優れた低温定着性を有するポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂を用いる場合、ワックス成分の分散性を高めてトナー表面の組成を均一にして、帯電性を高めて現像性を上げることが必要であった。そのためにはエステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aを用いることが有効であった。
しかし、トナーが高温高湿下で長期間放置された場合、エステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aと、ポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂は、互いに極性を有している。そのため、単純にトナー化時にポリエステル系樹脂成分とワックス成分Aを混合させるだけでは、お互いがなじみ易い為に、ワックス成分Aがポリエステル系樹脂成分中を移動しやすくトナー表面に染み出しやすくなる。その結果、トナーを高温高湿下で長期放置するとブロッキング(トナーが凝集してしまう現象)を起こしやすく、濃度低下を起こしやすかった。
本発明者らがこれらの問題点に対して検討を行った結果、エステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aの存在化で重合したポリエステル系樹脂成分を主成分とする樹脂を、重合後に冷却固化して、固化物を溶融混練して溶融状態で薄膜蒸発機に導入し、揮発成分を留去する工程を経て得られたものである場合に、トナーを高温高湿下で長期放置してもブロッキングが発生しにくく、高温高湿下の画出しでも濃度低下を起こしにくいことを見出した。
重合後の樹脂を中間体結着樹脂と呼ぶことにする。中間体結着樹脂をワックス成分Aの存在下で重合することで、中間体結着樹脂中にワックス成分Aを細かく分散させることができる。これはエステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aと、ポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂は、互いに極性を有しているので、お互いがなじみ易い為である。
さらに重合後の中間体結着樹脂を冷却固化することが重要である。冷却固化した樹脂を固化物と呼ぶことにする。重合後の中間体結着樹脂を冷却固化することで、細かく分散したワックス成分Aの再凝集を効果的に防ぐことができる。
さらに固化物を溶融混練することが重要である。混練後の樹脂を混練後樹脂と呼ぶことにする。固化物を溶融混練して樹脂にシェアをかけることで、細かく分散したワックス成分Aを混練後樹脂全体に均一に分散させることができる。固化物は次の工程に進める前に粉砕しても構わない。
続いて溶融混練した混練後樹脂を薄膜蒸発機に導入し、揮発成分を留去する工程を経ることが重要である。薄膜蒸発機内は加熱及び減圧条件下なので混練後樹脂の重合を進めることができ、混練後樹脂全体に細かく分散したワックス成分Aが、樹脂の分子構造に内包されるように取り込まれて固定化されるのである。
このように、本発明のポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂は、ワックス成分Aの存在化で重合し、重合後に冷却固化して、固化物を溶融混練して溶融状態で薄膜蒸発機に導入し、揮発成分を留去する工程を経て得ることで得られる。この結果、ワックス成分Aを結着樹脂全体に均一に微分散させ、結着樹脂の分子構造に内包させて固定化することができる。
その結果、トナーが高温高湿下で長期間放置されても、ワックス成分Aは結着樹脂の分子構造に内包されているので、トナー表面への染み出しが抑制され、ブロッキングが発生しにくく、帯電不良を抑えられ濃度低下しにくいトナーを得ることができる。また、薄膜蒸発機は加熱及び減圧条件下なので、同時に揮発成分も留去される。
結着樹脂重合時にワックス成分Aを全く添加せずに、トナー化時にだけワックスAを添加する場合、結着樹脂中へワックス成分Aを細かく分散させにくいため、トナー表面の組成が不均一になりやすく、帯電性が上がらず現像性が低下する場合がある。
重合後の中間体結着樹脂を一旦冷却固化しない場合、中間体結着樹脂中にワックス成分Aを細かく分散させても、ワックス成分Aが再凝集してしまう。
つまり、重合後の中間体結着樹脂を一旦冷却固化せずに溶融混練すると、重合から溶融混練までの間、樹脂が熱にさらされる時間が長くなるため、ワックス成分A同士で再凝集を起こしやすくなる。
ワックス成分Aが再凝集すると、トナー表面の組成が不均一になり、帯電分布がブロード化するために現像性が低下しやすい。
固化物を溶融混練しない場合、ワックス成分Aを、混練のシェアにより混練後樹脂全体に均一に分散させることができない。
つまり、固化物を溶融混練せずに薄膜蒸発機に通すと、樹脂中にワックス成分Aは微分散しているものの、樹脂中のワックス成分Aの分布が不均一になっているため、トナー化しても不均一な組成分布のトナーになってしまい、帯電分布がブロード化するために現像性が低下しやすい。
薄膜蒸発機を通さない場合、結着樹脂全体に細かく分散したワックス成分Aが、結着樹脂の分子構造に内包されにくくなるため、トナーが高温高湿下で長期間放置された場合、ワックス成分Aがトナー表面への染み出しやすく、ブロッキングが発生しやすくなり、帯電不良で濃度低下しやすくなる。さらに薄膜蒸発機を通さない場合、結着樹脂中に揮発成分が残りやすくなるため、揮発成分が結着樹脂を可塑化しやすくなる。そしてワックス成分Aを内包している結着樹脂の分子構造が動きやすくなり、ワックス成分Aが結着樹脂中を動きやすくなってしまう。その結果、トナーが高温高湿下で長期間放置された場合、トナー表面への染み出しやすくなり、ブロッキングが発生しやすく、また帯電不良による濃度低下も発生しやすい。
エステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aが、ポリエステル系樹脂成分全体に均一に細かく分散する。この段階の結着樹脂を用いたトナーは、現像性に優れているが、高温高湿下に長時間放置すると、やはり徐々にワックス成分Aがトナー表面に染み出してくるので、現像性の低下やブロッキングが悪化する可能性があった。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂成分の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
また(B)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また必要に応じて3価以上のアルコール成分や3価以上の酸成分を使用することも可能である。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5乃至30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。なかでも、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸およびこれらの無水物、低級アルキルエステルが好ましい。
本発明に用いられるアルコール成分としては40乃至60mol%、好ましくは45乃至55mol%、酸成分としては60乃至40mol%、好ましくは55乃至45mol%であることが好ましい。また三価以上の多価の成分は、全成分中の0.1乃至60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル系樹脂成分は通常一般に知られている縮重合によって得られる。ポリエステル系樹脂成分の重合反応は通常触媒の存在下150乃至300℃、好ましくは170乃至280℃程度の温度条件下で行われる。また反応は常圧下、減圧下、もしくは加圧下で行うことができるが、所定の反応率(例えば30乃至90%程度)に到達後は反応系を200mmHg以下、好ましくは25mmHg以下、更に好ましくは10mmHg以下に減圧し、反応を行うのが望ましい。
上記触媒としては、通常ポリエステル化に用いられる触媒、例えばスズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属;およびこれら金属含有化合物(ジブチルスズオキサイド、オルソジブチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸コバルト、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)が挙げられる。
本発明に用いられる結着樹脂は、ポリエステル系樹脂成分が主成分であれば、他の樹脂成分を含有しても良い。本発明で用いられる他の樹脂成分としては、従来より知られている種々の樹脂成分を使用することができるが、特にビニル系樹脂成分が現像性の面でより好ましい。ポリエステル系樹脂成分が主成分であれば、他の樹脂成分を単独で、又は2種類以上をポリエステル系樹脂成分と組合せて用いることができる。ここで主成分とは、結着樹脂の総量に対し50質量%以上を占めることを意味する。
ビニル系樹脂成分を得る為のモノマーとしては、次のようなものが挙げられる。
例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン,イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸誘導体もしくはメタクリル酸誘導体が挙げられる。これらのビニルモノマーは単独もしくは2つ以上のモノマーを混合して用いられる。
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレンアクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合せが好ましい。
さらに、樹脂成分の酸価を調整するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水マレイン酸などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合して、他のモノマーと共重合させることにより所望の樹脂成分を作ることができる。
また、以下に例示する様な架橋性モノマーを添加することも可能である。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグルコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のビニル系モノマー成分100質量部に対して、1質量部以下、好ましくは0.001乃至0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
結着樹脂の調製に使用されるビニル系樹脂成分は、本発明の目的を達成する為に以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジーt−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤が挙げられる。
これらの内、より好ましいものは、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジーt−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用バインダーとして要求される種々の性能を満足する為には、単官能性重合開始剤と併用されることも可能である。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジーt−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05乃至2質量部用いるのが好ましい。
本発明で用いられるポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(a)乃至(d)に示す製造方法を挙げることができる。
(a)ポリエステル系樹脂成分と他の樹脂成分を別々に重合した後に混合して、結着樹脂を作成する。
(b)ポリエステル系樹脂成分を先に重合して、ポリエステル系樹脂成分の存在下で他の樹脂成分を重合して、結着樹脂を作成する。
(c)他の樹脂成分を先に重合して、他の樹脂成分の存在下でポリエステル系樹脂成分を重合して結着樹脂を作成する。
(d)ポリエステル系樹脂成分と他の樹脂成分を同時に重合して、結着樹脂を作成する。
本発明で特に好ましく用いられるポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂の製造方法としては(b)が挙げられる。
本発明では、エステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するワックス成分Aの存在下でポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂を重合する必要がある。ワックス成分Aの存在下で重合すると、ワックス成分Aが溶融状態の樹脂に溶解した状態で結着樹脂の重合が進むために、ワックス成分Aを細かく分散させることが可能となる。
本発明に用いられる固化物を溶融混練する際に用いられる混練機について説明する。混練機としては公知のものを使用することができる。混練機から吐出される溶融状態の結着樹脂の温度は、結着樹脂にかかるシェアとワックス成分Aの分散性の観点から、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
本発明に用いられる薄膜蒸発機について説明する。
薄膜蒸発機は、結着樹脂を薄膜として減圧することができる装置であれば特に制限されないが、好ましい装置を図1に図示する。図1に示されるように、薄膜蒸発機は、タンク部10と、タンク内で回転する回転軸11を有し、回転軸11には攪拌翼12が具備されている。さらに、薄膜蒸発機は、蒸気出口2と、タンク10を加熱するための熱媒経路となる、熱媒入り口5、6と、熱媒出口3、4を有する。攪拌翼12は、回転軸11の長手方向に複数枚具備され、かつ周方向にある程度の傾斜を有していることが好ましい。溶融状態の結着樹脂を、入り口1から薄膜蒸発機内に導入すると、ディストリビュータ8によって、溶融状態の樹脂が、タンク10の内壁面に一様分散する。ディストリビュータ8と攪拌翼12は、内壁面と狭いクリアランスを有し、図示しない上部のモーターによって駆動し回転することによって、常に強制的に薄膜化させる機構を備えている。攪拌翼12の回転動作により、薄膜化された溶融樹脂は、表層部は常に更新されながら、下方の樹脂の出口7側に強制的に移送される。この間、溶融樹脂はタンク10内で減圧および好ましくは加熱されながら、最終的にスクリュー9を介して、出口7から押出し作用により排出される。
薄膜状態にされる結着樹脂の厚さは、タンク10の内壁面と攪拌翼12との距離で調節することができるが、好ましくは1乃至5mm、より好ましくは2乃至4mmである。
タンク内の気圧は、0.3Pa以上500Pa以下、好ましくは0.5Pa以上200Pa以下であるとタンク内で結着樹脂の重合が進み、本発明の効果を得るのに好ましい。
また、タンク10は加熱することが好ましい。特に、50℃以上250℃以下、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは150℃以上190℃以下で加熱すると結着樹脂の重合が進みやすい。また溶融状態の結着樹脂を薄膜蒸発機に導入する時の結着樹脂の温度は、タンク10の温度に合わせることが好ましい。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂成分を主成分とする結着樹脂は、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂を含有すると良い。ワックス成分Aが、ポリエステル系樹脂成分の分子構造に内包されるだけでなく、さらにビニル系樹脂成分の分子構造にも内包されることになるため、より強固にワックスが固定化される。その結果、より過酷な放置条件となるヒートサイクルを受けた後でも、よりワックス成分Aの染み出しを抑えることができ、トナー表面の組成の均一性が保たれるため、高温高湿下での画出しにおいて現像性を維持することができる。ヒートサイクルとは、常温から高温へ昇温して、再び常温まで降温させることの繰り返しである。ヒートサイクル下では結着樹脂やワックス成分Aの分子運動が収まったり激しくなったりを繰り返すので、トナー表面へのワックス成分Aの染み出しにはより厳しい条件となる。
ハイブリッド樹脂は、ポリエステル系樹脂成分と(メタ)アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合したビニル系樹脂成分とがエステル交換反応によって形成されるもの、ポリエステル系樹脂成分と(メタ)アクリル酸の如きカルボン酸基を有するモノマー成分を重合したビニル系樹脂成分とがエステル化反応によって形成されるもの、あるいはフマル酸のような不飽和基を持つモノマーを用いて重合された不飽和ポリエステル系樹脂成分の存在下でビニル系モノマーを重合して形成されるものなどがある。
ハイブリッド樹脂は、ビニル系樹脂成分及び/又はポリエステル系樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含有させ、それらを反応させることによって得ることができる。
本発明で用いられるハイブリッド樹脂を調製できる製造方法としては、例えば、以下の(1)乃至(6)に示す製造方法を挙げることができる。
(1)ハイブリッド樹脂成分は、ビニル系樹脂成分とポリエステル系樹脂成分を別々に製造後、少量の有機溶剤に溶解・膨潤させ、エステル化触媒及びアルコールを添加し、加熱することによりエステル交換反応を行って、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を得ることが出来る。
(2)ビニル系樹脂成分製造後に、この存在下にポリエステル系樹脂成分を反応させ、ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はビニル系樹脂成分(必要に応じてビニル系モノマーも添加できる)とポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)及び/またはポリエステル系樹脂成分との反応により製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(3)ポリエステル系樹脂成分製造後に、この存在下にビニル系樹脂成分を生成し、反応させポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂を製造する方法である。ハイブリッド樹脂はポリエステル系樹脂成分(必要に応じてポリエステルモノマーも添加できる)とビニル系モノマー及び/またはビニル系樹脂成分との反応により製造される。
(4)ビニル系樹脂成分及びポリエステル系樹脂成分製造後に、これらの重合体成分存在下にビニル系モノマー及び/またはポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸)を添加することによりハイブリッド樹脂が製造される。この場合も適宜、有機溶剤を使用することができる。
(5)ビニル系モノマー及びポリエステルモノマー(アルコール、カルボン酸等)を混合して付加重合及び縮重合反応を連続して行うことによりビニル系樹脂成分、ポリエステル系樹脂成分及びポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分を有するハイブリッド樹脂が製造される。さらに、適宜、有機溶剤を使用することができる。
上記(1)乃至(5)の製造方法において、ビニル系樹脂成分及び/またはポリエステル系樹脂成分は複数の異なる分子量、架橋度を有する重合体成分を使用することができる。
本発明で特に好ましく用いられる製造方法としては(3)が挙げられる。特にビニル系モノマーと反応可能な不飽和ポリエステル樹脂をビニル系モノマーに溶解し、このポリエステル樹脂とビニル系モノマーの混合物を塊状重合法により重合して得られたものが良い。
塊状重合は、ビニル系樹脂成分の分子量を大きくすることが出来るため、分子量の大きいビニル系樹脂成分にポリエステル系樹脂成分がハイブリッド化されることで、分子量が大きく、架橋点間分子量の大きいゲル構造を得ることが可能になる。そのためワックス成分Aを均一に取り込みやすくなる。また、塊状重合法は、溶液重合法と比較して溶媒の留去などの工程が必要ないため低コストで結着樹脂を得ることができる。また、懸濁重合法と比較して、分散剤等の不純物を含まない為、トナーの帯電性などへの影響が少なく優れた現像性を得られる等、トナー用結着樹脂としてのメリットが大きく、好ましい。
ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂を含有する場合は、ポリエステル系樹脂成分は、不飽和ポリエステル系樹脂成分であることが重要である。本発明のハイブリッド樹脂に用いられる不飽和ポリエステル系樹脂成分としては、THF可溶分のGPC分子量分布において、分子量2000乃至30000(好ましくは3000乃至20000)の範囲にメインピークを有する低分子量不飽和ポリエステル系樹脂成分が好ましく用いられる。
さらには、ゲル成分を含まない線状の不飽和ポリエステル系樹脂成分が特に好ましい。
さらに、本発明で用いられる不飽和ポリエステル系樹脂成分としては、数平均分子量(Mn)が2000乃至20000、好ましくは3000乃至10000のものが良い。また、本発明で用いる不飽和ポリエステル系樹脂成分は、水酸基価が10乃至110mgKOH/g(好ましくは15乃至90mgKOH/g、より好ましくは20乃至70mgKOH/g)である場合に、トナーが優れた帯電性を示す為、好ましい。
不飽和線状ポリエステル系樹脂成分の存在下でビニル系モノマーを塊状重合すると、分子量が大きく直鎖性の高いビニル系樹脂成分を主鎖とし、低分子量ポリエステル系樹脂成分がビニル系樹脂成分から分岐した形の分子構造のハイブリッド樹脂成分が得られる。更に、この分岐構造を持つハイブリッド樹脂成分中の酸基や水酸基が、分子間でエステル結合することによりゲル成分を形成する。
不飽和ポリエステル樹脂を得る為の不飽和基を持つ酸成分として、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル等が好ましく用いられる。これら不飽和ジカルボン酸は、ポリエステルモノマーの全酸成分に対して、0.1乃至10mol%(好ましくは0.3乃至5mol%、より好ましくは0.5乃至3mol%)の割合で添加することが好ましい。この範囲で不飽和ジカルボン酸を添加した場合に、低分子量ポリエステル分子中に占める不飽和基濃度が最適となる。
ポリエステル系樹脂成分とビニル系樹脂成分とが化学的に結合したハイブリッド樹脂を含有する場合は、ビニル系樹脂成分には不飽和多価カルボン酸エステルモノマーを用いることが好ましい。不飽和多価カルボン酸エステルモノマーとは、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、等の脂肪族不飽和多価カルボン酸、フェニレンジアクリル酸等の芳香族不飽和多価カルボン酸のエステル誘導体が挙げられる。
ビニル系樹脂成分中に反応性の高い不飽和多価カルボン酸エステルモノマーを含有させると、重合時や薄膜蒸発機で減圧されることで、分岐構造を持つハイブリッド樹脂成分中の水酸基と、分子間でエステル結合することができる。ビニル系樹脂成分に不飽和多価カルボン酸エステルモノマーを用いると、結着樹脂が分子間でもエステル結合でつながっていくため、よりワックス成分Aが分子構造に内包されて固定化されやすくなる。
不飽和多価カルボン酸エステルモノマーを用いた場合は、過酷な放置条件となるヒートサイクルを受けた後でも、さらにワックス成分Aの染み出しを抑えることができる。その結果、トナー表面の組成の均一性が保たれるため、帯電性の立ち上がりが良好になって高温高湿下での画出しにおいて初期から濃度が出やすくなる。これは結着樹脂が分子間でもエステル結合でつながっていくため、よりワックス成分Aが分子構造に内包されてより強く固定化されているためである。
該ビニル系樹脂成分中の不飽和多価カルボン酸エステルモノマーの含有量は、0.1質量%以上20.0質量%以下、好ましくは0.3質量%以上15.0質量%以下であると、よりワックス成分Aが分子構造に内包されて固定化されやすくなる。その結果、高温高湿下での画出しにおいても初期から濃度が出やすくなる。
より具体的には、例えばマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジペンチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ヘプチル、マレイン酸エチルブチル、マレイン酸エチルオクチル、マレイン酸ブチルオクチル、マレイン酸ブチルヘキシル、マレイン酸ペンチルオクチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジブチル、フマル酸モノフェニル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ジペンチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ヘプチル、フマル酸オクチル、フマル酸エチルブチル、フマル酸エチルオクチル、フマル酸ブチルオクチル、フマル酸ブチルヘキシル、フマル酸ペンチルオクチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
特に本発明においては、より反応性の高いモノマーを選択することにより、よりワックス成分を結着樹脂中に固定化するという点で、不飽和ジカルボン酸モノエステルが好ましい。
重合時や薄膜蒸発機で減圧されることで、分岐構造を持つハイブリッド樹脂成分中の水酸基と、分子間でエステル結合することができる。より反応性の高い不飽和ジカルボン酸モノエステル用いると、結着樹脂の分子間でのエステル結合を効率よく形成できるため、ワックス成分Aが分子構造に内包されて固定化される確率がさらに高くなる。
不飽和ジカルボン酸モノエステル用いると、トナーがヒートサイクルを受けてもトナー表面へのワックス成分Aの染み出しがさらに抑えられるので、高温高湿下でも凝集体を形成しにくくなる。そしてワックス成分Aが染み出して凝集体を形成したことによる白モヤを抑えることができる。白モヤとは、トナーが凝集することで、現像スリーブ上にトナーの凝集体が存在すると、その部分だけが適正に現像されにくくなるために画像が白く抜ける現象である。
無水物基を形成しやすいという観点で、好ましい不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、マレイン酸モノエステル又は、フマル酸モノエステルであり、さらに好ましくは、マレイン酸モノエステルである。中でもマレイン酸モノブチルが、共重合するスチレン或いはアクリル酸エステルモノマーとの反応性、および酸無水物の形成のしやすさの点で、特に好ましい。
本発明において、結着樹脂のTHF不溶分として検出されるゲル成分を含有するトナーは、高温高湿下での画出しにおいても耐久性おいて有利である。本発明ではTHF不溶分を5.0質量%以上40.0質量%以下含有することが好ましい。
本発明において、結着樹脂は、高温高湿下での画出しの耐久性や定着性の観点から、軟化点が100.0℃以上160.0℃以下であることが好ましい。
本発明に用いられるワックス成分Aについて説明する。
本発明に用いられるワックス成分Aは、エステル基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる1種以上の官能基を有していることが重要である。特に、水酸基を有する極性ワックスであると、ワックス成分Aの分散性やトナーの帯電性の面からも好ましい。またヒートサイクル後に凝集しにくくなるので、白モヤが発生しにくくなる。
本発明に使用するワックス成分Aは、以下の構造を有する炭化水素分子鎖を好ましくは含むものである。
すなわち、少なくとも下記部分構造式A乃至Eで表せる、二級炭素に水酸基を有する二級アルコールの構造を有する分子鎖、乃至一級炭素に水酸基を有する一級アルコールの構造を有する分子鎖を有することを必須とする。また同時に下記部分構造式C乃至Dで表せる、一級乃至二級の炭素にカルボキシル基を有する分子鎖を有することを必須とする。下記部分構造式A乃至E、C乃至Dは、それぞれ一つの炭化水素鎖に両方を有していても良い。さらに下記部分構造式Bで表せる、エステル結合を有するエステルの構造を有する分子鎖を有していても良い。より好ましくは、下記部分構造式A乃至E、C乃至D、Bで表されるアルコール構造、カルボキシル基、ならびにエステル結合をそれぞれ有する分子鎖を有する炭化水素鎖である。
また、一つの炭化水素鎖に任意の下記部分構造式A、B、C、D及びEの構造を有していても良い。
本発明に用いられるワックス成分AのDSC融解ピーク温度は、好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは70℃以上90℃以下である。この範囲にあると、結着樹脂の重合時の微分散しやすさと、トナーを高温高湿下で長期間放置した場合のワックス成分Aの染み出しの抑制を両立することができる。そのため、トナーを高温高湿下で長期間放置した後、高温高湿下で画出しをした場合でも、スリーブ融着が発生しにくくなる。スリーブ融着とは、トナーから染み出したワックス成分Aがスリーブ表面を汚染して、トナーが帯電不良を起こす現象である。
本発明では、低温定着性や耐高温オフセット性を補うために、必要に応じてワックス成分Aをトナー化時にさらに添加しても良い。またワックス成分Aとは別の他のワックス成分Bを添加してもよい。ワックス成分Bは、結着樹脂の重合時に添加しても良いし、トナー化時に添加しても構わない。ワックス成分Aと同様に、好ましくは結着樹脂の重合時に添加することが、ワックス成分Bの分散性を高めることができるので良い。
本発明で用いるワックス成分Bとしては、示差走査熱量計(DSC)測定におけるワックス吸熱ピーク温度が70℃以上120℃以下であるものが良好な現像性を得るのに好ましい。
本発明のトナーは更に磁性材料を含有させ磁性トナーとしても使用しても良い。この場合、磁性材料は着色剤の役割をかねることもできる。
本発明において、磁性トナー中に含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属或はこれらの金属アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金及びその混合物等が挙げられる。
これらの強磁性体は平均粒子径が2μm以下、好ましくは0.05乃至0.5μmのものが好ましい。トナー中に含有させる量としては樹脂成分100質量部に対し、20乃至200質量部が良い。
本発明に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物等が用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物等が用いられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が利用できる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
本発明の着色剤は、色相角,彩度,明度,耐候性,OHP透明性,トナー中への分散性の点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対し1乃至20質量部添加して用いられる。
本発明の負帯電性トナーには、負帯電性トナーを負荷電性に制御する荷電制御剤を含有させることが好ましい。荷電制御剤として下記物質がある。
例えば有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。
また、次に示した下記式(1)で表わされるアゾ系金属化合物が好ましい。
〔式中、Mは中心金属を示し、具体的にはSc、Ti、V、Cr、Co、Ni、MnまたはFe等があげられる。Arはアリーレン基を示し、フェニレン基、ナフチレン基などがあげられ、置換基を有してもよく、置換基としては、ニトロ基、ハロゲン基、カルボキシル基、アニリド基および炭素数1以上18以下のアルキル基、アルコキシ基などがある。X、X’、Y及びY’はそれぞれ独立して−O−、−CO−、−NH−、−NR−(Rは炭素数1以上4以下のアルキル基)である。A+はカウンターイオンを示し、具体的には水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンあるいは脂肪族アンモニウムイオンを示す。〕
特に、上記式(1)中の中心金属としてはFe又はCrが好ましい。また、上記式(1)中のアリーレン基に置換される置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、またはアニリド基が好ましい。上記式(1)中のカウンターイオンとしては水素イオン、アルカリ金属アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオンが好ましい。またカウンターイオンの異なる化合物の混合物も好ましく用いられる。
あるいは、下記式(2)に示した塩基性有機酸金属化合物も負帯電性を与えるものであり、本発明に使用できる。
特に、上記式(2)中の中心金属としてはFe,Cr,Si,Zn,ZrまたはAlが好ましい。また、上記式(2)中のアリーレン基に置換される置換基としてはアルキル基、アニリド基、アリール基、ハロゲン原子が好ましい。また、上記式(2)中のカウンターイオンは水素イオン、アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオンが好ましい。
負帯電用として好ましい制御剤として、以下のものが挙げられる。Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学工業(株))。
荷電制御剤を負帯電性トナーに含有させる方法としては、負帯電性トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下の範囲で用いられる。1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩;これらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドのようなジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートのようなジオルガノスズボレート類、等が挙げられる。これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当たり0.01質量部以上20質量部以下の範囲で使用するのが良い。
本発明のトナーには、流動性向上剤を添加しても良い。流動性向上剤は、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。このような流動性向上剤としては、例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフウルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシラン化合物、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理微粉末;酸化亜鉛、酸化スズの如き酸化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウムやジルコン酸カルシウムの如き複酸化物;炭酸カルシウム及び、炭酸マグネシウムの如き炭酸塩化合物等が挙げられる。
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉末であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001乃至2μmの範囲内であることが好ましく、特に0.002乃至0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用することが好ましい。
さらには、本発明に用いられる流動性向上剤としては、前記ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。前記処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30乃至80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応或いは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
前記流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対して流動性向上剤を総量で0.01乃至8質量部、好ましくは0.1乃至4質量部使用することが良い。
本発明のトナーは、前記流動性向上剤と混合して、また必要に応じてさらに他の外添剤(例えば荷電制御剤等)と混合して一成分現像剤として用いることができ、またキャリアと併用して二成分現像剤として用いることができる。二成分現像方法に用いる場合のキャリアとしては、従来知られているものがすべて使用可能である。具体的には、表面酸化又は未酸化の鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物等の、平均粒径20乃至300μmの粒子が好ましくは使用される。
また、それらキャリア粒子の表面に、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル樹脂等の物質を付着又は被覆させたもの等が好ましく使用される。
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物が材料として用いられるが、必要に応じて磁性体やワックス、荷電制御剤、その他の添加剤等が用いられる。これらの材料をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、ワックスや磁性体を分散せしめる。そして冷却固化後、粉砕及び分級を行ってトナーを得ることができる。
混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)が挙げられる。
混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押出機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製)が挙げられる。
粉砕機としては、例えばイノマイザ(ホソカワミクロン社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製)が挙げられる。
分級機としては、例えばターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製が挙げられる。
粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えばウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社)等が挙げられる。
なお、本発明のトナーは、重量平均粒子径(D4)が3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。
本発明に係る各種物性の測定について以下に説明する。
<結着樹脂中のTHF不溶分の測定方法>
結着樹脂中の樹脂成分のTHF不溶分は、以下のようにして測定する。
結着樹脂約1.0gを秤量(W1g)し、予め秤量した円筒濾紙(例えば、商品名No.86R(サイズ28×100mm)、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。そして、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて16時間抽出する。このとき、溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。
抽出終了後、円筒ろ紙を取り出して風乾した後、40℃で8時間真空乾燥し、抽出残分を含む円筒濾紙の質量を秤量し、円筒濾紙の質量を差し引くことにより、抽出残分の質量(W2g)を算出する。
そして、樹脂成分以外の成分の含有量(W3g)を下記式(1)のように差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3)/(W1−W3)}×100・・・(1)
樹脂成分以外の成分の含有量は、公知の分析手段によって測定することができる。分析が困難な場合には、以下のようにして樹脂成分以外の成分の含有量(トナー中の焼却残灰分(W3’g))を見積もり、その含有量を差し引くことによって、THF不溶分を求めることができる。
結着樹脂中の焼却残灰分は以下の手順で求める。予め秤量した30mlの磁性るつぼに約2gのトナーを秤量(Wag)する。るつぼを電気炉に入れ約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分(Wbg)を算出する。そして、下記式(2)により、試料W1g中の焼却残灰分の質量(W3’g)を算出する。
W3’=W1×(Wb/Wa)・・・(2)
この場合、THF不溶分は、下記式(3)で求められる。
THF不溶分(質量%)={(W2−W3’)/(W1−W3’)}
×100・・(3)
<ワックス成分の融点の測定方法>
ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、ワックス成分約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30乃至200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のトナーのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
まず、本実施例で用いた結着樹脂の製法を以下に示す。表2にそれぞれの結着樹脂の特徴、溶融混練の有無、薄膜蒸発機の条件を示す。また、本発明に用いたワックス成分A及びワックス成分Bを表1に示す。
(ポリエステル系樹脂成分の製造例)
ポリエステルモノマーを下記比率で混合する。
・前記式(A)で表されるビスフェノール誘導体(R・プロピレン基,x+yの平均値・ 2.2) 1.150mol
・テレフタル酸 0.430mol
・イソフタル酸 0.390mol
・フマル酸 0.010mol
・ドデセニル無水琥珀酸 0.170mol
これらに触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量%を添加し、220℃で縮合重合して、不飽和ポリエステル樹脂P−1(Tg=58℃、メインピーク分子量=7800、数平均分子量(Mn)=4600、Mw/Mn=2.1、酸価=5mgKOH/g、水酸基価=37mgKOH/g)を得た。
(結着樹脂の製造例1)
不飽和ポリエステル樹脂P−1・74.0質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン・18.0質量部、アクリル酸ブチル・6.5質量部、マレイン酸モノブチル・1.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(10時間半減期温度128.4℃)・0.08質量部と、ワックス成分Aとしてワックス成分1を1.0質量部と、ワックス成分Bとしてフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)・2.0質量部とを混合した。このビニル系モノマー/ポリエステル樹脂/ワックス成分A/ワックス成分B混合物を120℃で10時間かけて重合後、さらに150℃に温度を上げて3時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させたのち、さらに180℃に温度を上げて、5時間減圧することによって、架橋反応とアルコール除去を実施し、ハイブリッド樹脂を得た。
得られたハイブリッド樹脂を冷却固化して粉砕した後に、固化物を溶融混練して、さらに、この樹脂を、溶融状態のまま、薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した。EXEVAの条件としては、樹脂厚さ・3mm、タンク内温度設定・190℃、攪拌回転数・250rpm、減圧度・1Torrとした。フィード量は、50kg/m2hとした。
EXEVA通過後、樹脂を取り出し、粉砕し、ハイブリッド樹脂を得た。これを結着樹脂1とする。
この樹脂は、テトラヒドロフラン不溶分は20.0%、軟化点は131℃であった。
(結着樹脂の製造例2)
結着樹脂の製造例1において、減圧度を0.9Torrとした以外は、結着樹脂の製造例1と同様にして、結着樹脂2を得た。
(結着樹脂の製造例3)
結着樹脂の製造例2において、ジャケット温度設定を175℃とした以外は、結着樹脂の製造例2と同様にして、結着樹脂3を得た。
(結着樹脂の製造例4)
結着樹脂の製造例3において、ワックス成分1の添加量を2.0質量部とした以外は、結着樹脂の製造例3と同様にして、結着樹脂4を得た。
(結着樹脂の製造例5)
結着樹脂の製造例4において、ビニル系モノマーに用いるマレイン酸モノブチルをマレイン酸モノエチル(1.5質量部)に変更した以外は、結着樹脂の製造例4と同様にして、結着樹脂5を得た。
(結着樹脂の製造例6)
結着樹脂の製造例5において、ビニル系モノマーに用いるマレイン酸モノエチルの量を0.2質量部に変更した以外は、結着樹脂の製造例5と同様にして、結着樹脂6を得た。
(結着樹脂の製造例7)
結着樹脂の製造例5において、ビニル系モノマーに用いるマレイン酸モノエチルの量を16.0質量部に変更した以外は、結着樹脂の製造例5と同様にして、結着樹脂7を得た。
(結着樹脂の製造例8)
結着樹脂の製造例4において、ビニル系モノマーに用いるマレイン酸モノブチルをマレイン酸ジブチル(16.0質量部)に変更した以外は、結着樹脂の製造例4と同様にして、結着樹脂8を得た。
(結着樹脂の製造例9)
結着樹脂の製造例4において、ビニル系モノマーを、スチレン・18.0質量部、アクリル酸ブチル・6.5質量部、アクリル酸・1.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(10時間半減期温度128.4℃)・0.08質量部とした以外は、結着樹脂の製造例4と同様にして、結着樹脂9を得た。
(結着樹脂の製造例10)
結着樹脂の製造例9において、ワックス成分1をワックス成分2にした以外は、結着樹脂の製造例9と同様にして、結着樹脂10を得た。
(結着樹脂の製造例11)
結着樹脂の製造例9において、ワックス成分1をワックス成分3にした以外は、結着樹脂の製造例9と同様にして、結着樹脂11を得た。
(結着樹脂の製造例12)
ポリエステル系モノマーとして、ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物20.0質量部、ビスフェノールAプロピレンオキシド3モル付加物13.0質量部、テレフタル酸6.0質量部、イソフタル酸6.0質量部及び縮合触媒としてテトラブチルチタネート0.1質量部を入れ、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。反応容器に無水トリメリット酸5.0質量部とワックス成分Aとしてワックス成分3を2.0質量部、ワックス成分Bとしてフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)2.0質量部を加えた後、ビニル系モノマーとして、スチレン・18.0質量部、アクリル酸ブチル・6.5質量部、アクリル酸・1.5質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(10時間半減期温度128.4℃)・0.08質量部の混合物を160℃で攪拌しながら2時間かけて滴下し、ビニル系樹脂の反応を行った。その後210℃でポリエステル系樹脂の反応を行ない、結着樹脂を冷却固化して粉砕した後に、固化物を溶融混練して、さらに、この樹脂を、溶融状態のまま、薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した。EXEVAの条件は表2に示す通りである。EXEVA通過後、樹脂を取り出し、粉砕し、結着樹脂12を得た。
(結着樹脂の製造例13)
ビスフェノールAプロピレンオキシド2モル付加物40.0質量部、ビスフェノールAプロピレンオキシド3モル付加物26.0質量部、テレフタル酸12.0質量部、イソフタル酸12.0質量部及び縮合触媒としてテトラブチルチタネート0.2質量部を入れ、220℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで無水トリメリット酸10.0質量部とワックス成分3を2.0質量部とワックス成分Bとしてフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)2.0質量部を加え、常圧密閉下2時間反応を行い、結着樹脂を冷却固化して粉砕した後に、固化物を溶融混練した。さらに、この樹脂を、溶融状態のまま、薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した。EXEVAの条件は表2に示す通りである。EXEVA通過後、樹脂を取り出し、粉砕し、結着樹脂13を得た。
(結着樹脂の製造例14)
結着樹脂の製造例13において、ワックス成分3をワックス成分4にした以外は、結着樹脂の製造例13と同様にして、結着樹脂14を得た。
(結着樹脂の製造例15)
結着樹脂の製造例13において、ワックス成分3をワックス成分5にした以外は、結着樹脂の製造例13と同様にして、結着樹脂15を得た。
(結着樹脂の製造例16)
結着樹脂の製造例13において、ワックス成分3をワックス成分6にした以外は、結着樹脂の製造例13と同様にして、結着樹脂16を得た。
(結着樹脂の製造例17)
結着樹脂の製造例13において、ワックス成分3をワックス成分7にした以外は、結着樹脂の製造例13と同様にして、結着樹脂17を得た。
(比較用結着樹脂の製造例1)
結着樹脂の製造例17において、ワックス成分7を添加しなかった以外は、結着樹脂の製造例17と同様にして、比較用結着樹脂1を得た。
(比較用結着樹脂の製造例2)
結着樹脂の製造例17において、結着樹脂を冷却固化後に粉砕して、溶融混練をせずに、粉砕した固化物を単純に溶融させて溶融状態のまま薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した以外は、結着樹脂の製造例17と同様にして、比較用結着樹脂2を得た。
(比較用結着樹脂の製造例3)
結着樹脂の製造例17において、重合後に冷却固化せずに溶融混練をして、溶融状態のまま薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した以外は、結着樹脂の製造例17と同様にして、比較用結着樹脂3を得た。
(比較用結着樹脂の製造例4)
スチレン70.0質量部、アクリル酸n−ブチル24.0質量部、マレイン酸モノブチル6.0質量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.0質量部、ワックス成分Aとしてワックス成分7を2.0質量部、ワックス成分Bとしてフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)2.0質量部をキシレン200.0質量部中に4時間かけて滴下し、キシレン還流下で重合を完了した。結着樹脂を冷却固化して粉砕した後に、固化物を溶融混練した。さらに、この樹脂を、溶融状態のまま、薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した。EXEVAの条件は表2に示す通りである。EXEVA通過後、樹脂を取り出し、粉砕し、比較用結着樹脂4を得た。
(比較用結着樹脂の製造例5)
結着樹脂の製造例17において、結着樹脂を冷却固化、溶融混練後した後に、薄膜蒸発機に導入しなかった以外は、結着樹脂の製造例17と同様にして、比較用結着樹脂5を得た。なお溶融混練後は冷却固化して粉砕した。
(比較用結着樹脂の製造例6)
不飽和ポリエステル樹脂P−1・40.0質量部と、ビニル系モノマーとして、スチレン・42.0質量部、アクリル酸ブチル・15.0質量部、マレイン酸モノブチル・3.0質量部、開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(10時間半減期温度128.4℃)・0.18質量部と、ワックス成分Aとしてワックス成分7を2.0質量部と、ワックス成分Bとしてフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)・2.0質量部とを混合した。このビニル系モノマー/ポリエステル樹脂/ワックス成分A/ワックス成分Bの混合物を120℃で10時間かけて重合後、さらに150℃に温度を上げて3時間保持して未反応のビニル系モノマーを重合させたのち、さらに180℃に温度を上げて、5時間減圧することによって、架橋反応とアルコール除去を実施し、ハイブリッド樹脂を得た。
得られたハイブリッド樹脂を冷却固化して粉砕した後に、固化物を溶融混練して、さらに、この樹脂を、溶融状態のまま、薄膜蒸発機(EXEVA EX−02型)に導入した。EXEVAの条件としては、樹脂厚さ・3mm、タンク内温度設定・175℃、攪拌回転数・250rpm、減圧度・0.9Torrとした。フィード量は、50kg/m2hとした。EXEVA通過後、樹脂を取り出し、粉砕し、ハイブリッド樹脂を得た。これを比較用結着樹脂6とする。
(比較用結着樹脂の製造例7)
結着樹脂の製造例17において、ワックス成分7を添加しなかった以外は、結着樹脂の製造例17と同様にして、比較用結着樹脂7を得た。
(トナーの製造例1)
・結着樹脂1 100質量部
・ワックス成分1 3.0質量部
・磁性体 95質量部
(粒径0.21μm、抗磁力4.8kA/m、飽和磁化83.6Am2/kg、残留磁化 5.1Am2/kg)
・荷電制御剤(T−77 保土谷化学社製) 2.0質量部
上記原材料を450rpmに設定したヘンシェルミキサーで3分間予備混合した後、130rpmに設定した二軸混練押し出し機により、混練物の出口付近における直接温度が150℃以上160℃以下となるように設定温度を調節し、溶融混練した。得られた混練物を冷却し、カッターミルで粗粉砕した後、得られた粗粉砕物を、ターボミル(ターボ工業社製)を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、トナー粒子1を得た。
トナー粒子1の100質量部に対し、疎水性シリカ微粒子(ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたBET200m2/gのシリカ微粒子をヘキサメチルジシラザンで表面処理したもの)を1.3質量部添加し、ヘンシェルミキサーで外添混合してトナー1を得た。
(トナーの製造例2乃至17、比較トナーの製造例1乃至7)
トナーの製造例1で、用いる結着樹脂、ワックス成分Aを表3のようにした以外は、トナーの製造例1と同様にしてトナー2乃至17及び比較トナー1乃至7を得た。
[実施例1乃至17、比較例1乃至7]
次に、上記のように調製されたトナー1乃至17及び比較トナー1乃至7を用いて評価を行った。評価機は磁性一成分方式のプリンターLaserJet P4515n(ヒューレットパッカード社製)を用いた。評価結果を表3に示す。
(1)45℃/95%/30日に放置後の高温高湿下での画出し
トナーを45℃/95%の環境で30日間放置をする。その後トナーを所定のプロセスカートリッジに充填した。印字率2%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、計15000枚の画出し試験を実施し、1枚目及び15000枚目での画像濃度を測定した。評価はトナー帯電性への影響がより厳しい高温高湿下(32.5℃,85%RH)と常温常湿下(25.0℃,60%RH)で行った。
(2)スリーブ融着
上記(1)で実施した計15000枚の画出し試験後のスリーブ表面を目視で観察し、トナー汚染の程度を下記の基準で評価した。評価はスリーブ融着には厳しい条件である高温高湿下(32.5℃,85%RH)での画出しで行った。
A:汚染は観察されない。
B:軽微な汚染が観察される。
C:部分的に汚染が観察されるが、画像への影響はない。
D:部分的に汚染が観察され、画像への影響が見られる。
E:著しい汚染が観察される。
(C以上であれば実使用上は全く問題無いレベルである。)
(3)ブロッキング評価
10gのトナーを100mlのポリカップに入れ、50℃で3日放置した後、目視で評価する。
A:凝集物は見られない。
B:凝集物はわずかに見られるが容易に崩れる。
C:凝集物は見られるが容易に崩れる。
D:凝集物は見られるが振れば崩れる。
E:凝集物をつかむことができ容易に崩れない。
(C以上であれば実使用上は全く問題無いレベルである。)
(4)ヒートサイクル試験後の高温高湿下での画出し
トナーのヒートサイクル試験は以下に示す通りである。
<1>25℃で1時間保持
<2>11時間かけて45℃まで直線的に温度を上げる
<3>45℃で1時間保持
<4>11時間かけて25℃まで直線的に温度を下げる
上記<1>乃至<4>までを1サイクルとして、計20サイクル行った。湿度は95%で一定とした。その後トナーを所定のプロセスカートリッジに充填した。印字率2%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、計15000枚の画出し試験を実施し、1枚目及び15000枚目での画像濃度を測定した。評価はトナー帯電性への影響がより厳しい高温高湿下(32.5℃,85%RH)と常温常湿下(25.0℃,60%RH)で行った。
(5)白モヤ
上記(4)で準備したヒートサイクル試験後のトナーを所定のプロセスカートリッジに充填した。トナーの凝集性への影響がより厳しい高温高湿下(32.5℃,85%RH)で評価を行った。評価は1枚目から30枚目まで印字率25%のハーフトーンパターンを連続で通紙し、白モヤの発生状況を確認した。
A:発生なし。
B:1枚あたり1個の白モヤが発生するが、5枚以内の通紙で消失する。
C:1枚あたり2乃至5個の白モヤが発生するが、10枚以内の通紙で消失する。
D:1枚あたり6乃至10個の白モヤが発生するが、30枚以内の通紙で消失する。
E:1枚あたり11個以上の白モヤが発生し、30枚の通紙でも消失しない。
(C以上であれば実使用上は全く問題無いレベルである。)
(6)低温定着性
定着こすり試験として、A4の複写機用普通紙(105g/m2)に単位面積あたりのトナー質量が0.5mg/cm2になるように調整し、濃度測定用の10mm×10mmの3ドット3スペース(600dpi)画像を多数有する画像を出力し、得られた定着画像を、50g/cm2の加重をかけたシルボン紙で5回摺擦し、摺擦後の画像濃度の低下率から以下に基づいて評価した。なお画像濃度の測定には、(マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、摺擦後の画像濃度の低下率を算出した。定着こすり試験による定着性は、A〜Bならば実用上問題は無い。評価は常温常湿下(25.0℃,60%RH)で行った。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上20%未満
D:20%以上