JP5658502B2 - 酵素を配合した不飽和アルデヒドの消臭剤、および消臭方法 - Google Patents

酵素を配合した不飽和アルデヒドの消臭剤、および消臭方法 Download PDF

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Description

本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を用いる不飽和アルデヒドの脱臭方法に関する。また本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒を有効成分として含有する不飽和アルデヒドの臭気の消失用組成物に関する。さらに本発明は、不飽和アルデヒドの臭気の消失において使用するための、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の使用に関する。
体臭は、口臭、足臭、腋臭、頭皮臭等の「体の各部分の匂い」と、「体幹より発せられる匂いを総合した匂い」に大別することができる。前者の「体の各部分の匂い」については、これまでに多くの研究成果が報告され、匂いの主要成分についても解明されている。また、優れた対処方法も数多く提示されている。
例えば、汗臭、腋臭、足臭等は、臭いの元となる「汗」と臭いを生み出す「皮膚常在菌」によって作り出されていることが知られている。汗は、主にエクリン腺とアポクリン腺からなる汗腺より分泌される。人体の全体にわたって分布するエクリン腺より分泌される汗はエクリン汗とよばれる。そのほとんどが水分により構成され、その他に若干の塩化ナトリウム,乳酸,尿素等を含んでいる。一方、アポクリン腺は毛に付随して存在する汗腺で、腋窩や乳輪、陰部等の特定の部位のみに存在する。ここより分泌されるアポクリン腺はタンパク質や脂質、脂肪酸、コレステロール、グルコース、アンモニア、鉄等が含まれるミルク様の汗である。
これらの分泌された汗は、それ自体では強く臭気を発することはない。しかし、皮膚表面に存在する皮膚常在菌によって臭気物質に変化することが知られている。腋臭や足臭を分析した結果、腋臭からはペラルゴン酸やカプリン酸等の低級脂肪酸が特異的に検出された。また、足臭からはイソ吉草酸が特異的に検出され、これが体臭の原因として捉えられている。
また、加齢に伴って発生する中高年層に特有の体臭(加齢臭)の存在も指摘されている(『フレグランス・ジャーナル』、1999年9月号、42乃至46頁(非特許文献1)、特開平11−286428号公報(特許文献1))。加齢臭の発生には、ヒトの中高年齢層の皮脂中に増加する9−ヘキサデセン酸などから生じる揮発性アルデヒドの一種である2−ノネナールや2−オクテナールなどの不飽和基を含む物質が深く関わることが知られている。
現在、これらの体臭の予防手段として様々な方策が採られている。それらを原理により大別すると、以下のように分類できる。
(1)芳香成分(香料、精油など)を利用して体臭をマスキングあるいはハーモナージュするもの。
(2)体臭成分、あるいは、体臭成分をその前駆物質とともに物理的に吸着して該体臭成分の揮散を抑制するもの。
(3)酸化反応やバクテリアの活動などによる、体臭成分の前駆物質からの生成自体を抑制するもの。
上記(1)の方法は、体臭成分の生成自体を抑制するものではない。また、問題となる体臭と芳香成分による芳香とが混在することにより、必ずしも好ましくない新たな臭気の発生を招く場合もある。したがって根本的な問題の解決とはいい難い。
上記(2)の方法の代表的な例としては、例えば、無機多孔体やシクロデキストリン、あるいは活性炭等の有機多孔体による包接能や吸着能を利用して、体臭成分の揮散を抑制する方法がある。シクロデキストリンを用いる方法は、一旦包接された体臭成分が他の物質の共存により再び放出される場合があるため、根本的な問題の解決とはいえない。一方活性炭を用いる方法は、即効性を示し難い。また、粉体である活性炭を十分な量で皮膚上に保持するのは困難で、生体への直接的な適用には限度があることなどから必ずしも有効とはいえない。
上記(3)の方法の代表的な例としては、ノネナールの基質となる脂肪酸である9−ヘキサデセン酸の酸化を抑制する抗酸化物質や、9−ヘキサデセン酸の分解を抑制する抗菌物質、酵素阻害剤、トレハロース、植物抽出物等を利用する方法が挙げられる。この方法は、体臭の発生の抑制に奏効する場合がある。しかしながら、それ自体で体臭の発生を抑制するに足る用量の抗酸化物質や抗菌物質を使用するためには、例えば皮膚などに対する刺激性に注意する必要がある。
このように、これまでに知られている体臭の予防手段はいずれも対症療法的なものである。体臭の原因物質を分解し、除去することによって体臭そのものを消失させる手段は知られていない。
特開平11−286428 特開平11−286425 特開2002−80336 特開2002−247987 特開2003−33185 特開2010−57482 特開2001−302483
『フレグランス・ジャーナル』、1999年9月号、42乃至46頁
本発明の課題は、酵素を利用して体臭の原因物質を別の物質に変化させる方法、より具体的には、体臭の悪臭を消失させ芳香に変化させる方法を提供することである。特に、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元して不飽和アルデヒドに起因する加齢臭を消失させ、芳香に変化させる方法の提供が本発明の課題である。
これまで本発明者らは、不飽和アルデヒドの構造を変化させて加齢臭を消失させることができないか、検討を重ねてきた。その中で本発明者らは、エノン還元酵素をtrans-2-ノネナールを含む溶液と反応させることを試みた。その結果、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合の還元が加齢臭の消失に有効であることを見出して、本発明を完成した。
具体的には本発明者らは、エノン還元酵素をtrans-2-ノネナールを含む溶液と反応させた結果、trans-2-ノネナールを原因とする悪臭が消失することを確認した。さらに本発明者らは、悪臭が消失するのみならず、清涼感のある芳香(レモンライムの匂い)に変化することを見出した。一方アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素をtrans-2-ノネナールを含む溶液と反応させた場合には、trans-2-ノネナールを原因とする悪臭を消失させることができないことを確認した。
同様の結果は、エノン還元酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素をtrans-2-ヘキセナール、trans-2-オクテナールを含む溶液と反応させた場合にも示された。
さらに本発明者らは、エノン還元酵素を含む溶液を、trans-2-ノネナールを含むガーゼや男性が1日着たシャツに噴霧した場合に、ガーゼやシャツから悪臭を消失させ、芳香に変化させることができることも確認した。
本発明はこのような知見に基づくものであり以下の方法、組成物、使用等に関する。
〔1〕不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する工程を含む、不飽和アルデヒドの臭気を消失させる方法。
〔2〕不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する工程が、炭素−炭素間二重結合を還元することが可能な条件下で還元触媒を不飽和アルデヒドに接触させる工程である、〔1〕に記載の方法。
〔3〕炭素−炭素間二重結合を還元することが可能な条件が、電子供与体の存在下である、〔2〕に記載の方法。
〔4〕還元触媒がエノン還元酵素である、〔2〕に記載の方法。
〔5〕エノン還元酵素が以下(a)から(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、〔4〕に記載の方法。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、下記の理化学的性状(A)および(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)および(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(A)作用
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B)基質特異性
(1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性はない。
(2)電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
(3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素でない基質に対しては実質的に作用しない。
(4)炭素−炭素間二重結合が環状構造中に存在する基質に対しては実質的に作用しない。
(C)至適pH
pH 6.5−7.0
(D)至適温度
37−45℃
(E)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により約43,000。ゲル濾過により約42,000。
〔6〕エノン還元酵素が以下(a)から(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、〔4〕に記載の方法。
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(A)作用
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B)基質特異性
(1) 電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
(2) 不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性はない。
(3) 3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、90% ee以上の (S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成する。
(C)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により約47,000。ゲル濾過により約92,000。
(D)作用pH
pH 5.0−8.0
(E)至適温度
37−45℃
〔7〕電子供与体が以下(1)から(6)からなる群より選択される少なくとも1つの補酵素である、〔3〕に記載の方法;
(1)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、
(2)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、
(3)還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)、
(4)還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH)、
(5)ユビキノン(UQ)、および
(6)ピロロキノリンキノン(PQQ)。
〔8〕不飽和アルデヒドが2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキサナールからなる群より選択される、〔1〕に記載の方法。
〔9〕不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒を有効成分として含有する、不飽和アルデヒドの臭気の消失用組成物。
〔10〕さらに電子供与体を含有する、〔9〕に記載の組成物。
〔11〕還元触媒がエノン還元酵素である、〔9〕に記載の組成物。
〔12〕エノン還元酵素が以下(a)から(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である〔11〕に記載の組成物。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、下記の理化学的性状(A)および(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)および(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(A)作用
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B)基質特異性
(1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性はない。
(2)電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
(3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素でない基質に対しては実質的に作用しない。
(4)炭素−炭素間二重結合が環状構造中に存在する基質に対しては実質的に作用しない。
(C)至適pH
pH 6.5−7.0
(D)至適温度
37−45℃
(E)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により約43,000。ゲル濾過により約42,000。
〔13〕エノン還元酵素が以下(a)から(e)からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、〔11〕に記載の組成物。
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(A)作用
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B)基質特異性
(1) 電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
(2) 不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性はない。
(3) 3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、90% ee以上の (S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成する。
(C)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により約47,000。ゲル濾過により約92,000。
(D)作用pH
pH 5.0−8.0
(E)至適温度
37−45℃
〔14〕電子供与体が以下(1)から(6)からなる群より選択される少なくとも1つの補酵素である、〔10〕に記載の組成物;
(1)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、
(2)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、
(3)還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)、
(4)還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH)、および
(5)ユビキノン(UQ)、および
(6)ピロロキノリンキノン(PQQ)。
〔15〕不飽和アルデヒドが2−ノネナール、2−オクテナール、2−ヘキサナールからなる群より選択される、〔9〕に記載の組成物。
〔16〕不飽和アルデヒドの臭気の消失において使用するための不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒。
本発明によって、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元することにより、加齢臭の原因物質を消失させる方法やそのための組成物が提供された。従来、体臭への対策として、マスキング、吸着、原因物質の生成抑制などの手段が用いられてきた。しかしこれらの方法は対症療法的な手段であり、一度発生した体臭を完全に消失させることはできなかった。
一方本発明の方法や組成物では、発生した体臭の元となる物質を別の物質に変化させることができる。したがって本発明の方法や組成物を用いることにより、一度発生した体臭を根本的に消失させることが可能である。さらに本発明の方法や組成物では、体臭を悪臭から芳香に変化させることもできる。このような効果は、これまでに知られている加齢臭を抑制する手段にはないものである。
また本発明においては、好ましい態様において、エノン還元酵素が用いられる。酵素は、抗酸化剤や抗菌剤などとは異なり、安全に使用することができる。
本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する工程を含む、不飽和アルデヒドの臭気を消失させる方法に関する。
本発明において不飽和アルデヒドとは、アルデヒド基を有する不飽和炭化水素を意味する。本発明における不飽和アルデヒドは、しばしば体臭の原因となる臭気を発する。本発明における不飽和アルデヒドとしては、例えば、ノネナール(例えば2−ノネナール)、オクテナール(例えば2−オクテナール)、ヘキセナール(例えば2−ヘキセナール)などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元することを特徴とする。以下に、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合の還元反応を例示する。以下の例示は、2−ノネナールの2位の炭素−炭素間二重結合を還元することにより、ノナナールが生成する反応である。
Figure 0005658502
本発明において「不飽和アルデヒドの臭気を消失させる(eliminate an odor)」とは、不飽和アルデヒドが原因で発生する臭気が消えてなくなることを意味する。したがって、「臭気を消失させる」は、「脱臭する(deodorize)」、「消臭する(cause an odor disappear)」と表現することもできる。本発明においては、炭素−炭素間二重結合を還元する前と比較し不飽和アルデヒドが原因で発生する臭気がわずかでも消失した場合、臭気が消失したと判断することができる。
不飽和アルデヒドの臭気が消失したか否かは、例えば、直接臭いを嗅ぐことによって判定することができる。例えば、不飽和アルデヒドの1つである2−ノネナールは、青臭さと脂臭さを併せ持つ。あるいは、カメムシのような臭いを有すると表現することもできる(カメムシの臭いはtrans-2-ヘキセナールに由来する)。一方、2−ノネナールの2位のC=Cを還元することによって得られるノナナールは、清涼感のある臭いを有する。このような臭いの相違から、不飽和アルデヒドの臭気が消失したか否かを判定することができる。
あるいは、分析器機を用いて不飽和アルデヒドの臭気の有無を判定することができる。例えば、シャツに含まれる不飽和アルデヒドの有無を確認する場合、シャツにあらかじめ縫いこんだガーゼパットをヘキサンなどの溶媒に浸漬し、脂質を抽出させる。このようにして集められたサンプルを、例えばヘッドスペースガスクロマトグラフィーあるいはマススペクトルなどの装置を用いて解析することにより、サンプル中の不飽和アルデヒドの有無を確認することができる。
あるいは、実施例に記載のように、常法によりアルデヒドをジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)により誘導化し、GCにて分析することにより、不飽和アルデヒドの有無を確認することはできる。
本発明において「不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する工程」は、例えば、「炭素−炭素間二重結合を還元することが可能な条件下で還元触媒を不飽和アルデヒドに接触させる工程」とすることができる。炭素−炭素間二重結合を還元することが可能な条件としては、例えば、電子供与体の存在下で、還元触媒と不飽和アルデヒドを接触させることが挙げられる。電子供与体としては以下のものが挙げられるがこれらに限定されない。
・還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)
・還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)
・還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)
・還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH)
・ユビキノン(UQ)
・ピロロキノリンキノン(PQQ)
本発明における好ましい還元触媒としては、クライベロマイセス・ラクティス由来のエノン還元酵素(KLER1、特開2002-247987)を挙げることができる。このようなエノン還元酵素の一例としては、次の(A1)−(E1)に示す理化学的性質を有する酵素が挙げられる。
(A1)作用
NADPHを電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B1)基質特異性
(1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性を有しない。
(2)電子供与体としては、NADHよりもNADPHに対して、有意に高い活性を有する。
(3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素でない基質に対しては実質的に作用しない。
(4)炭素−炭素間二重結合が環状構造中に存在する基質に対しては実質的に作用しない。
(C1)至適pH
pH 6.5−7.0
(D1)至適温度
37−45℃
(E1)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、SDS-PAGEと略す)により約43,000。ゲル濾過により約42,000。
クライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のエノン還元酵素KLER1の塩基配列を配列番号:1に、当該塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
あるいは、本発明におけるエノン還元酵素としては、次の(A2)−(E2)に示す理化学的性質を有するクライベロマイセス・ラクティス由来のエノン還元酵素(KYE1(KLER2)、特開2003-33185)が挙げられる。
(A2)作用
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
(B2)基質特異性
(1)電子供与体としては、NADHよりもNADPHに対して、有意に高い活性を有する。
(2)不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、実質的にケトンの還元活性はない。
(3) 3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、90% ee以上の (S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成する。
(C2)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により約47,000。ゲル濾過により約92,000。
(D2)作用pH
pH 5.0−8.0
(E2)至適温度
37−45℃
クライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のエノン還元酵素KYE1の塩基配列を配列番号:3に、当該塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号:4に示す。
「NADPHに対する反応性がNADHに対する反応性に比較して有意に高い」とは、少なくとも2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上高い活性をいう。NADPHとNADHに対する反応性は、例えば次のように比較することができる。すなわち、同一のα,β−不飽和ケトンを基質とし、両者を用いてケトンを生成させる。このときに消費されるNADPH、あるいはNADHの量を比較すれば、反応性を比較することができる。
また「エノン還元酵素が基質に対して実質的に作用しない」あるいは「エノン還元酵素が実質的にケトンの還元活性を有しない」とは、具体的には、エチルビニルケトンにおけるオレフィンに対する還元活性の1%以下であることをいう。またα,β−不飽和結合の選択的な還元とは、オレフィンを還元するための条件下で、ケトンが実質的に還元されないことをいう。本発明において、ケトン部分が還元された生成物が、例えば基質の5%以下、通常2%以下、望ましくは1%以下であるときに、ケトンが実質的に還元されないという。ケトン部分を還元する活性は、例えば2−ブタノンに被検酵素を作用させ、還元生成物の量を定量することにより比較することができる。還元生成物の量は、NADPHの減少を指標として知ることもできる。
エノン還元酵素は、該酵素を産生する微生物から通常の蛋白質の精製方法により、精製することができる。例えば、菌体を破砕後、プロタミン硫酸沈澱を行い、その遠心分離上清を硫酸アンモニウムを用いて塩析し、さらに、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過などを組み合わせることにより、精製することができる。
本発明において、エノンに対する還元活性は、次のようにして確認することができる。本発明においてエノンとは、α,β不飽和ケトンを意味する。
エノンに対する還元活性測定法:50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、0.2mM NADPH、20mM エチルビニルケトンおよび酵素を含む反応液中30℃で反応させ、NADPHの減少に伴う340nmの吸光度の減少を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADPHの減少を触媒する酵素量とすることができる。また、蛋白質の定量は、バイオラッド製蛋白質アッセイキットを用いた色素結合法により行うことができる。
上記のような理化学的性状を持つエノン還元酵素は、例えばクライベロマイセス属酵母の培養物より精製することができる。クライベロマイセス属酵母としては、クライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)が特にエノン還元酵素の産生能に優れる。エノン還元酵素を得るために利用することができるクライベロマイセス・ラクティスは、例えば、IFO0433、IFO 1012、IFO 1267、IFO 1673、IFO 1903として財団法人発酵研究所より入手することができる。
上記微生物は、YM培地等の真菌の培養に用いられる一般的な培地で培養される。十分に増殖させた後に菌体を回収し、2−メルカプトエタノールやフェニルメタンフルホニルフルオリド等の還元剤やプロテアーゼ阻害剤を加えた緩衝液中で破砕して無細胞抽出液とする。無細胞抽出液から、蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより精製することができる。例えば、フェニル−セファロースを用いた疎水クロマトグラフィー、MonoQを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、フェニル−スーパーロースを用いた疎水クロマトグラフィー等を経て電気泳動的にほぼ単一バンドにまで精製することができる。
クライベロマイセス・ラクティスから精製することができるエノン還元酵素は、上記理化学的性質(A1)−(E1)、あるいは(A2)−(E2)を有する。
また次に挙げるエノン還元酵素もまた、本発明における不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元酵素として例示できる。
・パン酵母由来のエノン還元酵素
・タバコ由来のエノン還元酵素
・ラット肝臓由来のエノン還元酵素
・サッカロミセス・カールズバーゲンシスやサッカロミセス・セレビジアエ由来の旧黄色酵素
・クロストリジウム・チロブチリカム由来の2−エノエート還元酵素
・クロストリジウム・クライベリ由来のアクリロイル−CoA還元酵素
・サッカロミセス・セレビジアエ由来のエノン還元活性を有する酵素
・ヒラタケ抽出物由来のエノン還元酵素
例えば、パン酵母より複数のエノン還元酵素が精製され報告されている。京都大学の河合らは、パン酵母よりエノン還元酵素(YER−2)を精製し、酵素化学的性質を報告している(第4回生体触媒シンポジウム講演要旨集p58 (2001) )。本酵素も、KLER2と同様、3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、(S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成することが報告されている。その分子量はゲル濾過で38,000、SDS-PAGEで41,000である。また反応の至適pHは7.5である。
Wannerらは、同じパン酵母より2種類のエノン還元酵素(EIおよびEII)の精製と性質を報告している(Eur. J. Biochem. 255, 271-278 (1998))。EIは、ゲル濾過における分子量が75,000であり、SDS-PAGEによる分子量が37,000および34,000のヘテロ2量体である。EIIは、ゲル濾過における分子量が130,000であり、SDS-PAGEによる分子量が56,000および64,000のヘテロ2量体である。
植物では、タバコ(Nicotiana tabacum)の細胞より多数のエノン還元酵素(ベルベノン還元酵素(別名p90、DDBJアクセッション番号:アミノ酸配列 C0SUC5、塩基配列 AB488494)、カルボン還元酵素(別名、エノン還元酵素−I、別名p44)、エノン還元酵素−II、p74)が精製され、その性質が報告されている。ベルベノン還元酵素 (verbenone reductase, p90)のゲル濾過における分子量は90,000、SDS-PAGEによる分子量は45,000である。還元反応の最適pHは7.2である。
エノン還元酵素-I (p44) は、ゲル濾過における分子量が44,000、SDS-PAGEによる分子量が22,000であり、また、主にNADHを利用する。
エノン還元酵素−IIは、α,β−不飽和ケトンのβ位炭素に水素を有さない化合物((R)-pulegone)も基質になる。また、ゲル濾過における分子量が132,000、SDS-PAGEによる分子量が22,000および45,000である(Phytochemistry 31,2599-2603 (1992))。
p74はゲル濾過における分子量が74,000、SDS-PAGEによる分子量が37,000である。
また、植物の1種ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis; ゲル濾過、SDS-PAGEによる分子量がともに55,000;)やアスタシア・ロンガ(Astasia longa;ゲル濾過、SDS-PAGEによる分子量がともに35,000もしくは36,000)からもエノン還元酵素が精製されている(Phytochemistry 49, 49-53 (1998))。これらの酵素はいずれも補酵素としてNADHを利用する。
また、動物ではラット肝臓よりエノン還元酵素が精製されている(Arch. Biochem. Biophys. 282,183-187 (1990))。この酵素は、ゲル濾過、SDS-PAGEによる分子量がともに39,500である。
サッカロミセス・カールズバーゲンシス(Saccharomyces carlesbergensis)やサッカロミセス・セレビジアエ (Saccharomyces cerevisiae) 由来の旧黄色酵素(Old Yellow Enzyme, 以下OYE1と略す)が、NADPH酸化活性を有するとともに、電子受容体として酸素だけでなく、Cyclohex-2-enone を電子受容体として利用し、cyclohexanone を生成することが報告されている(J. Biol. Chem. 268, 6097-6106 (1993))。また、Saccharomyces cerevisiae より同様な活性を有するOYE2、OYE3がクローニングされている。OYE1遺伝子がクローニングされ、その塩基配列、予想アミノ酸配列が明らかにされており、エノン還元酵素KLER2と高いホモロジーを有することが明らかとなった(BLAST programを用いたホモロジーサーチの結果、71% identity, 84%similarity)。この OYE1によるエノンへの水添反応は、α-炭素に対して Re-面より、β-炭素に対して Si-面より優先して起こることが推定されている(Biochemistry 34, 4246-4256 (1995))。しかし、生成するケトンの光学純度は具体的に示されておらず、OYE1 を用いた光学活性ケトンの製造方法が工業的に必要な純度 (少なくとも90%ee以上) を満足するか否かは明らかにされていない。
クロストリジウム・チロブチリカム(Clostridium tyrobutyricum)由来の2−エノエート還元酵素 (2-enoate reductase, E.C.1.3.1.31、DDBJアクセッション番号:Y09960)は、NADH依存的に(E)−2−メチル−2−ブテン酸を還元し、(R)−2−メチル酪酸を生成する(J. Biotechnol. 6, 13-29 (1987))。また本酵素は、カルボニル残基がカルボン酸、アルデヒド、あるいはケト酸の場合に基質とするが、ケトン体に対する活性は報告されていない。さらに、分子量は、ゲル濾過において80万−94万である。
また、クロストリジウム・クライベリ (Clostridium kluyveri) 由来のアクリロイル−CoA還元酵素 (acryloyl-CoA reductase) がエチルビニルケトン還元活性を有することが報告されている(Biol. Chem. Hoppe-Seyler 366, 953-961 (1985))。本酵素は補酵素として還元型メチルビオローゲンを利用し、分子量はゲル濾過で28,400、SDS-PAGEで14,200である。
また、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomycescerevisiae)由来のYNN4、YL60、およびYCZ2と命名されているORFもまたエノン還元活性を有することが知られている。YNN4、YL60、およびYCZ2のアミノ酸配列のKLER1のホモロジーは、54%, 51%, 53% (identity) , 69%, 68%, 69% (Positive) である。しかし、YNN4、YL60、およびYCZ2はいずれもエノン還元活性を有することが確認されている。
YNN4、YL60、YCZ2のDDBJアクセッション番号を以下に示す。
YNN4:アミノ酸配列 P53912、塩基配列 Z46843
YL60:アミノ酸配列 P54007、塩基配列 U22383
YCZ2:アミノ酸配列 P25608、塩基配列 X59720
またヒラタケ由来のエノン還元酵素も、本発明における還元触媒として用いることができる。キノコの香気はリノール酸代謝物である揮発性C8化合物に由来することが知られている。ヒラタケに含まれるエノン還元酵素は揮発性C8化合物の生成に関与していることから、本発明における還元触媒の好ましい態様として例示することができる。
ヒラタケ由来のエノン還元酵素は、例えば、ヒラタケ粗酵素液に硫酸ストレプトマイシン沈殿、メタノール分画を行った後、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなど常法に従い単離することができる(日本農芸化学会 2004年度大会講演要旨集p116 講演番号2B03p21、日本農芸化学会 2010年度大会講演要旨集p39 講演番号2AIp09)。
本発明においては、エノン還元酵素およびそのホモログをコードするポリヌクレオチドは公知である。本発明において、ポリヌクレオチドは、DNAやRNAのような天然に存在するポリヌクレオチドであることもできるし、人工的に合成されたヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオチドであっても良い。
本発明におけるエノン還元酵素をコードするポリヌクレオチドは、例えば配列番号:1または3に示す塩基配列を含む。配列番号:1、3に示す塩基配列は、それぞれ、配列番号:2、4に示すアミノ酸配列を含む蛋白質をコードしており、このアミノ酸配列を含む蛋白質は、エノン還元酵素の好ましい態様を構成する。
なお本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列をコードすることができるあらゆる塩基配列を含む。1つのアミノ酸に対応するコドンは、1〜6存在することから、配列番号:2、4に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAは、それぞれ、配列番号:1、3に記載の塩基配列を有するDNAのみとは限らず、配列番号:1、3に記載されるDNAと等価とみなすことができるDNAは複数存在する。
本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、前記理化学的性状(A1)−(E1)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。
あるいは本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、前記理化学的性状(A2)−(E2)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。
当業者であれば、配列番号:1または3に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487(1982) , Methods inEnzymol. 100, pp.448 (1983), Molecular Cloning 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRLPress pp.200(1991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することが可能である。
また、本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドであって、かつ前記理化学的性状(A1)−(E1)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドも含む。
あるいは本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:3に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドであって、かつ前記理化学的性状(A2)−(E2)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドも含む。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号:1または3に記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば40、60または100個の連続した配列を一つまたは複数選択したDNAをプローブDNAとし、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system (AmershamPharmaica Biotech社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(wash:42℃、0.5x SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。あるいは、本発明におけるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件として、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を挙げることもできる。
ストリンジェントな条件下で配列番号:1または3に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドには、配列番号:1または3と類似する塩基配列を含むものが含まれる。このようなポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号:2または4のアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードしている可能性が高い。したがって当業者は、このようなポリヌクレオチドの中から、本明細書の記載に基づいて、エノン還元酵素活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを選択することができる。
さらに、本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%以上(96%、97%、98%、99%)の同一性(ホモロジー)を有し、かつ前記理化学的性状(A1)−(E1)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。
あるいは本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%以上(96%、97%、98%、99%)の同一性(ホモロジー)を有し、かつ前記理化学的性状(A2)−(E2)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。
蛋白質の同一性検索は、例えばSWISS-PROT、PIRなどの蛋白質のアミノ酸配列に関するデータベースやDNA Databank of JAPAN(DDBJ)、EMBL、Gene-BankなどのDNAに関するデータベース、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、FASTA programやBLAST programなどを用いて、例えば、インターネット上で行うことができる。
あるいは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を用いてDDBJを対象にBLAST programを用いて同一性検索を行った結果、既知の蛋白質の中で最も高い同一性を示したのは、Cochliobolus carbonum toxD proteinの36%(Identity)、54%(Positives)であった。本発明において同一性とは、例えば、BLAST programを用いたPositiveの相同性の値を示す。
配列番号:4に記載のアミノ酸配列を用いてSWISS-PROTを対象にBLAST programを用いて同一性検索を行った結果、既知の蛋白質の中で最も高い同一性を示したのは、Saccharomyces carlesbergensis Old Yellow Enzyme 1 (OYE1の71%(Identity)、84%(Positives)であった。
これらのポリヌクレオチドによってコードされ、アミノ酸配列に変異を含む蛋白質は、前記理化学的性状(A1)−(E1)、あるいは(A2)−(E2)を有する限り、本発明におけるエノン還元酵素のホモログに含まれる。ポリヌクレオチドは、エノン還元酵素の遺伝子工学的な製造に有用である。あるいはポリヌクレオチドによって、α,β−不飽和ケトンからのα,β―飽和ケトンの製造に有用なエノン還元酵素活性を有する微生物を遺伝子工学的に作り出すことができる。
本発明におけるエノン還元酵素は、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列を有し、かつエノン還元酵素活性を有する蛋白質、およびそのホモログを含む。配列番号:2または4に示すアミノ酸配列を含む蛋白質は、本発明におけるエノン還元酵素の好ましい態様を構成する。
本発明においてエノン還元酵素のホモログとは、配列番号:2または4に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含む。当業者であれば、それぞれ、配列番号:1または3に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982) , Methods in Enzymol.100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりエノン還元酵素のホモログをコードするDNAを得ることができる。そのエノン還元酵素のホモログをコードするDNAを宿主に導入して発現させることにより、配列番号:2または4に記載のエノン還元酵素のホモログを得ることが可能である。
さらに、本発明におけるエノン還元酵素のホモログとは、配列番号:2または4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上(96%、97%、98%、99%)の同一性を有する蛋白質をいう。蛋白質の同一性検索は、上述の方法によって行うことができる。
本発明におけるエノン還元酵素をコードするポリヌクレオチドは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。
本発明におけるポリヌクレオチドは、配列番号:1または3に記載された塩基配列に基づいて他の生物からPCRクローニングやハイブリダイズによって単離することもできる。配列番号:1または3に記載の塩基配列は、クライベロマイセス・ラクティスより単離された遺伝子である。配列番号:1または3に記載の塩基配列を利用してPCR用プライマーをデザインし、クライベロマイセス属酵母等の微生物から、エノン還元酵素活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを得ることができる。
また前記理化学的性質(A1)−(E1)、あるいは(A2)−(E2)を有するエノン還元酵素を単離し、その構造的特徴をもとに、ポリヌクレオチドを得ることもできる。酵素を精製後、N末端アミノ酸配列を解析し、さらに、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製後プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析することにより複数のアミノ酸配列を決めることができる。
部分的なアミノ酸配列が明らかになれば、それをコードする塩基配列を推定することができる。推定された塩基配列、あるいは配列番号:1または3に示す塩基配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型として、PCRを行うことにより本発明におけるポリヌクレオチドの一部を得ることができる。
さらに、得られたポリヌクレオチド断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明におけるポリヌクレオチドを得ることができる。
また、PCRにより得られたポリヌクレオチド断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33,HBJ出版局)などにより本発明におけるポリヌクレオチドを得ることも可能である。
なお本発明におけるポリヌクレオチドは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
このようにして単離されたエノン還元酵素をコードするポリヌクレオチドを公知の発現ベクターに挿入することにより、エノン還元酵素発現ベクターを取得することができる。そして、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、本発明におけるエノン還元酵素を組み換え体から得ることができる。あるいは本発明によるエノン還元酵素をコードするポリヌクレオチドをゲノムに組み込んだ形質転換体を培養することにより、エノン還元酵素を組み換え体から得ることもできる。
本発明においてエノン還元酵素を発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、エノン還元酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターにより形質転換され、エノン還元酵素活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、例えば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。微生物中などにおいて、エノン還元酵素遺伝子を発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中にエノン還元酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターをDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992)、などに詳細に記述されている。
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。これらの中で、市販のpSE420(Invitrogen製)のマルチクローニングサイトを一部改変したベクターpSE420D(特開2000-189170に記載)が好適に利用できる。
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)などが利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子などが利用できる。
ブレビバクテリウム属特に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen.Genet. 196, 175 (1984))などのプラスミドベクターが利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol.Lett. 26, 239 (1985))、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J.Bacteriol. 137, 614 (1979))などが利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である (J.Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法にしたがって、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486(Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11,46-53 (1997) )。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyceslactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390(1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)およびサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol.Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids Res.13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5 プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))などが利用可能である。
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能な AOX など強いプロモーターが利用できる(Nucleic AcidsRes. 15, 3859 (1987))。また、ピキア・アンガスタ(Pichia angusta、旧名ハンゼヌラ・ポリモルファ Hansenula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導される AOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス (Candida utilis) などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem.51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平 08-173170)。
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。
また、上記の方法で得られるエノン還元酵素を発現する形質転換体は、酵素の製造や、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合還元による不飽和アルデヒドの臭気の消失に用いることができる。
本発明におけるα,β−不飽和ケトンは限定されない。例えば、次の一般式Iで表される化合物を、α,β−不飽和ケトンとして示すことができる。
一般式I
Figure 0005658502
式中、R1は、水素、アルキル基、アリル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアルコキシ基(ただし、アルキル基、アリル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアルコキシ基は置換されていても良い)を、R2、およびR3は、水素、または置換されていても良い短鎖アルキル基を示す。
R1における前記アルキル基、アリル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアルコキシ基としては、例えば炭素数1〜8のものが挙げられる。またこれらの置換基は、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されていても良い。一方、R2-R3における短鎖アルキル基とは、例えばメチル、エチル、ブチル、またはプロピルを挙げることができる。これらの短鎖アルキル基も、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基等で置換されていても良い。なおR2-R3は、独立して、または同時に前記置換基であることができる。
具体的には、R1-R4として以下に示す置換基からなる化合物が本発明における基質化合物として望ましい。
R1=H、メチル基、エチル基、フェニル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−ニトロフェニル基、3−メトキシフェニル基、および4−メトキシフェニル基
R2=H、メチル基、およびエチル基
R3=H、メチル基、およびエチル基
より具体的には、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、3−ペンテン−2−オン、3−メチル−3−ペンテン−2−オン、2−ヘキセノン、2−メチル−2−ヘキセノン、3−メチル−4−(3−ピリジル)−3−ブテン−2−オン、3−メチル−4−フェニル−3−ブテン−2−オン、3−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3−ブテン−2−オン等が好適に用いられる。
本発明において、還元触媒と不飽和アルデヒドの接触は、例えば不飽和アルデヒドの付着が疑われる皮膚または衣類の表面で行うことができる。例えば、本発明における還元触媒を含む組成物を、皮膚または衣類の表面に接触させることができる。還元触媒を含む組成物の具体的な態様については後述した。
本発明における還元触媒は、後述のように、水溶液、ローション、スプレー液、懸濁液および乳化液などの液状の形態、粉末、顆粒およびブロック状などの固体状の形態、クリームおよびペーストなどの半固体状の形態、ゲル状等の形態とすることができる。本発明における還元触媒をこれらの形態として使用する場合、接触は、皮膚など不飽和アルデヒドが原因で発生する臭気を消失させたい部位へ直接塗布することにより行うことができる。あるいは、シャツなどの衣類に噴霧することにより、行うことができる。
本発明におけるエノン還元酵素の使用量は、不飽和アルデヒドが原因で発生する臭気を消失さることが可能な範囲で選択することができる。例えば、不飽和アルデヒドが染み込んだシャツ10cm2あたり、あるいは1日着用したシャツ10cm2あたり、0.001ユニットから1ユニット、好ましくは0.01ユニットから0.1ユニット、さらに好ましくは0.02ユニットから0.05ユニットの酵素量とすることができるがこれらに限定されない。
酵素の質量は精製度によって変化するため酵素の抽出物を重量で表現することは困難であるが、例えば2μgから1mg、好ましくは10μgから200μgなどの量を使用することができる。
酵素の使用量は、接触させる対象の性質や面積、状態に応じて調整することができる。
本発明の不飽和アルデヒドの消失方法においては、還元触媒に加え電子供与体を接触させることもできる。電子供与体の接触量もまた、接触させる対象の性質や面積、状態に応じて、適宜を調整することができる。電子供与体の接触量としては、例えば不飽和アルデヒドが染み込んだシャツ10cm2あたり、あるいは1日着用したシャツ10cm2あたり、1μgから500μg、好ましくは5μgから100μgとすることができるがこれらに限定されない。
還元触媒と電子供与体の配合比率としては2:1が挙げられるが、本発明ではこれに限定されない。本発明の不飽和アルデヒドの消失方法においては、還元触媒と電子供与体の配合比率だけではなく、電子供与体の量もまた重要である。
本発明におけるエノン還元酵素は、精製酵素に限定されず、部分精製酵素、エノン還元酵素を含む微生物菌体、その処理物も含まれる。なお本発明における処理物とは、菌体、精製酵素、あるいは部分精製酵素などを様々な方法で固定化処理したものを総称して示す用語である。
本発明において、還元触媒と不飽和アルデヒドの接触は、例えば水溶液中で実施することができる。本発明におけるエノン還元酵素による酵素反応は、例えば以下の条件で行うことができる。
・反応温度:4-55℃、好ましくは15-45℃
・pH:4-9、好ましくは5.0-8.0、さらに好ましくはpH6.0-7.0
・基質濃度:0.01-90%、好ましくは0.1-20%
水溶液中には、必要に応じて酵素を安定化させるためのグリセリン、防腐剤としてのエタノールなどの有機溶媒を配合することもできる。これら有機溶媒の濃度は、好ましくは1〜10%程度、より好ましくは5%程度(例えば3%、4%、5%、6%、7%)とすることができるがこれらに限定されない。
さらに、反応液中に界面活性剤を加えることもできる。界面活性剤としては、0.1〜5.0 重量%のTriton X-100、あるいはTween 60などが用いられる。
また、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の活性を妨げない範囲で、反応液中にさらに保湿剤、抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、保存剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、制汗剤、薬理効果を示す成分、乳化剤、感触向上剤、粉体原料、清涼化剤、噴射剤、pH調節剤、着香料、芳香剤、着色料、蛋白質、アミノ酸、繊維質、脂質、塩類などを配合することもできる。これらの具体例については後述した。
また本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒を有効成分として含有する、不飽和アルデヒドの臭気の消失用組成物に関する。不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒としては上述のものが挙げられる。
本発明の組成物は、さらに電子供与体を含むことができる。電子供与体は上述のものを用いることができる。
還元触媒や電子供与体の使用量、配合比率等は上述の通りである。
本発明の組成物は、公知の不飽和アルデヒド発生抑制活性を有する物質を配合することができる。不飽和アルデヒド発生抑制活性を有する物質としては、不飽和アルデヒドを生成する酸化過程を遮断することができる抗酸化剤が挙げられる。
具体的には、例えば
α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、リコピン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、イソゼアキサンチン、ロドキサンチン、カプサンチン、クロセチン等のカロチノイド、
2,5−ジメチルフラン、2−メチルフラン、2,5−ジフェニルフラン、1,3−ジフェニルイソベンゾフラン等のフラン類、
α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール等のビタミンE類、
ヒスチジン、トリプトファン、メチオニン、アラニン、アラニンのアルキルエステル等のアミノ酸類、
1,4−ジアジシクロオクタン、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸エステル類、
アスコルビン酸、タンニン類、フラボノイド
等を挙げることができるがこれらに限定されない。
また、抗酸化効果を有する生薬の抽出物を上記抗酸化剤として用いることができる。具体的には、例えば
オウゴン抽出物、カワラヨモギ抽出物、アセンヤク抽出物、セージ抽出物、チャ抽出物、ローズマリー抽出物、ウイキョウ抽出物、タイム抽出物、ナツメグ抽出物、コショウ抽出物、ターメリック抽出物、バニラ抽出物、パプリカ抽出物、ヨクイニン抽出物、サイコ抽出物、木瓜抽出物、スホウ抽出物、キュレン抽出物、ジョンラブ抽出物等の生薬抽出物
を挙げることができるが、これらに限定されない。
この抗酸化剤を本発明の組成物に配合する場合、概ね組成物の0.001重量%以上、10.0重量%以下、好ましくは同0.01重量%以上、1.0重量%以下の範囲とすることができる。
また、リポキシゲナーゼを阻害する物質を本発明の組成物中に配合することもできる。リポキシゲナーゼは、パルミトレイン酸からパルミトレイン酸HPOへの酸化を惹起する過酸化脂質(例えば、リノール酸ヒドロペルオキシド)を生成する生体内酵素である。したがってリポキシゲナーゼの働きを阻害する物質は、加齢臭の発生を抑制することができる。
リポキシゲナーゼの働きを阻害する物質としては、例えばトラネキサム酸、β−カロチン等を挙げることができる。β−カロチンをリポキシゲナーゼとして用いる場合、上述の抗酸化剤としては、β−カロチン以外の抗酸化剤を選択することが好ましい。
このリポキシゲナーゼ阻害剤を、本発明の組成物に配合する場合は、概ね組成物の0.0001重量%以上、10.0重量%以下、好ましくは同0.005重量%以上、5.0重量%以下の範囲で配合することができる。
さらに、抗菌性香料であるジヒドロファルネソールも、加齢臭をマスキングまたはハーモナージュするために本発明の組成物中に配合することができる。
また本発明の組成物は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の活性を妨げない範囲で、さらに保湿剤、抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、制汗剤、薬理効果を示す成分、乳化剤、界面活性剤、感触向上剤、粉体原料、清涼化剤、噴射剤、pH調節剤、着香料、芳香剤、着色料、蛋白質、アミノ酸、繊維質、脂質、塩類などを配合することもできる。
保湿剤としては、例えば、
プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ジプロピレングリコール、キシリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジグリセリン、マルチトールなどの多価アルコール、
マルトース、D−マンニット、水アメ、ブドウ糖、果糖、乳糖、グルコサミン、シクロデキストリンなどの糖類、
カルボキシメチルキチンなどの多糖誘導体、
ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどのアミノ酸およびその塩、
乳酸および乳酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アデノシンリン酸ナトリウムなどの有機酸およびその塩
などが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や、本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、約0.1%乃至約50%の範囲が好適である。
抗菌剤、静菌剤、殺菌剤、防腐剤ないしは保存剤としては、例えば、
安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩などの有機酸類、
パラオキシ安息香酸メチルおよびパラオキシ安息香酸エチルなどの安息香酸エステル誘導体、
フェノール、クレゾール、クロルクレゾール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロルヒドロキシジフェニルエーテルなどのフェノール類、
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼントニウム、塩化セチルピリミジウムなどの第4アンモニウム塩、
クロルヘキシジングルコネート、塩酸クロルヘキシジンなどのクロルヘキシジン誘導体、
トリクロルカルバニリド、ハロカルバンなどのジフェニル尿素誘導体、
ジヒドロファルネソール
などが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.001%乃至5%、望ましくは、0.01%乃至1%の範囲が好適である。
酸化防止剤としては、例えば、
アスコルビン酸およびその塩、アスコルビン酸ステアリン酸エステルや糖転移アスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体、
クエン酸およびその塩、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、パルミチン酸およびその塩、パルミチン酸アスコルビル、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、茶カテキン
などが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、約0.001%乃至約10%、望ましくは、約0.01%乃至約5%の範囲が好適である。
紫外線遮蔽剤としては、例えば、
酸化チタン、タルク、カオリンなどの紫外線遮蔽能を有する無機物質、
5−クロロウラシル、グアニン、シトシンなどの紫外線遮蔽能を有する有機物質
などが挙げられる。
また紫外線吸収剤としては、例えば、
パラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシルエステル、シノキサート、パラメトキシ桂皮酸エチルヘキシルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オキシベンゾゾン、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル
などが挙げられる。
さらに以下の紫外線吸収剤も本発明において好適に用いることができる。
パラアミノ安息香酸等のパラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、
アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤、
サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤、
パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、〔4−ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル−3−メチルブチル〕−3,4,5−トリメトキシケイ皮酸エステル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
2−フェニル−5−メチルベンゾオキサゾール、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、約0.1%乃至約50%の範囲が好適である。
制汗剤としては、例えば、
塩化アルミニウム、オキシ塩化アルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムジルコニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸アルミニウム、フェノールスルホン酸、塩基性乳酸アルミニウム亜鉛、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛
などが挙げられる。
さらに、以上の化合物とアミノ酸、望ましくは、グリシンとの複合体などの収斂性化合物が挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.01%乃至40%の範囲が好適である。
本発明で用いることが可能な薬理効果を示す成分としては、生体の皮膚に適用したときに抗炎症作用、メラニン生成抑制作用、創傷治癒促進などの効果を発揮するものが望ましい。例えば、ビタミン類、ホルモン類、植物抽出物、動物抽出物、感光素などを本発明の組成物に配合することもできる。
ビタミン類としては、
レチノールをはじめとするビタミンA類、
チアミン、パントテン酸ならびにその誘導体をはじめとするビタミンB類、
アスコルビン酸ならびにその誘導体をはじめとするビタミンC類、
トコフェロールならびにその誘導体をはじめとするビタミンE類、
ルチン、ヘスペリジン、ナリンジンなどのフラボノイドならびにその誘導体をはじめとするビタミンP類、などが挙げられる。
ホルモン類としては、卵胞ホルモン、プレグネロンなどが挙げられる。
植物抽出物としては、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物などが挙げられる。
動物抽出物としては、胎盤抽出物などが挙げられる。
感光素としては、
感光素101号(化学名:2,2′[3′−[2−(3−ヘプチル−4−メチル−4−チアゾリン−2−イリデン)エチリデン]プロペニレン]ビス(3−ヘプチル−4−メチルチアゾリウムヨーダイド)、慣用名:プラトニン)、
感光素201号(化学名:3−ヘプチル−2−[(3−ヘプチル−4−メチル−2(3H)−チアゾリデン)メチル]−4−メチルチアゾリウム ヨーダイド、慣用名:ピオニン)、
感光素301号(化学名:2−[2−[(5−ブロモ−2−ピリジニル)アミノ]エテニル]−1−エチル−6−メチルピリジニウム ヨーダイド、慣用名:タカナール)、
感光素401号(化学名:3,4−ジメチル−2−[2−(フェニルアミノ)エテニル]オキサゾリウム ヨーダイド、慣用名:ルミネキス)
などが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.0001%乃至5%の範囲が好適である。
乳化剤ないしは界面活性剤としては、例えば、
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル、
ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル、
レシチンなどのリン脂質
などが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総当たり、通常、0.01%乃至20%の範囲が好適である。
感触向上剤としては、通常、25℃における、動粘性率で表される粘度が100mm2 /sec以下である鎖状および/または環状シリコーン油が望ましい。例えば、メチルシクロポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.01%乃至50%の範囲が好適である。
増粘剤としては、例えば、
グァーガム、クインスシード、トラガント、ペクチン、キサンタンガム、キチン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル澱粉、アルギン酸プロピレングリコール、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなどの電解質、
各種の油分
などが挙げられる。
以上のような増粘剤の利用は、本発明の組成物を皮膚に直接適用して使用する際の使用感の改善ないしは調整に奏効する。以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.01%乃至30%の範囲が好適である。
粉体原料とは、水または有機溶剤に実質的に不溶な、皮膚外用剤分野での利用が通常許容される粉末状の成分を意味する。粉体原料としては、例えば、
ナイロン(ポリアミド)粉末、ポリウレタン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、架橋型ポリスチレン粉末、架橋型シリコーン粉末などの合成樹脂粉体、
無水ケイ酸、酸化マグネシウム、マグネシア・シリカ(無水ケイ酸と酸化マグネシウムを含む組成物)、モンモリロナイト、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸マグネシウム、マイカ、カーボンブラック、セリサイト、ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、雲母チタン(酸化チタン被膜により被覆された雲母粉末)、酸化カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、真珠粉末をはじめとする、白色、赤色系、褐色系、黄色系、黒色系、紫色系、緑色系もしくは青色系の無機顔料の粉末化物、
各種の有機顔料の粉末化物、
各種の金属顔料の粉末化物、
シルク粉末やウール粉末などの天然粉体
などが挙げられる。
以上のような粉体原料は、本発明の組成物において、例えば、着色剤、基剤、賦形剤、担体、コーティング剤、光沢化剤などとして利用することができる。以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.01%乃至50%の範囲が好適である。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ハッカ水、ハッカ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、ベルガモット油、ボルネオールなどが挙げられる。
以上のような成分の含量は、用いる成分の種類や本発明の組成物の利用分野・利用形態にもよるが、総重量当たり、通常、0.001%乃至5%、望ましくは、0.01%乃至1%の範囲が好適である。
なお、以上に説明したような成分を直接的または間接的に生体に接触させて使用する場合、生体への外用または内用が許容される調製品を用いるのが望ましい。
以上のような成分を目的に応じて本発明の組成物に配合することにより、本発明の組成物に所望の性質・機能が付与することができる。例えば、ごく一例を挙げると、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒に制汗剤、殺菌剤、感触向上剤、粉体原料を配合した組成物は、生体の皮膚に適用したとき、不飽和アルデヒドによる臭気を消失させる効果を発揮するとともに、通常の制汗用品ないしはデオドラント用品と同様に発汗を抑え、爽快な使用感を与えるという特徴がある。
例えば、本発明の組成物は皮膚外用剤として用いることができる。その場合、紫外線吸収剤あるいは保湿剤を本発明の組成物中に配合することができる。紫外線吸収剤や保湿剤としては上述のものが挙げられる
さらに、本発明の組成物を皮膚外用剤として使用する場合、以下の物質を含むことができる。
・イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ビタミンD2 (エルゴカルシフェロール)、ビオチン等のビタミン類;エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン類、
・アラントイン、アズレン、グリチルレチン酸等の抗炎症剤、
・アルブチン等の美白剤、
・酸化亜鉛、タンニン酸等の収斂剤、
・L−メントール、カンフル等の清涼剤、
・イオウ、塩化リゾチーム等。
また、上記の抗酸化剤のうち生薬抽出物以外の抗酸化剤を、皮膚外用剤としての本発明の組成物中に配合することができる。
なお、上に挙げた他の成分に、本発明の組成物に配合可能な他の成分が限定されるものではない。また、上に挙げた薬効成分は単独で皮膚外用剤としての本発明の組成物に配合することの他に、2種類以上の上記成分を、目的に応じ、適宜組み合わせて配合することも可能である。
本発明の組成物は、皮膚外用剤として医薬品、医薬部外品(軟膏剤,歯磨剤等)および化粧品〔洗顔料、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧品、ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧品、口腔化粧品、芳香化粧品、毛髪化粧品、ボディ化粧品等〕の形態に広く適用可能である。
あるいは本発明の組成物は、水溶液、ローション、スプレー液、懸濁液および乳化液などの液状、粉末、顆粒およびブロック状などの固体状、クリームおよびペーストなどの半固体状、ゲル状等の形態とすることができる。また必要に応じて、瓶、袋、缶、スプレー缶、噴霧容器、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
また、剤型も水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。本発明の組成物を皮膚外用剤として用いる場合、これらの所望する形態や剤型に応じて公知の基剤成分等を、組成物の所期の効果を損なわない範囲で配合して用いることができる。
すなわち、液体油脂、液体もしくは固体の油脂、固体油脂、ロウ類等の油分を本発明の組成物中に配合することが可能である。また、エステル油や炭化水素油やシリコーンを本発明の組成物中に配合することが可能である。
また、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤等の界面活性剤を本発明の組成物中に配合することができる。そして、低級アルコール、ステロール類、植物系高分子、微生物系高分子、デンプン系高分子、動物系高分子、セルロース系高分子を本発明の組成物中に配合することができる。
さらに、金属イオン封鎖剤、中和剤、pH調整剤等を本発明の組成物中に配合することができる。ここで、上記の基剤成分等は例示であり、これらの基剤成分等に本発明の組成物に配合可能な基剤成分が限定されるものではない。
これらの基剤成分は所望する形態に応じた処方に従い、適宜組み合わせて本発明の組成物に配合することができる。
また、本発明の組成物は、衣服等に付着した加齢臭を消失させる手段や、身体で発生した加齢臭が衣服に付着することを防ぐ手段として用いることもできる。具体的には、例えば衣服の洗濯仕上げ剤や衣服のコーティング剤等の形態で用いることが可能である。
このような態様で用いる場合には、例えば本発明の組成物を衣服等の対象物に定着させるための定着剤等を目的に応じて組成物中に配合することができる。例えば本発明の組成物は、液剤やスプレー剤として用いることができる。
本発明の組成物は、生体と接触しうる物品に含有された形態としても利用することができる。生体と接触しうる物品としては、直接的または間接的にヒトまたは動物の生体と接触して利用されることのあるものであれば特に限定されない。
例えば、化粧品分野、日用品分野、衛生用品分野、医用品分野、介護用品分野、運動用品分野などで利用しうる形状に成形された、織布、不織布、スポンジ、多孔性合成樹脂、綿、脱脂綿などが挙げられる。また、以下の物品に利用することができる。
ティッシュ・ペーパー、ウェット・ティッシュ、紙製おしぼり、おしぼり、手ぬぐい、タオル、ハンカチ、足拭き用マット、クッション、ドアカバーなどの日用品、
衣類・寝具・日用品等の洗濯用の洗濯洗剤、洗濯仕上げ剤、柔軟剤、糊付け剤などの洗濯用品、
紙などにより成形された使い捨て品を含む、肌着、靴下、シャツ、ズボン、スカートなどの衣類、
シーツ、布団カバー、枕カバー、毛布、タオルケットなどの寝具手袋、
帽子、マフラー、鉢巻き、ヘアバンド、靴などの身の回り品、
包帯、眼帯、ガーゼ、パッドつき絆創膏、湿布、湿布の基布、綿棒、マスク、おむつ、使い捨ておむつ、生理用品などの衛生用品、医用品ないしは介護用品、
運動靴、トレーニングウェア、サポーター、胴着、ヘルメットあて、グローブ、ミットなどの運動用品、
床、手すり、家具等の清掃用の雑巾、布巾、モップなどの清掃用品、
エステティック用品、
マッサージ用品、
体臭ケア用品などとしてのローション、クリーム、ゲル、天花粉などの皮膚外用組成物、
シャンプー、ドライシャンプー、リンス、ヘアトニック、ヘアリキッド、ヘアムース、ヘアクリーム、ポマード、育毛剤、養毛剤などの頭皮・頭髪用組成物、
マウス・ウォッシュ、練歯磨などの口腔用組成物、
魚介類用餌、水槽浄化剤、愛玩動物用浴用剤などの愛玩動物用品
本発明の組成物を含有する上に例示した物品は、総重量あたり、エノン還元酵素を、無水物換算でその合計として、通常、約0.00001重量%乃至約30重量%、望ましくは、約0.0001重量%乃至約10重量%含有される。
以上のような物品は、本発明の組成物を含まない物品と比較し、それを利用する者から発生する体臭を消失させるとともに、当該物品に付着した、生体からの分泌物に起因する体臭ないしは体臭様の臭気を消失させる機能を有する。
本発明の組成物は、ヒトに加え、哺乳類・鳥類・魚介類を含むヒト以外の動物の体臭の消失にも有効である。ヒト以外の動物としては、例えば、愛玩用、観賞用もしくは家畜用動物が挙げられる。より具体的には、本発明の組成物は次のような動物に対しても有効である。
・イヌ、ネコ、キツネ、タヌキをはじめとする食肉類、
・リス、ハムスター、ハツカネズミ、モルモット、ウサギをはじめとする齧歯類、
・キツネザル、アイアイ、メガネザル、テナガザルをはじめとするヒト以外の霊長類、
・ウシ、ヒツジ、ヤギ、イノシシ、ブタをはじめとする偶蹄類、
・ウマをはじめとする奇蹄類(以上哺乳類)、
・ニワトリ、シチメンチョウ、チャボ、ウズラ、インコ、ブンチョウ、カナリア、ジュウシマツ、キュウカンチョウ、ハトなどの鳥類、
・熱帯魚、金魚、コイ、タイ、エビ、カニなどの魚介類
したがって本発明の組成物は、個人が日常的に利用することのみならず、例えば、理容・美容業界、温泉を含む公衆浴場業界、エステティック業界、マッサージ業界、清掃業界、畜産・水産業界、哺乳類・鳥類・魚介類を含む愛玩動物ないしは鑑賞用動物の取扱い業界、医療分野、介護分野等においても有利に利用できる。
また本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒を有効成分として含有する、不飽和アルデヒドの臭気消失剤を提供する。本発明の臭気消失剤は、好ましい態様において、さらに付加的に電子供与体を含むことができる。
加えて本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の、不飽和アルデヒドの臭気消失剤の製造における使用に関する。
あるいは本発明は不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の、不飽和アルデヒドの臭気の消失における使用に関する。
加えて本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒と薬学的に許容される担体を配合する工程を含む、臭気消失剤の製造方法に関する。
さらに本発明は、不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合を還元する反応を触媒する還元触媒の、不飽和アルデヒドの臭気の消失用組成物の製造における使用に関する。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1]trans-2-ノネナールの消臭
酵母由来のアルコール脱水素酵素(シグマアルドリッチ)、酵母由来のアルデヒド脱水素酵素(シグマアルドリッチ)、酵母由来のエノン還元酵素-1(KLER1、特開2002-247987)、酵母由来のエノン還元酵素-2(KYE1、特開2003-033185)を各1 U、補酵素を10 mM、trans-2-ノネナールを2 mMとした反応液を調製し、30℃で15分間、酵素反応を行った。なお、各酵素の1Uは1分間で1μmolの基準物質を変換する酵素量とした。各酵素の基準物質は、アルコール脱水素酵素はエタノール、アルデヒド脱水素酵素はアセトアルデヒド、エノン還元酵素はエチルビニルケトンである。
反応後、官能試験において臭いの変化を評価した。結果を表1に示した。エノン還元酵素は悪臭がしなくなっただけではなく、逆に清涼感のある芳香に変化した。
Figure 0005658502
[実施例2]エノン還元酵素による不飽和アルデヒドの消臭
実施例1と同様に、trans-2-ヘキセナール、trans-2-オクテナールについても官能評価を行った。評価に用いた酵素は、酵母由来のエノン還元酵素-1(KLER1、特開2002-247987)、酵母由来のエノン還元酵素-2(KYE1、特開2003-033185)とし、補酵素NADPHを10 mM、各不飽和アルデヒドを2 mMとして、30℃で15分間、pH 6.5にて酵素反応を行った。
反応後、官能試験において臭いの変化を評価した。結果を表2に示した。エノン還元酵素は、いずれの不飽和アルデヒドに対して消臭効果を示し、実施例1と同様に清涼感のある匂いに変化した。
Figure 0005658502
また、反応液に残存する不飽和アルデヒドとその変換物について分析した。常法によりアルデヒドをジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)により誘導化し、GCにて分析を行った。分析条件は、以下の通りである。すなわち、DB-Wax (J&W, 0.25 mm×30 m) を用い、カラム温度を50℃で5分間保持した後、5℃/minで200℃まで昇温した。検出は、水素炎イオン化検出器(FID)を利用した。その結果、いずれも100%の収率で不飽和アルデヒドが対応するn-アルデヒドに変換されていた。
[実施例3]衣類に付着した不飽和アルデヒドの消臭
10 μgのtrans-2-ノネナールを1 mLの水に溶解させ、その水溶液を10 cm×10 cmのガーゼに吸水させた。次に、0.5 Uの酵母由来のエノン還元酵素-1(KLER1、特開2002-247987)、および酵母由来のエノン還元酵素-2(KYE1、特開2003-033185)、0.55 mgのNADPHをpH 6.5に調整したリン酸カリウム緩衝液に溶解させ、最終液量を10 mLとし、消臭酵素液を調製した。なお、ここでの1 Uは、trans-2-ノネナールの炭素−炭素二重結合を1μmol/minで還元する酵素量とした。この消臭酵素液 1 mL分をtrans-2-ノネナール含有ガーゼに噴霧し、室温で5分間放置し、官能試験において臭いの変化を評価した。その結果、いずれのエノン還元酵素において、trans-2-ノネナールの悪臭がなくなり、逆に清涼感のある良い匂いに変化した。
[実施例4]衣類に付着した体臭の消臭
57歳男性が1日着たシャツを10 cm×10 cm に切ったものを2枚用意し、シャツAとシャツBとした。シャツAには実施例3で調製した消臭酵素液を1 mL噴霧し、シャツB(対照)には酵素なしの溶液を1 mL噴霧した。その結果、シャツAは対照と比べ明らかに悪臭はしなくなった。
本発明は、エノン還元酵素を用いる不飽和アルデヒドの脱臭方法に関する。本発明の方法により、加齢に伴い発生する体臭(加齢臭)の元となる物質を分解除去し、体臭を消失させることができる。

Claims (12)

  1. trans-2-ノネナール、trans-2-ヘキセナール、およびtrans-2-オクテナールからなる群より選択される不飽和アルデヒドの炭素−炭素間二重結合をエノン還元酵素により還元する工程を含む、当該不飽和アルデヒドの臭気を消失させる方法。
  2. 炭素−炭素間二重結合の還元を、電子供与体の存在下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. エノン還元酵素が酵母由来のエノン還元酵素-1またはエノン還元酵素-2である、請求項1に記載の方法。
  4. エノン還元酵素が以下(a)から()からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、請求項に記載の方法。
    (a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
    )配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
    (A)作用
    還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
    (B)基質特異性
    (1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、ケトンの還元活性はない。
    (2)電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
    (3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素でない基質に対しては作用しない。
    (4)炭素−炭素間二重結合が環状構造中に存在する基質に対しては作用しない。
    (C)至適pH
    pH 6.5−7.0
    (D)至適温度
    37−45℃
    (E)分子量
    ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により43,000。ゲル濾過により42,000。
  5. エノン還元酵素が以下(a)から()からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、請求項に記載の方法。
    (a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
    )配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
    (A)作用
    還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
    (B)基質特異性
    (1) 電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
    (2) 不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、ケトンの還元活性はない。
    (3) 3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、90% ee以上の (S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成する。
    (C)分子量
    ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により47,000。ゲル濾過により92,000。
    (D)作用pH
    pH 5.0−8.0
    (E)至適温度
    37−45℃
  6. 電子供与体が以下(1)から(6)からなる群より選択される少なくとも1つの補酵素である、請求項に記載の方法;
    (1)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、
    (2)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、
    (3)還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)、
    (4)還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH)、
    (5)ユビキノン(UQ)、および
    (6)ピロロキノリンキノン(PQQ)。
  7. エノン還元酵素を有効成分として含有する、trans-2-ノネナール、trans-2-ヘキセナール、およびtrans-2-オクテナールからなる群より選択される不飽和アルデヒドの臭気の消失用組成物。
  8. さらに電子供与体を含有する、請求項に記載の組成物。
  9. エノン還元酵素が酵母由来のエノン還元酵素-1またはエノン還元酵素-2である、請求項7に記載の組成物。
  10. エノン還元酵素が以下(a)から()からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、請求項に記載の組成物。
    (a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
    )配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
    (A)作用
    還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
    (B)基質特異性
    (1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、ケトンの還元活性はない。
    (2)電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
    (3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素でない基質に対しては作用しない。
    (4)炭素−炭素間二重結合が環状構造中に存在する基質に対しては作用しない。
    (C)至適pH
    pH 6.5−7.0
    (D)至適温度
    37−45℃
    (E)分子量
    ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により43,000。ゲル濾過により42,000。
  11. エノン還元酵素が以下(a)から()からなる群より選択されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質である、請求項に記載の組成物。
    (a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
    )配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、下記の理化学的性状(A)から(E)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
    (A)作用
    還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成する。
    (B)基質特異性
    (1) 電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活性を有する。
    (2) 不飽和ケトンの炭素−炭素間二重結合を還元するが、ケトンの還元活性はない。
    (3) 3-Methyl-4-(3-pyridyl)-3-buten-2-oneのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、90% ee以上の (S)-3-methyl-4-(3-pyridyl)-3-butan-2-oneを生成する。
    (C)分子量
    ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電気泳動により47,000。ゲル濾過により92,000。
    (D)作用pH
    pH 5.0−8.0
    (E)至適温度
    37−45℃
  12. 電子供与体が以下(1)から(6)からなる群より選択される少なくとも1つの補酵素である、請求項に記載の組成物;
    (1)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、
    (2)還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、
    (3)還元型フラビンモノヌクレオチド(FMNH)、
    (4)還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH)、および
    (5)ユビキノン(UQ)、および
    (6)ピロロキノリンキノン(PQQ)。
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