JP5629940B2 - 関節疾患治療用の組み合わせ製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、変形性関節症などの関節疾患治療に用いることのできるヒアルロン酸と動物性ムチン型タンパク質の組み合わせ製剤に関する。
疾病や老化、またはその部分の酷使などによって、ヒト及び哺乳類動物の関節に誘起される不具合には、関節液の変性、あるいは軟骨表面に生じる損傷を呈するものが数多くある。これらは、本来持つ関節の機能、すなわち少ない摩擦でスムーズな骨格運動を実現する能力を低下させ、その結果として身体に障害や痛みなどを与える。例えば、変形性関節症(osteoarthritis:以下「OA」という)は、60歳以上の25%以上が発病すると言われている最も一般的な関節疾患の一つであり、長期間にわたり穏やかに進行する軟骨の変性(退行性変性)によって特徴づけられる。これらは、主に膝関節や股関節といった下肢荷重関節に好発し、発症には年齢と強い相関がある。ゆえに、高齢者における疼痛や関節の機能障害の主な要因の一つである。
高齢者のADL(Activity of daily life)を高く維持するためには、骨軟骨の機能維持は重要な要素で、高齢化社会において国民の社会活動や経済活動を促進する社会的要請から産業上の要請でもある。発症に寄与する因子としては、OAの家族歴、外傷または手術による関節に対する以前の損傷、及び関節の年齢(すなわち、関節のアーティキュレイティング(articulating)表面の摩耗及び裂傷)が挙げられる。OAは、上記のように高齢者において非常に一般的であるが、骨折、前十字靱帯損傷、半月板損傷といった外傷後や、血友病などの基礎疾患を有する場合では子供にも同様に発症し得る。現在、OAの薬物治療は、おもに疼痛緩和を目的としており、全身性の鎮痛薬治療、局所の関節内治療から成り立っている。全身性の鎮痛薬治療として、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)が広く使われている[Arthritis Rheum 43:1905−1915(2000)]。しかしながら、病態の進行を加速させる可能性があることを述べている論文も散見される[Huskisson,E.C.et al,J.Rheumatol 22:1941−1946(1995);Rashad,S.et al.,Lancet 2:519−522(1989);Dougados,M.et al.,Ann.Rheum.Dis.55:356−362(1996)]。一方、局所の関節内治療としてはヒアルロン酸注入療法が広く知られている。
ヒアルロン酸注入療法のように、外部からの薬剤の添加により滑液の粘度を増加させ、関節が物理的に損傷する原因を緩和するという方法は、粘度補充療法(viscosupplementation)と呼ばれている(特許文献1)。粘度補充療法は、上記OAの治療のみならず、老化や疾病で滑液の粘度が低下することで軟骨同士の相互作用が頻繁に起きて表層性欠損が生じていると考えられる場合に広く用いられている。粘度補充療法には、ヒアルロン酸やその誘導体を用いることが多く、関節液の粘度を増加させ、関節軟骨の破壊を抑制する効果が認められている(非特許文献1〜4)。また、ヒアルロン酸の抗炎症作用も疾病の緩和に効果があると言われている(非特許文献5)。しかし、ヒアルロン酸を用いた粘度補充療法は、多くの場合目立った表層性欠損の修復作用を得ることができないので、一時的な緩和治療にとどまっている。また投与されたヒアルロン酸も数週間で代謝消費されてしまうので、効果を維持し、症状を軽減させるためには本治療を繰り返し用いなくてはならない。
一方、関節液の粘度ではなく、滑膜付近の境界潤滑物質を補充する、潤滑補充療法(tribosupplementation)という治療法も提案されており、たとえばムチン型糖タンパク質であるトリボネクチンを直接投与する場合には、この潤滑補充効果を期待しているものである(特許文献1)。また、近年、関節液内と関節表面からトリボネクチンの範囲に含まれるルブリシンと呼ばれるムチン領域を有する糖タンパク質が同定され、これらも関節の潤滑補充に寄与することが報告されている(非特許文献6、7)。ルブリシンは、タンパク質骨格に0結合型糖鎖が接続したムチン型配列領域を挟んで両端に非ムチン型配列を持っていることを特徴としており、この非ムチン型配列が軟骨表面に親和性を持って相互作用し、ルブリシンを軟骨表面に定着させるという説が提唱されている(非特許文献8)。ルブリシンが軟骨表面に定着すると、そのムチン領域は糖鎖を毛ブラシのように外部に出して摩擦を軽減する役割、また、非ムチン領域は軟骨表面への定着を促進するという役割、という分業が行われていると考えられ、その形状からブラッシングモデルと呼ばれている。一方、前記のトリボネクチンについては、そのようなメカニズムは提唱されていないが、トリボネクチンもまた摩擦を軽減するムチン型配列と、非ムチン領域を有していることは共通しており、同様にムチン領域が軟骨組織表面に密に(おそらくフィルム状に)吸着することにより、摩擦を低減する効果が得られているものと考えられる。従って、これらの2種のムチン型糖タンパク質の例にあるように、摩擦軽減のためのムチン型糖鎖部分と軟骨表面に吸着を果たす非ムチン領域が必須といえる(非特許文献8)。
このように、ムチン型糖タンパク質は、潤滑補充を目的として関節組織に注入して関節疾患の治療への利用が期待されるところである。しかしながら、ムチン型糖タンパク質を製造するにあたり、その骨格ペプチド質部分は合成できても、O−グリコシド結合により糖鎖を結合させる(O−グリコシレーションする)ことは生体内でも翻訳後修飾反応によって行われている合成経路であり、容易に制御することのできない生体反応であるため、糖鎖部分を結合させて全く同じ糖タンパク質を人工的に作成することは非常に困難である。特殊な細胞系による発現や、酵素反応、精密な有機化学反応において、O−グリコシド結合を有した糖鎖を結合させることは不可能ではないものの、十分な密度や変換率で糖鎖を導入することなどは不可能で、もし実現できたとしても莫大なコストがかかると考えられる。従ってムチン型糖タンパク質はその供給が十分確保できないため、それを用いた上記の治療法は実際上利用することができず、かつ普及浸透することも難しい。
これに対し、最近、ムチン型糖タンパク質を、簡略化した化合物を人工的に合成する試みが行われており、例えば、ルブリシンのムチン配列部分を短くしたムチン型糖タンパク質を合成し、関節表面に定着したという事実が報告されているが、治療効果が確認されたわけではない(非特許文献9、10)。
ムチン型糖タンパク質は粘液の成分として動植物全般に広く分布する。植物性ムチン型糖タンパク質は長い糖鎖に短いペプチドが結合している構造を有しているものが多いのに対し、動物性ムチン型糖タンパク質はペプチド鎖が長大であるという特徴があり、動物の種類によって、コアペプチドの配列、糖鎖の構造、非ムチン型ドメインなどは様々である。これまで種々の動物性ムチン型糖タンパク質(動物性ムチン)が知られており、主にはウシなどの家畜の消化液や唾液由来のムチンであるが、カタツムリ、ヒトデ、イカにもその存在が報告されている。しかしながら、これらの動物性ムチンはいずれも生産量が限られているために大量に供給することができない、純度が低いために安全性に乏しい、また構造解析(ペプチド鎖の配列、糖鎖の配列解析)が十分に行われていない、などの種々の問題がある。これに対し、近年クラゲから採取したムチン(クニウムチン)は、構造が簡単で、ほぼ純粋にムチン配列領域から構成されていること、安価で大量生産が可能であることを特徴とするものであり、その有効利用が期待される(非特許文献11、特許文献2)。
上記のヒアルロン酸、ムチン以外にも、組織の成長因子を投与するという手法も提案されている(特許文献3、特許文献4、非特許文献12)。しかしながら、いずれも従来の療法と同様に、損傷の進行を抑止したり、痛みを軽減するような効果はあるものの、損傷の自己修復作用を促進するような効果は得られていない。
特表2003−500022 WO 2007/020889 特開2004−230184 特開2005−144131 Reijman,M.et al.,Arthritis Rheum 52:3137−3142(2005) Petrella,R.J.,DiSilvestro,M.D.,Arch Intern Med.162:292−298(2002) Dougados,M.et al,Osteoarthritis Cartilage 1:97−103(1993) Salk,R.S.et al.,J.Bone Joint Surg.Am.88:295−302(2006) Goto M.,Clin.Exp.Rheumatol.19:327−383(2001) Rhee D.K.et al.,J.Clin.Invest.115:622−631(2005) Jay,G.D.et al.,Proc Natl Acad.Sci.104:6194−6199(2007) Chang D.P.et al.,Langmuir 24:1183−1193(2008) Flannery,C.R.et al.,Osteoarthritis and Cartilage,15,S19(2008) Rivers−Bermudez,M.A.et al.,Osteoarthritis and Cartilage,15,S43(2008) Masuda A.et al.,J.Nat.Prod.70(7):1089−1092(2007) Davidson,E.N.B.et al.,Arthritis Research & Therapy9:R102(2007)
上記のとおり、変形性関節症などの関節疾患の治療または症状緩和を目的として種々の方法が提案されているものの、粘度補充療法は、それ単独では関節軟骨の修復効果を持たず、また、潤滑補充療法は、それに用いることのできる構造を有したムチン型糖タンパク質を人工的に大量生産することが現時点では困難であるので、実際の治療に用いることができない。
従って、本発明の課題は、従来の治療法では達成できなかった関節軟骨の修復及び再生を可能にし、変形性関節症などの関節疾患の治療に有効な安全かつ安価な薬剤を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決すべき鋭意研究を重ねた結果、従来から関節の粘度補充療法に用いられてきたヒアルロン酸に加えて、動物性ムチン型糖タンパク質を併用すると、これまでの治療法では得られなかった関節軟骨の修復及び再生効果が相乗的に誘起されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 関節疾患の治療においてヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質を同時に、別々に、又は順次に投与するための組み合わせ製剤。
(2) 動物性ムチン型糖タンパク質が、その全長アミノ酸配列の95%以上がムチン領域で構成されている、(1)に記載の組み合わせ製剤。
(3) 動物性ムチン型糖タンパク質が、下記式(I):
Val−Xaa−Glu−Thr−Thr−Ala−Ala−Pro (I)
(式中、XaaはVal又はIleである。)
で示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位を3〜2000回含む繰り返し構造を有し、該繰り返し構造中の全Thr残基のうち50%以上のThr残基に対して糖鎖が結合していることを特徴とする、(1)に記載の組み合わせ製剤。
(4) 動物性ムチン型糖タンパク質がクラゲからの抽出物である、(1)に記載の組み合わせ製剤。
(5) ヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質が異なるまたは同一の製剤に含まれていることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の組み合わせ製剤。
(6) 注射剤である、(1)〜(5)のいずれかに記載の組み合わせ製剤。
(7) 関節疾患の治療が、関節軟骨欠損の修復及び再生である、(1)〜(6)のいずれかに記載の組み合わせ製剤。
(8) ヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質とを組み合わせて投与することを特徴とする、関節疾患の治療方法。
(9) 動物性ムチン型糖タンパク質が、その全長アミノ酸配列の95%以上がムチン領域で構成されている、(8)に記載の方法。
(10) 動物性ムチン型糖タンパク質が、下記式(I):
Val−Xaa−Glu−Thr−Thr−Ala−Ala−Pro (I)
(式中、XaaはVal又はIleである。)
で示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位を3〜2000回含む繰り返し構造を有し、該繰り返し構造中の全Thr残基のうち50%以上のThr残基に対して糖鎖が結合していることを特徴とする、(8)に記載の方法。
(11) 動物性ムチン型糖タンパク質がクラゲからの抽出物である、(8)に記載の方法。
(12) 関節疾患の治療が、関節軟骨欠損の修復及び再生である、(8)〜(11)のいずれかに記載の方法。
発明の効果
本発明のヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質からなる組み合わせ製剤によれば、自己治癒能力に乏しく、一度損傷すると修復及び再生の可能性はほとんどないとされていた関節軟骨の修復及び再生が可能となり、粘度補充や潤滑補充を目的とした従来の関節症治療剤とは異なった新たなかつ相乗的な治療効果が得られる。また、本発明の組み合わせ製剤に含まれる動物性ムチン型糖タンパク質は、糖鎖が短く構成糖の種類も少なくシアル酸を殆ど含まないこと、ルブリシンやトリボネクチンに見られるような非ムチン領域を持たないことから、免疫やアレルギーなどの生体反応が比較的穏やかであるため、安全性に優れる。
図1は、ムチン型糖タンパク質を投与した正常な膝関節の軟骨組織の肉眼的所見を示す。
図2は、ムチン型糖タンパク質を投与した正常な膝関節の軟骨組織のH−E染色像及びトルイジンブルー(Toluidine−Blue)染色像を示す。
図3は、前十字靭帯損傷OAモデルへの薬剤投与スケジュールを示す。
図4は、所定の薬剤投与を行った前十字靭帯損傷OAモデル(術後10週目)における膝関節部大腿骨の肉眼的所見を示す(A群:生理食塩水(対照)群、B群:ヒアルロン酸単独投与群、C1群:エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群、C2群:ミズクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群、D1群:エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群、D2群:ミズクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群)。
図5は、所定の薬剤投与を行った前十字靭帯損傷OAモデル(術後10週目)における膝関節部大腿骨のsafranin−O染色像を示す(A群:生理食塩水(対照)群、B群:ヒアルロン酸単独投与群、C群:クラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群、D群:クラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群)。
図6は、所定の薬剤投与を行った前十字靭帯損傷OAモデル(術後10週目)における軟骨変性の程度をOAスコアで評価した結果を示す(A群:生理食塩水(対照)群、B群:ヒアルロン酸単独投与群、C1群:エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群、C2群:ミズクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群、D1群:エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群、D2群:ミズクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群。コラムと縦線:各群の平均値と標準偏差)。
本願は、2009年1月29日に出願された日本国特許出願2009−018719号の優先権を主張するものであり、該特許出願の明細書に記載される内容を包含する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、関節疾患の治療においてヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質を同時に、別々に、又は順次に投与するための組み合わせ製剤に関する。
本発明に用いるヒアルロン酸は、通常の関節内粘度補充療法に用いられるヒアルロン酸であればその起源や製法は問わないが、分子量は、約50万〜2000万の範囲内のものが好ましく、約80万〜200万の範囲内のものがより好ましい。また、本発明にいうヒアルロン酸は、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩をも包含する。
本発明においてヒアルロン酸と組み合わせて用いる動物性ムチン型糖タンパク質は、実質的にムチン領域で構成されており、ルブルシン、トリボネクチンに見られるような非ムチン領域を持たないか、或いは非ムチン領域がごくわずかであるものが好ましい。
上記の「実質的にムチン領域で構成されている」とは、具体的には、その全長アミノ酸配列の95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは100%がムチン領域で構成されていることをいう。ここで、「ムチン型糖タンパク質」(ムチン)とは、粘液(Mucus)の主成分である糖タンパク質で、アミノ酸のつながったタンパク質(ペプチド鎖)のトレオニン(Thr)及び/又はセリン(Ser)にO−グリコシド結合で糖鎖(ムチン型糖鎖)が枝状に結合した高分子化合物をいう。また、上記の「ムチン領域」とは、ムチン型糖鎖が密に存在する領域であり、ムチン型糖鎖が結合したアミノ酸残基を含む数個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列の繰り返し構造(ムチン型配列)を有する領域をいう。例えば、下記に示すような10残基程度のアミノ酸配列の連続した繰り返し配列を有するムチン型糖タンパク質の場合、該ムチン型糖タンパク質を構成する全アミノ酸配列中からランダムに10残基程度からなるアミノ酸配列を選択した際に、該10残基程度のアミノ酸残基中、少なくとも1つのアミノ酸残基にムチン型糖鎖が結合していることを確認することにより、該領域はムチン領域であると判断することができる。また、上記の「非ムチン領域」とは「ムチン領域」以外の領域、すなわちムチン型糖鎖がないか或いは極端に少ない領域であり、ムチン型糖鎖が結合していないアミノ酸残基からなるアミノ酸配列(非ムチン型配列)を有する領域をいう。例えば、下記に示すような10残基程度のアミノ酸配列の連続した繰り返し配列を有するムチン型糖タンパク質の場合、該ムチン型糖タンパク質を構成する全アミノ酸配列中からランダムに10残基程度からなるアミノ酸配列を選択した際に、該10残基程度のアミノ酸配列中の、いずれのアミノ酸残基にもムチン型糖鎖が結合していないことを確認することにより、該領域は非ムチン領域であると判断することができる。
本発明における動物性ムチン型糖タンパク質において、アミノ酸残基に結合するムチン型糖鎖の糖鎖構造及び構成については特に限定はないが、糖鎖が短く(1糖もしくは2糖からなる短い糖鎖)、構成糖の種類が少ないことが好ましい。また、糖鎖が結合するアミノ酸残基の種類としても特に限定されるものではないが、トレオニン残基(Thr)及び/又はセリン残基(Ser)に糖鎖が結合していることが好ましい。
このような動物性ムチン型糖タンパク質として、タンデムリピートと呼ばれる10残基程度のアミノ酸配列の連続した繰り返し配列を有するムチン型糖タンパク質、好適には、WO 2007/020889に記載の下記式(I)(配列番号1):
Val−Xaa−Glu−Thr−Thr−Ala−Ala−Pro (I)
(式中、XaaはVal又はIleである。)
で示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位を3回以上含む繰り返し構造を有するムチン型糖タンパク質が挙げられる。上記単位の繰り返し回数は、3〜2000回、好ましくは3〜700回である。当該ムチン型糖タンパク質の分子量は10〜100kDa程度にピークを持つ広い分布をしているが、本発明においてはいずれの分子量のものを用いてもよい。
上記の繰り返し単位は、直接結合してもよいし、又はリンカーを介して結合してもよい。リンカーは、限定されるものではないが、例えばシステインを用いたS−S結合などが挙げられる。
また、上記式(I)の繰り返し単位を含む繰り返し構造を有する当該動物性ムチン型糖タンパク質において、糖鎖が結合しているThr残基としては、前記繰り返し構造中の全Thr残基の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
なお、本発明における動物性ムチン型糖タンパク質において、糖鎖を構成する単糖は、一般的なムチン型糖タンパク質において見出されている単糖であれば特に限定されるものではなく、例えば、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、N−アセチルグルコサミン、シアル酸、アラビノース、フコースなどが挙げられる。特に、N−アセチルガラクトサミン及び/又はガラクトースから構成される糖鎖であることが好ましい。具体的には、上記の繰り返し単位におけるトレオニン残基(Thr)に、N−アセチルガラクトサミン及びガラクトースが結合してThr−GalNAc−Galの構造をとるか、N−アセチルガラクトサミンのみが結合してThr−GalNAcの構造をとることが好ましい。
また、本発明における動物性ムチン型糖タンパク質として、クラゲからの抽出物を用いてもよい。クラゲとしては、ヒトや動物に対する安全性が確認されているクラゲであることが好ましく、例えば、ミズクラゲ、エチゼンクラゲ、ビゼンクラゲなどが挙げられる。また、当該ムチン型糖タンパク質が抽出されるクラゲの部位は特に限定されるものではなく、例えば、表皮、口腕、胃体部、体液など、また凍結保存や常温による保存において生じた液体成分を用いることができる。これらのクラゲの部位を材料として当該ムチン型糖タンパク質を含む抽出物を得る方法、ならびに得られた抽出物を液体クロマトグラフィーなどのタンパク質の精製に通常用いられる手段によって精製する方法は、WO 2007/020889の記載に従えばよい。
本発明において用いるクラゲ抽出物は、上記の動物性ムチン型糖タンパク質を90%以上含むように高度に精製されたものが好ましいが、コスト低減と効率性の観点から、50%程度含む粗精製物(粗精製ムチン)であってもよい。かかる粗精製物としては、例えば、上記公報に記載の方法に従って得られる精製処理直前のクラゲ抽出物を用いることができる。
本発明の組み合わせ製剤への使用に際し、上記の動物性ムチン型糖タンパク質及びこれを含むクラゲ抽出物(以下、これらを「ムチン成分」という)は、あらかじめエンドトキシンを含む病原性成分、抗原性成分、アレルギー源性成分を除去あるいは低減する処理をしておくことが必要である。
本発明の組み合わせ製剤は、ヒアルロン酸を含む製剤とムチン成分を含む製剤の別個の製剤から構成されていてもよく、ヒアルロン酸とムチン成分を混合して含む単一の製剤から構成されていてもよい。組み合わせ製剤の剤型としては、患部、例えば関節軟骨欠損部分に直接注入可能な注射剤であることが好ましい。この場合、ヒアルロン酸とムチン成分をそれぞれ適当な溶媒に溶解した別個の注射剤としてもよく、また両者を適当な溶媒に混合溶解した単一の注射剤としてもよい。注射剤の種類は、水性注射剤、水性懸濁注射剤が好ましい。ここで用いる溶媒としては、通常注射剤に使用される生理食塩水、緩衝液、注射用水のいずれであってもよい。水性注射剤、水性懸濁注射剤の調製は、ヒアルロン酸またはムチン成分、それらの両方を上記溶媒に必要に応じて加熱しながら溶解または懸濁させ、滅菌して注射剤容器に充填密封することにより行う。また、注射剤には、必要に応じて懸濁化剤、安定剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、増粘剤、等張化剤、水溶性または水膨潤性高分子、pH調整剤などを添加することもできる。
ヒアルロン酸を上記の溶媒に溶解してヒアルロン酸を含む製剤を調製する場合、ヒアルロン酸の濃度は、臨床応用でのハンドリングの容易な濃度を選択すればよく、例えば、0.1〜5重量パーセント、好ましくは0.2〜2重量パーセントとする。
また、ムチン成分を上記の溶媒に溶解してムチン成分を含む製剤を調製する場合、ムチン成分の濃度は、同様に臨床応用でのハンドリングの容易な濃度を選択すればよく、例えば、ムチン量として0.001〜20重量パーセント、好ましくは0.01〜1重量パーセントとする。
ヒアルロン酸とムチン成分を混合して含む単一の製剤を調製する場合は、ヒアルロン酸とムチン成分をそれぞれ上記の溶媒に溶解した液を、適当な量比(例えば1:1)で混和することによって調製する。従って、最終的に調製される組み合わせ製剤中のヒアルロン酸の含量は0.1〜1重量パーセント、ムチン成分の含量は0.005〜1重量パーセントとなる。混和は、数時間から十数時間程度ゆるやかに攪拌することによって行うことが好ましい。
本発明の組み合わせ製剤の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象の年齢、体重、疾患の種類や症状、投与方法、投与期間などにより適宜選択することができる。例えば、変形性関節症の患者(成人、体重約60kg)の場合、ヒアルロン酸及びムチン成分として、それぞれ1回約5〜100mg、好ましくは約10〜50mgを1週間毎に関節内へ連続投与する。また、本発明の組み合わせ製剤中のヒアルロン酸及びムチン成分はともに一定期間内の分解や代謝によりその成分が失われるので、一定期間、例えば1週間から10日の間隔で数回以上継続して投与することが好ましい。一般的に1週間で患者により10%〜50%の成分が代謝消失することが予想されるので、例えば1週間おきに投与することを推奨する。
本発明の組み合わせ製剤の投与の方法は、ヒアルロン酸とムチン成分を実質上同時に投与する方法であればよく、例えば、前記のヒアルロン酸を含む製剤とムチン成分を含む製剤を、投与対象に対して完全に同時に投与してもよいし、短時間(好ましくは数分以内)に連続的に投与してもよい。さらに効果を最大限に高めるためには、ヒアルロン酸とムチン成分をあらかじめよく混和した製剤を投与することが好ましい。従って、本発明の組み合わせ製剤の投与形態には、例えば、(a)ヒアルロン酸とムチン成分とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(b)ヒアルロン酸とムチン成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(c)ヒアルロン酸とムチン成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与(例えば、ヒアルロン酸とムチン成分の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(d)ヒアルロン酸とムチン成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(e)ヒアルロン酸とムチン成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与態様が含まれる。
本発明の組み合わせ製剤による治療は、注入治療と切開手術等開放系での治療の両方を含む。投与は、局所投与が好ましく、例えば、損傷が起こっていると思われる膝関節、股関節、足関節、肘関節、顎関節、肩関節(肩関節腔、肩峰下滑液包、上腕二頭筋腱腱鞘)などの関節腔内また関節液内に注入する。
本発明の組み合わせ製剤により投与されたヒアルロン酸とムチン成分は、協同して軟骨生成促進作用、軟骨細胞増殖促進作用、軟骨細胞分化促進作用、軟骨基質産生促進作用、軟骨保護作用を発揮する。従って、本発明の組み合わせ製剤を哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対して投与することにより、上記作用に基づいて、関節疾患によって障害または欠損を受けた軟骨組織を機能的かつ生理学的に、適切な組織に修復及び再生することができる。本発明の組み合わせ製剤は、関節疾患、特には、関節軟骨の退化、変性、変形その他の異常に関連する疾患、例えば、変形性関節症、関節リウマチ、肩関節周囲炎、顎関節症などの治療、あるいは軟骨細胞移植等の再生医療実施時に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(参考例)クラゲ由来の粗精製ムチンの調製
後記実施例で用いるクラゲ(ミズクラゲ、エチゼンクラゲ)由来の抽出物は以下の方法で調製した。冷凍状態にあるクラゲ個体を解凍後、水洗し、固形物と液体を遠心分離器で分離した。液体を除去して、残った固形部分をミキサーで5mm〜1cm四方程度の断片に切断し、水を加えて4℃で振とう抽出を行った。次いで4℃のまま10000gで15分間遠心分離した後、上澄みの抽出液を採取し、固形分を除去した。抽出液を攪拌しながら3倍容のエタノールを投入した後、冷蔵庫内に静置した。一晩静置した後、4℃のまま10000gで、15分間遠心分離を行い、生じたゲル状の沈殿物を採取し、上澄みを除去した。さらに、採取した沈殿物を少量の水に溶解し、4℃のまま10000gで、15分間遠心分離を行った。遠心分離後の上澄みを分離し、透析処理により精製し、凍結乾燥したものを粗精製ムチンとして得た。
正常な膝関節内への動物性ムチン型糖タンパク質投与による関節軟骨の変化、炎症の有無の確認
実験動物(JWウサギ3kg)の正常な膝関節内に、動物性ムチン型糖タンパク質を投与した。動物性ムチン型糖タンパク質として、上記参考例で得られたミズクラゲ由来ムチン(qniumucin)抽出物、エチゼンクラゲ由来ムチン(qniumucin)抽出物を用いた。上記クラゲ由来ムチン抽出物(粗精製ムチン)の生理食塩水溶液(濃度0.1mg/mL,0.5mg/mL,1.0mg/mL)を調製し、これを投与した。短期の影響を調べるために、投与前、投与後1日目、投与後4日目の血液データ(WBC,CRP)を測定し、外観を観察した。下記表1に示すようにWBC、CRPともに大きな変化が見られず、膝関節の外観も異常がなかった。
また、長期の効果を調べるために4週間後に外観と関節内を肉眼的に観察したところ、外観には変化がなく、関節内も関節液の貯留は認められず、関節軟骨は正常に保たれていた。また明らかな滑膜の増生も認められなかった(図1)。関節軟骨をH−E染色及びトルイジンブルー(Toluidine−Blue)染色によって組織学的に観察したところ、軟骨組織に変化は見られなかった(図2)。
人工的に損傷を起こした膝関節内への動物性ムチン型糖タンパク質とヒアルロン酸の併用投与による効果の確認
1.実験材料と方法
(1)試薬
動物性ムチン型糖タンパク質として、参考例で得られたミズクラゲ由来ムチン(qniumucin)抽出物、エチゼンクラゲ由来ムチン(qniumucin)抽出物を濃度1mg/1mLで生理食塩水に溶解したものを用いた。なお、用いたクラゲ由来ムチン抽出物(粗精製ムチン)のエンドトキシン量は10EU/ml以下であることをEndosafe−PTS(エンドセーフ社製、Charles River Laboratories Japan Inc.Kanagawa,Japan)による簡易測定で事前に確認した。また、ヒアルロン酸として、治療用ヒアルロン酸水溶液(科研製薬 Kaken Pharmaceutical Co.Ltd.製品名アルツ1wt%,ヒアルロン酸の平均分子量は約80万、濃度は25mg/25mL)を用いた。
(2)動物
日本白色家兎は、体重3kgの雌を東京実験動物より購入した。家兎はFRP製ゲージ(W450×H450×D900mm)に個別に収容して飼育した。
(3)変形性関節症(Osteoarthrities:OA)モデル
OAモデルとして、膝前十字靱帯損傷(ACL−T)モデル[Moskowitz R.W.et al.,Arthritis Rheum 16,pp.397−405(1973);Shapiro,F.Glimcher,M.J.,Clin.Orthop.147,pp.287−95(1980);Korkala O.et al.,Acta Orthop Scand 55,pp.273−277(1984);Messner,K.,Clin Biomech 9,pp.37−43(1994)]を作製した。イソフルラン(フォーレン、ABBOTT JAPAN Co.,LTD.Tokyo,Japan)の吸入麻酔下で、無菌的にウサギの両側膝蓋骨内側に約3cmの切開を加え、膝蓋骨と膝蓋腱を露出させた後、これらの内側から関節包を切開した。さらに、膝関節伸展位で膝蓋骨を外側に脱臼させ、膝関節を屈曲し前十字靱帯を直視下に切離した。その後、膝蓋骨を整復し、皮下筋層と皮膚をそれぞれナイロン糸で縫合した。
両側膝関節に前十字靱帯切除術を受けたウサギを、無作為に6つの群に分けた(下記表2)。対照群(A群)には、生理食塩水を関節内投与した。ヒアルロン酸単独投与群(B群)には、ヒアルロン酸のみを関節内投与した。エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群(C1群)には、エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物と生理食塩水との混合液を関節内投与した。ミズクラゲ由来ムチン抽出物の単独投与群(C2群)には、ミズクラゲ由来ムチン抽出物と生理食塩水との混合液を関節内投与した。エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群(D1群)には、エチゼンクラゲ由来ムチン抽出物とヒアルロン酸との混合液を関節内投与した。ミズクラゲ由来ムチン抽出物+ヒアルロン酸の併用投与群(D2群)には、ミズクラゲ由来ムチン抽出物とヒアルロン酸との混合液を関節内投与した。投与量は1回あたり計1mlとした。A群には、生理食塩水1mlを投与した。B群には、ヒアルロン酸0.5mlと生理食塩水0.5mlとの混合液を投与した。C1,2群には、各クラゲ由来ムチン抽出物0.5mlと生理食塩水0.5mlとの混合液を投与した。D1,2群には、各クラゲ由来ムチン抽出物0.5mlとヒアルロン酸0.5mlとの混合液を投与した。
前十字靱帯切除術後、4週目から関節内投与を、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目と計5回行った(図3)。関節内投与は、イソフルランの吸入麻酔下に、ウサギ膝関節の膝蓋骨外側上縁から26G針の注射器(TERUMO CORPORATION.Tokyo,Japan)を用いて行った。さらに前十字靱帯切除術後10週目に、ペントバルビタール塩(ネンブタール、Dainippon Sumitomo Pharma Co.,Ltd.Osaka,Japan)を用いて犠牲死した。
(4)関節軟骨の肉眼的評価と組織学的評価
術後10週目に、ウサギを犠牲死直後に大腿骨膝関節部を確認した。ウサギ犠牲死後、両側膝関節部大腿骨を摘出し、4%中性緩衝ホルマリン液(pH7.4)にて固定した。固定したサンプルは、10%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(pH7.4)で脱灰し、パラフィンで包埋した。大腿骨顆部の矢状面でパラフィン切片を作製し、safranin−O染色を行った。
軟骨変性の病理組織学的評価は、Osteoarthritis cartilage histopathology:grading and staging[Pritzker,K.P.et al.,Osteoarthritis Cartilage.14,pp.13−29(2006)]を用いて行った。評価は、下記式によって算出したOA スコア(OA score)で数値化した。
OA スコア(1〜24)=軟骨変性の最も強い部位(grade1〜6)×変性範囲(stage1〜4)
2.結果
(1)肉眼的所見
A群、B群、C1群、C2群、D1群、D2群の肉眼的観察結果を図4に示す。A群では、内外側ともに軟骨下骨に至る高度の軟骨欠損が認められ、欠損は軟骨下骨に至っており、範囲は荷重面全域にわたっていた。B群では、内外側ともに軟骨表面の不整像が認められ、一部に軟骨下骨に至る軟骨欠損像が認められた。C1,2群においても、A群同様、内外側に軟骨下骨に至る軟骨欠損が認められ、欠損範囲にも差異は認められなかった。D群では、内側に軟骨表面の不整像が認められたが、軟骨下骨の露出はなく、範囲もわずかであった。D群(ヒアルロン酸とムチン併用)をB群(ヒアルロン酸単独)と比較すると、D群ではB群に比べ軟骨欠損が軽微であった。クラゲの種類における差異はC,D群ともに認められなかった。
(2)組織学的検討
A群、B群、C群、D群のsafranin−O染色像を図5に示す。A群は軟骨下骨の露出が認められ、軟骨欠損は軟骨下骨に達していた。B群では、軟骨の亀裂は深層に達し、tide markより上層で染色性の低下が認められた。細胞配列は保たれておらず、細胞の減少も認められた。C群では、わずかに軟骨層の残存が認められたが、染色性はなく、軟骨細胞は消失していた。D群では、軟骨層の剥離が認められたが、亀裂はおおむね中間層までで、B群と比較して明らかに亀裂は浅かった。細胞配列も比較的保たれ、染色性の低下もB群に比べ軽度であった。肉眼的所見と同様にクラゲの種類による差異はなかった。
A群、B群、C1群、C2群、D1群、D2群について軟骨変性の程度を示すOA スコアの平均値を図6に示す。OA スコアの平均値は、A群22.00±4.00、B群11.17±4.65、C1群18.67±1.15、C2群18.00±0.00、D1群4.33±4.16、D2群7.00±2.65であった。A群とC群との間に有意差はなく、A群、C群とB群との間、B群とD群との間、C群とD群間に有意差(*:P<0.05)が認められた。クラゲの種類における差異はC,D群ともに認められなかった。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書に組み入れるものとする。
本発明は、関節疾患の治療及び緩和、関節軟骨再生のための医薬製造分野において利用できる。
[配列表]

Claims (5)

  1. 関節疾患の治療においてヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質を同時に、別々に、又は順次に投与するための組み合わせ製剤であって、該動物性ムチン型糖タンパク質が、下記式(I):
    Val−Xaa−Glu−Thr−Thr−Ala−Ala−Pro (I)
    (式中、XaaはVal又はIleである。)
    で示されるアミノ酸配列からなる繰り返し単位を3〜2000回含む繰り返し構造を有し、該繰り返し構造中の全Thr残基のうち50%以上のThr残基に対して糖鎖が結合していることを特徴とする、上記組み合わせ製剤
  2. 動物性ムチン型糖タンパク質がクラゲからの抽出物である、請求項1に記載の組み合わせ製剤。
  3. ヒアルロン酸と動物性ムチン型糖タンパク質が異なるまたは同一の製剤に含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載の組み合わせ製剤。
  4. 注射剤である、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ製剤。
  5. 関節疾患の治療が、関節軟骨の修復及び再生である、請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ製剤。
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