JP5612106B2 - 蒸着方法、蒸着装置、及び有機el表示装置 - Google Patents

蒸着方法、蒸着装置、及び有機el表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、基板上に所定パターンの被膜を形成するための蒸着方法及び蒸着装置に関する。また、本発明は、蒸着により形成された発光層を備えた有機EL(Electro Luminescence)表示装置に関する。
近年、様々な商品や分野でフラットパネルディスプレイが活用されており、フラットパネルディスプレイのさらなる大型化、高画質化、低消費電力化が求められている。
そのような状況下、有機材料の電界発光(Electro Luminescence)を利用した有機EL素子を備えた有機EL表示装置は、全固体型で、低電圧駆動可能、高速応答性、自発光性等の点で優れたフラットパネルディスプレイとして、高い注目を浴びている。
例えばアクティブマトリクス方式の有機EL表示装置では、TFT(薄膜トランジスタ)が設けられた基板上に薄膜状の有機EL素子が設けられている。有機EL素子では、一対の電極の間に発光層を含む有機EL層が積層されている。一対の電極の一方にTFTが接続されている。そして、一対の電極間に電圧を印加して発光層を発光させることにより画像表示が行われる。
フルカラーの有機EL表示装置では、一般的に、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の発光層を備えた有機EL素子がサブ画素として基板上に配列形成される。TFTを用いて、これら有機EL素子を選択的に所望の輝度で発光させることによりカラー画像表示を行う。
有機EL表示装置を製造するためには、各色に発光する有機発光材料からなる発光層を有機EL素子ごとに所定パターンで形成する必要がある。
発光層を所定パターンで形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、インクジェット法、レーザ転写法が知られている。例えば、低分子型有機EL表示装置(OLED)では、真空蒸着法が用いられることが多い。
真空蒸着法では、所定パターンの開口が形成されたマスク(シャドウマスクとも称される)が使用される。マスクが密着固定された基板の被蒸着面を蒸着源に対向させる。そして、蒸着源からの蒸着粒子(成膜材料)を、マスクの開口を通して被蒸着面に蒸着させることにより、所定パターンの薄膜が形成される。蒸着は発光層の色ごとに行われる(これを「塗り分け蒸着」という)。
例えば特許文献1,2には、基板に対してマスクを順次移動させて各色の発光層の塗り分け蒸着を行う方法が記載されている。このような方法では、基板と同等の大きさのマスクが使用され、蒸着時にはマスクは基板の被蒸着面を覆うように固定される。
特開平8−227276号公報 特開2000−188179号公報 特開2004−169066号公報 特開2004−103269号公報
このような従来の塗り分け蒸着法では、基板が大きくなればそれに伴ってマスクも大型化する必要がある。しかしながら、マスクを大きくすると、マスクの自重撓みや伸びにより、基板とマスクとの間に隙間が生じ易い。しかも、その隙間の大きさは、基板の被蒸着面の位置によって異なる。そのため、高精度なパターンニングを行うのが難しく、蒸着位置のズレや混色が発生して高精細化の実現が困難である。
また、マスクを大きくすると、マスクやこれを保持するフレーム等が巨大になってその重量も増加するため、取り扱いが困難になり、生産性や安全性に支障をきたすおそれがある。また、蒸着装置やそれに付随する装置も同様に巨大化、複雑化するため、装置設計が困難になり、設置コストも高額になる。
そのため、従来の塗り分け蒸着法では大型基板への対応が難しく、例えば、60インチサイズを超えるような大型基板に対しては量産レベルで塗り分け蒸着できる方法が実現できていない。
一方、蒸着法では、形成された被膜の端縁から蒸着材料がはみ出すことによって形成される端縁のボヤケを抑えることが望まれる。また、被膜の厚みが均一であることが望まれる。
有機EL表示装置において、塗り分け蒸着によって形成された発光層の端縁にボヤケが生じると、隣の異なる色の発光層に蒸着材料が付着して混色を生じる。混色を生じないようにするためには、画素の開口幅を狭くするか、または、画素ピッチを大きくして非発光領域を大きくする必要がある。ところが、画素の開口幅を狭くすると輝度が低下する。必要な輝度を得るために電流密度を高くすると、有機EL素子が短寿命化したり、損傷しやすくなったりして、信頼性が低下する。一方、画素ピッチを大きくすると、高精細表示を実現できず、表示品位が低下する。
また、有機EL表示装置において、塗り分け蒸着によって形成された発光層の厚みが不均一であると、発光ムラを生じ、表示品位が低下する。
本発明は、端縁のボヤケや厚みムラが抑えられた被膜を形成することができる、大型の基板にも適用可能な蒸着方法及び蒸着装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、信頼性及び表示品位に優れた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
本発明の蒸着方法は、基板上に所定パターンの被膜を有する有機EL表示装置の製造方法であって、前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有する。前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程である。前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成されることを特徴とする。
本発明の蒸着装置は、基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着装置であって、前記被膜を形成するための蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスク、及び、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板を備えた蒸着ユニットと、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って、前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構とを備える。前記被膜の少なくとも一部を、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成することを特徴とする。
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法は、上記の蒸着方法を用いて発光層を形成する工程を備えることを特徴とする。
本発明の有機EL表示装置は、上記の蒸着方法を用いて形成された発光層を備えることを特徴とする。
本発明の蒸着方法及び蒸着装置によれば、基板及び蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、蒸着マスクに形成されたマスク開口を通過した蒸着粒子を基板に付着させるので、基板より小さな蒸着マスクを使用することができる。従って、大型基板に対しても蒸着による被膜を形成することができる。
また、蒸着源と蒸着マスクとの間に設けられた複数の制御板が、制御板間空間に入射した蒸着粒子を、その入射角度に応じて選択的に捕捉するので、マスク開口には、所定の入射角度以下の蒸着粒子のみが入射する。これにより、蒸着粒子の基板に対する最大入射角度が小さくなるので、基板に形成される被膜の端縁に生じるボヤケを抑制することができる。
更に、被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成される。これにより、被膜の厚み均一性が向上する。
本発明の有機EL表示装置は、上記の蒸着方向を用いて形成された発光層を備えるので、発光層の端縁のボヤケや発光層の厚みムラが抑えられる。従って、高品位、高信頼性で、大型化も可能な有機EL表示装置を提供することができる。
図1は、有機EL表示装置の概略構成を示す断面図である。 図2は、図1に示す有機EL表示装置を構成する画素の構成を示す平面図である。 図3は、図2の3−3線に沿った有機EL表示装置を構成するTFT基板の矢視断面図である。 図4は、有機EL表示装置の製造工程を工程順に示すフローチャートである。 図5は、新蒸着法の基本概念を示した斜視図である。 図6は、図5に示した蒸着装置を、基板の走行方向と平行な方向に沿って見た正面断面図である。 図7は、図5の新蒸着法において、被膜の端縁に生じるボヤケの発生原因を説明する断面図である。 図8は、図5に示した蒸着装置において、基板の走行方向と平行な方向に沿って見た蒸着粒子の飛翔方向を示した断面図である。 図9は、本発明の実施形態1に係る蒸着装置の主要部を示した斜視図である。 図10は、本発明の実施形態1に係る蒸着装置の、基板の走査方向に沿って見た正面図である。 図11は、本発明の実施形態1に係る蒸着装置の平面図である。 図12は、本発明の実施形態1において、制御板間空間を通過する蒸着粒子流の一例を示した図である。 図13は、本発明の実施形態1に対応した実施例1において、蒸着源開口及び制御板の配置を示した部分拡大正面図である。 図14は、本発明の実施形態2において、制御板間空間を通過した蒸着粒子流を示した図である。 図15は、本発明の実施形態2に対応した実施例2において、蒸着源開口及び制御板の配置を示した部分拡大正面図である。 図16は、本発明の実施形態2において、蒸着源開口及び制御板の別の配置を示した部分拡大正面図である。 図17は、本発明の実施形態3において、制御板間空間を通過した蒸着粒子流を示した図である。 図18は、本発明の実施形態3に対応した実施例3において、蒸着源開口及び制御板の配置を示した部分拡大正面図である。 図19は、本発明の実施形態3において、蒸着源開口及び制御板の別の配置を示した部分拡大正面図である。 図20は、本発明の実施形態4に係る蒸着装置の、基板の走査方向に沿って見た正面図である。 図21は、本発明の実施形態5に係る蒸着装置の、基板の走査方向に沿って見た正面図である。 図22は、本発明の実施形態5に対応した実施例5において、蒸着源開口及び制御板の配置を示した部分拡大正面図である。
本発明の上記の蒸着方法において、前記複数の制御板のそれぞれの主面は、前記第2方向と平行であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板間空間は第2方向には実質的に開放されるので、制御板は、蒸着粒子の第2方向の広がり角度を制限する機能を実質的に有しない。従って、複数の制御板を設けたことによる材料利用効率の低下を少なくすることができる。
前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有することが好ましい。
複数の蒸着源開口が第1方向に沿って配置されていることにより、第1方向において、基板上に形成される被膜の厚さムラを少なくすることができる。
本発明において「ノズル形状」とは、蒸着粒子が放出される開口の内周面が、筒状又はこれに近似した形状(例えばテーパ形状など)を有していることを意味する。蒸着粒子の放出方向に沿って見た、その平面視形状は、円形、楕円形、各種多角形など任意である。
上記において、前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板と同一ピッチで配置されていてもよい。
かかる構成によれば、複数の蒸着源開口と複数の制御板とが、第1方向に沿って同一ピッチで配置されているので、蒸着源開口と制御板との相対的位置関係が第1方向において一定となる。従って、蒸着源開口と制御板との相対的位置関係の違いにより生じる被膜の厚さムラを少なくすることができる。
あるいは、前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板のピッチの整数倍(即ち、2倍、3倍、4倍、…)のピッチで配置されていてもよい。
かかる構成によれば、蒸着源開口の開口径や、蒸着源開口を形成する際の加工技術などの観点から蒸着源開口のピッチを小さくすることができない場合でも、制御板のピッチを小さくすることができる。その結果、被膜の端縁に生じるボヤケを抑制することができる。
また、複数の蒸着源開口及び複数の制御板がランダムに配置されている場合に比べて、第1方向において、基板上に形成される被膜の厚さムラを更に少なくすることができる。
あるいは、前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板のピッチの整数分の1(即ち、2分の1、3分の1、4分の1、…)のピッチで配置されていてもよい。
かかる構成によれば、1つの制御板間空間に対向して複数の蒸着源開口が配置されるので、第1方向において、基板上に形成される被膜の厚さムラを更に少なくすることができる。
ノズル形状を有する複数の蒸着源開口が第1方向に沿って配置されている場合において、前記第1方向において、前記蒸着源開口は、隣り合う前記制御板の中央に配置されていることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、最も蒸着粒子密度が高い蒸着源開口の真正面(真上)に制御板間空間が配置される。従って、制御板に衝突し捕捉される蒸着粒子を少なくすることができるので、材料利用効率及び蒸着レートの低下を防止することができる。
この場合において、前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に位置するただ1つの制御板間空間のみを通過することが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板の長さ(第1方向及び第2方向と直交する方向の制御板の寸法)を短くすることができる。従って、蒸着源開口から基板までの距離を小さくすることができるので、蒸着レートの向上や装置サイズの低減に有利である。
あるいは、前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に位置する1つの制御板間空間及びこの制御板間空間の両隣の制御板間空間のみを通過してもよい。
かかる好ましい構成によれば、制御板によって小分けされた多数の蒸着粒子流が形成され、基板上では、多数の蒸着粒子流が重ね合わされて被膜が形成される。従って、蒸着粒子流間での蒸着粒子密度のバラツキなどが平均化され、被膜の厚み均一性が向上する。
また、被膜の端縁のボヤケの幅が、蒸着源開口の開口径や、蒸着源開口と制御板との基板法線方向の間隔などに依存しないように設計することができるので、当該ボヤケの幅のバラツキを少なくすることができる。
ノズル形状を有する複数の蒸着源開口が第1方向に沿って配置されている場合において、前記蒸着源開口の真正面に前記制御板が配置されていることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板の厚みを薄くすれば、制御板を設けたことによる材料利用効率の低下を少なくすることができる。
また、被膜の端縁のボヤケの幅が、蒸着源開口の開口径や、蒸着源開口と制御板との基板法線方向の間隔などに依存しないように設計することができるので、当該ボヤケの幅のバラツキを少なくすることができる。
この場合、前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に配置された前記制御板の両側の2つの制御板間空間のみを通過することが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板によって小分けされた2つの蒸着粒子流が形成され、基板上では、複数の蒸着粒子流が重ね合わされて被膜が形成される。従って、蒸着粒子流間での蒸着粒子密度のバラツキなどが平均化され、被膜の厚み均一性が向上する。
また、前記蒸着源開口の開口径が、前記蒸着源開口の真正面に配置された前記制御板の厚みより大きいことが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口の真正面に配置された制御板が対向する基板上の領域へも回り込んで到達するので、被膜の厚みの不均一を改善することができる。
ノズル形状を有する複数の蒸着源開口が第1方向に沿って配置されている場合、前記蒸着工程において、前記複数の蒸着源開口及び前記複数の制御板のうちの一方を他方に対して相対的に移動させることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着源開口と制御板との相対的位置関係が時々刻々変化するので、当該相対的位置関係に起因する蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。また、基板のある地点に到達する蒸着粒子が由来する蒸着源開口及び/又は制御板が時々刻々変化するので、蒸着源開口及び/又は制御板の精度バラツキに起因する蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。これらの結果、基板上に形成される被膜の厚さムラを少なくすることができる。
また、ノズル形状を有する複数の蒸着源開口が第1方向に沿って配置されている場合、前記蒸着工程において、前記複数の蒸着源開口及び前記複数の制御板の両方を前記蒸着マスクに対して相対的に移動させることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着源開口および制御板と、蒸着マスクとの相対的位置関係が時々刻々変化するので、当該相対的位置関係に起因する蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。また、基板のある地点に到達する蒸着粒子が由来する蒸着源開口及び制御板が時々刻々変化するので、蒸着源開口及び制御板の精度バラツキに起因する蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。これらの結果、基板上に形成される被膜の厚さムラを少なくすることができる。
これらの場合、相対的に移動する方向は、前記第1方向であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、被膜の厚みの不均一を改善することができる。
また、被膜の端縁のボヤケの幅が、蒸着源開口の開口径や、蒸着源開口と制御板との基板法線方向の間隔などに依存しなくなるので、当該ボヤケの幅のバラツキを少なくすることができる。
相対的な移動は往復運動であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、装置を巨大化することなく、蒸着粒子の密度のバラツキを平均化することができる。
前記往復運動の移動量は、前記複数の蒸着源開口のピッチ及び前記複数の制御板のピッチのうちの大きい方よりも大きいことが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着粒子の密度のバラツキを更に平均化することができるので、被膜の厚みの不均一を更に改善することができる。
あるいは、前記往復運動の移動量は、前記複数の蒸着源開口のピッチ及び前記複数の制御板のピッチのうちの大きい方の整数倍(即ち、2倍、3倍、4倍、…)であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着粒子の密度のバラツキを更に平均化することができるので、被膜の厚みの不均一を更に改善することができる。
上記の本発明の蒸着方法において、前記蒸着源開口が前記第1方向に沿ったスロット形状を有し、前記蒸着源開口の前記第1方向の開口径は前記複数の制御板のピッチより大きいことが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、蒸着源開口がノズル形状を有する場合に比べて、蒸着レートの向上を図ることができる。また、蒸着源開口がノズル形状を有する場合に比べて、被膜の厚みの不均一を更に改善することができる。
前記蒸着工程において、前記複数の制御板を冷却することが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板に衝突した蒸着粒子を確実に捕捉することができ、また、制御板からの蒸着粒子の再蒸発を防ぐことができる。また、蒸着源からの輻射熱により制御板が加熱されて変形や寸法変化するのを防ぐことができる。これらの結果、被膜の端縁のボヤケの幅が拡大するのを防止することができる。
前記蒸着工程において、前記複数の制御板の温度を所定温度に調整することが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、制御板に捕捉された蒸着粒子を再蒸発させて、材料利用効率を更に向上させることができる。
上記の本発明の蒸着方法において、前記被膜が有機EL素子の発光層であることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、混色や発光ムラが抑えられた有機EL表示装置を提供することができる。
以下に、本発明を好適な実施形態及び実施例を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態及び実施例に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態及び実施例の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
(有機EL表示装置の構成)
本発明を適用して製造可能な有機EL表示装置の一例を説明する。本例の有機EL表示装置は、TFT基板側から光を取り出すボトムエミッション型で、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色からなる画素(サブ画素)の発光を制御することによりフルカラーの画像表示を行う有機EL表示装置である。
まず、上記有機EL表示装置の全体構成について以下に説明する。
図1は、有機EL表示装置の概略構成を示す断面図である。図2は、図1に示す有機EL表示装置を構成する画素の構成を示す平面図である。図3は、図2の3−3線に沿った有機EL表示装置を構成するTFT基板の矢視断面図である。
図1に示すように、有機EL表示装置1は、TFT12(図3参照)が設けられたTFT基板10上に、TFT12に接続された有機EL素子20、接着層30、封止基板40がこの順に設けられた構成を有している。有機EL表示装置1の中央が画像表示を行う表示領域19であり、この表示領域19内に有機EL素子20が配置されている。
有機EL素子20は、当該有機EL素子20が積層されたTFT基板10を、接着層30を用いて封止基板40と貼り合わせることで、これら一対の基板10,40間に封入されている。このように有機EL素子20がTFT基板10と封止基板40との間に封入されていることで、有機EL素子20への酸素や水分の外部からの浸入が防止されている。
TFT基板10は、図3に示すように、支持基板として、例えばガラス基板等の透明な絶縁基板11を備える。但し、トップエミッション型の有機EL表示装置では、絶縁基板11は透明である必要はない。
絶縁基板11上には、図2に示すように、水平方向に敷設された複数のゲート線と、垂直方向に敷設され、ゲート線と交差する複数の信号線とからなる複数の配線14が設けられている。ゲート線には、ゲート線を駆動する図示しないゲート線駆動回路が接続され、信号線には、信号線を駆動する図示しない信号線駆動回路が接続されている。絶縁基板11上には、これら配線14で囲まれた各領域に、赤(R)、緑(G)、青(B)の色の有機EL素子20からなるサブ画素2R,2G,2Bが、マトリクス状に配置されている。
サブ画素2Rは赤色光を発射し、サブ画素2Gは緑色光を発射し、サブ画素2Bは青色光を発射する。列方向(図2の上下方向)には同色のサブ画素が配置され、行方向(図2の左右方向)にはサブ画素2R,2G,2Bからなる繰り返し単位が繰り返して配置されている。行方向の繰り返し単位を構成するサブ画素2R,2G,2Bが画素2(すなわち、1画素)を構成する。
各サブ画素2R,2G,2Bは、各色の発光を担う発光層23R,23G,23Bを備える。発光層23R,23G,23Bは、列方向(図2の上下方向)にストライプ状に延設されている。
TFT基板10の構成を説明する。
TFT基板10は、図3に示すように、ガラス基板等の透明な絶縁基板11上に、TFT12(スイッチング素子)、配線14、層間膜13(層間絶縁膜、平坦化膜)、エッジカバー15等を備える。
TFT12はサブ画素2R,2G,2Bの発光を制御するスイッチング素子として機能するものであり、サブ画素2R,2G,2Bごとに設けられる。TFT12は配線14に接続される。
層間膜13は、平坦化膜としても機能するものであり、TFT12及び配線14を覆うように絶縁基板11上の表示領域19の全面に積層されている。
層間膜13上には、第1電極21が形成されている。第1電極21は、層間膜13に形成されたコンタクトホール13aを介して、TFT12に電気的に接続されている。
エッジカバー15は、層間膜13上に、第1電極21のパターン端部を被覆するように形成されている。エッジカバー15は、第1電極21のパターン端部で有機EL層27が薄くなったり電界集中が起こったりすることで、有機EL素子20を構成する第1電極21と第2電極26とが短絡することを防止するための絶縁層である。
エッジカバー15には、サブ画素2R,2G,2B毎に開口15R,15G,15Bが設けられている。このエッジカバー15の開口15R,15G,15Bが、各サブ画素2R,2G,2Bの発光領域となる。言い換えれば、各サブ画素2R,2G,2Bは、絶縁性を有するエッジカバー15によって仕切られている。エッジカバー15は、素子分離膜としても機能する。
有機EL素子20について説明する。
有機EL素子20は、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子であり、第1電極21、有機EL層27、第2電極26をこの順に備える。
第1電極21は、有機EL層27に正孔を注入(供給)する機能を有する層である。第1電極21は、前記したようにコンタクトホール13aを介してTFT12と接続されている。
有機EL層27は、図3に示すように、第1電極21と第2電極26との間に、第1電極21側から、正孔注入層兼正孔輸送層22、発光層23R,23G,23B、電子輸送層24、電子注入層25をこの順に備える。
本実施形態では、第1電極21を陽極とし、第2電極26を陰極としているが、第1電極21を陰極とし、第2電極26を陽極としてもよく、この場合は有機EL層27を構成する各層の順序は反転する。
正孔注入層兼正孔輸送層22は、正孔注入層としての機能と正孔輸送層としての機能とを併せ持つ。正孔注入層は、発光層23R,23G,23Bへの正孔注入効率を高める機能を有する層である。正孔輸送層は、発光層23R,23G,23Bへの正孔輸送効率を高める機能を有する層である。正孔注入層兼正孔輸送層22は、第1電極21およびエッジカバー15を覆うように、TFT基板10における表示領域19の全面に一様に形成されている。
本実施形態では、正孔注入層と正孔輸送層とが一体化された正孔注入層兼正孔輸送層22を設けているが、本発明はこれに限定されず、正孔注入層と正孔輸送層とが互いに独立した層として形成されていてもよい。
正孔注入層兼正孔輸送層22上には、発光層23R,23G,23Bが、エッジカバー15の開口15R,15G,15Bを覆うように、それぞれ、サブ画素2R,2G,2Bの列に対応して形成されている。発光層23R,23G,23Bは、第1電極21側から注入されたホール(正孔)と第2電極26側から注入された電子とを再結合させて光を出射する機能を有する層である。発光層23R,23G,23Bは、それぞれ、低分子蛍光色素や金属錯体等の発光効率が高い材料を含む。
電子輸送層24は、第2電極26から発光層23R,23G,23Bへの電子輸送効率を高める機能を有する層である。
電子注入層25は、第2電極26から発光層23R,23G,23Bへの電子注入効率を高める機能を有する層である。
電子輸送層24は、発光層23R,23G,23Bおよび正孔注入層兼正孔輸送層22を覆うように、これら発光層23R,23G,23Bおよび正孔注入層兼正孔輸送層22上に、TFT基板10における表示領域19の全面にわたって一様に形成されている。また、電子注入層25は、電子輸送層24を覆うように、電子輸送層24上に、TFT基板10における表示領域19の全面にわたって一様に形成されている。
本実施形態では、電子輸送層24と電子注入層25とは互いに独立した層として設けられているが、本発明はこれに限定されず、両者が一体化された単一の層(即ち、電子輸送層兼電子注入層)として設けられていてもよい。
第2電極26は、有機EL層27に電子を注入する機能を有する層である。第2電極26は、電子注入層25を覆うように、電子注入層25上に、TFT基板10における表示領域19の全面にわたって一様に形成されている。
なお、発光層23R,23G,23B以外の有機層は有機EL層27として必須ではなく、要求される有機EL素子20の特性に応じて取捨選択すればよい。また、有機EL層27は、必要に応じて、キャリアブロッキング層を更に有していてもよい。例えば、発光層23R,23G,23Bと電子輸送層24との間にキャリアブロッキング層として正孔ブロッキング層を追加することで、正孔が電子輸送層24に抜けるのを阻止し、発光効率を向上することができる。
(有機EL表示装置の製造方法)
次に、有機EL表示装置1の製造方法について以下に説明する。
図4は、上記の有機EL表示装置1の製造工程を工程順に示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態にかかる有機EL表示装置1の製造方法は、例えば、TFT基板・第1電極の作製工程S1、正孔注入層・正孔輸送層の形成工程S2、発光層の形成工程S3、電子輸送層の形成工程S4、電子注入層の形成工程S5、第2電極の形成工程S6、封止工程S7をこの順に備えている。
以下に、図4の各工程を説明する。但し、以下に示す各構成要素の寸法、材質、形状等はあくまで一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では第1電極21を陽極とし、第2電極26を陰極としており、これとは逆に第1電極21を陰極とし、第2電極26を陽極とする場合には、有機EL層の積層順は以下の説明と反転する。同様に、第1電極21および第2電極26を構成する材料も以下の説明と反転する。
最初に、絶縁基板11上に公知の方法でTFT12及び配線14等を形成する。絶縁基板11としては、例えば透明なガラス基板あるいはプラスチック基板等を用いることができる。一実施例では、絶縁基板11として、厚さが約1mm、縦横寸法が500×400mmの矩形形状のガラス板を用いることができる。
次いで、TFT12及び配線14を覆うように絶縁基板11上に感光性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングを行うことで、層間膜13を形成する。層間膜13の材料としては、例えばアクリル樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性材料を用いることができる。但し、ポリイミド樹脂は一般に透明ではなく、有色である。このため図3に示すようなボトムエミッション型の有機EL表示装置1を製造する場合には、層間膜13としてはアクリル樹脂等の透明性樹脂を用いることが好ましい。層間膜13の厚さは、TFT12の上面の段差を解消することができればよく、特に限定されない。一実施例では、アクリル樹脂を用いて厚さ約2μmの層間膜13を形成することができる。
次に、層間膜13に、第1電極21をTFT12に電気的に接続するためのコンタクトホール13aを形成する。
次に、層間膜13上に、第1電極21を形成する。即ち、層間膜13上に導電膜(電極膜)を成膜する。次いで、導電膜上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングを行った後、塩化第二鉄をエッチング液として、導電膜をエッチングする。その後、レジスト剥離液を用いてフォトレジストを剥離し、さらに基板洗浄を行う。これにより、層間膜13上にマトリクス状の第1電極21が得られる。
第1電極21に用いられる導電膜材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide:インジウム亜鉛酸化物)、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)等の透明導電材料、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等の金属材料を用いることもできる。
導電膜の積層方法としては、スパッタ法、真空蒸着法、CVD(chemical vapor deposition、化学蒸着)法、プラズマCVD法、印刷法等を用いることができる。
一実施例では、スパッタ法により、ITOを用いて、厚さ約100nmの第1電極21を形成することができる。
次に、所定パターンのエッジカバー15を形成する。エッジカバー15は、例えば層間膜13と同様の絶縁材料を使用することができ、層間膜13と同様の方法でパターニングすることができる。一実施例では、アクリル樹脂を用いて、厚さ約1μmのエッジカバー15を形成することができる。
以上により、TFT基板10および第1電極21が作製される(工程S1)。
次に、工程S1を経たTFT基板10を、脱水のために減圧ベーク処理し、更に第1電極21の表面洗浄のために酸素プラズマ処理する。
次に、上記TFT基板10上に、正孔注入層および正孔輸送層(本実施形態では正孔注入層兼正孔輸送層22)を、TFT基板10の表示領域19の全面に蒸着法により形成する(S2)。
具体的には、表示領域19の全面が開口したオープンマスクを、TFT基板10に密着固定し、TFT基板10とオープンマスクとを共に回転させながら、オープンマスクの開口を通じて正孔注入層および正孔輸送層の材料をTFT基板10の表示領域19の全面に蒸着する。
正孔注入層と正孔輸送層とは、前記したように一体化されていてもよく、互いに独立した層であってもよい。層の厚みは、一層あたり例えば10〜100nmである。
正孔注入層および正孔輸送層の材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、およびこれらの誘導体、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物、アニリン系化合物等の、複素環式共役系のモノマー、オリゴマー、またはポリマー等が挙げられる。
一実施例では、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を使用して、厚さ30nmの正孔注入層兼正孔輸送層22を形成することができる。
次に、正孔注入層兼正孔輸送層22上に、エッジカバー15の開口15R,15G,15Bを覆うように、発光層23R,23G,23Bをストライプ状に形成する(S3)。発光層23R,23G,23Bは、赤、緑、青の各色別に、所定領域を塗り分けるように蒸着される(塗り分け蒸着)。
発光層23R,23G,23Bの材料としては、低分子蛍光色素、金属錯体等の発光効率が高い材料が用いられる。例えば、アントラセン、ナフタレン、インデン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、トリフェニレン、アントラセン、ペリレン、ピセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、ペンタフェン、ペンタセン、コロネン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、およびこれらの誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体、ジトルイルビニルビフェニル等が挙げられる。
発光層23R,23G,23Bの厚さは、例えば10〜100nmにすることができる。
本発明の蒸着方法及び蒸着装置は、この発光層23R,23G,23Bの塗り分け蒸着に特に好適に使用することができる。本発明を使用した発光層23R,23G,23Bの形成方法の詳細は後述する。
次に、正孔注入層兼正孔輸送層22および発光層23R,23G,23Bを覆うように、TFT基板10の表示領域19の全面に電子輸送層24を蒸着法により形成する(S4)。電子輸送層24は、上記した正孔注入層・正孔輸送層の形成工程S2と同様の方法により形成することができる。
次に、電子輸送層24を覆うように、TFT基板10の表示領域19の全面に電子注入層25を蒸着法により形成する(S5)。電子注入層25は、上記した正孔注入層・正孔輸送層の形成工程S2と同様の方法により形成することができる。
電子輸送層24および電子注入層25の材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、およびこれらの誘導体や金属錯体、LiF(フッ化リチウム)等を用いることができる。
前記したように電子輸送層24と電子注入層25とは、一体化された単一層として形成されてもよく、または独立した層として形成されてもよい。各層の厚さは、例えば1〜100nmである。また、電子輸送層24および電子注入層25の合計厚さは、例えば20〜200nmである。
一実施例では、Alq(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)を使用して厚さ30nmの電子輸送層24を形成し、LiF(フッ化リチウム)を使用して厚さ1nmの電子注入層25を形成することができる。
次に、電子注入層25を覆うように、TFT基板10の表示領域19の全面に第2電極26を蒸着法により形成する(S6)。第2電極26は、上記した正孔注入層・正孔輸送層の形成工程S2と同様の方法により形成することができる。第2電極26の材料(電極材料)としては、仕事関数の小さい金属等が好適に用いられる。このような電極材料としては、例えば、マグネシウム合金(MgAg等)、アルミニウム合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、金属カルシウム等が挙げられる。第2電極26の厚さは、例えば50〜100nmである。一実施例では、アルミニウムを用いて厚さ50nmの第2電極26を形成することができる。
第2電極26上には、第2電極26を覆うように、外部から酸素や水分が有機EL素子20内に浸入することを阻止するために、保護膜を更に設けてもよい。保護膜の材料としては、絶縁性や導電性を有する材料を用いることができ、例えば窒化シリコンや酸化シリコンが挙げられる。保護膜の厚さは、例えば100〜1000nmである。
以上により、TFT基板10上に、第1電極21、有機EL層27、および第2電極26からなる有機EL素子20を形成できる。
次いで、図1に示すように、有機EL素子20が形成されたTFT基板10と、封止基板40とを、接着層30にて貼り合わせ、有機EL素子20を封入する。封止基板40としては、例えば厚さが0.4〜1.1mmのガラス基板あるいはプラスチック基板等の絶縁基板を用いることができる。
かくして、有機EL表示装置1が得られる。
このような有機EL表示装置1において、配線14からの信号入力によりTFT12をON(オン)させると、第1電極21から有機EL層27へ正孔が注入される。一方、第2電極26から有機EL層27へ電子が注入される。正孔と電子とは発光層23R,23G,23B内で再結合し、エネルギーを失活する際に所定の色の光を出射する。各サブ画素2R,2G,2Bの発光輝度を制御することで、表示領域19に所定の画像を表示することができる。
以下に、発光層23R,23G,23Bを塗り分け蒸着により形成する工程S3を説明する。
(新蒸着法)
発光層23R,23G,23Bを塗り分け蒸着する方法として、本発明者らは、特許文献1,2のような、蒸着時に基板と同等の大きさのマスクを基板に固定する蒸着方法に代えて、蒸着源及び蒸着マスクに対して基板を移動させながら蒸着を行う新規な蒸着方法(以下、「新蒸着法」という)を検討した。
図5は、新蒸着法の基本概念を示した斜視図である。
蒸着源960と蒸着マスク970とで蒸着ユニット950を構成する。蒸着源960と蒸着マスク970との相対的位置は一定である。基板10が、蒸着マスク970に対して蒸着源960とは反対側を一定速度で一方向10aに移動する。蒸着源960の上面には、それぞれが蒸着粒子991を放出する複数の蒸着源開口961が形成されており、蒸着マスク970には、複数のマスク開口971が形成されている。蒸着源開口961から放出された蒸着粒子991は、マスク開口971を通過して基板10に付着する。発光層23R,23G,23Bの各色別に繰り返して蒸着を行うことにより、発光層23R,23G,23Bの塗り分け蒸着を行うことができる。
このような新蒸着法によれば、蒸着マスク970の、基板10の移動方向10aの寸法Lmを、基板10の同方向の寸法とは無関係に設定することができる。従って、基板10よりも小さい蒸着マスク970を用いることができる。このため、基板10を大型化しても蒸着マスク970を大型化する必要がないので、蒸着マスク970の自重撓みや伸びの問題が発生しない。また、蒸着マスク970やこれを保持するフレーム等が巨大化・重量化することもない。従って、特許文献1,2に記載された従来の蒸着法の問題が解決され、大型基板に対する塗り分け蒸着が可能になる。
しかしながら、本発明者らの更なる検討の結果、図5に示した新蒸着法は、特許文献1,2の蒸着法に比べて、形成される被膜(蒸着膜)の端縁にボヤケが生じやすいという問題があることが判明した。この問題の発生原因を以下に説明する。
図6は、基板10の移動方向10aと平行な方向に沿って見た、図5の蒸着装置の正面図である。図6の紙面の左右方向に、複数の蒸着源開口961及び複数のマスク開口971が並んでいる。各蒸着源開口961から蒸着粒子991はある広がり(指向性)をもって放出される。即ち、図6において、蒸着源開口961から放出される蒸着粒子991の数は、蒸着源開口961の真上方向において最も多く、真上方向に対してなす角度(出射角度)が大きくなるにしたがって徐々に少なくなる。蒸着源開口961から放出された各蒸着粒子991は、それぞれの放出方向に向かって直進する。図6では、蒸着源開口961から放出される蒸着粒子991の流れを矢印で概念的に示している。従って、各マスク開口971には、その真下に位置する蒸着源開口961から放出された蒸着粒子991が最も多く飛来するが、これに限定されず、斜め下方に位置する蒸着源開口961から放出された蒸着粒子991も飛来する。
図7は、あるマスク開口971を通過した蒸着粒子991によって基板10上に形成される被膜990の、図6と同様に基板10の移動方向10aと平行な方向に沿って見た断面図である。上述したように、様々な方向から飛来した蒸着粒子991がマスク開口971を通過する。基板10の被蒸着面10eに到達する蒸着粒子991の数は、マスク開口971の真上の領域で最も多く、これから遠くなるにしたがって徐々に少なくなる。従って、図7に示すように、基板10の被蒸着面10eには、マスク開口971を真上方向に基板10に投影した領域に、厚く且つ略一定厚みを有する被膜主部990cが形成され、その両側に、被膜主部990cより遠くなるにしたがって徐々に薄くなるボヤケ部分990eが形成される。そして、このボヤケ部分990eが被膜990の端縁のボヤケを生じさせる。
ボヤケ部分990eの幅Weが大きくなりボヤケ部分990eが隣の異なる色の発光層領域に及ぶと、「混色」を生じたり、有機EL素子の特性が劣化したりする。従って、ボヤケ部分990eが隣の発光層領域にまで拡大しないようにしなければならない。
図8に示すように、基板10の移動方向10aと平行な方向に沿って見たとき、マスク開口971を通過した蒸着粒子991の基板10に対する入射角度の最大値(最大入射角度)をαとする。ここで、蒸着粒子991の入射角度は、基板10の法線10nに対して蒸着粒子991の飛翔方向がなす角度によって定義される。蒸着マスク970と基板10との間隔をHとすると、図7に示したボヤケ部分990eの幅Weは、
We=H×tanα
である。
従って、ボヤケ部分990eの幅Weを小さくするためには、蒸着マスク970と基板10との間隔H、及び、蒸着粒子991の基板10に対する最大入射角度αのうちの少なくとも一方を小さくすればよい。
しかしながら、蒸着マスク970と基板10との間隔Hを小さくすると、蒸着マスク970と基板10とが衝突する可能性が高まる。基板10を蒸着マスク970に対して移動させる際に、両者が衝突することなく、間隔Hを小さくするためには、蒸着マスク970に対する基板10の位置を高精度に制御する必要がある。従って、間隔Hを小さくするには限界がある。
一方、最大入射角度αは、蒸着源開口961から放出される蒸着粒子991の出射角度、または、マスク開口971のアスペクト比によって決定される。
蒸着粒子991の出射角度は、図8に示すように基板10の移動方向10aと平行な方向に沿って見たとき、蒸着源開口961から放出される蒸着粒子991の飛翔方向が基板10の法線10nに対してなす角度によって定義される。上述したように、蒸着粒子991は蒸着源開口961から様々な方向に向かって放出される。一般に、蒸着源開口961の真上に向かう蒸着粒子(出射角度が0度の蒸着粒子)が最も多く、出射角度が大きくなるにしたがって蒸着粒子量は少なくなる。蒸着粒子991の出射角度の最大値(最大出射角度)をφとする。
一方、マスク開口971のアスペクト比は、図8に示すようにマスク開口971を基板10の移動方向10aと平行な方向に沿って見たとき、マスク開口971の開口幅Wmに対する蒸着マスク970の厚さTmの比(Tm/Wm)で定義される。マスク開口971を通過しうる蒸着粒子991の飛翔方向が基板10の法線10nに対してなす角度の最大値をδとすると、マスク開口971のアスペクト比はcotδで表される。
φ≧δを満足するとき、蒸着粒子の最大入射角度αは、マスク開口971のアスペクト比cotδに依存する(即ち、α=δ)。従って、アスペクト比cotδを大きくすれば、蒸着粒子の最大入射角度αを小さくすることができる。
ところが、マスク開口971のアスペクト比cotδを大きくすると以下の問題が生じる。
第1に、蒸着マスク970の厚さTmが大きくなるので、マスク開口971の内周面に蒸着粒子が付着しやすく、その結果、実質的な開口寸法が小さくなり、最悪の場合には、マスク開口971が目詰まりしてしまう。例えば、蒸着マスク970と基板10との間隔Hが0.5mmのときにボヤケ部分990eの幅Weを50μm以下にするためには、α=δ≒5.7°である必要がある。従って、cotδ≒10となる。マスク開口971の内周面が図8に示すように基板10の法線10nと平行であるマスク開口971において、マスク開口971の開口幅Wmを90μmに設定すると、cotδ≒10を満足するためには、蒸着マスク970の厚さTmは900μmである必要がある。一般的な蒸着マスクの厚さ10〜100μmと比べると、蒸着マスク970を9〜90倍も厚くする必要がある。蒸着マスク970の厚さTmを厚くすればするほど、蒸着粒子のマスク開口971の内周面への付着量は増大する。
第2に、アスペクト比が大きくなるほど、蒸着マスク970の製造が困難となる。一般に蒸着マスク970の材料としては、耐熱性、加工性、熱膨張係数を吟味して金属が用いられる。そして、表面に対して略直角の内周面を有するマスク開口971を形成する方法として、電鋳法やレーザーカットによる掘削法などが用いられる。このような方法で金属板材に高アスペクト比の開口を形成することは難しく、例えば、アスペクト比cotδが3以上の高精度な開口を実現することは技術的に困難を伴う。従って、上記の例のように厚さTmが900μmの金属板に、幅Wmが90μmのマスク開口971を高精度で多数形成することは製造上極めて困難である。また、仮にこのような蒸着マスクを作成することができたとしても、その蒸着マスクの製作コストが増大してしまうため、これを用いて製造される有機EL表示装置が高コストとなってしまう。
第3に、アスペクト比が大きくなると、蒸着マスク970が厚くなるので、蒸着マスク970が重くなり、その自重による撓み変形を無視できなくなる。蒸着マスク970が自重により変形すると、蒸着マスク970と基板10との間隔Hが蒸着マスク970の面上の位置により変化するので、ボヤケ部分990eの幅Weが基板10の面内において一定でなくなる。
従って、マスク開口971のアスペクト比cotδを大きくするには限界がある。よって、アスペクト比cotδを大きくすることにより、蒸着粒子の最大入射角度αを小さくすることは困難である。
上記とは逆に、φ<δを満足するとき、蒸着粒子の最大入射角度αは、蒸着粒子の最大出射角度φに依存する(即ち、α=φ)。従って、最大出射角度φを小さくすれば、蒸着粒子の最大入射角度αを小さくすることができる。
最大出射角度φは、一般に、蒸着源開口961の形状により調整することができると考えられる。しかしながら、最大出射角度φを小さくすることは、想像するほど容易なことではない。
特許文献3には、蒸着源開口の断面形状を、基板側ほど径が大きくなるテーパ形状にすることにより、蒸着源開口の真正面位置に急峻なピークを有する厚さ分布の蒸着膜を形成することができると記載されている。しかしながら、特許文献3の図4に示されているように、確かにテーパ形状断面を有する蒸着源開口を用いた場合には、一定径の蒸着源開口を用いた場合に比べて、蒸着膜厚さが最大となる部分近傍の厚さ分布は急峻になるものの、蒸着膜が形成される領域(即ち、蒸着粒子が付着する範囲)はほとんど変わらない。即ち、蒸着源開口の形状を、特許文献3に記載されたテーパ形状断面を有するように変更したとしても、最大出射角度φはほとんど変化しない。
特許文献4には、蒸着源と蒸着マスクとの間に、蒸着ビーム通過孔が形成された蒸着ビーム方向調整板を配置することが記載されている。蒸着源から放出された蒸着粒子を、蒸着ビーム方向調整板に形成された蒸着ビーム通過孔を通過させることにより、蒸着ビームの指向性が高まる。特許文献4には、蒸着ビーム通過孔の径は、指向性を十分に高めるために、約0.1mm〜1mmが好ましいと記載されている。ところが、このような小径の蒸着ビーム通過孔を形成した蒸着ビーム方向調整板を用いた場合、上述したマスク開口971を高アスペクト比化した場合と同様の問題がある。即ち、蒸着ビーム通過孔は、その径が小さいために、蒸着粒子が蒸着ビーム通過孔の内周面に付着することによって目詰まりしやすい。また、小径の蒸着ビーム通過孔を高精度で多数形成することは技術的に困難であり、コスト高となる。また、加工性を改善するために蒸着ビーム通過孔の径を大きくすると、蒸着ビームの所望する指向性を得るためには、蒸着ビーム方向調整板を厚くする必要があり、その結果、蒸着ビーム方向調整板の自重による撓み変形や、それに伴う指向性やボヤケ部分の幅が一定でなくなる。更に、蒸着ビーム通過孔を通過できない蒸着粒子量が多く、蒸着レートが低下し、また、蒸着材料の利用効率が悪い。蒸着ビーム方向調整板を図5に示した新蒸着法に適用すると、蒸着ビームの指向性を高める必要がない、基板10の走行方向10aと平行な方向においても、指向性の悪い蒸着ビームが捕捉されてしまうので、蒸着材料の利用効率の不所望な低下を招いてしまう。
以上のように、図5に示した新蒸着法は、大型の基板に対しても塗り分け蒸着を行うことができるという特長を有するものの、蒸着材料の利用効率の低下を防ぎながら、ボヤケ部分990eの幅Weを小さくすることは困難である。混色が生じないようにするためにボヤケ部分990eが隣の異なる色の発光層領域に及ばないようにするためには、画素(図2のサブ画素2R,2G,2Bを意味する)の開口幅を狭くするか、または、画素のピッチを大きくして、非発光領域を大きくする必要がある。ところが、画素の開口幅を狭くすると、発光領域が小さくなるので輝度が低下する。必要な輝度を得るために電流密度を高くすると、有機EL素子が短寿命化したり、損傷しやすくなったりして、信頼性が低下する。一方、画素ピッチを大きくすると、高精細表示を実現できず、表示品位が低下する。
本発明者らは、新蒸着法の上記の問題を解決するべく鋭意検討し、本発明を完成するに至った。以下に、本発明の好適な実施形態を説明する。
(実施形態1)
図9は、本発明の実施形態1に係る蒸着装置の主要部を示した斜視図である。図10は、本実施形態1に係る蒸着装置を、基板10の幅方向(第1方向)と垂直な方向に沿って見た正面図である。図11は、本実施形態1に係る蒸着装置(但し、蒸着マスク70を省略している)の平面図である。以下の説明の便宜のため、基板10の幅方向に沿った水平方向軸をX軸、X軸と垂直な水平方向軸をY軸、X軸及びY軸に平行な上下方向軸をZ軸とするXYZ直交座標系を設定する。Z軸は基板10の被蒸着面10eの法線方向と平行である。説明の便宜のため、Z軸方向の矢印の側(図9の紙面の上側)を「上側」と称する。
蒸着源60に対してZ軸方向に対向して蒸着マスク70が配置されている。蒸着源60と蒸着マスク70との間に複数の制御板80が配置されている。
蒸着源60は、その上面(即ち、蒸着マスク70に対向する面)に、複数の蒸着源開口61を備える。複数の蒸着源開口61は、X軸方向に一定ピッチで配置されている。各蒸着源開口61は、Z軸と平行に上方に向かって開口したノズル形状を有しており、蒸着マスク70に向かって、発光層の材料となる蒸着粒子91を放出する。
蒸着マスク70は、その主面(面積が最大である面)がXY面と平行な板状物であり、X軸方向に沿って複数のマスク開口71がX軸方向の異なる位置に形成されている。本実施形態では、各マスク開口71の開口形状はY軸に平行なスロット形状を有しているが、本発明はこれに限定されない。
蒸着マスク70はマスクテンション機構73(図10参照)によって保持される。マスクテンション機構73は、蒸着マスク70に、その主面と平行な方向に張力を印加することにより、蒸着マスク70に、自重によるたわみや伸びが発生するのを防ぐ。
複数の制御板80は、X軸方向に沿って一定ピッチで配置されている。複数の制限板81は同一寸法の薄板であり、その主面(面積が最大である面)は、基板10の被蒸着面10eに対して垂直であり、且つ、Y軸方向と平行である。
本実施形態では、複数の制御板80のX軸方向ピッチは、複数の蒸着源開口61のX軸方向ピッチと同じである。制御板80と蒸着源開口61とのX軸方向の位置は、そのX軸方向ピッチの半分だけずれている。即ち、X軸方向において、隣り合う2つの制御板80の中間位置に1つの蒸着源開口61が配置されている。
複数の制御板80は、X軸方向と平行な一対の第1保持部材86とY軸方向と平行な一対の第2保持部材87とで構成される枠状の保持体85に例えば溶接等の方法で一体的に保持されている(図9参照)。但し、複数の制御板80の相対的位置や姿勢を一定に維持することができれば、複数の制御板80を保持する方法は、上記に限定されない。
蒸着源開口61と複数の制御板80とはZ軸方向に離間しており、且つ、複数の制御板80と蒸着マスク70とはZ軸方向に離間している。蒸着源60、蒸着マスク70、複数の制御板80の相対的位置は少なくとも塗り分け蒸着を行う期間中は一定であり、これらは蒸着ユニット50を構成する。例えば、図10に示されているように、ホルダ52で、蒸着源60、マスクテンション機構73、及び保持体85を一体的に保持することで、蒸着源60、蒸着マスク70、複数の制御板80の相対的位置を一定に維持することができる。
図10に示されているように、基板10は、保持装置54により保持される。保持装置54としては、例えば基板10の被蒸着面10eとは反対側の面を静電気力で保持する静電チャックを用いることができる。これにより、基板10の自重による撓みが実質的にない状態で基板10を保持することができる。但し、基板10を保持する保持装置54は、静電チャックに限定されず、これ以外の装置であってもよい。
保持装置54に保持された基板10は、移動機構56によって、蒸着マスク70に対して蒸着源60とは反対側を、蒸着マスク70から一定間隔だけ離間した状態で、一定速度でY軸方向(第2方向)10aに走査(移動)される。基板10の移動は、往復移動であってもよく、あるいは、いずれか一方のみに向かう単方向移動であってもよい。移動機構56の構成は特に制限はない。例えばモータで送りネジを回転させる送りネジ機構やリニアモータ等、公知の搬送駆動機構を用いることができる。
上記の蒸着ユニット50と、基板10と、基板10を保持する保持装置54と、基板10を移動させる移動機構56とは、図示しない真空チャンバ内に収納される。真空チャンバは密封された容器であり、その内部空間は減圧されて所定の低圧力状態に維持される。
蒸着源開口61から放出された蒸着粒子91は、X軸方向に隣り合う制御板80の間の空間(以下、「制御空間」という)81を通過し、更に、マスク開口71を通過して、基板10の被蒸着面(即ち、基板10の蒸着マスク70に対向する側の面)10eに付着して被膜90を形成する。被膜90は、Y軸方向に延びたストライプ状となる。
被膜90を形成する蒸着粒子91は、必ず制御空間81及びマスク開口71を通過する。蒸着源開口61から放出された蒸着粒子91が、制御空間81及びマスク開口71を通過しないで基板10の被蒸着面10eに到達することがないように、制御板80及び蒸着マスク70が設計され、更に必要に応じて蒸着粒子91の飛翔を妨げる防着板等(図示せず)が設置されていてもよい。
赤、緑、青の各色別に蒸着材料91を変えて3回の蒸着(塗り分け蒸着)を行うことにより、基板10の被蒸着面10eに赤、緑、青の各色に対応したストライプ状の被膜90(即ち、発光層23R,23G,23B)を形成することができる。
制御板80の作用について説明する。
図8で説明したのと同様に、蒸着源開口61から蒸着粒子91はある広がり(指向性)をもって放出される。この蒸着粒子91が制御空間81に入射する。蒸着粒子91のうち、その速度ベクトルのX軸方向成分が大きな蒸着粒子91は、制限板80に衝突し付着して、マスク開口71に到達することはできない。即ち、制限板81は、XZ面への投影図において、マスク開口71に入射する蒸着粒子91の入射角度を制限する。ここで、マスク開口71に対する「入射角度」は、XZ面への投影図において、蒸着粒子91の飛翔方向がZ軸に対してなす角度で定義される。このように、本実施形態では、大きな入射角度でマスク開口71を通過する蒸着粒子91が低減する。従って、図7に示したボヤケ部分990eの幅Weが小さくなり、好ましくは厚み漸減部分990eが実質的に発生しなくなるので、ストライプ状の被膜90の両側の端縁のボヤケの発生が大幅に抑制される。その結果、有機EL表示装置において、混色が生じないように発光領域間の非発光領域の幅を大きくする必要がなくなる。よって、高輝度で高精細の表示を実現できる。また、輝度を高めるために発光層の電流密度を高くする必要がなくなるので、長寿命を実現でき、信頼性が向上する。
マスク開口71に入射する蒸着粒子91の入射角度を制限するために薄板の制御板80を用いる。従って、制御空間81のX軸方向寸法は大きく、また、そのY軸方向寸法は実質的に任意に設定することができる。これにより、X軸方向に隣り合う制御板80の間の開口面積が大きくなるので、制御板80に付着する蒸着粒子量を少なくすることができ、その結果、蒸着材料の無駄を少なくすることができる。また、制御板80に蒸着材料が付着することによる目詰まりが発生しにくくなるので、長時間の連続使用が可能となり、有機EL表示装置の量産性が向上する。更に、制御板80間の開口面積が大きいので、制御板80に付着した蒸着材料の洗浄が容易であり、保守が簡単となり、生産におけるストップロスが少なく、量産性が更に向上する。
本実施形態では、基板10に形成される被膜90の少なくとも一部は、互いに異なる2以上の制御空間81を通過した蒸着粒子91によって形成される。即ち、X軸方向位置が異なる複数の制御空間81をそれぞれ通過した蒸着粒子91が、基板10の被蒸着面10e上の同一地点に付着する。これについて、以下に説明する。
図12は、本実施形態1の蒸着装置において、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子の流れ(以下「蒸着粒子流」という)92をY軸と平行な方向に沿って見た図である。図12では、図面を簡略化するために、蒸着源開口61と制御板80のみを図示している。上述したように、蒸着源開口61と制御板80とのX軸方向ピッチは同じであり、X軸方向において、各蒸着源開口61の位置は、X軸方向に隣り合う2つの制御板80の中間位置と一致する。図12では、各蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、その真上に位置する制御空間81のみを通過し、この両隣の制御空間81を通過することはできない。図12には、各制御空間81を通過できる蒸着粒子流92を破線で示している。
図12から理解できるように、制御空間81を通過する蒸着粒子流92はある広がりを有している。従って、図12に示したA1−A1線よりも上側(制御板80より遠い側)では、2つ以上の蒸着粒子流92の少なくとも一部が重なり合う。A1−A1線よりも上側の領域に基板10の被蒸着面10eを配置することにより、被膜90の少なくとも一部を、異なる2以上の制御空間81を通過した蒸着粒子によって形成することができる。これにより、マスク開口71の位置にかかわらず、被蒸着面10eの任意の位置に被膜90を形成することができる。また、被膜90の厚みの均一性を向上させることができる。
図12に示すように、制御板80の厚さ(X軸方向寸法)をT、蒸着源開口61(ここでは、簡単化するために蒸着源開口61を広がりを有しない点と考える)と制御板80の上側端との相対的位置によって定義される、制御空間81を通過する蒸着粒子流92の広がり角度をθとすると、隣り合う制御空間81をそれぞれ通過した蒸着粒子流92の一部が重なり合い始める位置(A1−A1線)の、制御板80の上側端からの距離H1は、
H1=T/(2×tanθ)
で求められる。これから明らかなように、制御板80の厚みTが小さいほど、距離H1は小さくなり、蒸着粒子流92が重なり合い始める位置は制御板80に接近する。例えば広がり角θが5°、制御板80の厚みTが0.5mmの場合、H1=0.5/(2×tan5°)=2.9mmとなり、制御板80の上側端から2.9mm以上上側の領域では、蒸着粒子流92の少なくとも一部が重なり合う。
図12に示した括弧内の数字は、当該数字が記載された領域での蒸着粒子流92の重なり度(即ち、重なり合う蒸着粒子流92の数)を示している。「(1)」と記載された重なり度1の領域では、1つの制御空間81を通過した単一の蒸着粒子流92のみが存在している。「(2)」と記載された重なり度2の領域では、X軸方向に隣り合う2つの制御空間81をそれぞれ通過した2つの蒸着粒子流92が重なり合っている。「(3)」と記載された重なり度3の領域では、X軸方向に連続する3つの制御空間81をそれぞれ通過した3つの蒸着粒子流92が重なり合っている。「(4)」以降も同様である。A1−A1線から上側に遠ざかるにしたがって、重なり合う蒸着粒子流92の数が増える。
図12に示したA1−A1線上の任意の位置では重なり度は1であり、A2−A2線上の任意の位置では重なり度は2であり、A3−A3線上の任意の位置では重なり度は3である。従って、A1−A1線、A2−A2線、A3−A3線、…のようにX軸方向において重なり度が一定である位置に被蒸着面10eを配置すると、被蒸着面10eのいずれの位置においても被膜90の厚み均一性が向上するので好ましい。更に、被蒸着面10eの位置を、A1−A1線、A2−A2線、A3−A3線、…と制御板80から遠ざければ遠ざけるほど、重なり合う蒸着粒子流92の数が増えるので、蒸着粒子流92間の蒸着粒子密度のバラツキが平均化され、被膜90の厚み均一性が向上する。
A1−A1線とA2−A2線との間の領域では、重なり度1と重なり度2とが混在している。A2−A2線とA3−A3線との間の領域では、重なり度2と重なり度3とが混在している。同様に、A3−A3線とA4−A4線(図示せず)との間の領域では、重なり度3と重なり度4とが混在している。蒸着源開口61から放出される蒸着粒子分布に出射角度依存性がないと単純化すると、蒸着粒子密度は重なり度に比例する。したがって、被蒸着面10eを、A1−A1線、A2−A2線、A3−A3線、…のいずれかに配置できない場合であっても、被蒸着面10eをA1−A1線から上側に遠ざければ遠ざけるほど、X軸方向における蒸着粒子密度変化が少なくなるので、被膜90の厚み均一性が向上する。
本実施形態1に対応した実施例1を示す。但し、本発明は、以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
図13に、一部の蒸着源開口61及び制御板80を拡大して示す。
各制御板80は、Z軸方向の長さLを50mm、Y軸方向の長さを190mm、X軸方向寸法(厚み)Tを0.5mmとした。制御板80の材料としてSUS304を用いた。複数の制御板80を、X軸方向の配置ピッチPを8mmとして保持部材85(図9、図10を参照)に一体的に保持させた。保持部材85のY軸方向の外寸法は200mm、X軸方向の外寸法は600mmとした。
図13に示されているように、Y軸方向に沿って見たとき、X軸方向に隣り合う一対の制御板80のうちの一方の制御板80の他方に対向する側の面の下端と、前記他方の制御板80の前記一方に対向する側の面の上端とを結ぶ直線がX軸方向に対してなす角度をγとすると、
tanγ=L/(P−T)=6.7
であるから、γ=81.5°となる。従って、隣り合う制御板80によって決定される蒸着粒子の広がり角度γ’(γ’=90°−γ)は8.5°であった。即ち、複数の制御板80によって、制御空間81を出射する蒸着粒子の出射角度は8.5°以下に制限される。
蒸着源開口61のX軸方向の配置ピッチPは、制御板80のX軸方向の配置ピッチPと同じ8mmとした。X軸方向に隣り合う制御板80の中央位置に各蒸着源開口61を配置した。Z軸方向に沿って上方から見た蒸着源開口61の開口形状は、直径Dnが4mmの円形とした。蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzは10mmとした。蒸着源開口61から放出される蒸着粒子の最大出射角度φ(図8参照)は約60°であった。
蒸着源開口61から広がりをもって放出された蒸着粒子は、蒸着源開口61の真上の制御空間81に加えて、その両隣の制御空間81にも入射した。しかしながら、本実施例では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上の制御空間81以外の制御空間81に入射した蒸着粒子は、制御板80に衝突し捕捉され制御空間81を通過できない。これを実現するための条件は、
tanγ≧2Lz/(P−Dn+T) …(1−1)
である。
本実施例では、上記不等式の右辺は4.4であるから、上記不等式を満足していた。
制御空間81を通過した蒸着粒子の図13に示す広がり角度θは、
cotθ=2(L+Lz)/(P+Dn−T) …(1−2)
で表される。本実施例では、式(1−2)よりθ=5.5°であり、θ<γ’である。従って、本実施例では、蒸着マスク70の各マスク開口71に入射する蒸着粒子の入射角度の最大値(最大入射角度)は、上記広がり角度θに依存し、5.5°であった。ここで、マスク開口71に入射する蒸着粒子の最大入射角度は、Y軸方向と平行な方向に沿って見たとき、マスク開口71に入射する蒸着粒子の飛翔方向が蒸着マスク70の法線(即ち、Z軸方向)に対してなす角度によって定義される。
蒸着マスク70のX軸方向寸法は600mm、Y軸方向寸法は200mm、Z軸方向寸法(厚さTm)は50μmとした。蒸着マスク70の材料は、インバー材(FeにNiを36%含有した合金)とした。
蒸着マスク70には、Y軸方向寸法が150mm、X軸方向寸法Wmが90μmのスロット状のマスク開口71を、X軸方向ピッチ450μmで、X軸方向に751個形成した。このとき、マスク開口971のアスペクト比cotδ(図8参照)は1.7であった。本実施例では、δ>θであるから、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは上記広がり角度θに依存した。
蒸着マスク70の複数のマスク開口71を形成した領域の周囲には、インバー材からなる防着板を設置して、制御空間81及びマスク開口71を通過しない蒸着粒子が基板10の被蒸着面10eに付着するのを防いだ。
制御板80の上端から基板10の被蒸着面10eまでの距離を70mm、蒸着マスク70と基板10の被蒸着面10eとの間の間隔Hを300μmとした。
画素(図2のサブ画素2R,2G,2Bを意味する)のサイズ(実際の発光領域サイズ)は、Y軸方向が300μm、X軸方向が70μmとした。画素のピッチは、Y軸方向が450μm、X軸方向が150μmとした。
蒸着速度は、ホスト材料及びゲスト材料(ドーパント材料)のそれぞれが、赤色(R)で5.0nm/s及び0.53nm/s、緑色(G)で5.0nm/s及び0.67nm/s、青色(B)で5.0nm/s及び0.67nm/sとした。
以上のような構成により、基板10をY軸方向に1往復走査させることにより、有機材料からなる蒸着膜を所望の画素パターンに形成して、発光層を形成することができた。即ち、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81を通過し、更にマスク開口71を通過した蒸着粒子のみが基板10の被蒸着面10eに付着した。
本実施例では、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは、制御空間81を通過した蒸着粒子の広がり角度θと同じ5.5°であった。従って、被膜のボヤケ部分の幅We(図7参照)は、
We=H×tanα=29μm
であった。ボヤケ部分の幅Weは、X軸方向に隣り合う発光領域の間の非発光領域のX軸方向寸法よりも狭い。従って、ボヤケ部分を非発光領域内に収めることができた。即ち、X軸方向の隣に位置する、異なる色の発光領域内に蒸着粒子が付着することはなく、混色がない高品位の有機EL表示装置を製造することができた。また、ボヤケ部分の幅Weが小さいので、非発光領域のX軸方向寸法を小さくすることが可能となり、画素の発光領域を大きくすることができる。そのため、電流密度を下げて有機EL素子を構成する発光層の劣化を防止でき、その結果、画素の発光寿命特性が向上し、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができた。
上記の実施例からも理解できるように、本実施形態によれば、制御板80の主面が基板10の走査方向、即ちY軸方向と平行であるので、制御板80は、蒸着粒子のY軸方向(YZ面内)の広がり角度を制限する機能を有していない。即ち、速度ベクトルのY軸方向成分が大きな蒸着粒子であっても、制限板80に衝突し捕捉されることはない。従って、制御板80を設けたことによる材料の利用効率の低下は少ない。これに対して、上述した特許文献4に記載された蒸着ビーム通過孔が形成された蒸着ビーム方向調整板は、基板10の法線に直交する全方向において蒸着粒子の広がり角度を制限するので、材料利用効率が著しく低下する。なお、本実施形態において、蒸着源開口61から放出される蒸着粒子のY軸方向の広がり角度が大きすぎるために不所望な方向に蒸着粒子が飛翔するような場合には、蒸着粒子のY軸方向の広がり角度を制限するための防着板等を設置しても良い。
上記の実施例1では、X軸方向において、隣り合う制御板80の中央に蒸着源開口61が配置されている。従って、最も蒸着粒子密度が高い蒸着源開口61の真上の領域に制御空間81が配置される。この構成は、制御板80に衝突し捕捉される蒸着粒子を少なくすることができるので、材料利用効率や蒸着レートの低下防止の観点から有利である。
上記の実施例1では、同一寸法の制御板80を平行に単に配置するだけであり、制御板80の寸法精度や組立精度は100μmオーダーで十分であり、複数の制御板80に特別な高精度な加工は不要である。
上記の実施例1では、基板10に付着する蒸着粒子は、蒸着源開口61の真上に位置するただ1つの制御空間81を通過した蒸着粒子である。この構成は、後述する他の実施例に比べて、制御板80の長さLを短くすることができる。即ち、より小さな制御板80の長さLに対しても式(1−1)が成立する。従って、蒸着源開口61から基板10までの距離を小さくすることができ、これは蒸着レートの向上や装置サイズの低減に有利である。
また、上記の実施例1では、蒸着源開口61及び制御板80のX軸方向ピッチが同じであるので、X軸方向において、基板10上に形成される被膜90の厚さムラを少なくすることができる。
上記の実施例1は例示に過ぎず、適宜変更することができる。
例えば、制御板80の寸法(特に、長さL及び厚さT)は、上記の実施例1に限定されず、自由に設定することができる。但し、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81のみを通過するという条件を満たすためには、上述の式(1−1)を満足する必要がある。従って、式(1−1)が満足される範囲内で制御板80の寸法を任意に設計することができる。しかしながら、制御板80の厚さTが大きくなると、制御板80の開口率(=(P−T)/P)が小さくなるため、材料利用効率が低下する。したがって、制御板80の厚さTは可能な限り小さい方が好ましい。
上記の実施例1では、X軸方向において、隣り合う制御板80の中央に蒸着源開口61を配置したが、本発明はこれに限定されず、隣り合う制御板80の間の任意の位置に蒸着源開口61を配置することができる。その場合、上記式(1−1)および(1−2)の「P」は次のように置き換えられる。すなわち、Y軸方向に沿って見た図13において、隣り合う制御板80の中央に対して距離xだけ右側にずれた位置に蒸着源開口61が配置された場合を考える。この場合、蒸着源開口61の中心を通るZ軸と平行な直線に対して右側の部分については「P」を「P−2x」に置き換え、左側の部分については「P」を「P+2x」に置き換えて、上記式(1−1)および(1−2)を適用すればよい。蒸着源開口61のX軸方向位置を、隣り合う制御板80の中央からずらすことにより、被膜90のX軸方向の両側のボヤケ部分の幅We(図7参照)を異ならせることができる。
上記の実施例1では、蒸着源開口61と制御板80のX軸方向ピッチは同じであったが、本発明はこれに限定されず、両者が異なっていてもよい。但し、蒸着源開口61及び制御板80のX軸方向位置をランダムに設定した場合など、蒸着源開口61と制御板80との相対的位置関係がX軸方向において一定でない場合には、X軸方向において、基板10上に形成される被膜90の厚さムラが生じる。従って、蒸着源開口61のX軸方向ピッチ及び制御板80のX軸方向ピッチは、一方が他方の整数倍の関係を有していることが好ましい。
(実施形態2)
実施形態1では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する1つの制御空間81のみを通過することができた。これに対して、本実施形態2では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する1つの制御空間81に加えて、この制御空間81の両隣の2つの制御空間81をも通過することができる。即ち、各蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81を中心とするX軸方向に連続する3つの制御空間81を通過する。更に外側の制御空間81を通過するように構成してもよい。本実施形態2の蒸着装置の構成は、上記を除いて実施形態1のそれと同じである。
本実施形態においても、実施形態1と同様に、基板10に形成される被膜90の少なくとも一部は、互いに異なる2以上の制御空間81を通過した蒸着粒子91によって形成される。即ち、X軸方向位置が異なる複数の制御空間81をそれぞれ通過した蒸着粒子91が、基板10の被蒸着面10e上の同一地点に付着する。
図14は、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、その真上の制御空間81と、その両隣の制御空間81との合計3つの制御空間81を通過する本実施形態の蒸着粒子流92を、図12と同様に示した図である。図14では、図面を簡単化するために、1つの蒸着源開口61から放出された蒸着粒子流92のみを示している。詳細な説明を省略するが、図12で説明したのと同様に、図14においても、制御板80の上側端から上側に所定距離だけ離れた位置よりも上側の領域では、2つ以上の蒸着粒子流92の少なくとも一部が重なり合う。基板10の被蒸着面10eは、この領域内に設置される。図12で説明したのと同様に、本実施形態においても、被蒸着面10eを、X軸方向において重なり度が一定である位置や、制御板80からなるべく遠い位置に配置すると、被膜90の厚み均一性が向上するので好ましい。
蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、更に多くの制御空間81を通過する場合も、上記と同様に考えることができる。
本実施形態2に対応した実施例2を示す。但し、本発明は、以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
図15に、一部の蒸着源開口61及び制御板80を拡大して示す。本実施例2は、1つの蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上の制御空間81のみならず、この制御空間81に隣り合う2つの制御空間81をも通過する点で、実施形態1の実施例1(図13)と異なる。本実施例2では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上の制御空間81に対して2つ以上隣の制御空間81を通過することはできない。本実施例2の上記以外の構成は、制御板80の寸法及び配置位置を除いて、実施例1と同じである。蒸着装置の構造、有機蒸着膜のパターン形成プロセス等も、実施例1と同じである。
各制御板80のZ軸方向の長さLを75mmに変更した以外は、制御板80の寸法、X軸方向ピッチP、材料等は実施例1と同じとした。
図15に示されているように、Y軸方向に沿って見たとき、X軸方向に隣り合う一対の制御板80のうちの一方の制御板80の他方に対向する側の面の下端と、前記他方の制御板80の前記一方に対向する側の面の上端とを結ぶ直線がX軸方向に対してなす角度をγとすると、
tanγ=L/(P−T)=10
であるから、γ=84.3°となる。従って、隣り合う制御板80によって決定される蒸着粒子の広がり角度γ’(γ’=90°−γ)は5.7°であった。即ち、複数の制御板80によって、制御空間81を出射する蒸着粒子の出射角度は5.7°以下に制限される。
蒸着源開口61のX軸方向ピッチP、開口形状、開口直径Dn、蒸着粒子の最大出射角度φ(図8参照)は実施例1と同じにした。実施例1と同様に、X軸方向に隣り合う制御板80の中央位置に各蒸着源開口61を配置した。蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzは30mmにした。
蒸着源開口61から広がりをもって放出された蒸着粒子は、蒸着源開口61の真上の制御空間81に加えて、その周辺の複数の制御空間81にも入射した。しかしながら、本実施例では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上の制御空間81及びこれの両隣の制御空間81以外の制御空間81に入射した蒸着粒子は、制御板80に衝突し捕捉され制御空間81を通過できない。これを実現するための条件は、
2Lz/(P−Dn+T)>tanγ≧2Lz/(3P−Dn+T) …(2−1)
である。
本実施例では、上記不等式の最左辺は13.3であり、最右辺は2.9であるから、上記不等式を満足していた。
制御空間81を通過した蒸着粒子の図15に示す広がり角度θは、
2Lz/(P+Dn+T)>L/(P−T) …(2−2)
の真偽によって異なる。不等式(2−2)が真のとき、
cotθ=2×(L+Lz)/(3P+Dn−T) …(2−3)
であり、不等式(2−2)が偽のとき、
cotθ=L/(P−T) …(2−4)
である。
本実施例では、不等式(2−2)の左辺は4.8であり、右辺は10であった。従って、不等式(2−2)は偽となり、式(2−4)よりθ=5.7°となり、θ=γ’である。従って、本実施例では、蒸着マスク70の各マスク開口71に入射する蒸着粒子の入射角度の最大値(最大入射角度)は、広がり角度γ’及び上記広がり角度θに依存し、5.7°であった。
蒸着マスク70の構成は実施例1と同じとした。マスク開口71のアスペクト比cotδ(図8参照)は、実施例1と同じ約1.7であった。δ>θを満足するから、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは上記広がり角度γ’及び上記広がり角度θに依存した。
制御板80の上端から基板10の被蒸着面10eまでの距離を125mmにした。蒸着マスク70と基板10の被蒸着面10eとの間の間隔Hは実施例1と同じにした。
画素パターン及び蒸着速度は実施例1と同じにした。
以上のような構成により、基板10をY軸方向に1往復走査させることにより、有機材料からなる蒸着膜を所望の画素パターンに形成して、発光層を形成することができた。即ち、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81及びこの両隣に位置する制御空間81を通過し、更にマスク開口71を通過した蒸着粒子のみが基板10の被蒸着面10eに付着した。
本実施例では、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは、上記広がり角度γ’及び上記広がり角度θと同じ5.7°であった。従って、被膜のボヤケ部分の幅We(図7参照)は、
We=H×tanα=30μm
であった。ボヤケ部分の幅Weは、X軸方向に隣り合う発光領域の間の非発光領域のX軸方向寸法よりも狭い。従って、ボヤケ部分を非発光領域内に収めることができた。即ち、X軸方向の隣に位置する、異なる色の発光領域内に蒸着粒子が付着することはなく、混色がない高品位の有機EL表示装置を製造することができた。また、ボヤケ部分の幅Weが小さいので、非発光領域のX軸方向寸法を小さくすることが可能となり、画素の発光領域を大きくすることができる。そのため、電流密度を下げて有機EL素子を構成する発光層の劣化を防止でき、その結果、画素の発光寿命特性が向上し、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができた。
1つの蒸着源開口61から放出された、被膜90の形成に寄与する蒸着粒子は、実施形態1では1つの制御空間81のみを通過したのに対して、本実施形態2では複数の制御空間81(実施例2では3つの制御空間81)を分かれて通過する。即ち、実施形態1に比べて、本実施形態では、制御板80によって小分けされたより多数の蒸着粒子流が形成され、基板10上では、より多数の蒸着粒子流が重ね合わされて被膜90が形成される。従って、蒸着粒子流92間での蒸着粒子密度のバラツキなどが平均化され、被膜90の厚み均一性が向上する。
広がり角θが式(2−4)にしたがう場合には、広がり角θは、蒸着源開口61の開口直径Dn、及び、蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzに依存しない。従って、ボヤケ部分の幅Weは、開口直径Dnや間隔Lzの精度に影響を受けないため、ボヤケ部分の幅Weを、実施形態1よりもバラツキを少なく高精度に制御することができる。
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1で説明したのと同様の効果を奏する。
上記の実施例2は例示に過ぎず、適宜変更することができる。
例えば、制御板80の寸法(特に、長さL及び厚さT)は、上記の実施例2に限定されず、自由に設定することができる。但し、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81及びその両隣の制御空間81のみを通過するという条件を満たすためには、上述の式(2−1)を満足する必要がある。従って、式(2−1)が満足される範囲内で制御板80の寸法を任意に設計することができる。制御板80の厚さTが大きくなると制御板80の開口率が小さくなるため、制御板80の厚さTが可能な限り小さい方が好ましいことは実施形態1と同じである。
上記の実施例2では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上及びその両隣の合計3つの制御空間81のみを通過したが、本発明はこれに限定されず、更に多くの制御空間81を通過してもよい。その場合、上記不等式(2−1)の最右辺を適宜変更する必要がある。例えば、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上の制御空間81に加えて、その両側の2つの制御空間81をも通過する(即ち、連続する5つの制御空間81を通過する)場合には、上記不等式(2−1)の「3P」は「5P」に置き換えられる。一般に、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御空間81とその両側にそれぞれ順に隣接するn個(「n」は自然数)の制御空間81との合計(2n+1)個の制御空間81を通過する場合には、不等式(2−1)の「3P」は「(2n+1)P」に置き換えられる。更に、式(2−2)の左辺の「P」及び式(2−3)の「3P」は、それぞれ「(2n−1)P」及び「(2n+1)P」に置き換えられる。
但し、「n」が大きくなると、図16から理解できるように、蒸着源開口61から見た、制御板80によって遮蔽される角度領域83が増えるので、蒸着レートや材料利用効率が低下する。従って、それらの問題点からは「n」は小さい方が好ましく、上記実施例2に示したように、n=1が最も好ましい。
上記の実施例2では、X軸方向において、隣り合う制御板80の中央に蒸着源開口61を配置したが、本発明はこれに限定されず、隣り合う制御板80の間の任意の位置に蒸着源開口61を配置することができる。その場合、上記式(2−1)〜(2−4)の「P」及び「3P」は次のように置き換えられる。すなわち、Y軸方向に沿って見た図15において、隣り合う制御板80の中央に対して距離xだけ右側にずれた位置に蒸着源開口61が配置された場合を考える。この場合、蒸着源開口61の中心を通るZ軸と平行な直線に対して右側の部分については「P」を「P−2x」に、「3P」を「3P−2x」にそれぞれ置き換え、左側の部分については「P」を「P+2x」に、「3P」を「3P+2x」にそれぞれ置き換えて、上記式(2−1)〜(2−4)を適用すればよい。蒸着源開口61のX軸方向位置を、隣り合う制御板80の中央からずらすことにより、被膜90のX軸方向の両側のボヤケ部分の幅We(図7参照)を異ならせることができる。
上記の実施例2では、蒸着源開口61と制御板80のX軸方向ピッチは同じであったが、本発明はこれに限定されず、両者が異なっていてもよい。但し、実施形態1で説明したのと同様に、蒸着源開口61のX軸方向ピッチ及び制御板80のX軸方向ピッチは、一方が他方の整数倍の関係を有していることが好ましい。
(実施形態3)
本実施形態3は、制御板80の真下に蒸着源開口61が存在する点で、制御空間81の真下に蒸着源開口61が存在する実施形態1,2と異なる。従って、本実施形態3では、各蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に存在する制御板80の両側に位置する2つの制御空間81を通過する。更に外側の制御空間81を通過するように構成してもよい。本実施形態3の蒸着装置の構成は、上記を除いて実施形態1,2のそれと同じである。
本実施形態においても、実施形態1,2と同様に、基板10に形成される被膜90の少なくとも一部は、互いに異なる2以上の制御空間81を通過した蒸着粒子91によって形成される。即ち、X軸方向位置が異なる複数の制御空間81をそれぞれ通過した蒸着粒子91が、基板10の被蒸着面10e上の同一地点に付着する。
図17は、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、その真上の制御板80の両側の2つの制御空間81を通過する本実施形態の蒸着粒子流92を、図12、図14と同様に示した図である。図17では、図面を簡単化するために、1つの蒸着源開口61から放出された蒸着粒子流92のみを示している。詳細な説明を省略するが、図12で説明したのと同様に、図17においても、制御板80の上側端から上側に所定距離だけ離れた位置よりも上側の領域では、2つ以上の蒸着粒子流92の少なくとも一部が重なり合う。基板10の被蒸着面10eは、この領域内に設置される。図12で説明したのと同様に、本実施形態においても、被蒸着面10eを、X軸方向において重なり度が一定である位置や、制御板80からなるべく遠い位置に配置すると、被膜90の厚み均一性が向上するので好ましい。
蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、更に多くの制御空間81を通過する場合も、上記と同様に考えることができる。
本実施形態3に対応した実施例3を示す。但し、本発明は、以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
図18に、蒸着源開口61の一部及び制御板80の一部を拡大して示す。本実施例3は、1つの蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御板80の両側の2つの制御空間81を通過する点で、実施形態1の実施例1(図13)及び実施形態2の実施例2(図15)と異なる。本実施例3では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上の制御板80を挟む2つの制御空間81よりも更に外側の制御空間81を通過することはできない。本実施例3の上記以外の構成は、制御板80の寸法及び配置位置を除いて、実施例1と同じである。蒸着装置の構造、有機蒸着膜のパターン形成プロセス等も、実施例1と同じである。
各制御板80のZ軸方向の長さLを75mmに変更した以外は、制御板80の寸法、X軸方向ピッチP、材料等は実施例1と同じとした。
図18に示されているように、Y軸方向に沿って見たとき、X軸方向に隣り合う一対の制御板80のうちの一方の制御板80の他方に対向する側の面の下端と、前記他方の制御板80の前記一方に対向する側の面の上端とを結ぶ直線がX軸方向に対してなす角度をγとすると、
tanγ=L/(P−T)=10
であるから、γ=84.3°となる。従って、隣り合う制御板80によって決定される蒸着粒子の広がり角度γ’(γ’=90°−γ)は5.7°であった。即ち、複数の制御板80によって、制御空間81を出射する蒸着粒子の出射角度は5.7°以下に制限される。
蒸着源開口61のX軸方向ピッチP、開口形状、開口直径Dn、蒸着粒子の最大出射角度φ(図8参照)は実施例1と同じにした。実施例1と異なり、蒸着源開口61と制御板80のX軸方向位置を同じにした。蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzは20mmにした。
蒸着源開口61から広がりをもって放出された蒸着粒子は、蒸着源開口61の真上の制御板80の両側の複数の制御空間81に入射した。しかしながら、本実施例では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上の制御板80の両側の2つの制御空間81以外の制御空間81に入射した蒸着粒子は、制御板80に衝突し捕捉され制御空間81を通過できない。これを実現するための条件は、
tanγ≧2Lz/(2P−Dn+T) …(3−1)
である。
本実施例では、上記不等式の右辺は4.8であるから、上記不等式を満足していた。
制御空間81を通過した蒸着粒子の図18に示す広がり角度θは、
2Lz/(Dn+T)>L/(P−T) …(3−2)
の真偽によって異なる。不等式(3−2)が真のとき、
cotθ=2×(L+Lz)/(2P+Dn−T) …(3−3)
であり、不等式(3−2)が偽のとき、
cotθ=L/(P−T) …(3−4)
である。
本実施例では、不等式(3−2)の左辺は8.9であり、右辺は10であった。従って、不等式(3−2)は偽となり、式(3−4)よりθ=5.7°となり、θ=γ’である。従って、本実施例では、蒸着マスク70の各マスク開口71に入射する蒸着粒子の入射角度の最大値(最大入射角度)は、広がり角度γ’及び上記広がり角度θに依存し、5.7°であった。
蒸着マスク70の構成は実施例1と同じとした。マスク開口71のアスペクト比cotδ(図8参照)は、実施例1と同じ約1.7であった。δ>θを満足するから、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは上記広がり角度γ’及び上記広がり角度θに依存した。
制御板80の上端から基板10の被蒸着面10eまでの距離を165mmにした。蒸着マスク70と基板10の被蒸着面10eとの間の間隔Hは実施例1と同じにした。
画素パターン及び蒸着速度は実施例1と同じにした。
以上のような構成により、基板10をY軸方向に1往復走査させることにより、有機材料からなる蒸着膜を所望の画素パターンに形成して、発光層を形成することができた。即ち、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子のうち、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御板80の両側に位置する2つの制御空間81を通過し、更にマスク開口71を通過した蒸着粒子のみが基板10の被蒸着面10eに付着した。
本実施例では、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは、上記広がり角度γ’及び上記広がり角度θと同じ5.7°であった。従って、被膜のボヤケ部分の幅We(図7参照)は、
We=H×tanα=30μm
であった。ボヤケ部分の幅Weは、X軸方向に隣り合う発光領域の間の非発光領域のX軸方向寸法よりも狭い。従って、ボヤケ部分を非発光領域内に収めることができた。即ち、X軸方向の隣に位置する、異なる色の発光領域内に蒸着粒子が付着することはなく、混色がない高品位の有機EL表示装置を製造することができた。また、ボヤケ部分の幅Weが小さいので、非発光領域のX軸方向寸法を小さくすることが可能となり、画素の発光領域を大きくすることができる。そのため、電流密度を下げて有機EL素子を構成する発光層の劣化を防止でき、その結果、画素の発光寿命特性が向上し、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができた。
1つの蒸着源開口61から放出された、被膜90の形成に寄与する蒸着粒子は、実施形態1では1つの制御空間81のみを通過したのに対して、本実施形態3では複数の制御空間81(実施例3では2つの制御空間81)を分かれて通過する。即ち、実施形態1に比べて、本実施形態では、制御板80によって小分けされたより多数の蒸着粒子流が形成され、基板10上では、より多数の蒸着粒子流が重ね合わされて被膜90が形成される。従って、蒸着粒子流92間での蒸着粒子密度のバラツキなどが平均化され、被膜90の厚み均一性が向上する。
蒸着源開口61の真上に制御板80が存在するが、その厚みTを薄く設定すれば、実施形態2に比べると、制御板80で遮られる蒸着粒子の量を少なくすることができる。従って、材料利用効率を実施形態2に比べて高くすることができる。
本実施形態では、蒸着源開口61の開口直径Dnは制御板80の厚みTよりも大きいことが好ましい。これにより、図18から理解できるように、制御板80の直上の領域にも、当該制御板80の真下の蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が回り込んで飛翔するため、被膜90の厚みの不均一を改善することができる。
広がり角θが式(3−4)にしたがう場合には、広がり角θは、蒸着源開口61の開口直径Dn、及び、蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzに依存しない。従って、ボヤケ部分の幅Weは、開口直径Dnや間隔Lzの精度に影響を受けないため、ボヤケ部分の幅Weを、実施形態1よりも高精度に制御することができる。
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じであり、実施形態1で説明したのと同様の効果を奏する。
上記の実施例3は例示に過ぎず、適宜変更することができる。
例えば、制御板80の寸法(特に、長さL及び厚さT)は、上記の実施例3に限定されず、自由に設定することができる。但し、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御板80の両側の2つの制御空間81のみを通過するという条件を満たすためには、上述の式(3−1)を満足する必要がある。従って、式(3−1)が満足される範囲内で制御板80の寸法を任意に設計することができる。本実施形態では、最も多くの蒸着粒子が飛翔する蒸着源開口61の真上方向に制御板80が設置されるので、制御板80の厚さTが大きくなると、制御板80でその飛翔が妨げられる蒸着粒子が多くなる。従って、制御板80の厚さTは可能な限り小さい方が好ましい。
上記の実施例3では、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、当該蒸着源開口61の真上の制御板80の両側の2つの制御空間81のみを通過したが、本発明はこれに限定されず、更に多くの制御空間81を通過してもよい。その場合、上記不等式(3−1)の右辺を適宜変更する必要がある。例えば、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御板80の両側の2つの制御空間81に加えて、更にその両外側の2つの制御空間81をも通過する(即ち、連続する4つの制御空間81を通過する)場合には、上記不等式(3−1)の「2P」は「4P」に置き換えられる。一般に、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子が、当該蒸着源開口61の真上に位置する制御板80の両側にそれぞれ順に隣接するn個(「n」は自然数)の制御空間81(合計2n個の制御空間81)を通過する場合には、不等式(3−1)の「2P」は「2n×P」に置き換えられる。更に、式(3−3)の「2P」は「2n×P」に置き換えられる。
但し、「n」が大きくなると、図19から理解できるように、蒸着源開口61から見た、制御板80によって遮蔽される角度領域83が増えるので、蒸着レートや材料利用効率が低下する。従って、それらの問題点からは「n」は小さい方が好ましく、上記実施例3に示したように、n=1が最も好ましい。
上記の実施形態3及びその実施例3では、制御板80の真下に蒸着源開口61が配置されていたが、本発明はこれに限定されず、制御板80の真下の位置からX軸方向にずれた位置に蒸着源開口61を配置することもできる。その場合、上記式(3−1)〜(3−3)の「Dn」は次のように置き換えられる。すなわち、Y軸方向に沿って見た図18において、制御板80のX軸方向中心に対して距離xだけ右側にずれた位置に蒸着源開口61が配置された場合を考える。この場合、蒸着源開口61の中心を通るZ軸と平行な直線に対して右側の部分については式(3−1)の「Dn」を「Dn+2x」に置き換え、式(3−2)及び式(3−3)の「Dn」を「Dn−2x」に置き換え、左側の部分については式(3−1)の「Dn」を「Dn−2x」に置き換え、式(3−2)及び式(3−3)の「Dn」を「Dn+2x」に置き換えて、上記式(2−1)〜(2−4)を適用すればよい。蒸着源開口61のX軸方向位置を、制御板80の真下の位置からずらすことにより、被膜90のX軸方向の両側のボヤケ部分の幅We(図7参照)を異ならせることができる。
(実施形態4)
図20は、本発明の実施形態4に係る蒸着装置の、基板の走査方向に沿って見た正面図である。本実施形態4では、実施形態1〜3と異なり、複数の制御板80を保持する保持体85が、スライド機構89を介してホルダ52に保持されている。スライド機構89は、複数の制御板80を蒸着源60及び蒸着マスク70に対してX軸方向に沿って往復運動させる。本実施形態4の蒸着装置の構成は、上記を除いて実施形態1〜3のそれと同じである。
本実施形態4に対応した実施例4を示す。但し、本発明は、以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
各制御板80のZ軸方向の長さLを75mmとし、蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzを30mmとし、制御板80の上端から基板10の被蒸着面10eまでの距離を100mmとする以外は、各部の寸法は実施例1と同じとした。
X軸方向に隣り合う一対の制御板80によって規定される角度γ(図13参照)に関してtanγ=10であるから、γ=84.3°となる。従って、隣り合う制御板80によって決定される蒸着粒子の広がり角度γ’(γ’=90°−γ)は5.7°であった。即ち、複数の制御板80によって、制御空間81を出射する蒸着粒子の出射角度は5.7°以下に制限される。
実施例1と同様に、基板10をY軸方向に沿って30mm/sで走査させながら基板10の被蒸着面10eに有機材料を蒸着した。蒸着中は、スライド機構89により複数の制御板80をX軸方向に沿って往復運動させた。複数の制御板80の往復運動移動量は、±3P=±24mmとした(Pは蒸着源開口61及び制御板80のX軸方向の配置ピッチである)。また、複数の制御板80の平均移動速度は180mm/sとした。
本実施例では、制御板80がX軸方向に往復運動するので、蒸着源開口61と制御板80との相対的位置関係は時々刻々変化する。従って、実施例1〜3で説明した条件は瞬間的にしか成立しない。本実施例では、制御空間81を通過した蒸着粒子の広がり角度θは、制御板80によって決定され、
cotθ≦L/(P−T) …(4−1)
となる。
式(4−1)より、本実施例では、広がり角度θは5.7°以下となる。従って、蒸着マスク70の各マスク開口71に入射する蒸着粒子の入射角度の最大値(最大入射角度)は、広がり角度θに依存し、5.7°であった。
マスク開口71のアスペクト比cotδ(図8参照)は、実施例1と同じ約1.7であるから、δ>θを満足する。従って、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは上記広がり角度θに依存した。
以上のような構成により、制御板80をX軸方向に往復運動させながら、基板10をY軸方向に1往復走査させることにより、有機材料からなる蒸着膜を所望の画素パターンに形成して、発光層を形成することができた。即ち、蒸着源開口61から放出された蒸着粒子は、制御空間81を通過し、更にマスク開口71を通過して基板10の被蒸着面10eに付着した。
本実施例では、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは、上記広がり角度θの最大値と同じ5.7°であった。従って、被膜のボヤケ部分の幅We(図7参照)は、
We=H×tanα=30μm
であった。ボヤケ部分の幅Weは、X軸方向に隣り合う発光領域の間の非発光領域のX軸方向寸法よりも狭い。従って、ボヤケ部分を非発光領域内に収めることができた。即ち、X軸方向の隣に位置する、異なる色の発光領域内に蒸着粒子が付着することはなく、混色がない高品位の有機EL表示装置を製造することができた。また、ボヤケ部分の幅Weが小さいので、非発光領域のX軸方向寸法を小さくすることが可能となり、画素の発光領域を大きくすることができる。そのため、電流密度を下げて有機EL素子を構成する発光層の劣化を防止でき、その結果、画素の発光寿命特性が向上し、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができた。
本実施形態では、蒸着中に制御板80を往復運動させるので、制御板80と蒸着源開口61との相対的位置関係に起因する、X軸方向における蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。従って、被膜90の厚み均一性が向上する。
また、制御板80が往復運動しているので、基板10の被蒸着面10e上のある地点に到達した蒸着粒子の選択に関与した制御板80が時々刻々変化する。従って、各制御板80の寸法精度や設置精度のバラツキに起因する、X軸方向における蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。従って、被膜90の厚み均一性が向上する。
本実施形態では、広がり角θが(4−1)にしたがうので、広がり角θは、蒸着源開口61の開口直径Dn、及び、蒸着源開口61の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzに依存しない。従って、ボヤケ部分の幅Weは、開口直径Dnや間隔Lzの精度に影響を受けないため、ボヤケ部分の幅Weを、実施形態1よりも高精度に制御することができる。
本実施形態で説明した、蒸着中に複数の制御板80をX軸方向に沿って往復運動させる構成は、実施形態1〜3のいずれに適用することもできる。
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1〜3と同じであり、実施形態1〜3で説明したのと同様の効果を奏する。
上記の実施例4は例示に過ぎず、適宜変更することができる。
例えば、上記の実施例4では、蒸着源開口61と制御板80のX軸方向ピッチは同じであったが、本発明はこれに限定されず、両者が異なっていてもよい。例えば、蒸着源開口61及び制御板80のX軸方向位置をランダムに設定してもよい。実施形態1〜3と異なり、蒸着源開口61のX軸方向ピッチ及び制御板80のX軸方向ピッチのうちの一方が他方の整数倍でないことに起因する、蒸着源開口61と制御板80との相対的位置関係のX軸方向における不均一が、制御板80を往復運動させることにより平均化される。従って、X軸方向において、基板10上に形成される被膜90の厚さムラは生じにくい。
上記の実施例4では、制御板80の往復運動移動量を±24mmとしたが、本発明はこれに限定されず、これより大きくても小さくてもよい。但し、基板10上に形成される被膜90の厚さムラを少なくするためには、制御板80の往復運動移動量は、蒸着源開口61のX軸方向ピッチ及び制御板80のX軸方向ピッチのうちの大きい方よりも大きいことが好ましく、前記大きい方の整数倍であることが更に好ましい。
上記の実施例4では、制御板80を不動の蒸着源60及び蒸着マスク70に対してX軸方向に往復運動させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御板80及び蒸着マスク70の位置を一定とし、蒸着源60をX軸方向に往復運動させてもよい。あるいは、蒸着マスク70の位置を一定とし、蒸着源60及び制御板80をX軸方向に往復運動させてもよい。いずれの場合であっても、蒸着源開口61と制御板80との相対的位置関係を時々刻々変化させれば、本実施形態の上記の効果が得られる。あるいは、蒸着マスク70の位置を一定にし、蒸着マスク70に対して、制御板80および蒸着源60の相対的位置関係を固定しながら協調させてX軸方向に往復運動させてもよい。この場合においても、蒸着マスク70と制御板80及び蒸着源開口61との相対的位置関係が時々刻々変化するので、当該相対的位置関係に起因する、X軸方向における蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。また、制御板80及び蒸着源開口61が一緒に往復運動するので、基板10の被蒸着面10eのある地点に到達する蒸着粒子が由来する制御板80及び蒸着源開口61が時々刻々変化する。従って、制御板80や蒸着源開口61の精度バラツキに起因する、X軸方向における蒸着粒子の密度のバラツキが平均化される。よって、実施例4と同様に被膜90の厚み均一性が向上する。なお、この場合、制御板80および蒸着源60の相対的位置関係が固定されているので、蒸着粒子の広がり角θは、実施例1〜3で示した式に従う。
(実施形態5)
図21は、本発明の実施形態5に係る蒸着装置の、基板の走査方向に沿って見た正面図である。蒸着源60が蒸着粒子を放出する蒸着源開口として、実施形態1〜4ではそれぞれがノズル形状を有した複数の蒸着源開口61を用いたのに対して、本実施形態5ではスロット形状の蒸着源開口62を用いる。蒸着源開口62は、X軸方向に沿って連続する長孔である。蒸着源開口62の上方に複数の制御板80が配置されている。蒸着源開口62のX軸方向の開口径は、制御板80のX軸方向ピッチPより大きく、ピッチPの2倍よりも大きいことが好ましい。更には、蒸着源開口62のX軸方向の両端は、複数の制御板80のうちの両外側の制御板80よりもX軸方向の外側にはみ出していることが好ましい。
本実施形態においても、実施形態1〜4と同様に、基板10に形成される被膜90の少なくとも一部は、互いに異なる2以上の制御空間81を通過した蒸着粒子91によって形成される。即ち、X軸方向位置が異なる複数の制御空間81をそれぞれ通過した蒸着粒子91が、基板10の被蒸着面10e上の同一地点に付着する。スロット形状の蒸着源開口62から放出される蒸着粒子の最大出射角度φ(図8参照)は、ノズル形状の蒸着源開口61から放出される蒸着粒子の最大出射角度φよりも一般に大きい。従って、隣り合う制御空間81を通過した蒸着粒子流の少なくとも一部が重なり合う位置の制御板80の上端からの距離は、ノズル形状の蒸着源開口61を用いた場合に比べて、スロット形状の蒸着源開口62を用いた場合の方が一般に短くなる。
本実施形態5の蒸着装置の構成は、上記を除いて実施形態1のそれと同じである。
本実施形態5に対応した実施例5を示す。但し、本発明は、以下の実施例に限定されないことはいうまでもない。
図22に、一部の蒸着源開口62及び制御板80を拡大して示す。
各制御板80のZ軸方向の長さLを75mmとし、蒸着源開口62の上端から制御板80の下端までのZ軸方向間隔Lzを30mmとし、制御板80の上端から基板10の被蒸着面10eまでの距離を100mmとする以外は、各部の寸法は実施例1と同じとした。
X軸方向に隣り合う一対の制御板80によって規定される角度γに関してtanγ=10であるから、γ=84.3°となる。従って、隣り合う制御板80によって決定される蒸着粒子の広がり角度γ’(γ’=90°−γ)は5.7°であった。即ち、複数の制御板80によって、制御空間81を出射する蒸着粒子の出射角度は5.7°以下に制限される。
本実施例では、制御板80のX軸方向ピッチPよりも蒸着源開口62のX軸方向長さが大きい。従って、実施例1〜3において考慮した蒸着源開口61の開口直径Dnの概念は本実施例では存在しない。よって、本実施例では、制御空間81を通過した蒸着粒子の広がり角度θは、単純に制御板80によって決定され、
cotθ=L/(P−T) …(5−1)
となる。
式(5−1)より、本実施例では、広がり角度θは5.7°となる。従って、蒸着マスク70の各マスク開口71に入射する蒸着粒子の入射角度の最大値(最大入射角度)は、広がり角度θに依存し、5.7°であった。
マスク開口71のアスペクト比cotδ(図8参照)は、実施例1と同じ約1.7であるから、δ>θを満足する。従って、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは上記広がり角度θに依存した。
画素パターン及び蒸着速度は実施例1と同じにした。
以上のような構成により、実施例1と同様に基板10をY軸方向に1往復走査させることにより、有機材料からなる蒸着膜を所望の画素パターンに形成して、発光層を形成することができた。即ち、蒸着源開口62から放出された蒸着粒子のうち、制御空間81及びマスク開口71を順に通過した蒸着粒子のみが基板10の被蒸着面10eに付着した。
本実施例では、蒸着粒子の基板10に対する最大入射角度αは、上記広がり角度θと同じ5.7°であった。従って、被膜のボヤケ部分の幅We(図7参照)は、
We=H×tanα=30μm
であった。ボヤケ部分の幅Weは、X軸方向に隣り合う発光領域の間の非発光領域のX軸方向寸法よりも狭い。従って、ボヤケ部分を非発光領域内に収めることができた。即ち、X軸方向の隣に位置する、異なる色の発光領域内に蒸着粒子が付着することはなく、混色がない高品位の有機EL表示装置を製造することができた。また、ボヤケ部分の幅Weが小さいので、非発光領域のX軸方向寸法を小さくすることが可能となり、画素の発光領域を大きくすることができる。そのため、電流密度を下げて有機EL素子を構成する発光層の劣化を防止でき、その結果、画素の発光寿命特性が向上し、高信頼性の有機EL表示装置を得ることができた。
本実施形態によれば、蒸着源開口62がスロット形状を有しているので、それぞれがノズル形状を有する複数の蒸着源開口61に比べて、総開口面積を大きくすることができる。従って、蒸着レートの向上を図ることができる。
実施形態1〜3のようにノズル形状を有する蒸着源開口61を用いた場合には、蒸着源開口61の開口直径Dnや、蒸着源開口61と制御板との相対的位置関係に起因して、X軸方向において蒸着粒子密度ムラが発生しやすい。更に、開口直径Dnの寸法精度や、蒸着源開口61と制御板との相対的位置精度のバラツキによっても、X軸方向において蒸着粒子密度ムラが発生しやすい。これに対して、本実施形態によれば、スロット形状の蒸着源開口62を用いるので、上述した原因による蒸着粒子密度ムラは発生しない。従って、被膜90の厚み均一性が向上する。
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1〜3と同じであり、実施形態1〜3で説明したのと同様の効果を奏する。
上記の実施例5は例示に過ぎず、適宜変更することができる。
例えば、上記の実施例5では、蒸着源60に設けられたスロット形状の蒸着源開口62の数は1つであったが、本発明はこれに限定されず、複数のスロット形状の蒸着源開口62を蒸着源60に設けてもよい。複数のスロット形状の蒸着源開口62は、X軸方向に平行な一直線上に並べてもよいし、Y軸方向においてその少なくとも一部が重なり合うように異なるY軸方向位置に配置してもよい。
上述した実施形態1〜5で説明したように、蒸着源60と蒸着マスク70との間に複数の制御板80を並列配置することにより、基板10に形成される被膜90のボヤケを抑制することができる。その結果、かかる蒸着装置を用いて発光層を形成すると、高品位、高信頼性の有機EL表示装置を実現することができる。
また、被膜90の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御空間81を通過した蒸着粒子によって形成される。これにより、被膜90の厚み均一性が向上する。その結果、かかる蒸着装置を用いて発光層を形成すると、発光ムラが抑制され、高品位の有機EL表示装置を実現することができる。
本発明において、制御板80の表面に捕捉され付着した蒸着材料は、例えば複数の制御板80を保持体85とともに蒸着装置から取り外し、加熱することにより、蒸着材料を融解又は昇華させて制御板80から脱離させ、回収することができる。そのため、制御板80に付着した蒸着材料も無駄にはならず、総合的な材料利用効率を向上することができる。これに対して、塗り分け蒸着に使用されるシャドウマスクは、一般に、微小な開口が多数形成された100μm程度の厚さの金属板からなり、張力を付与してフレームに張り付けられているので、本発明の制御板と同様に加熱すると、シャドウマスクは歪みを生じて再使用が困難となることがある。従って、シャドウマスクに付着した蒸着材料を回収することは一般に困難であった。本発明の制御板は、微細加工は施されておらず、また、張力も付与されていないので、シャドウマスクにおける上記の問題は生じない。
また、本発明では、マスク開口71に蒸着粒子が大きな入射角度で入射しないように、蒸着マスク70の前段で蒸着粒子の一部を制御板80で捕捉する。従って、本発明では、制御板80を用いない図5に示した新蒸着法に比べて、蒸着マスク(特にそのマスク開口の内周面)への蒸着材料の付着量が減少する。そのため、マスク開口の目詰まりが生じにくく、蒸着材料の付着による蒸着マスクの交換頻度を低減することができる。
上記の実施形態1〜5では、赤、緑、青のいずれの色の有機発光層材料の塗り分け蒸着においても、同様に設計された制御板80を用いたが、本発明はこれに限定されず、例えば制御板80の設計を色ごとに変えてもよい。例えば、緑の発光層材料は隣接画素に僅かに付着しても特性上問題がない場合には、緑の発光層材料の蒸着に使用される制御板80については、そのZ軸方向の長さLを短くして、蒸着レートや材料利用効率を向上させても良い。
上記の実施形態1〜5では、複数の制御板80は、その主面がYZ面と平行になるように配置したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の制御板80を、その主面がY軸と平行であり且つ基板10の被蒸着面10eに対して傾斜させて配置してもよい。複数の制御板80は、互いに平行であることが好ましい。このように、複数の制御板80を傾斜させた場合、実施例1〜5で説明した各式は、その変数に実効的な寸法等を代入して適用すればよい。
本発明では、制御板80を冷却してもよい。制御板80を冷却するための冷却装置は、制御板80自身に取り付けてもよく、あるいは、制御板80を保持する保持体85に取り付けて熱伝導を利用して制御板80を冷却してもよい。冷却装置としては、特に制限はないが、例えば冷却パイプ内に冷媒を通過させる水冷方法を用いることができる。制御板80を冷却することにより、制御板80の温度上昇が抑えられるので、制御板80に衝突した蒸着粒子をより確実に捕捉することができ、また、制御板80からの蒸着粒子の再蒸発を防ぐことができる。また、蒸着源60からの輻射熱により制御板80が加熱されて変形や寸法変化するなどの現象の発生を防止することもできる。
また、制御板80の温度を所定温度に調整する温調装置を設けてもよい。温調装置の構成は、特に制限はないが、例えば制御板80を加熱する加熱装置と、制御板80を冷却する冷却装置と、制御板80の温度を検出する温度検出器とで構成することができる。加熱装置及び冷却装置は、制御板80自身に取り付けてもよく、あるいは、制御板80を保持する保持体85に取り付けて熱伝導を利用して制御板80を加熱及び冷却してもよい。加熱装置としては、特に制限はないが、例えば公知のヒーターを用いることができる。冷却装置としては、特に制限はないが、例えば冷却パイプ内に冷媒を通過させる水冷方法を用いることができる。制御板80の温度を適切に管理することにより、制御板80に捕捉された蒸着粒子を再蒸発させて、材料利用効率を更に向上させることができる。但し、制御板80から再蒸発した蒸着粒子は、制御板80の温度等によっては様々な方向に飛翔する可能性がある。再蒸発した蒸着粒子が所望する最大入射角度αよりも大きな角度で基板10に入射すると、被膜の端縁に不所望なボヤケ部分が生じる。従って、制御板80の温度を調整して再蒸発する蒸着粒子の量や飛翔方向を制御することが好ましい。
ノズル形状を有する蒸着源開口61のZ軸方向に沿って見た開口形状は、上記の実施形態1〜4では直径Dnの円形であったが、本発明はこれに限定されず、楕円形、長方形、正方形、各種多角形などであってもよい。開口形状が非円形である場合、実施例1〜4で説明した直径Dnに代えて当該開口のX軸方向の開口径を用いればよい。一般に、ノズル形状を有する蒸着源開口61の開口形状や寸法を変えると、蒸着粒子の最大出射角度φ(図8)が変化する。
制御板80のX軸方向に沿って見た形状は、矩形である必要はなく、例えば、蒸着源60側の辺が小さく、蒸着マスク70側の辺が大きな、略台形であってもよい。また、制御板80は、平板である必要はなく、例えば屈曲または湾曲していてもよく、あるいは波板であってもよい。また、制御板80の厚さTは一定である必要はなく、例えば、蒸着源60側で厚く、蒸着マスク70側で薄い、テーパ状断面を有していてもよい。
複数の制御板80の作成方法は特に制限はない。例えば、実施形態1〜5のように、複数の制御板80を別個に作成し、これを保持体85に溶接等により固定してもよい。あるいは、厚板材料に複数の貫通穴を一直線上に形成して、隣り合う貫通穴間の隔壁を制御板80として利用してもよい。
蒸着マスク70に形成したマスク開口71のパターンは上記の実施例1〜5に限定されない。全てのマスク開口71の形状及び寸法は同じであってもよいし、異なっていてもよい。マスク開口71のX軸方向ピッチは一定であってもよいし、異なっていてもよい。
上記の実施形態1〜5に示した蒸着装置では、蒸着源開口61,62、複数の制限板80、複数のマスク開口71が、それぞれX軸方向に一列に並んで配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、蒸着源開口、制限板、マスク開口のうちの少なくとも1つのX軸方向に沿った列がY軸方向に複数列配置されていてもよい。その場合、当該複数列間で、蒸着源開口、制限板、マスク開口のうちの少なくとも1つのX軸方向位置は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記の実施形態1〜5では、不動の蒸着ユニット50に対して基板10が移動したが、本発明はこれに限定されず、蒸着ユニット50及び基板10のうちの一方を他方に対して相対的に移動させればよい。例えば、基板10の位置を一定とし、蒸着ユニット50を移動させてもよく、あるいは、蒸着ユニット50及び基板10の両方を移動させてもよい。
上記の実施形態1〜5では、蒸着ユニット50の上方に基板10を配置したが、蒸着ユニット50と基板10との相対的位置関係はこれに限定されない。例えば、蒸着ユニット50の下方に基板10を配置してよく、あるいは、蒸着ユニット50と基板10とを水平方向に対向して配置してもよい。
本発明の蒸着装置及び蒸着方法の利用分野は特に制限はないが、有機EL表示装置の発光層の形成に好ましく利用することができる。
10 基板
10e 被蒸着面
20 有機EL素子
23R,23G,23B 発光層
50 蒸着ユニット
56 移動機構
60 蒸着源
61,62 蒸着源開口
70 蒸着マスク
71 マスク開口
80 制御板
81 制御板間空間(制御空間)
90 被膜
91 蒸着粒子
92 蒸着粒子流

Claims (24)

  1. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記蒸着源開口から放出され前記制御板間空間を通過した前記蒸着粒子の流れである蒸着粒子流を前記第2方向に沿って見たとき、重なり合う前記蒸着粒子流の数である重なり度が2以上であり且つ前記第1方向において前記重なり度が一定である位置に前記基板の被蒸着面を配置することを特徴とする蒸着方法。
  2. 前記複数の制御板のそれぞれの主面は、前記第2方向と平行である請求項1に記載の蒸着方法。
  3. 前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有する請求項1に記載の蒸着方法。
  4. 前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板と同一ピッチで配置されている請求項3に記載の蒸着方法。
  5. 前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板のピッチの整数倍のピッチで配置されている請求項3に記載の蒸着方法。
  6. 前記複数の蒸着源開口が前記複数の制御板のピッチの整数分の1のピッチで配置されている請求項3に記載の蒸着方法。
  7. 前記第1方向において、前記蒸着源開口は、隣り合う前記制御板の中央に配置されている請求項3に記載の蒸着方法。
  8. 前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に位置するただ1つの制御板間空間のみを通過する請求項7に記載の蒸着方法。
  9. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成され、
    前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有し、
    前記第1方向において、前記蒸着源開口は、隣り合う前記制御板の中央に配置されており、
    前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に位置する1つの制御板間空間及びこの制御板間空間の両隣の制御板間空間のみを通過することを特徴する蒸着方法。
  10. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成され、
    前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有し、
    前記蒸着源開口の真正面に前記制御板が配置されていることを特徴する蒸着方法。
  11. 前記蒸着源開口から放出された蒸着粒子は、前記蒸着源開口の真正面に配置された前記制御板の両側の2つの制御板間空間のみを通過する請求項10に記載の蒸着方法。
  12. 前記蒸着源開口の開口径が、前記蒸着源開口の真正面に配置された前記制御板の厚みより大きい請求項10に記載の蒸着方法。
  13. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成され、
    前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有し、
    前記蒸着工程において、前記複数の蒸着源開口及び前記複数の制御板のうちの一方を他方に対して相対的に移動させることを特徴する蒸着方法。
  14. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成され、
    前記蒸着源開口が前記第1方向に沿って複数個配置されており、前記複数の蒸着源開口のそれぞれはノズル形状を有し、
    前記蒸着工程において、前記複数の蒸着源開口及び前記複数の制御板の両方を前記蒸着マスクに対して相対的に移動させることを特徴する蒸着方法。
  15. 相対的に移動する方向は、前記第1方向である請求項13又は14に記載の蒸着方法。
  16. 相対的な移動は往復運動である請求項13又は14に記載の蒸着方法。
  17. 前記往復運動の移動量は、前記複数の蒸着源開口のピッチ及び前記複数の制御板のピッチのうちの大きい方よりも大きい請求項16に記載の蒸着方法。
  18. 前記往復運動の移動量は、前記複数の蒸着源開口のピッチ及び前記複数の制御板のピッチのうちの大きい方の整数倍である請求項16に記載の蒸着方法。
  19. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着方法であって、
    前記基板上に蒸着粒子を付着させて前記被膜を形成する蒸着工程を有し、
    前記蒸着工程は、前記蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源と、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスクと、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板とを備えた蒸着ユニットを用いて、前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させながら、前記第1方向に隣り合う制御板間空間及び前記蒸着マスクに形成された複数のマスク開口を通過した前記蒸着粒子を前記基板に付着させる工程であり、
    前記被膜の少なくとも一部は、互いに異なる2つ以上の制御板間空間を通過した蒸着粒子によって形成され、
    前記蒸着源開口が前記第1方向に沿ったスロット形状を有し、前記蒸着源開口の前記第1方向の開口径は前記複数の制御板のピッチより大きいことを特徴する蒸着方法。
  20. 前記蒸着工程において、前記複数の制御板を冷却する請求項1〜19のいずれかに記載の蒸着方法。
  21. 前記蒸着工程において、前記複数の制御板の温度を所定温度に調整する請求項1〜19のいずれかに記載の蒸着方法。
  22. 前記被膜が有機EL素子の発光層である請求項1〜21のいずれかに記載の蒸着方法。
  23. 請求項1〜21のいずれかに記載の蒸着方法を用いて発光層を形成する工程を備える有機EL表示装置の製造方法。
  24. 基板上に所定パターンの被膜を形成する蒸着装置であって、
    前記被膜を形成するための蒸着粒子を放出する蒸着源開口を備えた蒸着源、前記蒸着源開口と前記基板との間に配置された蒸着マスク、及び、前記蒸着源開口と前記蒸着マスクとの間に、前記基板の法線方向に直交する第1方向に沿って配置された複数の制御板を備えた蒸着ユニットと、
    前記基板と前記蒸着マスクとを一定間隔だけ離間させた状態で、前記基板の法線方向及び前記第1方向に直交する第2方向に沿って、前記基板及び前記蒸着ユニットのうちの一方を他方に対して相対的に移動させる移動機構とを備え、
    前記蒸着源開口から放出され前記第1方向に隣り合う制御板間空間を通過した前記蒸着粒子の流れである蒸着粒子流を前記第2方向に沿って見たとき、重なり合う前記蒸着粒子流の数である重なり度が2以上であり且つ前記第1方向において前記重なり度が一定である位置に前記基板の被蒸着面が配置されることを特徴とする蒸着装置。
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