JP5612406B2 - 光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物及び光ファイバ素線 - Google Patents
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Description
さらに、光ファイバ素線の外径は250μm程度であるが、手作業による作業性を改善する目的で、この外周をさらに別の樹脂層で被覆して、外径を500〜900μm程度に増大させることが行われている。このような樹脂被覆層を通常アップジャケット層という。
これらの樹脂被覆方法としては、液状硬化性樹脂組成物を塗付し、熱又は光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
(A)脂肪族構造を有するポリオールに由来する構造及び芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールに由来する構造を有するウレタン(メタ)アクリレート 30〜90質量%、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物 1〜60質量%、
(C)重合開始剤 0.1〜10質量%
(D)数平均分子量1,000〜30,000のシリコーン化合物 0.1〜10質量%
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、当該液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層、及びこれを有する光ファイバ素線を提供するものである。
脂肪族構造を有するポリオールは、柔軟な構造を有しているため、破断伸びに優れた硬化物を形成することができる。一方、芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールは、剛直な構造を有しているため、硬化物のヤング率を高めることができる。
そして、柔軟な構造を有するポリオールに由来する構造と剛直な構造を有するポリオールに由来する構造とを一分子中に有するウレタン(メタ)アクリレートであることにより、(D)成分との相溶性を改善して、透明性に優れる硬化物を得ることができる。
具体的には、ポリプロピレン変性ビスフェノールAであるユニオールDB−400(日油製)は、下記式(0)で表される分子量400のジオールである。ここで、(C3H6O)nで表される部分の分子量は約90である。このため、(A)成分中においてDB−400に由来する構造は、その構造全体として剛直な構造を有するポリオールに由来する構造として扱う。
[式(0)において、Phはフェニレン基である。nは、繰り返し数を示す。]
なお、本発明においては、ポリオールとして、脂肪族構造を有するポリオールと、芳香族構造又は脂環式構造を有するポリオールの2種を用いるが、これら2種のポリオールとジイソシアネートを反応させるには、2種同時であっても良いし、いずれか一方のポリオールをジイソシアネートと反応させた後、更に他方のポリオールを加えて反応させても良い。
以下、成分(A)であるウレタン(メタ)アクリレートの製造に用いられるポリオール、ジイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートについて説明する。
脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
これらのポリオールは、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂製)等の市販品として入手することもできる。
なお、数平均分子量は水酸基価より求められ、水酸基価は、JIS−K0070に基づいて測定される。
これらのジイソシアネートは、単独あるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を使用することもできる。
これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
で表わされる化合物等が挙げられる。
成分(C)は、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0.1〜10質量%配合され、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜5質量%配合される。
また、透明性に優れる光ファイバ素線の最外層を得るためには、硬化物中における(D)成分の相溶性が重要である。(D)成分と(A)成分の組合せによって透明性に優れた硬化物を得ることができる。
成分(D)の数平均分子量が1,000未満では、十分な透明性の効果が得られず、数平均分子量が30,000を超えると、表面滑り性の効果が不十分となり、ヤング率の低下につながる。より好ましい数平均分子量は1,000〜28,000であり、さらに1,000〜25,000が好ましい。
成分(D)のシリコーン化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めたポリスチレン換算数平均分子量である。
ポリエーテル変性シリコーンとしては、少なくとも1個のケイ素原子に基R14−(R15O)s−R16−(ここで、R14は水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、R15は炭素数2〜4のアルキレン基を示し(ここでR15は2種以上のアルキレン基が混在していてもよい)、R16は炭素数2〜12のアルキレン基を示し、sは1〜20の数を示す)が結合しているポリジメチルシロキサン化合物が好ましい。このうちR15としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
成分(D)は、光ファイバ素線の最外層の表面滑り性や透明性の点から、本発明の液状硬化性樹脂組成物の全組成中に0.1〜10質量%配合され、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは0.8〜6質量%配合される。
このように硬化させることにより、光ファイバ素線の最外被覆層として好適である。
最外被覆層(アップジャケット層)を形成させるには、膜厚100〜400μmに被覆するのが好ましい。
また、本発明の液状硬化性組成物を硬化させて得られる被膜は、300MPa〜800MPaのヤング率を示すのが好ましく、さらに300〜600MPaが好ましい。破断伸びは、150〜300%を示すのが好ましく、さらに160〜200%が好ましい。破断強度は、1〜70MPaを示すのが好ましく、さらに1〜60MPaが好ましい。表面滑り性は2〜15N/cm2を示すのが好ましく、さらに5〜13N/cm2が好ましい。透明性(ヘイズ)は3%以下を示すのが好ましく、さらに2%以下が好ましい。
撹拌機を備えた反応容器に、イソボニルアクリレート30.0g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01g、トルエンジイソシアナート13.6g、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール26.4g、数平均分子量400のビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール(日本油脂製、DA400)10.6gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。15℃以下になったことを確認した後、ジブチル錫ジラウレート0.02gを仕込み、液温が60℃以下になるように制御しながら2時間攪拌して反応させた。次に、ジブチル錫ジラウレート0.02gを加え、ヒドロキシエチルアクリレート6.02gを液温が60℃以上にならないように注意しながら滴下を行い、すべてを滴下し終わった後、65〜70℃で2時間撹拌した。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA1−1とする。
UA1−1は、柔軟な構造を有する数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールに由来する構造及び剛直な構造を有する数平均分子量400のビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオールに由来する構造を有するウレタンアクリレートである。柔軟な構造を有するポリテトラメチレングリコールと剛直な構造を有するビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオールのモル比は1:1である。
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.24g、2,4−トリレンジイソシアネート272g、数平均分子量が1000であるポリテトラメチレングリコール546g加え、液温が15℃になるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート0.80g添加した後、液温が40℃以上にならないように1時間攪拌した。これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。その後、ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら181g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA2−1とする。
攪拌機を備えた反応容器に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.12g、2,4−トリレンジイソシアネート355g、ジブチル錫ジラウレート0.24g添加した後攪拌しながら、15℃まで冷却した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら237g滴下した後、湯浴にして40℃にし1時間攪拌した。その後、液温を20℃に冷却し、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール(日本油脂製,DA400)を408gを添加した。発熱を確認した後に、65℃で3時間攪拌させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。得られたウレタン(メタ)アクリレートを、UA2−2とする。
表1に示す組成の各成分を攪拌機を備えた反応容器に仕込み、液温度を50℃に制御しながら1時間攪拌し、液状硬化性樹脂組成物を得た。
前記実施例及び比較例で得た液状硬化性樹脂組成物を以下のような方法で硬化させ、試験片を作製し、下記の各評価を行った。結果を表1に併せて示す。表1中の配合量は、質量部である。
組成物を25℃の恒温水槽で30分間放置した後、B型粘度計を用いて粘度を測定した。
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布し、これを空気下で1J/cm2のエネルギーの紫外線で照射して硬化させ、測定用フィルムを得た。このフィルムから、延伸部が幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成し、温度23℃、湿度50%で引っ張り試験を行った。引っ張り速度は1mm/minで2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。
引張試験器(島津製作所社製、AGS−50G)を用い、上記のサンプルの破断強度及び破断伸びを下記測定条件にて測定した。
引張速度 :50mm/分
標線間距離(測定距離):25mm
測定温度 :23℃
相対湿度 :50%RH
(試験片の作成)
250μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に液状硬化性樹脂組成物を塗布した。これを窒素下で0.5J/cm2のエネルギーの紫外線を照射した。この硬化物を23℃、湿度50%雰囲気下で12時間以上状態調整したのち、硬化物をガラス板から剥離し、3cm幅に裁断して試験片とした。
(剪断滑り試験)
上記試験片のガラス板に接していた面をアルミ板に密着させ、両面テープにて固定した。この試験片を2枚用い、硬化物の表面同士を重ね合わせ、ダブルクリップで挟み、表面滑り性試験に供した。引っ張り速度50mm/min、硬化物表面の接触面積5.4cm2、ダブルクリップによる加圧は4.7N/cm2で剪断滑り試験を行い、滑り始めの荷重より剪断滑り力を計算した(単位:N/cm2)。
硬化膜の全光線透過率を、カラーヘイズメーター(スガ試験機社製)を用い、JIS K7105に準拠して測定した。
IRGACURE907:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)。
LucirinTPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)。
IRGACURE184;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製)。
IRGANOX245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)。
FM0411;数平均分子量1,170のジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(チッソ製)。
SH28PA;数平均分子量3,700のジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング製)。
SH190:数平均分子量22,000のジメチルポリシロキサンポリオキシアルキレン共重合体(東レ・ダウコーニング製)。
本発明の樹脂組成物で形成された硬化物は、光ファイバ素線の最外層被覆用として有用である。
Claims (9)
- 液状硬化性樹脂組成物全量を100質量%として、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)脂肪族構造を有するポリオールに由来する構造及び芳香族構造を有するポリオールに由来する構造を一分子中に有するウレタン(メタ)アクリレート 30〜90質量%、
(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物 1〜60質量%、
(C)重合開始剤 0.1〜10質量%、
(D)数平均分子量1,000〜30,000のシリコーン化合物 0.1〜10質量%
を含有する光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。 - 成分(A)が有する脂肪族構造を有するポリオールに由来する構造と芳香族構造を有するポリオールに由来する構造のモル比が0.5:2〜2:0.5である請求項1に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 成分(A)において、脂肪族構造を有するポリオールの数平均分子量が700〜2000であり、かつ、芳香族構造を有するポリオールの数平均分子量が300〜1000である請求項1又は2に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 成分(A)において、脂肪族構造を有するポリオールがポリエーテルポリオールである請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 成分(A)において、芳香族構造を有するポリオールがビスフェノール構造を有するポリオールである請求項1〜4のいずれか一項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 成分(B)ウレタン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の全量を100質量%として、(B1)重合性単官能化合物を90質量%以上含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 成分(D)数平均分子量1,000〜30,000のシリコーン化合物が、ジメチルポリシロキサン構造を有するシリコーン化合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の光ファイバ素線の最外層被覆用液状硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる光ファイバ素線の最外被覆層。
- 請求項8に記載の最外被覆層を有する光ファイバ素線。
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