JP5624933B2 - X線による性能評価方法およびその利用 - Google Patents
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Description
更に本発明は、上記評価により良品と判断された成膜材料を用いて眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成することを含む眼鏡レンズの製造方法、および上記評価方法に使用される評価装置に関する。
[1]眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成するための成膜材料または該成膜材料を用いて形成された機能性膜の性能評価方法であって、
前記評価される性能は、上記機能性膜表面の滑り感および上記機能性膜の密着性からなる群から選ばれ、
上記成膜材料または上記機能性膜にX線を照射することにより発生する光電子量の経時変化に基づき、前記評価を行うことを特徴とする、前記性能評価方法。
[2]前記経時変化は、XPSスペクトルにおけるピーク強度の経時変化量である、[1]に記載の性能評価方法。
[3]前記経時変化は、XPSスペクトルにおける結合エネルギーの異なるピークのピーク強度の大小関係の変化である、[1]に記載の性能評価方法。
[4]前記XPSスペクトルは、XPS法によるC1sスペクトルである、[2]または[3]に記載の性能評価方法。
[5]前記ピーク強度は、前記Clsスペクトルにおける結合エネルギー295〜300eVの範囲内にあるピークおよび285〜290eVの範囲内にあるピークの少なくとも一方のピーク強度を含む、[4]に記載の性能評価方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の性能評価方法により評価した結果、良品と判定された成膜材料を用いて機能性膜を形成することを特徴とする、眼鏡レンズ基材上に機能性膜を有する眼鏡レンズの製造方法。
[7]眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成するための成膜材料または該成膜材料を用いて形成された機能性膜の性能を評価する評価装置であって、
[1]〜[5]のいずれかに記載の性能評価方法を実施するために使用され、
前記成膜材料または前記機能性膜にX線を照射するX線照射部と、
前記X線が照射された成膜材料または前記機能性膜から発生する光電子量の経時変化を測定する測定部と、
測定された経時変化に基づき、前記機能性膜表面の滑り感および上記機能性膜の密着性からなる群から選ばれる性能の良否を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする、前記評価装置。
これに対し、本発明者らは、X線照射により発生する光電子量の経時変化が大きな成膜材料から形成された機能性膜や上記経時変化が大きな機能性膜は滑り感および密着性に劣るものであること、即ち、上記経時変化と滑り感および密着性との間には良好な相関関係が存在することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。本発明の性能評価方法によれば、実際に眼鏡レンズ基材上に形成された機能性膜の評価はもちろんのこと、眼鏡レンズ基材上に形成される前の成膜材料の状態での評価も可能であるため、テスト成膜を行う必要なく、良好な滑り感および密着性を有する機能性膜を形成可能な成膜材料を選択することができる。
以下、本発明の性能評価方法について、更に詳細に説明する。
(R1)a(R3)bSi(OR2)4-(a+b) ・・・(I)
R2で表される炭素数1〜4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
R2で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
R3で表される炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
R3で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2007−077327号公報段落[0073]に記載されているものを挙げることができる。一般式(I)で表される有機ケイ素化合物は硬化性基を有するため、塗布後に硬化処理を施すことにより、硬化膜としてハードコート層を形成することができる。
(式中、1は1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の範囲の整数である。)
−CF2(OC2F4)p−(OCF2)q−
(式中、pおよびqは、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の範囲の整数であり、かつp+qの和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の範囲の整数であり、該式中の繰り返し単位(OC2F4)および(OCF2)の配列はランダムである。)
また、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基および塩素原子が好適である。
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC2F4)p(OCF2)qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC2F4)p(OCF2)qOCF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CH2CF2(OC2F4)p(OCF2)qOCF2CH2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC2F4)p(OCF2)qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OC2H5)3
または、光電子量の経時変化を、X線照射によるスペクトル形状の変化から求めることも可能である。例えば、評価対象の成膜材料または機能性膜において、XPSスペクトルにおいて結合エネルギーの異なるピークが2つ以上出現する場合には、結合エネルギーの異なるピークのピーク強度の大小関係が、X線照射により変化するか否か(維持されるか逆転するか)を滑り感および密着性からなる群から選ばれる性能の判定基準とし、大小関係が維持されているものを滑り感および密着性からなる群から選ばれる性能が良好と判定することができる。または、XPSスペクトルにおいて、X線照射によりピークの消失、新たなピークの出現、等のスペクトル形状変化が起こるか否かによって、滑り感および密着性からなる群から選ばれる性能を評価することもできる。
滑り感が良好であるか否かの判断基準(閾値)は適宜予備実験を行うことにより設定すればよいが、一例として所定時間(例えば15分間〜1時間)内での経時変化量が±20%以内であれば滑り感良好と判定することができる。または、特に良好な滑り感が求められる場合には、上記経時変化量が±5%以内であれば滑り感良好と判定することもできる。
一方、密着性が良好であるか否かの判断基準(閾値)も適宜予備実験を行うことにより設定すればよく、一例として所定時間(例えば15分間〜1時間)内での経時変化量が±20%以内であれば密着性良好と判定することができる。または、特に良好な密着性が求められる場合には、上記経時変化量が±5%以内であれば密着性良好と判定することもできる。
また、前述のようにXPSスペクトルのスペクトル形状の変化に基づき評価を行う場合には、所定時間(例えば15分間〜1時間)でスペクトル形状の変化(例えばピーク強度の大小関係の逆転)が起こらないことをもって、滑り感および密着性が良好と判定することができる。
以上説明した良否判定は、プログラムにより自動化することができる。
眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成するための成膜材料または該成膜材料を用いて形成された機能性膜の性能を評価する評価装置であって、
本発明の性能評価方法を実施するために使用され、
前記成膜材料または前記機能性膜にX線を照射するX線照射部と、
前記X線が照射された成膜材料または前記機能性膜から発生する光電子量の経時変化を測定する測定部と、
測定された経時変化に基づき、前記機能性膜表面の滑り感および前記機能性膜の密着性からなる群から選ばれる性能の良否を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする、前記評価装置、
も提供される。
本発明の性能評価方法によれば、良好な滑り感および密着性を発現可能な成膜材料を選択可能であるため、選択された成膜材料(良品)を用いて機能性膜を形成することにより、良好な滑り感を有する眼鏡レンズおよび機能性膜の密着性が良好な眼鏡レンズを得ることができる。
複数の眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成することにより、機能性膜を有する眼鏡レンズを複数製造する工程(以下、「工程I」という)と、
製造された複数の眼鏡レンズの少なくとも1つについて、該眼鏡レンズが有する機能性膜を本発明の性能評価方法により評価する工程(以下、「工程II」という)と、
評価結果に基づき製品として出荷する眼鏡レンズを決定する工程(以下、「工程III」という)と、
を含む眼鏡レンズの製造方法、
を提供することもできる。
(1)工程IIにおいて評価した試料の評価結果が、良否判定基準を満たすものであった場合は該試料と同一ロット内の眼鏡レンズは良否判定基準を満たすものと判断し、同一ロット内の眼鏡レンズを製品として出荷する。
(2)製造した眼鏡レンズそれぞれを工程IIに付し、工程IIにおける評価結果が良否判定基準を満たす場合は、その眼鏡レンズを製品として出荷する。出荷前の製品すべてに対して評価を行うことにより、高品質な製品をより高い信頼性をもって提供することが可能となる。先に説明したように、クロスカット法による密着性評価では全数評価は困難であるのに対し、このように本発明によれば、密着性について全数評価を行うことができる。
(1)評価対象試料
以下の3種類のフッ素系有機化合物を評価対象成膜材料とした。
成膜材料1:下記構造単位の繰り返しである主骨格を有するフッ素系有機化合物
上記各成膜材料5〜20gを試験管内に封入しXPS分析装置において、成膜材料1については75分間、成膜材料2、3については60分間X線を連続照射しC1sスペクトル(ナロースペクトル)の経時変化を観察した。XPS分析装置としては、Physical Electronics社製(ESCA5400MC)を使用した。成膜材料1について得られたC1sスペクトルの経時変化を図1に、成膜材料2について得られたC1sスペクトルの経時変化を図2に示す。成膜材料3のC1sスペクトルの経時変化は、成膜材料2とほぼ同様であった。
以下の方法により、蒸着材料(撥水処理剤)を調製した。容器は、アズワン社ガラススクリュー瓶30ccを使用し、スターラーの攪拌速度は500rpmに設定した。
一般式(II)のシラン化合物として信越化学工業(株)製KBE903((C2H5O)3SiC3H6NH2、分子量221.4,屈折率(25℃)1.420)10gと一般式(III)の変性シリコーンオイルとして下記オイル(a)の構造を有する信越化学工業(株)製KF105(動粘度15mm2/s(25℃)、屈折率(25℃)1.442、官能基当量490g/mol)10gを24時間、混合攪拌した。
前記シラン化合物はアミノ基を有しており、前記シリコーンオイルはエポキシエチル基を有している。これにより、アミノ基とグリシジル基が反応し、2および3級アミンを有したジメチルシロキサン含有混合物が生成された。この反応には約24時間程度が必要で、H,C、NMRの分析では、分子量約200〜1000の化合物の生成が確認された。
次に、成膜材料1〜3のいずれか15gに、工程1で製造した溶液3.5gを投入し24時間攪拌した。
工程2で調製した混合溶液18.5gに、ハイドロフルオロエーテルとして住友スリーエム(株)製HFE7200(C4F9OC2H5、粘度5.7×10-4Pa・s、動粘度0.40mm2/s、屈折率(25℃)1.28)3g投入し、24時間、攪拌を行った。
以上の工程により、蒸着材料(撥水処理剤)を得た。
マグネティックスターラーを備えたガラス製の容器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン17質量部、メタノール30質量部、および、水分散コロイダルシリカ(固形分40質量%、平均粒子径15nm)28質量部を加え充分に混合し、5℃で24時間攪拌を行った。次に、プロピレングリコールモノメチルエーテル15質量部、シリコ−ン系界面活性剤0.05質量部、および、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネ−トを1.5質量部加え、充分に撹拌した後、濾過を行ってハードコ−ティング液(ハードコート組成物)を調製した。このコ−ティング液のpHは、およそ5.5であった。
プラスチック製眼鏡レンズ基材として、メニスカス形状のポリチオウレタン(HOYA(株)製 商品名EYAS、中心肉厚2.0mm厚、直径75mm、凸面の表面カーブ(平均値)約+0.8)を使用し、レンズ基材の凸面上に、調製したハードコ−ティング液を用いて、ディッピング法(引き上げ速度20cm/分)でコーティングを行い、100℃、60分加熱硬化することで、厚さ3μmのハードコート膜を形成した。
上記2.で得た各撥水処理剤を0.35mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔経80〜100μm、直径18mmΦ、厚さ3mm)を80℃で2時間ドライオーブン加熱し、その後、真空蒸着装置内にセットした。以下の条件で電子銃(EB)を用いて焼結フィルター全体を加熱して、上記3.で形成したハードコート膜上に、厚さ約3nmの撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
(1)真空度
3.1×10-4〜8.0×10-4Pa(2.3×10-6〜6.0×10-6Torr)
(2)電子銃の条件
加速電圧:6kV、印加電圧:11mA、照射面積:3.5×3.5cm2、照射時間:120秒
成膜材料1〜3を用いて形成した各眼鏡レンズについて、最表面(撥水膜表面)をシルボン紙で擦った感覚を以下の4段階で評価した。
○:滑り感良好
×:滑り感がない
成膜材料1〜3を用いて形成した各眼鏡レンズについて、撥水膜表面を1.5mm間隔で100目クロスカットし、このクロスカットしたところに粘着テープ(セロファンテープ ニチバン株式会社製)を強く貼り付けた後、粘着テープを急速に剥がした後の100目中の剥離マス目数を調べた。剥離マス目数1〜2/100を密着性「○」、3〜50/100を密着性「△」、50超/100を密着性「×」と判断した。
上記3種類のレンズについて、以下の評価を行った。
(1)水に対する静止接触角
上記3種類のレンズについて、以下の評価を行った。
接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの最表面(凸面)の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴がレンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan-1(h/r)
なお、静止接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴をレンズに触れさせた後10秒以内に行った。いずれのレンズにおいても、接触角は約108°であった。これとは別に、撥水膜形成前のハードコート膜表面の静止接触角を同様の方法で測定したところ、約60°であったため、いずれの撥水膜も撥水膜として機能することが確認された。
(2)動摩擦係数の測定
上記3種類のレンズの最表面(撥水膜表面)において、新東科学(株)製の連続加重式表面性測定機TYPE:22Hを使用し、移動距離20mmの平均動摩擦係数を各々3回測定し、平均値を算出したところ、いずれも約0.080であった。
(3)耐久性の評価
図4に示す装置を用い、レンズクリーニング布(商品名:HOYA Clearcloth)で500gの荷重をかけて上記3種類のレンズの最表面(撥水膜表面)を3600回、前後に擦り(25℃、相対湿度50〜60%)、その後(1)に記載した方法で水に対する静止接触角を測定したところ、いずれのレンズにおいても接触角は約106°であった。なお、図4中、11はレンズ、12はレンズクリーニング布、13は六面体板を示す。
(4)外観
上記3種類のレンズについて、目視にて干渉色の色ムラおよび干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価したところ、いずれのレンズも概観は良好であった。
上述の通り、前記3種のレンズは、外観、接触角、耐久性、動摩擦係数のいずれの評価でも同じ結果が得られたにもかかわらず、表2に示すように、官能評価による滑り感の評価結果には明確な差があった。
表2に示すように、C1sスペクトルにおける結合エネルギー295〜300eVのピーク強度の経時変化(45分間)が20%以内であった成膜材料2、3を使用して作製したレンズでは滑り感は良好であったのに対し、上記ピーク強度変化が60%であった成膜材料を使用して作製したレンズは滑り感が著しく劣っていたことから、X線照射により発生する光電子量の経時変化量と滑り感との間には良好な相関性があることが確認できる。
また、表3に示すように、C1sスペクトルにおける結合エネルギー295〜300eVのピーク強度の経時変化(45分間)が20%以内であった成膜材料2、3を使用して作製したレンズではクロスカット法により評価した撥水膜の密着性は良好であったのに対し、上記ピーク強度変化が60%であった成膜材料を使用して作製したレンズはクロスカット法で評価した撥水膜の密着性が著しく劣っていたことから、X線照射により発生する光電子量の経時変化量と撥水膜の密着性との間にも良好な相関性があることが確認できる。
前記3種のレンズについて、前記1(2)と同様の方法で撥水膜のC1sスペクトルの経時変化を確認したところ、成膜材料における結果と同様の傾向が見られた。即ち、成膜材料1を使用して形成された撥水膜では、スペクトル形状が経時的に変化し、特に結合エネルギー295〜300eVの領域におけるピーク強度の大きな低下が見られたのに対し、成膜材料2、3を使用して形成された撥水膜では経時的なスペクトル形状の変化は観察されなかった。この結果から、成膜後の機能性膜のXPS分析によっても、滑り感および密着性の評価が可能であることが確認できる。
また、上記結果に基づき、良否判定基準を「C1sスペクトルにおける結合エネルギー295〜300eVのピーク強度の経時変化(45分間)が20%以内」と決定し、当該基準を満たす試料を良品と判定するプログラムを搭載した端末装置(判定部)をXPS分析装置(X線照射部および光電子量の経時変化を測定する測定部を備える)と接続し、XPS分析装置から出力される光電子量の経時変化情報に基づき上記判定基準により良否判定を行う評価装置を作製した。上記評価装置によれば、成膜材料および機能性膜を連続的に自動評価することが可能となる。
または、結合エネルギーの異なるピークのピーク強度の大小関係が、所定期間内に逆転せず維持されていることを良品の判定基準とすることもできる。具体的には、C1sスペクトルにおける結合エネルギー285〜290eVの領域のピークのピーク強度を「P1」、結合エネルギー295〜300eVの領域のピークのピーク強度を「P2」とすると、成膜材料1では初期はP1>P2であったものの、X線の連続照射の結果、照射45分以降はその大小関係が逆転しP1<P2となった(図1参照)。これに対し、成膜材料2ではX線の連続照射前後でP1、P2の大小関係の変化はなく、P1>P2が維持されていた(図2参照)。成膜材料3も同様であった。そこで、このP1>P2の大小関係が経時変化せず維持されていることをもって、滑り感および密着性が良好な撥水膜を形成可能な成膜材料であると判定することもできる。この方法は、スペクトル形状から良品を判定可能であるため簡便であり実生産工程での使用に適する。
Claims (5)
- 眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成するための成膜材料または該成膜材料を用いて形成された機能性膜の性能評価方法であって、
前記評価される性能は、上記機能性膜表面の滑り感および上記機能性膜の密着性からなる群から選ばれ、
上記成膜材料または上記機能性膜にX線を照射することにより発生する光電子量の経時変化に基づき、前記評価を行うことを特徴とする、前記性能評価方法。 - 前記経時変化は、XPSスペクトルにおけるピーク強度の経時変化量である、請求項1に記載の性能評価方法。
- 前記経時変化は、XPSスペクトルにおける結合エネルギーの異なるピークのピーク強度の大小関係の変化である、請求項1に記載の性能評価方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の性能評価方法により評価した結果、良品と判定された成膜材料を用いて機能性膜を形成することを特徴とする、眼鏡レンズ基材上に機能性膜を有する眼鏡レンズの製造方法。
- 眼鏡レンズ基材上に機能性膜を形成するための成膜材料または該成膜材料を用いて形成された機能性膜の性能を評価する評価装置であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の性能評価方法を実施するために使用され、
前記成膜材料または前記機能性膜にX線を照射するX線照射部と、
前記X線が照射された成膜材料または前記機能性膜から発生する光電子量の経時変化を測定する測定部と、
測定された経時変化に基づき、前記機能性膜表面の滑り感および前記機能性膜の密着性からなる群から選ばれる性能の良否を判定する判定部と、
を含むことを特徴とする、前記評価装置。
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