以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ナビゲーション装置・速度Vの補正を行わない例)
2.第2の実施の形態(ナビゲーション装置・補正係数により速度Vを補正する例)
3.第3の実施の形態(ナビゲーション装置・速度モデルを用いて速度Vを補正する例)
4.他の実施の形態
<1.第1の実施の形態>
[1−1.基本原理]
本発明においてはナビゲーション装置として携帯型ナビゲーション装置(以下、これをPND(Personal Navigation Device)とも呼ぶ)を用い、そのPNDにより移動体としての車両の速度及び現在位置を算出する基本原理について説明する。
[1−1−1.速度算出原理]
実際上、移動面としての道路を走行中の車両は、平らな道路を走行することが殆どなく、図1(A)に示すような全体として凹状の道路、及び図1(B)に示すような全体として凸状の道路を走行するのが実状である。
ここで車両の座標系は、当該車両の前後方向をX軸、当該X軸に直交した水平方向をY軸、上下方向をZ軸によって表される。
この車両の例えばダッシュボード上に載置されたPNDは、車両が凹状の道路(図1(A))を走行したとき、当該PNDに設けられた3軸加速度センサによって、Z軸に沿った下方向の加速度αzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
またPNDは、当該PNDに設けられたY軸ジャイロセンサによって進行方向に直交したY軸周りの角速度(以下、これをピッチレートとも呼ぶ)ωyを50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
ここでPNDでは、Z軸に沿った下方向の加速度αzを正と定義し、また図1(A)に示すような凹状の路面に沿って形成される仮想上の円を進行方向に対して上向きに縦回転する際のピッチレートωyを正と定義している。
このPNDでは、3軸加速度センサによって検出した加速度αz及びY軸ジャイロセンサによって検出したピッチレートωyを用い、次式
によって進行方向の速度Vを1秒間当たり50回、算出し得るようになされている。
またPNDは、車両が凸状の道路(図1(B))を走行するとき、当該PNDに設けられた3軸加速度センサによってZ軸に沿った上方向の加速度αz’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、また当該PNDに設けられたY軸ジャイロセンサによってY軸周りのピッチレートωy’を例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
そしてPNDでは、3軸加速度センサによって検出した加速度αz’及びY軸ジャイロセンサによって検出したピッチレートωy’を用い、次式
によって進行方向の速度V’を1秒間当たり50回、算出し得るようになされている。
ここでは説明の便宜上、負の加速度αzを加速度αz’として説明しているが、実際には、3軸加速度センサは加速度αz’を加速度αzの負の値として検出している。またピッチレートωy’についても同様に、負のピッチレートωyをピッチレートωy’として説明しているが、実際には、Y軸ジャイロセンサは、ピッチレートωy’をピッチレートωyの負の値として検出している。従って、実際には速度V’も、速度Vとして算出される。
[1−1−2.現在位置算出原理]
次に、上述した速度算出原理により算出した速度Vと、Z軸回りの角速度とに基づいて現在位置を算出する現在位置算出原理について説明する。
図2に示すように、PNDは、車両が例えば左旋回している時のZ軸回りの角速度(以下、これをヨーレートとも呼ぶ)ωzを当該PNDに設けられたZ軸ジャイロセンサによって例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出する。
次にPNDは、図3に示すように、前回の位置P0における速度Vと、ジャイロセンサにより検出したヨーレートωzにサンプリング周期(この場合、0.02[s])を積算することにより得られる角度θとを基に、前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。そしてPNDは、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し得るようになされている。
[1−2.PNDの構成]
上述した本発明の基本原理を用いて車両の速度及び現在位置を算出するPNDの具体的構成について説明する。
[1−2−1.PNDの外観構成]
図4に示すように、PND1は、当該PND1における前面に表示部2が設けられており、当該PND1に内蔵された例えば不揮発性メモリ(図示せず)に格納されている地図データに応じた地図画像等を表示部2に対して表示し得るようになされている。
またPND1は、車両のダッシュボード上に吸盤3Aを介して取付けられたクレードル3によって保持されると共に、当該PND1とクレードル3とが機械的かつ電気的に接続される。
これによりPND1は、クレードル3を介して車両のバッテリから供給される電源電力により動作すると共に、当該クレードル3から取り外されたときには内蔵のバッテリから供給される電力によって独立した状態でも動作するようになされている。
ここでPND1は、その表示部2が車両の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されている。このときPND1の座標系は、図5に示すように、当該車両の前後方向(進行方向)をX軸、当該X軸に直交した水平方向をY軸、上下方向をZ軸によって表される。
この座標系では、車両の進行方向をX軸の正と定義し、また右方向をY軸の正と定義し、さらに下方向をZ軸の正と定義することとする。
[1−2−2.PNDのセンサ構成]
図6に示すように、PND1は、その内部に3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7が設けられている。
3軸加速度センサ4は、X軸に沿った加速度αx、Y軸に沿った加速度αy、及びZ軸に沿った加速度αzをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
またY軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7は、Y軸周りのピッチレートωy、Z軸周りのヨーレートωz及び周囲の気圧PRをそれぞれ電圧値として検出するようになされている。
[1−2−3.PNDの回路構成]
図7に示すように、PND1の制御部11は、CPU(Central Processing Unit)構成でなり、例えば不揮発性メモリ等でなる記憶部12から読み出した基本プログラムによって全体を統括制御するようになされている。
またPND1は、制御部11が記憶部12から読み出した各種アプリケーションプログラムに従って後述する速度算出処理等を実行するようになされている。
この制御部11は、速度算出処理等を実行する際、GPS処理部21、速度算出部22、角度算出部23、高度算出部24、位置算出部25及びナビゲーション部26として機能するようになされている。
このPND1では、GPSアンテナANTによって受信した複数のGPS衛星からのGPS信号を制御部11のGPS処理部21へ送出する。
GPS処理部21は、複数のGPS信号をそれぞれ復調することにより得られる軌道データと、複数のGPS衛星から車両までの距離データとに基づいて車両の現在位置を正確に測位することにより現在位置データNPD1を得、これをナビゲーション部26へ送出する。
ナビゲーション部26は、現在位置データNPD1を基に車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
ところで3軸加速度センサ4は、加速度αx、αy及びαzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出し、当該加速度αx、αy及びαzのうち、加速度αzが示された加速度データADを制御部11の速度算出部22へ送出する。
Y軸ジャイロセンサ5は、ピッチレートωyを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ピッチレートωyが示されたピッチレートデータPDを制御部11の速度算出部22へ送出する。
速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αzと、Y軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyとを基に、(1)式を用いて1秒当たり50回、速度Vを算出し、当該速度Vが示された速度データVDを位置算出部25へ送出する。
またZ軸ジャイロセンサ6は、ヨーレートωzを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該ヨーレートωzが示されたヨーレートデータYDを制御部11の角度算出部23へ送出する。
角度算出部23は、Z軸ジャイロセンサ6から供給されたヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期(この場合、0.02[s])を積算することにより、車両が右旋回又は左旋回したときの角度θを算出し、その角度θが示された角度データDDを位置算出部25へ送出する。
位置算出部25は、速度算出部22から供給された速度データVDに相当する速度V、及び角度算出部23から供給された角度データDDに相当する角度θを基に、図3に示したような前回の位置P0から現在位置P1までの変化量を求める。そして位置算出部25は、この変化量を前回の位置P0に加えることによって現在位置P1を算出し、その現在位置P1が示された現在位置データNPD2をナビゲーション部26へ送出する。
一方、気圧センサ7は、周囲の気圧PRを例えば50[Hz]のサンプリング周波数で検出しており、当該気圧PRが示された気圧データPRDを高度算出部24へ送出する。
高度算出部24は、気圧センサ7から供給された気圧データPRDに相当する気圧PRに基づいて車両の高度を算出し、その高度が示された高度データHDをナビゲーション部26へ送出する。
ナビゲーション部26は、位置算出部25から供給された現在位置データNPD2、及び高度算出部24から供給された高度データHDを基に、車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力することにより当該地図画像を表示するようになされている。
[1−3.速度算出処理]
次に、3軸加速度センサ4から供給された加速度データADに相当する加速度αz、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づいて速度Vを速度算出部22によって算出する速度算出処理について詳しく説明する。
速度算出部22は、速度算出処理を実行する際、図8に示すように、データ取得部31、ハイパスフィルタ部32、ローパスフィルタ部33、速度計算部34、平滑化及びノイズ除去部35及び速度出力部36として機能する。
速度算出部22のデータ取得部31は、3軸加速度センサ4から供給される加速度データAD、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されるピッチレートデータPDをそれぞれ取得し、当該加速度データAD及びピッチレートデータPDをハイパスフィルタ部32へ送出する。
ハイパスフィルタ部32は、データ取得部31から供給された加速度データAD及びピッチレートデータPDの直流成分をカットし、その結果得られる加速度データAD1及びピッチレートデータPD1をローパスフィルタ部33へ送出する。
ローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して後述するローパスフィルタ処理を施し、その結果得られる加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を速度計算部34へ送出する。
速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2に対して後述する速度計算処理を施し、その結果得られる速度データVD1を平滑化及びノイズ除去部35へ送出する。
平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34から供給された速度データVD1に対して後述する平滑化及びノイズ除去処理を施し、その結果得られる速度データVDを速度出力部36へ送出する。
速度出力部36は、車両の速度Vを表すデータとして、平滑化及びノイズ除去部35から供給された速度データVDを位置算出部25へ送出する。
このようにして速度算出部22は、3軸加速度センサ4から供給された加速度データAD、及びY軸ジャイロセンサ5から供給されたピッチレートデータPDに基づいて車両の速度Vを算出するようになされている。
[1−3−1.ローパスフィルタ処理]
次に、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対してローパスフィルタ部33により施されるローパスフィルタ処理について詳しく説明する。
ところで、気圧センサ7により取得された気圧データPRDに相当する気圧PRに基づく高度Hと、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づくY軸周りの水平方向に対する角度φとの関係を図9に示す。ここで角度φは、進行方向(X軸)に対して上方向を正と定義している。
図9における約12001データ点(240[s])から高度Hが急に低くなるとき、すなわち車両が下り坂を下っているとき、角度φも約0.5[deg]から急に約−2.5[deg]へ下がっていることからも明らかなように、高度Hと角度φとの間には相関関係がある。
このように高度Hが変化する際、角度φも高度Hの変化に伴って変化しており、このことから、PND1は、Y軸ジャイロセンサ5によって車両の進行方向における路面のうねりを検出できることが分かる。
次に、図9における角度φだけを図10(A)に示す。また図10(B)には、図10(A)における5001データ点から6001データ点までの角度φを示し、このとき車両は速度20[km/h]未満の低速で走行している。図10(B)からも明らかなように、角度φは、1秒間当たり1〜2回振動していることが分かる。
従って、車両に搭載されたPND1では、車両が速度20[km/h]未満の低速で走行している際、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φを1〜2[Hz]の振動として検出している。
また図11(A)には、図10(A)と同様に、図9における角度φだけを示す。図11(B)には、図11(A)における22001データ点から23001データ点までの角度φを示し、このとき車両は速度60[km/h]以上の高速で走行している。
これによると、PND1では、車両が速度60[km/h]以上の高速で走行している際、Y軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φも1〜2[Hz]の振動として検出している。
さらにPND1では、図12に示すように、車両が速度10[km/h]未満の超低速で走行している際のY軸ジャイロセンサ5により取得されたピッチレートデータPDに相当するピッチレートωyに基づく角度φも1〜2[Hz]の振動として検出している。
従ってPND1では、Y軸ジャイロセンサ5によりピッチレートωyを検出する際、車両の走行速度に関わらず、当該ピッチレートωyを1〜2[Hz]の振動として検出している。
ところでPND1は、車両のダッシュボード上に吸盤3Aを介して取付けられたクレードル3によって保持されている。図13に示すように、クレードル3は、吸盤3Aの上方に本体部3Bが設けられており、当該本体部3Bの所定高さの位置に設けられた支持点3Cによって一端が支持され、他端によりPND1を支持するPND支持部3Dが設けられている。
従ってPND1は、車両が路面のうねりに応じて振動する際、PND支持部3Dの支持点3Cを中心に上下方向に例えば加速度αc及び角速度ωcで振動する。
従って、実際上、3軸加速度センサ4は、車両が路面のうねりに応じて振動することにより発生するZ軸方向の加速度αz(図1)に対して、PND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う加速度αcが加算された加速度(以下、これを加算加速度と呼ぶ)αczを検出していることになる。
またY軸ジャイロセンサ5は、車両が路面のうねりに応じて振動することにより発生するY軸周りのピッチレートωy(図1)に対して、PND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う角速度ωcが加算された角速度(以下、これを加算角速度と呼ぶ)ωcyを検出していることになる。
従ってローパスフィルタ部33は、加算加速度αczが示された加速度データAD1と、加算角速度ωcyが示されたピッチレートデータPD1とをデータ取得部31及びハイパスフィルタ部32を介して取得することになる。
ここでハイパスフィルタ部32によってハイパスフィルタ処理が施された後の加速度データAD1に相当する加算加速度αcz及びピッチレートデータPD1に相当する加算角速度ωcyを図14に示す。そして図15には、図14に示した加算角速度ωcyを4096データ点ごとにフーリエ変換したグラフを示す。
具体的に図15(A)は、図14における1〜4096データ点までの加算角速度ωcyに対してフーリエ変換したグラフである。以下同様に、図15(B)、(C)及び(D)は、図14における4097〜8192データ点、8193〜12288データ点及び12289〜16384データ点までの加算角速度ωcyに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
また図15(E)、(F)、(G)及び(H)は、図14における16385〜20480データ点、20481〜24576データ点、24577〜28672データ点及び28673〜32768データ点までの加算角速度ωcyに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
図15(A)〜(H)のうち、特に図15(C)〜(H)に顕著に表れているように、1〜2[Hz]の周波数成分と、約15[Hz]の周波数成分とが、大きな値を示している。
すなわちPND1は、Y軸ジャイロセンサ5によって、上述したような路面のうねりによって1〜2[Hz]で振動するピッチレートωyと、PND1を保持するクレードル3によって約15[Hz]で振動する角速度ωcと合成された加算角速度ωcyを検出している。
一方、図16には、図14に示した加算加速度αczを4096データ点ごとにフーリエ変換したグラフを示す。
具体的に図16(A)は、図14における1〜4096データ点までの加算加速度αczに対してフーリエ変換したグラフである。以下同様に、図16(B)、(C)及び(D)は、図14における4097〜8192データ点、8193〜12288データ点及び12289〜16384データ点までの加算加速度αczに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
また図16(E)、(F)、(G)及び(H)は、図14における16385〜20480データ点、20481〜24576データ点、24577〜28672データ点及び28673〜32768データ点までの加算加速度αczに対してそれぞれフーリエ変換したグラフである。
ここで加算角速度ωcy(図15(C)〜(H))に1〜2[Hz]の周波数成分と約15[Hz]の周波数成分とが発生している以上、加算加速度αczにも1〜2[Hz]の周波数成分と、約15[Hz]の周波数成分とが発生していることが予想される。
すなわちPND1は、3軸加速度センサ4によって、上述したような路面のうねりによって1〜2[Hz]で振動する加速度αzと、PND1を保持するクレードル3によって約15[Hz]で振動する加速度αcとが合成された加算加速度αczを検出している。
そこでローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対してローパスフィルタ処理を施し、約15[Hz]の周波数成分、すなわちクレードル3にPND1が保持されることによって発生する加速度αc及び角速度ωcをそれぞれ取り除くようになされている。
ここで図16(H)の縦軸を対数軸に変換したグラフを図17(A)に示し、28673〜32768データ点までの加算加速度αczに対してカットオフ周波数2[Hz]のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを2回、4回及び6回施した後にフーリエ変換したグラフをそれぞれ図17(B)、(C)及び(D)に示す。
また図18(A)に図15(H)の縦軸を対数軸に変換したグラフを示し、28673〜32768データ点までの加算角速度ωcyに対して、加算加速度αczと同様に、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを2回、4回及び6回施した後にフーリエ変換したグラフをそれぞれ図18(B)、(C)及び(D)に示す。
図17(B)〜(D)及び図18(B)〜(D)に示したように、このPND1では、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを4回以上施すことにより、約15[Hz]の周波数成分を取り除くことができる。
従って本実施の形態によるローパスフィルタ部33は、ハイパスフィルタ部32から供給された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、カットオフ周波数2[Hz]のIIRフィルタを4回施し、その結果得られる加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を速度計算部34へ送出する。
従ってローパスフィルタ部33は、加算加速度αczからクレードル3におけるPND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う加速度αcを取り除くことによって、路面のうねりによって発生する加速度αzだけを抽出することができる。
また従ってローパスフィルタ部33は、加算角速度ωcyからクレードル3におけるPND支持部3Dの支持点3Cを中心とした振動に伴う角速度ωcを取り除くことによって、路面のうねりによって発生するピッチレートωyだけを抽出することができる。
[1−3−2.速度計算処理]
次に、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を基に、速度計算部34によって速度Vを算出する速度計算処理について詳しく説明する。
まず始めに、車両の前方側であるダッシュボードの上と、当該車両の後方側であるリアガラス付近にそれぞれPND1が載置された状態で、当該車両が速度20[km/h]未満の低速、速度60[km/h]未満の中速、及び速度60[km/h]以上の高速で走行した際の前方側及び後方側の加速度データAD2に相当する加速度αzをそれぞれ図19、図20(A)及び(B)に示す。
ここで、図19、図20(A)及び(B)においては、前方側に載置されたPND1で検出された加速度αzをフロント加速度と呼び、後方側に載置されたPND1で検出された加速度αzをリア加速度と呼ぶ。
図19、図20(A)及び(B)からも明らかなように、車両の走行速度に関わらず、フロント加速度に対してリア加速度の位相が遅れていることが分かる。この位相遅れは、車両の前輪軸と後輪軸との距離であるホイールベースを走行速度により除算した値とほぼ等しい。
次に、図21(A)〜(C)には、車両のダッシュボード上(前輪軸からホイールベールの30%に相当)、中央及び後輪軸上にそれぞれPND1を載置した際の加速度データAD2に相当する加速度αzとピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyとの関係を表すシミュレーション結果の一例を示す。また図21(D)〜(F)には、図21(A)〜(C)により示すシミュレーション結果により得られた加速度αz及びピッチレートωyとに基づいて、(1)式に従って速度Vを算出した結果を示す。
ここで、このシミュレーションでは、振幅0.1[m]及び波長20[m]の正弦波でうねる路面上を、ホイールベールが2.5[m]でなる車両が速度5[m/s]で走行する場合を仮定した。
図21(A)〜(C)からも明らかなように、この加速度αzは、車両におけるPND1の搭載位置が後方へ移動するに連れて位相が遅れる。一方、ピッチレートωyは、車両におけるPND1の搭載位置に関わらず、位相のずれを生じることはない。
従って図21(B)に示したように、PND1を車両の中央に搭載した場合、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれがほとんどなく、そのため図21(E)に示したように、(1)式を用いて算出した速度Vは、ほぼ一定となる。
しかしながら、図21(A)及び(C)に示したように、PND1を搭載した位置が車両の中央に対して前後に移動すると、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれが大きくなる。そのため図21(D)及び(F)に示したように、(1)式を用いて算出した速度Vは、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれにより、PND1を車両の中央に搭載した場合(図21(E))の速度Vと比して、誤差が大きくなる。
特に、車両の速度Vが速度20[km/h]未満の低速時に、加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれが大きくなるので、速度Vの算出誤差が大きくなる。
そこで速度計算部34は、図22に示すように、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αzの前回の位置P0(図3)に対応するデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大値及び最小値をそれぞれ最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minとして抽出する。
また速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給されたピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyのデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大値及び最小値をそれぞれ最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとして抽出する。
すなわち速度計算部34は、加速度αz及びピッチレートωyに発生し得る位相のずれよりも広い範囲のなかから、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとをそれぞれ抽出する。
そして速度計算部34は、加速度データAD2から抽出した最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、ピッチレートデータPD2から抽出した最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを用い、上述した(1)式を変形した
によって前回の位置P0(図3)での進行方向の速度Vを算出し、その結果得られる速度データVD1を平滑化及びノイズ除去部35へ送出する。
すなわち速度計算部34は、(3)式を用いることにより、加速度αz及びピッチレートωyに位相のずれが発生している場合であっても、当該位相のずれの影響を取り除いた速度Vを算出することができる。
ところで図23に示すように、速度計算部34は、前回の位置P0での進行方向の速度Vを算出する際、加速中であれば、前々回の位置(図示せず)の速度(以下、これを前値速度とも呼ぶ)Vn-1が速度0[km/h]から速度35[km/h]までのとき25データ点分の範囲を用い、前値速度Vn-1が速度35[km/h]を超えると、75データ点分の範囲を用いるようにする。
また速度計算部34は、前回の位置P0での進行方向の速度Vを算出する際、減速中であれば、前値速度Vn-1が速度25[km/h]以上のとき75データ点分の範囲を用い、前値速度Vn-1が速度25[km/h]未満になると、25データ点分の範囲を用いるようにする。
従って速度計算部34は、速度Vに応じて、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを抽出する際、データ範囲を25データ点又は75データ点に切り替える。
このとき速度計算部34は、車両の速度Vが例えば速度25[km/h]以下の低速である場合には路面の微妙な変化により急激に加速度αz及びピッチレートωyが変化するので、その急激な変化に対応するためにデータ範囲を狭く設定する。
また速度計算部34は、車両の速度Vが速度35[km/h]以上である場合には車両のサスペンションの影響も大きく、加速度αz及びピッチレートωyがゆっくり変化するので、そのゆっくりとした変化に対応するためにデータ範囲を広く設定する。
このように速度計算部34は、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minと抽出する際のデータ範囲を車両の速度Vに応じて切り替えることにより、当該速度Vに応じた路面や車両の状況を反映することができ、速度Vの算出精度を向上させることができる。
また速度計算部34は、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを抽出する際、加速時と減速時とでデータ範囲を変更するようなヒステリシス性を持たすようになされている。
これにより速度計算部34は、速度Vを算出する際のデータ範囲にヒステリシス性を持たせなかった場合に生じるデータ範囲の切り替え速度付近での頻繁なデータ範囲の切り替えを行う必要がなくなる。この結果速度計算部34は、このような頻繁な切り替えにより生じる速度Vの算出誤差を無くすことができ、その分、速度Vの算出精度をより向上させることができる。
[1−3−3.平滑化及びノイズ除去処理]
次に、速度計算部34により算出された速度データVD1に対して、平滑化及びノイズ除去部35により施される平滑化及びノイズ除去処理について詳しく説明する。
まず始めに、平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34から供給された速度データVD1に対して、カットオフ周波数を可変にした1次IIRのローパスフィルタ処理を施すようになされている。
具体的に、平滑化及びノイズ除去部35は、前回の位置P0での進行方向の速度Vを算出する際、前値速度Vn-1に基づいてカットオフ周波数を決定する。
ここで、PND1では、車両の走行速度が例えば速度60[km/h]以上の高速時、速度計算部34により算出された速度Vにノイズが大きく含まれており、当該速度Vのばらつきが大きくなる。そこで平滑化及びノイズ除去部35は、前値速度Vn-1が速度60[km/h]以上であった場合、カットオフ周波数を小さく設定したローパスフィルタを用いる。
これに対して平滑化及びノイズ除去部35は、前値速度Vn-1が速度60[km/h]未満であった場合、カットオフ周波数を大きく設定したローパスフィルタを用いる。
ところで、速度計算部34により算出された速度Vが例えば速度10[km/h]未満の超低速であった場合、例えば(1)式又は(3)式の分母の値であるピッチレートωyが小さくなり、その結果、(1)式又は(3)式を用いて算出される速度Vが実際値より非常に大きくなってしまうことが考えられる。
そこで平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ部33からローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を取得し、当該ピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値未満であった場合、速度Vが過大であると判断し、ローパスフィルタ処理を施した後の速度Vを0とする。
一方、図24(A)に示すように、PND1は、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合、上述したような基本原理を用いて正確に速度Vを算出することができる。
しかしながら図24(B)に示すように、例えば路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合、車両の前輪がうねりを乗り越える際、車両に対して垂直方向の加速度αb及び車両の後輪を中心としたY軸周りの角速度ωbが発生する。
このときPND1は、路面のうねりに応じた1〜2[Hz]の振動により発生する加速度αz及びピッチレートωy(図24(A))を検出することなく、加速度αb及び角速度ωb(図24(B))を3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によって検出することになる。
ここで加速度αbは、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生する加速度αzよりも大きな値を取り、また角速度ωbも路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生するピッチレートωyよりも大きな値を取る。
また、路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合に発生する加速度αb及び角速度ωbを基に(1)式又は(3)式を用いて算出した速度(以下、これを小円弧速度とも呼ぶ。)を速度Vbとする。
上述した加速度αbが角速度ωbより大きく変化することから、速度Vbは、路面のうねりの円弧B1が車両のホイールベースWより大きい場合に発生する加速度αz及びピッチレートωyを基に(1)式又は(3)式を用いて算出した速度Vよりも、非常に大きな値を取る。
このためPND1の速度算出部11は、路面のうねりの円弧B2が車両のホイールベースWより小さい場合、加速度αb及び角速度ωbを用いた小円弧速度Vbを算出することにより、速度Vを過大な値として算出してしまうことになる。
そこで平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ部33からローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を取得し、当該加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値より大きいか否かを判断する。
そして平滑化及びノイズ除去部35は、加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値より大きい場合、速度Vが過大であると判断し、ローパスフィルタ処理を施した後の速度Vを用いるのではなく前値速度Vn-1を用いるようにする。すなわち、平滑化及びノイズ除去部35は、超低速時以外で速度Vが過大な値をとったとき、速度Vが誤っている可能性が高いので前値速度Vn-1を用いるようになされている。
このように平滑化及びノイズ除去部35は、ローパスフィルタ処理を施した後の速度Vが過大な値であった場合、超低速時であったときは速度Vを0とし、それ以外のときは前値速度Vn-1を速度Vとすることにより、当該速度Vを一段と正確に算出することができる。
[1−4.速度算出処理を用いた位置算出処理手順]
次に、PND1の制御部11が、上述したような速度算出処理を用いて現在位置を算出する位置算出処理手順について、図25のフローチャートを用いて説明する。
実際上、制御部11は、ルーチンRT1の開始ステップから入ってステップSP1へ移り、3軸加速度センサ4により検出された加速度データADと、Y軸ジャイロセンサ5により検出されたピッチレートデータPDとを速度算出処理部22のデータ取得部31によって取得した後、次のステップSP2へ移る。
ステップSP2において制御部11は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対してハイパスフィルタ処理を速度算出部22のハイパスフィルタ部32により施し、次のステップSP3へ移る。
ステップSP3において制御部11は、ハイパスフィルタ処理が施された加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対して、例えばカットオフ周波数1[Hz]の4次IIRフィルタであるローパスフィルタ処理を速度算出部22のローパスフィルタ部33によって施し、次のステップSP4へ移る。
ステップSP4において制御部11は、ローパスフィルタ処理が施された加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyを基に、(3)式を用いて速度算出部22の速度計算部34によって速度Vを算出し、次のステップSP5へ移る。
ステップSP5において制御部11は、ステップSP4において算出された速度Vが示された速度データVDに対して平滑化及びノイズ除去処理を施す。
具体的に、制御部11は、ステップSP4において算出された速度Vが示された速度データVD1に対してカットオフ周波数を可変にしたローパスフィルタ処理を施す。
そして制御部11は、ローパスフィルタ処理を施した後の速度Vが過大な値であると判断した場合、例えば速度10[km/h]未満の超低速時であったときは速度Vを0とし、それ以外のときは前値速度Vn-1を速度Vとし、次のステップSP6へ移る。
ステップSP6において制御部11は、Z軸ジャイロセンサ6により検出されたヨーレートデータYDを角度算出部23によって取得し、次のステップSP7へ移る。
ステップSP7において制御部11は、ヨーレートデータYDに相当するヨーレートωzにサンプリング周期である0.02[秒]を積算することにより角度θが示された角度データDDを角度算出部23によって算出し、次のステップSP8へ移る。
ステップSP8において制御部11は、ステップSP5において平滑化及びノイズ除去処理を施された速度データVD、及びステップSP7において算出された角度データDDに基づいて現在位置データNPD2を算出し、次のステップSP9へ移る。
ステップSP9において制御部11は、位置算出部25から供給された現在位置データNPD2を基に、車両の現在位置が含まれる周辺の地図データを記憶部12から読み出し、その現在位置が含まれる地図画像を生成した後、表示部2へ出力し、次のステップSP10へ移って処理を終了する。
[1−5.測定結果]
上述した速度算出処理によって算出された測定結果を図26〜図37に示す。なお図26〜図35は、セダンタイプの乗用車に載置されたPND1による測定結果を示し、図36及び図37では、それぞれ軽自動車及びミニバンタイプの車両に載置されたPND1による測定結果を示す。
図26(A)には、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5により検出された加速度データAD及びピッチレートデータPDに相当する加速度αz及びピッチレートωyを示し、図26(B)には、当該加速度αz及びピッチレートωyを用いて(3)式によって算出された速度Vを示す。
図26(A)及び(B)からも明らかなように、PND1では、車両の速度Vが大きくなるに連れて加速度αzが大きくなる一方、ピッチレートωyはほぼ一定の値をとることが分かる。
次に、PND1により速度算出処理を行うことによって算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dのグラフと、当該速度V及び距離Dの比較のためにPND1が搭載された車両の車速パルスから算出した速度Vref及び当該速度Vrefを用いて算出された距離Drefのグラフとを図27〜図31に示す。因みに図27〜図31は、PND1を搭載した車両がそれぞれ異なる道路を走行した場合でのグラフを示すものである。
なお、ここでは、車両の車速パルスから算出された速度をリファレンス速度とも呼び、またリファレンス速度を用いて算出された距離をリファレンス距離とも呼ぶ。
図27(A)は、本発明の速度算出処理を用いて算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dを示し、図27(B)は、当該図27(A)に示された速度V及び距離Dと比較するためのリファレンス速度Vref及びリファレンス距離Drefを示す。
図27(A)及び(B)に示したように、速度Vはリファレンス速度Vrefとほぼ相似関係にあり、当該速度Vに基づいて算出される距離Dもリファレンス距離Drefに対して10%未満の誤差しか生じていない。
また図28(A)は、本発明の速度算出処理を用いて算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dを示し、図28(B)は、当該図28(A)に示された速度V及び距離Dと比較するためのリファレンス速度Vref及びリファレンス距離Drefを示す。
さらに図29(A)は、本発明の速度算出処理を用いて算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dを示し、図29(B)は、当該図29(A)に示された速度V及び距離Dと比較するためのリファレンス速度Vref及びリファレンス距離Drefを示す。
さらに図30(A)は、本発明の速度算出処理を用いて算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dを示し、図30(B)は、当該図30(A)に示された速度V及び距離Dと比較するためのリファレンス速度Vref及びリファレンス距離Drefを示す。
さらに図31(A)は、本発明の速度算出処理を用いて算出された速度V及び当該速度Vを用いて算出された距離Dを示し、図31(B)は、当該図31(A)に示された速度V及び距離Dと比較するためのリファレンス速度Vref及びリファレンス距離Drefを示す。
図27(A)〜図31(A)に示した速度Vは、車両が異なる道路を走行した場合においても、図26(A)に示した速度Vと同様に、図27(B)〜図31(B)に示したリファレンス速度Vrefとほぼ相似関係にあり、当該速度Vに基づいて算出される距離Dもリファレンス距離Drefに対して10%未満の誤差しか生じていない。
次に、図32(A)には、PND1によって速度算出処理を用いて算出された速度V及び距離Dのグラフを示し、図32(B)には、リファレンス速度Vref及びリファレンス速度Vrefから算出されたリファレンス距離Drefのグラフを示す。さらに図32(C)には、PND1のZ軸ジャイロセンサ6によって検出されたヨーレートωzのグラフを示す。
ここで図32(C)に示したヨーレートωzは、その値が約20[deg/s]を超えるとき車両が右折したことを表しており、またその値が約−20[deg/s]を下回ったとき左折したことを表している。
従って図32(C)に示したように、右折及び左折を複数回連続で繰り返した場合においても、PND1によって算出された速度V(図32(A))は、リファレンス速度Vref(図32(B))とほぼ相似関係にあり、当該速度Vに基づいて算出される距離Dもリファレンス距離Drefに対して10%未満の誤差しか生じていない。
また図33(A)には、図32(A)とは異なる道路を走行した場合でのPND1によって速度算出処理を用いて算出された速度V及び距離Dのグラフを示し、図33(B)には、リファレンス速度Vref及びリファレンス速度Vrefから算出されたリファレンス距離Drefのグラフを示す。さらに図33(C)には、Z軸ジャイロセンサ6によって検出されたヨーレートωzのグラフを示す。
さらに図34(A)には、図32(A)及び図33(A)とは異なる道路を走行した場合でのPND1によって速度算出処理を用いて算出された速度V及び距離Dのグラフを示し、図34(B)には、リファレンス速度Vref及びリファレンス速度Vrefから算出されたリファレンス距離Drefのグラフを示す。さらに図34(C)には、Z軸ジャイロセンサ6によって検出されたヨーレートωzのグラフを示す。
これら結果からも、車両が多数のカーブを走行しても、PND1によって算出された速度Vは、リファレンス速度Vrefとほぼ相似関係にあり、当該速度Vに基づいて算出される距離Dもリファレンス距離Drefに対して10%未満の誤差しか生じていないことが分かる。
次に、図35(A)に示す地図のスタートSから行路Kに沿ってゴールGまで車両が走行した際、当該車両に搭載されたPND1によって算出された現在位置をプロットした走行軌跡Tを図35(B)に示す。
このように走行軌跡T(図35(B))は、車両が走行した行路K(図35(A))とほぼ同じ大きさで、かつ相似関係にあり、従ってPND1が現在位置をほぼ正確に算出し得ることが分かる。
次に、図36には、軽自動車に載置されたPND1によって算出された速度V及び距離Dと、当該速度V及び距離Dの比較のためにGPSアンテナANTを介して受信したGPS信号を基に算出した速度Vg及び当該速度Vgから算出された距離Dgとを重ねて示す。
なお、以下、GPSアンテナANTを介して受信したGPS信号を基に算出した速度をGPS速度とも呼び、GPS速度から算出された距離をGPS距離とも呼ぶ。
また図37には、ミニバンタイプの車両に載置されたPND1によって算出された速度V及び距離Dと、当該速度V及び距離Dの比較のためにGPS信号を基に算出したGPS速度Vg及びGPS速度Vgから算出されたGPS距離Dgとを重ねて示す。
図36及び図37に示したように、車両の大きさ、すなわちホイールベースが異なる複数の車両において、本発明におけるPND1によって算出された速度Vは、GPS速度Vgとほぼ相似関係にあり、当該速度Vに基づいて算出される距離DもGPS距離Dgに対して10%未満の誤差しか生じていないことが分かる。
因みに、図36及び図37において、GPS速度Vgは、車両が例えばトンネル等に入ってGPS信号が受信できなかった場合、0として算出している。
[1−6.動作及び効果]
以上の構成において、PND1は、路面のうねりによって発生する車両の進行方向に垂直なZ軸方向の加速度αzを3軸加速度センサ4により検出し、路面のうねりによって発生する当該進行方向と直交したY軸周りのピッチレートωyをY軸ジャイロセンサ5により検出する。
そしてPND1は、3軸加速度センサ4によって検出された加速度αz及びY軸ジャイロセンサ5によって検出されたピッチレートωyを基に、(1)式又は(3)式に従って速度Vを算出するようにした。
従ってPND1は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5だけを用いた簡易な構成により、GPS信号が受信することができない場合であっても、全ての道路環境下で車両の速度Vを正確に算出することができる。
またPND1は、車両と着脱自在な構成において、当該車両から車速パルス信号を転送するためのケーブルをわざわざユーザに接続させるという煩雑な操作を強いることない分、使い勝手を向上することができる。
またPND1は、車両の進行方向に垂直なZ軸周りのヨーレートωzをZ軸ジャイロセンサ6によって検出し、速度V及び当該ヨーレートωzに基づいて現在位置を算出するようにした。
これによりPND1は、GPS信号が受信することができない場合であっても、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6を設けるだけの簡易な構成により、全ての道路環境下で車両の現在位置を正確に算出することができる。
さらにPND1は、速度Vを算出する際、加速度データAD1及びピッチレートデータPD1に対してローパスフィルタ処理を施すようにした。従ってPND1は、路面のうねりによって発生する1〜2[Hz]で振動する加速度αz及びピッチレートωyに対して十分に大きな周波数でなるクレードル3によって発生する例えば約15[Hz]で振動する加速度αc及び角速度ωcの成分を除去することができる。
これによりPND1は、クレードル3によって発生する振動成分が取り除かれた加速度αz及びピッチレートωyを用いて、一段と正確な速度Vを算出することができる。
またPND1は、加速度αzのデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minを抽出し、ピッチレートωyのデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲から、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minを抽出する。
そしてPND1は、最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを用いて(3)式により速度Vを算出する。
これによりPND1は、車両内におけるPND1の搭載位置により変化する加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれよりも広い範囲のデータ点を用いることになり、上述した加速度αzとピッチレートωyとの位相のずれの影響を除去することができる。
またPND1は、加速度αzとピッチレートωyを基に(3)式によって算出された速度Vが過大な値であった場合、超低速時であったときは速度Vを0とし、それ以外のときは速度Vを前値速度Vn-1とすることにより、速度Vをより正確に算出することができる。
以上の構成によれば、第1の実施の形態によるPND1は、路面のうねりによって発生するZ軸方向の加速度αz、及び路面のうねりによって発生するY軸周りのピッチレートωyを検出し、当該加速度αz及びピッチレートωyを用いて速度Vを算出することにより、全ての道路環境下で速度Vを正確に算出することができる。
<2.第2の実施の形態>
[2−1.PNDの構成]
第2の実施の形態によるPND50(図4〜図7)は、第1の実施の形態によるPND1と比較して、制御部11に代わる制御部51を有している点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
制御部51は、図7との対応部分に同一符号を付した図38に示すように、速度算出部22に代わる速度算出部52を有する点と、GPS処理部21からのGPS速度VG及び角度算出部23からの角度データDDをそれぞれ速度算出部52へ供給する点とにおいて相違するものの、他の点については制御部11(図7)と同様に構成されている。
[2−2.速度算出処理]
[2−2−1.速度の補正原理]
ところで第1の実施の形態によるPND1では、速度算出部22(図8)により算出する速度V(速度データVD)について、車両の真の速度と必ずしも一致しない可能性、すなわち誤差を含む可能性がある。この誤差は、例えばクレードル3の車両に対する取付が不完全な場合に車両に生じる加速度や角速度等をPND1が正しく検出できないこと等により生じ得る。
一方、PND1は、複数のGPS信号を受信でき現在位置データNPD1を生成できる場合、当該現在位置データNPD1を基に速度(以下これをGPS速度VGと呼ぶ)を算出することができる。このGPS速度VGは、高精度な測位データを基に算出されるものであるため、車両の真の速度と見なすことができる。
そこで、速度算出部22により生成された速度Vに対するGPS速度VGの比率(以下これを速度比RVと呼ぶ)を、GPS速度VGごとにプロットしたところ、図39のようなグラフが得られた。
速度算出部22により算出した速度Vは、理想的にはGPS速度VGと常に一致することが望ましい。すなわち速度比RVは、理想的には、図中直線L0として示したように、GPS速度VGに関わらず常に値「1」となることが望ましい。
しかしながら実際の速度比RVは、図39に示したように、約10[m/s]以下の比較的低速の領域では直線L0から大きく離れて離散的に分布している。また速度比RVは、約10[m/s]以上の中速から高速にかけて、直線L0に比較的近い箇所に集中して分布している。
この図39から、速度比RVは、一定の傾向が現れること、及びある程度の速度の範囲(以下これを速度域と呼ぶ)ごとに傾向が異なることがわかる。
このことから、速度Vについては、速度域ごとに補正係数を算出しておけば、当該補正係数を用いて補正することにより、誤差を縮小して真の速度に近づけることが可能となる。
[2−2−2.速度算出部の構成]
上述した速度の補正原理に従い、第2の実施の形態による速度算出部52では、補正係数を用いて速度Vを補正するようになされている。
速度算出部52は、図8との対応部分に同一符号を付した図40に示すように、速度算出部22の構成に加えて係数算出部61が設けられ、また平滑化及びノイズ除去部35及び速度出力部36の間に速度補正部63が設けられている。
係数算出部61は、GPS処理部21からGPS速度VGを取得すると共に、平滑化及びノイズ除去部35から速度データVDを取得する。続いて係数算出部61は、GPS速度VGを取得できたときに、係数算出処理として、次の(4)式に従って当該GPS速度VGを速度Vで除算することにより補正係数Cを算出する。
この補正係数Cは、速度Vに乗じることにより、当該速度VをGPS速度VGに近づけるよう補正し得るような係数となる。
また係数算出部61は、速度Vが属するおおよその速度の範囲、すなわち速度域に応じて、補正係数Cを低速補正係数C1又は高速補正係数C2とするようになされている。
具体的に係数算出部61は、前値速度Vn-1が速度0[km/h]から速度30[km/h]までのとき補正係数Cを低速補正係数C1とし、前値速度Vn-1が速度30[km/h]を超えると、補正係数Cを高速補正係数C2とする。
因みに係数算出部61は、車両の加速中及び減速中には、その算出原理上、速度VとGPS速度VGとの間に時間的なずれが生じてしまうため、補正係数Cを正しく算出できない。そこで係数算出部61は、加減速中には補正係数Cを算出しないようになされている。これに伴い係数算出部61は、加速中及び減速中で閾値を速度35又は25[km/h]のように相違させた速度計算部34と異なり、両値の中間値である速度30[km/h]を単一の閾値としている。
また車両の方位が変化しているとき、3軸加速度センサ4から供給される加速度データADには、方位の変化に伴う加速度成分が含まれる。これに伴い、速度計算部34により算出される速度Vにも方位の変化に伴う誤差が含まれる。そこで係数算出部61は、角度算出部23により算出される角度データDDを基に、車両の方位が変化中であると判断したときにも、補正係数Cを算出しないようになされている。
さらに係数算出部61は、直前の低速補正係数C1及び高速補正係数C2(以下これらをそれぞれ直前低速補正係数C1n-1及び直前高速補正係数C2n-1とする)をそれぞれ記憶している。係数算出部61は、新たに得られた低速補正係数C1又は高速補正係数C2(以下これらをそれぞれ最新低速補正係数C1n及び最新高速補正係数C2nとする)を用いて低速補正係数C1及び高速補正係数C2をそれぞれ平準化しながら更新するようになされている。
具体的に係数算出部61は、低速補正係数C1を算出したときには次の(5)式に従い、高速補正係数C2を算出したときには次の(6)式に従って、新たな低速補正係数C1又は高速補正係数C2を算出する。
因みに(5)式及び(6)式の定数Mは、1よりも大きな値であり、時定数に相当する定数である。
その後係数算出部61は、(5)式又は(6)式により更新した最新の低速補正係数C1又は高速補正係数C2をそれぞれ記憶する。
このように係数算出部61は、GPS速度VGを取得できる間、速度Vに応じた補正係数Cを算出してその平均値を随時更新することにより、いわば補正係数Cの学習処理を行うようになされている。
速度補正部63は、平滑化及びノイズ除去部35から速度データVDを取得すると共にGPS処理部21からGPS速度VGを取得し、さらに係数算出部61から最新の補正係数C、すなわち低速補正係数C1又は高速補正係数C2を取得し得るようになされている。
速度補正部63は、GPS処理部21からGPS速度VGを取得できる場合、速度データVDをそのまま速度出力部36へ供給する。
一方速度補正部63は、GPS処理部21からGPS速度VGを取得できない場合、そのときの速度Vに応じた最新の補正係数C、すなわち低速補正係数C1又は高速補正係数C2のいずれかを読み出し、次に示す(7)式に従い補正速度VCを算出する。
このとき速度補正部63は、係数算出部61と同様、速度計算部34においてデータ点の範囲を切り替えることに対応して、補正係数Cとして低速補正係数C1又は高速補正係数C2のいずれかを選択するようになされている。
すなわち速度補正部63は、加速中であれば、前値速度Vn-1が速度0[km/h]から速度35[km/h]までのとき低速補正係数C1を選択し、前値速度Vn-1が速度35[km/h]を超えると、高速補正係数C2を選択する。
また速度補正部63は、減速中であれば、前値速度Vn-1が速度25[km/h]以上のとき高速補正係数C2を選択し、前値速度Vn-1が速度25[km/h]未満になると低速補正係数C1を選択する。
その後速度補正部63は、補正速度VCを速度データVDとして速度出力部36へ供給する。これに応じて速度出力部36は、当該速度データVDを位置算出部25(図38)へ出力する。
このように速度算出部52は、GPS速度VGを取得できるときには速度Vに応じた補正係数Cを随時更新する学習処理を行い、当該GPS速度VGを取得できないときには速度Vに応じた補正係数Cを用いて当該速度Vを補正する補正処理を行うようになされている。
ここで、補正後の速度V(すなわち補正速度VC)を用いた速度比RVをGPS速度VGごとにプロットしたところ、図39と対応する図41のようなグラフが得られた。
この図41からわかるように、速度Vを補正することにより、補正前(図39)と比較して、いずれの速度域においても速度比RVが値「1」に近づいていることがわかる。すなわち、速度算出部52において補正係数Cを用いて速度Vを補正することにより、当該速度VをGPS速度VGに近づけることができ、当該速度Vの誤差を縮小し得ることが示された。
[2−2−3.速度補正処理手順]
次に、PND50の制御部51が、速度算出部52により速度補正処理を行う際の速度補正処理手順RT2について、図42のフローチャートを用いて説明する。
制御部51は、ルーチンRT2の開始ステップから入ってステップSP21へ移り、GPS処理部21からGPS速度VGを取得したか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは補正係数Cの学習処理を行うべきであることを表しており、このとき制御部51は次のステップSP22へ移る。
ステップSP22において制御部51は、前値速度Vn-1及び速度V等を比較することにより、加減速中であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは加速中又は減速中のいずれでもないことを表しており、このとき制御部51は次のステップSP23へ移る。
ステップSP23において制御部51は、角度算出部23からの角度データDDを基に、方位変化中であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは方位変化中ではなく補正係数Cの学習処理を行い得ることを表しており、このとき制御部51は次のステップSP24へ移る。
ステップSP24において制御部51は、係数算出部61により(4)式に従い速度V及びGPS速度VGを基に補正係数Cを算出し、次のステップSP25へ移る。
ステップSP25において制御部51は、補正係数Cが所定の正常範囲内にあるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは当該補正係数Cを速度Vの補正に利用し得ることを表しており、このとき制御部51は次のステップSP26へ移る。
ステップSP26において制御部51は、速度Vが速度30[km/h]以上であるか否かに応じて、補正係数Cを高速補正係数C2又は低速補正係数C1とする。
続いて制御部51は、(5)式又は(6)式により高速補正係数C2又は低速補正係数C1を平準化しながら更新し、更新後の高速補正係数C2又は低速補正係数C1を最新の高速補正係数C2又は低速補正係数C1として記憶する。その後制御部51は、ステップSP28へ移って一連の処理を終了する。
一方、ステップSP22又はステップSP23において肯定結果が得られた場合、このことはこのときの速度Vが補正係数Cの算出に適さないことを表している。このため制御部51は、補正係数Cを更新することなくステップSP28へ移って一連の処理を終了する。
またステップSP25において否定結果が得られると、このことは例えばユーザによりタッチパネルが操作された際の加速度成分等が速度Vに含まれている等、算出した補正係数Cが異常値であることを表している。このため制御部51は、算出した補正係数Cを用いることなくステップSP28へ移って一連の処理を終了する。
これに対し、ステップSP21において否定結果が得られると、このことはGPS衛星からのGPS信号を受信できないため速度算出部52により算出した速度Vを基に車両の現在位置等を算出すべきことを表しており、このとき制御部51は次のステップSP27へ移る。
ステップSP27において制御部51は、速度補正部63により、速度Vに応じた最新の補正係数C(すなわち低速補正係数C1又は高速補正係数C2)を係数算出部61から取得し、(7)式に従って当該補正係数Cを速度Vに乗じることにより補正速度VCを算出する。続いて制御部51は、補正速度VCを新たな速度Vとして速度出力部36へ供給した後、次のステップSP28へ移って一連の処理を終了する。
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において、第2の実施の形態によるPND50は、路面のうねりによって発生する車両の進行方向に垂直なZ軸方向の加速度αzを3軸加速度センサ4により検出し、路面のうねりによって発生する当該進行方向と直交したY軸周りのピッチレートωyをY軸ジャイロセンサ5により検出する。
そしてPND50は、3軸加速度センサ4によって検出された加速度αz及びY軸ジャイロセンサ5によって検出されたピッチレートωyを基に、(1)式又は(3)式に従って速度Vを算出するようにした。
さらにPND50は、GPS速度VGを取得できるときには、係数算出部61により(4)式に従って速度Vに応じた補正係数Cを算出し、GPS速度VGを取得できないときには、速度補正部63により(7)式に従って補正係数Cを用いて速度Vを補正するようにした。
従ってPND50は、第1の実施の形態と同様、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5だけを用いた簡易な構成により、GPS信号が受信することができない場合であっても、全ての道路環境下で車両の速度Vを正確に算出することができる。
これに加えてPND50は、GPS速度VGが比較的正確であることを利用して適切な補正係数Cを算出することができるので、速度Vに含まれる誤差を小さく抑えることができる。
さらにPND50は、速度Vを2の速度域に分割すると共に当該速度域ごとの補正係数Cとして低速補正係数C1及び高速補正係数C2をそれぞれ算出するようにした。これによりPND50は、速度Vの誤差の傾向が速度域ごとに異なることに応じて、速度域ごとに適切な補正を行うことができるので、速度Vに含まれる誤差を極めて小さく抑えることができる。
その他の点について、第2の実施の形態によるPND50は、第1の実施の形態によるPND1と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、PND50は、路面のうねりによって発生するZ軸方向の加速度αz、及び路面のうねりによって発生するY軸周りのピッチレートωyを検出し、当該加速度αz及びピッチレートωyを用いて速度Vを算出することにより、全ての道路環境下で速度Vを正確に算出することができる。さらにPND50は、速度Vに応じて、当該速度Vが属する速度域ごとの補正係数Cを用いて当該速度Vを補正することにより、当該速度Vに含まれる誤差を極めて小さく抑えることができる。
<3.第3の実施の形態>
[3−1.PNDの構成]
第3の実施の形態によるPND70(図4〜図7)は、第1の実施の形態によるPND1と比較して、制御部11に代わる制御部71を有している点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
制御部71は、図7との対応部分に同一符号を付した図43に示すように、速度算出部22に代わる速度算出部72を有する点と、GPS処理部21からのGPS速度VGを速度算出部72へ供給する点とが相違するものの、他の点については制御部11(図7)と同様に構成されている。
[3−2.速度算出処理]
ところで第3の実施の形態によるPND70では、第2の実施の形態によるPND50と同様に速度Vを補正するようになされているものの、その補正の手法が第2の実施の形態と相違している。
[3−2−1.速度モデルを用いた速度の補正原理]
第3の実施の形態では、加速度αz及びピッチレートωyを基に生成した速度VとGPS速度VGとの関係を表す速度モデルを構築し、当該速度モデルを用いて速度Vの補正を行うようになされている。
まずピッチレートωyについて、オフセット等による誤差を含んでいると仮定し、Y軸ジャイロセンサ5から得られる測定値としてのピッチレートωyを、真のピッチレートωyTと測定誤差Δωyとの加算値であると見なす。
また加速度αzについても、同様にオフセット等による誤差を含んでいると仮定し、3軸加速度センサ4から得られる測定値としての加速度αzを、真の加速度αzTと測定誤差Δαzとの加算値であると見なす。
ここで図44(A)に示すように、車両が曲率半径R[m]の略円弧状の路面を真の速度VT[m/s]、真のピッチレート(すなわち角速度)ωyT[degree/s]で走行している場合を想定する。因みに、図中の点Pが車両の位置を表している。
このとき真のピッチレートωyT、誤差を含むピッチレートωy、真の加速度α z T、及び誤差を含む加速度α z については、それぞれ次の(8)〜(11)式のように表すことができる。
ところで上述したように、速度計算部34では(3)式により速度Vを算出している。そこで速度Vをモデル化するに際し、速度Vと同様に最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minとを用いることを検討する。
実際の路面では、一定の曲率半径でなる略円弧状の路面が続くことは希であり、実質的には異なる曲率半径の略円弧状の路面が順次連結されていると見なし得る。そこで、図44(B)に示すように、路面の曲率半径がR1[m]からR2[m]に切り替わった場合を想定する。
ここで曲率半径R2>R1と仮定すると、上述した(3)式における最大加速度αz,max及び最大ピッチレートωy,maxが曲率半径R1の路面において得られ、最小加速度αz,min及び最小ピッチレートωy,minが曲率半径R2の路面で得られると考えられる。
そこで(3)式については、(8)〜(11)式を用いることにより、次の(12)式のように表すことができる。
ここで次の(13)式に示す定数Kを用いると、(12)式は次の(14)式のように表すことができる。
この(14)式は、速度Vが、真の速度VT、加速度の測定誤差Δαz、ピッチレートの測定誤差Δωy及び定数Kにより求め得ることを示している。この(14)式により表される速度Vが、上述した速度モデルとなる。
さらに(14)式を速度VTについて整理すると、次の(15)式のように表すことができる。
この(15)式は、真の速度VTが、速度V、加速度の測定誤差Δαz、ピッチレートの測定誤差Δωy及び定数Kにより求め得ることを示している。
ところで車両が停車しているとき、真の加速度αzT及び真のピッチレートωyTはいずれも値「0」になる。そこで車両の停車中、すなわちGPS速度VGを取得でき且つその値がほぼ速度0[km/h]であれば、このときの加速度αz及びピッチレートωyを、それぞれ加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとみなすことができる。
また車両の速度がほぼ0[km/h]のとき加速度αz及びピッチレートωyは、本来一定の値「0」となるべきものであるが、実際にはいずれも一定の値とはならず、「0」付近にある程度のばらつきを有する値となる。ここで加速度αz及びピッチレートωyそれぞれについて標準偏差を算出すると、各標準偏差は値「0」からの広がりの大きさを表すことになる。
一方、加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyは、いずれも「0」近傍の値をとるべきものである。そこで、各標準偏差に所定の定数をそれぞれ乗じると、各標準偏差を近似的に加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとみなすことができる。
また、(14)式を定数Kについて整理すると、次に示す(16)式のように表すことができる。
この(16)式は、定数Kが、速度V、真の速度VT、加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyにより算出し得ることを示している。ここで加速度の測定誤差Δαz、及びピッチレートの測定誤差Δωyについては、上述したように停車中に求めることができる。また真の速度VTとしては、GPS速度VGを用いることができる。
従って定数Kは、GPS速度VGを取得できるときであれば、最新の加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを用いて最新の値に更新することが可能となる。
因みに速度Vと速度比RVとの関係は、図45に示すように、定数Kを変化させることにより大きく異なる特性曲線を描く。因みにこの関係は、定数Kをおおむね1.00×10−6〜3.00×10−6としたときに、良好な補正結果が得られるような特性曲線となった。
このようにPND70は、GPS信号を受信できGPS速度VGを生成できるとき、(16)式に従って最新の定数Kを算出しておく、すなわち定数Kを学習しておくことができる。
またPND70は、GPS信号を受信できずGPS速度VGを生成できないとき、(15)式に従い最新の定数Kを用いて真の速度VTを算出すること、すなわち速度Vを補正することができる。
[3−2−2.加減速時における速度の補正原理]
ところで、車両が加速中又は減速中であるときを含めて、GPS速度VGと速度比RVとの関係をプロットすると、図39と対応する図46に示すように、直線L1の近傍に加えて、直線L2の近傍にも分布が出現した。
以下、直線L2の近傍に出現した分布について検討する。上述したようにPND70は、(1)式を変形した(3)式に従い、加速度αz及びピッチレートωyについて、それぞれデータ点の範囲内における最大値と最小値との差分値を用いて速度Vを算出する。
ここで、まずデータ点の範囲内における最大値及び最小値が、当該範囲内における曲率半径Rの変化によって生じ、且つ当該区間内で速度Vが変化しない場合について検討する。
例えば図47(A)に示すように、路面が凹状又は凸状のまま、接続点Q1において曲率半径R1からR2へ、又は曲率半径R2からR1へ変化する場合を想定する。因みに曲率半径R2>R1とする。この場合、(3)式は次の(17)式のように変形することができる。
また図47(B)に示すように、路面の凹凸が切り替わりながら、接続点Q2において曲率半径R1からR2へ、又は曲率半径R2からR1へ変化する場合を想定する。この場合、(3)式は次の(18)式のように変形することができる。
(17)式及び(18)式から、データ点の範囲内で曲率半径が変化したとしても、路面の凹凸が変化するか否かにかかわらず、(3)式により速度Vを正しく算出できることがわかる。
次に、データ点の範囲内における曲率半径Rが変化せず、車両の速度Vが変化する場合について検討する。
例えば図48に示すように、曲率半径Rの路面上の変速点Q3において速度V1から速度V2へ、又は速度V2から速度V1へ変化する場合について検討する。因みに速度V2>V1とする。この場合、(3)式は次の(19)式のように変形することができる。
この(19)式から、図48に示したような場合、(3)式では速度Vを正しく算出できないことがわかる。
さらに、データ点の範囲内で曲率半径Rが変化し、且つ速度Vも変化する場合について検討する。例えば図49(A)に示すように、路面が凹状又は凸状のまま、接続点Q4において曲率半径R1からR2へ、又は曲率半径R2からR1へ変化し、さらに車両の速度Vが速度V1からV2へ、又は速度V2からV1へ変化する場合を想定する。
因みに曲率半径R2>R1とし、且つ速度V2>V1とする。また計算の都合上、R1=R、R2=R+ΔR、V1=V、V2=V+ΔVとする。
この場合、(3)式は次の(20)式のように変形することができる。
(20)式において、R・ΔV=V・ΔRのとき、すなわち(ΔR/R)=(ΔV/V)のとき、誤差は無限大となる。
また、定数Kについての(13)式を変形すると、次に示す(21)式のように表すことができる。
この(21)式から、(ΔR/R)も1.0×10−6のオーダーとなる。このことを踏まえると、速度Vについては、(20)式を変形することにより、次の(22)式のように近似することができる。
この(22)式から、図49(A)に示したような場合、すなわち加速度αz及びピッチレートωyのいずれもについて、最大値及び最小値の符号が同一の場合には、速度Vが約2倍となってしまい、当該速度Vを正しく算出できないことがわかる。
また(22)式は、図46において、直線L2の傾きが直線L1の傾きの約半分となっていることを裏付けている。
一方、例えば図49(B)に示すように、路面の凹凸が切り替わりながら、接続点Q5において曲率半径R1からR2へ、又は曲率半径R2からR1へ変化し、さらに車両の速度Vが速度V1からV2へ、又は速度V2からV1へ変化する場合を想定する。この場合、(3)式は次の(23)式のように変形することができる。
(23)式において、R・ΔV=V・ΔRのとき、すなわち(ΔR/R)=(ΔV/V)のとき、誤差がほぼ値「0」となる。この場合、速度Vを精度良く算出することが可能となる。
また(21)式から、(ΔR/R)が1.0×10−6のオーダーとなり(ΔV/V)よりも極めて小さいため、速度Vについては、(23)式を変形することにより次の(24)式のように近似することができる。
この(24)式から、図49(B)に示したような場合、速度Vが小さく車両が低速であるほど、また速度変化(すなわちΔVの値)が大きいほど、速度Vの誤差が大きくなることがわかる。
このように、(3)式により速度Vを算出するPND70は、データ点の範囲内で速度Vが変化する場合、加速度αz及びピッチレートωyのいずれもについて、最大値及び最小値の符号が相違する場合には正しい速度Vを得られるものの、最大値及び最小値の符号が同一の場合には、速度Vが約2倍の値になってしまうことが判明した。
[3−2−3.速度算出部の構成]
上述した速度の補正原理に従い、第3の実施の形態による速度算出部72では、速度モデルを用いて速度Vを補正すると共に、加速度αz及びピッチレートωyにおける最大値及び最小値の符号に応じて当該速度Vを補正するようになされている。
速度算出部72は、図8との対応部分に同一符号を付した図50に示すように、速度算出部22の構成に加えて測定誤差算出部81及び定数算出部82が設けられ、さらに平滑化及びノイズ除去部35及び速度出力部36の間に速度補正部83が設けられている。
測定誤差算出部81は、ローパスフィルタ部33から加速度データAD2及びピッチレートデータPD2を取得すると共に、GPS処理部21(図43)からGPS速度VGを取得するようになされている。
測定誤差算出部81は、GPS速度VGが値「0」と見なし得る範囲(例えば0.1[m/s]未満等)にあれば、過去1秒間に加速度データAD2及びピッチレートデータPD2として得られた加速度αz及びピッチレートωyそれぞれについて標準偏差を算出する。
さらに測定誤差算出部81は、加速度αzの標準偏差及びピッチレートωyの標準偏差にそれぞれ所定の係数を乗じた値を加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとし、定数算出部82及び速度補正部83へ供給する。
定数算出部82は、GPS処理部21からGPS速度VGを取得し、平滑化及びノイズ除去部35から速度データVDを取得すると共に、測定誤差算出部81から加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを取得する。
続いて定数算出部82は、GPS速度VGを取得でき且つ停車中でないとき(例えば例えば速度が0.1[m/s]以上等)であれば、定数算出処理として、上述した(16)式に従って定数Kを算出する。
さらに定数算出部82は、第2の実施の形態における補正係数Cと同様に、直前の定数K(以下これを直前定数Kn-1とする)を記憶しており、新たに得られた定数K(以下これを最新定数Knとする)を用いて当該定数Kを平準化しながら更新するようになされている。
具体的に定数算出部82は、時定数を表す定数Mを用い、次の(25)式に従って新たな定数Kを算出し、これを速度補正部83へ供給するようになされている。
速度補正部83は、速度計算部34から最大加速度αz,max、最小加速度αz,min、最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minを取得し、平滑化及びノイズ除去部35から速度データVDを取得する。また速度補正部83は、測定誤差算出部81から加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを取得し、定数算出部82から定数Kを取得し、さらにGPS処理部21からGPS速度VGを取得する。
速度補正部83は、少なくとも最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minの符号が同一である場合、又は最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minの符号が同一である場合に、速度Vを1/2倍する。
続いて速度補正部83は、GPS処理部21からGPS速度VGを取得できる場合、速度データVDをそのまま速度出力部36へ供給する。
一方GPS処理部21からGPS速度VGを取得できない場合、速度補正部83は、速度V、加速度の測定誤差Δαz、ピッチレートの測定誤差Δωy及び定数Kを用い、(15)式に従って真の速度VTを算出する。このとき速度補正部83は、(15)式により速度Vを補正したことになる。
その後速度補正部83は、真の速度VT、すなわち補正後の速度Vを速度データVDとして速度出力部36へ供給することにより、当該速度データVDを位置算出部25(図43)へ出力させる。
このように速度算出部72は、GPS速度VGを取得した場合、停車中であれば加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを更新し、移動中であれば定数Kを更新し、またGPS速度VGを取得できない場合、定数Kを用いて速度Vを補正するようになされている。
[3−2−4.速度補正処理手順]
次に、PND70の制御部71が、速度算出部72により速度補正処理を行う際の速度補正処理手順RT3について、図51のフローチャートを用いて説明する。
制御部71は、ルーチンRT3の開始ステップから入ってステップSP31へ移り、速度補正部83により少なくとも最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minの符号が同一であるか、又は最大ピッチレートωy,max及び最小ピッチレートωy,minの符号が同一であるかを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは算出された速度Vが本来の速度Vの約2倍の値となっていることを表しており、このとき制御部71は次のステップSP32へ移る。
ステップSP32において制御部71は、速度補正部83により速度Vを1/2倍し、次のステップSP33へ移る。
一方、ステップSP31において否定結果が得られると、このことは速度Vが正しい速度を表しており1/2倍する必要がないことを表しており、このとき制御部71は次のステップSP33へ移る。
ステップSP33において制御部71は、平滑化及びノイズ除去部35によって所定の平滑化処理及びノイズ除去処理を行うと共に、GPS処理部21からGPS速度VGを取得したか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωy又は定数Kの学習処理を行うべきであることを表しており、このとき制御部71は次のステップSP34へ移る。
ステップSP34において制御部71は、GPS速度VGが所定の閾値と比較することにより、車両が停車中であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを算出すべきであることを表しており、このとき制御部71は次のステップSP35へ移る。
ステップSP35において制御部71は、測定誤差算出部81により、過去1秒間に得られた加速度αz及びピッチレートωyそれぞれについて標準偏差を算出する。さらに測定誤差算出部81は、加速度αzの標準偏差及びピッチレートωyの標準偏差にそれぞれ所定の係数を乗じた値を加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとし、ステップSP40へ移って一連の処理を終了する。
一方、ステップSP34において否定結果が得られると、このことは車両が走行中であり定数Kを算出すべきであることを表しており、このとき制御部71は次のステップSP36へ移る。
ステップSP36において制御部71は、定数算出部82により、速度V、GPS速度VG、加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを用い、(16)式に従って定数Kを算出し、次のステップSP37へ移る。
ステップSP37において制御部71は、定数Kが所定の正常範囲内にあるか否か判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは当該定数Kを速度Vの補正に利用し得ることを表しており、このとき制御部71は次のステップSP38へ移る。
ステップSP38において制御部71は、(25)式により定数Kを平準化しながら更新し、更新後の定数Kを最新の定数Kとして記憶する。その後制御部71は、ステップSP40へ移って一連の処理を終了する。
一方、ステップSP37において否定結果が得られると、このことは例えばユーザによりタッチパネルが操作された際の加速度成分等が速度Vに含まれている等、算出した定数Kが異常値であることを表している。このため制御部71は、算出した定数Kを用いることなくステップSP40へ移って一連の処理を終了する。
これに対し、ステップSP33において否定結果が得られると、このことはGPS衛星からのGPS信号を受信できないため速度算出部72により算出した速度Vを基に車両の現在位置等を算出すべきことを表しており、このとき制御部71は次のステップSP39へ移る。
ステップSP39において制御部71は、速度補正部83により、速度V、最新の定数K、最新の加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを用い、(15)式に従って真の速度VTを算出することにより速度Vを補正する。続いて制御部71は、真の速度VTを新たな速度Vとして速度出力部36へ供給した後、次のステップSP40へ移って一連の処理を終了する。
[3−3.動作及び効果]
以上の構成において、第3の実施の形態によるPND70は、路面のうねりによって発生する車両の進行方向に垂直なZ軸方向の加速度αzを3軸加速度センサ4により検出し、路面のうねりによって発生する当該進行方向と直交したY軸周りのピッチレートωyをY軸ジャイロセンサ5により検出する。
そしてPND70は、3軸加速度センサ4によって検出された加速度αz及びY軸ジャイロセンサ5によって検出されたピッチレートωyを基に、(1)式又は(3)式に従って速度Vを算出するようにした。
さらにPND70は、GPS速度VGを取得できないときには、速度補正部83により(15)式に従い定数Kを用いて真の速度VTを算出し、これを補正後の速度Vとするようにした。
従ってPND70は、第1の実施の形態と同様、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5だけを用いた簡易な構成により、GPS信号が受信することができない場合であっても、全ての道路環境下で車両の速度Vを正確に算出することができる。
これに加えてPND70は、GPS速度VGを受信できない場合、速度モデルを用いることにより速度Vに応じて当該速度Vを適切に補正することができるので、補正後の速度Vに含まれる誤差を極めて小さく抑えることができる。
またPND70は、GPS速度VGを取得できるときには、移動中であれば、定数算出部82により速度Vに応じた定数Kを算出するようにした。これによりPND70は、GPS速度VGが比較的正確であることを利用して適切な定数Kを算出することができ、GPS速度VGを取得できなくなったときに最新の定数Kを用いて速度Vを補正することができる。
さらにPND70は、GPS速度VGを取得できるときには、停車中に測定誤差算出部81により加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを算出するようにした。これによりPND70は、随時変化し得る加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを適宜更新することができる。
そのうえPND70は、加速度αz及びピッチレートωyの最大値及び最小値が同一符号である場合、速度Vを1/2倍することにより、速度Vの算出原理上発生し得る誤差を適切に補正することができる。
その他の点について、第3の実施の形態によるPND70は、第1の実施の形態によるPND1と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、PND70は、路面のうねりによって発生するZ軸方向の加速度αz、及び路面のうねりによって発生するY軸周りのピッチレートωyを検出し、当該加速度αz及びピッチレートωyを用いて速度Vを算出することにより、全ての道路環境下で速度Vを正確に算出することができる。さらにPND70は、速度モデルを利用し速度Vに応じて当該速度Vを補正することにより、当該速度Vに含まれる誤差を極めて小さく抑えることができる。
<4.他の実施の形態>
なお上述した第2の実施の形態においては、速度Vの速度域を高速及び低速の2段階に分割し、速度域ごとに低速補正係数C1及び高速補正係数C2といった2種類の補正係数Cを用いる場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば全ての速度域で共通の補正係数Cを用いて速度Vを補正しても良く、或いは速度Vの速度域を3段階以上に分割し、当該速度域ごとに補正係数を用いるようにしても良い。さらには、一部の速度域において速度Vを補正しないようにしても良い。各速度域の境界値については、速度Vに含まれる誤差と当該速度Vとの関係の傾向等に応じて適宜定めれば良い。
また上述した第2の実施の形態においては、(7)式に従い速度域ごとに速度Vに補正係数Cを乗じることにより当該速度Vを補正するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば定数項を有する1次関数や2次以上の関数又は指数関数等、種々の演算手法を用いて速度Vを補正するようにしても良い。この場合、速度域ごとに種々の係数や定数を相違させても良く、或いは速度域ごとに関数そのものを相違させても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、GPS速度VGを取得できる場合であっても、車両の加減速中及び方位変化中には補正係数Cの算出処理及び更新処理を行わないようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、GPS速度VGを取得できる場合に、他の条件により補正係数Cの算出処理及び更新処理を行わないようにしても良い。或いは、例えば加減速や方位変化に起因して生じる誤差が極めて小さく実質的に無視できることが予め判明している場合等に、車両の加減速中や方位変化中であっても、補正係数Cの算出処理や更新処理を行うようにしても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、低速補正係数C1及び高速補正係数C2を(5)式及び(6)式によりそれぞれ平準化して更新するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、低速補正係数C1及び高速補正係数C2について、例えば過去5分以内に算出した値の平均値を更新後の値として用いる等、他の演算手法によりそれぞれ更新するようにしても良い。或いは低速補正係数C1及び高速補正係数C2について、それぞれ予め定めた値に固定し更新しないようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、速度Vを(14)式により表される速度モデルによりモデル化し、(15)式により当該速度Vを補正するようにした場合について述べた。
本発明はこれに限らず、真の速度(すなわちGPS速度VG)を用いた他の種々の数式により表される速度モデルにより当該速度Vをモデル化し、真の速度について表すよう当該数式を変形して当該真の速度(すなわち補正後の速度V)を算出するようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、GPS速度VGを取得できるときに(16)式により定数Kを算出し、当該定数Kを(25)式により平準化して更新するようにした場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば過去10分以内に算出した定数Kの平均値を更新後の定数Kとして用いる等、他の演算手法により任意の期間に算出した定数Kを用いて更新するようにしても良い。或いは、最適な定数Kを予め算出しておき、当該定数Kを更新せず固定したままとしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態においては、過去1秒間に得られた加速度αz及びピッチレートωyそれぞれの標準偏差に所定の係数を乗じた値を加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとする場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば過去5秒以内に算出した加速度αz及びピッチレートωyそれぞれの平均値を更新後の加速度の測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyとして用いる等、他の演算手法によりそれぞれ更新するようにしても良い。或いは、正確な測定誤差Δαz及びピッチレートの測定誤差Δωyを予め計測しておき、更新せず固定したままとしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態では、速度Vの値にかかわらず、(15)式に従い定数Kを用いて一様に速度Vを補正する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば速度Vが所定の速度域に含まれる場合にのみ当該速度Vを補正するようにしても良い。
さらに上述した第3の実施の形態では、加速度αz及びピッチレートωyの最大値及び最小値が同一符号である場合、速度Vを1/2倍するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば加速度αz及びピッチレートωyの最大値及び最小値が同一符号となる可能性が極めて低い場合に、速度Vを1/2倍せず(15)式による補正のみを行うようにしても良い。或いは、第2の実施の形態において、加速度αz及びピッチレートωyの最大値及び最小値が同一符号である場合に速度Vを1/2倍しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、速度Vを計算する際、加速度データAD2に相当する加速度αzから抽出した最大加速度αz,max及び最小加速度αz,minと、角速度データDD2に相当するピッチレートωyから抽出した最大角速度ωy,max及び最小角速度ωy,minとを基に、(3)式を用いて速度Vを算出するようにした。
しかしながら本発明はこれに限らず、速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αz、及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyの例えば前回の位置P0に対応するデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の分散をそれぞれ求める。そして速度算出部34は、加速度αzの分散をピッチレートωyの分散で除算することにより速度Vを算出するようにしても良い。
或いは、速度計算部34は、ローパスフィルタ部33から供給された加速度データAD2に相当する加速度αz、及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyの例えば前回の位置P0に対応するデータ点Pmを中心とした25データ点又は75データ点分の範囲の偏差をそれぞれ求める。そして速度算出部34は、加速度αzの偏差をピッチレートωyの偏差で除算することにより速度Vを算出するようにしても良い。これらの場合、第3の実施の形態における速度モデルを当該速度Vと対応する数式によりモデル化すれば良い。
また上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6により50[Hz]のサンプリング周波数で加速度αx、αy、αz、ピッチレートωy及びヨーレートωzを測定するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5及びZ軸ジャイロセンサ6は、50[Hz]以外にも例えば10[Hz]等の所定のサンプリング周波数により加速度αx、αy、αz、角速度ωy及び角速度ωzを検出するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyを用いて速度Vを算出するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、速度算出部22、52及び72は、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyの例えば25データ点毎の平均値を取り、当該加速度αz及びピッチレートωyの平均値を用いて速度Vを算出するようにしても良い。
この場合、速度算出部22、52及び72は、50[Hz]のサンプリング周波数で検出した加速度αz及びピッチレートωyの例えば25データ点毎の平均値を取ることにより、速度Vを1秒当たり2回だけ算出することになる。これにより制御部11、51及び71は、速度算出処理に対する処理負荷を軽減することができる。
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ部32によりハイパスフィルタ処理を施すようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1、50及び70は、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理を施さないようにしてもよい。
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4及びY軸ジャイロセンサ5によりそれぞれ検出した加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ部32及びローパスフィルタ部33によりハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理を施すようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1、50及び70は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理に加えて、移動平均フィルタ処理を施すようにしてもよい。またPND1、50及び70は、加速度データAD及びピッチレートデータPDに対して、ハイパスフィルタ処理、ローパスフィルタ処理及び移動平均フィルタ処理を任意に組み合わせた処理を施すようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、PND1、50及び70が、電源電力の供給を受けている間、現在位置算出処理手順に従ってナビゲーションを行うにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1、50及び70は、電源ボタン(図示せず)がユーザによって押下操作されることによってオフされた場合、当該電源ボタンが押下された時点での現在位置及び高度等を記憶部12へ記憶する。そしてPND1、50及び70は、再び電源ボタンがユーザによって押下操作されることによってオンされた場合、記憶部12から現在位置及び高度等を読み出し、当該現在位置及び高度等から再び現在位置算出処理手順に従ってナビゲーションを行うようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、PND1、50及び70が、車両のダッシュボード上に載置されたクレードル3によって保持されている状態で、速度Vを算出するようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1、50及び70が、クレードル3から機械的或いは電気的に取り外されたことを認識すると、速度Vを0とする、或いは前値速度Vn-1のまま継続するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、PND1、50及び70が左右方向に長い横置きの状態で使用されるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、図52に示すように、PND1、50及び70は、縦方向に長い縦置きの状態で使用されるようにしてもよい。この場合PND1、50及び70は、Y軸ジャイロセンサ5によりZ軸回りのヨーレートωzを検出し、またZ軸ジャイロセンサ6によりY軸周りのピッチレートωyを検出するようにすればよい。
さらに上述した実施の形態においては、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7がPND1、50及び70の内部に設けられているようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7が、PND1、50及び70の外部に設けられているようにしてもよい。
またPND1、50及び70は、3軸加速度センサ4、Y軸ジャイロセンサ5、Z軸ジャイロセンサ6及び気圧センサ7の取り付け角度を調節できるような調節機構を例えば筐体の側面に設けるようにしても良い。
これによりPND1、50及び70は、その表示部2が車両の進行方向に対してほぼ垂直となるように設置されていない場合であっても、調節機構をユーザに調節させることによって、例えばY軸ジャイロセンサ5の回転軸を車両の垂直方向と揃えることができる。
さらに上述した実施の形態においては、ピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyが所定の閾値未満であった場合、及び加速度データAD2に相当する加速度αz及びピッチレートデータPD2に相当するピッチレートωyがそれぞれ所定の閾値より大きい場合、速度Vが過大であると判断するようにした。しかしながら本発明はこれに限らず、制御部11、51及び71は、速度計算部34によって算出された速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったとき、速度Vが過大であると判断するようにしても良い。
この場合、平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34によって算出された速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったときで、かつ前値速度が例えば速度10[km/h]未満の超低速時であった場合、速度Vを0とする。また平滑化及びノイズ除去部35は、速度計算部34によって算出された速度Vが前値速度Vn-1より所定速度以上の大きな値を取ったときで、かつ前値速度が例えば速度10[km/h]以上であった場合、前値速度Vn-1を速度Vとするようにすればよい。
さらに上述した実施の形態においては、PND1、50及び70を自動車でなる車両に搭載する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばPND1、50及び70を水面に沿って進行する船舶に搭載するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、PND1、50及び70の制御部11、51及び71が、予め記憶部12に格納されているアプリケーションプログラムに従い、上述したルーチンRT1、RT2及びRT3の各処理手順を行うようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、PND1、50及び70の制御部11、51及び71が、記憶媒体からインストールしたアプリケーションプログラムや、インターネットからダウンロードしたアプリケーションプログラム、その他種々のルートによってインストールしたアプリケーションプログラムに従って上述した各処理手順を行うようにしても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、垂直方向加速度検出部としての3軸加速度センサ4と、水平方向角速度検出部としてのY軸ジャイロセンサ5と、速度算出部としての速度算出部52と、速度補正部としての速度補正部63とによって速度算出装置としてのPND50を構成する場合について述べた。
本発明はこれに限らず、この他種々の構成でなる垂直方向加速度検出部と、水平方向角速度検出部と、速度算出部と、速度補正部とによって速度算出装置を構成するようにしても良い。