以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図1〜図7は、本発明に係る内燃機関の排気再循環システムの第1実施形態を示しており、この実施形態は、本発明を多気筒内燃機関である直列4気筒のディーゼルエンジン10(以下、単にエンジン10という)に適用したものである。
図1および図2に示すように、本実施形態のエンジン10は、その本体ブロック10Mに複数の気筒11を有しており、このエンジン10には、各気筒11内の燃焼室(詳細を図示していない)に燃料を噴射するコモンレール型の燃料噴射装置12と、燃焼室に空気を吸入させる吸気装置13と、燃焼室からの排気ガスを排気させる排気装置14と、排気装置14内の排気エネルギを利用して吸気装置13内で吸入空気を圧縮し燃焼室に空気を過給するターボ過給機15と、このターボ過給機15より上流側の高圧側の排気ガスの一部を吸気側に還流させ再循環させるHPL−EGR装置16(高圧EGR装置)と、このターボ過給機15より下流側の低圧側の排気ガスの一部を吸気側に還流させ再循環させるLPL−EGR装置17(低圧EGR装置)とが装備されている。
燃料噴射装置12は、図外の燃料タンクから燃料を汲み上げて高圧の燃圧(燃料圧力)に加圧し吐出するサプライポンプ21と、そのサプライポンプ21からの燃料が導入されるコモンレール22と、このコモンレール22を通して供給される燃料を後述するECU(電子制御ユニット)50からの噴射指令信号に対応するタイミングおよび開度(デューティー比)で燃焼室内に噴射する燃料噴射弁23とを含んで構成されている。なお、サプライポンプ21は、例えばエンジン10の回転動力を利用して駆動され、コモンレール22はサプライポンプ21から供給された高圧燃料を均等な圧力に保ちながら複数の燃料噴射弁23に分配・供給する。燃料噴射弁23は、電磁駆動される公知のニードル弁で構成され、噴射指令信号に応じてその開弁時間を制御されることにより噴射指令信号に応じた噴射量の燃料(例えば軽油)を燃焼室内に噴射・供給することができる。
吸気装置13には、吸気マニホールド31と、それより上流側の吸気管32と、吸気管32の最上流部でフィルタにより吸入空気を清浄化するエアクリーナ33と、ターボ過給機15より下流側の吸気管部32b内で吸入空気コンプレッサ15aによる圧縮により昇温した過給空気を冷却するインタークーラ34(中間冷却器)と、新気の吸入流量を検出するエアフローメータ35と、エンジン10内への吸気量を調整するスロットル弁36と、吸気マニホールド31の上流側で吸気温度を検出する吸気温度センサ37(図2参照)とが、それぞれ装着されている。
排気装置14は、排気マニホールド41と、それより下流側の排気管42と、アイドル時に排気温度を上げることができるとともにLPL−EGR装置17の背圧を制御することができる排気絞り弁43と、ターボ過給機15より下流側の排気管42に装着された公知の酸化触媒コンバータおよびディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)からなる排気浄化ユニット44と、排気浄化ユニット44を通過した排気ガスの温度を検出する排気温度センサ47と、排気浄化ユニット44を通過した排気ガス中の空燃比(リーン領域の排気ガス中の酸素濃度およびリッチ領域の排気ガス中の未燃ガス濃度)を検出することができるA/Fセンサ48と、を含んで構成されている。
ターボ過給機15は、互いに回転方向一体に結合された吸入空気コンプレッサ15aおよび排気タービン15bを有し、排気エネルギにより排気タービン15bを回転させるとともに吸入空気コンプレッサ15aを回転させることで、この吸入空気コンプレッサ15aにより吸入空気を圧縮してエンジン10内に正圧の空気を供給することができる。
HPL−EGR装置16は、排気マニホールド41および吸気管32の間に介装されたHPL−EGRパイプ61(高圧側排気還流管部)と、このHPL−EGRパイプ61の途中に装着されて排気ガスの還流量を調整することができるHPL−EGR弁62と、を有している。
HPL−EGRパイプ61は、排気管42内の排気通路のうち排気タービン15bより上流側の上流側排気管部42aまたは排気マニホールド41の内部と、吸気管32のうち吸入空気コンプレッサ15aより下流側の下流側吸気管部32bまたは吸気マニホールド31の内部とを連通させ、排気タービン15bを抵抗要素としてそれより上流側で高圧となる高圧側の排気ガスをエンジン10の吸気マニホールド31の直前または内部に還流させることができるようになっており、還流させた排気ガスを吸入空気コンプレッサ15a側から過給される空気と共にエンジン10に吸入させることができるようになっている。このHPL−EGRパイプ61は、吸気マニホールド31および排気マニホールド41と共にエンジン10に高圧側の排気ガスを再循環させる高圧側排気再循環経路L1を形成するとともに、その内部に高圧側排気再循環経路L1の主要部をなす高圧側排気還流通路61wを形成している。また、HPL−EGR弁62は、HPL−EGRパイプ61内の高圧側排気還流通路61wを開通させる開弁状態と、この高圧側排気還流通路61wの開通を制限(例えば遮断)する閉弁状態とに切替え可能になっている。
LPL−EGR装置17は、排気管42および吸気管32の間に介装されたLPL−EGRパイプ71(低圧側排気還流管部)と、このLPL−EGRパイプ71の途中に装着されて排気ガスの還流量を調整することができるLPL−EGR弁72(低圧EGR弁)と、LPL−EGRパイプ71内を通る排気ガスをその途中で冷却することができるLPL−EGRクーラ73(排気冷却器)と、LPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wの排気還流方向においてLPL−EGR弁72およびLPL−EGRクーラ73(排気冷却器)よりも上流側に配置された異物捕集フィルタ74と、下流側の排気管42内の排気通路42wのうち排気浄化ユニット44より下流側の排気通路部分でその通路断面積を絞るように開度を縮小させることができる前述の排気絞り弁43と、を有している。
LPL−EGRパイプ71は、排気管42のうち排気タービン15bより下流側の下流側排気管部42bと吸気管32のうち吸入空気コンプレッサ15aより上流側の上流側吸気管部32aとを連通させ、排気タービン15bを抵抗要素としてそれより下流側で低圧となる低圧側の排気ガスを上流側吸気管部32a内に還流させることができるようになっており、還流させた排気ガスを上流側吸気管部32a内に導入された吸入空気と共に吸入空気コンプレッサ15aにより圧縮させた後にエンジン10に再度吸入させることができるようになっている。
また、LPL−EGRパイプ71は、LPL−EGRパイプ71が吸気管32に接続される位置J1より下流側の吸気管32およびLPL−EGRパイプ71が排気管42に接続される位置J2より上流側の排気管42と共に、エンジン10に低圧側の排気ガスを再循環させる低圧側排気再循環経路L2を形成するとともに、その内部に低圧側排気再循環経路L2の主要部をなす低圧側排気還流通路71wを形成している。
LPL−EGR弁72は、LPL−EGRクーラ73と吸気管32の上流側吸気管部32aとの間に配置されて低圧側の排気ガスの還流量を制御する、開閉および開度制御可能な弁であり、低圧側排気還流通路71wを開通させる開弁状態と、この低圧側排気還流通路71wの開通を制限(例えば遮断)する閉弁状態とに切替え可能になっている。
LPL−EGRクーラ73は、詳細を図示しないが、低圧側排気還流通路71wの一部を形成するガス管部と、そのガス管部の周囲に冷却用流体通路を形成するハウジング部とを有しており、ハウジング部に導入される冷却用流体(例えば、エンジン冷却水)とガス管部内の低圧側排気還流通路71wの一部を通る還流排気ガスとの間における熱交換によって、低圧側の還流排気ガスを冷却できるようになっている。
異物捕集フィルタ74は、FOD(Foreign Object Damage)フィルタと呼ばれる網目の細かいメッシュ状のもので、排気浄化ユニット44を通過した還流排気ガス中の混入異物、例えばスパッタ(溶接時の飛散物)や排気浄化ユニット44からの脱落片等の異物がLPL−EGR弁72やターボ過給機15の吸入空気コンプレッサ15aに入ってダメージを与えたりすることがないよう、そのような異物をLPL−EGR弁72およびLPL−EGRクーラ73より排気還流方向の上流側で捕集して還流排気ガス中から除去するようになっている。
インタークーラ34は、LPL−EGR装置17によって形成される低圧側排気再循環経路L2のうち吸入空気コンプレッサ15aより下流側の第3区間内において、吸入空気コンプレッサ15aからの過給空気(圧縮により昇温した空気)を冷却するようになっている。このインタークーラ34は、詳細を図示しないが、低圧側排気還流通路L2の一部となる吸気通路32wの第3区間の一部を形成するガス管部と、そのガス管部の周囲に冷却用流体通路を形成するハウジング部とを有しており、ハウジング部に導入される冷却用流体(例えば、エンジン冷却水)とガス管部内を通る低圧側の還流排気ガスとの間における熱交換によって、低圧側の還流排気ガスを冷却できるようになっている。
HPL−EGR装置16およびLPL−EGR装置17は、電子制御ユニットであるECU50(制御装置)によってHPL−EGR弁62およびLPL−EGR弁72の開閉動作および開度を制御され、吸気管32の下流側吸気管部32bへの高圧側排気ガスの還流量(以下、HP流量ともいう)と、吸気管32の上流側吸気管部32aへの低圧側排気ガスの還流量(以下、LP流量ともいう)とをそれぞれに制御されるようになっている。
ECU50は、詳細なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、A/D変換器やバッファ等を有する入力インターフェース回路、および、駆動回路等を有する出力インターフェース回路を含んで構成されている。そして、このECU50が、エンジン10の運転制御、例えばサプライポンプ21の吐出制御(例えば、その電磁スピル弁の制御)、燃料噴射弁23による燃料噴射量制御、スロットル弁36の開度制御、HPL−EGR弁62およびLPL−EGR弁72の開度(EGR率)制御、排気絞り弁43の開度制御等を実行するようになっている。
図2に示すように、ECU50には、エアフローメータ35、吸気温度センサ37、排気温度センサ47およびA/Fセンサ48の他に、図外のアクセルペダルの踏み込みを検出するアクセル開度センサ101、スロットル弁36の開度を検出するスロットル開度センサ102、所定角度単位のクランク軸回転信号を出力するクランク角センサ103、エンジン10の冷却水温を検出する水温センサ104、吸気マニホールド31の入口付近でエンジン10の過給圧を検出する吸気管内圧力センサ105、外気温度を検出する外気温度センサ106、低圧側排気還流通路71wの両端(図1中の位置j1,j2)の間の差圧を検出するLP差圧センサ107(差圧検出部)、エンジン10が搭載された車両の走行速度または車輪回転速度を検出する車速センサ108等がそれぞれ接続されており、これらのセンサ群35,37,47,48および101〜108からのセンサ情報がECU50に取り込まれるようになっている。一方、ECU50には、図示しないそれぞれの駆動回路を介してサプライポンプ21(例えば、その電磁スピル弁)、複数の燃料噴射弁23、スロットル弁36、HPL−EGR弁62、LPL−EGR弁72(具体的には、これらの電磁駆動部(符号無し))がそれぞれ接続されている。また、ECU50のROMには、入力インターフェース回路に取り込まれるアクセル開度センサ101からの加速要求やクランク角センサ103からのエンジン回転数等を所定時間毎に取り込んでエンジン10の燃焼室内への燃料噴射量等を算出するための演算処理プログラムやマップ等が格納されている。
ところで、本実施形態のエンジン10においては、HPL−EGR装置16およびLPL−EGR装置17により排気管42側から吸気管32側に排気ガスを還流させてエンジン10に再度吸入させる高圧側排気再循環経路L1および低圧側排気再循環経路L2を形成し、かつ、低圧側排気再循環経路L2を通る低圧側の排気ガスをLPL−EGRクーラ73により冷却するようにしている。したがって、特に、低圧側排気再循環経路L2の主要部をなす低圧側排気還流通路71wにおいて、酸性の凝縮水が発生し易くなる。
そこで、HPL−EGR装置16およびLPL−EGR装置17を制御するECU50は、次に述べるように、詰まり判定部51、制御条件設定部52およびEGR制御部53の機能のそれぞれを発揮できるように、ROM内にこれらの機能部に対応する制御プログラムを内蔵している。
詰まり判定部51は、LPL−EGR装置17によって形成される低圧側排気再循環経路L2中の凝縮水の量を推定する凝縮水量推定手段の機能を併有しており、低圧側排気再循環経路L2のうち少なくとも特定通路区間における凝縮水の発生量を推定するようになっている。
また、詰まり判定部51は、低圧側排気再循環経路L2内の特定通路区間において還流排気ガスから生じる凝縮水の量を推定して、その推定した凝縮水の量が所定値より大きい(所定値を超える、または所定値以上である)ときに、LPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wに低圧側の排気ガスの還流を妨げる詰まりが生じたと判定し、その推定した凝縮水の量が所定値より大きくない(所定以下である、または所定値未満である)ときに、LPL−EGRパイプ71内に低圧側の排気ガスの還流を妨げる詰まりが生じていないと判定するようになっている。
ここにいう特定通路区間とは、低圧側排気再循環経路L2のうち凝縮水の発生量が増加し異物捕集フィルタ74に水膜が形成されるときに、その凝縮水の発生量が急増する通路区間、例えばLPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wのうち異物捕集フィルタ74の近傍であって還流排気ガスを冷却するLPL−EGRクーラ73の近傍の通路区間であるが、低圧側排気再循環経路L2の複数個所(複数の通路区間)における凝縮水量の総和であってもよい。
また、ここにいう所定値とは、LPL−EGR装置17によって形成される低圧側排気再循環経路L2中の凝縮水の量が多くなり、LPL−EGR弁72より上流側に配置された異物捕集フィルタ74に付着した凝縮水によって水膜が形成され、LPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wに予め設定された許容圧力損失レベルを超える圧力損失が生じるような詰まりが発生するときの凝縮水量の値(後述する閾値水量αに相当する)である。
具体的には、詰まり判定部51における凝縮水量の推定は、低圧側排気再循環経路L2中に生じる凝縮水量の概略値を公知の方法により推定するもの、例えば凝縮水の発生量が異物捕集フィルタ74に水膜が形成される程度の水量に達する蓋然性が高いエンジン10の運転状態をその冷却水温度から判別するもの(後述する)や、排気管温度が所定値より低い時間が継続した低温継続時間に応じて推定するもの(例えば、特開2007−205303号公報参照)、管壁温度等を考慮して凝縮水量を算出・推定するもの(例えば、特開2009−228564号公報参照)であってもよいが、本実施形態では、ECU50の処理負荷や装置コストを抑えつつ凝縮水量を精度良くかつ安定して推定できるものとなっている。
すなわち、詰まり判定部51は、例えば凝縮水量算出の対象区間となる前記特定通路区間内で発生する凝縮水量を予めROM内に格納された算出モデルによって算出・推定するとともに、その対象区間内で単位時間毎に発生する凝縮水量Qw1(推定発生量;図3参照)のうち下流側に持ち去られる持ち去られ凝縮水量Qw2を予めの実験結果を基に作成したマップM1とその引数となるセンサ情報とにより推定し、凝縮水の発生量Qw1の推定値から持ち去られ凝縮水量Qw2の推定値を差し引いて実際に発生したことになる凝縮水量(以下、凝縮水量Qwaという)を算出・推定するようになっている。
より具体的には、マップM1は、図3に示すように、例えば専ら対象区間内を単位時間毎に通る低圧側排気ガスの還流量の増加に対応して増加する傾向となる持ち去られ凝縮水量Qw2を、特定通路区間について予めの実験によって求めたものであるか、さらに低圧EGRガス温度を引数に含めて凝縮水量をより精度良く推定可能にしたマップで構成される。ここで、単位時間毎の低圧側の排気ガスの還流量(以下、LP流量という)は、例えばLP差圧センサ107の検出値から算出可能である。あるいは、気筒11内に入る直前の過給空気の温度および圧力から得られる単位時間毎の全シリンダ吸入空気量から単位時間毎の高圧側の排気ガスの還流量(以下、HP流量という)および新気の吸入流量(エアフローメータ35の検出吸気量)を差し引いた値としても算出可能である。
また、詰まり判定部51での算出モデルによる凝縮水の発生量Qw1の算出においては、まず、外気温度や大気圧、吸気マニホールド31の入口付近の吸入空気の温度および圧力等を基に、吸入空気中の水分量(蒸気/空気(mol%)=水蒸気圧/大気圧)および露点温度を算出するとともに、吸入空気の組成(各気体分子(N2 ,O2 ,Ar)および水(H2O)のモル比)を求め、さらに、既知の燃料および吸入空気組成成分の質量と、センサ情報として得られる吸入空気量および制御値として把握している燃料噴射量から求まる空燃比とに基づき、燃焼前後のガスの分子量をガス中の各成分のモル比と質量(次に述べる式中では括弧付の値と記号で示す)の積の和で表したモデル、例えば燃焼前のガスの分子量=(1)・CHx+(1+x/4+a)・O2+(b)・N2+(c)・Ar+(d)・H2O に対して、既燃ガスすなわち燃焼後のガスの分子量=(1)・CO2+(x/2+d)・H2O+(a)・O2+(b)・N2+(c)・Arによって算出し、その算出結果と既燃ガスの温度および圧力の検出値とから求まる既燃ガスの蒸気圧、分子量および密度等に基づいて、既燃ガス中の水分量(既燃ガスの絶対湿度)を算出する。そして、詰まり判定部51は、その既燃ガス中の水分量と、特定通路区間(ここではLPL−EGRクーラ73および異物捕集フィルタ74の近傍区間)での冷却条件下における相対湿度100%の既燃ガス中の水分量との差として、異物捕集フィルタ74のガス出口の近傍における凝縮水の発生量Qw1を算出する。
そして、詰まり判定部51は、凝縮水の発生量算出値Qw1から持ち去られ凝縮水量Qw2を差し引いた今回の実発生の凝縮水量Qwa[g/s]が算出されると、その凝縮水量Qwaを、予めの実験結果に基づいて設定された閾値水量αと比較するようになっており、その凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えるか否かにより、低圧側排気還流通路71wが異物捕集フィルタ74に付着した凝縮水の水膜によって閉塞される前記詰まりが発生し得る凝縮水の発生量か否かを判定するようになっている。
ここでの閾値水量αは、低圧側排気還流通路71wに異物捕集フィルタ74を通して還流排気ガスが流入するときに凝縮水が付着し、その表面張力により異物捕集フィルタ74の異物捕集面上に一定面積以上の水膜が形成され得る凝縮水量であり、前記所定値に相当する。この閾値水量αは、予めの実験結果に基づく固定値であってもよいし、エンジン10の回転負荷に応じたマップ値であってもよい。また、凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えるとき、エンジン10のLPL−EGR装置17は専らLPL−EGR弁72の開度が大きいか排気絞り弁43の開度が小さい状態である。
なお、詰まり判定部51は、上述のように算出・推定された今回の凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えるとき、さらに、予め設定された単位時間当りの閾値増加率β(例えば、0.4kPa/60sec)より大きい増加率で急速に増加したか否かや、その急増時間が一定時間(例えば、60秒)以上継続したか否かを判定することにより、低圧側排気還流通路71wが異物捕集フィルタ74上に形成された水膜等によって閉塞され前記詰まりを生じたことをより精度良く判定するものであってもよい。
制御条件設定部52は、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wに前記詰まりが生じていないと判定されたとき、LP差圧センサ107の検出差圧を予め設定された目標差圧に保持するようLP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御を実行して、低圧側排気還流通路71wを通る還流排気ガスの流量、すなわち、LP流量を最適値に設定するようになっている。ここにいう目標差圧は、LP流量の最適値に対応するものであり、例えば少なくともHP流量およびLP流量が共にゼロでない併用領域において一定のLP流量に対応する固定された差圧値であるが、HP流量がゼロとなる低圧EGR領域か、HP流量およびLP流量が共にゼロでない併用領域か、あるいは、LP流量がゼロとなる高圧EGR領域かによって、異なる複数の値から選択される差圧値であってもよい。
一方、制御条件設定部52は、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71wに前記詰まりが生じていると判定されたときには、LP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御を禁止して、そのLP差圧センサ107の検出差圧に基づくフィードバック制御以外の、他の制御に変更するようになっている。ここで、他の制御とは、LPL−EGR弁72をエンジン10の運転状態に基づくオープンループ制御であり、例えば低圧EGRのEGR量が略一定になるように、エンジン10の運転状態に応じたLPL−EGR弁72の目標開度を予めの実験により設定したマップM2に基づいて算出し、LPL−EGR弁72の目標開度を制御するものである。ここでのマップM2は、例えば機関回転数やアクセル開度(要求負荷)に応じた最適なLP流量またはバルブ開度をその目標値として予め設定したもので、クランク角センサ103やアクセル開度センサ101の検出情報を基にその目標値を算出可能な記憶データである。
制御条件設定部52は、また、エンジン10の運転状態に基づくオープンループ制御を実行するとき、高圧側排気還流通路61w内のHP流量に対する低圧側排気還流通路71w内のLP流量の比率(EGR比:以下、LP流量比率という)を低下させるように、凝縮水量Qwaに応じてLP流量を減少させるとともに(図4参照)、A/Fセンサ48の検出情報に基づいて、LP流量の減少分を補うようにHP流量を増加させるようになっている。
すなわち、制御条件設定部52は、凝縮水量Qwaが閾値水量αを上回るLP詰まり状態になったときには、凝縮水量Qwaを閾値水量αまでに抑えるべく、その閾値水量αに対応する閾値LP流量X(図4参照)を算出するとともに、その閾値LP流量XまでのLP流量の低下によってLPL−EGR装置17およびHPL−EGR装置16におけるNOx低減効果が低下するのを抑えるよう、閾値LP流量XまでのLP流量の減少量に応じてHP流量の増加量を変化させるようになっている。なお、LP流量を閾値LP流量Xまで減少させるときには、LPL−EGR弁72の開度を縮小させるか、排気絞り弁43を開く、あるいは、その双方を実行することになる。また、閾値LP流量Xは、例えば定常走行時の適合値であるLPL−EGR弁72のベース開度に固定されるか、全閉位置に固定される。ここにいうベース開度は、例えば、過給圧センサである吸気管内圧力センサ105の検出圧および推定吸気温度から算出されるシリンダ吸入ガス量と、エアフローメータ35の検出値から得られる吸入空気量(新気量)とを用いて、両者の差であるLP流量値を算出することで推定できるし、凝縮水量Qwaに対応するLP流量の減少値として予めマップ化されたデータによって推定されてもよい。
また、制御条件設定部52は、少なくともLPL−EGR弁72のオープンループ制御を選択するときには、A/Fセンサ43で検出される空燃比に基づいて、あるいはエアフローメータ35で検出される吸入空気量に基づいて、エンジン10の負荷が大きくなるほど全EGR量が低下するように、高圧EGR弁62をフィードバック制御する制御条件を設定するようになっている。
制御条件設定部52は、さらに、例えば高圧側の排気ガスの還流量が増加するのに伴って増加傾向を示すエンジン10の排気ガス中の特定排出成分の濃度値が許容範囲内に入るようにするという制約条件に従って、その特定排出成分の濃度が予め設定した制約値に達するときのエンジン10の運転条件に基づいて、HP流量を選択的に減少させることができるようになっている。
すなわち、制御条件設定部52は、例えば図5に示すように、エンジン回転数、燃料噴射量および吸気中の酸素濃度が一定となる運転条件下において吸気マニホールド31内の吸気温度が高くなるほど増加する傾向を示すスモーク成分の濃度値(FSN:Filter Smoke Number)が許容範囲内に入るように、図2に示すマップM3(公知の簡易Sootモデルでもよい)によりスモーク成分の濃度値を所定時間毎に算出し、その算出値が制約値(例えば、スモークFSN=1)に達するときの吸気温度を超えないようにするという制約条件の下で、吸気マニホールド31内の吸気温度を高圧側の排気ガスの還流量を適宜制限するようになっている。
勿論、ここにいう特定排出成分は、スモークでなくHC(炭化水素)であってもよいしこれらの双方を含むもの(複数種類の排出成分)であってもよい。なお、以下の説明においては、制御条件設定部52は、特定排出成分としてスモークおよびHCの双方の濃度値がそれぞれ許容範囲内に入るようにするという制約条件を設定し、その制約条件に従って高圧側の排気ガスの還流量を選択的に減少させるものとする。
EGR制御部53は、制御条件設定部52で設定された制御条件に従って、HPL−EGR弁62、LPL−EGR弁72、スロットル弁36および排気絞り弁43を操作することにより、HP流量とLP流量の比であるLP流量比率(EGR比)と、HP流量およびLP流量に対応する全還流排気ガス量(全EGR量)およびEGR率とをそれぞれ制御することができるようになっており、そのためのバルブ毎の設定値や制御量算出のための制御プログラム、マップM4、設定値情報等を有している。
なお、凝縮水の付着や水膜形成によって低圧側排気還流通路71wにおける圧力損失を増大させるものは、異物捕集フィルタ74に限定されるものではなく、低圧側排気還流通路71w中に配される目の細かい(個々のガス通路孔径が小さい)他の部材である可能性もあり、その場合には、詰まり判定部51は、他の部材に水膜が形成されて低圧側排気還流通路71wにおける圧力損失が増大したか否かを判定するものとなる。
次に、作用について説明する。
図6は、ECU50でEGR制御のために所定時間毎に実行される制御プログラムの概略の処理手順を示すフローチャートである。なお、この制御プログラムは、ECU50により上述した燃料噴射量の制御等を実行させるための制御プログラムと並行して、ECU50に詰まり判定部51、制御条件設定部52およびEGR制御部53の機能を発揮させるべく、所定時間毎にあるいはエンジン10の冷却水温度が所定温度以下となっている期間中の所定時間毎に繰り返し実行される。
図6に示すように、この制御においては、まず、各種センサ群35,37,47,48および101〜108からのセンサ情報がECU50に取り込まれて、エンジン10の運転状態が取得される(ステップS11)。
次いで、詰まり判定部51によって単位期間毎の凝縮水発生量Qw1から持ち去られ凝縮水量Qw2を差し引いた今回の実発生の凝縮水量Qwaが予め設定され計算周期で算出される(ステップS12)。
次いで、この凝縮水量Qwaが予めの実験結果に基づいて設定された閾値水量αと比較され、その結果に応じて、異物捕集フィルタ74に凝縮水の水膜が形成される詰まり状態が発生し得るか否かが判定される(ステップS13)。
このとき、算出された凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えていなければ(ステップS13でNOの場合)、低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じていないと判定され、LP差圧センサ107の検出差圧を予め設定された目標差圧に保持するようLP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が実行されることで、LP流量が最適値に制御される(ステップS14)。
一方、算出された凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えていれば(ステップS13でYESの場合)、低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じていると判定され、LP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が禁止されるとともに、他の制御であるオープンループ制御が開始される(ステップS15)。そして、このとき、低圧EGRのEGR量が略一定になるように、LPL−EGR弁72がエンジン10の機関回転数やアクセル開度に応じた目標開度に制御される。
なお、算出された凝縮水量Qwaが閾値水量αを超えているときに、LP差圧センサ107の検出差圧が単位時間当りの閾値増加率βより大きい増加率で急速に増加したか、その急増が継続された時間が一定時間を超えたか否かによって詰まり判定を実行する場合には、その最終判定結果に応じて、LPL−EGR弁72の差圧フィードバック制御とオープンループ制御が切り替えられる。
一方、この間、少なくともLPL−EGR弁72がオープンループ制御されるときには、高圧EGR弁62が、A/Fセンサ48で検出される空燃比に基づいて、あるいはエアフローメータ35で検出される吸入空気量に基づいて、エンジン10の負荷が大きくなるほど全EGR量が低下するようにフィードバック制御され、さらに、排気ガス中のスモーク成分やHCの濃度値が制約値を超えないように適宜制限される。
ここで、低圧側排気還流通路71wに凝縮水による詰まり状態が発生するときのシステムの作動状態の一例について、図7を用いて説明する。
まず、図7(b)に実線で示すように、LPL−EGR弁72がある開度まで所定時間t(例えば、20秒程度)毎に段階的に開かれ、LP流量が大きくなると、低圧側のEGR量が増大し、低圧側排気還流通路71w中に発生する凝縮水量Qwaが増加する。そして、異物捕集フィルタ74に付着する凝縮水量が増加し、LPL−EGR弁72の開放によるLP流量の増大から比較的短時間(例えば1〜2分程度)のうちに、凝縮水の表面張力によって異物捕集フィルタ74に水膜が張り始める。このとき、図7(c)に実線で示すように、低圧側排気還流通路71w内の排気ガスの温度は、HP流量の低下によってあるいはエンジン10の暖機の進行に伴って上昇していたガス温度T1(排気浄化ユニット44を通過した後のガス温度)から水膜の張った異物捕集フィルタ74を通過した後のガス温度T2に急落する。
このような状態においては、異物捕集フィルタ74の異物捕集面に徐々に水膜が張ることで、図7(d)中に矢印A1で示すように異物捕集フィルタ74の前後差圧(図中ではFOD差圧)が増加し始め、異物捕集フィルタ74の異物捕集面のほぼ全域に水膜が形成される段階で、同図中に矢印A2,A3で示すように、異物捕集フィルタ74の前後差圧が急上昇する詰まりの発生状態となる。
本実施形態では、このような詰まりの発生が上述のような処理により判定され、低圧側排気還流通路71wに詰まりが発生したときにはLP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が禁止されて、他の制御であるオープンループ制御に切り替えられる。また、このオープンループ制御によって、凝縮水量Qwaを閾値水量αまでの値に抑えるLP流量が減量されるとともに、閾値LP流量XまでのLP流量の低下によってNOx低減効果が低下するのを抑えるよう、HP流量が増量されることになる。したがって、この場合、HPL−EGR弁62およびLPL−EGR弁72の開度は、例えば図7(a)および図7(b)中に太い点線で示す開度Vb,Vaに変更される。
この状態においては、異物捕集フィルタ74は熱容量の大きい排気浄化ユニット44のケースからの受熱等によって加熱され、異物捕集フィルタ74の近傍のガス温度は、図7(c)に示すように、それまでのガス温度T2から徐々に上昇するガス温度T3のような上昇傾向を示す。
そして、このような排気ガス温度の上昇、異物捕集フィルタ74の温度上昇、低圧側排気還流通路71w内における発生凝縮水量の減少等によって、図7(d)に太い点線で示すように、異物捕集フィルタ74の前後差圧が低下し始め、低圧側排気還流通路71wの詰まり状態が解消され始める。
このように、本実施形態の排気再循環システムにおいては、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71w内に詰まりが生じていると判定されなければ、制御条件設定部52によってLPL−EGR弁72の検出差圧に基づくフィードバック制御が選択され、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内に詰まりが生じていると判定されると、制御条件設定部52によって検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御以外の他の制御が選択される。
したがって、異物捕集フィルタ74に水膜が形成されて低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じても、検出差圧に基づくフィードバック制御が禁止されることによって、LP流量(低圧EGR流量)が低下した状態でさらにLP流量を減量させてしまうことがなくなり、しかも、検出差圧に基づかないオープンループ制御が実行されることによって、通常のEGR制御に準じたNOx低減効果が得られることになる。その結果、凝縮水の発生量が多くなって低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じるようなときでも所要のNOx低減効果を確保できる内燃機関の排気再循環システムとなる。
また、本実施形態では、特定通路区間に発生する凝縮水量を精度良く算出できるので、凝縮水の水膜によってLPL−EGRパイプ71内の通路が閉塞され易い場合に、その詰まりが的確に判定可能となる。しかも、異物捕集フィルタ74に水膜による詰まりが生じているか否かを精度良く判定できるので、異物捕集フィルタ74に凝縮水の水膜が形成されてLPL−EGRパイプ71内に急に詰まりが生じても、LP流量の制御が的確に上述したオープループ制御に切り替えられ、所要のNOx低減効果が確保される。
また、そのオープループ制御では、エンジン10の機関回転数や要求負荷に応じたLP流量を目標値EGR量とするので、通常の検出差圧に基づくフィードバック制御ほどきめ細かい制御ではないものの、比較的良好なNOx低減効果が確保できる。
本実施形態においては、さらに、厳しいNOx低減要求に対し大量の排気再循環を実行する場合であっても、低圧側排気再循環経路L2を通る排気ガスのエネルギによって排気タービン15bの回転数[rpm]が十分に確保されるので、車両走行時の良好な加速応答性が得られることになる。
このように、本実施形態の排気再循環システムおよびそのEGR制御装置においては、凝縮水の発生量が多くなって低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じ、LP差圧センサ107の検出差圧が急に大きくなっても、低圧EGR流量が低下した状態でさらに低圧EGR流量を減量させてしまうことがなく、かつ、検出差圧に基づくものではないオープンループ制御が実行されることで、通常のEGR制御に準じたNOx低減効果を得ることができる。その結果、凝縮水の発生量が多くなって低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じるようなときであっても所要のNOx低減効果を確保することができる。
(第2実施形態)
図8は、本発明に係る内燃機関の排気再循環システムの第2実施形態を示す図であり、その制御装置で実行されるEGR制御プログラムの概略処理手順を示している。
なお、この第2実施形態の排気再循環システムは、制御装置であるECU50のうち制御条件設定部52の処理の一部が第1実施形態と相違する以外は、第1実施形態と同様なものであるので、図1〜図7に示した第1実施形態の構成要素や処理ステップの符号を用いつつ、相違点である制御条件設定部52の処理の一部についてのみ、以下に説明する。
本実施形態においては、ECU50の詰まり判定部51が、エンジン10の冷却水温を検出する水温センサ104の検出水温に基づいて、その検出水温(冷却水温)が予め設定した低水温値β(例えば、30°C程度)より低いときに、異物捕集フィルタ74に水膜が形成されて低圧側排気還流通路71wに許容圧力損失レベルを超える圧力損失が生じるような詰まりが発生していると判定するようになっている。
また、詰まり判定部51によって低圧側排気還流通路71wに詰まりが次発生したと判定され、制御条件設定部52によってLPL−EGR弁72の制御が検出差圧に基づくフィードバック制御から他の制御に変更されるとき、制御条件設定部52は、LP差圧センサ107の検出差圧に基づくフィードバック制御以外の他の制御として、LP差圧センサ107の検出差圧以外のセンサ情報に基づいてLPL−EGR弁72の開度を制御する他のフィードバック制御を実行するようになっている。
具体的には、制御条件設定部52は、LP流量を、エンジン10の気筒11内に入る直前の過給空気の温度および圧力から得られる単位時間毎の全シリンダ吸入空気量から単位時間毎のHP流量およびエアフローメータ35の検出吸気量(新気の吸入空気量)を差し引いた値としても算出し、そのLP流量の算出値が上述したLP流量の最適値になるようにLPL−EGR弁72の開度を制御するものであり、少なくともHP流量およびLP流量が共にゼロでない併用領域において一定のLP流量値に制御される。また、HP流量がゼロとなる低圧EGR領域か、HP流量およびLP流量が共にゼロでない併用領域か、あるいは、LP流量がゼロとなる高圧EGR領域かによって、異なる複数の値から選択される目標値LP流量であってもよい。
図8に示すように、本実施形態では、まず、各種センサ35,37,47,48および101〜108からのセンサ情報によってエンジン10の運転状態が取得されると(ステップS11)、次いで、詰まり判定部51によって、水温センサ104の検出水温が予め設定した低水温値βより低いか否かが判定される(ステップS12)。
このとき、水温センサ104の検出水温が低水温値βより低ければ(ステップS12でYESの場合)、低圧側排気還流通路71wに凝縮水による詰まりが発生していると判定されて、次いで、LP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が禁止されるとともに、他の制御であるオープンループ制御が開始される(ステップS15)。そして、このとき、LP流量が略一定になるように、LPL−EGR弁72がエンジン10の機関回転数やアクセル開度に応じた目標開度に制御される。
一方、水温センサ104の検出水温が低水温値β以上であるとき(ステップS12でNOの場合)には、低圧側排気還流通路71wに詰まりが発生していないと判定され、LP差圧センサ107の検出差圧を予め設定された目標差圧に保持するようLP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が実行され、LP流量が最適値に制御される(ステップS14)。
本実施形態の排気再循環システムにおいても、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内の低圧側排気還流通路71w内に詰まりが生じていると判定されなければ、制御条件設定部52によってLPL−EGR弁72の検出差圧に基づくフィードバック制御が選択され、詰まり判定部51によってLPL−EGRパイプ71内に詰まりが生じていると判定されると、制御条件設定部52によって検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御以外の他の制御が選択される。したがって、異物捕集フィルタ74に水膜が形成されて低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じても、LP差圧センサ107の検出差圧に基づくLPL−EGR弁72のフィードバック制御が禁止されることによって、LP流量(低圧EGR流量)が低下した状態でさらにLP流量を減量させてしまうことがなくなり、しかも、検出差圧に基づかない他の制御としてLP流量値を目標値LP流量に追従させるフィードバック制御が実行されるので、通常のEGR制御に準じたNOx低減効果が得られることになる。その結果、凝縮水の発生量が多くなって低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じるようなときでも所要のNOx低減効果を確保できる内燃機関の排気再循環システムとなる。
また、本実施形態では、水温センサ104の検出水温に基づいて詰まり判定を実行するので、ECU50の詰まり判定のための処理負荷を軽減させることができる。
なお、上述の各実施形態においては、LPLーEGR弁72のオープンループ制御と差圧センサ107の検出差圧に基づくフィードバック制御のうちいずれかに選択的に設定する制御プログラムを、所定時間毎にあるいはエンジン10の冷却水温が低いときの所定時間毎に実行するものとしたが、LP差圧センサ107の検出差圧が低圧側排気還流通路71wの詰まりが発生し得ないほど低いときには、低圧側排気還流通路71wに詰まりが生じたか否かの判定やそのつまり判定の結果に応じたEGR制御条件の切替えを実行しないようにして、ECU50の処理負荷を抑えつつ良好な精度での本発明によるEGR制御を実行することもできる。すなわち、検出差圧が所定値より大きく、凝縮水による低圧側排気還流通路71wの詰まりが生じる蓋然性があるか可能性が高いときにのみ凝縮水の量を推定する処理を実行するようにして、制御装置の処理負荷を軽減しつつ精度良く詰まり判定を行うこともできる。
また、上述の実施形態では、詰まり判定部51によって一定時間毎の実凝縮水量Qwaを算出していたが、低圧側排気再循環経路L2中に生じた実際の凝縮水の部分的な蓄積量や貯留液面レベルをセンサで検知して対象区間内の凝縮水量を算出・推定するようなものであってもよい。
さらに、上述の各実施形態においては、エンジン10にターボ過給機15が装着されるとともに、排気管42内の排気通路を高圧側と低圧側に区画する抵抗要素がターボ過給機15の排気タービン15bで構成されていたが、本発明は、ターボ過給機を有しない内燃機関についても適用可能である。例えば、排気管42内を通る排気ガスを浄化する排気浄化ユニット44によって本発明にいう抵抗要素が構成され、エンジン10が排気タービン15bを有しないような場合にも本発明は適用可能である。そして、そのような構成を採用する場合においても、凝縮水量が多くなったときに的確にLP流量比率が低減され、凝縮水の発生量が抑えられるので、凝縮水の発生の抑制とNOx低減効果の確保とを両立させることができる。
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の排気再循環システムは、低圧側排気還流管部内に詰まりが生じていなければ、低圧EGR弁の検出差圧に基づくフィードバック制御を選択し、低圧側排気還流管部内に詰まりが生じていれば、検出差圧に基づく低圧EGR弁のフィードバック制御以外の他の制御を実行するようにしているので、凝縮水の発生量が多くなって排気還流通路に詰まりが生じ、差圧センサの検出差圧が急に大きくなっても、低圧EGR流量が低下した状態でさらに低圧EGR流量を減量させてしまうことがなく、かつ、検出差圧に基づくものではない他の制御が実行されることで、通常のEGR制御に準じたNOx低減効果を得ることができ、その結果、凝縮水の発生量が多くなって排気還流通路に詰まりが生じるようなときであっても所要のNOx低減効果を確保できる内燃機関の排気再循環システムを提供することができるという効果を奏するものであり、低圧EGR装置を備える内燃機関の排気再循環システム、特にそのNOx低減効果を安定確保するようEGR制御を行うEGR制御装置全般に有用である。