JP5680880B2 - ろう付接合済Al部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Al部材同士を線状、棒状あるいは管状のAl合金ろう材ワイヤで接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法に関する。
従来、ルームエアコンの熱交換器は、Cu製の押出し管を冷媒管とし、Al製フィン材と拡管接合されることにより作製されていた。近年、エアコンのリサイクル及びコストダウンの観点からCu製の管をAl製に替える動きがある。しかし、Cuに比べAlは耐食性が劣るため、Al製の管を用いた場合には耐食寿命が問題となる。
Al製の配管を使用した熱交換器の構成部材の接合には、Al−Si系ろう材が用いられる。しかし、溶融したろう材が凝固する際に、カソード反応を促進させる共晶Si相とZnやCu等の成分元素の濃縮した共晶α相とが共晶組織として析出するため、ろう付接合部(以後、フィレットと呼ぶ。)及びその周辺部の耐食性が特に問題となる。
特許文献1には、Al−Si系合金材から構築された中空の鞘と、当該鞘内に充填されたフッ化セシウムを含むフッ化物系非腐食性フラックス粉末及びCu線材からなることを特徴とするアルミニウム合金ろう付用ろう材ワイヤが記載されている。
しかし、特許文献1では、ろう材の融点を低下させるためにCu線材を用いているが、フィレットにCuが高濃度に濃縮し、フィレットの電位が周辺部よりも高くなるので、腐食速度を速めるおそれがある。
特許文献2には、AlまたはAl−Si系合金からなり、長さ方向に2個以上の孔が形成された中空材の前記孔に、フラックス粉末と、必要に応じてろう材成分用の金属粉末とが充填され、フラックスを除くろう材成分中のSi含有量が3〜15wt%に規定されるとともに、フラックスを除くろう材成分とフラックスとの重量比が99.9:0.1〜70:30に規定されてなることを特徴とするフラックス含有Al合金ろう材が記載されている。
しかし、特許文献2では、フィレットの孔食電位を下げる方法については特に記載も示唆もされておらず、記載のろう材をろう付加熱して形成されたフィレットの孔食電位は周辺部に対して高くなるため、フィレット周辺の腐食速度が増大するおそれがある。
従来は管材がCuであったために、フィレット部の腐食という問題が発生しにくかったため、管材及びフィン材とフィレット部の孔食電位を調整して耐食性を向上させるという必要性がなかったため、いずれの特許文献にもその示唆がないものと思われる。
特開2006−326621号公報 特開平8−112691号公報
本発明の課題は、Al部材同士のろう付接合部及びその周辺部の耐食性に優れたろう付接合済Al部材の製造方法を提供することである。
Al部材同士のろう付接合には、Al−Si系ろう材ワイヤが好適に用いられるが、溶融したろう材が凝固する際に、成分元素が濃縮するため、フィレット及びその周辺部の耐食性が問題となる。本発明者らは、フィレット及びその周辺部の耐食性に及ぼす、ワイヤの成分、特にSi、Znについて鋭意検討を行い、その成分範囲を制御することで、フィレット及びその周辺部の耐食性を大幅に向上できることを見出した。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
すなわち、請求項1記載の第1の発明は、複数のAl部材をAl合金ろう材ワイヤを用いて接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法であって、前記Al合金ろう材ワイヤは、Si:9.0〜14.0mass%、Zn:0.5〜6.0mass%、Cu:0.5mass%以下、Fe:0.1〜0.9mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、前記ワイヤを用いたろう付後のフィレットと周辺のAl部材との孔食電位の関係が、(フィレットの孔食電位)−(Al部材の孔食電位)=−150〜200mVであることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法である。
また、請求項2記載の第2の発明は、請求項1記載のCuの含有量が0.1〜0.5mass%であることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法である。
さらに、請求項3記載の第3の発明は、請求項1又は請求項2記載のAl合金ろう材ワイヤが、中空部を有する管状構造であり、当該中空部にフラックス粉末が充填されていることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法である。
さらに、請求項4記載の第4の発明は、請求項3に記載のAl合金ろう材ワイヤにおいて、管の外径と内径との比が、0.1〜0.55であることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法である。
本発明に従って、Al部材同士のろう付接合を行えば、フィレット及びその周辺部の耐食性を大幅に向上させることができる。
ろう付時のろう材ワイヤの配置例。 フィレット長さ測定の模式図。 孔食電位の定義を説明するための、電流密度と電極電位との関係を示すグラフ。
以下、本発明の一実施形態のろう付接合済Al部材の製造方法について説明する。
本実施形態のろう付接合済Al部材の製造方法は、複数のAl部材をAl合金ろう材ワイヤを用いて接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法であって、前記Al合金ろう材ワイヤは、Si:9.0〜14.0mass%、Zn:0.5〜6.0mass%、Cu:0.5mass%以下、Fe:0.1〜0.9mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、前記ワイヤを用いたろう付後のフィレットと周辺のAl部材との孔食電位の関係が、(フィレットの孔食電位)−(Al部材の孔食電位)=−150〜200mV(本電位差を以下ではΔEとする。)であることを特徴とする。
(1)Al合金ろう材ワイヤ
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤにおける、ろう材成分について説明する。
Si含有量は、9.0〜14.0mass%とする。Siは、Al合金の融点を下げるために添加する。含有量が約12%前後で最も液相線温度が低下するため、含有量が9.0mass%より少ない、あるいは14.0mass%を超えると、その効果が十分でなくなり液相線温度が高くなってしまう。したがって、Si含有量は、9.0〜14.0mass%の範囲とされ、9.5〜12.5mass%が特に好ましい。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤにおけるZn含有量は、0.5〜6.0mass%とする。Znは、Al合金の孔食電位を卑にする働きがあり、Siを高濃度に含有しているフィレットとその周辺部との孔食電位差を小さくすることができる。0.5mass%より小さいとその効果が十分ではなく、6.0mass%を超えると、孔食電位が卑になりすぎて、フィレットの溶解が促進されてしまう。したがって、Zn含有量は、0.5〜6.0mass%の範囲とされ、1.0〜3.0mass%が特に好ましい。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤにおけるCu含有量は、0.5mass%以下とする。例えばZn溶射したAl材を接合する場合、溶射面のZnがフィレットに拡散し、Znが濃縮することで、フィレットの孔食電位が卑になりすぎて、フィレットの溶解が促進されることがある。このような場合、Cuを添加すると、溶融したろう材が凝固する際に、添加したCuが濃縮し、フィレットの孔食電位を貴にして、フィレットの溶解を抑制するので、Cuを添加することが好ましい。Cuの含有量を0.5mass%以下とするのは、Cuが0.5mass%を超えるとフィレットの孔食電位が貴になりすぎて腐食速度を増大させるおそれがあるからである。また、Cuを添加する場合、その含有量は0.1mass%以上とすることが好ましい。0.1mass%未満ではこの効果が十分でないからである。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤにおけるFe含有量は、0.1〜0.9mass%とする。
Feは鋳造中にFe系金属間化合物として晶出し、耐食性を低下させるおそれがあるので、少ない方が望ましく、0.4mass%以下とするのが更に望ましく、0.2mass%以下とするのがさらに望ましい。0.1mass%を下限としたのは、通常の製造方法でワイヤを製造すれば、Feの含有量は0.1mass%以上になるからである。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤの不可避的不純物は、個々の成分が0.05mass%以下、全体で0.15mass%以下に制限されるのが望ましい。
次に、本実施形態におけるフィレットの孔食電位は、その周囲の孔食電位との関係が、ΔE=−150〜200mVの範囲とされる。ここで、フィレットの周囲とは、腐食の進行する際に、フィレットと電気的に接触しうる範囲で、具体的にはフィレットから50mm程度の領域を示す。さらに、フィレットの周囲に孔食電位の異なる複数の部材が接合される場合には、その中で最も卑な部位との電位差が上記の範囲とされるのが望ましい。孔食電位の卑な相は、貴な相よりも優先的に溶解する。孔食電位差は、優先溶解速度を表す指標となり、孔食電位差が大きいほど、孔食電位の卑な相の溶解速度が大きくなる。ΔE<0mVの場合、フィレットが最も卑な相となるため、フィレットが優先的に溶解しうる。−150mV≦ΔE<0mVの範囲では、フィレットの優先溶解は発生するが、溶解速度が遅いため、フィレットの著しい腐食とはならない。ΔE<−150mVでは、Al部材の孔食電位に比べ、フィレットの孔食電位が卑すぎるため、フィレットの溶解速度が速くなり、フィレットが早期に消失してしまう。一方、ΔE≧0mVの場合、フィレット周囲のAl部材が最も卑な相となるため、フィレット周囲のAl部材が優先的に溶解しうる。0mV≦ΔE≦200mVの範囲では、フィレット周囲のAl部材の優先溶解は発生するが、溶解速度が遅いため、フィレット周囲のAl部材の著しい腐食とはならない。ΔE>200mVでは、フィレットの孔食電位に比べ、Al部材の孔食電位が卑すぎるため、Al部材の溶解速度が速くなり、Al部材が早期に消失してしまう。以上の理由から、フィレットの孔食電位は、その周囲の孔食電位との関係が、ΔE=−150〜200mVの範囲とした。さらに望ましくは、フィレットの孔食電位とその周囲の孔食電位との関係が、ΔE=−50〜100mVであることがより好ましい。
また、本実施形態において中空部に充填されるフラックス粉末は、フッ化Al系のフラックスやフッ化Cs系フラックスを用いるのが好ましい。このときのAlに対するフラックスの体積比は、1〜30%とするのが好ましく、管の外径と内径との比は、0.1〜0.55とする。
本実施形態に係るAl合金ろう材ワイヤの製造方法について説明する。まず、前記合金組成を有するAl合金の円筒状ビレットを作製する。フラックス粉末を充填する際には、ビレットに中空の孔を空け、該孔の内部にフラックスを充填しておく。次いで、このビレットを通常の方法により棒状ないしは線状に押出し、必要に応じ引抜き加工を行い、所定の形状とする。
(2)Al部材
Al合金ろう材ワイヤによって接合されるAl部材は、Al合金(Alを主成分とする合金)からなる部材である。Al合金としては、JIS1100、1200等に代表される1000系合金、JIS3003、3004等に代表される3000系合金およびJIS6061、6063等に代表される6000系合金が好適に用いられる。Al部材の表面には、一般に犠牲防食層が付与される。Zn溶射によって付与される場合その溶射量は、5〜20g/mが望ましく、Al−Znクラッド層によって付与される場合には、Zn含有量0.5〜3%が望ましい。Al部材として、例えばJIS2024に代表される2000系合金を用いると、Al部材の電位が貴になりすぎて、ΔE<−150mVの関係になりやすい。また、Al−Znクラッド層のZn濃度が5%を超える場合には、Al部材の電位が卑になりすぎて、ΔE>200mVの関係になりやすい。
Al部材は、例えば、管材である。この管材には、通常の押出管、コンフォーム押出管、ポートフォール管のいずれもが好適に用いられる。
Al部材は、一例では、Si:0.2〜1.0mass%、Cu:0.05〜0.7mass%、Mn:0.3〜1.5mass%、Fe:0.1〜0.7mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物である組成を有する。
Si含有量は、0.2〜1.0mass%の範囲が望ましい。Siは、Alに固溶したり金属間化合物を生成したりすることによって、強度を向上させる元素である。さらに、Siの添加はAlの電位を貴にする。Siの含有量が0.2mass%以上の場合、このようなSi添加効果を十分に得ることができる。また、Si含有量が多すぎると、晶出した単体のSiがカソードとなり耐食性を低下させるおそれがあるが、1.0mass%以下であれば、そのようなおそれがない。したがって、Siの含有量は0.2〜1.0mass%とする。更に望ましいSiの含有量は0.3〜0.6mass%である。
Cu含有量は、0.05〜0.7mass%の範囲とするのが望ましい。Cuは孔食電位を貴にする働きがある。この効果を得るためには、Cu量を0.05mass%以上とするのが望ましい。また、Cu含有量が多すぎると、材料製造時の熱履歴によって、Al合金中にCu系金属間化合物が析出する場合があり、このCu系金属間化合物はカソード反応を促進させるため、腐食速度を増大させる場合がある。この現象は、Cu量が0.7mass%以下の場合には生じにくい。したがって、Cu量の含有量は0.05〜0.7mass%とするのが望ましい。更に望ましいCuの含有量は0.1〜0.5mass%である。
Mn含有量は、0.3〜1.5mass%の範囲とするのが望ましい。MnはAl−Mn系金属間化合物として晶出又は析出して強度を向上させる元素である。また、Al−Mn系金属間化合物は、生成する際にFeを取り込む。Al−Fe系金属間化合物よりもAl−Fe−Mn系金属間化合物の方が、カソード反応が不活性であり、Feによる耐食性阻害の影響を抑制する働きがある。Mnの含有量が0.3mass%以上の場合、このようなMn添加効果を十分に得ることができる。Mn含有量が多すぎると、巨大な金属間化合物が晶出し、押出加工性を阻害するおそれがあるが、Mn含有量が1.5mass%以下であれば、このようなおそれがない。したがって、Mn量の添加量は0.3〜1.5mass%とするのが望ましい。更に望ましいMnの含有量は0.8〜1.3mass%である。
上記のAl合金に含まれるFeの含有量が多すぎると、鋳造中にFe系金属間化合物として晶出し、耐食性を低下させるおそれがあるが、Fe含有量が0.1〜0.7mass%の場合にはこのようなおそれがない。Fe含有量は、0.4mass%以下とするのが更に望ましく、0.2mass%以下とするのがさらに望ましい。0.1mass%を下限としたのは、通常の製造方法でAl部材を製造すれば、Feの含有量は0.1mass%以上になるからである。
上記のAl合金には、強度や耐食性向上を目的として、Mg、Cr、Ti、V、In、Sn等が含有されていても良い。これらの元素は、全体で0.3mass%以下とされるのが望ましい。
上記のAl合金には、上記成分以外には残部がAlと不可避的不純物からなる。不可避的不純物となる成分は、おのおの0.05mass%以下で、かつ総量で0.15mass%以下であることが望ましい。
以下、本発明の実施例及び比較例を説明する。以下の実施例及び比較例では、円筒状のAl合金ろう材ワイヤと、中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤを用いてAl管の接合を行った。
(1)円筒状のAl合金ろう材ワイヤを用いた接合
本発明例1〜28及び比較例1〜13では、以下の方法により、円筒状のAl合金ろう材ワイヤを用いて2つのAl管の接合を行った。
まず、表1に示された合金組成を有するAl合金のビレットを作製し、次いで、該ビレットを520℃に加熱した後、押出し、直径2mmのワイヤ状にして、合金No.1〜28のAl合金ろう材ワイヤを作製した。
次に、作製したAl合金ろう材ワイヤを用いて、2つのAl管の接合を行った。評価に用いる接合Al管は、JIS3003の円筒状のビレットを押出し、抽伸工程を経て、外径φ10mm、内径φ8mmの管(A管)及び外径φ8mm、内径φ6mmの管(B管)を作製した。次いで、A管、B管とも同量のZnを溶射し、480℃で5hの拡散処理を施した。Zn溶射量は、表2に示す通りである。
次いで、図1にあるように、A管にB管を5mm挿入し、リング状に加工したワイヤを接合部に配置した。接合部には、あらかじめフッ化Al系のフラックスを10g/m塗布した。その後、610℃、5秒のトーチろう付により2つのAl管を接合した。
上記のようにして作製した接合Al管に対し、以下の評価を行なった。
(1)ろう付性
図2にあるように、断面組織観察により、A管にB管が挿入されている5mmの領域にフィレットが形成されているかを確認した。フィレットの長さが4.5mm以上、5mm以下の場合を○、フィレット長さが4.0mm以上、4.5mm未満を△、フィレット長さ4.0mm未満を×とした。
(2)腐食試験
接合Al管を用い、JISのH8601に準じるCASS試験を500時間行なった。試験後、断面観察を行い、フィレットが腐食によって消失したり、Al管に貫通孔が発生したりした場合を×、それ以外を○とした。
(3)孔食電位
フィレット及び周辺の管の孔食電位をアノード分極曲線によって測定した。孔食電位は、具体的には、以下の方法で測定した。3電極型セルを用い、動電位法における分極曲線の測定を室温で電位掃引速度20mV/minにて行った。アノード分極曲線の測定には、予め窒素ガスを吹き込み十分に脱気を行った5%NaCl水溶液を試験液に用いた。試験電極は供試材を所定の大きさに切り出し、露出部分1×1cmを残し、シール及びエポキシ樹脂で被覆し使用した。対極には白金電極を、参照電極には飽和KCl溶液中の銀・塩化銀電極(Ag/AgCl)を用いた。アノード分極曲線の一例を図3に示す。図3のアノード分極曲線において、アノード電流密度が急激に上昇したときの電位を孔食電位とした。
本実施例では、フィレットの周囲で最も卑な部位は、管表面のZn溶射面であり、こことフィレットの電位差を評価した。
(1)〜(3)の結果をまとめて、表2に示す。
表2から明らかなように、本発明例1〜28では、ろう付性が良好であり、フィレット及びその周辺部の耐食性に優れていた。
比較例1、2、7、及び8では、ワイヤのSi含有量が本発明の範囲から外れるために、フィレット長さが短く、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例3及び9では、ワイヤのZnが少ないために、Al管に貫通孔が発生した。比較例4及び10では、ワイヤのZnが多いために、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例5及び12では、管表面に比べフィレットの孔食電位が卑になりすぎたため、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例6及び13では、管表面に比べフィレットの孔食電位が貴になりすぎたため、Al管に貫通孔が発生した。比較例11では、ワイヤのCuが多いために、Al管に貫通孔が発生した。
(2)中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤを用いた接合
本発明例29〜60、比較例14〜26、及び参考例1〜4では、以下の方法により、中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤを用いて2つのAl管の接合を行った。
中空部にフラックスが充填されたAl合金ろう材ワイヤは、以下の方法で作製した。まず、表3に示された合金組成を有するAl合金のビレットを作製し、次いで、該ビレットを520℃に加熱した後、押出し、直径2mmのワイヤ状にした。次いで、ビレットに中空の孔を空け、孔内部にフッ化Al系のフラックスを充填し、その後同様に押出し加工を施して合金No.30〜66の管状構造のAl合金ろう材ワイヤを作製した。ビレットに形成する中空の孔のサイズは、管状構造のAl合金ろう材ワイヤの外径と内径の比が表3に示す値になるように決定した。
作製したAl合金ろう材ワイヤを用いて、2つのAl管の接合を行い、上記の(1)〜(3)の評価を行った。Al管の接合方法は、「(1)円筒状のAl合金ろう材ワイヤを用いた接合」の項で説明した通りである。但し、フラックスはワイヤ内に含まれているので、接合部へのフラックスの塗布は行わなかった。
上記(1)〜(3)の評価結果をまとめて、表4に示す。
表4から明らかなように、本発明例29〜60では、ろう付性が良好であり、フィレット及びその周辺部の耐食性に優れていた。
比較例14、15、20、及び21では、ワイヤのSi含有量が本発明の範囲から外れるために、フィレット長さが短く、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例16及び22では、ワイヤのZnが少ないために、Al管に貫通孔が発生した。比較例17及び23では、ワイヤのZnが多いために、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例18及び25では、管表面に比べフィレットの孔食電位が卑になりすぎたため、フィレットに貫通孔食が発生した。比較例19及び26では、管表面に比べフィレットの孔食電位が貴になりすぎたため、Al管に貫通孔が発生した。比較例24では、ワイヤのCuが多いために、Al管に貫通孔が発生した。
参考例1及び3では、ワイヤのAlに対しフラックスの量が少なかったため、フィレット長さが多少短くなったが、フィレット及びその周辺部の耐食性に優れていた。参考例2及び4では、ワイヤのAlに対しフラックスの量が多かったため、フィレット長さが多少短くなったが、フィレット及びその周辺部の耐食性に優れていた。
このように本発明によって、ろう付接合部及びその周辺部の耐食性に優れたろう付接合済Al部材の製造方法が提供できる。この方法は、工業上顕著な効果を奏するものである。

Claims (3)

  1. 複数のAl部材をAl合金ろう材ワイヤを用いて接合する工程を備えるろう付接合済Al部材の製造方法であって、
    前記Al合金ろう材ワイヤは、Si:9.0〜14.0mass%、Zn:2.0〜6.0mass%、Cu:0.1〜0.5mass%、Fe:0.1〜0.9mass%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなり、
    前記ワイヤを用いたろう付後のフィレットと周辺のAl部材との孔食電位の関係が、(フィレットの孔食電位)−(Al部材の孔食電位)=−150〜200mVであることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。
  2. 請求項1記載のAl合金ろう材ワイヤが、中空部を有する管状構造であり、当該中空部にフラックス粉末が充填されていることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。
  3. 請求項に記載のAl合金ろう材ワイヤにおいて、管の外径と内径との比が、0.1〜0.55であることを特徴とするろう付接合済Al部材の製造方法。
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