以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1〜9,11は、本発明の実施形態を示す図である。図1は、本実施形態に係る回転電機駆動システムの概略構成を示す図である。図2は、本実施形態において、ステータとロータとの対向する部分の一部を示す概略断面図である。図3は、図2のA部拡大図である。図4は、本実施形態において、ロータ巻線に流れる誘導電流により生成される磁束がロータ中に流れる様子を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の回転電機駆動システム34は、電磁石型回転電機である回転電機10と、回転電機10を駆動する駆動部であるインバータ36と、インバータ36を制御する制御部である制御装置38と、電源部である蓄電装置40とを備え、回転電機10を駆動する。まず、回転電機10について説明する。図2に示すように、電動機または発電機として機能する回転電機10は、図示しないケーシングに固定されたステータ12と、ステータ12と所定の空隙をあけて径方向内側に対向配置され、ステータ12に対し回転可能なロータ14とを備える。なお、「径方向」とは、ロータの回転中心軸に対し直交する放射方向をいう(以下、特に断らない限り「径方向」の意味は同じである。)。
また、ステータ12は、磁性材製のステータコア16と、ステータコア16に配設された複数相(より具体的には例えばU相、V相、W相の3相)のステータ巻線20u,20v,20wとを含む。ステータコア16の周方向複数個所には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数の第1ティースである、ティース18が配置されており、各ティース18間に第1スロットであるスロット22が形成されている。なお、「周方向」とは、ロータの回転中心軸を中心として描かれる円形に沿う方向をいう(以下、特に断らない限り「周方向」の意味は同じである。)。
すなわち、ステータコア16の内周面には、径方向内側へ(ロータ14へ向けて)突出する複数のティース18が、ロータ14の回転軸である回転中心軸周りの周方向に沿って互いに間隔をおいて配列されており、各ティース18間にスロット22が、周方向に互いに間隔をおいて形成されている。すなわち、ステータコア16には、複数のスロット22が、ロータ14の回転軸まわりの周方向に互いに間隔をおいて形成されている。
各相のステータ巻線20u,20v,20wは、スロット22を通ってステータコア16のティース18に短節集中巻で巻装されている。このように、ティース18にステータ巻線20u,20v,20wが巻装されることで磁極が構成される。そして、複数相のステータ巻線20u,20v,20wに複数相の交流電流を流すことで、周方向に並べられたティース18が磁化し、周方向に回転する回転磁界をステータ12に生成することができる。なお、ステータ巻線20u,20v,20wは、このようにステータ12のティース18に巻線する構成に限定するものではなく、例えばティース18から外れたステータコア16の環状部分の周方向複数個所に複数相のステータ巻線を巻線するトロイダル巻きとし、ステータ12に回転磁界を生じさせることもできる。
ティース18に形成された回転磁界は、その先端面からロータ14に作用する。図2に示す例では、3相(U相、V相、W相)のステータ巻線20u,20v,20wがそれぞれ巻装された3つのティース18により1つの極対が構成されている。
一方、ロータ14は、磁性材料製のロータコア24と、複数のロータ巻線28n,28sとを含む。ロータコア24の外周面の周方向複数個所には、径方向外側に向けて(ステータ12に向けて)突出して設けられた複数の磁極部であり、突部であり、かつ第2ティースである主突極26が、ロータコア24の周方向に沿って互いに間隔をおいて配置されており、各主突極26がステータ12と対向している。ロータコア24の環状部分及び複数の主突極26は、磁性鋼板を複数積層した積層体等の磁性材により、一体に設けられている。より詳しくは、ロータ14の周方向に関して1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線28nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線28nを巻線した主突極26と隣り合う別の主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線28sをそれぞれ集中巻きで巻線している。また、ロータ14は、周方向に隣り合う主突極26の間に形成された第2スロットであるスロット29(図3、図4)を有する。すなわち、ロータコア24には、複数のスロット29が、ロータ14の回転軸まわりの周方向に互いに間隔をおいて形成されている。
また、図2から図4に示すように、各第1ロータ巻線28nは、主突極26の先端側(図2〜4の上端側)に巻かれた第1誘導巻線30と、第1誘導巻線30に接続された第1共通巻線32とを含む。第1共通巻線32は、第1誘導巻線30が巻かれる主突極26において、第1誘導巻線30よりも根元側(図2〜4の下端側)に巻かれている。また、各第2ロータ巻線28sは、各第1ロータ巻線28nが巻かれた主突極26と周方向に隣り合う別の主突極26の先端側に巻かれた第2誘導巻線44と、第2誘導巻線44に接続された第2共通巻線46とを含む。第2共通巻線46は、第2誘導巻線44が巻かれる主突極26において、第2誘導巻線44よりも根元側に巻かれている。なお、図2〜4に示す例では、各主突極26の周囲に巻かれる誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46は、それぞれ主突極26の周囲の長さ方向(図4の上下方向)に沿って設けられたソレノイドが、主突極26の周方向(図4の左右方向)に複数層整列した整列巻きで配置されている。なお、各主突極26の先端側に巻かれる誘導巻線30,44は、主突極26の周囲に複数回、すなわち複数ターン分、渦巻状に巻いた構成とすることもできる。
図4、図5Aに示すように、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線44の一端とを、2個の磁気特性調整部であり整流素子である第1ダイオード48及び第2ダイオード50を介して接続している。すなわち、図5Aは、本実施の形態において、ロータ14(図4)の周方向に隣り合う主突極26に巻装された2個のロータ巻線28n,28sの接続回路の等価回路を示す図である。図5Aに示すように、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線44の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード48及び第2ダイオード50を介して、接続点Rで接続されている。
また、図4、図5Aに示すように、各組で1個の主突極26に巻かれた第1共通巻線32の一端は、別の主突極26に巻かれた第2共通巻線46の一端に接続されている。第1共通巻線32及び第2共通巻線46は互いに直列に接続されることで、共通巻線組52を形成している。さらに、第1共通巻線32の他端は接続点Rに接続され、第2共通巻線46の他端は、第1誘導巻線30及び第2誘導巻線44の接続点Rとは反対側の他端に接続されている。また、各ロータ巻線28n,28sの誘導巻線30,44及び共通巻線32,46の巻回中心軸は、ロータ14(図2)の径方向と一致している。なお、各誘導巻線30,44及び共通巻線32,46は、対応する主突極26に、樹脂等により造られる電気絶縁性を有するインシュレータ(図示せず)等を介して巻装することもできる。
このような構成では、後述するように、第1誘導巻線30、第2誘導巻線44、第1共通巻線32及び第2共通巻線46に整流された電流が流れることで主突極26が磁化し、磁極部として機能する。また、図2に戻って、ステータ巻線20u,20v,20wに交流電流を流すことで、ステータ12が回転磁界を生成するが、この回転磁界は、基本波成分の磁界だけでなく、基本波よりも高い次数の高調波成分の磁界を含んでいる。
より詳しくは、ステータ12に回転磁界を発生させる起磁力の分布は、各相のステータ巻線20u,20v,20wの配置や、ティース18及びスロット22によるステータコア16の形状に起因して、(基本波のみの)正弦波分布にはならず、高調波成分を含むものとなる。特に、集中巻においては、各相のステータ巻線20u,20v,20wが互いに重なり合わないため、ステータ12の起磁力分布に生じる高調波成分の振幅レベルが増大する。例えばステータ巻線20u,20v,20wが3相集中巻の場合は、高調波成分として、入力電気周波数の時間的3次成分であり、空間的な2次成分の振幅レベルが増大する。このようにステータ巻線20u,20v,20wの配置やステータコア16の形状に起因して起磁力に生じる高調波成分は空間高調波と呼ばれている。
ステータ12からロータ14に、この空間強調波成分を含む回転磁界が作用すると、空間高調波の磁束変動により、ロータ14の主突極26間の空間に漏れ出す漏れ磁束の変動が発生し、これにより図2に示す各誘導巻線30,44の少なくともいずれかの誘導巻線30,44に誘導起電力が発生する。また、ステータ12から近い、主突極26の先端側の誘導巻線30,44は、主に誘導電流を発生させる機能を有し、ステータ12から遠い、共通巻線32,46は、主に主突極26を磁化する機能を有する、すなわち電磁石として機能する。また、図5Aの等価回路から理解されるように、隣り合う主突極26(図2〜図4)に巻装された誘導巻線30,44を流れる電流の合計が共通巻線32,46にそれぞれ流れる電流となる。また、隣り合う共通巻線32、46同士を直列に接続しているので、両方で巻き数を増加させたのと同じ効果を得られ、各主突極26に流れる磁束を同じとしたままで各共通巻線32,46に流す電流を低減できる。
そして、各誘導巻線30,44に誘導起電力が発生すると、第1誘導巻線30、第2誘導巻線44、第1共通巻線32及び第2共通巻線46にダイオード48,50の整流方向に応じた直流電流が流れ、ロータ巻線28n,28sが巻装された主突極26が磁化することで、この主突極26が磁極の固定された磁石である磁極部として機能する。図4に示す、周方向に隣り合う第1ロータ巻線28nと第2ロータ巻線28sとで巻き方向が逆になっており、周方向に隣り合う主突極26同士で磁化方向が逆になる。図示の例では、第1ロータ巻線28nが巻装された主突極26の先端にN極が生成され、第2ロータ巻線28sが巻装された主突極26の先端にS極が生成されるようにしている。このため、ロータ14の周方向においてN極とS極とが交互に配置される。このように、各ダイオード48,50(図4)は、各主突極26に巻かれた複数のロータ巻線28n,28sに発生する誘導起電力によって複数の主突極26に生じる磁気特性を、周方向に交互に異ならせている。
また、各ダイオード48,50は、対応する誘導巻線30,44に接続され、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応する誘導巻線30,44に流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合う誘導巻線30,44に流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。A相は、対応する主突極26の先端側にN極を生成するものであり、B相は、対応する主突極26の先端側にS極を生成するものである。
また、図2に示すように、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の幅θは、ロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46は、それぞれ主突極26に短節巻きで巻装されている。より好ましくは、ロータ14の周方向に関する各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の幅θは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく、あるいはほぼ等しくしている。ここでの各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の幅θについては、各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の断面積を考慮して、各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の断面の中心幅で表すことができる。すなわち、各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の内周面の幅と外周面の幅との平均値で各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の幅θを表すことができる。なお、ロータ14の電気角は、ロータ14の機械角にロータ14の極対数pを乗じた値で表される(電気角=機械角×p)。このため、周方向に関する各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46の幅θは、ロータ14の回転中心軸から各誘導巻線30,44及び各共通巻線32,46までの距離をrとすると、以下の(1)式を満たす。
θ<π×r/p (1)
このように幅θを規制している理由は、後で詳しく説明する。
また、本実施形態では、ロータ14は、周方向の複数個所に配置された主突極26の周方向両側面から突出する補助突極54を含んでいる。補助突極54は、各主突極26の軸方向(図2、図3の表裏方向)のほぼ全長にわたり、各主突極26の周方向両側面から、周方向に対し傾斜した方向にそれぞれ突出する板状の磁性体である。例えば、図示の例では、補助突極54は、各主突極26の周方向両側面の径方向中間部に、先端に向かうほどロータ14の径方向外側になるように周方向に対し傾斜している。複数の補助突極54は、主突極26の周方向の両側面において、第1誘導巻線30と第1共通巻線32との間、及び、第2誘導巻線44と第2共通巻線46との間のそれぞれから突出している。すなわち補助突極54は、主突極26に磁気的に接続されている。
また、同じスロット29内に配置される2個の補助突極54は互いに直接にはスロット29内で結合されず、先端部は互いに離れている。このような補助突極54は、ロータコア24及び主突極26と同じ磁性材料により形成することができる。例えば、ロータコア24、各主突極26及び各補助突極54を、磁性鋼板の積層体等により一体に形成することができる。
また、各主突極26に巻かれた各ロータ巻線28n,28sのうち、誘導巻線30,44と共通巻線32,46とは、対応するスロット29内で補助突極54で仕切られて分離されている。同じ主突極26に巻かれる誘導巻線30,44と共通巻線32,46とは、ロータコア24の軸方向端面よりも外側に設けられる図示しない片側または両側のコイルエンド側等、補助突極54から外れた部分で互いに接続されている。なお、各誘導巻線30,44と各共通巻線32,46とは互いに異なる材料により形成することもできる。例えば、各共通巻線32,46は銅線等の導電性材料により形成し、各誘導巻線30,44は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の、共通巻線32,46を構成する導電性材料よりも軽量な別の導電性材料により形成することもできる。また、図3に示すように、各主突極26の先端部に周方向両側に突出する鍔部58を形成して、誘導巻線30,44(44は図2参照)の抜け止めを図ることもできる。
このような回転電機10は、図1の回転電機駆動システム34により駆動する。回転電機駆動システム34に設けられた蓄電装置40は、直流電源として設けられ、充放電可能であり、例えば二次電池により構成する。インバータ36は、U相、V相、W相の3相のアームAu,Av,Awを備え、各相アームAu,Av,Awは、それぞれ2のスイッチング素子Swを直列に接続している。スイッチング素子Swは、トランジスタ、IGBT等である。また、各スイッチング素子Swに逆並列にダイオードDiを接続している。さらに、各アームAu,Av,Awの中点は、回転電機10を構成する対応する相のステータ巻線20u、20v、20wの一端側に接続されている。ステータ巻線20u、20v、20wにおいて、同じ相のステータ巻線同士は互いに直列に接続され、異なる相のステータ巻線20u、20v、20wが中性点で接続されている。
また、蓄電装置40の正極側及び負極側は、インバータ36の正極側と負極側とにそれぞれ接続されており、蓄電装置40とインバータ36との間にコンデンサ56が、インバータ36に対し並列に接続されている。制御装置38は、例えば車両のアクセルペダルセンサ(図示せず)等から入力される加速指令信号に応じて回転電機10のトルク目標を算出し、トルク目標等に応じた電流指令値に応じて各スイッチング素子Swのスイッチング動作を制御する。制御装置38には、3相のうち、少なくとも2相のステータ巻線(例えば20u、20v)側に設けられた電流センサ60で検出された電流値を表す信号と、レゾルバ等の回転角度検出部62(図7)で検出された回転電機10のロータ14の回転角度を表す信号とがそれぞれ入力される。制御装置38は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータを含むもので、インバータ36のスイッチング素子Swのスイッチングを制御することにより、回転電機10のトルクを制御する。制御装置38は、機能ごとに分割された複数の制御装置により構成することもできる。
このような制御装置38は、インバータ36を構成する各スイッチング素子Swのスイッチング動作により蓄電装置40からの直流電力を、U相、V相、W相の3相の交流電力に変換して、ステータ巻線20u、20v、20wの各相に対応する相の電力を供給することを可能とする。回転電機駆動システム34は、例えば、車両用走行動力発生装置として、エンジンと走行用モータとを駆動源として備えるハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車等に搭載して使用される。なお、蓄電装置40とインバータ36との間に電圧変換部であるDC/DCコンバータを接続して、蓄電装置40の電圧を昇圧してインバータ36に供給可能とすることもできる。
上記の回転電機10では、3相のステータ巻線20u,20v,20wに3相の交流電流を流すことでティース18に形成された回転磁界(基本波成分)がロータ14に作用し、これに応じて、ロータ14の磁気抵抗が小さくなるように、主突極26がティース18の回転磁界に吸引される。これによって、ロータ14にトルク(リラクタンストルク)が作用する。
さらに、ティース18に形成された空間高調波成分を含む回転磁界がロータ14の各ロータ巻線28n,28sに鎖交すると、各ロータ巻線28n,28sには、空間高調波成分に起因するロータ14の回転周波数(回転磁界の基本波成分)と異なる周波数の磁束変動によって、各ロータ巻線28n,28sに誘導起電力が発生する。この誘導起電力の発生に伴って各ロータ巻線28n,28sに流れる電流は、各ダイオード48,50により整流されることで一方向(直流)となる。そして、各ダイオード48,50で整流された直流電流が各ロータ巻線28n,28sに流れるのに応じて各主突極26が磁化することで、各主突極26が磁極が(N極かS極のいずれか一方に)固定された磁石として機能する。前述のように、ダイオード48,50によるロータ巻線28n,28sの電流の整流方向が互いに逆方向であるため、各主突極26に生じる磁石は、周方向においてN極とS極が交互に配置されたものとなる。
図6は、本実施形態において、ステータ12からロータ14に、補助突極54を通過しつつ磁束が流れる様子を示す模式図である。例えば、図6に示すようにステータ12の各相のステータ巻線20u、20v、20wを巻装したティース18が、ロータ巻線28n,28sを巻装した主突極26に径方向に完全には(全部)が対向していないで、少なくとも1個のティース18がロータ14の周方向に関して隣り合う2個の主突極26の間の中央位置に対向する場合を考える。また、この状態で、図6の破線矢印で示すように、ステータ12からロータ14に、ステータ12の起磁力として、空間的2次の空間高調波の磁束であるq軸磁束が流れる場合を考える。この場合、補助突極54があることで空間高調波をステータ12の(図6ではW相の)ティース18から補助突極54を介して、主突極26へ多く誘導し、主突極26から別の(図6ではU相、V相の)ティース18へ誘導して、誘導巻線30,44に多くの磁束を鎖交させることができる。図6は、1つのティース18からq軸磁束の最大の磁束が流れる位相角に対応する状態を示しており、電気的1周期の中でq軸磁束の向き及び大きさが変化する。また、図6では、破線矢印αが誘導巻線30に鎖交する磁束を示しており、破線矢印βが誘導巻線44に鎖交する磁束を示している。この場合、S極となる主突極26に巻かれた第2誘導巻線44に第2ダイオード50(図4)が接続され、第2ダイオード50は、対応する主突極26をS極とする方向に電流を流す。このため、S極側の主突極26にq軸磁束によりS極をN極とする方向に磁束が流れようとし、これを妨げる方向に第2誘導巻線44に誘導電流が流れようとし、その流れは第2ダイオード50で妨げられない。この結果、図6の実線矢印で示すように主突極26に誘導電流による磁束が流れる。また、ステータ12のティース18からN極の主突極26を介して補助突極54にq軸磁束が流れようとする場合もあり、N極の主突極26をS極とする方向に磁束が流れようとするときに、これを妨げる方向にN極の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30に誘導電流が流れようとする。この場合、第1誘導巻線30に接続された第1ダイオード48(図4)が、対応する主突極26をN極とする方向に電流を流す。この場合も図6の実線矢印で示すように主突極26に誘導電流による磁束が流れる。このため、各主突極26がN極またはS極に磁化する。上記のように各主突極26の両側面から補助突極54が突出しているので、補助突極54がない、すなわち各スロット29内で周方向に隣り合う主突極26同士の間に空間しかない場合に比べて、各誘導巻線30,44に鎖交する磁束の振幅の最大値を大きくできるので、鎖交磁束の変化を大きくできる。
そして、各主突極26(磁極が固定された磁石)の磁界がステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と相互作用して、吸引及び反発作用が生じる。このステータ12により生成される回転磁界(基本波成分)と主突極26(磁石)の磁界との電磁気相互作用(吸引及び反発作用)によっても、ロータ14にトルク(磁石トルクに相当するトルク)を作用させることができ、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。このように回転電機10は、ステータ巻線20u,20v,20wへの供給電力を利用してロータ14に動力(機械的動力)を発生させる電動機として機能させることができる。
また、第1誘導巻線30に流れる誘導電流と、第2誘導巻線44に流れる誘導電流との位相はずれるので、第1誘導巻線30と第2誘導巻線44とに、それぞれ位相がずれた半波整流が生成される。これに対して、第1共通巻線32と第2共通巻線46とには、第1誘導巻線30と第2誘導巻線44とに流れる電流の和の大きさの電流が流れるので、例えば連続して大きな直流電流が流れるようになる。このため、各主突極26に磁極が形成されやすくなり、ロータ14のトルクを増大できる。
しかも、本実施形態の回転電機10によれば、ロータ14は、各主突極26の周方向側面から突出し、磁性を有する補助突極54を含むので、ステータ12で生成される回転磁界に含まれ、ロータ巻線28n,28sに鎖交する高調波成分である空間高調波、例えば、時間3次である空間2次の高調波成分を、補助突極54により有効に増大させることができる。例えば、ステータ12で生成される起磁力分布の高調波成分の多くの磁束をステータ12のティース18から、補助突極54を介して主突極26へ誘導して、ロータ巻線28n,28sに多くの磁束を鎖交させることができる。また、高調波成分の多くの磁束をティース18から主突極26を介して補助突極54へ誘導して、ロータ巻線28n,28sに多くの磁束を鎖交させることもできる。このため、ロータ巻線28n,28sに鎖交する磁束の磁束密度の変化を大きくし、ロータ巻線28n,28sに誘導される誘導電流を大きくでき、主突極26に形成される電磁石である磁極の磁力を強くできる。このため、ロータ磁力を増加させ、回転電機10を大型化することなく、回転電機10のトルクを向上できる。また、ステータ巻線20u、20v、20wに流すステータ電流を小さくしても所望のトルクを得られるので、銅損を低減でき、効率向上を図れる。この結果、回転電機10のトルク及び効率を向上させることができる。
また、図1の回転電機駆動システム34が備える制御装置38は、ロータ巻線28n,28s(図2)の巻回中心軸方向である磁極方向と同方向に界磁磁束を発生させるようにステータ巻線20u、20v、20wに電流を流すためのd軸電流指令に、パルス状に増大させる増大パルス電流を重畳させるとともに、d軸電流指令を増大パルス電流の重畳期間以外で補正するd軸パルス重畳補正手段64(図7)を有する。これについて、図7を用いて詳しく説明する。図7は制御装置38のうち、インバータ制御部の構成を示す図である。制御装置38は、図示しない電流指令算出部と、d軸パルス重畳補正手段64と、減算部66,68と、PI演算部70,72と、3相/2相変換部74と、2相/3相変換部76と、回転角度検出部62と、図示しないPWM信号生成部及びゲート回路とを含む。
電流指令算出部は、予め作成されたテーブル等にしたがって、ユーザから入力される加速指示に応じて算出される回転電機10のトルク指令値に応じて、d軸、q軸に対応する電流指令値Id*,Iq*を算出する。ここで、d軸とは、回転電機10の周方向に関してロータ巻線28n,28sの巻回中心軸方向である磁極方向をいい、q軸とはd軸に対し電気角で90度進んだ方向をいう。例えば、上記の図2に示すようにロータ14の回転方向が規定される場合、d軸方向、q軸方向は、図2に矢印で示したような関係で規定される。また、電流指令値Id*,Iq*は、それぞれd軸電流成分の指令値であるd軸電流指令値、q軸電流成分の指令値であるq軸電流指令値である。このようなd軸、q軸を用いて、ステータ巻線20u、20v、20wに流す電流をベクトル制御により決定することが可能となる。
図7に示すように、3相/2相変換部74は、回転電機10に設けられた回転角度検出部62により検出された回転電機10の回転角度θと、電流センサ60により検出された2相の電流(例えばV相、W相の電流Iv、Iw)とから、2相の電流であるd軸電流値Id、q軸電流値Iqとを算出する。なお、電流センサ60により2相の電流しか検出していないのは、2相の電流の和が0となるため、1相の電流は算出で求めることができるからである。ただし、U相、V相、W相の電流を検出し、その電流値からd軸電流値Id、q軸電流値Iqを算出することもできる。
d軸パルス重畳補正手段64は、d軸電流指令に重畳させる増大パルス電流を生成するとともに、d軸電流指令の補正量を算出するd軸パルス生成補正部78を有する。図8は、本実施形態において、ステータ電流に対応するd軸電流指令(Id突極軸電流成分)及びq軸電流指令(Iq凹極軸電流成分)と、ロータ巻線28n,28s(図2)に誘導されるロータ電流(Irc)と、回転電機10(図2)のトルクとの時間的変化を示す図である。以下の説明では、図1〜7に示した要素と同一の要素には同一の符号を付して説明する。なお、図8で示す「Ircロータ電流」は、各共通巻線32,46に流れる誘導電流である(後述する図10、12、14で同様である)。d軸パルス生成補正部78は、図8に示すように、d軸電流指令値に重畳させるパルス電流を生成するとともに補正量を算出する。すなわち、d軸パルス生成補正部78は、パルス状に増大する、すなわち急激に増大してから急激に減少する増大パルス電流を生成する。図8の「Id突極軸電流成分」は、d軸電流指令にパルス電流が重畳され、補正量で補正された後の重畳後d軸電流指令値である。
この場合、増大パルス電流が重畳されるd軸パルス重畳期間Tpdで電流増大量Wuが電流減少量Wdよりも小さくなる(Wu<Wd)ようにする。これに伴って、d軸パルス生成補正部78は、d軸電流指令に増大パルス電流が重畳されないd軸非パルス重畳期間Tnpdでのd軸電流指令を徐々に増大させるような補正量を算出する。d軸パルス生成補正部78で生成された増大パルス電流と補正量とは、図7のd軸電流指令Id*に加算部によって重畳させる、すなわち加算して、重畳後d軸電流指令値Idsum*を生成する。この場合、増大パルス電流は、d軸電流指令値Id*に一定周期で重畳させる。次いで、重畳後d軸電流指令値Idsum*は、対応する減算部66に出力される。したがって、d軸パルス重畳補正手段64は、d軸電流において、d軸パルス重畳期間Tpdで電流増大量Wuを電流減少量Wdよりも小さくすることで、d軸非パルス重畳期間Tnpdでの重畳後d軸電流指令値Idsum*であるId突極軸電流成分を徐々に増大させるように、d軸電流指令Id*を補正する。
また、減算部66は、重畳後d軸電流指令値Idsum*と3相/2相変換部74で変換されたd軸電流Idとの偏差δIdを求めて、d軸に対応するPI演算部70に偏差δIdを入力する。
また、q軸に対応する減算部68は、q軸電流指令値Iq*と3相/2相変換部74で変換されたq軸電流Iqとの偏差δIqを求めて、q軸に対応するPI演算部72に偏差δIqを入力する。なお、q軸電流指令値Iq*は、トルク指令に対応して算出される一定値である。PI演算部70,72は、それぞれに入力された偏差δId,δIqについて、所定ゲインによるPI演算を行って制御偏差を求め、制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を算出する。
2相/3相変換部76は、PI演算部70,72から入力された各電圧指令値Vd*,Vq*に基づいて、回転電機10の回転角度θから得られた、1.5制御周期後に位置すると予測される予測角から、U相、V相、W相の3相の電圧指令値Vu、Vv、Vwに変換する。電圧指令値Vu、Vv、Vwは、図示しないPWM信号生成部でPWM信号に変換され、PWM信号は、図示しないゲート回路に出力される。ゲート回路は、制御信号を印加するスイッチング素子Swを選択することにより、スイッチング素子Swのオンオフを制御する。このように、制御装置38は、ステータ巻線20u、20v、20wに流れるステータ電流をdq軸座標系に変換してd軸電流成分及びq軸電流成分とし、フィードバック制御を含むベクトル制御により、目標トルクに対応する各相のステータ電流が得られるようにインバータ36を制御する。
制御装置38がこのように構成されるので、図8に示すように、ロータ巻線28n,28sである各共通巻線32,46に、誘導電流であるロータ電流が生じる。この場合、d軸パルス重畳期間Tpdで、d軸電流は急激に増大してから急激に減少し、その反作用として、ロータ電流では、急激に減少してから急激に増大する。上記のようにd軸電流指令の増大量Wuが減少量Wdよりも小さくなるので、ロータ電流では、増大量が減少量よりも大きくなる。また、d軸電流はd軸非パルス重畳期間Tnpdで徐々に増大するので、その反作用として、ロータ電流はd軸非パルス重畳期間Tnpdで徐々に減少するが、d軸パルス重畳期間Tpdでロータ電流の増大量が大きくなっていることで、d軸非パルス重畳期間Tnpdでのロータ電流の絶対量が増大する。図8で破線αは、後述する図10の比較例でのロータ電流を示している。比較例では、d軸電流において、d軸パルス重畳期間Tpdの増大量と減少量とが同じになっている。このように、d軸パルス重畳補正手段64は、d軸電流指令に増大パルス電流を重畳させるとともに、d軸非パルス重畳期間Tnpdでの少なくとも一部でロータ巻線28n,28sで生じる誘導電流であるロータ電流を増大させるように、d軸電流指令Id*を補正する。
図9を用いて、d軸パルス重畳期間Tpdでのロータ電流の変化をさらに詳しく説明する。図9は、本実施形態において、d軸電流によりステータ12とロータ14とに磁束が通過する様子の1例を示す模式図である。図9に実線矢印で示すように、d軸パルス重畳期間Tpdの前期である、d軸電流が急激に上昇する場合に、d軸電流により、1つのティース18からロータ14のS極の主突極26、ロータコア24の環状部分、N極の主突極26に順に磁束が流れた後、別のティース18に流入する場合がある。この場合、磁束の流れを妨げるようにロータ巻線28n,28sの共通巻線32,46(図6)に流れる電流が急激に減少する。なお、図9では、説明の簡略化のために補助突極を省略し、誘導巻線及び共通巻線の区別を省略し、ロータ巻線28n,28sが分断されたように示している。
これに対して、図9に破線矢印で示すように、d軸パルス重畳期間Tpdの後期である、d軸電流が急激に減少する場合に、d軸電流により、見かけ上、図9の実線矢印方向とは逆方向に流れるように磁束が変化する。この場合、N極の主突極26でS極になろうとする方向に磁束が流れ、それを妨げる方向にロータ巻線28nに誘導電流が流れようとするとともに、S極の主突極26でN極になろうとする方向に磁束が流れ、それを妨げる方向にロータ巻線28sに誘導電流が流れようとする。このため、図9の矢印X、Y方向にロータ巻線28n,28sの共通巻線32,46に流れる電流が急激に上昇し、その流れはダイオード48,50でブロックされない。特に、図8で示したように、d軸パルス重畳期間Tpdでd軸電流の増大量が減少量よりも小さいので、ロータ巻線28n,28sに流れるロータ電流が大きくなり、回転電機10のトルクも増大する。図8で破線βは、d軸電流においてd軸パルス重畳期間Tpdの増大量と減少量とが同じになる、後述する図10の比較例での回転電機のトルクを示している。なお、図8で示すように、ロータ電流及び回転電機10のトルクは、d軸非パルス重畳期間Tnpdでロータ巻線28n,28sの直流抵抗成分に起因して徐々に減少する。
なお、d軸電流指令Id*に重畳される増大パルス電流は、図8のように三角波とする場合に限定せず、矩形波、台形波、複数の曲線や直線から突起状に形成された波形の、いずれかとすることもできる(後述する図14で示す、他の実施形態で説明するq軸電流指令Iq*に重畳される減少パルス電流の場合も同様である)。
このような回転電機駆動システム34によれば、増大パルス電流が重畳されないd軸非パルス重畳期間Tnpdでのd軸電流を徐々に増大させることで、d軸パルス重畳期間Tpdでの増大パルス電流の減少時の減少量Wdが大きくなる。このため、ロータ巻線28n,28sに誘導されるロータ電流の電流増加時間が伸び、電流増大量Pu(図8)が大きくなる。したがって、d軸非パルス重畳期間Tnpdでの回転電機10のトルクの減少量に対しトルクを十分に補うことができる。d軸パルス重畳期間Tpdの開始時と終了時とでの電流アンバランス分は、d軸非パルス重畳期間Tnpdでのd軸電流の変化で補える。しかも、d軸電流での増大パルス電流の電流上昇時のピーク値を過度に上昇させずに済む。この結果、電磁石型である回転電機10のトルクを有効に増大でき、回転電機10に高い性能を発揮させることができる。また、d軸電流に対する増大パルス電流の重畳により、回転電機10の低速回転時や停止時のトルクを有効に増大させることができる。
これに対して、図10は、比較例の回転電機制御システムにおいて、ステータ電流に対応するd軸電流指令(Id突極軸電流成分)と、ロータ巻線に誘導されるロータ電流(Irc)との時間的変化を示す図である。図10の比較例の場合、制御部は、上記の本実施形態の場合に有するd軸パルス重畳補正手段64(図7)の代わりに、d軸電流指令Id*に一定周期で増大パルス電流を重畳させるd軸パルス重畳手段(図示せず)を有する。比較例において、その他の構成は、上記の実施形態と同様である。このため、図10に示すように、d軸電流指令Id*に増大パルス電流が重畳された重畳後d軸電流指令であるId突極軸電流成分では、d軸パルス重畳期間Tpdの前後でのd軸電流が一致している。すなわち、d軸パルス重畳期間Tpdでd軸電流の増大量と減少量とは同じである。
これに伴って、ロータ巻線の共通巻線に生じる誘導電流であるロータ電流では、d軸パルス重畳期間Tpdの前期で急激に減少し、後期で急激に増大する。ただし、d軸電流指令Id*に増大パルス電流が重畳されないd軸非パルス重畳期間Tnpdでは、ロータ巻線の直流抵抗成分に起因して、ロータ巻線に蓄えられた磁気エネルギが消費され、ロータ電流が徐々に減少する。このため、比較例では、d軸電流指令Id*に対して増大パルス電流を重畳させる構成において、ロータ電流を増大させ、回転電機のトルクを増大させる面から改良の余地がある。上記の本実施形態によれば、このような不都合を解消でき、図8に実線γで示す本実施形態の回転電機のトルクを、図8に破線βで示す比較例のトルクよりも増大できる。なお、図8の重畳後d軸電流指令である「Id突極軸電流成分」で、増大パルス電流は前期で正の値から立ち上がり、後期で負の値まで減少しているが、Id突極軸電流成分の全体を正の方向(図8の上方向)、または負の方向(図8の下方向)にずらすこともできる。例えば、増大パルス電流は、0から立ち上がり、負の値でさらに小さい値まで減少するようにすることもできる。
また、本実施の形態では、図1に示す各ロータ巻線28n,28sにおいて、ロータ14の周方向に関する幅θを上記の(1)式で述べたように規制している。このため、ロータ巻線28n,28sに発生する、回転磁界の空間高調波による誘導起電力をより大きくすることができる。すなわち、空間高調波によるロータ巻線28n,28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)は、周方向に関するロータ巻線28n,28sの幅θにより影響を受ける。ここで、周方向に関するロータ巻線28n,28sの幅θを変化させながら、ロータ巻線28n,28sへの鎖交磁束の振幅(変動幅)を計算した結果を図11に示している。図11では、コイル幅θを電気角に換算して示している。図11に示すように、コイル幅θが180°から減少するにつれてロータ巻線28n,28sへの鎖交磁束の変動幅が増大しているため、コイル幅θを180°よりも小さくする、すなわちロータ巻線28n,28sを短節巻とすることで、全節巻と比較して、空間高調波による鎖交磁束の振幅を増大させることができる。
したがって、回転電機10(図2)では、周方向に関する各主突極26の幅を電気角で180°に相当する幅よりも小さくし、ロータ巻線28n,28sを各主突極26に短節巻で巻装することで、ロータ巻線28n,28sに発生する空間高調波による誘導起電力を効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクを効率よく増大させることができる。
さらに、図11に示すように、コイル幅θが90°の場合に、空間高調波による鎖交磁束の振幅が最大となる。したがって、空間高調波によるロータ巻線28n,28sへの鎖交磁束の振幅をより増大させるためには、周方向に関する各ロータ巻線28n,28sの幅θがロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しい(あるいはほぼ等しい)ことが好ましい。このため、ロータ14の極対数をpとし、ロータ14の回転中心軸からロータ巻線28n,28sまでの距離をrとした場合に、周方向に関する各ロータ巻線28n,28sの幅θは、以下の(2)式を満たす(あるいはほぼ満たす)ことが好ましい。
θ=π×r/(2×p) (2)
このようにすることで、ロータ巻線28n,28sに発生する空間高調波による誘導起電力を最大にすることができ、誘導電流により各主突極26に発生する磁束を最も効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクをより効率よく増大させることができる。すなわち、幅θが90°に相当する幅を大きく超えると、互いに打ち消し合う方向の起磁力がロータ巻線28n,28sに鎖交しやすくなるが、90°に相当する幅よりも小さくなるのにしたがって、その可能性が低くなる。ただし、幅θが90°に相当する幅よりも大きく減少すると、ロータ巻線28n,28sに鎖交する起磁力の大きさが大きく低下する。このため、幅θを約90°に相当する幅とすることでそのような不都合を防止できる。このため、周方向に関する各ロータ巻線28n,28sの幅θは、電気角で90°に相当する幅に略等しくすることが好ましい。
このように、本実施形態では、各ロータ巻線28n,28sのロータ14の周方向に関する幅θを電気角で90°に相当する幅に略等しくした場合に、ロータ巻線28n,28sに発生する、回転磁界の空間高調波による誘導起電力を大きくすることができ、各ロータ巻線28n,28sに流れる誘導電流により生成される磁極部である主突極26の磁束を最も効率よく増大させることができる。この結果、ロータ14に作用するトルクをより効率よく増大させることができる。
なお、本実施形態では、制御装置38(図7)がd軸電流指令Id*に増大パルス電流を重畳させる一方、q軸電流指令Iq*にはパルス電流を重畳させない場合を説明した。ただし、制御装置38は、d軸電流指令Id*に対する増大パルス電流の重畳と同時に、q軸電流指令Iq*にパルス状に減少する、すなわち急激に減少してから急激に増大する減少パルス電流を重畳させることもできる。
また、本実施形態では、図3に示すように、補助突極54は、主突極26の周方向側面に周方向に対し傾斜する方向に突出形成しているが、補助突極54は、周方向両側面に周方向に突出させ、中間部で径方向に曲げるように形成することもできる。また、補助突極54の先端部に、周方向の幅が大きくなった幅広部を設けることもできる。
また、本実施形態では、各主突極26の両側面に補助突極54を突出形成し、各スロット29に配置され、互いに周方向に隣り合う補助突極54の先端部同士を分離させている。ただし、各スロット29に配置され、互いに周方向に隣り合う補助突極54の先端部同士を、スロット29内で連結することもできる。
なお、上記の図4、図5Aに示した構成では、ロータ14の周方向に隣り合う2個の主突極26を1組として、各組で1個の主突極26に巻かれた第1誘導巻線30の一端と、別の主突極26に巻かれた第2誘導巻線44の一端とを、2個の整流素子である第1ダイオード48及び第2ダイオード50を介して接続する場合を説明した。ただし、本実施形態では、図5Bのように構成することもできる。図5Bは、ロータ巻線に接続するダイオードの数を少なくした別例を示す、図5Aに対応する図である。図5Bに示す別例では、本実施形態において、ロータのN極となる周方向1つおきの主突極26(図6参照)の先端側に巻装した複数の第1誘導巻線30同士を直列に接続することで第1誘導巻線組118を形成し、ロータのS極となる周方向1つおきの主突極26の先端側に巻装した複数の第2誘導巻線44同士を直列に接続することで第2誘導巻線組120を形成している。第1誘導巻線組118及び第2誘導巻線組120の一端は、互いに順方向が逆になる第1ダイオード48及び第2ダイオード50を介して、接続点Rで接続されている。
また、図5Bに示すように、ロータの周方向に隣り合うN極及びS極の2つの主突極26(図6参照)を1組とした場合に、各組において第1共通巻線32及び第2共通巻線46同士を直列に接続することで共通巻線組52を形成するとともに、全部の主突極26に関する全部の共通巻線組52同士を直列接続している。さらに、直列接続した複数の共通巻線組52のうち、一端となる1つの共通巻線組52の第1共通巻線32の一端を接続点Rに接続し、他端となる別の共通巻線組52の第2共通巻線46の一端を、第1誘導巻線組118及び第2誘導巻線組120の接続点Rとは反対側の他端に接続している。このような構成では、上記の図4、図5Aに示した構成と異なり、ロータに設けるダイオードの総数を第1ダイオード48及び第2ダイオード50の2つに減らすことができる。この場合でも各主突極26の側面に補助突極54(図6参照)を形成し、補助突極54で仕切られた径方向外側と径方向内側との空間にそれぞれ誘導巻線30,44及び共通巻線32,46を配置することができる。
図12は、本発明の実施形態の別例の第1例において、d軸電流指令に増大パルス電流を重畳させるとともに、d軸非パルス重畳期間でd軸電流を徐々に減少させる場合を示す、図8に対応する図である。図12の別例の第1例では、上記の図1〜9に示した実施形態と異なり、回転電機10(図2)のトルクをより増大させることが目的ではなく、回転電機10のトルクをより安定化させることを目的としている。すなわち、上記の図10の比較例で説明したように、d軸電流指令Id*に単に増大パルス電流を重畳させるだけでは、増大パルス電流が重畳されないd軸非パルス重畳期間Tnpd(図10)でロータ巻線に生じるロータ電流は、ロータ巻線の直流抵抗成分に起因して徐々に減少する。この場合、回転電機のトルク変動が大きくなったり、振動や騒音の低下の面から改良の余地がある。図12の別例の第1例はこのような不都合を解消することを目的として考えたものである。なお、以下の説明において、上記の図1〜9に示した実施形態の場合と同様の要素には同一の符号を付して説明する。
上記の目的のために、図12の別例の第1例では、上記の図7に示した実施形態において、d軸パルス重畳補正手段64は、d軸電流において、増大パルス電流が重畳されるd軸パルス重畳期間Tpdで電流増大量Wuを電流減少量Wdよりも大きくする(Wu>Wd)ことで、d軸非パルス重畳期間Tnpdでの重畳後d軸電流指令であるId突極軸電流成分を徐々に減少させるように、d軸電流指令Id*を補正する。このため、図12と、上記の図8に示した実施形態とでのId突極軸電流成分の比較から分かるように、図12の例では、d軸パルス重畳期間Tpdで、d軸電流の増大量Wuが減少量Wdよりも大きくなり、d軸非パルス重畳期間Tnpdでのd軸電流が徐々に減少する。このため、d軸電流指令に対する増大パルス電流の重畳によるロータ電流を増大させ、回転電機10のトルクを増大させる効果は、上記の図1〜9の実施形態の場合よりも小さくなる可能性があるが、d軸非パルス重畳期間Tnpdで、ロータ電流の変化を小さくできるか、またはなくすことができる。すなわち、d軸非パルス重畳期間Tnpdで、d軸電流が減少することに伴って、その反作用としてロータ電流が増大しようとするので、上記のロータ巻線の直流抵抗成分に起因するロータ電流の減少が相殺されて、d軸非パルス重畳期間Tnpdでのロータ電流の変化を抑制できる。このため、d軸非パルス重畳期間Tnpdで回転電機10のトルクが減少するのを抑制でき、例えば、ほぼ一定に維持できる。この結果、電磁石型である回転電機10のトルク変動を抑制でき、回転電機10の駆動力の安定化と、振動及び騒音の抑制とを図れるので、回転電機10に高い性能を発揮させることができる。
なお、図12では、破線α、破線βが、それぞれ上記の図10の比較例の場合のロータ電流と回転電機のトルクとを示している(後述する図14の場合も同様である)。上記のように、d軸パルス重畳補正手段64は、d軸非パルス重畳期間Tnpdでのd軸電流指令Id*を徐々に減少させるようにするので、d軸非パルス重畳期間Tnpdの少なくとも一部でロータ巻線28n,28sで生じる誘導電流を(例えば図12の矢印Qで示す範囲である、d軸非パルス重畳期間Tnpdの後期で比較例よりも)増大させるようにd軸電流指令Id*が補正される。このため、d軸非パルス重畳期間Tnpdの少なくとも一部で回転電機10のトルクが(例えば図12の矢印Tで示す範囲であるd軸非パルス重畳期間Tnpdの後期で比較例よりも)増大する。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11に示した実施形態と同様である。
図13は、本発明の実施形態の別例の第2例の制御装置の構成を示す図である。図14は、別例の第2例において、q軸電流指令に減少パルス電流を重畳させるとともに、q軸非パルス重畳期間でd軸電流を徐々に減少させる場合を示す、図8に対応する図である。図13〜14の別例の第2例では、上記の図12の別例の第1例において、d軸電流指令Id*に増大パルス電流を重畳させるのではなく、q軸電流指令Iq*に周期的にパルス状に減少する、すなわち急激に減少してから急激に増大する減少パルス電流を重畳させる。これとともに、d軸電流指令Id*を補正して、q軸電流指令Iq*に減少パルス電流が重畳されないq軸非パルス重畳期間Tnpq(図14)でのロータ電流の変化を抑制するようにしている。このために、図13に示すように、別例の第2例では、制御装置38は、d軸補正手段82と、q軸パルス重畳手段84とを有する。ただし、上記の図1〜9の実施形態と異なり、d軸パルス重畳補正手段64(図7)は備えていない。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9の実施形態と同様である。以下、上記の図1〜9,11に示した実施形態と同等の要素には同一の符号を付して説明する。
q軸パルス重畳手段84は、q軸電流指令に周期的に上記の減少パルス電流を重畳させる。また、d軸補正手段82は、図14に示すように、d軸電流指令Id*(図7)において、q軸電流指令Iq*(図7)に減少パルス電流が重畳される、q軸パルス重畳期間Tpqの開始時T1のd軸電流d1を終了時T2のd軸電流d2よりも小さく(d1<d2)して、q軸非パルス重畳期間Tnpqでd軸電流を徐々に減少させるように、d軸電流指令Id*を補正する。例えば、図14の「Id突極軸電流成分」で実線δで示すように、q軸パルス重畳期間Tpqで補正後d軸電流指令であるId突極軸電流成分を、q軸非パルス重畳期間Tnpqで減少するd軸電流と同じ傾きで減少させ、その後、急激に増大させている。これによって、q軸パルス重畳期間Tpqの開始時T1のd軸電流d1が終了時T2のd軸電流d2よりも小さくなっている。なお、図14で一点鎖線ηで示すように、q軸パルス重畳期間Tpqの開始時T1から終了時T2に向かうにしたがって、d軸電流をほぼ直線状に増大させることで、q軸パルス重畳期間Tpqの開始時T1のd軸電流を終了時T2のd軸電流よりも小さく(d1<d2)することもできる。
いずれにしても、このようにd軸電流指令Id*を補正することで、q軸非パルス重畳期間Tnpqでd軸電流は徐々に減少する。q軸非パルス重畳期間Tnpqで、d軸電流が徐々に減少することに伴って、その反作用としてロータ電流が増大しようとするので、q軸非パルス重畳期間Tnpqでのロータ巻線28n,28sの直流抵抗成分に起因するロータ電流の減少が相殺されて、ロータ電流の変化を小さくできるか、またはなくせる等、抑制することができる。このため、q軸非パルス重畳期間Tnpqで回転電機10のトルクが減少するのを抑制でき、例えばほぼ一定に維持できる。この結果、図14に示すように、電磁石型である回転電機10のトルク変動を抑制でき、回転電機に高い性能を発揮させることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11に示した実施形態と同様である。
次に、上記の実施形態の回転電機駆動システムを構成する回転電機の他の構成例について説明する。以下に示すように、本発明では、種々の回転電機の構成例を使用できる。
例えば、図15は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例において、ステータとロータとの対向する部分の一部を示す概略断面図である。図15の構成例の回転電機10では、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26同士の間に、磁性材により構成される補助極86が設けられている。補助極86は、ロータコア24の外周面において、各スロット29の周方向中央部から径方向に突出形成された非磁性材の柱部88の先端部に結合されている。柱部88の根元部は、ロータコア24の外周面のスロット29の底部に結合されている。なお、柱部88は、磁性材により構成するとともに、強度確保を図れることを前提に、ロータ14の周方向に関する柱部88の断面積を、補助極86の周方向の断面積よりも十分に小さくすることもできる。
このような構成によれば、補助極86を含む部分に空間高調波成分が通過する磁路を形成しやすくでき、ステータ12で発生する回転磁界に含まれる空間高調波を補助極86に多く通過させ、空間高調波の磁束変動を高くすることができる。このため、ロータ巻線28n,28sに生じる誘導電流をより大きくして、回転電機10のトルクをより増大できる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例と同様である。
図16は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例において、ステータとロータとの対向する部分の一部を示す概略図である。上記の実施形態では、ロータ14の各主突極26に誘導巻線30,44及び共通巻線32,46を巻装する場合を説明した。これに対して、図16の構成例の回転電機では、各主突極26にロータ巻線90n、90sを巻装するとともに、周方向1つおきの主突極26に巻装されるロータ巻線90nと、ロータ巻線90nが巻装される主突極26と隣り合う別の主突極26に巻装される別のロータ巻線90sとが互いに電気的に分断されるようにしている。すなわち、ロータ14は、周方向1つおきの主突極26に複数の第1ロータ巻線90nをそれぞれ集中巻きで巻線し、第1ロータ巻線90nを巻線した主突極26と隣り合う主突極26であって、周方向1つおきの主突極26に、複数の第2ロータ巻線90sをそれぞれ集中巻きで巻線している。
また、複数の第1ロータ巻線90nを直列接続した第1ロータ巻線回路92nに1つの第1ダイオード48を接続し、複数の第2ロータ巻線90sを直列接続した第2ロータ巻線回路92sに1つの第2ダイオード50を接続している。すなわち、ロータ14の周方向に1つおきに配置された複数の第1ロータ巻線90nは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第1ダイオード48が各第1ロータ巻線90nと直列に接続され、第1ロータ巻線回路92nが構成されている。各第1ロータ巻線90nは、同じ磁極(N極)として機能する主突極26に巻装されている。
また、複数の第2ロータ巻線90sは、電気的に直列に接続され、かつ無端状に接続されるとともに、その間の一部に第2ダイオード50が各第2ロータ巻線90sと直列に接続され、第2ロータ巻線回路92sが構成されている。各第2ロータ巻線90sは、同じ磁極(S極)として機能する主突極26に巻装されている。周方向に隣り合う(異なる磁極の磁石が形成される)主突極26に巻装されたロータ巻線90n、90sは、互いに電気的に分断されている。
また、ロータ14の周方向に隣り合う主突極26同士で、異なる磁極の磁石が形成されるように、各ダイオード48,50によるロータ巻線90n、90sの電流の整流方向を互いに逆にしている。すなわち、周方向において隣り合うように配置された第1ロータ巻線90nと第2ロータ巻線90sとで流れる電流の向き(ダイオード48,50による整流方向)、すなわち順方向が互いに逆になるようにダイオード48,50がロータ巻線90n、90sに接続されている。ダイオード48,50は、互いに逆向きでロータ巻線90n、90sに接続されている。
各ダイオード48,50は、ステータ12で生成される空間高調波を含む回転磁界による誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線90n、90sに流れる電流を整流することで、ロータ14の周方向に隣り合うロータ巻線90n、90sに流れる電流の位相を、A相とB相とに交互に異ならせている。また、ダイオード48,50は、誘導起電力の発生により、対応するロータ巻線90n、90sに流れる電流を独立して整流し、各ロータ巻線90n、90sに流れる電流により生成される周方向複数個所の主突極26の磁気特性を周方向に交互に異ならせている。この構成では、ダイオード48,50の数を全体で2つに減らすことができ、ロータ14の巻線構造を簡略化することができる。
また、各主突極26の周方向両側面に突出する補助突極54で、各主突極26に巻かれたロータ巻線90n、90sを先端側と根元側とに分けているが、ロータ巻線90n、90sの先端側及び根元側同士は直列に接続している。図16に示した構成の場合も、回転電機10に高い性能を発揮させることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例と同様である。
また、図17に示す回転電機の他の構成例のように、各主突極26に巻装されたロータ巻線90n、90sごとにそれぞれ1つずつ第1ダイオード48または第2ダイオード50を短絡するように接続することもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例と同様である。
また、図18に示す回転電機10の他の構成例のように、ロータコア24の外周面の周方向複数個所から突出する第2ティースである突極114の周方向両側面から突出形成する補助突極54(図2、16、17等参照)をなくすこともできる。この場合、回転電機10のトルクが上記の図16の構成例の場合よりも劣るが、図18の構成例でも、回転電機10に高い性能を発揮させることができる。その他の構成及び作用は、上記の図16の構成例と同様である。
なお、上記の図16の構成例の回転電機10のように、周方向に隣り合う主突極26に巻装されるロータ巻線90n、90s同士が互いに電気的に分断される構成例において、補助突極54の一部のみ、例えば主突極26に対して周方向片側に配置される補助突極54のみを省略することもできる。また、図示は省略するが、上記の図17の構成例のように、各主突極26に巻装されたロータ巻線90n、90sごとにそれぞれ1つずつの第1ダイオード48または第2ダイオード50で短絡されるように接続する構成で、補助突極54の一部または全部をなくすこともできる。
図19は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図19の構成例では、ロータコア24に第2スロットであるスリット(空隙)94を形成し、ロータ14の磁気抵抗を回転方向に応じて変化させている。図19の構成例では、ロータコア24において、複数のスリット94を径方向に配置するように形成した部分の周方向中央部の磁路をq軸磁路部分96とし、ロータ巻線90n、90sを配置した磁極部方向の磁路をd軸磁路部分98としている。ステータ12(図2参照)と対向するd軸磁路部分98及びq軸磁路部分96が周方向において交互に配置されるようにスリット94が形成されており、周方向においてd軸磁路部分98がq軸磁路部分96間に位置する。
各ロータ巻線90n,90sは、スリット94を通って磁気抵抗の低いq軸磁路部分98に巻装されている。この場合、スリット94はロータコア24において、ロータ14が固定される回転軸100回りの周方向に互いに間隔をおいて形成されており、ロータ巻線90n、90sは、一部がスリット94に配置されるように、ロータコア24の外周部の周方向複数個所に巻装されている。図19に示す構成例では、ステータ12で形成された空間高調波成分を含む回転磁界が各ロータ巻線90n,90sに鎖交することで、各ロータ巻線90n,90sに各ダイオード48,50で整流された直流電流が流れて各d軸磁路部分98が磁化する結果、各d軸磁路部分98が磁極の固定された磁石(磁極部)として機能する。また、周方向に関する各d軸磁路部分98の幅(各ロータ巻線90n,90sの幅θ)をロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、ロータ巻線90n,90sを各d軸磁路部分98に短節巻で巻装することで、ロータ巻線90n,90sに発生する空間高調波による誘導起電力を効率よく増大させることができる。さらに、ロータ巻線90n,90sに発生する空間高調波による誘導起電力を最大にするためには、周方向に関する各ロータ巻線90n,90sの幅θを、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく(あるいはほぼ等しく)することが好ましい。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例と同様である。
図20は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図20の構成例では、ロータコア24は、磁性材料製のロータコア本体102と複数の永久磁石104とを含み、ロータコア24に永久磁石104を配設している。図20の構成例では、磁極の固定された磁石として機能する複数の磁極部106が周方向に互いに間隔をおいた状態でステータ12(図2参照)と対向配置されており、各磁極部106にロータ巻線90n,90sが巻装されている。この場合、ロータコア24の周方向複数個所に第2スロットであるスリット108が形成されており、ロータ巻線90n、90sは、それぞれの一部がスリット108に配置されるように、ロータコア24の外周部の周方向複数個所に巻装されている。各永久磁石104は、周方向において磁極部106間に位置する部分に、ステータ12と対向配置されている。ここでの永久磁石104については、ロータコア24の内部に埋設されていてもよいし、ロータコア24の表面(外周面)に露出していてもよい。また、ロータコア24の内部に永久磁石104をV字状に配置することもできる。図20の構成例では、ステータ12で形成された空間高調波成分を含む回転磁界が各ロータ巻線90n、90sに鎖交することで、各ロータ巻線90n、90sに各ダイオード48,50で整流された直流電流が流れて各磁極部106が磁化する結果、各磁極部106が磁極の固定された磁石として機能する。
また、周方向に関する各磁極部106の幅(各ロータ巻線90n,90sの幅θ)をロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、さらに好ましくは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく(あるいはほぼ等しく)する。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例または図19の構成例と同様である。
図21は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図21の構成例では、ロータ巻線90n、90sをトロイダル巻きにしている。すなわち、図21の構成例では、ロータコア24は環状コア部110を含み、複数の突極114が、環状コア部110の周方向複数個所から径方向外側へ突出している。ロータ巻線90n、90sは、環状コア部110における各突極114付近の位置にトロイダル巻きで巻装されている。また、ロータ巻線90n、90sは、それぞれの一部がスロット29に配置されるように、ロータコア24の周方向複数個所に巻装されている。図21の構成例でも、ステータ12(図2参照)で形成された空間高調波成分を含む回転磁界が各ロータ巻線90n、90sに鎖交することで、各ロータ巻線90n、90sに各ダイオード48,50で整流された直流電流が流れ、各突極114が磁化する。その結果、ロータ巻線90n付近に位置する突極114がN極として機能し、ロータ巻線90s付近に位置する突極114がS極として機能する。また、周方向に関する各突極114の幅θをロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、さらに、好ましくは、ロータ14の電気角で90°に相当する幅に等しく(あるいはほぼ等しく)する。
その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例または図19の構成例と同様である。なお、図21の構成例で、すべての突極114に巻装されたロータ巻線90n,90sを互いに電気的に分断することもできる。
図22は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図22の構成例の回転電機10では、ロータ14は、ロータコア24と、ロータコア24の周方向複数個所に配置され、巻装されたロータ巻線90n、90sとを含み、ロータコア24は、磁性材料製のロータコア本体112と、ロータ14の周方向複数個所に配置された永久磁石104とを含む。ロータコア24の周方向複数個所に、径方向に伸びる柱部等の磁極部106が形成され、ロータ巻線90n、90sは、各磁極部106に巻装されている。すなわち、ロータコア24の周方向複数個所に第2スロットであるスリット108が形成されており、ロータ巻線90n、90sは、それぞれの一部がスリット108に配置されるように、ロータコア24の外周部の周方向複数個所に巻装されている。
永久磁石104は、ロータ14の周方向複数個所の、各ロータ巻線90n,90sとロータ14の周方向に関して一致する部分に設けられた磁極部106の内部に配置され、すなわち埋設されている。逆に言えば、各永久磁石104の周囲にロータ巻線90n,90sが巻装されている。永久磁石104は、ロータ14の径方向に着磁させるとともに、その着磁方向を、ロータ14の周方向に隣り合う永久磁石104同士で異ならせている。図22(後述する図23も同様。)において、永久磁石104の上に配置された実線矢印は、永久磁石104の磁化方向を表している。なお、磁極部106は、ロータ14の周方向複数個所に径方向に伸びるように配置した突極等により構成することもできる。
ロータ14は、周方向に関して異なる磁気的突極特性を有する。ロータ14のうち、各永久磁石104から周方向に外れ、周方向に関して磁極部106と外れた位置である、周方向に隣り合う磁極部106の間の周方向中央部の磁路をq軸磁路とし、各ロータ巻線90n,90sの巻回中心軸と周方向に一致する磁路をd軸磁路としている。各永久磁石104は、ロータ14の周方向複数個所に位置するd軸磁路に配置されている。
また、各磁極部106に巻装されたロータ巻線90n,90sは、互いに電気的に接続されておらず分断(絶縁)されている。そして、電気的に分断された各ロータ巻線90n,90sに、ダイオード48(または50)が接続されている。また、ロータ14の周方向の1つ置きの一部のロータ巻線90nに接続されたダイオード48と、残りのロータ巻線90sに接続されたダイオード50との電流の流れ方向を逆にして、互いの順方向を逆にしている。このため、各ロータ巻線90n,90sは、ダイオード48(または50)を介して短絡されている。したがって、各ロータ巻線90n,90sに流れる電流が一方向に整流される。
ロータ巻線90n,90sにダイオード48,50の整流方向に応じた直流電流が流れると、ロータ巻線90n,90sが巻装された磁極部106が磁化することで、この磁極部106が磁極の固定された磁石として機能する。図22にロータ巻線90n,90sの、ロータ14の径方向に関する外側に示した破線矢印の向きは、磁極部106の磁化方向を表している。
また、図22に示すように、ロータ14の周方向に隣り合うロータ巻線90n,90s同士で直流電流の方向が互いに逆方向になる。そして、ロータ14の周方向に隣り合う磁極部106同士で磁化方向が互いに逆になる。例えば、図22では、ロータ14の周方向1つ置きの磁極部106である、ロータ巻線90nとロータ14の周方向に一致する部分の径方向外側にN極が配置され、N極の磁極部106と周方向に隣り合う磁極部106である、ロータ巻線90sとロータ14の周方向に一致する部分の径方向外側にS極が配置されるようにする。ロータ14の周方向に隣り合う2つの磁極部106(N極及びS極)により、1つの極対が構成される。また、各永久磁石104の磁化方向と、各永久磁石104に対しロータ14の周方向に一致する磁極部106の磁化方向とを一致させている。
また、ロータ14の周方向に関する各磁極部106の幅がロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定されている。そして、周方向に関する各ロータ巻線90n,90sの幅θはロータ14の電気角で180°に相当する幅よりも短く設定し、さらに好ましくは、電気角で90°に相当する幅と等しく(またはほぼ等しく)する。
このような回転電機10において、3相のステータ巻線20u,20v,20wに3相の交流電流を流すことでステータ12(図2)に生成された高調波成分を含む周波数の回転磁界がロータ14に作用する。そしてこれに応じて、ロータ14に、リラクタンストルクTreと永久磁石生成トルクTmgとロータ巻線生成トルクTcoilとが作用して、ロータ14がステータ12で生成される回転磁界(基本波成分)に同期して回転駆動する。ここで、リラクタンストルクTreは、各磁極部106が、ステータ12が生成した回転磁界に吸引されることにより発生するトルクである。また、永久磁石生成トルクTmgは、各永久磁石104により生成される磁界とステータ12の回転磁界との相互作用である、吸引及び反発作用により生じるトルクである。また、ロータ巻線生成トルクTcoilは、ステータ12により発生する起磁力の空間高調波成分がロータ巻線90n,90sに作用することにより、ロータ巻線90n,90sに誘導される電流によるトルクであり、各磁極部106により生成される磁界とステータ12の回転磁界との電磁気的相互作用である、吸引及び反発作用により生じるトルクである。
このような本構成例の回転電機10によれば、回転電機10のトルクを有効に高くすることができる。また、ロータ巻線90n,90sに流れる誘導電流により、各永久磁石104内の磁束変動が抑えられるため、各永久磁石104内部での渦電流損失が抑えられ、磁石発熱を低減できる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例または図19の構成例と同様である。
図23は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図23の構成例では、複数のロータ巻線90n,90sのうち、ロータ14の周方向において1つおきに配置された一部のロータ巻線90n同士を電気的に直列接続し、周方向において1つおきに配置された残りのロータ巻線90s同士を電気的に直列接続している。また、互いに電気的に接続されたロータ巻線90n(または90s)を含む回路により、互いに電気的に分断された2組のロータ巻線回路92n、92sを構成している。
また、2組のロータ巻線回路92n、92sにそれぞれ、互いに異なる極性を有するダイオード48,50を、1つおきのロータ巻線90n,90sに対して直列に接続し、それぞれのロータ巻線回路92n、92sに流れる電流の向きを一方向に整流している。その他の構成及び作用は、上記の図22の構成例と同様である。
図24は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図24の構成例の回転電機を構成するロータ14は、ロータコア24と、複数のロータ巻線90n、90sとを有する。ロータコア24は、外周面の周方向複数個所に径方向に突出する突極114を設けた構成とし、各ロータ巻線90n、90sを、ロータ14の周方向に隣り合う突極114の間に配置している。すなわち、各ロータ巻線90n、90sは、内部が空間部となる空芯状態で配置される。また、ロータ14の周方向に関してロータ巻線90n、90sの間部分が、ステータ12(図2参照)側に突出し、ロータコア24は磁気的突極特性を有する。この場合、ロータ巻線90n、90sは、それぞれの一部または全部がスロット29に配置されるように、ロータコア24の外周部の周方向複数個所に巻装されている。
このようなロータ14の場合、ロータ14の周方向に関して突極114と一致する磁路がq軸磁路となり、ロータ14の周方向に関してロータ巻線90n,90sと一致する位置がd軸磁路となる。
このような構成例では、ロータ14に永久磁石が配置されていないが、ロータ14の回転方向にかかわらず回転電機のトルクを大きくできる。すなわち、ロータ14の回転方向にかかわらず、電流位相−トルク特性が同じになり、しかもトルクの最大値が高くなり、トルクを有効に高くすることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例または図23の構成例と同様である。
図25は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図25の構成例の回転電機を構成するロータ14では、上記の図19に示した構成例のロータコア24において、複数のスリット94を径方向に配置するように形成した部分の周方向中央部の磁路をd軸磁路部分98とし、d軸磁路部分98にロータ巻線90n、90sを配置している。また、ロータコア24において、周方向に隣り合うd軸磁路部分98の間をq軸磁路部分96としている。ステータ12(図2参照)と対向するd軸磁路部分98及びq軸磁路部分96が周方向において交互に配置されるようにスリット94が形成されており、周方向においてd軸磁路部分98がq軸磁路部分96間に位置する。
このような構成例の場合も、ロータ14に永久磁石が配置されていないが、ロータ14の回転方向にかかわらず回転電機のトルクを大きくできる。その他の構成及び作用は、上記の図19または図24の構成例と同様である。
図26は、本発明の実施の形態を構成する回転電機の他の構成例のロータを示す概略図である。図26の構成例の回転電機を構成するロータ14では、ロータコア24は、磁性材料製のロータコア本体116と複数の永久磁石104とにより構成されている。また、ロータコア本体116に磁気的突極特性を持たせず、ロータコア本体116の外周面の周方向複数個所に永久磁石104を固定している。また、ロータコア24は、永久磁石104間にスロット29がロータ14の回転中心軸まわりの周方向に互いに間隔をおいて形成されている。また、各永久磁石104の周囲にロータ巻線28n,28sが巻装されている。この場合、ロータ巻線90n、90sは、それぞれの一部がスロット29に配置されるように、ロータコア24の外周部の周方向複数個所に巻装されている。本構成例では、ロータ14の周方向複数個所の、各永久磁石104と周方向に一致する部分を磁極部としている。また、各ロータ巻線90n、90sを、隣り合うロータ巻線90n、90s同士で異なる極性を有するダイオード48,50で短絡している。その他の構成及び作用は、上記の図1〜9,11の実施形態、または、図12〜14の別例の第1例または第2例または図19の構成例と同様である。
以上の実施形態及び構成例の説明では、ステータ12とロータ14とが回転軸に対し直交する径方向において対向配置されているラジアル型の回転電機の場合を説明した。ただし、上記の実施形態を構成する回転電機は、ステータとロータとが回転軸と平行方向(回転軸方向)において対向配置されたアキシャル型の回転電機であってもよい。また、上記では、ステータの径方向内側にロータが対向配置された場合を説明したが、ステータの径方向外側にロータが対向配置された構成でも本発明を実施できる。
なお、図示は省略するが、上記の実施形態において、制御部は、q軸電流指令に、パルス状に減少する減少パルス電流を重畳させるとともに、q軸電流指令に増大パルス電流が重畳されないq軸非パルス重畳期間の少なくとも一部でロータ巻線で生じる誘導電流を増大させるように、q軸電流指令を補正するq軸パルス重畳補正手段を有する回転電機駆動システムの構成を採用することもできる。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。本発明では、例えばアキシャルギャップ型の回転電機等を備える構成を採用することもできる。