JP5672731B2 - 異種金属接合体 - Google Patents

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Description

本発明は、ねじ締めによる異種金属接合体に関する。
耐食性が要求される異種金属接合体を用いた製品において、金属間の電位差から発生する電食反応は通常の腐食速度に比べ著しく速いため、その製品寿命の支配因子となる。電食反応の進行する速度、すなわち電食速度を遅くするためには接合体を構成する部材そのものの材質を変えるか、製品の使用環境を制限する必要があり、現実的ではない。そのため、耐電食性を維持するには電食発生自体を起こさせない構造にする必要があり、通常は、電食発生をもたらす異種金属の部材間の接触を防ぐため、めっき等の表面処理が施されている。
しかしながら、ねじ締めにより異種金属の部材同士を接合する構造体(異種金属接合体)においては、ねじ締めによる機械的ストレスがかかることでめっき割れが起こり、素材そのものの腐食(孔食)が始まる。そして、一方の部材における雌ねじ部の腐食が進み、部材同士の接触面で異種金属が直接接触する状態になることで電食に移行する。
ねじ締めによる孔食発生を防ぐには、ねじ締めにより発生する機械的ストレスを緩和するか、割れないめっき膜を形成する必要がある。しかしながら、どちらも現実的には困難であり、現状の技術では、めっき割れによる孔食を防ぐことは難しい。
そこで、孔食発生の防止、あるいは腐食進行の抑制のため、自己修復作用を有するクロメート処理が用いられる場合がある。しかし、クロメート被膜では、ねじ締めにより発生する例えば数十μm以上の大きな傷についての修復は困難であり、顕著な効果は期待できない。
また、腐食の進行を遅らせる目的で、ねじ穴内部を大気に触れさせないようワッシャで密封する構造で対応する場合もあるが、締め付け自体が大気中で行われるため大きな効果が望めない上、部材によっては十分な密閉構造とすることが困難な場合もある。
また、ねじ締めによる異種金属接合体において部材に不導体処理を施すことで電食を抑制する対策が提案されている(例えば特許文献1参照)。
実開平6−76726号公報
上述のように、ねじ締めによる異種金属接合体において部材に不導体処理を施すことで電食を抑制する方式が特許文献1等により提案されているが、この方式では、ねじ締め時の被膜損傷が起こり、これにより発生した孔食から電食へ移行する可能性が大きく、また、この方式は部材に不導体処理を施すものであるため、部材間の導電性が要求される構造体(異種金属接合体)には適用できない。
ここで、ねじ締めによる異種金属接合体において孔食から電食へ移行する現象について、図4〜5の従来例を用いて説明する。
図4は、従来の異種金属接合体を示す構成図である。図4の異種金属接合体は、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材1と第2の金属部材11とがねじ締めにより接合されたものであって、第1の金属部材1に設けられた貫通穴2を介し第2の金属部材11側に突出させたねじ21の雄ねじ部22を、第2の金属部材11に設けられた雌ねじ部12にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材1と第2の金属部材11とを,部材接触面41を介して接合した構成となっている。なお、ねじ21のねじ頭部23と第1の金属部材1との間にはワッシャ31とスプリングワッシャ32とが介装されている。また、ねじ21において、第1の金属部材1の貫通穴2を貫通する部分には、ねじ加工されていないねじ軸部24が形成されているが、ねじ21の構成は、図4に示す構造に限定されるものではない。
図4における各部材の材質構成としては、例えば、Cu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをFe合金素材からなるねじ21で締め付けてなる異種金属接合体であって、第1の金属部材1、第2の金属部材11及びねじ21の各表面に、それぞれ「電解Snめっき」よりなる被膜1a、「無電解Ni-Pめっき+電解Snめっき」よりなる被膜11a及び「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜21aが形成された構成がある。なお、ワッシャ31及びスプリングワッシャ32にも、ねじ21と同様に、Fe合金素材の表面に「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜が形成されたものが用いられる。このような材質構成では、部材接触面41において被膜1a、11aが介在することによって、金属部材1のCu合金素材と第2の金属部材11のAl合金素材とが直接には接触しないので、異種金属接合体が腐食雰囲気環境下に置かれた場合でも、異種金属の直接接触による電食が抑制される。
しかしながら、図4の異種金属接合体においては、第2の金属部材11の雌ねじ部12とねじ21の雄ねじ部22との接触部で、ねじ締めによる機械的ストレスなどにより、第2の金属部材11側の被膜11a及びねじ21側の被膜21aが局所的に損傷する可能性があり、この場合、腐食雰囲気環境下では、被膜11a及び21aにおける上記の局所的損傷箇所で、いわゆる孔食が発生し、孔食発生箇所から、第2の金属部材11のAl合金素材及びねじ21のFe合金素材の腐食が進行するとともに、周囲の被膜に損傷が拡がっていくことになる。
雌ねじ部12と雄ねじ部22との接触部において上記のような孔食が発生した場合、その孔食箇所42から、腐食が第2の金属部材11とねじ21との接触面に沿って進行し、さらに図4の矢印D1のように部材接触面41に向って進行していく。孔食による腐食が部材接触面41まで到達した状態では、部材接触面41に面する第2の金属部材11側の被膜11aも損傷し、第2の金属部材11のAl合金素材と第1の金属部材1側の「電解Snめっき」よりなる被膜1aとの直接接触により電食が進行し、さらに第1の金属部材1側の被膜1aも損傷した場合、第2の金属部材11のAl合金素材と第1の金属部材1のCu合金素材との直接接触による電食も進行することになる。そして、腐食雰囲気環境下では、上記のような異種金属の直接接触による電食が急速に進行することにより、異種金属接合体が構造体として機能できなくなり、この異種金属接合体を用いた製品の機能が損なわれることになる。
このように、図4のような、例えばCu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをFe合金素材からなるねじ21で締め付けてなる異種金属接合体においては、第1の金属部材1、第2の金属部材11及びねじ21の各表面に被膜が形成されている場合でも、雌ねじ部12と雄ねじ部22との接触部に孔食が発生し、この孔食が部材接触面41における電食に移行して、電食が急速に進行することが問題となる可能性が有る。
また、図4の異種金属接合体における材質構成例として、上述の説明では、Cu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをFe合金素材からなるねじ21で締め付けてなる構成を示したが、このような組み合わせ以外の材質構成でも、イオン化傾向の差が大きく,直接接触による電食が問題となるような異種金属の組み合わせの材質構成では、上述と同様に、ねじ締めによる孔食から部材接触面での電食へ移行する現象が問題となる可能性が有る。
ここで、図4の異種金属接合体において、ねじ締めによる孔食は、雌ねじ部12と雄ねじ部22との接触部におけるどの領域でも発生する可能性が有り、上記接触部の部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、孔食発生部42から部材接触面41までの距離が最も短くなり、孔食から電食に移行するまでの期間が最も短くなる。なお、図4における矢印D1は、雌ねじ部12と雄ねじ部22との接触部から部材接触面41に向かう腐食の進行方向を示している。
したがって、図4に示されるような従来の異種金属接合体では、特に、雌ねじ部12と雄ねじ部22との接触部における部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、極めて短期間で部材接触面41における(例えば電食部43での)電食が発生することになり、このような異種金属接合体を用いた製品では、その信頼性の点が問題となる。
なお、上述の説明では、図4の異種金属接合体における材質構成として、第1の金属部材1、第2の金属部材11及びねじ21の各部材表面に被膜を形成して、異種金属接触による電食を抑制するようにした構成例を示したが、各部材の材質選定によっては、第1の金属部材1と第2の金属部材11とのうち第2の金属部材11側だけに被膜を形成すればよい場合もある。
図5は、従来の異なる異種金属接合体を示す構成図である。図5の異種金属接合体は、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材1と第2の金属部材11とがねじ締めにより接合されたものであって、第1の金属部材101から突出して設けられた雄ねじ部122を、第2の金属部材11に設けられた雌ねじ部12にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材101と第2の金属部材11とを,部材接触面41を介して接合した構成となっている。なお、第1の金属部材101の本体部分と第2の金属部材11との間に図示されないワッシャとスプリングワッシャとが介装される場合もある。また、第1の金属部材101における雄ねじ部122の根元部分には、ねじ加工されていないねじ軸部124が形成されている。
図5における各部材の材質構成としては、例えば、Cu合金素材からなる第1の金属部材101とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをねじ締めで接合してなる異種金属接合体であって、第1の金属部材101、第2の金属部材11の各表面に、それぞれ「電解Snめっき」よりなる被膜101a、「無電解Ni-Pめっき+電解Snめっき」よりなる被膜11aが形成された構成がある。なお、ワッシャ及びスプリングワッシャが介装される場合、このワッシャ及びスプリングワッシャには、例えばCu合金素材の表面に「電解Snめっき」よりなる被膜が形成されたものが用いられる。このような材質構成では、部材接触面41において被膜101a、11aが介在することによって、第1の金属部材101のCu合金素材と第2の金属部材11のAl合金素材とが直接には接触しないので、異種金属接合体が腐食雰囲気環境下に置かれた場合でも、異種金属の直接接触による電食が抑制される。
しかしながら、図5の異種金属接合体においては、第2の金属部材11の雌ねじ部12と第1の金属部材101の雄ねじ部122との接触部で、ねじ締めによる機械的ストレスなどにより、第2の金属部材11側の被膜11a及び第1の金属部材101側の被膜101aが局所的に損傷する可能性があり、この場合、腐食雰囲気環境下では、被膜11a及び101aにおける上記の局所的損傷箇所で、いわゆる孔食が発生し、孔食発生箇所から、第2の金属部材11のAl合金素材及び第1の金属部材101のCu合金素材の腐食が進行するとともに、周囲の被膜に損傷が拡がっていくことになる。
雌ねじ部12と雄ねじ部122との接触部において上記のような孔食が発生した場合、その孔食箇所42から、腐食が第2の金属部材11と第1の金属部材101との接触面に沿って進行し、さらに図5の矢印D101のように部材接触面41に向って進行していく。孔食による腐食が部材接触面41まで到達した状態では、部材接触面41に面する第2の金属部材11側の被膜11aも損傷し、第2の金属部材11のAl合金素材と第1の金属部材101側の「電解Snめっき」よりなる被膜101aとの直接接触により電食が進行し、さらに第1の金属部材101側の被膜101aも損傷した場合、第2の金属部材11のAl合金素材と第1の金属部材101のCu合金素材との直接接触による電食も進行することになる。そして、腐食雰囲気環境下では、上記のような異種金属の直接接触による電食が急速に進行することにより、異種金属接合体が構造体として機能できなくなり、この異種金属接合体を用いた製品の機能が損なわれることになる。
このように、図5のような、例えばCu合金素材からなる第1の金属部材101とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをねじ締めで接合してなる異種金属接合体においては、第1の金属部材101、第2の金属部材11の各表面に被膜が形成されている場合でも、雌ねじ部12と雄ねじ部122との接触部に孔食が発生し、この孔食が部材接触面41における電食に移行して、電食が急速に進行することが問題となる可能性が有る。
また、図5の異種金属接合体における材質構成例として、上述の説明では、Cu合金素材からなる第1の金属部材101とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをねじ締めで接合してなる構成を示したが、このような組み合わせ以外の材質構成でも、イオン化傾向の差が大きく,直接接触による電食が問題となるような異種金属の組み合わせの材質構成では、上述と同様に、ねじ締めによる孔食から部材接触面での電食へ移行する現象が問題となる可能性が有る。
ここで、図5の異種金属接合体において、ねじ締めによる孔食は、雌ねじ部12と雄ねじ部122との接触部におけるどの領域でも発生する可能性が有り、上記接触部の部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、孔食発生部42から部材接触面41までの距離が最も短くなり、孔食から電食に移行するまでの期間が最も短くなる。なお、図5における矢印D101は、雌ねじ部12と雄ねじ部122との接触部から部材接触面41に向かう腐食の進行方向を示している。
したがって、図5に示されるような従来の異種金属接合体では、特に、雌ねじ部12と雄ねじ部122との接触部における部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、極めて短期間で部材接触面41における(例えば電食部43での)電食が発生することになり、このような異種金属接合体を用いた製品では、その信頼性の点が問題となる。
なお、上述の説明では、図5の異種金属接合体における材質構成として、第1の金属部材101、第2の金属部材11の各部材表面に被膜を形成して、異種金属接触による電食を抑制するようにした構成例を示したが、各部材の材質選定によっては、第1の金属部材101と第2の金属部材11とのうち第2の金属部材11側だけに被膜を形成すればよい場合もある。
本発明は、上述の図4〜5で説明した従来の異種金属接合体における問題点を解決し、耐食性を要求される異種金属接合体において、ねじ締めによる孔食からの移行による電食の発生が抑制され、その製品寿命を十分に維持することができて信頼性が高く、かつ、接合対象となる部材の材質に関する制限がな、さらに低コストで実現可能な異種金属接合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材に設けられた貫通穴を介し第2の金属部材側に突出させたねじの雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に,ねじの雄ねじ部の最大外径より大きい内径を有し電食を防止するザグリ穴部を設けてなる構成とする(請求項1の発明)。
上記請求項1の発明によれば、部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に、締め付け用のねじの雄ねじ部に触れない構造のザグリ穴部を設けているので、このザグリ穴部によって腐食代が形成されている。このため、ねじ締めによる孔食発生箇所から部材接触面までの距離が、従来技術の異種金属接合体よりも、ほぼ腐食代の分だけ長く延長されたものとなっており、これにより、孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができる。
また、本発明による電食抑制対策は、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側にザグリ穴部を設けるだけよいため、接合対象となる部材の材質に関する制限がな、さらに低コストで実現可能なものとなっている
また、本発明によれば、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材から突出して設けられた雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間に第1の金属部材と第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に,雄ねじ部の最大外径より大きい内径を有し電食を防止するザグリ穴部を設けてなる構成とする(請求項2の発明)。
上記請求項2の発明によれば、部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間に第1の金属部材と第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に、第1の金属部材の雄ねじ部に触れない構造のザグリ穴部を設けているので、このザグリ穴部によって腐食代が形成されている。このため、ねじ締めによる孔食発生箇所から部材接触面までの距離が、従来技術の異種金属接合体よりも、ほぼ腐食代の分だけ長く延長されたものとなっており、これにより、孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができる。
また、本発明による電食抑制対策は、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側にザグリ穴部を設けるだけよいため、接合対象となる部材の材質に関する制限がな、さらに低コストで実現可能なものとなっている。
上記請求項1または2に記載の異種金属接合体において、前記ザグリ穴部の内周側に形成される空間に充填剤を充填してなる構成とするとよい(請求項3の発明)。
また、本発明によれば、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材に設けられた貫通穴を介し第2の金属部材側に突出させたねじの雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、ねじにおけるねじ頭部と雄ねじ部との間に,雌ねじ部の最小内径より小さい外径を有し電食を防止するねじ軸部を設けるとともに、ねじ軸部の長さは,ねじ締めによる接合状態でねじ軸部の雄ねじ側端部が雌ねじ部の領域内に位置するような長さとしてなる構成とする(請求項4の発明)。
上記請求項4の発明によれば、部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、ねじにおけるねじ頭部と雄ねじ部との間に,第2の金属部材の雌ねじ部に触れない構造のねじ軸部を設けるとともに、ねじ軸部の長さは,ねじ締めによる接合状態でねじ軸部の雄ねじ側端部が雌ねじ部の領域内に位置するような長さとしているので、このねじ軸部によって腐食代が形成されている。このため、ねじ締めによる孔食発生箇所から部材接触面までの距離が、従来技術の異種金属接合体よりも、ほぼ腐食代の分だけ長く延長されたものとなっており、これにより、孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができる。
また、本発明による電食抑制対策は、ねじにおけるねじ頭部と雄ねじ部との間にねじ軸部を設けるだけよいため、接合対象となる部材の材質に関する制限がな、さらに低コストで実現可能なものとなっている。
上記請求項4に記載の異種金属接合体において、前記ねじ軸部の外周側に形成される空間に充填剤を充填してなる構成とするとよい(請求項5の発明)。
そして、上記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の異種金属接合体においては、前記金属被膜は、Sn,Ni,Cr,Ag,Au,Pt,Pdより選択される一種又はそれらの合金からなる金属被膜である構成とすることができる(請求項6の発明)。
また、上記請求項1ないし6のいずれか1項に記載の異種金属接合体においては、前記金属被膜は、めっきで形成されてなる金属被膜である構成とすることができる(請求項7の発明)。
本発明によれば、腐食代が形成されることにより、ねじ締めによる孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができ、これによって、異種金属接合体の製品寿命を十分に長いものとして、その信頼性を高いものとすることができる。
また、本発明による電食抑制対策は、接合対象となる部材の材質に関する制限がな、さらに低コストで実現可能なものとなっている。
本発明の実施例1による異種金属接合体を示す構成図 本発明の実施例2による異種金属接合体を示す構成図 本発明の実施例3による異種金属接合体を示す構成図 従来の異種金属接合体を示す構成図 従来の異なる異種金属接合体を示す構成図
以下、本発明の実施形態を図1ないし図3に示す実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
[本発明の第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、ねじ締めによる異種金属接合体を、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材に設けられた貫通穴を介し第2の金属部材側に突出させたねじの雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、後述のサグリ穴部13(図1),または,ねじ軸部24A(図2)を設け、ねじ締めによる孔食発生箇所から部材接触面までの距離を伸ばすようにしているので、孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができるものとなっている。本発明の第1実施形態による異種金属接合体の具体的な構成例を下記の実施例1〜2で説明する。
図1は実施例1の異種金属接合体を示す構造図である。なお、図1において、図4の従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。
(イ)異種金属接合体の構成:
実施例1の異種金属接合体は、図1に示されているように、第2の金属部材11Aにおける雌ねじ部12Aの部材接触面41側に、ねじ21の雄ねじ部22に触れない構造として、雄ねじ部22の最大外径より大きい内径を有するザグリ穴部13を備えており、この点が、電食抑制対策の構成として、図4の従来例に対する特徴点となっている。ここで、ねじ21の構成は、図1に示す構造に限定されるものではない。
実施例1の上記構成において、雄ねじ部22の外周部がザグリ穴部13の内壁面に当接している場合には、その当接箇所で孔食が発生する可能性が有るので、ザグリ穴部13の内壁面を腐食代44として機能させるためには、上記のように、ザグリ穴部13の内径を、雄ねじ部22の最大外径よりも大きくしておくことが必要である。
図1における各部材の材質構成としては、図4の異種金属接合体における材質構成例と同様に、例えば、Cu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11AとをFe合金素材からなるねじ21で締め付けてなる異種金属接合体であって、第1の金属部材1、第2の金属部材11A及びねじ21の各表面に、それぞれ「電解Snめっき」よりなる被膜1a、「無電解Ni-Pめっき+電解Snめっき」よりなる被膜11Aa及び「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜21aが形成された構成とすることができるが、本発明は、このような材質構成に限定されるものではない。なお、上記材質構成の場合、ワッシャ31及びスプリングワッシャ32にも、ねじ21と同様に、Fe合金素材の表面に「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜が形成されたものが用いられる。
(ロ)異種金属接合体における電食抑制効果:
実施例1の異種金属接合体は、上記のようなザグリ穴部13を備えた構成としていることにより、第2の金属部材11Aにおける雌ねじ部12Aと部材接触面41との間に、腐食代44(図1において破線枠で囲まれている領域)が確保されている。
上述のように、ねじ締めによる孔食は、雌ねじ部12Aと雄ねじ部22との接触部におけるどの領域でも発生する可能性が有り、上記接触部の部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、孔食発生部42から部材接触面41までの距離が最も短くなり、孔食から電食に移行するまでの期間が最も短くなる。なお、図1における矢印D2は、雌ねじ部12Aと雄ねじ部22との接触部から部材接触面41に向かう腐食の進行方向を示すものであり、腐食がザグリ穴部13の内壁面に沿って部材接触面41側に進行することを示している。
この点において、実施例1の異種金属接合体においては、ザグリ穴部13による腐食代44が確保されていることにより、雌ねじ部12Aと雄ねじ部22との接触部における部材接触面41側の端部領域から部材接触面41までの距離が、図4の従来例よりも、ほぼ腐食代44の分だけ長くなっており、その分だけ、腐食雰囲気環境下において孔食から電食に移行するまでの期間が長期化されたものとなっている。これにより、実施例1の異種金属接合体は、耐食性を要求される異種金属接合体として、製品寿命が従来より長く、信頼性がより高いものとなっている。
(ハ)腐食代空間部分への充填剤の充填:
なお、ザグリ穴部13の内周側に形成される空間(腐食代44の空間部分)に例えばエポキシ系樹脂等よりなる充填剤を充填してなる構成とすれば、より好適である。すなわち、このような構成とすれば、腐食雰囲気のガス等が上記空間内に侵入するのを防止することができ、これにより、雌ねじ部12Aと雄ねじ部22との接触部における孔食の発生を抑制することができる。また、雌ねじ部12Aと雄ねじ部22との接触部で孔食が発生した場合でも、上記空間内に充填剤が充填されていることにより、腐食がザグリ穴部13の内壁面に沿って部材接触面41側に進行することを抑制することができる。
図2は実施例2の異種金属接合体を示す構造図である。なお、図2において、図4の従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。
(イ)異種金属接合体の構成:
実施例2の異種金属接合体は、図2に示されているように、ねじ21Aにおけるねじ頭部23と雄ねじ部22Aとの間に、第2の金属部材11の雌ねじ部12に触れない構造として、雌ねじ部12の最小内径より小さい外径を有するねじ軸部24Aを設けるとともに、ねじ軸部24Aの長さは,ねじ締めによる接合状態でねじ軸部24Aの雄ねじ22A側端部が雌ねじ部12の領域内に位置するような長さとしており、この点が、電食抑制対策の構成として、図4の従来例に対する特徴点となっている。ここで、ねじ21Aの構成は、図2に示す構造に限定されるものではない。
実施例2の上記構成において、ねじ軸部24Aの外周面が雌ねじ部12の内周に当接している場合には、その当接箇所で孔食が発生する可能性が有るので、ねじ軸部24Aと対向する雌ねじ部12の部材接触面41側領域を腐食代44Aとして機能させるためには、上記のように、ねじ軸部24Aの外径を、雌ねじ部12の最小内径よりも小さくしておくことが必要である。
また、実施例2の上記構成において、ねじ軸部24Aの長さは,ねじ締めによる接合状態でねじ軸部24Aの雄ねじ22A側端部が雌ねじ部12の領域内に位置するような長さであればよく、例えば、ねじ軸部24Aと対向する雌ねじ部12の部材接触面41側領域(すなわち、ねじ締めによる接合状態で雄ねじ22Aと接触しない領域)として少なくともねじ山1ピッチ分確保できるような長さとすることができるが、異種金属接合体に求められる寿命条件に応じて設定すればよい。
図2における各部材の材質構成としては、図4の異種金属接合体における材質構成例と同様に、例えば、Cu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11とをFe合金素材からなるねじ21Aで締め付けてなる異種金属接合体であって、第1の金属部材1、第2の金属部材11及びねじ21Aの各表面に、それぞれ「電解Snめっき」よりなる被膜1a、「無電解Ni-Pめっき+電解Snめっき」よりなる被膜11a及び「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜21Aaが形成された構成とすることができるが、本発明は、このような材質構成に限定されるものではない。なお、上記材質構成の場合、ワッシャ31及びスプリングワッシャ32にも、ねじ21Aと同様に、Fe合金素材の表面に「Znめっき+クロメート被膜」よりなる被膜が形成されたものが用いられる。
(ロ)異種金属接合体における電食抑制効果:
実施例2の異種金属接合体は、上記のようなねじ軸部24Aを備えた構成としていることにより、雄ねじ部22Aと雌ねじ部12とのねじ込み結合部分の部材接触面41側端部と,部材接触面41との間に、腐食代44A(図2において破線枠で囲まれている領域)が確保されている。
上述のように、ねじ締めによる孔食は、雌ねじ部12と雄ねじ部22Aとの接触部(ねじ込み結合部分)におけるどの領域でも発生する可能性が有り、上記接触部の部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、孔食発生部42から部材接触面41までの距離が最も短くなり、孔食から電食に移行するまでの期間が最も短くなる。なお、図2における矢印D3は、雌ねじ部12と雄ねじ部22Aとの接触部から部材接触面41に向かう腐食の進行方向を示すものであり、腐食が,ねじ軸部24Aと対向する雌ねじ部12の部材接触面41側領域の内周面に沿って部材接触面41側に進行することを示している。
この点において、実施例2の異種金属接合体においては、ねじ軸部24Aによる腐食代44Aが確保されていることにより、雌ねじ部12と雄ねじ部22Aとの接触部における部材接触面41側の端部領域から部材接触面41までの距離が、図4の従来例よりも、ほぼ腐食代44Aの分だけ長くなっており、その分だけ、腐食雰囲気環境下において孔食から電食に移行するまでの期間が長期化されたものとなっている。これにより、実施例2の異種金属接合体は、耐食性を要求される異種金属接合体として、製品寿命が従来より長く、信頼性がより高いものとなっている。
(ハ)腐食代空間部分への充填剤の充填:
なお、ねじ軸部24Aの外周側に形成される空間(腐食代44Aの空間部分)に例えばエポキシ系樹脂等よりなる充填剤を充填してなる構成とすれば、より好適である。すなわち、このような構成とすれば、腐食雰囲気のガス等が上記空間内に侵入するのを防止することができ、これにより、雌ねじ部12と雄ねじ部22Aとの接触部における孔食の発生を抑制することができる。また、雌ねじ部12と雄ねじ部22Aとの接触部で孔食が発生した場合でも、上記空間内に充填剤が充填されていることにより、腐食が,ねじ軸部24Aと対向する雌ねじ部12の部材接触面41側領域の内周面に沿って部材接触面41側に進行することを抑制することができる。
[本発明の第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、ねじ締めによる異種金属接合体を、互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材から突出して設けられた雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間に第1の金属部材と第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、後述のザグリ穴部13(図3)を設け、ねじ締めによる孔食発生箇所から部材接触面までの距離を伸ばすようにしているので、孔食から電食に移行するまでの期間を長期化することができるものとなっている。本発明の第2実施形態による異種金属接合体の具体的構成例を下記の実施例3で説明する。
図3は実施例3の異種金属接合体を示す構造図である。なお、図3において、図5の従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。
(イ)異種金属接合体の構成:
実施例3の異種金属接合体は、図3に示されているように、第2の金属部材11Aにおける雌ねじ部12Aの部材接触面41側に、第1の金属部材101の雄ねじ部122に触れない構造として、雄ねじ部122の最大外径より大きい内径を有するザグリ穴部13を備えており、この点が、電食抑制対策の構成として、図5の従来例に対する特徴点となっている。ここで、第1の金属部材101における雄ねじ部122を含むねじ構造は、図3に示す構造に限定されるものではない。
実施例3の上記構成において、雄ねじ部122の外周部がザグリ穴部13の内壁面に当接している場合には、その当接箇所で孔食が発生する可能性が有るので、ザグリ穴部13の内壁面を腐食代44として機能させるためには、上記のように、ザグリ穴部13の内径を、雄ねじ部122の最大外径よりも大きくしておくことが必要である。
図3における各部材の材質構成としては、図5の異種金属接合体における材質構成例と同様に、例えば、Cu合金素材からなる第1の金属部材101とAl合金素材からなる第2の金属部材11Aとをねじ締めで接合してなる異種金属接合体であって、第1の金属部材101、第2の金属部材11Aの各表面に、それぞれ「電解Snめっき」よりなる被膜101a、「無電解Ni-Pめっき+電解Snめっき」よりなる被膜11Aaが形成された構成とすることができるが、本発明は、このような材質構成に限定されるものではない。なお、上記構成において、第1の金属部材101の本体部分と第2の金属部材11Aとの間に図示されないワッシャとスプリングワッシャとが介装される場合、このワッシャ及びスプリングワッシャには、例えば、第1の金属部材101と同様に、Cu合金素材の表面に「電解Snめっき」よりなる被膜が形成されたものを用いることができる。
(ロ)異種金属接合体における電食抑制効果:
実施例3の異種金属接合体は、上記のようなザグリ穴部13を備えた構成としていることにより、第2の金属部材11Aにおける雌ねじ部12Aと部材接触面41との間に、腐食代44(図3において破線枠で囲まれている領域)が確保されている。
上述のように、ねじ締めによる孔食は、雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部におけるどの領域でも発生する可能性が有り、上記接触部の部材接触面41側の端部領域で孔食が発生した場合には、孔食発生部42から部材接触面41までの距離が最も短くなり、孔食から電食に移行するまでの期間が最も短くなる。なお、図3における矢印D102は、雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部から部材接触面41に向かう腐食の進行方向を示すものであり、腐食がザグリ穴部13の内壁面に沿って部材接触面41側に進行することを示している。
この点において、実施例3の異種金属接合体においては、ザグリ穴部13による腐食代44が確保されていることにより、雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部における部材接触面41側の端部領域から部材接触面41までの距離が、図5の従来例よりも、ほぼ腐食代44の分だけ長くなっており、その分だけ、腐食雰囲気環境下において孔食から電食に移行するまでの期間が長期化されたものとなっている。これにより、実施例3の異種金属接合体は、耐食性を要求される異種金属接合体として、製品寿命が従来より長く、信頼性がより高いものとなっている。
なお、実施例3の異種金属接合体における雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部において、ねじ締めによる孔食が発生した場合、孔食による腐食状態によっては、孔食の発生箇所の近傍で第1の金属部材101と第2の金属部材11Aとの間での電食に移行する可能性も考えられるが、実施例3では、ザグリ穴部13による腐食代44が確保されていることにより、第1の金属部材101と第2の金属部材11Aとの間での通電機能などを維持する上で重要な部材接触面41での電食に移行するまでの期間を長期化させることができる。
(ハ)腐食代空間部分への充填剤の充填:
なお、ザグリ穴部13の内周側に形成される空間(腐食代44の空間部分)に例えばエポキシ系樹脂等よりなる充填剤を充填してなる構成とすれば、より好適である。すなわち、このような構成とすれば、腐食雰囲気のガス等が上記空間内に侵入するのを防止することができ、これにより、雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部における孔食の発生を抑制することができる。また、雌ねじ部12Aと雄ねじ部122との接触部で孔食が発生した場合でも、上記空間内に充填剤が充填されていることにより、腐食がザグリ穴部13の内壁面に沿って部材接触面41側に進行することを抑制することができる。
[異種金属接合体の構造設計および寿命推定]
例えば図1に示されるような異種金属接合体において、ザグリ穴部13による腐食代44を長くするほど、当該異種金属接合体の寿命をより長くすることができるが、雌ねじ部12Aの深さ寸法として、必要な締結強度を確保するための所定値を確保しておく必要があるので、第2の金属部材11Aの厚さ寸法が制約されている場合、ザグリ穴部13による腐食代44も制約されることになる。このため、実際の異種金属接合体では、ザグリ穴部13による腐食代44を、寿命条件だけでなく、上記のような締結強度の条件や部材厚さの条件にも適合した長さとすることが必要となる。
そして、異種金属接合体を用いた実製品においては、異種金属接合体の腐食に起因する寿命が、ねじ締めによる孔食が発生してから電食が発生するまでの期間Taと、電食が発生してから電食反応が進行して接合体としての機能に支障をきたすまでの期間Tbとの合計期間Tc(=Ta+Tb)に基づくものであることを前提として、例えば次のようにして構造設計および寿命推定を行うことができる。
(a)当該異種金属接合体における電食速度を下記条件に基づいて推定する。
(a1)異種金属材料の組み合わせ条件。
(a2)異種金属接合体の使用環境条件。
(b)推定した電食速度に基づき、期間Tbを求める。
(c)第2の金属部材11Aに求められる部材厚さ条件の下で、雌ねじ部12Aの必要な深さ寸法を確保できるような、ザグリ穴部13の最大深さ寸法を求める。
(d)ザグリ穴部13の最大深さ寸法に基づく腐食代44によって最低限確保できる期間Taを推定する。
(e)期間Taと期間Tbとの合計期間Tc(=Ta+Tb)に基づき、第2の金属部材11Aに求められる部材厚さ条件の下で実現可能な当該異種金属接合体の寿命を推定する。
(f)なお、当該異種金属接合体の寿命推定値の寿命条件に対する余裕度が必要以上に大きい場合には、例えば締結強度条件をより十分なものとするために雌ねじ部12Aの深さ寸法をより大きくして、その分だけザグリ穴部13の深さ寸法を小さくするというように、構造設計値の見直しを行ってもよい。
[異種金属接合体における材質構成]
(イ)上述の実施形態1〜2では、図1,図2の異種金属接合体における材質構成として、第1の金属部材1、第2の金属部材11A,11及びねじ21,21Aの各表面に被膜を形成して、異種金属接触による電食を抑制するようにしている構成例を示すとともに、図3の異種金属接合体における材質構成として、第1の金属部材101、第2の金属部材11Aの各表面に被膜を形成して、異種金属接触による電食を抑制するようにしている構成例を示した。このような被膜としては、Sn,Ni,Cr,Ag,Au,Pt,Pdより選択される一種又はそれらの合金からなる金属被膜を用いることができ、例えばめっき等で形成することができる。また、上述の被膜はクロメート被膜などの化成処理膜であってもよい。
(ロ)本発明は、第1の金属部材1,101と第2の金属部材11A,11との間での導電性が不要である場合に対応して、異種金属接触による電食を抑制するための被膜として絶縁被膜を用いた構成にも適用することができ、ねじ接触部における絶縁被膜の局部的損傷に起因する孔食から部材接触面41での電食に移行するまでの期間を長期化し、異種金属接合体の製品寿命を十分に長いものとすることができる。
(ハ)図1,図2の異種金属接合体における第1の金属部材1、第2の金属部材11A,11及びねじ21,21Aの各材質選定により、第1の金属部材1と第2の金属部材11A,11とのうち第2の金属部材11A,11側だけに、異種金属接触による電食を抑制するための被膜を形成する構成とすることもできる。このような材質構成として、例えば、図1のような、Cu合金素材からなる第1の金属部材1とAl合金素材からなる第2の金属部材11AとをFe合金素材からなるねじ21で締め付けてなる異種金属接合体であって、第2の金属部材11A及びねじ21のそれぞれの表面にCuめっきによる被膜11Aa及び21aを形成し、第1の金属部材1はCu合金のまま被膜なしとする構成などがある。
(ニ)図3の異種金属接合体における第1の金属部材101、第2の金属部材11Aの各材質選定により、第1の金属部材101と第2の金属部材11Aとのうち第2の金属部材11A側だけに、異種金属接触による電食を抑制するための被膜を形成する構成とすることもできる。このような材質構成として、例えば、図3のような、Cu合金素材からなる第1の金属部材101とAl合金素材からなる第2の金属部材11Aとをねじ締めで接合してなる異種金属接合体であって、第2の金属部材11Aの表面にCuめっきによる被膜11Aaを形成し、第1の金属部材101はCu合金のまま被膜なしとする構成などがある。
1,101・・・第1の金属部材、1a,101a・・・被膜、2・・・貫通穴
11,11A・・・第2の金属部材、11a,11Aa・・・被膜、12,12A・・・雌ねじ部、13・・・ザグリ穴部
21,21A・・・ねじ、21a,21Aa・・・被膜、22,22A,122・・・雄ねじ部、23・・・ねじ頭部、24,24A,124・・・ねじ軸部
31・・・ワッシャ、32・・・スプリングワッシャ
41・・・部材接触面、42・・・孔食発生部、43・・・電食発生部、44,44A・・・腐食代、D1,D2,D3,D101,D102・・・腐食の進行方向

Claims (7)

  1. 互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材に設けられた貫通穴を介し第2の金属部材側に突出させたねじの雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、
    前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に,ねじの雄ねじ部の最大外径より大きい内径を有し電食を防止するザグリ穴部を設けてなることを特徴とする異種金属接合体。
  2. 互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材から突出して設けられた雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、
    前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間に第1の金属部材と第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、第2の金属部材における雌ねじ部の部材接触面側に,雄ねじ部の最大外径より大きい内径を有し電食を防止するザグリ穴部を設けてなることを特徴とする異種金属接合体。
  3. 前記ザグリ穴部の内周側に形成される空間に充填剤を充填してなることを特徴とする請求項1または2に記載の異種金属接合体。
  4. 互いに異なる種類の金属材料からなる第1の金属部材と第2の金属部材とがねじ締めにより接合されたものであって、少なくとも第2の金属部材の表面には第1の金属部材との異種金属接触による電食を抑制するための金属被膜が形成されてなるとともに、第1の金属部材に設けられた貫通穴を介し第2の金属部材側に突出させたねじの雄ねじ部を,第2の金属部材に設けられた雌ねじ部にねじ込んで締め付けることによって、第1の金属部材と第2の金属部材とを,当該第1の金属部材と当該第2の金属部材との部材接触面を介して接合してなる異種金属接合体において、
    前記部材接触面と,雄ねじ部と雌ねじ部とのねじ込み結合部分の部材接触面側端部との間にねじと第2の金属部材とが接触しない構造部分を形成するものとして、ねじにおけるねじ頭部と雄ねじ部との間に,雌ねじ部の最小内径より小さい外径を有し電食を防止するねじ軸部を設けるとともに、ねじ軸部の長さは,ねじ締めによる接合状態でねじ軸部の雄ねじ側端部が雌ねじ部の領域内に位置するような長さとしてなることを特徴とする異種金属接合体。
  5. 前記ねじ軸部の外周側に形成される空間に充填剤を充填してなることを特徴とする請求項4に記載の異種金属接合体。
  6. 前記金属被膜は、Sn,Ni,Cr,Ag,Au,Pt,Pdより選択される一種又はそれらの合金からなる金属被膜であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の異種金属接合体。
  7. 前記金属被膜は、めっきで形成されてなる金属被膜であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の異種金属接合体。
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