図1は本実施の形態に係る通信システム100の構成を示す図である。本通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTEであって、複数の基地局1を備えている。各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。したがって、基地局1から通信端末2への送信にはOFDMA方式が使用され、通信端末2から基地局1への送信にはSC−FDMA方式が使用される。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、その周辺に位置する周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在することがある。
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12と、ネットワークに接続されたネットワーク通信部13とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。
ネットワーク通信部13は、例えば、光ファイバ等でネットワークに接続されている。ネットワーク通信部13は、制御部12から入力されるデータをネットワークに送信する一方で、ネットワークから入力されるデータを制御部12に出力する。
無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12は、機能ブロックとして、送信信号生成部120、受信データ取得部121、無線リソース割り当て部122、送信ウェイト処理部123、受信ウェイト処理部124、移動速度取得部125及びフレーム構成決定部126を備えている。
送信信号生成部120は、ネットワーク通信部13から出力される、通信対象の通信端末2に送信すべきデータなどを含む送信データを生成する。送信データには、ユーザデータ及び制御データが含まれる。そして、送信信号生成部120は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト処理部123は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に出力する。
受信ウェイト処理部124は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、受信ウェイト処理部124は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号を生成する。
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部124で生成された新たな受信信号に対して、逆離散フーリエ変換や復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。受信データ取得部121は、取得したデータのうち、ネットワークに送信すべきデータをネットワーク通信部13に入力する。
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信を行う通信部14が構成されている。通信部14は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、通信部14は、受信ウェイト処理部124において、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することにより、アレイアンテナ110での受信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。また、通信部14は、送信ウェイト処理部123において、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することにより、アレイアンテナ110での送信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2からの既知信号に基づいて求めることができる。以後、アレイアンテナ110の受信指向性の制御を「アレイ受信制御」と呼び、アレイアンテナ110の送信指向性の制御を「アレイ送信制御」と呼ぶことがある。
無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2への信号の送信に使用する下り無線リソース(送信周波数及び送信時間帯)を割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべき送信信号を生成するとともに、当該下り無線リソースに基づいたタイミングで当該送信信号を送信ウェイト処理部123に入力する。これにより、通信端末2に送信すべき送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた下り無線リソースを用いて通信部14から送信される。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた下り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、自装置宛ての信号の送信で使用される下り無線リソースを知ることができ、基地局1からの自装置宛ての信号を適切に受信することができる。
また無線リソース割り当て部122は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2が基地局1に信号を送信する際に使用する上り無線リソースを割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1への信号の送信に使用する上り無線リソースを知ることができ、当該上り無線リソースを用いて基地局1に信号を無線送信する。
移動速度取得部125は、基地局1での通信対象の各通信端末2についての移動速度を取得する。本実施の形態では、各通信端末2は自装置の位置を基地局1に定期的に通知するようになっている。各通信端末2には、例えばGPS(Global Positioning System)受信機が搭載されており、当該GPS受信機において当該通信端末2の位置が求められる。移動速度取得部125は、通信端末2から定期的に基地局1に通知される、当該通信端末2の位置に基づいて、当該通信端末2についての移動速度を求める。
なお、通信端末2は、GPS受信機以外の他の手段を用いて、自装置の位置を求めても良い。また、移動速度取得部125は、他の方法によって、通信端末2の移動速度を取得しても良い。例えば、通信端末2が自装置の移動速度を求めて、求めた移動速度を基地局1に通知することによって、移動速度取得部125が、当該通信端末2の移動速度を取得できるようにしても良い。
フレーム構成決定部126は、基地局1が通信端末2との通信で使用する通信フレームについてのフレーム構成を決定する。本実施の形態では、後述するように、通信フレームについては、複数種類のフレーム構成が規定されており、フレーム構成決定部126は、この複数種類のフレーム構成の中から、基地局1が使用するフレーム構成を決定する。なお、フレーム構成決定部126の動作については後で詳細に説明する。
<TDDフレームの構成>
次に基地局1が通信端末2との通信で使用する通信フレームであるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。TDDフレーム300の周波数帯域幅(システム帯域幅)は例えば10MHzであって、TDDフレーム300の時間長は10msである。基地局1は、TDDフレーム300から、各通信端末2に対して割り当てる上り無線リソース及び下り無線リソースを決定する。
図3はTDDフレーム300の基本構成を示す図である。図3に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。以後、TDDフレーム300を構成する10個のサブフレーム302を、先頭から順に第0〜第9サブフレーム302とそれぞれ呼ぶことがある。
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。
以上のように構成されるTDDフレーム300には、上り通信専用のサブフレーム302と下り通信専用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信専用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信専用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。通信端末2は、上りサブフレーム302で基地局1に制御データ及びユーザデータを送信し、基地局1は、下りサブフレーム302で通信端末2に制御データ及びユーザデータを送信する。
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に7シンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック(RB)」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。無線リソース割り当て部122は、通信端末2がデータの送信に使用する上り無線リソースを当該通信端末2に割り当てる場合、あるいは通信端末2にデータを送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末2に割り当てる場合には、時間方向においては連続する2つのリソースブロック単位、つまり一つのサブフレーム302単位で、周波数方向においては一つのリソースブロック単位で、当該通信端末2に対して上り無線リソースあるいは下り無線リソースを割り当てる。なお、上り通信ではSC−FDMA方式が使用されていることから、上りサブフレーム302の1つのスロット303において、ある通信端末2に対して周波数方向において複数のリソースブロックが割り当てられる際には、周波数方向に連続した複数のリソースブロックが当該通信端末2に割り当てられる。
また、LTEでは、TDDフレーム300について、上りサブフレーム302と下りサブフレーム302の組み合わせが異なる7種類のフレーム構成が規定されている。図4は当該7種類のフレーム構成を示す図である。
図4に示されるように、LTEでは、0番〜6番までのフレーム構成が規定されている。基地局1が通信端末2と通信する際には、この7種類のフレーム構成のうちの1つが使用される。図4では、「D」で示されるサブフレーム302は、下りサブフレーム302を意味し、「U」で示されるサブフレーム302は、上りサブフレーム302を意味している。また、「S」で示されるサブフレーム302は、通信システム100において、下り通信から上り通信への切り替えが行われるサブフレーム302を意味している。このサブフレーム302を「スペシャルサブフレーム302」と呼ぶ。
例えば、フレーム構成0のTDDフレーム300では、第0及び第5サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2〜第4サブフレーム302及び第7〜第9サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1及び第6サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。また、フレーム構成4のTDDフレーム300では、第0サブフレーム302及び第4〜第9サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2及び第3サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。
図5は、フレーム構成1のTDDフレーム300を詳細に示す図である。図5に示されるように、スペシャルサブフレーム302は、時間方向に、下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351と、ガードタイム(GP)350と、上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352とを含んでいる。ガードタイム350は、下り通信から上り通信に切り替えるために必要な無信号期間であって、通信には使用されない。
LTEでは、下りパイロットタイムスロット351、ガードタイム350及び上りパイロットタイムスロット352の時間長の組み合わせについて、複数種類の組み合わせが規定されている。図5の例では、下りパイロットタイムスロット351の時間長は11シンボル期間304に設定されており、上りパイロットタイムスロット352の時間長は2シンボル期間304に設定されている。
本実施の形態に係る通信システム100では、各通信端末2は、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のうちのどちらか一方においてサウンディング基準信号(SRS)と呼ばれる既知信号を送信する。SRSは、複数のサブキャリアを変調する複数の複素シンボルで構成されている。本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352において送信されるSRSを、送信ウェイトを算出するために使用する。つまり、基地局1の通信部14は、通信端末2が上りパイロットタイムスロット352で送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行うことが可能となっている。
なお、通信端末2が上りサブフレーム302で送信する、データを含む信号に対して設定する受信ウェイトについては、SRSではなく、上りサブフレーム302で通信端末2から送信される復調リファレンス信号(DRS:Demodulation Reference Signal)と呼ばれる既知信号に基づいて算出される。
また、基地局1は、下りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の下りパイロットタイムスロット351においてもデータを通信端末2に送信することが可能であるが、本実施の形態では、この下りパイロットタイムスロット351については下り通信に使用しないものとする。
また、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能である。つまり、通信端末2は、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304を除く各シンボル期間304ではデータを送信可能であり、最後のシンボル期間304ではSRSを送信可能である。アレイ送信制御には、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304で送信されるSRSを使用することも可能であるが、本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352で送信されるSRSを使用するものとする。以後、特に断らない限り、SRSと言えば、上りパイロットタイムスロット352を使用して送信されるSRSを意味するものとする。
このように、本実施の形態に係る通信システム100では、通信端末2がデータを送信する際に使用することが可能な上り無線リソース(上りサブフレーム302のうち最後のシンボル期間304を除く部分)とは別に、SRSを送信することが可能な上り無線リソース(スペシャルサブフレーム302のうち上りパイロットタイムスロット352を含む部分と、上りサブフレーム302のうち最後のシンボル期間304を含む部分)が定められている。
以後、上りパイロットタイムスロット352に含まれる各シンボル期間304を「SRS用上り通信期間370」と呼ぶ。また、上りサブフレーム302に含まれる14個のシンボル期間304をまとめて「上り通信期間380」と呼び、下りサブフレーム302に含まれる14個のシンボル期間304をまとめて「下り通信期間390」と呼ぶ。
SRSは周期的に送信される信号であって、その送信周期の長さ(送信間隔)については変更することが可能である。以後、SRSの送信周期を「SRS送信周期360」と呼ぶ。図5の例では、SRS送信周期360の長さ(送信間隔)が5msに設定されており、上りスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352ごとにSRSが送信されている。
<SRSの送信周波数帯域>
本通信システム100では、SRSの送信に使用可能な周波数帯域400(以後、「SRS送信可能帯域400」と呼ぶ)が、SRS送信周期360ごとに、システム帯域の高周波側及び低周波側に交互に配置されているようになっている。図5では、SRS送信可能帯域400が斜線で示されている。
また、本実施の形態に係る通信システム100では、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する周波数帯域(以後、「SRS送信帯域」と呼ぶ)を、SRS送信可能帯域400の全範囲内あるいは一部の範囲内において、SRS送信周期360ごとに変化させることが可能である。この制御は「周波数ホッピング」と呼ばれている。また、本通信システム100では、SRS送信帯域450の帯域幅(以後、「SRS送信帯域幅」と呼ぶ)は変更可能となっている。
図6は、ある通信端末2が使用するSRS送信帯域450がSRS送信可能帯域400の全範囲内で周波数ホッピングする様子の一例を示す図である。図6の例では、SRS送信周期360の長さが5msに設定されており、SRS送信可能帯域400が第1〜第4周波数帯域に分割されている。そして、SRS送信可能帯域400の帯域幅の4分の1の帯域幅を有するSRS送信帯域450が、SRS送信周期360ごとに、第1周波数帯域、第3周波数帯域、第2周波数帯域、第4周波数帯域の順に変化している。
なお、SRS送信帯域450については、周波数ホッピングせずに一定の周波数帯域に固定することも可能である。つまり、通信端末2は、送信周波数帯域が一定のSRSを周期的に送信することも可能である。
基地局1では、無線リソース割り当て部122が、通信対象の各通信端末2について、SRSの送信態様を決定する。具体的には、無線リソース割り当て部122は、各通信端末2について、SRS送信帯域幅、SRS送信帯域450の先頭位置及びSRS送信周期360を決定する。SRS送信帯域450の先頭位置がSRS送信周期360ごとに変化すると、SRS送信帯域450が周波数ホッピングするようになる。無線リソース割り当て部122は、通信端末2についてのSRS送信帯域幅とSRS送信帯域450の先頭位置を決定することによって、当該通信端末2についてのSRS送信帯域450を決定する。
送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122で決定された、通信端末2が送信するSRSの送信態様を当該通信端末2に通知するための制御データ(以後、「SRS制御データ」と呼ぶ)を含む送信信号を生成する。この送信信号は、下りサブフレーム302が使用されて通信部14から当該通信端末2に送信される。これにより、各通信端末2にはSRS制御データが送信され、各通信端末2は、自身が送信するSRSの送信態様を知ることができる。つまり、各通信端末2は、自身が送信するSRSについてのSRS送信帯域幅、SRS送信帯域450の先頭位置及びSRS送信周期360を認識することができる。各通信端末2は、基地局1で決定された送信態様に基づいてSRSを周期的に送信する。なお、SRS制御データは、LTEでは、“RRCConnectionReconfiguration message”と呼ばれている。
<アレイ送信制御について>
本実施の形態に係る基地局1では、アレイ送信制御として、例えばヌルステアリング及びビームフォーミングの両方が同時に行われる。基地局1の通信部14は、下りサブフレーム302において通信端末2に信号を送信する際には、当該通信端末2が送信するSRSに基づいて、アレイアンテナ110の送信指向性に関してヌルステアリング及びビームフォーミングを行う。通信部14では、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて、SRSに含まれる複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトを複数回更新し、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求めることによって、ヌルステアリングとビームフォーミングの両方を行う。
また、本実施の形態に係る基地局1では、あるSRS送信周期360において通信端末2に送信される送信信号については、当該SRS送信周期360で当該通信端末2が送信するSRSに基づいて送信ウェイトが算出され(より正確には、当該SRSに基づいて算出された受信ウェイトに基づいて算出され)、当該送信ウェイトが当該送信信号に設定される。つまり、基地局1では、あるSRS送信周期360での下りサブフレーム302において、通信端末2にデータ送信する際のアレイ送信制御は、そのSRS送信周期360において当該通信端末2から受信されたSRSに基づいて行われる。
さらに、本実施の形態に係る基地局1では、送信ウェイトが、例えば、1リソースブロックの周波数帯域ごとに求められる。以後、1リソースブロックの周波数帯域を「割り当て単位帯域」と呼ぶ。例えば、下りサブフレーム302において通信端末2に送信される送信信号の周波数帯域が4つの割り当て単位帯域で構成されているとすると、4つの割り当て単位帯域のそれぞれについて送信ウェイトが求められる。ある割り当て単位帯域を用いて通信端末2に送信される信号に対して適用する送信ウェイトは、当該通信端末2から受信したSRSを構成する複数の複素シンボルのうち、当該ある割り当て単位帯域を用いて送信された12個の複素シンボルに基づいて求められる。1リソースブロックには12個のサブキャリアが含まれることから、1つの割り当て単位帯域を用いて12個の複素シンボルを送信することが可能である。
このように、本実施の形態では、下りサブフレーム302において通信端末2に対して送信信号を送信する際には、当該通信端末2から受信したSRSのうち、当該送信信号の周波数帯域と同じ周波数帯域で送信される部分を使用してアレイ送信制御が行われる。これにより、アレイ送信制御の精度が向上し、通信端末2に対して適切にビームを向けることができる。
<フレーム構成の決定方法>
基地局1が、移動速度の大きい通信端末2と下り通信を行う際には、当該通信端末2がSRSを送信してから、基地局1が当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行って送信する信号を当該通信端末2が受信するまでの期間(以後、「アレイ送信制御期間」と呼ぶ)において、当該通信端末2の位置が大きく変化する可能性がある。このような場合には、基地局1での当該通信端末2についてのアレイ送信制御の精度が低下し、基地局1からの信号が当該通信端末2に届きにくくなる。その結果、基地局1の送信性能が低下する可能性がある。
そこで、本実施の形態では、基地局1は、移送速度がしきい値よりも大きい通信対象の通信端末2が存在するようになると、当該通信端末2からのSRSの受信タイミングに対して近いタイミングで当該通信端末2に対して信号が送信できるように、TDDフレーム300のフレーム構成を変更する。これにより、移動速度が大きい通信端末2についてのアレイ送信制御期間を短くすることができ、当該通信端末2の位置がアレイ送信制御期間において大きく変化することを抑制できる。その結果、基地局1での当該通信端末2についてのアレイ送信制御の精度が向上し、基地局1からの信号を当該通信端末2に確実に届けることができる。よって、基地局1の送信性能が向上する。以下に、基地局1でのこの動作について詳細に説明する。
本実施の形態に係る基地局1では、図4に示される、TDDフレーム300についての7種類のフレーム構成のうち、例えば、フレーム構成1とフレーム構成2が使用される。基地局1においては、電源投入後の初期状態ではフレーム構成1が使用される。そして、基地局1では、通信対象の通信端末2において、移動速度がしきい値よりも大きい通信端末2が存在するようになると、フレーム構成1の替わりにフレーム構成2が使用されるようになる。フレーム構成1では、前方のスペシャルサブフレーム302(第1サブフレーム302)よりも後方においては、第4サブフレーム302が、複数の下りサブフレーム302のうちの先頭の下りサブフレーム302となっており、フレーム構成2では、前方のスペシャルサブフレーム302よりも後方においては、第3サブフレーム302が、複数の下りサブフレーム302のうちの先頭の下りサブフレーム302となっている。したがって、フレーム構成をフレーム構成1からフレーム構成2に変更すると、TDDフレーム300においては、通信端末2がSRSを送信するためのSRS用上り通信期間370と、基地局2がデータの下り通信を行う複数の下り通信期間390のうちの先頭の下り通信期間390との間の期間が短くなる。
図7は、基地局1がフレーム構成を決定し、決定したフレーム構成のTDDフレーム300について通信端末2に無線リソースを割り当てる際の当該基地局1の動作を示すフローチャートである。図7に示されるステップs1〜s5までの一連の処理は、各TDDフレーム300において実行される。また、基地局1では、通信端末2に対する上り及び下り無線リソースの割り当ては、SRS送信周期360単位で行われる。つまり、基地局1では、SRS送信周期360に含まれる上りサブフレーム302及び下りサブフレーム302についての通信端末2に対する無線リソースの割り当ては、各SRS送信周期360で独立して行われる。
図7に示されるように、基地局1では、ステップs1において、移動速度取得部125が、上述のようにして、基地局1の通信対象の各通信端末2についての移動速度を取得する。
次にステップs2において、フレーム構成決定部126は、通信対象の各通信端末2について、当該通信端末2の移動速度に基づいて最遅使用可能サブフレームを決定する。ここで、通信端末2についての最遅使用可能サブフレームとは、SRS送信周期360において、基地局1が当該通信端末2に対する下り無線リソースとして使用することが可能な最も遅いサブフレーム302を意味している。言い換えれば、通信端末2についての最遅使用可能サブフレームとは、SRS送信周期360において、基地局1が当該通信端末2との下り通信を遅くともそのサブフレーム302において実行すべきであるサブフレーム302を意味している。
上述のように、通信端末2についての移動速度が大きい場合には、アレイ送信制御期間において当該通信端末2の位置が大きく変化する可能性が高いことから、当該通信端末2に対するアレイ送信制御の精度が劣化する可能性が高い。したがって、移動速度が大きい通信端末2については、当該通信端末2との下り通信の実行を早めてアレイ送信制御期間を短くすることが好ましい。よって、本実施の形態では、通信端末2についての移動速度が大きいほど、当該通信端末2についての最遅使用可能サブフレームが早くなっている。以下に、通信端末2についての最遅使用可能サブフレームの決定方法について説明する。
上述のように、本実施の形態では、TDDフレーム300のフレーム構成としては、フレーム構成1とフレーム構成2とが使用される。したがって、SRS送信周期360において、下り通信が可能なサブフレーム302は、最大で、当該SRS送信周期360に含まれる下りパイロットタイムスロット351の直前のサブフレーム302と、当該直前のサブフレーム302よりも1つ前のサブフレーム302と、当該直前のサブフレーム302よりも2つ前のサブフレーム302の3つとなる。具体的には、TDDフレーム300の前方のスペシャルサブフレーム302(第1サブフレーム302)の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360において、下り通信が可能なサブフレーム302は、最大で、第3サブフレーム302、第4サブフレーム302及び第5サブフレーム302の3つとなる。また、TDDフレーム300の後方のスペシャルサブフレーム302(第6サブフレーム302)の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360において、下り通信が可能なサブフレーム302は、最大で、当該TDDフレーム300の第8サブフレーム302及び第9サブフレーム302と、その次のTDDフレーム300の第1サブフレーム302との3つとなる。
そこで、本実施の形態に係るフレーム構成決定部126は、通信端末2についての最遅使用可能サブフレームを、上記の3つのサブフレーム302の中から、当該通信端末2の移動速度に基づいて決定する。以後、当該3つのサブフレーム302を、先頭から順に「前方サブフレーム302」、「中間サブフレーム302」及び「後方サブフレーム302」とそれぞれ呼ぶ。
ステップs2において、フレーム構成決定部126は、通信端末2についての移動速度と、第1及び第2のしきい値のそれぞれとを比較する。第1のしきい値は、第2のしきい値よりも大きく設定されている。フレーム構成決定部126は、移動速度が第1のしきい値よりも大きい通信端末2(以後、「高速移動端末2」と呼ぶことがある)についての最遅使用可能サブフレーム302を前方サブフレーム302に決定する。つまり、フレーム構成決定部126は、高速移動端末2については、SRS送信周期360において、基地局1が当該通信端末2との下り通信を遅くとも前方サブフレーム302において実行すべきであると決定する。
フレーム構成決定部126は、移動速度が第1のしきい値以下であって第2のしきい値よりも大きい通信端末2(以後、「中速移動端末2」と呼ぶ)についての最遅使用可能サブフレーム302を中間サブフレーム302に決定する。そして、フレーム構成決定部126は、移動速度が第2のしきい値以下の通信端末2(以後、「低速移動端末2」と呼ぶことがある)についての最遅使用可能サブフレーム302を後方サブフレーム302に決定する。フレーム構成決定部126は、このようにして、通信対象の各通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302を決定する。
次にステップs3において、フレーム構成決定部126は、通信対象の各通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302に基づいて、フレーム構成1及びフレーム構成2のどちらを使用するかを決定する。具体的には、フレーム構成決定部126は、通信対象の通信端末2において、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302である通信端末2が存在する場合にはフレーム構成2を使用すると決定し、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302である通信端末2が存在しない場合にはフレーム構成1を使用すると決定する。高速移動端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は前方サブフレーム302とされることから、フレーム構成決定部126は、通信対象の通信端末2において高速移動端末2が存在する場合にはフレーム構成2を使用すると決定し、高速移動端末2が存在しない場合にはフレーム構成1を使用すると決定する。
フレーム構成1においては、前方サブフレーム302に相当する第3あるいは第8サブフレーム302は上りサブフレーム302であるため、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302である通信端末2が存在する場合において、フレーム構成1を採用すると、当該通信端末2とは前方サブフレーム302で下り通信することができない。一方で、フレーム構成2においては、前方サブフレーム302に相当する第3あるいは第8サブフレーム302は下りサブフレーム302であるため、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302である通信端末2が存在する場合において、フレーム構成2を採用すると、当該通信端末2とは前方サブフレーム302で下り通信することができる。したがって、フレーム構成決定部126は、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302である通信端末2(高速移動端末2)が存在する場合には、フレーム構成2を使用すると決定する。
フレーム構成決定部126において、基地局1が使用するフレーム構成が決定されると、通信部14は、次のTDDフレーム300においては、決定されたフレーム構成を使用して通信端末2と通信する。
ステップs3が実行されると、ステップs4において、無線リソース割り当て部122は、次のTDDフレーム300、つまりステップs3で決定されたフレーム構成を有するTDDフレーム300の前方のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360(以後、「前方SRS送信周期360」と呼ぶことがある)と、当該TDDフレーム300の後方のスペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352を含むSRS送信周期360(以後、「後方SRS送信周期360」と呼ぶことがある)とのそれぞれについての上り及び下り無線リソースの通信端末2に対する割り当てを実行する。
ステップs4において、無線リソース割り当て部122は、下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、当該通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302を考慮する。つまり、無線リソース割り当て部122は、SRS送信周期360についての下り無線リソースを通信端末2に対して割り当てる際には、当該通信端末2の最遅使用可能サブフレーム302に相当する、当該SRS送信周期360に含まれる下りサブフレーム302、あるいは当該SRS送信周期360に含まれる、それよりも前の下りサブフレーム302の少なくとも一部を、下り無線リソースとして当該通信端末2に割り当てる。
例えば、次のTDDフレーム300のフレーム構成がフレーム構成2である場合において、前方サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302として決定されている通信端末2(高速移動端末2)に対して、前方SRS送信周期360についての下り無線リソースの割り当てが行われる際には、当該通信端末2に対しては、前方サブフレーム302に相当する第3サブフレーム302の少なくとも一部が下り無線リソースとして割り当てられる。
また、次のTDDフレーム300のフレーム構成がフレーム構成2である場合において、中間サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302として決定されている通信端末2(中速移動端末2)に対して、前方SRS送信周期360についての下り無線リソースの割り当てが行われる際には、当該通信端末2に対しては、中間サブフレーム302に相当する第4サブフレーム302の少なくとも一部、あるいは当該第4サブフレーム302よりも前の第3サブフレーム302の少なくとも一部が下り無線リソースとして割り当てられる。
また、次のTDDフレーム300のフレーム構成がフレーム構成2である場合において、後方サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302として決定されている通信端末2(低速移動端末2)に対して、前方SRS送信周期360についての下り無線リソースの割り当てが行われる際には、当該通信端末2に対しては、後方サブフレーム302に相当する第5サブフレーム302の少なくとも一部、あるいは当該第5サブフレーム302よりも前の第4サブフレーム302の少なくとも一部、あるいは当該第4サブフレーム302よりも前の第3サブフレーム302の少なくとも一部が下り無線リソースとして割り当てられる。
また、次のTDDフレーム300のフレーム構成がフレーム構成1である場合において、中間サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302として決定されている通信端末2(中速移動端末2)に対して、前方SRS送信周期360についての下り無線リソースの割り当てが行われる際には、当該通信端末2に対しては、中間サブフレーム302に相当する第4サブフレーム302の少なくとも一部が下り無線リソースとして割り当てられる。
また、次のTDDフレーム300のフレーム構成がフレーム構成1である場合において、後方サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302として決定されている通信端末2(低速移動端末2)に対して、前方SRS送信周期360についての下り無線リソースの割り当てが行われる際には、当該通信端末2に対しては、後方サブフレーム302に相当する第5サブフレーム302の少なくとも一部、あるいは当該第5サブフレーム302よりも前の第4サブフレーム302の少なくとも一部が下り無線リソースとして割り当てられる。
なお、上述のように、通信端末2に対する下り無線リソースの割り当ては、時間方向においては一つのサブフレーム302単位で行われることから、複数の通信端末2に対して、同じサブフレーム302の下り無線リソースが割り当てられる際には、周波数方向において重複しないように下り無線リソースが割り当てられる。
ステップs4において、通信対象の各通信端末2について上り及び下り無線リソースが割り当てられると、ステップs5においては、通信部14は、通信対象の各通信端末2に対して、無線リソース割り当て部122が当該通信端末2に割り当てた上り及び下り無線リソースを通知する。
本実施の形態に係る基地局1においては、上記のステップs1〜s5までの一連の処理が各TDDフレーム300において行われる。
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、高速移動端末2が存在する場合にはフレーム構成2が使用され、高速移動端末2が存在しない場合にはフレーム構成1が使用されるようになっている。したがって、基地局1では、高速移動端末2が存在しない状況から、高速移動端末2が存在するようになると、使用されるフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されるようになる。つまり、基地局1では、高速通信端末2が存在するようになると、TDDフレーム300においてSRS用上り通信期間370とその後に現れる先頭の下り通信期間390との間の期間が短くなるようにフレーム構成が変更されるようになる。そして、基地局1においては、使用されるフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されると、最遅使用可能サブフレーム302が前方サブフレーム302に決定されている通信端末2(高速移動端末2)に対しては、フレーム構成2に含まれる、前方サブフレーム302に相当する下りサブフレーム302の下り無線リソースが割り当てられる。つまり、基地局1においては、フレーム構成1からフレーム構成2に変更されると、高速移動端末2に対しては、フレーム構成2に含まれる複数の下り通信期間390のうち、フレーム構成1に含まれる複数の下り通信期間390よりも前の下り通信期間390においてデータを送信している。したがって、高速移動端末2についてのアレイ送信制御期間を短くすることができる。よって、高速移動端末2の位置がアレイ送信制御期間において大きく移動することを抑制することができ、高速移動端末2に対するアレイ送信制御の精度を向上させることができる。その結果、高速移動端末2にデータを確実に届けることができる。
なお、上記の例では、移動速度が第1のしきい値よりも大きい通信端末2を高速移動端末2としているが、移動速度が第1のしきい値以上の通信端末2を高速移動端末2としても良い。この場合には、移動速度が第1のしきい値と同じである通信対象の通信端末2が存在するようになった場合にも、使用するフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されるようになる。移動速度が第1のしきい値以上の通信端末2を高速移動端末2とする場合には、移動速度が第1のしきい値よりも小さく第2のしきい値よりも大きい通信端末2、あるいは移動速度が第1のしきい値よりも小さく第2のしきい値以上の通信端末2を中速移動端末2とする。また、移動速度が第1のしきい値以下で第2のしきい値以上の通信端末2を中速移動端末2としても良い。移動速度が第1のしきい値よりも小さく第2のしきい値以上の通信端末2、あるいは移動速度が第1のしきい値以下で第2のしきい値以上の通信端末2を中速通信端末2とする場合には、移動速度が第2のしきい値よりも小さい通信端末2を低速移動端末2とする。
図8は、(N−2)番目及び(N−1)番目のTDDフレーム300での通信端末2a,2b,2cの移動速度の一例を示す図である。図8に示されるように、通信端末2aの移動速度470aは一定であり、(N−2)番目及び(N−1)番目のTDDフレーム300のそれぞれにおいて、通信端末2aは中速移動端末2となっている。また、通信端末2bの移動速度470bは小さくなっており、(N−2)番目のTDDフレーム300では通信端末2bは中速移動端末2となっているが、(N−1)番目のTDDフレーム300では通信端末2bは低速移動端末2となっている。そして、通信端末2cの移動速度470cは大きくなっており、(N−2)番目のTDDフレーム300では通信端末2cは中速移動端末2となっているが、(N−1)番目のTDDフレーム300では通信端末2cは高速移動端末2となっている。
図9,10は、図8に示される移動速度を有する通信端末2a,2b,2cに対する下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図9は(N−1)番目のTDDフレーム300に含まれる前方SRS送信周期360での下り無線リソースの割り当て例を示しており、図10はN番目のTDDフレーム300に含まれる前方SRS送信周期360での下り無線リソースの割り当て例を示している。
図8の例では、(N−2)番目のTDDフレーム300では高速移動端末2は存在しないことから、その次の(N−1)番目のTDDフレーム300のフレーム構成は、図9に示されるようにフレーム構成1となっている。そして、(N−1)番目のTDDフレーム300において、高速移動端末2が存在するようになったため、図10に示されるように、N番目のTDDフレーム300において、フレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変化している。
図9,10の例では、通信端末2a,2b,2cのそれぞれに対して、当該通信端末2について決定された最遅使用可能サブフレーム302に相当する下りサブフレーム302の一部が下り無線リソースとして割り当てられている。
具体的には、(N−1)番目のTDDフレーム300に含まれる前方SRS送信周期360においては、図9に示されるように、通信端末2a(中速)に対して、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第4サブフレーム302の一部が、通信端末2aとの下り通信で使用される下り無線リソース480aとして割り当てられている。また、通信端末2b(中速)に対しては、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第4サブフレーム302の一部が、通信端末2bとの下り通信で使用される下り無線リソース480bとして割り当てられている。そして、通信端末2c(低速)に対しては、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第5サブフレーム302の一部が、通信端末2cとの下り通信で使用される下り無線リソース480cとして割り当てられている。
N番目のTDDフレーム300に含まれる前方SRS送信周期360においては、図10に示されるように、通信端末2a(中速)に対して、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第4サブフレーム302の一部が下り無線リソース480aとして割り当てられている。また、通信端末2b(低速)に対しては、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第5サブフレーム302の一部が下り無線リソース480bとして割り当てられている。そして、通信端末2c(高速)に対しては、その最遅使用可能サブフレーム302に相当する第3サブフレーム302の一部が下り無線リソース480cとして割り当てられている。
図9,10に示されるように、基地局1では、高速移動端末2が存在するようになると、使用されるフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されるようになる。そして、基地局1においては、使用されるフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されると、高速移動端末2に対しては、フレーム構成2に含まれる複数の下りサブフレーム302のうち、フレーム構成1に含まれる複数の下りサブフレーム302よりも前の下りサブフレーム302(図10の例では第3下りサブフレーム302)の下り無線リソースが割り当てられる。したがって、高速移動端末2についてのアレイ送信制御期間を短くすることができ、高速移動端末2に対するアレイ送信制御の精度を向上させることができる。
また、図10に示されるように、中速移動端末2a及び低速移動端末2bに対しては、高速移動端末2cに割り当てられる下りサブフレーム302よりも後の下りサブフレーム302を割り当てることによって、通信端末2a〜2cに対する下り無線リソースの割り当て自由度が向上する。つまり、中速移動端末2a及び低速移動端末2bに対しては、高速移動端末2aにデータを送信する下り通信期間390よりも後の下り通信期間390でデータを送信するようにすることによって、通信端末2a〜2cに対する下り無線リソースの割り当て自由度が向上する。
例えば、スペシャルサブフレーム302に含まれる上りパイロットタイムスロット352の前方のシンボル期間304(SRS用上り通信期間370)において通信端末2cがSRSを送信するようにし、当該上りパイロットタイムスロット352の後方のシンボル期間304(SRS用上り通信期間370)において通信端末2aがSRSを送信するようにすれば、つまり、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352において、通信端末2cと通信端末2aとが、互いに異なった時間帯でSRSを送信するようにすれば、通信端末2cからのSRSの送信周波数帯域と、通信端末2aからのSRSの送信周波数帯域とを重ねることができる。よって、通信端末2cと通信端末2aに対しては、周波数帯域が互いに重なった下り無線リソースを割り当てることが可能となる。同様に、上りパイロットタイムスロット352において、通信端末2cと通信端末2bとが、互いに異なった時間帯でSRSを送信するようにすれば、通信端末2cと通信端末2bに対しては、周波数帯域が互いに重なった下り無線リソースを割り当てることが可能となる。よって、通信端末2a〜2cに対する下り無線リソースの割り当て自由度が向上する。
また、LTEにおいては、SRSを構成する複数の複素シンボルから成る符号パターンが8種類規定されており、この8種類の符号パターンには、互いに直交する8種類の符号系列がそれぞれ採用されている。したがって、LTEでは、最大で8つの通信端末2が、同じシンボル期間304において同じSRS送信帯域を用いてSRSを送信することが可能である。つまり、最大で8つの通信端末2からのSRSを同一送信周波数帯域に多重することができる。通信端末2a〜2cからのSRSを同一送信周波数帯域で多重することによって、通信端末2aと通信端末2cに対して、あるいは通信端末2bと通信端末2cに対して、周波数帯域が互いに重なった下り無線リソースを割り当てることが可能となる。よって、通信端末2a〜2cに対する下り無線リソースの割り当て自由度が向上する。
また、図10に示されるように、低速移動端末2bに対して、中速移動端末2aに割り当てられる下りサブフレーム302よりも後の下りサブフレーム302を割り当てることによって、上記と同様の理由により、通信端末2a,2bに対する下り無線リソースの割り当て自由度がさらに向上する。
なお、図10の例では、N番目のTDDフレーム300において、通信端末2bに対して、第5サブフレーム302の下り無線リソースを割り当てている。最遅使用可能サブフレーム302が第5サブフレーム302となっている通信端末2bについては、第5サブフレーム302よりも前の下りサブフレーム302の下り無線リソースを割り当てることが可能であることから、(N−1)番目のTDDフレーム300において通信端末2bに割り当てられている下り無線リソースと同じ下り無線リソースを、N番目のTDDフレーム300において割り当てることが可能である。
このように、N番目のTDDフレーム300での下り無線リソースを通信端末2に割り当てる際には、可能な限り、その一つ前の(N−1)番目のTDDフレーム300での下り無線リソースと同じ下り無線リソースを当該通信端末2に割り当てることによって、通信端末2に対する下り無線リソースの割り当て処理が簡素化される。
<各種変形例>
以下に、本実施の形態に係る通信システムについての各種変形例について説明する。
<第1変形例>
上記の例では、通信端末2の移動速度と比較されるしきい値として、第1及び第2のしきい値を設けたが、1種類のしきい値だけを設けても良い。この場合には、しきい値よりも大きい通信端末2が存在する場合にはフレーム構成2が使用され、当該通信端末2が存在しない場合にはフレーム構成1が使用される。そして、移動速度がしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は後方サブフレーム302となり、移動速度がしきい値よりも大きい通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は前方サブフレーム302となる。
通信端末2の移動速度と比較されるしきい値として、1種類のしきい値を設けた場合には、移動速度がしきい値以下の2つの通信端末2については、ともに後方サブフレーム302が最遅使用可能サブフレーム302とされるため、当該2つの通信端末2のうち移動速度が大きい方の通信端末2に対しても後方サブフレーム302が下り無線リソースとして割り当てられることがある。この場合には、移動速度が大きい方の通信端末2に対して、移動速度が小さい方の通信端末2と同じタイミングでデータが送信されることになる。
一方で、通信端末2の移動速度と比較されるしきい値として、2種類のしきい値を設けた場合には、移動速度が第1のしきい値以下の2つの通信端末2については、それらのうちで移動速度が大きい方の通信端末2の移動速度が第2のしきい値よりも大きければ、当該通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は中間サブフレーム302となる。したがって、当該通信端末2に対しては、後方サブフレーム302よりも前の中間サブフレーム302が下り無線リソースとして割り当てられることになる。よって、移動速度が第1のしきい値以下の2つの通信端末2において、移動速度が大きい方の通信端末2に対して、移動速度が小さい方の通信端末2よりもより早くデータを送信することが可能となる。その結果、移動速度が大きい通信端末2ほど当該通信端末2に対して早くデータを送信することによって、移動速度が大きい通信端末2ほどアレイ送信制御期間を短くしてアレイ送信制御の精度を向上させるという制御をより細かく行うことができる。
<第2変形例>
上記の例では、基地局1と通信端末2との通信に使用できる2種類のフレーム構成として、フレーム構成1とフレーム構成2の組み合わせを採用したが、他の組み合わせを採用しても良い。例えば、フレーム構成0とフレーム構成1の組み合わせを採用しても良いし、フレーム構成0とフレーム構成2の組み合わせを採用しても良い。
フレーム構成0及びフレーム構成1の組み合わせを採用した場合には、通信端末2の移動速度と比較されるしきい値は1種類となり、しきい値よりも大きい通信端末2が存在する場合にはフレーム構成1が使用され、当該通信端末2が存在しない場合にはフレーム構成0が使用される。そして、移動速度がしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は後方サブフレーム302となり、移動速度がしきい値よりも大きい通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は中間サブフレーム302となる。
また、フレーム構成0及びフレーム構成2の組み合わせを採用した場合には、通信端末2の移動速度と比較されるしきい値として、1種類のしきい値を設けても良いし、第1及び第2のしきい値(第1のしきい値>第2のしきい値)を設けても良い。1種類のしきい値を設ける場合には、しきい値よりも大きい通信端末2が存在するときにはフレーム構成2が使用され、当該通信端末2が存在しないときにはフレーム構成0が使用される。そして、移動速度がしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は後方サブフレーム302となり、移動速度がしきい値よりも大きい通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は中間サブフレーム302となる。一方で、第1及び第2のしきい値を設ける場合には、低い方の第2のしきい値よりも大きい通信端末2が存在するときにはフレーム構成2が使用され、当該通信端末2が存在しないときにはフレーム構成0が使用される。そして、移動速度が第2のしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は後方サブフレーム302となり、移動速度が第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は中間サブフレーム302となり、移動速度が第1のしきい値よりも大きい通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は前方フレーム302となる。
<第3変形例>
上記の例では、基地局1と通信端末2との通信に使用できるフレーム構成を2種類としたが、3種類以上としても良い。例えば、フレーム構成0〜2を使用しても良い。この場合には、第1のしきい値よりも大きい通信端末2が存在する際には、フレーム構成0〜2のうち、SRS用上り通信期間370とその後に最初に現れる下り通信期間390との間の期間が最も短いフレーム構成2を使用する。また、第1のしきい値よりも大きい通信端末2が存在せず、第1のしきい値以下であって第2のしきい値よりも大きい通信端末2が存在する際には、フレーム構成0〜2のうち、SRS用上り通信期間370とその後に最初に現れる下り通信期間390との間の期間がその次に短いフレーム構成1を使用する。そして、第2のしきい値よりも大きい通信端末2が存在しない際には、フレーム構成0〜2のうち、SRS用上り通信期間370とその後に最初に現れる下り通信期間390との間の期間が最も長いフレーム構成0を使用する。これにより、第1のしきい値よりも大きい通信端末2が存在しない状態で第1のしきい値以下で第2のしきい値よりも大きい通信端末2が存在するようになると、フレーム構成がフレーム構成0からフレーム構成1に変更されるようになる。つまり、TDDフレーム300においてSRS用上り通信期間370とその後に現れる先頭の下り通信期間390との間の期間が短くなるようにフレーム構成が変更される。また、第1のしきい値よりも大きい通信端末2が存在するようになると、フレーム構成がフレーム構成0あるいはフレーム構成1からフレーム構成2に変更されるようになる。つまり、TDDフレーム300においてSRS用上り通信期間370とその後に現れる先頭の下り通信期間390との間の期間が短くなるようにフレーム構成が変更される。
なお、フレーム構成0〜2を使用する場合には、移動速度が第2のしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は後方サブフレーム302となり、移動速度が第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値以下の通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は中間サブフレーム302となり、移動速度が第1のしきい値よりも大きい通信端末2についての最遅使用可能サブフレーム302は前方サブフレーム302となる。
<第4変形例>
基地局1と通信端末2との距離が大きい場合には、基地局1から当該通信端末2にデータを送信してから、当該データが当該通信端末2に届くまでに時間がかかることから、当該通信端末2についてのアレイ送信制御期間が長くなる。
また、本実施の形態に係る基地局1は、自装置でのフレームタイミングで各通信端末2からの信号を受信できるようにするために、各通信端末2の送信タイミングを制御している。基地局1と通信端末2との距離が大きい場合には、当該通信端末2がSRSを送信してから当該SRSが基地局1に届くまでに時間がかかることから、基地局1は、自装置との距離が大きい通信端末2からのSRSを自装置でのフレームタイミングで受信できるように、当該通信端末2に対して、自装置との距離が小さい通信端末2と比較して早くSRSを送信するように通知する。その結果、基地局1との距離が大きい通信端末2についてのアレイ送信制御期間が長くなる。
図11は、基地局1との距離が小さい通信端末2及び基地局1との距離が大きい通信端末2での送受信タイミングを示す図である。図11に示されるように、基地局1による通信端末2の送信タイミングの制御によって、基地局1との距離が大きい通信端末2がSRSを送信するタイミング501uは、基地局1との距離が小さい通信端末2がSRSを送信するタイミング500uよりも早くなっている。そして、基地局1との距離が大きい通信端末2が基地局1からのデータを受信するタイミング501dは、基地局1との距離が小さい通信端末2が基地局1からのデータを受信するタイミング500dよりも遅くなっている。したがって、基地局1との距離が大きい通信端末2についてのアレイ送信制御期間511は、基地局1との距離が小さい通信端末2についてのアレイ送信制御期間510よりも長くなっている。
このように、基地局1との距離が大きい通信端末2についてはアレイ送信制御期間が長くなることから、当該通信端末2の移動速度が大きい場合には、当該通信端末2の位置がアレイ送信制御期間において大きく変化する可能性がある。その結果、当該通信端末2に対するアレイ送信制御の精度が劣化して、当該通信端末2に基地局1のデータが届かない可能性がある。
そこで、本変形例に係る基地局1では、通信端末2の移動速度と比較されるしきい値を、当該通信端末2についての基地局1との距離が大きいほど小さく設定する。これにより、基地局1との距離が大きい通信端末2については、移動速度が比較的小さくてもフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されるようになり、当該通信端末2の位置がアレイ送信制御期間において大きく変化することを抑制することができる。よって、当該通信端末2に対するアレイ送信制御の精度を向上させることができる。以下に本変形例にかかる基地局1について詳細に説明する。
図12は、本変形例に係る基地局1の構成を示すブロック図である。図12に示されるように、本変形例に係る基地局1は、上述の図2に示される基地局1と比較して、距離取得部127がさらに設けられている。
距離取得部127は、基地局1の通信対象の各通信端末2について、当該通信端末2と基地局1との間の距離を取得する。距離取得部127は、通信端末2から通知される、当該通信端末2の位置と、予め記憶する基地局1の位置とに基づいて、当該通信端末2と基地局1との間の距離を算出する。距離取得部127は、上述のステップs1において、通信対象の各通信端末2についての基地局1との間の距離を算出する。
本変形例に係る基地局1では、上記の例のように各通信端末2に共通の第1及び第2のしきい値が設定されているのではなく、各通信端末2に個別の第1及び第2のしきい値が設定される。具体的には、ある通信端末2の移送速度と比較される第1及び第2のしきい値のそれぞれは、当該通信端末2と基地局1との距離が大きいほど小さく設定される。
図13は本変形例に係る第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2の一例を示す図である。図13の縦軸及び横軸は、通信端末2についての移動速度及び基地局との距離がそれぞれ示している。
図13に示されるように、通信端末2の移動距離と比較される第1のしきい値th1は、当該通信端末2と基地局1との距離が大きいほど小さく設定される。同様に、通信端末2の移動距離と比較される第2のしきい値th2は、当該通信端末2と基地局1との距離が大きいほど小さく設定される。図13の例では、通信端末2の移動距離と比較される第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2のそれぞれは、当該通信端末2と基地局1との距離が大きいほど階段状に小さくなるように設定されているが、直線状に小さくなるように設定されても良い。
フレーム構成決定部126は、図13に示されるような、通信端末2と基地局1との間の距離と、第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2との対応関係を予め記憶している。そして、フレーム構成決定部126は、上述のステップs2において、通信端末2の移動速度と、第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2のそれぞれとを比較する場合には、ステップs1において距離取得部127で求められた当該通信端末2と基地局1との間の距離と、予め記憶する上記の対応関係とに基づいて、当該通信端末2の移動速度と比較する第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2を決定する。以降の基地局1での動作は、図7を参照して説明した動作と同様である。
図13には、第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2以外にも、(N−2)番目及び(N−1)番目のTDDフレーム300での通信端末2a,2b,2cについての移動速度及び基地局との間の距離の一例も示されている。図13において、波線の丸印で囲まれた「2a」は、(N−2)番目のTDDフレーム300での通信端末2aについての移動速度及び基地局との間の距離を示しており、実線の丸印で囲まれた「2a」は、(N−1)番目のTDDフレーム300での通信端末2aについての移動速度及び基地局との間の距離を示している。波線の丸印及び実線の丸印で囲まれた「2b」と、波線の丸印及び実線の丸印で囲まれた「2c」についても同様である。
図13の例では、通信端末2aの移動速度は一定である。そして、通信端末2aと基地局1との間の距離は小さくなっている。したがって、通信端末2aの移動速度と比較される第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2のそれぞれは、(N−1)番目のTDDフレーム300で使用される値よりも、(N−2)番目のTDDフレーム300で使用される値の方が大きくなる。
また図13の例では、通信端末2bの移動速度は小さくなっている。そして、通信端末2bと基地局1との間の距離は小さくなっている。したがって、通信端末2bの移動速度と比較される第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2のそれぞれは、(N−1)番目のTDDフレーム300で使用される値よりも、(N−2)番目のTDDフレーム300で使用される値の方が大きくなる。
また、図13の例では、通信端末2cの移動速度は大きくなっている。そして、通信端末2cと基地局1との間の距離は大きくなっている。したがって、通信端末2cの移動速度と比較される第1のしきい値th1及び第2のしきい値th2のそれぞれは、(N−1)番目のTDDフレーム300で使用される値よりも、(N−2)番目のTDDフレーム300で使用される値の方が小さくなる。(N−1)番目のTDDフレーム300での通信端末2cの移動速度は第1のしきい値th1よりも大きいため、その次のN番目のTDDフレーム300では、フレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変化する。したがって、通信端末2cと基地局1との間の距離が大きくなることに起因してアレイ送信制御期間が長くなるものの、フレーム構成をフレーム構成1からフレーム構成2に変更したことに起因してアレイ送信制御期間を短くすることができる。よって、通信端末2cと基地局1との間の距離が大きくなることによってアレイ送信制御期間が長くなることを抑制できる。その結果、通信端末2cの位置がアレイ送信制御期間において大きく変化することを抑制することができる。
一方で、仮に、通信端末2cの移動速度と比較される第1のしきい値th1が、通信端末2cと基地局1との間の距離が零の場合での値に常に設定されて、変化しない場合には、(N−1)番目のTDDフレーム300での通信端末2cの移動速度は第1のしきい値th1よりも小さくなる。したがって、その次のN番目のTDDフレーム300では、フレーム構成はフレーム構成1からフレーム構成2に変化されない。よって、この場合には、フレーム構成の変更による、アレイ送信制御期間の短縮化の効果を得ることができない。したがって、通信端末2cについてのアレイ送信制御期間が長くなって、通信端末2cの位置がアレイ送信制御期間において大きく変化する可能性がある。
上記のように、本変形例では、通信端末2cの移動速度と比較される第1のしきい値th1を、当該通信端末2cについての基地局1との間の距離が大きいほど小さく設定しているため、通信端末2cと基地局1との距離が大きくなった際には、フレーム構成をフレーム構成1からフレーム構成2に変更することができる。よって、通信端末2cの位置がアレイ送信制御期間において大きく変化することを抑制することができ、通信端末2cに対するアレイ送信制御の精度をさらに向上することができる。その結果、基地局1の送信性能がさらに向上する。
なお、図13の例での通信端末2a〜2cに対する下り無線リソースの割り当てについては、例えば、上述の図9,10のように行うことができる。
<第5変形例>
上述のように、基地局1がフレーム構成を変更する場合には、変更後のフレーム構成に含まれる下りサブフレーム302と、当該基地局1の周辺に位置する周辺基地局1が使用するフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302とが重複することがある。言い換えれば、基地局1がフレーム構成を変更する場合には、変更後のフレーム構成に含まれる下り通信期間390と、当該基地局1の周辺に位置する周辺基地局1が使用するフレーム構成に含まれる上り通信期間380とが重複することがある。
具体的には、周辺基地局1がデフォルトのフレーム構成1を使用している場合には、周辺基地局1では第3及び第8サブフレーム302が上りサブフレーム302になっている。そして、基地局1がフレーム構成をフレーム構成1からフレーム構成2に変更すると、基地局1では第3及び第8サブフレーム302が上りサブフレーム302から下りサブフレーム302に変更されることから、第3及び第8サブフレーム302において、周辺基地局1の上りサブフレーム302と基地局1の下りサブフレーム302とが重複するようになる。
周辺基地局1の上りサブフレーム302と基地局1の下りサブフレーム302とが重複する場合には、周辺基地局1では、当該周辺基地局1が通信する通信端末2からの信号を受信する際に、基地局1が送信する信号を受信する可能性があり、基地局1からの信号の干渉を受けることになる。よって、周辺基地局1では、通信対象の通信端末2からの信号を適切に受信できない可能性がある。
そこで、本変形例に係る通信システム100では、各基地局1が自装置で使用するフレーム構成を変更すると、その変更後のフレーム構成を通知するための通知情報が、当該基地局1の周辺に位置する各周辺基地局1に通知されるようになっている。そして、周辺基地局1においては、現在使用するフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302におて、当該通知情報で通知される、基地局1のフレーム構成に含まれる下りサブフレーム302(下り通信期間390)と重複する上りサブフレーム302(上り通信期間380)については、通信端末2との上り通信に使用されないようになっている。以下に本変形例に係る通信システム100の動作について詳細に説明する。
各基地局1では、ステップs3においてフレーム構成が変更されると、フレーム構成決定部126が、変更後のフレーム構成を通知するための通知情報を生成してネットワーク通信部13に入力する。ネットワーク通信部13は、ネットワークを通じて、当該ネットワークに接続されたサーバ装置(図示せず)に通知情報を送信する。
サーバ装置では、通信システム100での複数の基地局1の配置状況が記憶されている。サーバ装置は、基地局1から通知情報を受信すると、当該基地局1の周辺に位置する各周辺基地局1に対して当該通知情報をネットワークを通じて送信する。これにより、基地局1でフレーム構成が変更されると、その変更後のフレーム構成を通知するための通知情報が各周辺基地局1に通知される。
一方で、各基地局1では、ネットワーク通信部13がサーバ装置からの通知情報を受信すると、制御部12は、基地局1が現在使用しているフレーム構成と、当該通知情報が示すフレーム構成とを比較する。そして、制御部12は、基地局1が現在使用しているフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302のうち、通知情報が示すフレーム構成、つまり周辺基地局1が使用するフレーム構成に含まれる下りサブフレームと重複する上りサブフレーム302については、通信端末2との上り通信に使用しないことを決定する。以後、制御部12は、基地局1が現在使用しているフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302のうち、通知情報が示すフレーム構成に含まれる下りサブフレームと重複する上りサブフレーム302において、無線処理部11で通信端末2からの信号が受信されると、その受信信号に対しては離散フーリエ変換などの受信処理を行わずに当該受信信号を破棄する。あるいは、制御部12は、その受信信号に対して受信処理を行うものの、それによって得られたデータを破棄する。
以上ように各基地局1が動作することによって、基地局1が、自装置で使用するフレーム構成を変更すると、その変更後のフレーム構成を通知するための通知情報が、当該基地局1の周辺に位置する各周辺基地局1に通知され、当該各周辺基地局1においては、現在使用するフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302において、当該通知情報で通知される、基地局1のフレーム構成に含まれる下りサブフレーム302と重複する上りサブフレーム302については、通信端末2との上り通信に使用されないようになる。これにより、周辺基地局1では、通信端末2から送信される、基地局1からの信号の干渉を受けた信号に基づいて動作を行うことが抑制され、その結果、周辺基地局1が誤動作することが抑制される。
図14は、ある基地局1のフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更された際の各基地局1でのフレーム構成を説明するための図である。図14に示される複数の基地局1のそれぞれにおいてフレーム構成1が使用されている場合に、中央の基地局1(サービスエリア10が砂地(多数の点)のハッチングで示された基地局1)においてフレーム構成がフレーム構成1からフレーム構成2に変更されると、その中央の基地局1の周辺に位置する6個の周辺基地局1のそれぞれでは、現在使用するフレーム構成に含まれる上りサブフレーム302において、当該通知情報で通知される、中央の基地局1のフレーム構成に含まれる下りサブフレーム302と重複する上りサブフレーム302については、通信端末2との上り通信に使用されないようになる。なお、図14では、当該6個の周辺基地局1以外において、フレーム構成1が使用されている基地局1のサービスエリア10が斜線のハッチングで示されている。
<その他の変形例>
上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の通信システムにも適用することができる。