JP5667536B2 - アクリル系熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、アクリル系熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳細に、本発明は、透明性および色相に優れ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、且つ表面平滑性に優れる成形品を与えるアクリル系熱可塑性樹脂組成物に関する。
メタクリル酸メチルを主に含有する単量体を重合して成るメタクリル系樹脂は、可視光領域における全光線透過率が高く、表面硬度が高いなどの特長を有している。メタクリル系樹脂は、様々な分野で使用されているが、機械的特性、特に高い靭性が求められる用途における使用には不向きである。
機械的特性、特に靭性向上を目的として、特許文献1に、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有し、少なくともメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しており、アクリル系熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度のうち、メタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)が、メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度(TgA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度(TgB)との間の値を示す熱可塑性樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物は、透明性が高く、表面硬度に優れ、耐衝撃性や靱性などが良好である。
特開2008−133452号公報
ところが、特許文献1で提案されている熱可塑性樹脂組成物は、色相、フィッシュアイなどの点において満足できる成形品やフィルムを得ることができない場合があった。特に、高い透明性、バランスのとれた色相、フィッシュアイなどの欠点が少ないこと、および高い表面平滑性が要求される用途、例えば、精密な光学用途における使用は限られている。
本発明の目的は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物において、さらに、透明性及び色相に優れ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れる成形品やフィルムを、再現性良く、安定に作製しうる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明のもう一つの目的は、該アクリル系熱可塑性樹脂組成物からなり、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れる成形品、およびフィルム(本発明において「フィルム」とは、厚さが通常500μm以下のものを示す)を、再現性良く安定に提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、 メタクリル系樹脂(A)と、 ポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以下のアルデヒドを用いてアセタール化度65〜85モル%でアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂(B)と、 メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して特定量のアセトアルデヒド(E1)及びブチルアルデヒド(E2)とを含有するアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、透明性及び色相に優れ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、且つ表面平滑性に優れた成形品およびフィルムを安定に与えることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、以下のものを包含する。
〔1〕メタクリル系樹脂(A)と、ポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以下のアルデヒドを用いてアセタール化度65〜85モル%でアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂(B)と、メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して1ppm以上200ppm以下のアセトアルデヒド(E1)と、メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して1ppm以上200ppm以下のブチルアルデヒド(E2)とを含有するアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して100ppm以下の酢酸(F1)と、メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して100ppm以下のブタン酸(F2)とを、さらに含有する、〔1〕に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕アクリル系熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)が、メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度(TgA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度(TgB)との間の値である、〔1〕または〔2〕に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)の質量比(A)/(B)が99/1〜51/49である、〔1〕〜〔3〕のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕ポリビニルアセタール樹脂(B)がポリビニルブチラール樹脂である、〔1〕〜〔4〕のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる成形品、またはフィルム。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、透明性および色相に優れる。さらに、該組成物を成形することにより、透明性および色相に優れ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れた成形品およびフィルムを安定に得ることができる。このような特長を有する本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、より広範囲の用途に使用することができる。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とアセトアルデヒド(E1)とブチルアルデヒド(E2)と、必要に応じて酢酸(F1)とブタン酸(F2)とを含有してなるものである。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルを含有する単量体混合物を重合することによって得られるものである。
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどが挙げられる。メタリル酸エステルは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
単量体混合物にはメタクリル酸エステル以外に、アクリル酸エステルが含まれていてもよい。
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどが挙げられる。アクリル酸エステルは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。
また、前記の単量体混合物には、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルに共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が含まれていてもよい。
当該エチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。エチレン性不飽和単量体は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単位の割合が、耐候性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、80〜99.9質量%であることがより好ましい。また、耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアクリル酸エステル単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量(以下、Mwと表記することがある。)が、好ましくは40,000以上、より好ましくは40,000〜10,000,000、特に好ましくは80,000〜1,000,000である。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、単量体が線状に連なって結合したものであっても良いし、分岐を有するものであっても良いし、環状構造を有するものであっても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)の製造法は、エチレン性不飽和化合物を重合させることができる方法であれば、特に制限されない。本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、ラジカル重合によって製造されるものが好ましい。重合法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが挙げられる。
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜0.5質量部用いられる。重合時の温度は、好ましくは50〜140℃であり、重合時間は、好ましくは2〜20時間である。
メタクリル系樹脂(A)の分子量を制御するためには、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体100質量部に対して、好ましくは0.005〜0.5質量部で用いられる。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、ビニルアルコール単位(式(I))、ビニルエステル単位(式(II))およびビニルアセタール単位(2個のビニルアルコール単位がアルデヒドでアセタール化されたもの : 式(III))を有する樹脂である。下記の式において、lはビニルアルコール単位のモル比であり、mはビニルエステル単位のモル比であり、k/2はビニルアセタール単位のモル比であり、kはアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比であり、Raはアセタール化に用いたアルデヒド(Ra−CHO)中のRaである。Rbはビニルエステル(RbCOOCH=CH2)中のRbである。ただし、lおよび/またはmはゼロであってもよい。ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位およびビニルアセタール単位のみからなるポリビニルアセタール樹脂(B)においては、k+l+m=1である。各単位は、配列順序によって特に制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。また、繰り返し単位間の結合は、Head-to-Tailであってもよいし、Head-to-Headであってもよい。
Figure 0005667536
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本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(以下、PVAと表記することがある)をアルデヒドでアセタール化することによって得ることができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、ビニルアルコール単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、ビニルアルコールとこれに共重合可能なモノマーとからなるコポリマー(以下、PVAコポリマーと表記することがある。)であってもよい。さらに、分子鎖の途中、末端、または側鎖にカルボキシル基などの官能基が導入された変性ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。これらポリビニルアルコール樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるものを用いることができる。ビニルエステル単位を形成するためのビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でもPVAを良好な生産性で得ることができる点で酢酸ビニルが好ましい。
PVAコポリマーを構成する共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基などのオキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸などに由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。
これら共重合可能な単量体の単位(以下、コモノマー単位と表記することがある。)の含有量は、PVAコポリマーを構成する全単量体単位100モル%の中で、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上がコモノマー単位であることが好ましい。
PVAの製造において使用される重合法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合する方法である、塊状重合法や溶液重合法が好ましい。溶液重合法において使用される溶媒としてのアルコールには、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが通常用いられる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)などのアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物などが挙げられる。重合温度については特に制限はないが、通常、0℃〜200℃である。
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられるポリビニルアルコール樹脂は、粘度平均重合度が通常200〜4000、好ましくは300〜3000、より好ましくは500〜2500である。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂の力学物性が不足し、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の力学物性、特に靭性が不足する傾向がある。一方、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が4000を超えると、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する際の溶融粘度が高くなり、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の色相が悪化する傾向があったり、フィッシュアイなどの欠点が増加する傾向があったり、該組成物からなる成形品およびフィルムの表面平滑性が悪化する傾向があったり、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製造が困難になる傾向がある。
なお、ポリビニルアルコール樹脂の重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、ポリビニルアルコール樹脂を完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で極限粘度[η](dl/g)を測定し、その値から数式(i)によって算出されるものである。
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ビニルエステル系重合体をけん化する際に触媒としてアルカリ性物質が、通常、使用される。アルカリ性物質としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。けん化触媒に使用されるアルカリ性物質のモル比は、ビニルエステル単位に対して、好ましくは0.004〜0.5、より好ましくは0.005〜0.05である。けん化触媒としてのアルカリ性物質は、けん化反応の初期に一括添加してもよいし、けん化反応の途中で追加添加してもよい。
けん化反応時に使用可能な溶媒としては、メチルアルコール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましい。使用される溶媒は含水率を調整されたものが好ましい。溶媒の含水率は、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、さらに好ましくは0.005〜0.8質量%である。
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいし、部分的にけん化されたもの、すなわち部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は、色相、フィッシュアイ低減、該組成物からなる成形品およびフィルムの表面平滑性の観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上、特に好ましくは99.5モル%以上である。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられるアルデヒドは炭素数4以下のアルデヒドである。
炭素数4以下のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどが挙げられる。アルデヒドは1種単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒドのうち、製造の容易度および取り扱いの観点から、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、およびブチルアルデヒドが好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂とアルデヒドとの反応、すなわちアセタール化反応は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂を水に溶解させ、酸触媒の存在下にアルデヒドと反応させて樹脂粒子を析出させる方法(水媒法)、ポリビニルアルコール樹脂を有機溶媒に分散させ、酸触媒の存在下にアルデヒドと反応させ、得られた反応液を水などの貧溶媒に添加して樹脂粒子を析出させる方法(溶媒法)などが挙げられる。これらのうち水媒法が好ましい。
アセタール化に用いられるアルデヒドは、すべてを同時に仕込んでも良いし、1種類ずつを別々に仕込んでも良い。アルデヒドの添加順序および酸触媒の添加順序を変えることで、ポリビニルアセタール樹脂中のビニルアセタール単位のランダム性を変化させることができる。
アセタール化反応に用いられる酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸などの無機酸類;炭酸ガスなどの水溶液にした際に酸性を示す気体、陽イオン交換体や金属酸化物などの固体酸触媒などが挙げられる。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、65〜85モル%、好ましくは68〜83モル%、より好ましくは72〜80モル%である。この範囲のアセタール化度を有するポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、溶融加工または製造が容易で且つ安価に本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
なお、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、JIS K6728(1977年)等に記載の方法に則って決定することができる。
先ず、アセタール化されなかったビニルアルコール単位の質量比(l0)および酢酸ビニル単位の質量比(m0)を滴定によって求める。アセタール化されたビニルアルコール単位の質量比(k0)をk0=1−l0−m0によって算出する。これらから、アセタール化されなかったビニルアルコール単位のモル比(l)および酢酸ビニル単位のモル比(m)を計算し、k=1−l−mによって、アセタール化されたビニルアルコール単位のモル比(k)を算出する。
または、ポリビニルアセタール樹脂を重水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し、1H−MMR、または13C−NMRを測定して、アセタール化されなかったビニルアルコール単位のモル比(l)、ビニルエステル単位のモル比(m)およびアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比(k)を算出する。ただし、k0+l0+m0=1、k+l+m=1である。
そして、 k/(k+l+m}×100 によって、アセタール化度を、算出する。
また、複数のアルデヒドでアセタール化した場合、アルデヒドごとのアセタール化度は、次に示すような方法で求めることができる。たとえば、ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂において、ブチルアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比k(BA)、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比k(AA)、ホルムアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比k(FA)、アセタール化されなかったビニルアルコール単位のモル比l、およびビニルエステル単位のモル比mであるとしたとき、ブチルアセタール化度(ブチラール化度とも呼ばれる。)は、 式:k(BA)/{(k(BA)+k(AA)+k(FA))+l+m}×100で求められる。アセトアセタール化度は、式:k(AA)/{(k(BA)+k(AA)+k(FA))+l+m}×100で求められる。ホルムアセタール化度(ホルマール化度とも呼ばれる。)は、式:k(FA)/{(k(BA)+k(AA)+k(FA))+l+m}×100で求められる。なお、アルデヒドごとのアセタール化度は、1H−NMRまたは13C−NMRによって、アセタール化したアルデヒドの比率を測定することによって算出することができる。ただし、k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m=1である。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドとで共アセタール化して得られる樹脂であることが好ましい。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、力学物性および耐熱性の観点から、ブチルアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位/アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比が、好ましくは100/0〜20/80、より好ましくは80/20〜20/80である。このようなポリビニルアセタール樹脂(B)を用いることで、ポリビニルアセタール樹脂が、本来有している強度・弾性率や表面硬度、表面の平滑性、透明度などの特長を保持しつつ、力学物性および耐熱性に優れた成形品を得ることができる。当該ポリビニルアセタール樹脂(B)のブチラール化度は、65〜85モル%、好ましくは68〜83モル%、より好ましくは72〜80モル%である。ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、力学特性、特に靭性に優れ、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を容易に且つ安価に得ることができる。また、ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、メタクリル系樹脂(A)の屈折率とポリビニルブチラールの屈折率との差が小さくなり、メタクリル系樹脂(A)の特長である透明性(高可視光線透過率・低ヘイズ)が保持されやすい。さらに、延伸した際、折り曲げた際、衝撃を受けた際および/または長時間湿熱条件下に置かれた際にほとんど白化しないという特長があらわれやすい。
また、好適なポリビニルアセタール樹脂は、アセタール化されなかったビニルアルコール単位の量が15〜35モル%、好ましくは17〜32モル%、より好ましくは20〜28モル%であり、ビニルエステル単位の量が、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下、特に好ましくは0.5モル以下である。
なお、アセタール化することによっても重合度が変化することはないため、ポリビニルアルコール樹脂と、そのポリビニルアルコール樹脂をアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂(B)の重合度は同じである。したがって、ポリビニルアセタール樹脂(B)の重合度は、好ましくは200〜4000、より好ましくは300〜3000、さらに好ましくは500〜2500である。ポリビニルアセタール樹脂(B)の重合度が低すぎると、ポリビニルアセタール樹脂(B)の力学物性が不足し、特に靭性が不足する傾向がある。ポリビニルアセタール樹脂(B)の重合度が高すぎると、熱成形する際の溶融粘度が高くなり、成形品の製造が困難になる傾向がある。
水媒法及び溶媒法などにおいて生成したスラリーは、通常、酸触媒のために酸性を呈しているので、酸触媒を除去することが好ましい。酸触媒の除去方法として、スラリーを、pHが、好ましくは5〜9、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8になるまで水洗を繰り返す方法、スラリーに中和剤を添加して、pHを好ましくは5〜9、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8にする方法や、アルキレンオキサイド類などを添加する方法が挙げられる。
酸触媒除去のために用いられる中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属化合物;水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物;アンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。酸触媒除去のために用いられるアルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類が挙げられる。
次に、触媒残渣、中和剤残渣、中和により生成した塩、未反応のアルデヒド、アルデヒドの酸化で生成する酸類、および副生物などを除去して、ポリビニルアセタール樹脂を精製する。
精製方法は特に制限されず、脱液と洗浄を繰り返すなどの方法が通常用いられる。精製に用いられる液としては、水や、水にメタノールやエタノールなどのアルコールを加えた混合液などが挙げられる。中でも、ポリビニルアセタール樹脂を中和した後に、水とアルコール(メタノール、エタノールなど)との混合溶液で、pHが好ましくは6〜8、より好ましくは6.5〜7.5になるまで、脱液と洗浄を繰り返す方法が、アルデヒドまたは酸類を効率よく低減でき、ポリビニルアセタール樹脂を安定に製造することができる点で好ましい。水/アルコールの混合比率は、質量比で50/50〜95/5であることが好ましく、60/40〜90/10であることがより好ましい。水の割合が少なすぎると、ポリビニルアセタール樹脂の混合液中への溶出が多くなる傾向がある。水の割合が多すぎると、アルデヒドまたは酸類の除去効率が低下する傾向がある。
残渣などが除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工され、成形材料として供される。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することによりアルデヒド、酸類、水などを低減しておくことが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)に含有するアセトアルデヒド(E1)およびブチルアルデヒド(E2)の量は、ポリビニルアセタール樹脂(B)に対して、それぞれ、好ましくは2ppm以上400ppm以下、より好ましくは2ppm以上200ppm以下、さらに好ましくは2ppm以上150ppm以下、よりさらに好ましくは6ppm以上100ppm以下、特に好ましくは10ppm以上100ppm以下である。ポリビニルアセタール樹脂(B)に含有するアセトアルデヒド(E1)またはブチルアルデヒド(E2)のいずれかの量が、少なすぎる場合には、熱可塑性樹脂組成物の透明性および色相が悪化する傾向がある。一方、ポリビニルアセタール樹脂(B)に含有するアセトアルデヒド(E1)またはブチルアルデヒド(E2)のいずれかの量が、多すぎる場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品やフィルムの表面平滑性が悪化する傾向がある。
また、ポリビニルアセタール樹脂(B)に含有する酢酸(F1)およびブタン酸(F2)の量が、ポリビニルアセタール樹脂(B)に対して、それぞれ、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは60ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。ポリビニルアセタール樹脂(B)に含有する酢酸(F1)またはブタン酸(F2)のいずれかの量が、多すぎる場合には、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品やフィルムのフィッシュアイなどの欠点が増加する傾向および/または表面平滑性が悪化する傾向がある。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、アセトアルデヒド(E1)およびブチルアルデヒド(E2)の含有量が、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との合計に対して、それぞれ、1ppm以上200ppm以下、好ましくは1ppm以上100ppm以下、より好ましくは1ppm以上50ppm以下、特に好ましくは5ppm以上50ppm以下である。アルデヒドは還元剤として作用し、分解による透明性低下や着色を抑制し、透明性および色相に優れる熱可塑性樹脂組成物の提供が可能となる。一方で、アルデヒドは溶融成形時等において揮発するので、表面平滑性に優れる成形品やフィルムを提供するためには、アルデヒドが必要以上に含まれないことが好ましい。特に、アセトアルデヒド(E1)およびブチルアルデヒド(E2)の含有量は重要である。
また、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、酢酸(F1)およびブタン酸(F2)の含有量が、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との合計に対して、それぞれ、100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。酢酸(F1)およびブタン酸(F2)の含有量が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品およびフィルムにフィッシュアイなどの欠点が生じ難くなる。酢酸(F1)およびブタン酸(F2)などの酸類は、アルデヒドが酸化されることによって生成する。酸類はアルデヒドと同様に溶融成形時に揮発するので、成形品やフィルムを作製したときにフィッシュアイなどの欠点の原因となり得るので、酸類はできるだけ低減しておくことが好ましい。特に、アセトアルデヒド(E1)が酸化してできる酢酸(F1)および/またはブチルアルデヒド(E2)が酸化してできるブタン酸(F2)の影響が大きい。
メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有する樹脂組成物には、当該樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度(TαAP)と、当該樹脂組成物中のポリビニルアセタール樹脂(B)に起因する主分散ピーク温度(TαBP)とがある。また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物では主分散ピーク温度が一つしか観測できないことがある。すなわち、TαAP=TαBPとなる場合がある。TαAP=TαBPとなる場合は、熱可塑性樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な相溶状態になっていることを示している。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)に起因する主分散ピーク温度(TαAP)が、メタクリル系樹脂(A)単独での主分散ピーク温度(TαA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独での主分散ピーク温度(TαB)との間の値であることが好ましい。すなわち、TαB<TαAP<TαA、又はTαA<TαAP<TαBの関係を満たしていることが好ましい。このような関係を満たすTαAPを持つ本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分的にまたは完全に相溶した状態になっていると考えられる。メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分的にまたは完全に相溶した状態である場合には、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、表面硬度および剛性がメタクリル系樹脂とほぼ同等であり、且つ延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化し難くなる。また、靭性、取扱い性なども優れている。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、連続相がメタクリル系樹脂(A)によって形成されていることが好ましい。なお、本発明において、メタクリル系樹脂(A)が二以上のメタクリル系樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つの主分散ピーク温度をTαAとし、ポリビニルアセタール樹脂(B)が二以上のポリビニルアセタール樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つの主分散ピーク温度をTαBとし、上記関係、すなわちTαB<TαAP<TαA、又はTαA<TαAP<TαBの関係を満たしていればよい。
なお、主分散ピーク温度(Tα)は、動的粘弾性測定によって求めることができる。例えば、株式会社レオロジー製DVE RHEOSPECTOLER DVE−V4を用いて、長さ20mm×幅3mm×厚さ120〜200μmの試験片を正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/分の条件において測定した損失正接(tan δ)から求めることができる。主分散ピーク温度(Tα)は、損失正接(tan δ)の主分散のピークを示す温度である。広義にはガラス転移温度(Tg)と呼ばれることがある。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、四酸化ルテニウムで染色された分散相が電子顕微鏡にて視認できる場合がある。染色された分散相には、ポリビニルアセタール樹脂(B)が含まれていると考えられる。該分散相は非常に小さいかまたは無い方が好ましい。分散相の平均径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、分散相の平均径が0nmという場合には、ポリビニルアセタール樹脂(B)がメタクリル系樹脂(A)に完全相溶して、視認可能な分散相がないことを含む。
なお、熱可塑性樹脂組成物の相構造の観察は、例えば、ウルトラミクロトーム(RICA社製Reichert ULTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製し、次いで四酸化ルテニウムで電子染色し、株式会社日立製作所製透過型電子顕微鏡H−800NAを用いて行なう。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との質量比(A)/(B)が、靭性、表面硬度および剛性の観点から、好ましくは99/1〜51/49、より好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜60/40である。ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が1質量%を下回ると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の靭性などの力学物性の改善効果が低下する傾向がある。一方、ポリビニルブチラール樹脂(B)の割合が49質量%を上回ると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の表面硬度および剛性が不足する傾向がある。
本発明の好ましい態様のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/分で計測した際の曲げ弾性率、および、JIS K7162にしたがって、1A形ダンベル試験片を用いて歪み速度1mm/分で計測した際の引張り弾性率、の少なくとも一方が、好ましくは2GPa以上、より好ましくは2.5GPa以上、さらに好ましくは2.7GPa以上である。
また、本発明の好適な態様のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/分で曲げ試験した際において、応力の降伏点を有している。なお、応力の降伏点は、固体において塑性変形がはじまる応力限界のことである。
さらに、本発明の好適な態様のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化(放置前のヘイズと放置後のヘイズとの差)が、1.0%未満である。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を得るための好適な製法は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程を含むことが好ましい。
さらに好適な製法では、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経ることが好ましい。また、揮発成分を除去するために、減圧して溶融混練することが好ましい。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製法では、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの公知の混練機を用いて、各構成成分を溶融状態で混練することが重要である。これら混練機のうち、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しやすく、生産性に優れ、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回含む工程を容易に作り出せることから、二軸押出機が好ましい。
メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とアルデヒド類(E)とを二軸押出機で溶融混練する際、減圧状態で揮発成分を低減する工程を含むことが好ましい。この工程で本発明の熱可塑性樹脂組成物における揮発成分を低減させることができ、また、同時にアセトアルデヒド(E1)、ブチルアルデヒド(E2)、酢酸(F1)および/またはブタン酸(F2)の含有量を調整することができる。効果的に揮発成分を低減するため、上記減圧状態とする工程は、せん断速度が50sec-1以下の段階で行うことが好ましい。この工程を経ることにより、透明性および色相に優れ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れる成形品やフィルムを作製し得る熱可塑性樹脂組成物の提供が可能となる。さらに、該アクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れる成形品およびフィルムの提供が可能となる。
溶融混練する際の樹脂温度は、好ましくは140℃以上、より好ましくは140〜270℃、さらに好ましくは160〜250℃である。
溶融混練する際に熱可塑性樹脂組成物に与える剪断は、剪断速度として、好ましくは100sec-1以上、より好ましくは200sec-1以上である。
溶融混練した後、120℃以下の温度に冷却する。冷却は溶融状態のストランドを、冷水を溜めた槽に浸すなどの方法で急速に行うことが好ましい。急速冷却することによって、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶しやすくなる。さらに、分散相の大きさが非常に小さくなる。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物に、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などを添加してもよい。なお、熱可塑性樹脂組成物の力学物性および表面硬度の観点から軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。軟化剤および/または可塑剤の含有量は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との合計に対して、好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
さらに、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、または、トリアジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
なお、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物に添加される上記添加剤は、熱可塑性樹脂組成物を製造する際に添加してもよいし、後述する成形の直前に添加してもよい。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、例えば、ペレット形状や粉体形状の成形材料として使用される。そして、この成形材料を用いて、押出成形、射出成形、真空成形、圧空成形、ブロー成形、トランスファー成形、回転成形、パウダースラッシュなど公知の成形方法を行うことによって様々な成形品を製造することができる。本発明の好適な態様の成形品は、温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化(放置前のヘイズと放置後のヘイズとの差)が、1.0%未満である。
特に本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を、Tダイ法、カレンダー法、インフレーション法などのような熱可塑性樹脂組成物に高いせん断力の掛かる溶融押出成形法および射出成形法に適用することが、透明性に優れ、改善された靭性を持ち、取扱い性に優れ、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れ、延伸した時、折り曲げた時、衝撃を受けた時および/または長時間湿熱条件下に置かれた時に白化しにくい成形品を得るために好ましい。特にフィルム状成形品を得るためには経済性の観点などからTダイ法が好ましく用いられる。
溶融成形を行うにあたっての、好ましい樹脂温度は、160〜270℃である。成形後は、成形品を自然放冷に比べて急速に冷却することが好ましい。例えば、押し出された直後のフィルム状成形品を冷却ロールに接触させて急速冷却することが好ましい。このような急速な冷却を行うことによって、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成し、且つメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶した成形品を得ることができる。
Tダイ法を用いて本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム状成形品を作製するにあたり、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とアルデヒド類(E)と酸類(F)とを溶融混練する際に、減圧状態で揮発成分を低減する工程を含むことが好ましい。この工程で本発明のフィルム状成形品における揮発成分、すなわち、アセトアルデヒド(E1)、ブチルアルデヒド(E2)、および/または、酢酸(F1)、ブタン酸(F2)の含有量を低減することができ、フィッシュアイなどの欠点が少なく、表面平滑性に優れるフィルム状成形品を作製することができる。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる好適な態様のフィルムは、表面がJIS鉛筆硬度(厚さ100μm)で好ましくはHBまたはそれよりも硬く、より好ましくはFまたはそれよりも硬く、さらに好ましくはHまたはそれよりも硬い。表面が硬いフィルムは、傷つき難いので、外観美の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。さらに、本発明の好適な態様のフィルムは、温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化(放置前のヘイズと放置後のヘイズとの差)が、1.0%未満である。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を用いたフィルムは、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる単層フィルムであっても良いし、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物と、他の樹脂や木製基材やケナフなどの非木質繊維からなる基材との積層フィルム(又は積層体)であってもよい。
積層フィルムでは、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物をフィルムの内層またはその一部に用いてもよいし、最外層に用いてもよい。フィルムの積層数に関しては特に制限はない。
積層フィルムに用いられる他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、トリアセチルセルロース等を挙げることができる。他の樹脂としては、フィルムの外観美の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。
フィルムに傷がつきにくく、外観美が長く持続するという観点から、最外層に用いる樹脂材料は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、メタクリル系樹脂又は本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物が好ましい。
積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、共押出し法により直接多層フィルムを製造する方法、単層で作製したフィルムを貼り合わせる方法などが挙げられる。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、各種の成形部品に適用することができる。該樹脂組成物の用途としては、例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品やマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;家具、ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材などの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコンなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク;パソコン、携帯電話、家具、自動販売機、浴室部材などに用いる表面材料などが挙げられる。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を用いると、靭性と表面硬度および剛性とのバランスに優れ、さらに引裂き強度に優れるため取扱いが容易となり、しかも延伸した時、折り曲げた時および/または衝撃を受けた時に白化しないので外観美に優れた成形品を得ることができる。本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム状またはシート状成形品を、鋼材、プラスチックシート、木材、ガラスなどからなる基材に接着、ラミネート、インサート成形、あるいはインモールド成形などで成形すると、それら基材の外観美を向上させ、また基材を保護することができる。さらに、基材に複合させた本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の上に紫外線(UV)または電子線(EB)の照射によって硬化してなるコーティング層を付与することによって、さらに外観美と保護性を高めることができる。本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物と、鋼材、プラスチック、木材、ガラスなどからなる基材とを共押し出しすることによって基材の外観美を向上させることができる。また、優れた外観美を活かして、壁紙;自動車内装部材表面;バンパーなどの自動車外装部材表面;携帯電話表面;家具表面;パソコン表面;自動販売機表面;浴槽などの浴室部材表面などにも好適に用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特に断りのない限り「質量部」を表し、「%」は、特に断りのない限り「質量%」を表す。
熱可塑性樹脂組成物などの成形材料の物性評価を以下の方法に従って行った。
(重量平均分子量)
テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電工株式会社製Shodex(商標)GPC SYSTEM11に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしてShodex(商標)KF−806Lを繋ぎ、検出器としてShodex(商標)示差屈折率検出器RI−101を用いて測定した。試料溶液は、重合体を3mg精秤し、これを3mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより調製した。測定の際の流量は、1.0ml/分とし、ポリマーラボラトリーズ製標準ポリメタクリル酸メチルで作製した検量線に基づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量として重量平均分子量(Mw)を算出した。
(アルデヒド類(E)および酸類(F)の含有量)
株式会社パーキンエルマージャパン製の加熱脱着装置「TurboMatrix300」を用いて発生させた揮発成分をアジレントテクノロジー株式会社社製のガスクロマトグラフ「GC−6890N」を用いてFID検出器により検出し、濃度既知の標準サンプルを用いて作成した検量線により、アセトアルデヒド(E1)、ブチルアルデヒド(E2)、酢酸(F1)、およびブタン酸(F2)の含有量を定量した。
ガスクロマトグラフ測定時の条件は、以下のとおりである。
サンプルの重量:5mg
サンプルを加熱する温度:150℃
サンプルを加熱する時間:5分間
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガスの流量:60ml/分
(ガラス転移温度(Tg))
損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度(Tg)は、株式会社レオロジー製DVE RHEOSPECTOLER DVE−V4を用いて、長さ20mm×幅3mm×厚さ125μmの試験片を正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/分により測定した。
(可視光線透過率)
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100を用いて厚さ125μmのフィルムの波長380nm〜780nmにおける透過率を測定し、JIS R3106に従って算出した可視光線透過率を測定した。
(ヘイズ)
JIS K7136に従い、厚さ125μmの試験フィルムで測定した。
(色相(YI))
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100を用いて厚さ125μmのフィルムの波長380〜780nmにおける透過率を測定し、JIS Z8722に従ってXYZ値を求め、JIS K7105に従って黄色度(YI)を算出した。黄色度(YI)の値が小さいほど、溶融成形時の着色が少ないことを示す。
(フィッシュアイ欠点)
厚さ125μmのフィルムから、30cm×30cmの試験片を切り出し、この試験片中の0.05mm2以上のフィッシュアイの数を目視により数え、算出した(個/30cm×30cm)。
(表面平滑性(粗度))
原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。(試料測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。)
試料の観察領域は2μm×2μmとし、測定周波数を1.0Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。すなわち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、成形品の傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、以下のように定義される。
※平均面粗さRa:基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値。
Figure 0005667536
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
Figure 0005667536
また、S0は、測定領域の面積を表す。
この平均面粗さRaを成形品(フィルムや板)の両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域でそれぞれ測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値を成形品表面の粗度とした。3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
製造例1 〔メタクリル系樹脂〕
メタクリル酸メチル単位91質量%およびアクリル酸メチル単位9質量%からなるメタクリル系樹脂(A−1)をバルク重合法により作製した。メタクリル系樹脂(A−1)は、重量平均分子量(Mw)が100,000、ガラス転移温度TgAが128℃であった。
製造例2 〔ポリビニルアセタール樹脂〕
表1に示す重合度およびけん化度を有するポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、表1に示すアルデヒド化合物ならびに酸触媒としての塩酸を添加し、攪拌してアセタール化した。反応の進行に伴って樹脂粒子が析出した。公知の方法に従ってpH=6になるまでスラリーを洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に撹拌懸濁させた、再びpH=7になるまで洗浄した。次いで、揮発分が1.0%になるまで乾燥することによって表1に示すポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ得た。
ポリビニルアセタール樹脂の組成は、13C−NMRを測定することで、ブチルアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位の全繰返し単位に対するモル%(k(BA))、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位の全繰返し単位に対するモル%(k(AA))、アセタール化されなかったビニルアルコール単位の全繰返し単位に対するモル%(l)、そしてビニルアセテート単位の全繰返し単位に対するモル%(m)を算出した。
また、それぞれのポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセトアルデヒド(E1)、ブチルアルデヒド(E2)、酢酸(F1)、およびブタン酸(F2)の含有量を加熱脱着ガスクロマトグラフによって計測した。それらの結果を表1に示す。
Figure 0005667536
実施例1
メタクリル系樹脂(A−1)75部、およびポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部を、東洋精機製LABO PLASTOMILL 2D30W2 二軸混練押出機を用いてシリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで混練し、アクリル系熱可塑性樹脂組成物を得た。押出機のダイ直前で測定した樹脂温度は260℃であった。該ペレットについて、アルデヒド類含有量、酸類含有量、およびガラス転移温度を測定した。それらの結果を表2に示す。
さらに、得られたアクリル系熱可塑性樹脂組成物のペレットを、東洋精機製LABO PLASTOMILL D2025を用いて押出成形することで、厚さ125μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、色相、フィッシュアイ欠点、および表面平滑性(粗度)の評価を行った。それらの結果を表2に示す。
透明性良好であり、着色みられず、フィッシュアイ欠点の少ないフィルムを安定に作製することができた。また、表面平滑性の評価結果も良好であった。
Figure 0005667536
Figure 0005667536
実施例2〜12
表2および表3に示す処方に変えた以外は、実施例1と同じ方法にてアクリル系熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。さらに該ペレットを用いてフィルムを作製した。得られたペレットおよびフィルムの評価結果を表2及び表3に示す。
比較例1
実施例1で得たアクリル系熱可塑性樹脂組成物に代えて、メタクリル系樹脂(A−1)のみからなる樹脂材料を用いた以外は、実施例1と同じ方法にてフィルムを作製した。
フィルム作製中、巻き取り工程において、ときどきフィルムに割れが発生し、長時間安定に巻き取るのが困難であった。
得られた小片フィルムの評価結果を表3に示す。
比較例2〜4
表3に示す処方に変えた以外は、実施例1と同じ方法にてアクリル系熱可塑性樹脂組成物ペレットを得た。さらに該ペレットを用いてフィルムを作製した。得られたペレットおよびフィルムの評価結果を表3に示す。
いずれもフィルムの黄変がみられ、フィッシュアイ欠点が増加する傾向がみられた。特に比較例3においては、揮発分由来と思われる欠点が多くみられた。

Claims (7)

  1. メタクリル系樹脂(A)と、
    ポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以下のアルデヒドを用いてアセタール化度65〜85モル%でアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂(B)と、
    メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して1ppm以上200ppm以下のアセトアルデヒド(E1)と、
    メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して1ppm以上200ppm以下のブチルアルデヒド(E2)と
    を含有するアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
  2. メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して100ppm以下の酢酸(F1)と、
    メタクリル系樹脂(A)およびポリビニルアセタール樹脂(B)の合計に対して100ppm以下のブタン酸(F2)とを、さらに含有する、請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
  3. アクリル系熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)が、メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度(TgA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度(TgB)との間の値である、請求項1または2に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
  4. メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)の質量比(A)/(B)が99/1〜51/49である、請求項1〜3のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリビニルアセタール樹脂(B)がポリビニルブチラール樹脂である、請求項1〜4のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
  7. 請求項1〜5のいずれかひとつに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
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