JP5650559B2 - 複合成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
熱可塑性樹脂をマトリックスとした繊維強化複合材料の一般的な製造方法として含浸工程で平板を成形し、別工程で賦形を行なうコールドプレス(特許文献1)や熱可塑スタンピング成形(特許文献2)などが提案されている。
本発明の製造方法に用いる熱可塑性樹脂が未含浸状態の前駆体(以下前駆体)は、熱可塑性樹脂と強化繊維を2次元的に配置した複合体であり、熱可塑性樹脂が強化繊維中に分散はしているが含浸はしていない状態である。
前駆体を構成する強化繊維として炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維を使用することができる。これらは単独または、2種類以上を併用して使用することも可能である。特に軽量性、強度、剛性に効果の大きい炭素繊維が好ましい。
強化繊維の平均繊維長は、5mm超100mm以下である。ある程度長い強化繊維を含んで強化機能が発現できることから、好ましくは強化繊維の平均繊維長が10mm超60mm以下が好ましい。
臨界単糸数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が30Vol%以上90Vol%未満であることが、優れた機械物性を得る目的において好ましい。前駆体中には、強化繊維束(A)以外の強化繊維として、単糸の状態または臨界単糸数未満で構成される繊維束が存在する。機械物性に優れた成形体を得ようとする場合の、強化繊維束(A)の割合はより好ましくは30Vol%以上80Vol%未満である。
0.7×104/D2<N<6.0×104/D2 (2)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たすことが好ましい。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が0.7×104/D2以下の場合、高い繊維体積含有率(Vf)を得ることが困難となる。また強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が6.0×104/D2以上の場合、局部的に厚い部分が生じ、ボイドの原因となりやすい。
前駆体は、具体的には以下の工程1〜4を含む方法で、好ましく得ることができる。
1.カッターにて強化繊維をカットする工程、
2.カットされた強化繊維を連続的に管内に導入し、圧力空気を直接繊維に吹き付けることにより、繊維束をバラバラに開繊させる工程、
3.開繊させた強化繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、開繊装置下部に設けた通気性シート上に強化繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する塗布工程、
4.塗布された強化繊維および熱可塑性樹脂を通気性シート下部よりエアを吸引して繊維定着させる工程。
これらの工程により強化繊維の開繊程度をコントロールすることができる。
本発明の複合成形体の製造方法は、前駆体を、ホットプレスすることにより、熱可塑性樹脂の含浸工程と成形体の立体賦形工程を同時に行うことを特徴とする。熱可塑性樹脂と強化繊維とが特定の条件で配置されている前駆体を用いることで、ホットプレスにより熱可塑性樹脂の含浸工程と成形体の立体賦形工程を同時に行うといった本発明の製造方法を好ましく実施することができる。
前駆体は、具体的には以下の工程1〜4を含む方法で、好ましくホットプレスすることができる。
1.前駆体を熱可塑性樹脂が結晶性の場合は融点以上の温度まで、非晶性の場合はガラス転移温度以上の温度以上に加熱された金型内へセットする工程。
2.型締めをして、圧力を上げていき目標圧力まで上昇させる工程。
3.目標圧力到達後、未含浸状態の前駆体に金型の熱を伝え含浸と賦形を完了させる工程。
4.金型を熱可塑性樹脂の固化温度以下に冷却し、形状を安定化させる工程。
工程2の目標圧力まで圧力上昇に要する時間はとくに制限はないが、10秒〜60秒かけて徐々に上げていくことが好ましい。
工程3の含浸および賦形に要する時間はとくに制限はないが、60秒〜120秒が好ましい。
工程4の冷却された金型の温度は熱可塑性樹脂の固化温度以下であるが、好ましくは結晶性樹脂の場合結晶化温度−30℃以下であり、非晶性樹脂の場合はガラス転移温度−30℃以下である。上記温度以下まで金型を冷却させることで、金型から成形体を取り出すことができる。金型の冷却方法にとくに限定はなく、冷却媒体を流すなどの方法により適宜冷却すれば良い。
1)前駆体における強化繊維束の分析
強化繊維束(A)のマットの繊維全量に対する割合の求め方は、以下の通りである。
前駆体を100mm×100mmに切り出し、厚み(Ta)と重量を測定する(Wa)。
切り出したマットより、繊維束をピンセットで全て取り出し、繊維束を太さ毎に分類する。本実施例では分類は、太さ0.2mm程度単位で分類した。
分類毎に、全ての繊維束の長さ(Li)と重量(Wi)、繊維束数(I)を測定し、記録する。ピンセットにて取り出すことができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定する(Wk)。このとき、1/1000gまで測定可能な天秤を用いる。なお、特に強化繊維を炭素繊維とした場合や、繊維長が短い場合には、繊維束の重量が小さく、測定が困難になる。こういった場合には、分類した繊維束を複数本まとめて重量を測定する。
測定後、以下の計算を行う。使用している強化繊維の繊度(F)より、個々の繊維束の繊維本数(Ni)は次式により求められる。
Ni=Wi/(Li×F)。
強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)は以下の式により求める。
N=ΣNi/I
また、個々の繊維束の体積(Vi)及び、強化繊維束(A)の繊維全体に対する割合(VR)は、使用した強化繊維の繊維比重(ρ)を用いて次式により求められる。
Vi=Wi/ρ
VR=ΣVi/Va×100
ここで、Vaは切り出したマットの体積であり、Va=100×100×Ta
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、引張強度4000MPa)を使用した。炭素繊維を10mmの長さにカット、散布と同時に、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 1400dTex、融点260℃、成形時の温度におけるゼロせん断溶融粘度は530Pa・sec)を炭素繊維の供給量を100重量部に対して、マトリックス樹脂の供給量を270重量部の割合で吹き付け、炭素繊維とポリアミドが混合され、炭素繊維が二次元ランダムに配置された厚み10mm程度の前駆体を得た。炭素繊維の目付け量1000g/m2であった。
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、引張強度4000MPa)を使用した。炭素繊維を20mmの長さにカット、散布と同時に、帝人化成社製のポリカーボネート“パンライト”(登録商標)(ガラス転移温度150℃、成形時の温度におけるゼロせん断溶融粘度は680Pa・sec)を冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び100メッシュにて分級した粒子を用いた。ポリカーボネートパウダーの平均粒径は約710μmであった。そして、炭素繊維の供給量を100重量部に対して、マトリックス樹脂の供給量を270重量部の割合で吹き付け、炭素繊維と熱可塑性樹脂が混合され、炭素繊維が二次元ランダムに配置された、厚み1mm程度の前駆体を得た。炭素繊維の目付け量は、200g/m2であった。
強化繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24KS(平均繊維径7μm、引張強度4000MPa)を使用した。炭素繊維を10mmの長さにカット、散布と同時に、2mmにドライカットしたPA66繊維(旭化成せんい製 T5ナイロン 1400dTex、融点260℃、成形時の温度におけるゼロせん断溶融粘度は530Pa・sec)を炭素繊維の供給量を100重量部に対して、マトリックス樹脂の供給量を270重量部の割合で吹き付け、炭素繊維とポリアミドが混合され、炭素繊維が二次元ランダムに配置された厚み10mm程度の前駆体を得た。炭素繊維の目付け量1000g/m2であった。
2 B−B断面図
3 A−A断面図
Claims (10)
- 繊維長5mm超100mm以下の強化繊維と、繊維状および/または粒子状の熱可塑性樹脂とから構成される熱可塑性樹脂が未含浸状態の前駆体を、ホットプレスすることにより熱可塑性樹脂の含浸工程と成形体の立体賦形工程を同時に行う、強化繊維と熱可塑性樹脂とを含む複合成形体の製造方法であって、前駆体において強化繊維が実質的に二次元ランダムに配向しており、強化繊維のうち式(1)
臨界単糸数=600/D (1)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
で定義する臨界単糸数以上で構成される強化繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が30Vol%以上90Vol%未満である複合成形体の製造方法。 - 強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(2)
0.7×10 4 /D 2 <N<6.0×10 4 /D 2 (2)
(ここでDは強化繊維の平均繊維径(μm)である)
を満たす請求項1に記載の複合成形体の製造方法。 - 強化繊維が、炭素繊維および/またはガラス繊維である1または2に記載の複合成形体の製造方法。
- 前駆体において、熱可塑性樹脂の存在量は強化繊維100重量部に対し、50〜1000重量部である1〜3のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- プレス時の温度における熱可塑性樹脂のゼロせん断溶融粘度が100〜1500Pa・secの範囲にある1〜4のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- コア側および/またはキャビ側のプレス用金型がシェアエッジ構造を有し、そのシェア角が1°〜3°である1〜5のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- シェアエッジ部のクリアランスが0.05〜0.2mmのプレス用金型を用いる請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- 強化繊維束(A)として、太さ0.2mm単位で分類される異なった太さの強化繊維束(A)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、平均粒子径0.01〜1000μmの粒子状の熱可塑性樹脂である請求項1〜8のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
- 粒子状の熱可塑性樹脂が、分級されたものである請求項9に記載の複合成形体の製造方法。
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