JP5614760B2 - 塗料組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、塗料組成物に関し、より詳しくは、摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗布され、高い密着性を有し摩擦係数を低減した潤滑被膜を形成することができる塗料組成物に関する。
2つの部材が摺動可能に接しながら相対運動を行う場合、それら部材間には耐摩耗性や低摩擦性等の観点から高い潤滑性が求められる。この潤滑性の程度は、機器の種類、使用環境、摺動部材の表面状態等によって異なり、例えば、機械装置等では摺動部材間の潤滑剤として潤滑油やグリース等が使用されることが多い。しかしながら、使用環境によっては、潤滑油やグリース等が使用できない場合や、それらだけでは十分な摺動特性が得られない場合がある。
そこで、上述のような使用環境の場合であっても、摺動部材間の摺動特性の確保及び向上等を図るために、摺動部材の表面に固体潤滑剤からなる潤滑性被膜(潤滑被膜)を設けることが一般的に広く行われている。
しかしながら、固体潤滑剤を単体で部材表面に密着させることは困難である。そのため、通常は、バインダー樹脂によって固体潤滑剤を部材表面に密着させることにより潤滑被膜を形成するようにしている。
例えば、自動車、電子材料、精密機器、事務機器等の潤滑性を要求される部材では、その部材表面に潤滑性塗料を塗布して潤滑被膜を形成することが広く行われている。このような潤滑被膜の形成には、例えばエポキシ樹脂やポリアミドイミド樹脂等の熱硬化性樹脂の溶液中に、二硫化モリブデン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、グラファイト、窒化ホウ素のような固体潤滑剤の微粒子を分散した塗料が使用されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
しかしながら、摺動部材間の摺動特性の確保及び向上を図る上で、これまでの潤滑被膜よりも、より一層に低い摩擦係数を実現し、例えばグリース等と併用する場合や薬品等に接触する環境下においても高い密着性を維持しながら、低摩擦係数を維持することができる潤滑被膜の形成が求められている。
例えば特許文献3には、シリコーンゴム粒子と、固体潤滑剤と、樹脂とを所定量含有し、耐摩擦性を向上させた樹脂被膜材が記載されている。しかしながら、この技術では、添加剤としてシリコーンゴム粒子を含有させるに際して、加硫した後に粉砕して3〜5μm程度の粒径に調整するという操作を行わなければならないという問題がある。また、添加剤を添加するようにしているため、形成される被膜の潤滑性能にばらつきが生じる可能性もある。さらに、形成される被膜と被塗物との密着性については何ら考慮されていない。
特開平9−79262号公報 特開2001−343022号公報 特開平8−48800号公報
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、例えば摺動部材等を構成するゴム弾性体に対する密着性が高く、より摩擦係数の低い潤滑被膜を形成させることができる塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤と、結合剤であるバインダー樹脂との混合比を所定の比率に制御することによって、特殊な添加剤等を添加することなく、塗膜するゴム弾性体表面に対する密着性が高く、しかも摩擦係数の低い潤滑被膜を形成できる塗料組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る塗料組成物は、ゴム弾性体の表面に塗布して被膜を形成し、該被膜にグリースを塗布して使用する塗料組成物であって、層状結晶構造を有する無機潤滑剤とフッ素樹脂潤滑剤とを含む固体潤滑剤と、バインダー樹脂とを含有し、該固体潤滑剤(P)と該バインダー樹脂(B)との混合割合が重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0であり、該無機潤滑剤と該フッ素樹脂潤滑剤との混合割合が重量比で75:25〜25:75であることを特徴とする。
ここで、上記固体潤滑剤(P)と上記バインダー樹脂(B)との混合割合が重量比(P/B)で表される値として0.5〜1.0であることが好ましい。
また、上記層状結晶構造を有する無機潤滑剤が、グラファイトであることが好ましい。また、上記バインダー樹脂は、ウレタンであることが好ましい。
本発明に係る塗料組成物によれば、例えば摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に対して、密着性が高く、摩擦係数の低い潤滑被膜を形成することができる。
Dry条件で行った塗料サンプル1〜35による被膜及びH−NBRのみの摩擦係数測定結果のグラフ図である。 グリース併用条件で行った塗料サンプル36〜65による被膜及びH−NBRのみの摩擦係数測定結果のグラフ図である。
以下、本発明に係る塗料組成物についての具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という。)を、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明に要旨を変更しない範囲において変更が可能である。
1.塗料組成物
2.塗料組成物の製造方法
3.塗料組成物の使用方法
4.実施例
4−1.摩擦試験
4−2.耐グリース試験(密着性試験)
<1.塗料組成物>
本実施の形態に係る塗料組成物は、例えばベアリングやピストン、ワイパーなどの摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗布されて潤滑被膜を形成させる塗料組成物であって、その表面に対する密着性に優れており、摩擦係数の低い被膜を形成することを可能にするものである。
具体的に、この塗料組成物は、層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤と、結合剤としてのバインダー樹脂とを含有する。そして、この塗料組成物では、その固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)とを、重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0の混合割合で含有する。
本実施の形態に係る塗料組成物において、固体潤滑剤としては、層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含むものからなる。ここで、層状結晶構造を有する無機潤滑剤(以下、単に「無機潤滑剤」ともいう。)は、縦方向に層状の結晶構造をなすものであり、所定の荷重をかけたときにその層間を介して滑りやすい性質を有し、優れた潤滑性能を発揮する。
具体的に、この無機潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、窒化ホウ素(BN)等が挙げられ、これらの無機潤滑剤を1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。その中でも、少なくともグラファイトを用いることが、耐熱性及び化学的安定性を発揮させるとともに、安価で経済性が良好であるという点で、特に好ましい。
また、固体潤滑剤は、上述した層状結晶構造を有する無機潤滑剤と共に、フッ素樹脂潤滑剤を含むものであることが好ましい。フッ素樹脂潤滑剤としては、例えは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フルオネートエチレンポリエチレン(FEP)、パーフルオロアルキル(PFA)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。その中でも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが特に好ましい。
このフッ素樹脂潤滑剤は、安定的な粘弾性を有しており、上述した層状結晶構造を有する無機潤滑剤と比較して軟らかい。また、フッ素樹脂潤滑剤は、耐摩耗性、耐薬品性に優れている。そのため、上述の無機潤滑剤と共にフッ素樹脂潤滑剤を併せて含有する固体潤滑剤を用いることによって、非常に広範囲に亘る種々の部材に適用するゴム弾性体に対して潤滑性能の優れた被膜を形成することができ、またその被膜の耐摩耗性を向上させることができる。
上述の無機潤滑剤とフッ素樹脂潤滑剤の混合割合として、より好ましくは、無機潤滑剤:フッ素樹脂潤滑剤の重量比で75:25〜25:75の割合とする。このような範囲で2種類の潤滑剤を混合させた固体潤滑剤を用いることにより、より大きな荷重に対しても潤滑性能を維持するとともに、適用部材の範囲を広げることができ、しかも摩耗特性を向上させることができる。
フッ素樹脂潤滑剤は、その潤滑特性として摩擦低減効果が非常に優れている一方で、耐荷重特性は比較的劣る。これに対して、層状結晶構造を有する無機潤滑剤は、摩擦低減効果はフッ素樹脂潤滑剤よりも劣るものの、耐荷重特性が非常に高いという特性を有する。また、例えばグリースと併用した場合等においては、フッ素樹脂潤滑剤は、グリースのオイル分をはじく作用があり、一方で、層状結晶構造を有する無機潤滑剤は、オイル分を給油する作用がある。これらの点において、無機潤滑剤とフッ素樹脂潤滑剤の混合割合を重量比で好ましくは75:25〜25:75の割合とする固体潤滑剤をバインダー樹脂に混ぜ合せることによって、より大きな荷重に対しても低摩擦特性を発揮することができるとともに、優れた耐摩耗特性を有する被膜を形成することができる。
バインダー樹脂は、上述した固体潤滑剤を摺動面となるゴム弾性体表面に定着させるための結合剤(定着剤)として作用するものである。このバインダー樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。その中でも、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂とすることが、種々のゴム弾性体に対して高い密着性を発揮させることができるとともに、そのゴム弾性体に対する追随性が良好になるという点で、特に好ましい。
ここで、本実施の形態に係る塗料組成物においては、上述した層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)とを所定の比率に制御して混合することが重要となる。
本実施の形態に係る塗料組成物は、上述したように、摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗布されて被膜を形成させるものである。したがって、その伸縮する特性を有するゴム弾性体に対して安定的に密着させることができる被膜を形成させながら、その被膜が優れた潤滑特性を有するものとすることが重要となる。本発明者は、固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との混合割合を所定の比率に制御した塗料組成物を用いることにより、例えば摺動に伴って伸縮等するゴム弾性体に対して安定的に密着した被膜を形成させることが可能になるとともに、形成された被膜の摩擦係数を効果的に低下させることができ、優れた潤滑性能を発揮させることができることを見出した。
具体的には、この塗料組成物では、固体潤滑剤とバインダー樹脂とを、その重量比(P/B)で表される値として、0.1〜2.0の範囲となるように配合する。上述した固体潤滑剤の配合割合として考えると、バインダー樹脂100重量部に対して、10〜200重量部の割合となるように固体潤滑剤を配合する。
固体潤滑剤とバインダー樹脂との重量混合比(P/B)に関して、P/B比が0.1未満では、固体潤滑剤が少な過ぎて摩擦係数を効果的に低下させることができない。一方で、P/B比が2.0より大きいと、摩擦係数が高くなってしまうとともに、ゴム弾性体に対しての密着力が十分に得られず、また被膜強度が悪化して荷重を掛けると被膜が破断してしまうおそれがある。これに対して、P/B比が0.1〜2.0の範囲となるように混合させることによって、被膜処理なしのゴム弾性体の摩擦係数に比して、摩擦係数を著しく低下させることができるとともに、伸縮するゴム弾性体に対して高い密着力で以って安定的に密着し、優れた潤滑性能を効果的に維持させることができる。
また、この塗料組成物においては、P/B比を0.1〜2.0の範囲とすることによって、塗膜するゴム弾性体の表面に対する密着性を向上させることができるという他の優れた効果を有する。具体的には、塗料組成物におけるP/B比を上述した範囲とすることによって、形成される被膜の耐油性を高めることができる。つまり、耐油性が高まることによって、例えばグリースと併用した場合や油性の薬品等と接触した場合等においても、そのグリースや薬品等に起因する油成分が被膜中に浸透することが抑制され、ゴム弾性体への高い密着性を維持させることができる。本実施の形態に係る塗料組成物では、このように、密着性を向上させることができることにより、被膜の安定性が高まり、長期間に亘って低摩擦性を有する被膜の状態を維持することができる。
さらに、好ましくは重量混合比(P/B)が0.5〜1.0、より好ましくは0.8〜1.0の範囲となるように混合する。これは、固体潤滑剤の配合割合として考えると、バインダー樹脂100重量部に対して、好ましくは50〜100重量部の割合、より好ましくは80〜100重量部の割合となるように固体潤滑剤を配合することになる。このように、P/B比を好ましくは0.5〜1.0、より好ましくは0.8〜1.0の範囲とすることによって、より一層に被膜の摩擦係数を低下させることができ、より大きな荷重に対しても優れた潤滑性能を発揮させることができる。また、ゴム弾性体に対する密着性がより一層に高くなり、例えばゴム弾性体の伸縮度合いに依らずにより安定的に密着して、優れた潤滑性能を発揮させることができるという優れた効果を有する。
なお、本実施の形態に係る塗料組成物は、上述した構成成分の他に、必要に応じて各種の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、硬化剤、補強剤、分散剤、レベリング剤、界面活性剤、染料等を使用することができる。
以上のように、本実施の形態に係る塗料組成物は、摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗布される塗料組成物であって、層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤と、バインダー樹脂とを含有し、その固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との混合割合が重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0である。このような塗料組成物によれば、従来に比して摩擦係数の低い潤滑被膜を形成させることができる。またそれだけではなく、優れた耐油性を有し、ゴム弾性体の表面に対して高い密着性で以って被膜を形成させることができ、例えばグリースを併用した場合や油性の薬品等に接触する環境下でも、優れた潤滑性能を長期間に亘って安定的に維持することができる。
また、この塗料組成物は、固体潤滑剤とバインダー樹脂との混合割合を制御することによって摩擦係数の極めて低い潤滑被膜を形成できることから、従来のように、例えばゴム粒子や他の有機化合物等の摩擦係数を低減させるための特殊な添加剤等を添加するといった複雑な工程に伴うことなく、簡易に優れた潤滑被膜を形成することができる。また、特殊な添加剤を添加することに依らないので、形成される被膜に潤滑性能のバラつきを生じさせることがない。
<2.塗料組成物の製造方法>
本実施の形態に係る塗料組成物は、上述した構成成分と、また必要に応じた各種の添加剤とを、溶媒中にそれぞれ所定量配合させて溶解し、攪拌処理を施して均一に分散させることによって得ることができる。
特に、この塗料組成物では、上述したように、層状結晶構造を有する無機潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)とを、重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0となるように配合させ、攪拌処理して均一に分散させる。
構成成分を溶解させる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や有機溶媒等を使用することができ、構成成分の溶解性や相溶性等を考慮して適宜決定することができる。具体的に、有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、炭酸ジメチル、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族、脂環族炭化水素類等が挙げられ、これらの溶媒は1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
構成成分を均一に分散させる方法としては、特に限定されないが、構成成分を溶媒に溶解させた後に、物理的にせん断力を加えて分散させることが好ましく、例えば三本ロールミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ビーズミル等の混練装置によって混練しながら分散させる。
<3.塗料組成物の使用方法>
本実施の形態に係る塗料組成物は、上述したように、例えば摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗布されて潤滑被膜を形成させるために使用される。
このような塗料組成物を塗布する対象(被塗物)となるゴム弾性体としては、特に限定されるものではなく、何れのゴム弾性体に対しても高い密着性で以って、摩擦係数を効果的に低減させることが可能な被膜を形成させることができる。
具体的に、ゴム弾性体としては、例えば、天然ゴムや、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴムなどの熱加硫ゴム、オレフィン系、スチレン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性のエラストマー等の合成ゴムが挙げられる。
ゴム弾性体に対して塗料組成物を塗布する方法としては、一般的な塗料と同様に、例えばスプレー塗布、浸漬(ディッピング)塗布、刷毛塗り、吹付けによるタンブリング、スクリーン印刷等の手法により行うことができる。これらの塗布方法の選択は、被塗物であるゴム弾性体の形状や処理数量に応じて決定することができる。
なお、塗料組成物をゴム弾性体に塗布するに先立ち、ゴム弾性体に対する脱脂処理や、被膜の密着性を高めるための表面処理並びに洗浄処理等を行うことができる。
上述の手法によりゴム弾性体の表面に塗料組成物を塗布した後、焼成して塗膜を硬化させて被膜とする。焼成条件としては、特に限定されるものではなく、塗料組成物の組成や被膜の種類等に応じて決定することができる。具体的には、例えば、ドライフィルムを形成する場合では、焼成温度を80〜200℃とし、焼成時間を30〜60分とすることによって形成することができる。なお、例えば硬化時間を長くすることによって、常温で処理することもできる。
形成する被膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、ゴム弾性体の大きさや用途等に応じて適宜決定すればよくが、5〜50μm程度とすることが好ましく、10〜15μmとすることがより好ましい。
また、本実施の形態に係る塗料組成物は、摺動部材等を構成するゴム弾性体の表面に塗膜してドライフィルムとして使用することに限られず、この塗料組成物をゴム弾性体の表面に塗布して被膜を形成させるのに併せて、その被膜にさらにグリースを塗布して使用するようにしてもよい。このようにグリースを併用することによって、グリースの潤滑性能と併せて、より一層に摩擦係数を低減させることができる。
併用するグリースとしては、特に限定されるものではなく、周知の種々のグリースを使用することができる。例えば、リチウム石鹸グリース、カルシウム石鹸グリース、ナトリウム石鹸グリース、ウレアグリース、ベントナイトグリース等が挙げられる。
<4.実施例>
以下に本発明についての実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<4−1.摩擦試験>
(塗料組成物(塗料サンプル)の製造)
バインダー樹脂としてのウレタン樹脂と、固体潤滑剤としてのグラファイト及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、添加剤としてのフッ素系界面活性剤とを、下記表1及び表2に示す重量部の割合で秤量し、有機溶媒である酢酸エチル/MIBK/ブチルセロソルブ=50/30/20(重量部)の混合溶剤に加えて、各成分を十分に攪拌分散させた。攪拌分散に際しては、ビーズミルを用いて混練して行った。ビーズミルによる攪拌分散条件としては、分散メディアとしてφ1.5ジルコニアビーズを用いてベッセル容量1.4Lに対して80%充填させ、流量0.4mL/minにて2パスの分散処理を行った。これにより、塗料サンプル1〜65を作製した。
(摩擦係数評価試験)
作製した塗料サンプル1〜65について、摩擦摩耗試験機(フリクションプレーヤー)(株式会社レスカ製、フリクションプレーヤ FRP−2100)を使用して、塗料サンプルを塗布して形成された被膜の摩擦係数を測定した。フリクションプレーヤー試験の設定条件としては、相手材をφ3/16インチSUS304ボールとし、荷重0.49N(50g)、摺速度0.1m/s(回転円径:φ20mm、回転数95.5rpm)、測定時間10分として行った。
テストピース(試験片)としては、縦50mm×横50mm×厚さ2mmの水素化ニトリルゴム(H−NBR)を使用し、室温下で、各テストピースの表面に塗料サンプル1〜65をエアスプレーによりコーティングし、焼成温度150℃、焼成時間40分の条件で焼成し、膜厚10〜15μmの潤滑被膜を形成した。
また、塗料サンプル1〜35により形成させた被膜ついては、そのままの状態(Dry状態)で上述のフリクションプレーヤー試験を行って摩擦係数を測定した。一方で、塗料サンプル36〜65により形成させた被膜については、その被膜上に、さらにリチウム石鹸系グリース(スミグリスBGNO.1 住鉱潤滑剤株式会社製)を塗布(グリース併用)して摩擦係数を測定した。
なお、比較として、塗料組成物による被膜形成なしのH−NBRのみのもの、及び、塗料組成物による被膜形成なしであってH−NBR上にリチウム石鹸系グリース(スミグリスBGNO.1 住鉱潤滑剤株式会社製)を塗布したものの摩擦係数を同様にして測定した。
下記表1及び表2に、各塗料サンプルの組成(各成分の配合割合は重量部)と、摩擦係数の測定結果を示す。なお、表1は、Dry条件で行った塗料サンプル1〜35による被膜のものであり、表2は、グリース併用条件で行った塗料サンプル36〜65による被膜のものである。また、図1に、Dry条件で行った塗料サンプル1〜35による被膜及びH−NBRのみの摩擦係数測定結果のグラフ図を示し、図2に、グリース併用条件で行った塗料サンプル36〜65による被膜及びH−NBRのみの摩擦係数測定結果のグラフ図を示す。
Figure 0005614760
Figure 0005614760
摩擦係数の測定結果に示されるように、固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との混合割合を重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0の範囲とした塗料サンプル(サンプル1〜28、36〜59)で形成した被膜では、Dry条件でも、グリース併用条件でも、被膜を形成させないH−NBRそのままのものよりも、摩擦係数が著しく低減した。その中でも、P/B比を0.5〜1.0とした塗料サンプル、特に0.8〜1.0とした塗料サンプルにより形成した被膜では、より一層に摩擦係数が低下する傾向となっていることが確認できる。
一方で、P/B比を0.1〜2.0の範囲としたものの、固体潤滑剤としてPTFEのみを含み、層状結晶構造を有する固体潤滑剤(グラファイト)を含有しない塗料サンプル(サンプル29〜35、60〜65)では、摩擦係数の低減効果は見られず、H−NBRそのままの摩擦係数と比べて、略同程度か、むしろ高まったことが分かる。
このことから、層状結晶構造を有する固体潤滑剤を少なくとも含む固体潤滑剤を使用し、その固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との重量混合比(P/B)を0.1〜2.0の範囲に制御した塗料組成物によれば、その摩擦係数が効果的に低減された潤滑被膜を形成できることが分かった。
<4−2.耐グリース試験(密着性試験)>
次に、グリース併用時における耐油性の評価に基づく密着力について評価した。具体的には、先ず、バインダー樹脂としてのウレタン樹脂と、グラファイト(G)及びPTFEをPTFE/Gで表される重量比で50/50の割合で含有する固体潤滑剤と、添加剤としてのフッ素系界面活性剤とを、有機溶媒である酢酸エチル/MIBK/ブチルセロソルブ=50/30/20(重量部)の混合溶剤に加えて攪拌分散して塗料サンプルを作製した。このとき、下記表3に示すように、固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との混合割合を重量比(P/B)で表される値として0.1〜3.0の8種類の塗料サンプルを作製した。
テストピース(試験片)として、縦50mm×横50mm×厚さ2mmの水素化ニトリルゴム(H−NBR)を使用し、室温下で、各テストピースの表面に作製した8種類の塗料サンプルをそれぞれエアスプレーによりコーティングし、焼成温度150℃、焼成時間40分の条件で焼成し、膜厚10〜15μmの潤滑被膜を形成した。
次に、このようにしてH−NBR上に形成した潤滑被膜に対して、リチウム石鹸系グリース(スミグリスBGNO.1 住鉱潤滑剤株式会社製)を塗布し、80℃の温度条件で7日間放置した。放置後、塗布したグリースを洗浄除去し、潤滑被膜の密着力を耐碁盤目試験(JIS K5600−5−6)により評価した。
表3に、試験結果を示す。なお、結果の評価における『分類』は、上述のJIS K5600−5−6の耐碁盤目試験に定められているものであり、クロスカット部分の表面状態に基づいて分類0〜5の6段階からなる。具体的に、『分類0』は「カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。」状態であり、すなわち試験片であるH−NBR表面に高い密着力で密着していることを示す。また、『分類4』は「塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全体的に大はがれを生じており、及び/又は数カ所の目が部分的又は全体的にはがれている。クロスカット部分の影響を受けるのは、明確に36%を超えるが65%を上回ることはない。」状態であり、すなわち試験片であるH−NBR表面から潤滑被膜の大部分が剥がれ密着力が低いことを示す。
Figure 0005614760
表3に示すように、固体潤滑剤(P)とバインダー樹脂(B)との混合重量比(P/B)を0.1〜2.0とした塗料サンプルでは、グリースを併用した場合においても優れた耐油性を示し、高い密着性を有していることが分かる。一方で、P/Bが2.0よりも大きい場合では、試験評価分類が「分類4」となっていることからも、密着力が著しく低いことが分かる。このことは、固体潤滑剤の量が多くなることによって耐油性が低下し、併用したグリースが潤滑被膜内に浸透するようになったことにより、密着力の低下をもたらしたと考えられる。
この結果から、P/B比を0.1〜2.0に制御した塗料組成物によれば、摩擦係数を効果的に低減させることができるだけでなく、優れた耐油性を有し、ゴム弾性体に対して高い密着性を有する潤滑被膜を形成できることが分かった。

Claims (5)

  1. ゴム弾性体の表面に塗布して被膜を形成し、該被膜にグリースを塗布して使用する塗料組成物であって、
    層状結晶構造を有する無機潤滑剤とフッ素樹脂潤滑剤とを含む固体潤滑剤と、バインダー樹脂とを含有し、
    上記固体潤滑剤(P)と上記バインダー樹脂(B)との混合割合が重量比(P/B)で表される値として0.1〜2.0であり、
    上記無機潤滑剤と上記フッ素樹脂潤滑剤との混合割合が重量比で75:25〜25:75であることを特徴とする塗料組成物。
  2. 上記固体潤滑剤(P)と上記バインダー樹脂(B)との混合割合が重量比(P/B)で
    表される値として0.5〜1.0であることを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
  3. 上記層状結晶構造を有する無機潤滑剤が、グラファイトであることを特徴とする請求項
    1又は2記載の塗料組成物。
  4. 上記バインダー樹脂は、ウレタンであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項
    記載の塗料組成物。
  5. 表面に、上記請求項1に記載の塗料組成物が塗布されて形成された被膜を有することを
    特徴とするゴム弾性体。
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