JP5651045B2 - 切断用ブレード - Google Patents
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Description
(a)QFN(quad flat non-leaded package)と称されるもののように、リードフレーム上に一括して多数の素子を実装してこれらをまとめてモールディングした後に切断することにより個片化されて製造される電子材料部品。
(b)IrDA(赤外線データ通信協会)規格の光伝送モジュール(以下、単にIrDAと略称する)のように、ガラスエポキシ樹脂製の基体に形成されたスルーホールの内周面にNi、Au、Cu等のめっきが施された基板を有し切断により個片化される電子材料部品。
このような電子材料部品の切断においては、例えばQFNではモールディング樹脂中に間隔をあけて配置されたCu等の延性の高い金属リードフレームを切断することとなるため、切断の際の薄刃砥石の送り方向や回転方向にこのリードフレーム等の金属バリが生じ易いという問題がある。
特に、ドクターブレード法を用いて成型される切断用ブレードにあっては、硬化樹脂中のウィスカー等の配列方向が一方向に定まってしまい、異方性が顕著に現れる。
加えて、前述した切断用ブレードにあっては、成型後に特定方向へ樹脂の収縮率が大きくなることに起因して、製品としての寸法精度が低下し、所望の切断性能が得られないという欠点がある。
このため、このようなフィラーが添加されたボンド部は、異方性が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後のボンド部においては、特定方向への収縮率が高くなるといった事態を回避でき、製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、バリの発生を抑制できる。
金属酸化物の結晶構造体のフィラーは、損傷され易いものが多く、例え針状部が折れる等してその形状が変わる場合であっても、三次元結晶構造のフィラーと、三次元結晶構造とは異なる形状のフィラーとの体積比が10:90〜90:10の範囲であれば、三次元結晶構造のフィラーの特徴である異方性を緩和する機能を充分発揮できる。
この場合、金属酸化物の結晶構造体のフィラーの体積パーセントが1〜40%に設定されていれば、金属酸化物の結晶構造体のうち三次元結晶構造のものもつ機能、つまり、異方性を緩和する機能を充分発揮することができ、もって、耐摩耗性並びに切断性能の向上が図れるとともに金属バリの発生も抑えることができる。
切断用ブレードの内径部が切断装置の主軸に取り付けられて上記軸線O回りに回転されつつ該軸線Oに垂直な方向に送り出されることにより、この薄刃砥粒層1の外周縁部、すなわち上記厚さと等しい極小さな幅の外周面1Aと、両側面1Bの外周側、およびこれら外周面1Aと両側面1Bとが交差する円周状の両エッジ部1Cとによって、電子部品材料を切断する。
その他、前記三次元結晶構造のフィラー4aにおける針状部4aaの先端部分が折れてなる、単なる針状部形状のフィラーもある。
また、前記酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4のうち、前記三次元結晶構造のフィラー4aと酸化亜鉛の結晶構造体からなる他の形状のフィラー(4b、4c、4d)との体積比は、10:90〜90:10の範囲に設定されている。
また、前記WCからなる粉末状のフィラー5は、平均粒径が0.1〜5μm程度であり、モース硬度がおおよそ8であって、モース硬度が5〜6程度である前記三次元結晶構造のフィラー4aに比べて高い硬度となっている。
まず、例えばフェノール樹脂を所定量秤量し、IPA溶媒を10ml加えてフェノール樹脂を溶解させる。次に、溶解させた樹脂溶液、シランカップリング剤、並びに酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4や三次元結晶構造からなるフィラー4よりも硬度が高い例えばWCからなる粉末状のフィラー5を添加し、ドクターブレード法により、例えば、厚さ0.3mmのシートを成型する。
次いで、このシートを乾燥させた後、該シートから直径70mmの円板状ブレードをくり抜き、この円板状ブレードをホットプレスにて圧縮成型する。成型条件は、熱板200℃、180℃×30分間、圧力12.7MPaである。
こうして得られる円板状ブレードを所定サイズとなるよう、外周部と内周部を切断あるいは研削加工することで所望形状の切断用ブレードを得ることができる。
このため、このようなフィラー4aが添加された樹脂結合剤相2は、異方性が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後の樹脂結合剤相2においては、ある方向への収縮率が高くなるといった事態が回避でき、製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、バリの発生を抑制できる。
仮に、樹脂結合剤相2に、酸化亜鉛の結晶構造のフィラー4のみで比較的硬度が高いWCからなる粉末状のフィラー5を有さない場合には、樹脂結合剤相2の磨耗が必要以上に進んでしまい、切断用ブレードとしての寿命が短くなってしまう。ここでは、フィラーとして、酸化亜鉛の結晶構造フィラー4の他に該結晶構造のフィラー4よりも硬度が高い粉末状のフィラーWCを用いているので、樹脂結合剤相2の磨耗が進むのを適宜抑えることができ、これによって、前述したように切断性能の向上並びにバリの発生を抑制する他、長寿命化を図ることもできる。
三次元結晶構造のフィラー4aの表面に微細な凹凸が生じており、この凹凸のうち凹所の底部には樹脂結合剤相2が侵入しにくい。しかしながら、三次元結晶構造のフィラー4aの表面がシランカップリング剤で予めコーティンされていると、三次元結晶構造のフィラー4aの表面の濡れ性が改善されて、樹脂結合剤相2と十分なじむこととなり、このため、三次元結晶構造のフィラー4aの表面の凹所の底部にまで、樹脂結合剤相2が侵入する。この結果、樹脂結合剤相2の三次元結晶構造のフィラー4aに対する保持力が高まり、三次元結晶構造のフィラー4aが樹脂結合剤相2からむやみに脱落するのを回避できる。
なお、三次元結晶構造のフィラー4aの表面はシランカップリング剤で予めコーティング処理する方法としては、公知の乾式処理法やスラリー法が採用される。
例えば、図1に示す切断用ブレードでは、薄刃砥粒層1が一つであるが、これに限られることなく、このような薄刃砥粒層1が複数あるものにも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態では、樹脂結合剤相2に添加されるフィラーとしては、必ずしも、酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4に限られることなく、酸化亜鉛以外の金属酸化物の結晶構造体を添加してもよい。また、金属酸化物の結晶構造体以外のフィラーとしても、WCからなる粉末状のフィラー5に限られることなくTiやTiN、もしくはカーボン等からなる導電性を持つ粉状体や、更にウィスカーあるいはグラスファイバ等を加えてもよい。
〈第1実施例〉
本実施例では、粉末状WCであるフィラー5の含有量を一定とし(25%)、酸化亜鉛の結晶構造体であるフィラー4の添加割合を種々変えた8種、樹脂結合剤相2中にシランカップリング剤を混入することなく酸化亜鉛の結晶構造体のフィラー4の添加割合を10%としたもの、並びに樹脂結合剤相2中にシランカップリング剤を混入することなく酸化亜鉛の結晶構造体のフィラー4の添加割合を35%としかつWC粉末状のフィラー5を含まないものの合計10種の本発明に係わる切断用ブレードを用意した。この切断ブレードは、外径58mm、内径40mm、厚さ0.3mmである。また、樹脂結合剤相2はフェノール樹脂、砥粒3は粒度♯230のダイヤモンド砥粒であって集中度は75である。この切断用ブレードにより、ドレッサープレートに溝入れ加工を実施し、摩耗試験を行った。
また、上記実施例1〜10と同じ形状であって、酸化亜鉛の結晶構造体4の添加する代わりに、SiCウィスカーやグラスファイバをそれぞれ10体積%添加したものを比較例1,2とし、これら比較例1,2の切断用ブレードを用いて実施例1〜10と同様の摩耗試験を行った。
このときの、実施例1〜10、比較例1、2の切断用ブレードの組成を下記の表1に示す。
使用サイダー東京精密製/A―WD−10A
使用ドレスプレートWA ♯200
スピンドル回転数15000min−1
送り速度100mm/s
冷却水:周方向1.2L/min、両側面0.8L/min
また、1セットごとに30本の溝入れ加工を施し、これを5セット行い、合計150本の溝入れ加工を行った。摩耗試験結果を下記の表4、表5に示す。
また、これら摩耗量を下記の表4、表5ではそれぞれグラフに表した。
これは、酸化亜鉛の結晶構造体のフィラーのうち、三次元結晶構造のフィラーの異方性緩和機能が充分発揮されたものと推測される。なお、酸化亜鉛の結晶構造体のフィラーの添加割合が30体積%以上になると、フェノール樹脂の結合力が弱まり、逆に摩耗量が増えることがわかった。
また、酸化亜鉛の結晶構造体のフィラーを有さず、代わりにSiCウィスカーやグラスファイバのフィラーを添加した比較例1,2の切断用ブレードでは、摩耗量が大きいことがわかった。
その結果を下記の表6に示す。
〈第2実施例〉
使用サイダー東京精密製/A―WD−10A
使用ドレスプレートWA ♯200
スピンドル回転数21000min−1
送り速度80mm/s
冷却水:周方向1.2L/min、両側面0.8L/min
なお、上記Cuリードフレーム12の外径dは0.3mm、隣接するCuリードフレーム12間のピッチPは0.35mmであった。
ただし、これら実施例1〜10および比較例1,2の切断用ブレードを用いた試験条件は、前述したとおりである。
また、スルーホールの長さLは0.18mm、スルーホールの内径Aは0.17mm、スルーホール内周面に施された金属めっき14の内径Bは0.04mm、フランジ状部14Aの外径Cは0.7mm、隣接するスルーホール間のピッチPは2.0mmであった。
2 樹脂結合剤相(ボンド部)
3 砥粒
4 酸化亜鉛(金属酸化物)の結晶構造体
4a 酸化亜鉛(金属酸化物)の三次元結晶構造のフィラー
5 三次元結晶構造のフィラーよりも硬度が高い粉末状のフィラー
Claims (8)
- 少なくとも1層以上の層状をなす切断用ブレードであって、
ボンド部と、
前記ボンド部中に分散配置された砥粒と、
前記ボンド部中に分散配置されたフィラーとを備え、
前記フィラーは、四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に伸びた三次元結晶構造のフィラーを有することを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1に記載の切断用ブレードにおいて、
前記フィラーは、
前記三次元結晶構造のフィラーの他に、該三次元結晶構造のフィラーよりも硬度が高い粉末状のフィラーを有する切断用ブレード。 - 請求項1または2に記載の切断用ブレードにおいて、
前記三次元結晶構造のフィラーは、金属酸化物の結晶構造体からなっている切断用ブレード。 - 請求項1または2に記載の切断用ブレードにおいて、
前記フィラーは、金属酸化物の結晶構造体からなる前記三次元結晶構造のフィラーと、前記金属酸化物の結晶構造体からなる前記三次元結晶構造とは異なる形状のフィラーとを備え、前記三次元結晶構造のフィラーと前記三次元結晶構造とは異なる形状のフィラーとの体積比が10:90〜90:10の範囲である切断用ブレード。 - 請求項3または請求項4に記載の切断用ブレードにおいて、
砥粒抜きの前記ボンド部における、前記金属酸化物の結晶構造体のフィラーの体積パーセントが1〜40%に設定されている切断用ブレード。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の切断用ブレードにおいて、
前記三次元結晶構造のフィラーは、前記針状部の長さが0.1μm〜100μmの範囲とされている切断用ブレード。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の切断用ブレードにおいて、
前記ボンド部にシランカップリング剤が混入されている切断用ブレード。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の切断用ブレードにおいて、
前記三次元結晶構造のフィラーの表面がシランカップリング剤でコーティングされている切断用ブレード。
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