JP5674405B2 - 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびそれを用いた伝送線路 - Google Patents
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この文献では、低吸湿性材料である熱可塑性液晶ポリマーフィルムを媒質として利用しているため、吸湿による高周波特性の悪化を低減することが可能である。
本発明の別の目的は、上述の効果に加えて、強伸度特性に優れている熱可塑性液晶ポリマーフィルムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、伝送損失を低減することができる伝送線路を提供することにある。
そこで、さらに研究を進めた結果、(2)極めて小さい誘電率のばらつきの評価方法を確立することができただけでなく、(3)原反フィルムの誘電率分布に応じて、熱処理条件を精密に制御することで、誘電率のばらつきが非常に小さいだけでなく、熱膨張係数が所定の範囲に存在する熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
熱膨張係数0〜25ppm/℃であるとともに、
サンプル数が18〜70である場合、面内における誘電率の変動係数C(%)が、下記式(1)を満たす熱可塑性液晶ポリマーフィルム[但し、少なくとも2種類の芳香族ジオール由来の構造単位を含む液晶性樹脂であって、ヘリウムガス雰囲気下で融点+10℃(ただし融点が325℃未満の場合は335℃)で30分間保持した際に上記液晶性樹脂から発生する酢酸ガスが100ppm以下、フェノールガスが20ppm未満かつ炭酸ガスが100ppm未満である液晶性樹脂からなるフィルムを除く]である。
C=σ/εave×100<0.40 (1)
(ここで、C:変動係数、σ:標準偏差、εave:平均値を示す。)
前記絶縁体は、上述される熱可塑性液晶ポリマーフィルムから形成され、周波数15GHzおよび40GHzにおける伝送損失Y(dB/cm)および周波数X(GHz)の差の比(ΔY/ΔX)が、−0.020〜−0.010である伝送線路についても包含する。
このような熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、誘電特性に優れるとともに、熱可塑性液晶ポリマーに由来する強伸度特性にも優れている。
また、本発明では、面内における誘電率のばらつきが極めて少ない熱可塑性液晶ポリマーフィルムを利用して、伝送損失を低減することができる伝送線路を得ることができる。
C=σ/εave×100<0.40 (1)
(ここで、C:変動係数、σ:標準偏差、εave:平均値を示す。なお、サンプル数は18〜70である。)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、溶融成形できる液晶性ポリマーから形成され、この熱可塑性液晶ポリマーは、溶融成形できる液晶性ポリマーであれば特にその化学的構成については特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性液晶ポリエステル、又はこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミドなどを挙げることができる。
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムの原反(以下、原反フィルムと称する場合がある)は、前記熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。熱可塑性液晶ポリマーの剛直な棒状分子の方向を制御できる限り、任意の押出成形法が適用できるが、円筒状に成形することでフィルムの機械軸方向(以下、MD方向と略す)だけでなく、これと直交する方向(以下、TD方向と略す)にも応力が加えられ、MD方向、TD方向に均一に延伸できることから、誘電率のばらつきが小さいフィルム製膜を得るにはインフレーション法を用いることが好ましい。
なお、ここで、MD方向およびTD方向の誘電率は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
また、加熱炉では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で、または熱可塑性液晶ポリマーフィルムと支持体との積層体として、適当な温度に設定された加熱炉内において、各ブロック別に熱処理を行うことができる。
このようにして熱処理された熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、誘電率のばらつきが高度に制御されているだけでなく、熱膨張係数についても、好適な範囲に調整することが可能である。
このようにして得られた本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、上述したように、熱膨張係数0〜25ppm/℃を有しており、熱膨張係数は、好ましくは5〜22ppm/℃程度であってもよい。なお、熱膨張係数は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
なお、ミリ波および高周波帯で使用される誘電体としては、一般的にセラミックス、テフロン(登録商標)などが使用されているが、その熱膨張係数は、セラミックスで0ppm/℃、ガラスクロス入りテフロン(登録商標)では18ppm/℃であり、使用する誘電体によって熱膨張係数が大きく異なることが課題である。それに対して、本発明では、上述のように、熱膨張係数を熱処理に応じて変化させることができるため、幅広い範囲の熱膨張係数とすることができ、例えば、回路基板として用いる場合、相手側の材料の熱膨張係数にあわせることが可能である。
熱可塑性液晶ポリマーフィルムの誘電率は、例えば、15GHzにおける熱可塑性液晶ポリマーフィルムのTD方向の誘電率は、3.30以下(例えば、1.8〜3.28程度)であってもよく、好ましくは2.5〜3.25程度であってもよい。なお、誘電率は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
C=σ/εave×100<0.40 (1)
(ここで、C:変動係数、σ:標準偏差、εave:平均値を示す。)
ここで、誘電率のばらつきを評価するうえで重要なことは、膜厚を正確に測定することと、評価するフィルムの全体の大きさに応じて適宜サンプルの取得方法を調節することである。
(1)TD方向の切り出し方
まず、TD方向での切り出し方については、(a)フィルムの全幅28cm以上の場合と、(b)フィルムの全幅28cm未満の場合に分けて行なわれる。
フィルムを均等に7列に分割後、各列の中央4cmをサンプリングする。
例えば、全幅W(cm)のとき、w=(W−4x7)/7より、サンプリング間隔w(cm)を決定する。
第1サンプル:wx1/2〜4+wx1/2 (cm)
第2サンプル:4+wx3/2〜8+wx3/2 (cm)
第3サンプル:8+wx5/2〜12+wx5/2 (cm)
第4サンプル:12+wx7/2〜16+wx7/2 (cm)
第5サンプル:16+wx9/2〜20+wx9/2 (cm)
第6サンプル:20+wx11/2〜24+wx11/2 (cm)
第7サンプル:24+wx13/2〜28+wx13/2 (cm)
の順で、サンプルの切り出し幅を決定する。
そして、TD方向の一端から他端に向かって、2〜6cm、10〜14cm、18〜22cm、26〜30cm、34〜38cm、42〜46cm、50〜54cmの箇所においてサンプルの切り出しが行なわれる。
変動係数C(%)を算出するためのサンプル数が18〜70となる範囲で、フィルムのTD方向において、4cm幅のサンプルを等間隔で採取できるだけ採取する。例えば、全幅W’(W’<28)とし、全幅W’から4cm幅のサンプルを採取できる幅方向のサンプルの最大値をs(1≦s≦6)とすると、サンプリング間隔w’は、w’=(W’−4xs)/sとして求めることができる。
具体的には、例えば全幅W=15cmの場合、採取できる幅方向のサンプルの最大値sは3であり、全幅W=18cmならば、採取できる幅方向のサンプルの最大値sは4である。
(2)MD方向の切り出し方
MD方向での切り出し方についても、(a)フィルムの全長100cm以上の場合と、(b)フィルムの全長100cm未満の場合に分けて行なわれる。
全長100cm以上の場合、MD方向に任意の100cmを選び、均等に10行に分割後、各行の中央5cmをサンプリングする。
(b)フィルムの全長50cm以上100cm未満の場合
フィルムをMD方向に均等に10行に分割後、各行の中央5cmをサンプリングする。
(c)フィルムの全長50cm未満の揚合
変動係数C(%)を算出するためのサンプル数が18〜70となる範囲で、フィルムのMD方向において、5cm幅のサンプルを等間隔で採取できるだけ採取する。
好ましい熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの15GHzにおける誘電正接は、0.005以下(例えば、0.0001〜0.0045程度)、好ましくは0.0005〜0.004程度であってもよい。
誘電正接が低いほど伝送損失が小さくなり、使用する回路の導体損失や形状の種類によって、伝送損失は異なるが、伝送回路は、一般的に、15GHz帯でのS21パラメータとして0.8dB/cm以下が好ましく、0.3dB/cmがより好ましい。熱可塑性液晶ポリマーフィルムの15GHzにおける誘電正接が0.005以下であると、このような伝送回路に対して好適に用いることができ、低電力化や低ノイズ化が可能となる。なお、誘電率は、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
また、好ましい熱可塑性液晶ポリマーフィルムでは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが備える優れた強伸度を低減させることなく、面内での均一な誘電率を確保することが可能であり、例えば、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの引張り破断強度は、例えば、少なくとも5kg/mm2(例えば、5〜50kg/mm2)であってもよく、好ましくは10kg/mm2以上であってもよい。
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの引張り破断伸度は、例えば、少なくとも10%(例えば10〜60%)であってもよく、好ましくは15%以上であってもよい。なお、強伸度は、JIS C 2318に準じて測定する値である。
本発明において使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、任意の厚みであってよく、そして、5mm以下の板状またはシート状のものをも包含する。ただし、高周波伝送線路に使用する場合は、厚みが厚いほど伝送損失が小さくなるので、できるだけ厚みを厚くする必要がある。しかしながら電気絶縁層として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単独で用いる場合、そのフィルムの膜厚は、10〜500μmの範囲内にあることが好ましく、15〜200μmの範囲内がより好ましい。フィルムの厚さが薄過ぎる場合には、フィルムの剛性や強度が小さくなることから、フィルム膜厚10〜200μmの範囲のフィルムを積層させて任意の厚みを得る方法を使用してもよい。
本発明の伝送線路は、少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含んでおり、上記熱可塑性液晶ポリマーフィルムを絶縁体として用いる限り、その形態は特に限定されず、各種伝送線路、例えば、同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレナー線路、平行線路などの公知または慣用の伝送線路とすることが可能である。
ここで、ΔY=(40GHzの伝送損失)−(15GHzの伝送損失)であり、ΔX=40−15である。なお、(ΔY/ΔX)の単位は、dB/(cmxGHz)である。
誘電率測定の中心点から6mm四方の領域について、等間隔に9筒所測定した平均値をサンプルの膜厚とし、接触式リニアゲージ(小野測器製HS3412)を用いて測定した。
王子計測機器(株)製分子配向計「MOA6015」を用いて、TD方向、MD方向のそれぞれにおいて採取した各サンプルについて、TD方向、MD方向の15GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。また、測定の際に入力する膜厚は、上述した膜厚を採用した。
熱機械分析装置(TMA)を用いて、5℃/分の速度で25℃から200℃まで昇温した後、20℃/分の速度で30℃まで冷却し、再び5℃/分の速度で昇温したときの、30℃および150℃の間で測定した。フィルムのTD方向、MD方向の双方について測定し、平均値をフィルムの熱膨張係数とした。
引張り破断強度及び引張り破断伸度は、引張り試験機を用いて、JIS C 2318に準じて測定した。
ベクトル・ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8753D)を使用し、温度20℃、湿度65%RH環境下、15〜40GHzの周波数の範囲において伝送損失を測定した。
(1)原反熱可塑性液晶ポリマーフィルムの作製
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマーを単軸押0出機で加熱混練し、環状インフレーションダイ(ダイ直径46.0mm、ダイスリット間隔800μm)から、溶融押出し、融点280℃、膜厚100μmの原反フィルムを作製した。得られた原反フィルムは、Lotにより、それぞれの誘電率がばらついていた。原反フィルムのMD方向とTD方向の誘電率を、表7に示す。
支持体として、厚さ50μmのアルミニウム箔を用い、連続熱ロールプレス装置に耐熱ゴムロール(硬さ90度)と、加熱金属ロールを取り付け、耐熱ゴムロール面に熱可塑性液晶ポリマーフィルム原反が、加熱金属ロール面にアルミニウム箔が接触するようにロール間に供給し、260℃の加熱状態で圧力10kg/cm2で圧着して、熱可塑性液晶ポリマーフィルム/アルミニウムの構成の積層板を作製した。続いて、炉内において、左側、中央、右側をそれぞれ表7に示す所定の温度に精密に制御した炉長1.5mの熱風循環式熱処理炉に、前記積層板を3m/分の速度で加熱処理し、熱処理後の積層板を得た。得られた積層板において、フィルムを支持体に対して180°の角度で剥がし、誘電率および熱膨張係数が制御された熱可塑性液晶ポリマーフィルム(TD方向の幅:530mm、MD方向の長さ:100m、厚み:100μm、引張り破断強度:30kg/mm2、引張り破断伸度:45%)を得た。得られたフィルムのその他の物性を表7に示す。
(2)で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、厚み18μmの中心導体とを使用して、長さ50mm、幅200μmのストリップ線路を以下に述べる方法で作製した。なお、絶縁層の厚みと誘電率から特性インピーダンス(Z0)が50±2Ωになるように配線幅を設計した。
12…絶縁体
13…中心導体
14…面状接地導体
15…金属プレート
Claims (6)
- 光学的に異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマーからなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)であって、
熱膨張係数0〜25ppm/℃であるとともに、
面内における誘電率の変動係数C(%)が、下記式(1)を満たす熱可塑性液晶ポリマーフィルム[但し、少なくとも2種類の芳香族ジオール由来の構造単位を含む液晶性樹脂であって、ヘリウムガス雰囲気下で融点+10℃(ただし融点が325℃未満の場合は335℃)で30分間保持した際に上記液晶性樹脂から発生する酢酸ガスが100ppm以下、フェノールガスが20ppm未満かつ炭酸ガスが100ppm未満である液晶性樹脂からなるフィルムを除く]。
C=σ/εave×100<0.40 (1)
(ここで、C:変動係数、σ:標準偏差、εave:平均値を示す。なお、サンプル数は18〜70である。) - 請求項1において、誘電率の平均値が、3.30以下である熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 請求項1または2において、15GHzにおける誘電正接が、0.005以下である熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、ミリ波アンテナ用フィルムとして用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、インフレーション法で製膜されたフィルムである熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
- 少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの絶縁体とを含む伝送線路であって、
前記絶縁体は、請求項1〜5のいずれか一項に記載された熱可塑性液晶ポリマーフィルムから形成され、周波数15GHzおよび40GHzにおける伝送損失Y(dB/cm)および周波数X(GHz)の差の比(ΔY/ΔX)が、−0.020〜−0.010である伝送線路。
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