。
制御部90は、第2の着座期間D7の経過後の時刻t7で、低電力駆動の通電率をさらに低下させ、第2の維持期間D8の間便座部400の表面温度が便座設定温度よりもやや低い温度(36℃)で一定となるように便座ヒータ450の低電力駆動を継続する。以下の説明では、第2の維持期間D8において一定に維持される期間便座部400の表面温度、すなわち便座設定温度よりもやや低い温度を維持温度と称する。
このように、本例では、使用者が便座部400に着座した後、制御部90が徐々に便座部400の表面温度を低下させる。それにより、使用者が低温やけどすることが防止される。
制御部90は、時刻t8で着座センサ610により使用者が便座部400から離れたことを検知すると、停止期間D9の間便座ヒータ450の駆動を停止する。それにより、便座部400の表面温度が低下する。
制御部90は、便座部400の表面温度が18℃に達した時刻t9で、再び便座ヒータ450の低電力駆動を開始し、便座部400の表面温度が18℃で一定となるように待機期間D10の間便座ヒータ450の低電力駆動を維持する。
このように温度勾配が徐々に緩やかになる場合、便座部400の温度変化により生じるオーバーシュートを十分に小さくすることができる。
本例では、使用者の便座部400への着座後、便座ヒータ450の駆動に用いる電力を調整することにより便座部400の表面温度を徐々に低下させているが、便座ヒータ450の駆動は使用者の便座部400への着座時に停止してもよい。この場合においても、使
用者が低温やけどすることが防止される。
上記のように、本例では、時刻t8に使用者が便座部400から離れたことが検知されることにより便座ヒータ450の駆動が停止される旨を説明したが、便座ヒータ450の駆動の停止は、使用者が便座部400から離れたことが検知された時刻t8から一定時間(例えば1分間)経過後に行われてもよい。この場合、一度使用者が便座部400から離れた後に再度便意をもよおし、再度便座部400に着座する際にも、便座部400の表面温度が低下しない。これにより、使用者は快適に便座部400に着座することができる。
1200W駆動時、600W駆動時および低電力駆動時における便座ヒータ450への通電状態を通電率切替回路の通電制御信号とともに説明する。
以下の説明において、通電率とは交流電流の1周期に対して便座ヒータ450に交流電流を流す時間の割合をいう。
図10(a)は1200W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図10(b)は1200W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図10(b)に示すように、1200W駆動時における通電制御信号は常に論理「1」となる。ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図10(a)太線部)。それにより、全周期の期間に渡って交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約1200Wの電力で駆動される。
図11(a)は600W駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図11(b)は600W駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図11(b)に示すように、600W駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%に設定される。
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図11(a)太線部)。それにより、半周期の期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が約600Wの電力で駆動される。
図12(a)は低電力駆動時に便座ヒータ450を流れる電流の波形図、図12(b)は低電力駆動時に通電率切替回路からヒータ駆動部402に与えられる通電制御信号の波形図である。
図12(b)に示すように、低電力駆動時における通電制御信号は、ヒータ駆動部402に供給される交流電流と同じ周期のパルスからなる。パルスのデューティー比は50%よりも小さく(例えば数%程度)に設定される。
ヒータ駆動部402は通電制御信号が論理「1」のときに電源回路から供給される交流電流を便座ヒータ450に流す(図12(a)太線部)。各周期においては、パルス幅に相当する期間交流電流が便座ヒータ450に流れる。その結果、便座ヒータ450が例えば約50Wの電力で駆動する。
上記の他、便座部400の温度を低くする場合、または便座装置110の暖房機能をオフしている場合等には、通電率切替回路はヒータ駆動部402に通電制御信号を与えない(通電制御信号を論理「0」に設定する)。これにより、ヒータ駆動部402は便座ヒータ450を駆動しない。
ここで、一般に、電子機器に供給される電流が高調波成分を有する場合、ノイズが発生する。本例では、上述のように便座ヒータ450の1200W駆動または600W駆動を行う場合には、便座ヒータ450に供給される電流がサインカーブを描くように変化するので、電流の大きさが大きくなってもノイズの発生が十分に低減される。
また、便座ヒータ450の低電力駆動を行う場合、便座ヒータ450に供給される電流は高調波成分を有するが、電流の大きさが1200W駆動時および600W駆動時に比べて非常に小さいので、ノイズの発生が十分に低減される。
上記のように、本実施の形態では、便座ヒータ450を1200W、600Wおよび約50Wの電力で駆動するとしているが、他の大きさの電力で便座ヒータ450を駆動してもよい。
例えば、便座ヒータ450に半周期の期間交流電流を流す場合には、交流電流を流すタイミングを2周期または3周期等所定の周期の間隔で設定する。それにより、1200W、600Wおよび約50Wとは異なる大きさの電力で、ノイズの発生を十分に防止しつつ便座ヒータ450を駆動することができる。
なお、本例では、制御部90は通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450に電流を供給し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止しているが、通電制御信号が論理「1」のときに便座ヒータ450への電流の供給を停止し、通電制御信号が論理「0」のときに便座ヒータ450に電流を供給してもよい。
なお、便座ヒータ450のオンおよびオフは時間により制御されるため、時間の計測がずれると便座部400の温度が所定値を超えたり、所定値に達しない。そこで、時間の計測がずれないように、制御部90では、2つの計測源にて便座部400のオンの時間を計測する。1つの計測源として、制御部90のプログラムの実効速度を規定する発振子により便座ヒータ450のオンの時間を計測し、もう1つの計測源にて、交流電圧の周期を基準として便座ヒータ450のオンの時間を計測する。これらの計測値の少なくとも一方が規定時間を超過すると、次の通電パターンに移行する。
特に、便座に1200W通電される時間が正確に計測されることにより過昇温が確実に防止される。これにより、さらに機器の安全性が向上する。ここでは、計測源を複数設けることにより計測の精度を向上させる方法について記載したが、便座ヒータ450がフル通電される時間を計測し、強制的にヒータへの通電を遮断もしくは制限する方法であっても、同様の効果を得ることができる。
次に、通電選択手段である夏季スイッチ335が選択されている場合の、通電シーケンスについて説明する。
本発明の実施の形態1における便座ヒータ450への通電と便座表面温度と着座の関係を図13に示す。
図13において、人体がトイレ室内に存在しないときは、便座400の表面温度は待機
温度もしくは室温に保たれている。特に夏場においては室温が待機温度よりも高くなるため、便座表面温度は室温となりヒータへの通電はゼロである。トイレ室内に備えられた人体検知センサ600によりトイレ室内に人体が検知されると便座ヒータ450へ通電が開始される。便座ヒータ450への通電パターンは、基本的には上記夏季スイッチ335が選択されていない、通常の場合の通電シーケンスと同様であるが、便座部400の表面温度が便座設定温度である32℃になるように通電を行い、この時点で通電を停止する。便座ヒータ450への通電期間は、室温が30℃の場合、人体検知センサ600が人体を検知してから2〜3秒の間である。一般的には、使用者がトイレットルームに入室し、脱衣して便座部400に着座するのに要する時間は約5秒であり、着座前に便座ヒータ450への通電は終了する。
また、夏場は使用者の着衣が少なく、着座までの時間が短縮される場合も想定されるため、便座部400の表面温度が設定温度である32℃に達していない場合でも、着座センサ610が人体を検知した場合には即座に便座ヒータ450への通電を停止する。
一旦、上記のように便座ヒータ450への通電を停止した場合、人体検知センサ600が人体の検知を一旦解除し、人体を再検知されるまで、便座ヒータ450への再通電は行われない。
これにより着座する前に便座暖房のための便座ヒータ450への加熱が完了し、着座してから便座の温度が昇温しないため、暑いと感じることがなく、また着座前に適度な便座温度になっているので、着座時に冷たいと感じることがない。人体着座直後は便座の熱は人体に取られるため一瞬低下するが、その後は人体の体温によりなじむため、着座中に通電を行わなくても冷たい等の不快に感じることはない。
特に本実施の形態のように熱伝導率が100W/m・Kを超えるような熱の伝わりがよい金属を上部便座ケーシング410に採用している場合は、人体への熱の移動が多くなるため、着座中にわずかでも通電すると暑いと感じやすく、逆に室温に馴染んだ状態の便座400に着座すると人体の熱が便座へ瞬時に取られるため冷たいと不快に感じることが多い。よって熱伝導率が100W/m・Kを超えるような材質を採用した場合は、本実施の形態のような通電方法が特に有益である。また、上部便座ケーシング410が樹脂であっても熱容量が小さい場合は同等の効果がある。
本実施の形態の便座装置は便座部を所定温度に保つのではなく、着座前にのみ通電を行い、便座暖房を完了させておくことで着座した瞬間の不快感、着座中の不快感をなくすことが可能である。特に、夏場などは、通常の便座の暖房設定温度(使用者が、設定する便座温度)よりも低い温度までしか昇温させないようにするので、さらに省エネルギーとなる。本実施の形態では、使用時にのみ便座暖房を行うために、便座の昇温性能を向上させる構成となっており、アルミニウムを用いた熱容量が少なく、かつ熱伝導性がよい着座部を形成している。この着座部の構成により、通常の樹脂で構成した便座とは、人体の皮膚が直接に接触した際の感覚が異なり、特に夏場でも、便座を暖房しない場合には、着座時に人体の皮膚から熱が便座へ移動し、冷たい感覚が、樹脂便座よりも強く感じられる。よって、本実施の形態の便座では、夏場でも所定の温度まで上げて便座部を暖房することで、着座時の快適感が損なわれない。
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態が前記実施の形態1と異なる点は人体を検知してからの通電方法である。実施の形態1においては、便座ヒータ450への通電は便座部400の表面温度が所定温度である32℃になるような通電シーケンスにより通電を行ったが、本実施の形態における通電シーケンスは、所定容量(600W
)を所定時間(2秒間)通電を行うものである。
本発明の目的は使用者に「冷たい」という不快を感じさせない程度に通電を行えばいいため、厳密な温度制御は必要ない。そこで本実施の形態においては、人体を検知してから2秒間のみ600Wの通電を行うといった単純な通電シーケンスを採用したことにより、制御方法がシンプルになり、夏季設定機能を低コストで設置することが可能となる。
しかしながら、室温があまりにも高い場合は(例えば室温が35℃以上)2秒の通電で着座前にヒータ通電を停止したとしても暑いと感じる。逆に室温が低い場合(25℃以下の場合)であれば2秒の通電では便座表面温度が適温まで上昇せず冷たいと感じてしまう。
この課題を解決するために、あらかじめ通電開始前の便座部の表面温度をサーミスタ401aにより検知するか、あるいは別途設けた室温検知手段で室温を検知し、予め検知温度毎に複数設定したヒータ容量あるいは通電時間の通電を行うことにより、より快適性をより向上することができる。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態が前記実施の形態1および2と異なる点は、便座装置の使用を検知する使用検知手段が異なることである。実施の形態1および2においては、トイレットルームに入室した人体を検知する人体検知センサと使用者が便座部に着座したことを検知する着座センサ610を備え、これらのセンサの検知信号により便座ヒータ450の通電を制御していた。
これに対し、本実施の形態においては使用検知手段として距離検知手段900を備え、人体が所定の距離内に存在するときのみ使用者が便座装置を使用しているものとして検知するものである。すなわち、図14の斜線の範囲に使用者が存在している場合に検知するものである。
使用者が便座装置から100cm以内に近づいたら便座ヒータ450に通電を開始し、実施の形態1と同様に便座部400の表面温度が所定温度である32℃になるような通電シーケンスにより通電を行い、使用者が20cm以内に近づいたら通電を停止する。
この場合は実施の形態1と異なるのは便座部400の表面温度が所定温度の32℃に到達しても通電を停止せず、32℃を維持するように通電を制御し、使用者が20cm以内に近づいたら通電を停止する点が実施の形態1および2と異なるものである。
これにより、使用者が便座部400に着座したときは、便座の表面温度は所定温度の32℃であり、しかもその時点では便座ヒータ450への通電は停止しているため、冷たさや暑さを感じることがなく、より快適に便座装置を使用することができるものである。
なお、実施の形態1〜3においては、人体が検知されていない非使用時は便座ヒータへの通電を非通電もしくは低温で便座を保温し、人体の検出とともに瞬時に便座を適温へ上昇させる瞬間暖房便座について述べたが、常時適温に保温している保温便座においてもこの制御は適用できるものである。すなわち常時適温に保温する保温便座であっても、夏場の室温が高い時期は着座時に通電が行われると暑く感じる。よって人体がトイレ室内に入室したと同時、もしくは便座に着座する直前に便座ヒータへの通電を停止することで同様の効果が得られる。
また、実施の形態1〜3においては、通電選択手段として夏季スイッチ335を設置し
、使用者が夏季スイッチ335を操作することにより、前記制御が実施されるようにしたが、これに限るものではなく、例えば、夏季スイッチ335に加え、夏季スイッチ335が操作されていない場合でも、室温が非常に高い(例えば32℃以上)場合に、室温検知手段により室温を検知し、実施の形態1〜3に記載したような制御を行うことにより、より快適性を向上することができる。
また、室温を検知する室温検知手段の出力に応じて通電選択手段による通電形態を自動的に選択することにより、室温検知手段の検知温度が所定温度(例えば30℃)以上になった場合、実施の形態1〜3に記載したような制御を行うことにより、スイッチ操作を割愛することができるため、より使い勝手の良い便座装置を提供することができる。
室温検知手段は、便座装置本体の一部であって、洗浄水を加熱する加熱手段や、温水、便座の暖房面などの便座装置本体内部に収納される発熱部材や洗浄水温の影響をうけない場所でトイレ室内の温度を測定できるように配設すればよい。また別体に設けられていてもよく、たとえば遠隔操作装置300に室温検知手段を設けて、検知温度信号の送受信を適宜行うようにしてもよい。また、使用者の入室を検知する人体検知手段の検知感度を補正するために設けた室温検知手段や、トイレ室暖房のための部屋暖房装置に設けられた室温検知手段などの、他の機能ユニットの駆動のために設けられた温度検知手段を兼用するように構成してもよい。さらに、外気温と連動する給水部からの入水温度を室温検知する代わりに参照するようにしてもよい。