JP5598659B2 - コロナ放電装置およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、コロナ放電装置に関し、詳しくは、放電電極に印加する電圧をより低くし得るコロナ放電装置に関する。
尖った電極(針電極)の周りに不均一な電界が生じることにより起こる持続的な放電を総称してコロナ放電(Corona discharge)という。このコロナ放電は、気体中にイオンを増加させることができるので、集塵機などに応用されている。コロナ放電発生装置に関する技術文献として特許文献1が挙げられる。特許文献2は、コロナ放電を利用して超微粒子を製造する装置に関する。放電を利用した膜形成に関連する技術文献として、特許文献3,4が挙げられる。
特開2007−35310号公報 特表2007−525321号公報 特表2008−519411号公報 特表2008−504442号公報
通常、大気圧条件下で電極に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させるためには、該電極(放電電極)に高電圧を与える必要がある。この電極に印加する直流電圧をより低くすることができれば、コロナ放電の応用可能性がさらに広がり、あるいは従来からコロナ放電が用いられている分野においても使い勝手が向上するので有意義である。本発明の目的は、より低い印加電圧によってもコロナ放電を発生させ得る技術、ひいては該技術を適用したコロナ放電装置を提供することである。
本発明者は、放電電極に高周波電界を印加することにより、該電極からコロナ放電が生じる直流電圧を低下させ得ることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成した。
ここに開示されるコロナ放電装置は、コロナ放電可能な形状の先端を有する放電電極を備える。また、前記放電電極に接続されており、該電極に直流電圧を印加可能に構成された放電電圧印加手段を備える。上記放電装置は、さらに、前記放電電極とは非接続であって、該電極に高周波電界を印加可能に構成された放電補助手段を備える。ここで、前記放電補助手段は、前記放電電極の先端から前方に延びる仮想線を囲むように配置された導電体と、前記導電体に接続された高周波電源とを含む。
かかる構成の装置によると、上記放電電極(典型的には、該電極の少なくとも先端)に高周波電界を印加することにより、上記放電電極に印加する直流電圧(以下、放電電圧ともいう。)をより低くしても、該電極の先端からコロナ放電を生じることが可能となる。したがって、上記コロナ放電装置によると、上記放電補助手段を有しない従来のコロナ放電装置に比べて、上記放電電圧の下限値を低下させることができる。
ここに開示されるコロナ放電装置の一態様では、前記導電体の形状がリング状またはコイル状である。かかる態様によると、上記放電電圧を効果的に低下させることができる。通常は、上記放電電極に対して上記導電体が、上記リングまたはコイルの略中心を上記仮想線が通過するように配置された態様を好ましく採用し得る。この態様には、より均一なコロナ放電が得られやすいという利点がある。
ここに開示されるコロナ放電装置は、前記放電電極の先端に流体(流動性を示す材料)を供給する流体供給手段をさらに備えることができる。かかる構成の装置によると、上記先端から生じるコロナ放電を利用して、上記流体にエネルギーを付与することができる。このことによって、例えば、上記流体またはその構成成分を反応(例えば、架橋反応、重合反応、脱離反応等)させ、あるいは反応しやすい状態(例えば、励起状態または活性化状態)とすることができる。
上記流体供給手段を備えたコロナ放電装置の好ましい一態様では、前記放電電極の内部に、該電極の先端に開口する流体通路が形成されている。そして、前記流体供給手段は、前記流体通路を通じて前記放電電極の先端に流体を供給し得るように構成されている。かかる構成によると、放電電極の先端開口から流出する流体に、上記コロナ放電を利用して、より効率よくエネルギーを付与することができる。
この明細書によると、また、ここに開示されるいずれかのコロナ放電装置を用いて塗膜付き物品を製造する方法が提供される。その方法は、前記放電電極に前記直流電圧および前記高周波電界を印加して、該電極からコロナ放電を生じさせることを含む。また、前記塗膜の形成に用いられる塗膜原料を含有する流体を、前記放電電極の先端に供給することを含み得る。また、前記塗膜原料に前記コロナ放電を作用させる処理(コロナ放電処理)を施すことを含み得る。さらに、前記コロナ放電処理された塗膜原料を、前記放電電極の先端に対向する位置に配置された被コート材(処理対象物。以下、基材ともいう。)上に堆積させることを含み得る。
かかる方法によると、コロナ放電を利用して塗膜原料にエネルギーを付与することにより、該塗膜原料の少なくとも一部を反応(例えば、架橋反応、重合反応、脱離反応等)させ、あるいは反応しやすい状態(例えば、励起状態または活性化状態)とすることができる。このことによって、より効率よく塗膜を形成できる、より高機能の塗膜を形成できる、のうち少なくとも一方の効果が実現され得る。
前記コロナ放電処理は、例えば、前記塗膜原料の硬化を促進するように行うことができる。このことによって、基材上に塗膜原料を堆積させた後に、該塗膜原料を別工程で硬化させる操作を不要とし、または簡略化することができる。
ここに開示される方法の好ましい一態様では、前記放電電極として、該電極の先端に開口する流体通路を内部に有する放電電極を使用する。そして、前記塗膜原料を含む液体を前記流体通路から前記先端に供給し、静電力を付与してミスト化することをさらに包含する。この態様によると、放電電極の先端において、静電力を利用して上記液体をミスト化(エレクトロスプレー)するとともに、そのミストに含まれる塗膜原料にコロナ放電を効率よく作用させることができる。このことによって、より効率よく塗膜を形成できる、より高機能の塗膜を形成できる、のうち少なくとも一方の効果が実現され得る。
この明細書によると、さらに、ここに開示されるいずれかの方法により製造された塗膜付き物品が提供される。例えば、上記塗膜によって基材に各種機能(例えば、撥水性、抗菌性、防汚性、硬度向上等のうち一または二以上の機能)が付与された塗膜付き物品が提供され得る。
一実施形態に係るコロナ放電装置を模式的に示す説明図である。 一変形例に係るコロナ放電装置を模式的に示す説明図である。 図2の一部を拡大して示す平面図である。 放電電極の構造を拡大して示す断面図である。 放電補助手段の他の構成例を示す斜視図である。 放電補助手段のさらに他の構成例を示す斜視図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
ここに開示されるコロナ放電装置の一実施形態につき、図1を参照しつつ説明する。このコロナ放電装置1は、放電電極10と、該電極に直流電圧を印加する放電電圧印加手段30と、高周波電界を印加する放電補助手段50とを備える。また、放電電極10に連結された流体供給手段20を具備してもよい。このコロナ放電装置は、また、少なくとも放電電極10の先端10Aを収容するチャンバ2をさらに備えることができる。
放電電極10は、コロナ放電可能な形状(尖った形状)の先端10Aを有するものであればよく、例えば、先端に向けて細くなる棒状(針状)、細い線状、等の外形のものを用いることができる。特に限定するものではないが、放電電極10の材質は、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、タングステン、タンタル等であり得る。通常、放電電極10の先端径は、例えば0.4mm(注射針ゲージ番号27G)〜1.2mm(注射針ゲージ番号18G)程度が適当である。後述する実験例では、放電電極10として、先端付近が該先端に向けて細くなる棒状であって先端径が0.71mm(注射針ゲージ番号22G)のステンレス鋼製電極を使用した。
放電電極10の内部構造は、中空であってもよく、中実であってもよい。電極10の先端10Aに流体を供給してコロナ放電処理することを目的とする場合(例えば、該先端10Aにおいてエレクトロスプレーおよびコロナ放電処理を行う場合)には、例えば図3に示すように、先端10Aに開口する流体通路12が内部に形成された放電電極10を好ましく採用することができる。好ましい一態様では、この流体通路12に流体供給手段20が連結されている。後述する実験例では、直径0.41μm(注射針ゲージ番号22Gの内径)の円形の断面形状を有する流体通路12が内部に形成された放電電極10を使用した。
放電電極10の先端に供給される流体は、全体として液状またはガス状を呈するものであればよく、特に限定されない。上記「全体として液状またはガス状を呈する流体」の概念には、均一な液体または気体のほか、液体中に固体微粒子を含む液状流体、微細な液滴(ミスト)を含むガス状流体、気体中に固体微粒子を含むガス状流体、等が包含され得る。上記流体の好適例として、従来のエレクトロスプレーデポジションまたはエレクトロスピニングに用いられる各種の流体(典型的には液体)が挙げられる。
放電電圧印加手段30は、直流高電圧を発生可能な直流電源32を備える。直流電源32は、典型的には、放電電極10が正極となる(すなわち、電極10から正極性コロナを生じ得る)ようにして、該電極10に接続されている。放電電圧印加手段30は、例えば、少なくとも3kV以上(典型的には3.5kV〜5kV)程度の直流電圧を放電電極10に印加し得る性能を有することが好ましい。
本実施形態に係るコロナ放電装置1は、放電電極10の先端Aに対向する位置に、アースされた対極(接地電極)70を備えた構成とすることができる。コロナ放電装置1による処理対象物(例えば被コート材)72は、この接地電極70の表面上に保持されてもよく、あるいは上記処理対象物自体を接地電極70として利用してもよい。接地電極70としては、少なくとも先端Aに対向する側の表面が概ね平面状に形成されたもの(典型的には、全体形状が概ね平板状のもの)を好ましく採用することができる。
放電電極10の先端10Aから接地電極70または処理対象物72の表面までの距離(ギャップ)は、例えば5cm〜30cm程度とすることができ、通常は10cm〜20cm程度とすることが適当である。ここに開示されるコロナ放電装置によると、上記放電補助手段を有しない従来の装置に比べて、上記ギャップの設定自由度をより高くすることができる。例えば、放電電極に印加する直流電圧(放電電圧)をより低くすることができるので、上記ギャップを狭くしても放電電極と対極との間に火花放電を生じにくい。このようにギャップを狭くし得ることは、例えば、処理対象物の一部に高精度な処理を施す場合に有利である。また、従来のコロナ放電は、放電電極(針電極)とそれに対向する接地電極との間に印加された高電圧によって発生するのに対し、今回の放電は、高電圧が印加された電極の先端に高周波電界が形成されることによって放電するため、ギャップを広げること等によって、対向する接地電極との間の電圧が従来のコロナ放電が生じる電圧以下となっても放電させることができる。したがって従来に比べてギャップをより広くし得る。このようにギャップを広くし得ることは、例えば、より多様な形状(例えば、表面に凹凸のある形状)の処理対象物にも適用しやすい、処理対象物のより広い範囲を効率よく処理し得る、等の点で有利である。
放電電極10と接地電極70との配置関係は、図1に示すように、放電電極10の先端を前方に延長した仮想線Lが、接地電極70(ひいては処理対象物72)の表面に対して概ね垂直となるように設定されていることが好ましい。このことによって、コロナ放電の偏りを防止または抑制することができる。
放電補助手段50は、放電電極10とは直接接続されていない構成要素であって、上記仮想線Lを囲むように配置された導電体52と、該導電体に接続された高周波電源56とを含む。この高周波電源56を作動させることにより、導電体52の周囲に高周波電界を発生させることができる。図1に示すように、高周波電源56と導電体52との間にマッチングボックス58を介在させてもよい。
導電体52は、その少なくとも一部が上記仮想線Lの周方向に延びる導電経路を形成する形状および配置を有する。好ましい一形態では、単一の導電体52によって、仮想線Lの周囲に連続して0.5周以上(より好ましくは0.7周以上、さらに好ましくは0.9周以上、典型的には概ね1周以上)延びる導電経路が形成されている。かかる形態によると、放電電極10に印加する直流電圧(コロナ放電電圧)を効果的に低下させることができる。図1に示す例では、コイル状の導電体52によって、仮想線Lの周囲を連続して約2周する導電経路が形成されている。このコイル状導電体52は、放電電極10から遠ざかるにつれて半径Rが大きくなる円錐状に巻かれているが、かかる形状に限定されず、例えば、放電電極10から遠ざかるにつれて半径Rが小さくなる円錐状に巻かれていてもよく、半径Rが一定の円筒状に巻かれていてもよい。
変形例として、図2に示すようなリング状の導電体54を備えた放電補助手段50が挙げられる。図3は、図2に示す導電体54を、放電電極10側からみた平面図である。また、導電体の形状は線状に限定されず、例えば、図5に示すような穴開き板状(典型的には穴開き円板状)の導電体154であってもよい。また、図6に示すように、メッシュ状の材料により構成された導電体254(図6に示す例では穴開き円板状のメッシュ材)等であってもよい。
また、図1に示す例では、コイル状導電体52の全体が放電電極10の先端10Aと接地電極70との間に配置されているが、例えば、導電体52の一部が先端10Aよりも図1の上方に配置されていてもよい。換言すれば、放電電極10の先端10Aがコイル状導電体52の内部に入り込んでいてもよい。導電体52のうちの少なくとも一部が先端10Aよりも前方(接地電極70側)に配置されていればよい。さらに、ここに開示されるコロナ放電装置は、典型的には一個の導電体を備えた形態で好ましく実施することができるが、互いに独立した導電経路を形成する複数の導電体を備えた形態でも実施され得る。
好ましい一態様では、リング状またはコイル状の導電体が、そのリングまたはコイルに囲まれた空間を仮想線Lが通過するように配置されている。通常は、上記リングまたはコイルの中心と上記仮想線Lとが概ね一致するように配置することが好ましい。このことによって、コロナ放電の偏り(典型的には、仮想線Lの周方向に対する偏り)を防止または抑制することができる。
仮想線Lから導電体までの距離(リング状またはコイル状の導電体では、その半径)Rは、通常は2cm〜10cm程度とすることが適当であり、例えば3cm〜5cm程度とすることができる。後述する実験例では、図1に示す構成において、先端10Aに最も近い周における半径R(平均値)が4cmであるコイル状導電体52を備えたコロナ放電装置を使用した。このコイル状導電体52は、円錐状に2周巻かれており、2周目(先端10Aから遠い側の周)における半径R(平均値)は10cmである。
放電電極10の先端10Aから導電体までの距離D(コイル状の導電体では、先端10Aに近い最も周における平均値をいうものとする。)は、通常は2cm〜8cm程度とすることが適当であり、例えば3cm〜5cm程度とすることができる。後述する実験例では、図1に示す構成において、上記距離D(平均値)が5cmであるコロナ放電装置を使用した。
高周波電源56としては、大気圧プラズマを発生させ得る周波数(例えば、1kHz〜400MHz程度)のものを好ましく採用することができる。通常は、13.56MHz、27MHzまたは40MHzのRF(Radio Frequency)電源を好適に用いることができ、なかでも13.56MHzが好ましい。後述する実験例では13.56MHzのRF電源を使用した。
コロナ放電装置の使用時における高周波電源のパワーは、放電電極の先端からのコロナ放電を容易化する効果が発揮されるように(例えば、該高周波電源を作動させない場合に比べて、コロナ放電を生じ得る直流電圧の下限値をより低くなるように)、適宜設定することができる。好ましい一態様では、上記高周波電源のパワーを50W〜300W程度とすることができる。この出力範囲は、例えば、大気圧の空気中において、放電電極に3.5kVの直流電圧を印加し、高周波電源として周波数13.56MHzのRF電源を用いる場合に好ましく採用され得る。
ここに開示されるコロナ放電装置の一態様では、上記高周波電源を作動させた状態で、大気圧の空気中において、放電電極に印加する直流電圧が5kV以下(典型的には3.5kV〜5kV)であっても、該電極の先端から安定してコロナ放電を生じさせることができる。好ましい一態様では、かかるコロナ放電を生じ得る直流電圧の下限値を、放電補助手段を作動させない場合に比べて1/2以下(より好ましい態様では1/3以下)とすることができる。なお、この直流電圧を利用して放電電極の先端において液体をミスト化(エレクトロスプレー)する場合には、上記直流電圧を概ね2kV以上(典型的には3kV以上、好ましくは3.5kV以上、例えば3.5kV〜5kV程度)とすることが適当である。
ここに開示される技術は、例えば、大気圧付近の圧力条件下でコロナ放電を生じる態様で好ましく利用され得るが、該技術の利用態様はこれに限定されない。例えば、1×10−2Pa〜1×10Pa(典型的には0.1×10〜5×10Pa)程度の圧力条件下でのコロナ放電に適用することができる。放電雰囲気は、空気中であってもよく、目的に応じたガス雰囲気(不活性ガス、酸化性ガス、還元性ガス、反応性ガス等)であってもよい。ここに開示されるコロナ放電装置の一態様では、該装置が、少なくとも放電電極の先端を収容するチャンバを備える。かかる構成によると、必要に応じてコロナ放電時の圧力条件、雰囲気ガス組成等を容易に調整することができる。
ここに開示されるコロナ放電装置は、処理対象物の表面を改質する(例えば、該表面に極性官能基を導入する)用途、処理対象物の表面の汚れを分解除去する用途、処理対象物の表面に塗膜を形成する用途、放電雰囲気中にイオンを供給する(例えば、該雰囲気中の塵埃をイオン化して回収しやすくする)用途、その他、従来のコロナ放電装置と同様の各種用途に好ましく利用され得る。処理対象物の材質は特に限定されず、各種の樹脂、紙、布、ガラス、セラミックス、金属等であり得る。
好ましい用途の一例として、処理対象物の表面に塗膜を形成して塗膜付き物品を製造する用途(物品の表面に塗膜を形成する方法、または塗膜の製造方法としても把握され得る。)が挙げられる。かかる用途には、例えば、先端10Aに開口する流体通路12が内部に設けられた放電電極10(図3参照)と、その放電電極10に連結された流体供給手段20(図1,2参照)を有するコロナ放電装置1を好ましく使用し得る。上記流体が液体である場合、流体供給手段20は、必要に応じて、該液体を貯留するタンク、該液体を流体通路12に送出するポンプ、その供給速度を検出するフローメータ等を包含し得る。
図1に示すコロナ放電装置1を用いた塗膜付き物品の製造は、例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、大気圧の空気中において、直流電源32から放電電極10に直流電圧を印加しつつ高周波電源56を作動させることにより、電極10の先端10Aからコロナ放電を生じさせる。このコロナ放電を持続しつつ、塗膜原料(典型的には液状)を適当な溶媒に溶解させた液体を、流体供給手段20を用いて流体通路12から電極10の先端10Aに供給する。そして、放電電極10に印加された直流電圧を利用して上記液体をミスト化するとともに、該ミストに放電エネルギーを付与する。このことによって、上記液体から溶媒を揮発させるとともに、上記塗膜原料の少なくとも一部を反応させ、あるいは反応しやすい状態にする。その塗膜原料は、接地電極70上に配置された基材72の表面に堆積して塗膜を形成する。
ここに開示される好ましい一態様では、コロナ放電処理された塗膜原料が基材72の表面に堆積することにより、その堆積した塗膜原料が、別途の硬化処理(例えば、堆積後における放電エネルギーの付与、紫外線の照射、加熱等)を要することなく硬化膜を形成する。すなわち、上記コロナ放電処理によって塗膜原料の硬化を助ける(促進する)ことができる。ただし、かかる態様においても、塗膜原料を堆積させた後、必要に応じてさらなる硬化処理を行うことは特に妨げられない。
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定する意図ではない。
<実験例1>
図1に示す構成のコロナ放電装置1を用いて、高周波電界の印加がコロナ放電開始電圧に及ぼす効果を調べる実験を行った。本実験は、接地電極70上に被処理物72を配置することなく、かつ流体通路12に液体を供給することなく実施した。
すなわち、大気圧の空気中にて、直流電源32から放電電極10に3.5kVの直流電圧を印加したところ、放電電極10の先端10Aにおいてコロナ放電は認められなかった。次いで、上記直流電圧(3.5kV)を印加した状態で、高周波電源56(13.58MHzのRF電源)をオンにし、徐々にパワーを高くした。その結果、高周波電源56のパワーを60W〜70W(1回目の実験では60W、2回目の実験では68W)まで上げた時点で、放電電極10の先端10Aにおいてコロナ放電が開始したことが認められた。換言すれば、13.58MHz、60W〜70Wの高周波電界を印加することにより、3.5kVの放電電圧でコロナ放電を開始できることが確認された。
一方、高周波電源56をオフにしたまま、放電電極10に印加する直流電圧を徐々に高くすることでコロナ放電の開始を試みたところ、少なくとも10kVまではコロナ放電が開始しないことが確認された。すなわち、上記高周波電界の印加により、コロナ放電の開始電圧を1/2以下(約1/3)に低下させることができた。
<実験例2>
図1に示す構成のコロナ放電装置1を使用し、大気圧の空気中にて、接地電極70上に保持された基材72の表面に塗膜を形成した。基材としては、厚さ0.8mmのガラス板(松浪硝子工業製のスライドガラス、品名「白縁磨No.1」)を使用した。放電電極10の先端Aからガラス板(基材72)の表面までの距離Hは23cmとした。塗膜原料としては、ヘキサメチルジシロキサン((CHSiOSi(CH;以下、「HMDSO」と表記することもある。)を使用した。このHMDSOを、平均粒径100nmの銀(Ag)微粒子を0.08〜0.10質量%含む同体積のエタノールで希釈して(すなわち、HMDSOと上記Ag粒子含有エタノールとを1:1の体積比で混合して)、エレクトロスプレーに適した粘度の液体(塗膜原料溶液)を調整した。
(サンプルB1の作製)
放電電極10に3.5kVの直流電圧を印加し、RF電源56のパワー(導電体54に供給する高周波電力)を60Wとして、放電電極10の先端10Aからコロナ放電を生じさせた。上記コロナ放電を継続しつつ、流体供給手段20を用いて、上記塗膜原料溶液を4.2×10−3mL/秒の供給速度で流体通路12に導入した。これにより、コロナ放電中の放電電極10の先端10Aから上記塗膜原料溶液のスプレーが連続的に生じた。上記スプレーを基材72上に15秒間堆積させた。このようにして、エレクトロスプレーされるとともにコロナ放電処理された塗膜原料がガラス板上に堆積したサンプルB1(塗膜付きガラス板)を得た。このサンプルB1の表面を指で押さえたところ、塗膜原料が指に付着したり、塗膜に指で触った跡がついたりすることはなく、硬い塗膜となっていることが確認された。この塗膜の厚みをAFM法により測定したところ、0.1μmであった。
(サンプルB2の作製)
放電電極10に3.5kVの直流電圧を印加し、RF電源56をオフにしたまま(したがって、先端10Aからコロナ放電が生じていない状態で)、上記塗膜原料溶液を4.2×10−3mL/秒の供給速度で流体通路12に導入した。この塗膜原料溶液は、放電電極10の先端10Aにおいてスプレーとなり、基材72上に堆積した。スプレー開始から15秒後、上記塗膜原料溶液の供給を止めた。このようにして、エレクトロスプレーされた(ただしコロナ放電処理されていない)塗膜原料がガラス板上に堆積したサンプルB2(塗膜付きガラス板)を得た。このサンプルB2の表面を指で押さえたところ、上記塗膜は粘度の高い液状(未硬化または低硬化)であることが確認された。
サンプルB1およびサンプルB2の表面(塗膜原料を堆積させた面)、および未処理のガラス板の表面について、25℃の雰囲気下で蒸留水の静的接触角を液滴法(液滴直径約2mm)により測定した。この接触角測定には、協和界面科学株式会社製の接触角測定装置(型式「CA−X150」)を使用した。その結果、サンプルB1の接触角が64〜65度であったのに対し、サンプルB2および未処理ガラス板では液滴が平面状に広がってしまい、接触角を測定することができなかった。
なお、放電電極10の先端Aからガラス板の表面までの距離Hを15cmとした点以外はサンプルB1と同様にして、エレクトロスプレーされるとともにコロナ放電処理された塗膜原料がガラス板上に堆積した塗膜を有するサンプルB3を作製した。この塗膜は、サンプルB1と同様に硬化していた。サンプルB1およびB3の塗膜はいずれも高い透明性を有していた。また、分光測色計を用いた評価により、これらの塗膜がほぼ無色であることが確認された。
<実験例3>
ガラス板に代えて紙(上質紙)を基材に用いた点、および放電電極の先端から上記紙の表面までの距離Hを15cmとした点以外はサンプルB1の作製と同様にし、ただしスプレー時間を5秒、10秒および20秒の3水準として、エレクトロスプレーされるとともにコロナ放電処理された塗膜原料が紙の表面上に堆積した三種類のサンプル(塗膜付き紙)を得た。これらのサンプルを、スプレー時間の短いものから順に、サンプルC1(スプレー時間5秒)、C2(10秒)、C3(20秒)と呼ぶ。これらサンプルC1〜3の表面を指で押さえたところ、いずれも、サンプルB1と同様に硬い塗膜が形成されていることが確認された。また、これらの塗膜に水滴を付着させたところ、いずれも良好な撥水性を示すことが確認された。
上記サンプルC1〜C3に係る塗膜(Ag微粒子を有する撥水膜)の抗菌効果を以下のようにして評価した。すなわち、試験片を浸漬してある培養液(LB(Luria-Bertani)培地)に約3,000セルの大腸菌を添加し,37℃で24時間の培養を行った。培養後、試験片を取り出して100mLのリン酸緩衝生理食塩水にて第1のリンスを実施し、弱く付着している、もしくは積層している大腸菌を取り除いた。この第1のリンスを終えた試験片に対し、10mLのリン酸緩衝生理食塩水によって、さらに第2のリンスを施し、第1リンスでは取り除けなかった(試験片により強固に付着している)大腸菌を取り除いた。第2リンスによって試験片から剥離した大腸菌の菌密度をカウントし、相対比較をすることによって、各試験片上での大腸菌密度の増倍度を比較した。
Figure 0005598659
表1に示されるように、サンプルC1〜C3はいずれも未処理紙に比べて明らかな抗菌性を示した。スプレー時間が長くなるにつれてより高い抗菌効果が得られた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 コロナ放電装置
2 チャンバ
10 放電電極
10A 先端
12 流体通路
20 流体供給手段
30 放電電圧印加手段
32 直流電源
50 放電補助手段
52 コイル状導電体(導電体)
54 リング状導電体(導電体)
56 高周波電源
58 マッチングボックス

Claims (6)

  1. コロナ放電可能な形状の先端を有する放電電極と、
    前記放電電極に接続されており、該電極に直流電圧を印加可能に構成された放電電圧印加手段と、
    前記放電電極とは非接続であって、該電極に高周波電界を印加可能に構成された放電補助手段と、
    を備えたコロナ放電装置であって、
    前記放電補助手段は、前記放電電極の先端から前方に延びる仮想線を囲むように配置された導電体と、前記導電体に接続された高周波電源とを含
    前記放電電極の先端に流体を供給する流体供給手段をさらに備え、
    前記放電電極の内部には該電極の先端に開口する流体通路が形成されており、前記流体供給手段は、前記流体通路を通じて前記放電電極の先端に流体を供給可能に構成されている、コロナ放電装置。
  2. 前記導電体は、リング状またはコイル状であり、そのリングまたはコイルに囲まれた空間を前記仮想線が通過するように配置されている、請求項1に記載の装置。
  3. 請求項1または2に記載の装置を用いた塗膜付き物品製造方法であって、
    前記放電電極に前記直流電圧および前記高周波電界を印加して、該電極からコロナ放電を生じさせること;
    前記塗膜の形成に用いられる塗膜原料を含有する流体を、前記放電電極の先端に供給すること;
    前記塗膜原料に前記コロナ放電を作用させるコロナ放電処理を施すこと;および、
    そのコロナ放電処理された塗膜原料を、前記放電電極の先端に対向する位置に配置された被コート材上に堆積させること;
    を包含する、塗膜付き物品製造方法。
  4. 前記コロナ放電処理は、前記塗膜原料の硬化を促進するように行われる、請求項に記載の方法。
  5. 記塗膜原料を含有する液体を前記流体通路から前記先端に供給し、静電力を付与してミスト化することをさらに包含する、請求項3または4に記載の方法。
  6. 請求項3から5のいずれか一項に記載の方法により製造された、塗膜付き物品。
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