JP5671422B2 - 高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法および高強度7000系アルミニウム合金部材 - Google Patents

高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法および高強度7000系アルミニウム合金部材 Download PDF

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本発明は高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法および高強度7000系アルミニウム合金部材に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金部材とは、素材としての押出形材や圧延板材を製品形状(使用形状)に残留応力の発生を伴う成形加工したものを言う。
7000系アルミニウム合金部材は、周知の通り、素材の押出形材の組成として、主成分であるZn、MgやCuなどの合金元素量を調整し、その時効硬化性を利用した人工時効処理(人工時効硬化処理)などの調質によって、必要な高強度を確保している。主な用途例としては、バンパリィンホース、ドアビームなどの自動車用補強部材あるいは航空機用などの構造部材があり、薄肉化による軽量化のためにも、より高強度化が求められ、0.2%耐力で300MPa以上の高強度が要求される。
ただ、7000系アルミニウム合金部材は前記合金元素量が多いために、他の合金系に比して、耐SCC性(耐応力腐食割れ性)が低いことが知られている。
また、7000系アルミニウム合金部材は、周知の通り、その時効硬化性ゆえに、素材としての押出形材として製造されたあと、自然時効硬化(以下、自然時効あるいは室温時効とも言う)によって大きく硬化する。例えば、熱間押出直後は0.2%耐力で150MPa程度であった強度が、自然時効(室温時効)20日経過後には、0.2%耐力で240MPa程度まで硬化してしまう。
このように自然時効した素材押出形材は、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される、塑性加工を伴う、部材への成形加工の際の成形性が極端に低下してしまう。これは、製造された素材押出形材に対して、別途に再加熱して溶体化処理(溶体化および焼入れ処理)を施した後でも同様で、このような調質を施した後に、成形されるまでの時間が経過するほど、自然時効が進展する。
また、前記成形加工が可能であっても、素材押出形材が製造されてから成形加工されるまでの時間の違い、すなわち自然時効硬化の程度(進行)の違いによって、押出形材同士の強度が異なる、すなわち押出形材同士の強度がばらつくという問題が生じる。また、押出形材同士によって、この耐力に依存した成形時のスプリングバック量がばらつく問題も生じ、押出形材ごとに部材への成形精度がばらつくという問題もある。更に、自然時効が進展した場合、押出形材の均一伸びや局部伸びが低下し、部材への成形性や成形精度が更に低下するという問題もある。
そして、更に、前記した、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される、塑性加工を伴う部材への成形加工では、残留応力が付加されやすく、この付加される残留応力が高いほど、その成形部位における耐SCC性が著しく低下するという問題もある。
前記自然時効した素材押出形材の成形性の改善のために、従来から、自然時効した素材押出形材を熱処理して、前記耐力などの強度を低下させる回復処理が行われている。
例えば、特許文献1では、航空機用フレームなどの製造方法が記載されている。そして、7000系アルミニウム合金の素材押出形材あるいは素材板材につき、これを溶体化処理後に塑性加工する部品の成形方法において、成形直前に、加熱温度:150〜350℃で、加熱時間:30秒〜5分間(急速加熱ができる場合は170〜200℃×20秒〜3分間)の、復元処理を行なうことによって溶体化処理後の自然時効によって硬化した材料を軟化させて成形性を確保し、自然時効の進度の違いによるスプリングバック量のばらつきを解消したのち成形している。
また、特許文献2では、スピニング加工工程と該スピニング加工されたパイプを人工時効処理する高強度アルミニウム合金パイプの製造方法が記載されている。そして、素材である押出された7000系などの析出硬化型の高硬度アルミニウム合金パイプを溶体化処理後、溶体化後に自然時効されたパイプを、スピニング加工によるローラと素材パイプとの摩擦発熱と、パイプの塑性変形による発熱、そしてアルミ材は熱伝導率が高いことを利用して、150℃〜250℃の温度範囲に局部的に短時間で昇温、自己冷却やスピニング加工工程での冷却効果で降温する復元処理を加味した、スピニング加工している。
また、特許文献3では、長期の自然時効をしても優れた拡管加工性をそなえた自動二輪車のフロントフォークアウターチューブ材として好適な7000系高力アルミニウム合金押出管の製造方法が記載されている。そして、アルミニウム合金押出管をT4調質した後、105℃〜250℃の温度で30秒〜180分間熱処理し、該熱処理において、少なくとも100℃から熱処理温度までの昇温速度を1℃/秒未満とする復元処理を行なうことが提案されている。その実施例では、2段時効後の引張強さ、耐力、伸びに優れ、応力腐食割れ寿命も優れるとしている。
また、特許文献4は、同じくフロントフォークアウターチューブ用高力アルミニウム合金押出管の耐応力腐食割れ性を向上させるために、7000系高力アルミニウム合金押出管を溶体化処理および焼入れし、室温で100時間以上の時間自然時効させたのち、150〜250℃の温度で30秒〜10分間熱処理し、該熱処理において少なくとも100℃から熱処理温度までの昇温速度を1℃/秒以上とした復元処理を行ない、最後に人工時効処理を行う手法が提案されている。
特開平7−305151号公報 特開2005−194620号公報 特開2007−119853号公報 特開平10−168553号公報
これら従来の復元処理は、その加熱温度や、保持時間の長さなどの条件から推測すると、全て完全なO材処理になりやすい。すなわち、O材処理にならないようにためには、後述する通り、本発明の復元処理のように、特定の加熱速度による急熱、7000系アルミニウム合金押出形材などの素材の特定の実体温度、特定のごく短時間の保持、特定の冷却速度での急冷などの諸条件を満足することが必要である。また、これらの処理条件を満たした上で、この復元処理による0.2%耐力の低下率や、導電率差の特性条件を満たすことが必要になる。しかし、これら従来の復元処理には、これらの条件の開示は勿論なく、必然的に完全なO材処理になる確率が高くなる。このため、復元処理によって耐力を一旦低下させたあとで、調質処理を施しても、その人工時効硬化処理によって向上させられる強度には大きな限界がある。ちなみに、これら従来の復元処理温度の記載は、通常の炉の雰囲気温度であって、実体温度ではないことが多い。
一方、特許文献2のような、スピニング加工によるローラと素材パイプとの摩擦発熱とパイプの塑性変形による発熱を利用した復元処理では、アルミニウム合金パイプに素材形状が限定され、押出形材などには適用できない。また、スピニング加工によるローラと素材パイプとの摩擦発熱とパイプの塑性変形による発熱の利用では、復元処理条件の制御が困難で、復元処理条件のばらつきが大きくなる。このため、素材の必要部位を、正確にかつ均一に復元処理することが難しい。
更に、これら従来技術では、7000系高力アルミニウム合金押出形材の、溶体化などの調質後の自然時効による成形性の低下を問題としている。したがって、成形性を向上させる、成形前の復元処理については考慮されているものの、共通して、復元処理後の前記塑性加工を伴う部材への成形加工で付加される残留応力については全く考慮されていない。すなわち、復元処理によって残留応力が除去されたとしても、また、それによって成形性が向上したとしても、この復元処理後の前記曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工などの塑性加工を伴う部材への成形加工では、依然、大きな残留応力が付加される。
しかも、この残留応力は、成形後の部材が溶体化および焼入れ処理されない場合には除去できない。このため、前記成形加工によって、この残留応力が付加された部材の成形部位における耐SCC性低下の問題に対して、これら従来技術は共通して未解決である。しかも、この耐SCC性が低下する傾向は、7000系アルミニウム合金部材が高強度となるほど顕著となる。
本発明は、かかる問題に鑑みなされたもので、あとの前記曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工などの塑性加工を伴う部材への成形加工によって付加される残留応力を小さくでき、耐力を一旦低下させたあとでも調質処理を施し、その人工時効硬化処理によって強度を大きく向上できる、高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法および高強度7000系アルミニウム合金部材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法の要旨は、質量%で、Zn:5.0〜8.0%、Mg:0.3〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%の一種または二種以上を含有し、残部が不可避的不純物およびアルミニウムからなる組成を有する7000系アルミニウム合金素材を、鋳塊からの塑性加工によって製造後に、自然時効以外は人工的に調質することなく復元処理を行い、この復元処理を、0.5℃/秒以上の加熱速度によって急熱し、200℃を超え、500℃以下の実体温度範囲にて20秒未満の短時間だけ保持した後に、室温まで0.5℃/秒以上の冷却速度で急冷して、この急冷直後の前記素材の0.2%耐力120MPa以下とするとともに、この急冷直後の前記素材の導電率と、前記復元処理直前の前記素材の導電率との差を5%IACS未満とし、この復元処理の前記室温までの急冷終了後から1時間以内に、この復元処理以外は人工的に調質することなく、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工を行って部材化し、この部材に対して、溶体化および焼入れ処理することなく人工時効処理し、この人工時効処理後の部材の0.2%耐力を300MPa以上とするとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下としたことである。
また、上記目的を達成するための本発明の高強度7000系アルミニウム合金部材の要旨は、質量%で、Zn:5.0〜8.0%、Mg:0.3〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%の一種または二種以上を含有し、残部が不可避的不純物およびアルミニウムからなる組成を有する7000系アルミニウム合金押出形材が復元処理されて、この復元処理後の急冷直後の前記押出形材の0.2%耐力が120MPa以下とされるとともに、この急冷直後の前記押出形材の導電率と、前記復元処理直前の前記押出形材の導電率との差が5%IACS未満とされた上で、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化されるとともに、この成形加工の後に溶体化および焼入れ処理されることなく人工時効処理が施された7000系アルミニウム合金部材であって、0.2%耐力が300MPa以上であるとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力が160MPa以下であることである。
本発明では、前記7000系アルミニウム合金素材を、その実体温度が比較的高温で、かつ絶対的に短時間などの特定条件での復元処理をすることによって、あとの成形加工によって付加される残留応力が低減されることを知見した。前記従来の復元処理は、前記した通り、O材処理にならないようにための、本発明の復元処理のような緒条件(特定の加熱速度による急熱、素材の特定の実体温度、特定のごく短時間の保持、特定の冷却速度での急冷)を満足することについての認識がない。また、これらの処理条件を満たした上で、この復元処理による0.2%耐力の低下率や、導電率差の特性条件を満たすことが必要との認識もない。したがって、これら従来の復元処理では必然的に完全なO材処理になる確率が高くなる。
通常、溶体化処理後に室温あるいはそれ以下の温度で保管された材料(T4材)で、この溶体化処理後に自然時効された材料は、G.P.ゾーン(析出物が形成される初期段階の溶質元素の集合体)あるいは極めて微細な中間相の析出によって硬化している。前記した、通常の復元処理は、この溶体化処理後に自然時効した材料を150〜350℃の温度に加熱することにより、前記微細な析出物をマトリックス中に再固溶させる処理であり、再溶体化処理するのと類似の作用を有し、軟質化のO材処理をしている。
しかし、本発明では、これら従来の復元処理とは違い、7000系アルミニウム合金押出形材素材を、鋳塊からの熱間押出(塑性加工)によって製造後には、自然時効による硬化以外は、復元処理を行う。そして、この復元処理も、急速な加熱(0.5℃/秒以上の加熱速度)によって、7000系アルミニウム合金押出形材素材の実体温度を200℃を超え、500℃以下として、その温度範囲に20秒未満のごく短時間だけ保持し、更に室温まで急冷(0.5℃/秒以上の冷却速度)する。
これによって、7000系アルミニウム合金押出形材素材の、この急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下に低下させるが、本発明の復元処理は、軟質化のためのO材処理とは異なり、成形後の人工時効硬化処理で、部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保できる。ちなみに、この復元処理が長時間となれば、軟質化のためのO材処理となって、成形時に付与される残留応力は低減されるが、成形後の人工時効硬化処理で、部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保できなくなる。
また、本発明では、部材への成形後には溶体化および焼入れ処理することなく人工時効硬化処理を行う。すなわち、本発明の復元処理によれば、その後の成形時に付与される残留応力が低減された上で、部材への成形後、溶体化および焼入れ処理されることなく、人工時効硬化処理のみで、部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保でき、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下に抑制することができる。
したがって、本発明によれば、自然時効した高強度の7000系アルミニウム合金押出形材であっても、また、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化された高強度7000系アルミニウム合金部材であっても、この部材に対して、溶体化および焼入れ処理することなく人工時効硬化処理を行った際の、この調質後の部材の0.2%耐力を300MPa以上とできる。そして、成形後の部材が溶体化および焼入れ処理されず、成形後のこれら調質によって成形によって付与された残留応力を除去できない場合でも、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下に抑制することができる。
また、自然時効硬化の程度や進行の仕方によって強度が異なる、すなわち強度やスプリングバック量がばらつく問題も解消され、押出形材の機械的性質やスプリングバック量の均一化が図れる。また、自然時効が進展した場合の押出形材の均一伸びや局部伸びの低下も解消され、この均一伸びや局部伸びが向上するとともに部材への成形性や成形精度が更に向上する。
以下に、本発明の実施の形態につき、順に要件ごとに具体的に説明する。なお、以下の記載は、7000系アルミニウム合金素材として、鋳塊を熱間押出して製造した押出形材を例にして説明する。ただ、各条件の意義は、鋳塊を熱間圧延、冷間圧延して製造した圧延板素材の場合でも同様である。
組成:
本発明における7000系アルミニウム合金押出形材(素材)は、JIS規格およびAA規格を含むAl−Zn−Mg系組成あるいはAl−Zn−Mg−Cu系組成である。但し、部材としての要求される高強度を満たすためには、通常の調質T5〜T7の人工時効処理条件である120〜160℃×6〜16hrの範囲で、この人工時効処理後の部材強度を0.2%耐力で300MPa以上、好ましくは400MPa以上とする必要がある。
このための好ましい7000系アルミニウム合金押出形材(素材)組成は、質量%で、Zn:5.0〜8.0%、Mg:0.3〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%の一種または二種以上を含有し、残部が不可避的不純物およびアルミニウムからなる組成とする。
ここで、成形性や耐食性あるいは溶接性などの素材あるいは部材としての諸特性を低下させないために、前記不可避的不純物として、溶解原料としての地金やスクラップなどから必然的に混入する、Fe、Siをそれぞれ0.25%以下、Tiを0.05%以下とすることが好ましい。
Znは強度を向上させる主要元素であり、その好ましい含有範囲は5.0〜8.0%である。下限未満では強度が不十分になり、上限を超えて含有されると耐SCC性(耐応力腐食割れ性)の顕著な低下を招く。さらに好ましい含有範囲は6.2〜6.8%である。
Mgも強度を向上させる主要元素であり、その好ましい含有範囲は0.3〜2.0%である。下限未満では強度が不十分になり、上限を超えて含有されると耐SCC性の低下を招く。さらに好ましい含有範囲は0.6〜1.5%である。
Cuは強度も向上させる主要元素であり、その好ましい含有範囲は0.05〜0.5%である。下限未満では強度が不十分になり、上限を超えて含有されると押出加工性の低下を招く。さらに好ましい含有範囲は0.08〜0.2%である。
Mn、Cr、Zrは選択的に含有される元素であり、一種または二種以上を含有することで、いずれも素材の結晶組織を微細化あるいは繊維状にし、耐SCC性を向上させる。それぞれ好ましい含有範囲は、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%である。いずれも上限を超えて含有されると粗大な金属間化合物を形成し、延性が低下するとともに成形性の低下を招く。
FeおよびSiは不純物として含有される元素であり、好ましい含有範囲はFe:0.25%以下、Si:0.25%以下である。上限を越えて含有されると延性が低下するとともに拡管加工性の低下を招く。さらに好ましい含有範囲は、Fe:0.20%以下、Si:0.20%以下であり、最も好ましい含有範囲はFe:0.15%以下、Si:0.15%以下である。
製造方法:
7000系アルミニウム合金素材として押出形材を例にして説明する。なお、熱処理における記載温度は全て実体温度であって、炉の雰囲気温度ではない。
(溶解、鋳造)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記7000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造してビレットとする。
(均質化熱処理)
熱間押出に先立って、鋳造されたアルミニウム合金ビレット(鋳塊)を470〜565℃の範囲で均質化熱処理(均熱処理)し、組織の均質化(鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくすなど)を行う。均熱処理温度は470〜565℃の範囲、均質化時間は2時間以上の範囲から選択される。この均熱処理温度が高すぎると、形材組織中の分散粒子が粗大化し、結晶粒を微細化、高強度化できない。一方、この均熱処理温度が低すぎても、ビレット組織の均質化ができない。
(熱間押出)
この均質化後の7000系アルミニウム合金ビレットを熱間押出(直接押出、間接押出)するが、押出形材の再結晶粒層を抑制し、組織を微細化、均質化させる条件にて熱間押出することが好ましい。ビレットの押出開始温度は好ましくは350〜450℃とする。
また、これら熱間押出直後の冷却については、溶体化域の温度(溶体化温度)での押出(押出機)出側温度から、空冷さらには水冷などの急冷(オンライン焼入れ)することが、押出形材組織の表面の再結晶組織や、内部の加工組織の結晶粒粗大化防止の点で好ましい。ちなみに、このような押出直後に(押出機の出側で)押出工程上で連続してオンラインにて行われる急冷あるいは焼入れ処理は、本発明でいう調質には含まれない。したがって、本発明でいう、自然時効による硬化以外は、溶体化処理などの調質することなく復元処理を行うとは、押出工程とは別途のオフラインにて、押出形材素材を再加熱して行われる溶体化および焼入れ処理などの調質することなく、復元処理を行うことである。
(復元処理)
本発明の復元処理は、これら従来の復元処理とは違い、7000系アルミニウム合金押出形材素材を、鋳塊からの熱間押出(塑性加工)によって製造後に、自然時効による硬化以外は、溶体化および焼入れ処理などの調質することなく復元処理を行う。言い換えると、自然時効(室温時効)した7000系アルミニウム合金押出形材素材に対して、本発明の復元処理を施してこそ、その後の成形加工時に付与される残留応力が低減された上で、成形後の調質で部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保できる効果が得られる。
(復元処理条件)
そして、この復元処理の条件も、この復元処理による前記効果の発現のために重要である。すなわち、0.5℃/秒以上の加熱速度による急速加熱(急熱)によって、7000系アルミニウム合金押出形材素材の実体温度を200℃を超え、500℃以下まで加熱し、この温度範囲に20秒未満のごく短時間だけ保持する。そして、保持後直ちに、室温まで0.5℃/秒以上の冷却速度で、強制的に急冷(空冷、水冷、ミスト冷却)する。
7000系アルミニウム合金押出形材素材の実体温度が200℃未満では、復元処理が不十分となって、特に、成形加工性が向上せず、付与される残留応力が高くなる。また、保持時間が20秒以上に長すぎる、あるいは加熱速度が0.5℃/秒未満と遅い(保持時間が長くなる)と、完全なO材処理(焼きなまし処理)となって、人工時効処理後の強度が0.2%耐力で300MPa以上に向上しない。
ちなみに、この復元処理における温度管理を炉の雰囲気温度で制御しようとすると、形材素材の実体としての保持時間が長めに外れたり、あるいは形材素材の実体としての温度が低めに外れたりしやすい。急速加熱(急熱)の加熱速度の制御は形材素材の大きさに合わせた炉のヒーターで制御可能で、前記実体温度保持時間は押出形材素材の炉からの取り出し時間(取り出しタイミング)で制御可能である。また、この取り出し直後からの室温までの強制的な急冷による冷却速度の制御は、形材素材の大きさに合わせた、空冷、水冷、ミスト冷却などの冷媒の使用量(形材素材への吹きかけ量あるいは浸漬量)によって可能である。この際、本発明で言う室温とは、数℃、0℃あるいは0℃以下などの、いわゆる18〜20℃程度の室温以下の温度(への冷却)を含みうる。
これによって、7000系アルミニウム合金押出形材素材の、この急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下に低下させるが、本発明の復元処理は、軟質化のためのO材処理とは異なり、成形後の調質における人工時効硬化処理で、部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保できる。前記復元処理の急冷直後の0.2%耐力は、本発明の復元処理が効果的に行われたか否かの重要な目安であり、本発明でも前記急冷直後から直ちに自然時効が始まるため、前記急冷直後の0.2%耐力が120MPaを超えていては、前記成形加工における諸効果が得られない。
更に、本発明者らの知見によれば、この復元処理が効果的に行われたか否かの、もうひとつの重要な目安として、前記復元処理における急冷直後の前記押出形材素材の導電率と、前記復元処理直前の前記押出形材素材の導電率との差がある。一般的に、前記復元処理によって、復元処理直後の導電率は復元前よりも高くなる。ただ、本発明の復元処理と、従来の復元処理での完全なO材処理(焼きなまし処理)の場合では、この導電率差は大きく異なる。すなわち、本発明の復元処理後(急冷直後)の導電率は、復元処理直前のT1材(自然時効材)の導電率よりも必ず5%IACS未満、多くは1〜3%IACSの範囲で高くなり、本発明の復元処理での導電率差は必ず5%IACS未満、好ましくは1〜3%IACSの範囲となる。このように、導電率差が5%IACS未満、好ましくは1〜3%IACSの範囲の場合に、前記成形における諸効果が得られ、復元処理が確実に効果的に行われる。
これに対して、従来の復元処理後の導電率は、処理前の導電率よりも必ず5%IACS以上高くなり、従来の復元処理での完全なO材処理の場合の導電率差は必ず5%IACS以上となる。この従来の復元処理での完全なO材処理のように、前記導電率差が5%IACS以上となった場合、完全焼きなましのO材に近く、あるいは、そのO材となって、前記成形における諸効果が得られなくなる。したがって、7000系アルミニウム合金押出形材素材の復元処理において、この復元処理の効果を確実に達成するためには、復元処理後の急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下とするとともに、前記導電率差を5%IACS未満とすること(両方満足すること)が好ましい。
以上の条件で行う発明の復元処理によれば、7000系アルミニウム合金押出形材を、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化された高強度7000系アルミニウム合金部材であっても、この部材に対して調質を行った際の、この調質後の部材の0.2%耐力を300MPa以上とできるとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下に抑制することができる。
ただ、これらの復元処理条件によって後述する諸効果が得られる理由や、これらの復元処理条件から外れた場合に後述する諸効果が得られない理由は、現在のところ不明である。しかし、この復元処理が前記した時間よりも長時間となる、あるいは前記した急熱や急冷条件が外れるなどすれば、従来の軟質化のためのO材処理と変わらなくなり、成形性は向上するものの、成形時に付与される残留応力は低減されず、成形後の調質における人工時効硬化処理で、部材強度を0.2%耐力で300MPa以上に確保できなくなる。
本発明の復元処理によれば、自然時効した高強度の7000系アルミニウム合金押出形材であっても、また、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化された高強度7000系アルミニウム合金部材であっても、この部材に対して調質を行った際の、この調質後の部材の0.2%耐力を300MPa以上とできるとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下に抑制することができる。
また、自然時効硬化の程度や進行の仕方によって強度が異なる、すなわち強度やスプリングバック量がばらつく問題も解消され、押出形材の機械的性質やスプリングバック量の均一化が図れる。また、自然時効が進展した場合の押出形材の均一伸びや局部伸びの低下も解消され、この均一伸びや局部伸びが向上するとともに部材への成形性や成形精度が更に向上する。
(成形加工)
但し、この復元処理効果を成形加工において発現させるためには、復元処理後になるべく早く(遅滞なく)成形加工する必要がある。すなわち、7000系アルミニウム合金押出形材素材の部材形状(製品形状)への成形加工は、復元処理後の自然時効が進まないうちに、あるいは自然時効が進んでも微小なうちに、行う必要がある。この目安としては、勿論、7000系アルミニウム合金押出形材素材の製造条件にもよるが、これらを押しなべて決定すると、前記復元処理の急冷直後から、成形加工を開始するまでの(所要)時間を1時間(hr)以内とする。1時間を超えると、高強度な7000系アルミニウム合金押出形材素材では、その組成からして、前記した通り自然時効が進みすぎて、成形性が著しく低下し、復元処理する意義が失われる。
7000系アルミニウム合金押出形材素材の自然時効(強度増加)は短時間で進み、言い換えると、自然時効の初期の段階で、時効程度(強度増加)が大きく進む。このため、前記復元処理によって、たとえ前記復元処理条件内で行い、押出形材素材の0.2%耐力を120MPa以下としていても、前記復元処理の急冷直後から成形加工開始までの時間が1時間を超過した場合、自然時効が進みすぎる。この結果、勿論、成形加工の時間にもよるが、本発明の復元処理の効果が前記成形加工において充分に発現されない。
成形加工自体は、7000系アルミニウム合金押出形材の、形材長手方向全体に亘る、あるいは部分的な曲げ加工、形材断面の部分的な潰し加工、形材への打抜き加工、などから選択される。これらは、残留応力の発生を伴う、塑性加工としての、部材形状への成形加工であり、これらの成形加工が単独あるいは組み合わせて、適宜選択される。
(調質)
本発明では、前記成形加工後の部材(7000系アルミニウム合金押出形材製部材)に人工時効処理を行い、強度を高める。本発明では、前記した押出直後(押出機の出側で)の押出工程上で連続してオンラインにて行われる急冷あるいは焼入れ処理が行われている場合は、この成形加工後で人工時効処理前の、再加熱による溶体化および焼入れ処理は行わない。
人工時効硬化処理は、部材の機械的特性を向上させるために、好ましくは、加熱による100〜200℃での人工時効処理を、好ましくは12〜36時間(hr)行う。このような人工時効処理によって、製品の0.2%耐力300MPa以上が確保される。
以上説明した、好ましい7000系アルミニウム合金組成および製造方法によって、押出形材が残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化されるとともに、この成形加工の後に人工時効処理が施された7000系アルミニウム合金部材であって、0.2%耐力が300MPa以上であるとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力が160MPa以下である、高強度7000系アルミニウム合金部材を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではない。例えば、素材として、押出形材だけでなく、前記各条件や下記実施例条件を、押出から圧延に置き換えれば、圧延板材へ適用することも可能であり、本発明の技術的範囲に含まれる。
次に、本発明の実施例を説明する。表1に示す各7000系アルミニウム合金からなる中空押出形材(素材)を熱間押出し、この中空押出形材を、押出終了後に、自然時効以外は人工的に調質することなく、表2に示す種々の条件で復元処理を行った。そして、この復元処理の終了後(室温までの急冷終了後)から表2に示す種々の時間経過後に、この復元処理以外は人工的に調質することなく、残留応力の発生を伴う成形加工として、共通の条件で、曲げ加工を行って部材化した。そして、この曲げ加工後の部材に対して、共通の条件で、溶体化および焼入れ処理することなく、人工時効処理のみの調質を行い、この調質後の部材の0.2%耐力などの機械的な性質と、前記曲げ加工を受けた部材位置における残留応力、などを各々測定、評価した。これらの結果を表3に示す。
具体的な製造条件として、先ず、表1に示す各7000系アルミニウム合金からなるビレット(丸棒鋳塊)に鋳造後した。このビレットを、各例とも同じく、500℃×10時間の均質化熱処理し、ついで押出開始温度440℃、押出機の出側にて、温度500℃から水冷(急冷)する直接熱間押出し、共通して、部材としてドアビームを意図した略矩形の口形断面からなる中空押出形材(長尺材)を得た。
この中空押出形材の大きさは、ドアビーム例として、矩形断面を構成する、曲げ外側となるフランジの幅を比較的短い40.0mm、曲げ内側となるフランジの幅を比較的長い50.0mmとし、互いに平行なこれらフランジの互いの外側同士の距離(形材の縦幅)を30.0mmとした。これら内外フランジ同士を直角につなぐ、互いに平行な左右のリブの互いの外側同士の距離(形材の横幅)は25.0mmとした。そして、前記曲げ外側となるフランジの左右に、前記各左右のリブの外側からの長さ(幅)が各々5.00mm、前記曲げ内側となるフランジの左右にも、前記各左右のリブの外側からの長さ(幅)が各々10.00mmづつ、左右に各フランジが張り出すような位置に、これら左右のリブを立設した。したがって、中空押出形材(ドアビーム)の断面は略パイの字型をしている。また、前記曲げ外側となるフランジの厚みは各々均一な4.0mm、前記曲げ内側となるフランジの厚みは各々均一な4.5mm、左右のリブの厚みは各々均一な2.3mmであった。
前記熱間押出後、共通して、適当な長さに切断後、20日間の自然時効(室温時効)後に(この自然時効以外は人工的に調質することなく)、共通して硝石炉を用いて、表2に示す種々の加熱、保持温度(実体温度)、保持時間、冷却条件で、前記復元処理を行った。
この復元処理における急熱時の加熱速度の制御は、硝石炉のヒーターによって行い、所定実体温度に保持後、この保持時間を押出形材素材の炉からの取り出しタイミングで制御した。そして、18〜20℃程度の室温の温度へ、この取り出し直後から押出形材素材への水冷の程度で冷却速度を制御した。なお、押出形材素材の実体温度は、市販の接触式温度計を直接押出形材素材に接触させて計ったが、工業的には非接触の放射温度計などによって計っても良い。
この際に、押出形材素材の0.2%耐力の経時変化として、前記熱間押出にて製造(急冷)直後と、20日間の自然時効後でこの復元処理直前と、この復元処理における急冷後との、押出形材素材の0.2%耐力とを、各々後述する引張試験要領により測定した。
また、復元処理直前の押出形材素材(T1材=自然時効材)の導電率と、この復元処理における急冷直後の前記押出形材素材の導電率を、市販のデジタル導電率計(渦電流:電磁誘導、 試験周波数60KHz 、500KHz(標準プローブ使用時) 、測定範囲 0.8〜110 %IACS、0.45〜64MS/m 分解能)にて、測定した。測定結果は任意の5箇所の平均値とした。そして、この復元処理における急冷直後の前記押出形材素材の導電率(平均値)と、前記復元処理直前の前記押出形材素材(T1材)の導電率(平均値)との差を、T1材との導電率差として求めた。これらの結果を表2に示す。
この復元処理後に、表2に示す通り、前記室温までの急冷終了直後から成形加工の開始までの時間(所要時間)を種々変えて、この復元処理以外は人工的に調質することなく、残留応力の発生や塑性加工を伴う成形加工として、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工を各々選択して行った。これらは、押出形材素材をドアビームの部材化する際の成形加工として、各々組み合わせてあるいは単独で必要になる可能性がある。
曲げ加工は、半径150mmの3点曲げ試験用金型を用い、長さ1055mmの押出形材素材を、800mmの間隔をあけた2個のローラ台(φ30mm)上に、前記曲げ外側フランジ側が上側となるように、また左右が均等な長さとなるように載置した。そして、上側となる前記曲げ外側フランジの中心位置に、その上方側から下方に向かって、前記3点曲げ試験用金型を500mm押し込み、部材がその長手方向に円弧状に曲がる永久変形を与えた。
断面の潰し加工は、潰し加工前に、押出形材の端部から中空空間内に、心金を潰し加工する部分の位置に設置し、この心金を設置した押出形材の部分を前記曲げ内側フランジの下方側からダイスにより拘束し、前記心金に相対向して前記曲げ外側フランジの上方側に半径150mmのパンチを配置し、これらの工具によって、断面の1/3の高さ(これらフランジの1/3の距離:10.3mmまで、部分的な潰し加工(プレス成形)を行った。
打抜き加工は、押出形材の前記曲げ外側フランジの上方側から、直径10mmの孔をパンチにより打ち抜いた。
そして、各押出形材素材のこれらの各成形性を評価した。評価は5個の各同一素材を同一条件で成形し、5個(5回)とも各成形加工時に割れや変形などの成形不良が全く生じなかった例を○、1個(1回)でも成形加工時に割れや変形などの成形不良が生じたものを×、と評した。この結果を表3に示す。
また、上記各押出形材素材の各成形例でのスプリングバック性を評価した。評価は上記成形例5個(5回)のうち、設定形状からのズレ幅の大きさで評価した。1個(1回)でもスプリングバックによる設定寸法や形状からのズレが大きく、修正加工を要すると判断されるものを×、全て設定寸法や形状の範囲内であり、修正加工が不要と判断される例を○と評価した。この結果を表3に示す。
これらの各成形加工部材に対して、各例とも共通して、130℃×12時間の人工時効処理する調質を行った。表2ではこの調質を行った例に○を付している。そして、この調質後の部材の0.2%耐力、部材の前記3点曲げ試験用金型押し込み位置(中央部)における残留応力を測定した。
引張特性:
前記部材の押出方向に任意の位置から採取したJIS4号引張試験片を用い、JISZ2241に規定する金属材料試験方法に準じ、引張強さ、耐力、及び伸びを測定した。なお、これらの測定値は、各例とも3つの採取試験片の測定値の平均値とした。この結果を表3に示す。
残留応力:
残留応力の測定法は切断法により次の手順で行った。前記部材の前記各加工位置(曲げ加工は金型押し込み中央位置、断面の潰し加工は潰し加工中央位置、打抜き加工は孔周縁位置)を測定対象位置とした。そして、これら測定対象位置表面をサンドペーパーで研磨後、アセトン洗浄し、この研磨部位に歪みゲージ2を瞬間接着剤で接着し、24時間室温放置後、歪みゲージ2のリード線3を歪み計に接続してゼロ点設定をし、歪みゲージ2の周囲を金属のこぎりで10mm角、深さ2mmに切断して応力開放し、切断後の歪み量εを計測し、次式にて残留応力値σを算出した。 σ=−E×ε(E;ヤング率)、ここでE=68894N/mmとした。
表1の合金番号1〜4の各発明例のアルミニウム合金は本発明成分組成範囲内である。これらを用いた、表2の各発明例の押出形材は、復元処理を前記した好ましい条件範囲内で行い、前記復元処理における急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下に低下させているとともに、この復元処理前後(復元処理直前と急冷直後の)前記押出形材の前記導電率差を5%IACS未満としている。
この結果、各発明例は表3に示すとおり、前記復元処理の諸効果を確実に発揮させることができている。すなわち、調質後の部材の0.2%耐力が最低でも300MPa以上、より高い例では350MPa以上あるいは400MPa以上である。同時に、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力も、高いものでも160MPa以下、より低い例では120MPa以下である。
これによって、本発明の復元処理によれば、20日の自然時効(室温時効)後の高強度の7000系アルミニウム合金押出形材であっても、また、残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化された高強度7000系アルミニウム合金部材であっても、人工時効処理後の部材の0.2%耐力を300MPa以上と高強度化できるとともに、溶体化処理せずとも、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下に抑制できることが分かる。
更に、各発明例は表3に示すとおり、自然時効が進展した場合の押出形材であっても、スプリングバック量が低減される結果、部材への成形性や成形精度を更に向上できることが分かる。
これに対して、表1の合金番号5、6、7の、各比較例のアルミニウム合金は、Zn、Mg、Cuが各々少なすぎる。このため、これらの合金を用いた、表2の比較例7、8、9のように、発明例と同じ条件で製造された部材であっても、人工時効処理後の部材の0.2%耐力が300MPa未満で不足している。
また、表2の比較例10〜22は、表1の合金番号1、2、3の発明例アルミニウム合金だが、特に復元処理のいずれかの条件が好ましい範囲から外れている。このため、前記復元処理における急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下に低下させていないか、この復元処理におけるこの復元処理前後(復元処理直前と急冷直後の)前記押出形材の前記導電率差が5%IACS以上となっている。
比較例11、15、19、22は、表2に示す通り、復元処理におけるこの復元処理前後(復元処理直前と急冷直後の)前記押出形材の前記導電率差が5%IACS未満だが、前記復元処理における急冷直後の0.2%耐力が120MPaを超えている。この結果、表3に示す通り、比較例11、15、19、22は人工時効処理後の部材の0.2%耐力が300MPa以上であっても、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力が160MPaを超えている。また、これら各比較例は、表3に示すとおり、自然時効が進展した場合の押出形材のスプリングバック量の低減が図かれていない。このうち、比較例11、15、22では、復元処理後に部材を成形するまでの時間が1時間(hr)を超えてかかりすぎていることも、その一因となっている。
その他の比較例は、表2に示す通り、前記復元処理における急冷直後の0.2%耐力が120MPa以下だが、復元処理前後(復元処理直前と急冷直後の)前記押出形材の前記導電率差が5%IACSを超えている。この結果、表3に示す通り、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力が160MPa以下と低いものの、人工時効処理後の部材の0.2%耐力が300MPa未満の低いレベルでしかなく、復元処理によって完全なO材となっていることが分かる。
以上の実施例から、前記復元処理における急冷直後の0.2%耐力を120MPa以下に低下させることと、この復元処理前後での前記導電率差を5%IACS未満とすること、また、これらをともに満足することの意義が裏付けられる。そして、本発明における復元処理の各規定条件の、自然時効した後でも7000系アルミニウム合金押出形材素材の、部材への成形性自体を向上させ、この成形加工によって付加される残留応力を小さくでき、更に調質処理を施して高強度化できる、技術的な意義が裏付けられる。
Figure 0005671422
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本発明によれば、自然時効した後でも、成形性自体を向上させて、この成形加工によって付加される残留応力を小さくでき、更に調質処理を施して高強度化できる、高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法および高強度7000系アルミニウム合金部材を提供できる。このため、本発明は、軽量化された高強度7000系アルミニウム合金からなるバンパリィンホース、ドアビームなどの自動車用補強部材あるいは航空機用などの構造部材、好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、Zn:5.0〜8.0%、Mg:0.3〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%の一種または二種以上を含有し、残部が不可避的不純物およびアルミニウムからなる組成を有する7000系アルミニウム合金素材を、鋳塊からの塑性加工によって製造後に、自然時効以外は人工的に調質することなく復元処理を行い、この復元処理を、0.5℃/秒以上の加熱速度によって急熱し、200℃を超え、500℃以下の実体温度範囲にて20秒未満の短時間だけ保持した後に、室温まで0.5℃/秒以上の冷却速度で急冷して、この急冷直後の前記素材の0.2%耐力120MPa以下とするとともに、この急冷直後の前記素材の導電率と、前記復元処理直前の前記素材の導電率との差を5%IACS未満とし、この復元処理の前記室温までの急冷終了後から1時間以内に、この復元処理以外は人工的に調質することなく、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工を行って部材化し、この部材に対して、溶体化および焼入れ処理することなく人工時効処理し、この人工時効処理後の部材の0.2%耐力を300MPa以上とするとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力を160MPa以下としたことを特徴とする高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法。
  2. 前記アルミニウム合金素材がアルミニウム合金押出形材であり、前記塑性加工が熱間押出加工である請求項に記載の高強度7000系アルミニウム合金部材の製造方法。
  3. 質量%で、Zn:5.0〜8.0%、Mg:0.3〜2.0%、Cu:0.05〜0.5%を含有し、さらに、Mn:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.3%、Zr:0.01〜0.3%の一種または二種以上を含有し、残部が不可避的不純物およびアルミニウムからなる組成を有する7000系アルミニウム合金押出形材が復元処理されて、この復元処理後の急冷直後の前記押出形材の0.2%耐力が120MPa以下とされるとともに、この急冷直後の前記押出形材の導電率と、前記復元処理直前の前記押出形材の導電率との差が5%IACS未満とされた上で、曲げ加工、断面の潰し加工、打抜き加工から選択される残留応力の発生を伴う成形加工によって部材化されるとともに、この成形加工の後に溶体化および焼入れ処理されることなく人工時効処理が施された7000系アルミニウム合金部材であって、0.2%耐力が300MPa以上であるとともに、前記成形加工を受けた部材位置における残留応力が160MPa以下であることを特徴とする高強度7000系アルミニウム合金部材。
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