JP5591966B2 - 酸化物超電導体用組成物、及び酸化物超電導線材の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体用組成物、及び酸化物超電導線材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系の酸化物超電導体用組成物、及び酸化物超電導線材の製造方法に関する。
酸化物超電導体は、その臨界温度(Tc)が液体窒素温度を超えることから超電導マグネット、超電導ケーブル及び電力機器等への応用が期待されており、種々の研究が鋭意進められている。
これら超電導マグネット、超電導ケーブル及び電力機器等に酸化物超電導体を適用するためには、臨界電流密度Jcが高く、かつ高い臨界電流値Icを有する長尺の線材を製造する必要がある。一方、長尺テープ状の線材としての酸化物超電導体を得るためには、強度及び可撓性の観点からテープ状の金属基板上に酸化物超電導体を形成する必要がある。
また、酸化物超電導体はその結晶方位により超電導特性が変化することから、面内配向性を向上させることが必要である。すなわち、結晶化の際、超電導体の結晶の方位が揃っていなければ、超電導電流はスムースに流れず、臨界電流密度Jcや臨界電流値Ic(Ic=Jc×膜厚×幅)は低くなる。このため、結晶は、下地となる中間層の配向性を受け継ぐエピタキシャル成長をさせる必要があり、基板から膜表面へ向けて配向性に優れた結晶成長を進める必要がある。
よって、臨界電流密度Jcを向上させるためには、基板表面に対して垂直方向(膜厚方向)に酸化物超電導体結晶のc軸を配向させ、かつ、a軸(又はb軸)を基板表面に対して平行方向に面内配向させる。
テープ状の金属基板(以下、「基板」という)上に酸化物超電導体薄膜を製造する方法の1つに、MOD法(有機酸塩塗布熱分解法:Metal Organic Deposition process)がある。この方法は、金属有機化合物溶液を基板に塗布した後、金属有機化合物を例えば500℃付近で熱処理(仮焼成熱処理)して熱分解させる。そして、得られた熱分解物(酸化物超電導前駆体)をさらに高温(例えば800℃付近)で熱処理(本焼成熱処理)することにより結晶化して、酸化物超電導体を製造する。この方法は、主に真空中で製造される気相法(蒸着法、スパッタ法、パルスレーザ蒸着法等)に比較して製造設備が簡単で済み、また大面積や複雑な形状への対応が容易である等の特徴を有する。
このMOD法として、原料としてフッ素を含む有機酸塩を用いるTFA−MOD法(Metal Organic Deposition using Trifluoro Acetates)が知られている。
このTFA−MOD法では、塗布膜の仮焼成熱処理後に得られるフッ素を含むアモルファス前駆体と水蒸気との反応により超電導体を作製するが、熱処理中の水蒸気分圧によりフッ化物の分解速度を制御できる。このことから超電導体の結晶成長速度を制御し、その結果、優れた面内配向性を有する超電導膜を作製できる。また、同法では比較的低温で基板からRE系(123)超電導体をエピタキシャル成長させることかできる。
上述のように、MOD法によりテープ状の酸化物超電導体を製造する場合、実用化のためには臨界電流値Icを向上させるための厚膜化が必要不可欠である。TFA塩を出発原料とするMOD法によりこの厚膜化を達成するためには、基板に対する原料溶液の濡れ性を向上させることが考えられる。1回当たりの塗布膜厚が厚くなると、仮焼成熱処理時において分解生成物であるHF及びCOガスの発生量が増加するため塗布膜が飛散する現象が生じ、結果として高特性を有するテープ状酸化物超電導厚膜を製造することは難しい。
このため通常は、1回当たりの塗布膜厚を抑制しつつ、原料の塗布及び仮焼成熱処理の工程を繰返して行うことで酸化物超電導前駆体を厚膜化することにより厚膜の酸化物超電導体を作製している。しかしながら、上記の従来技術による仮焼熱処理法では、金属有機酸塩の分解速度に影響する仮焼熱処理中の昇温速度が速いためにTFA塩を始めとする金属有機酸塩の分解が不十分であり、仮焼により得られる酸化物超電導前駆体膜中に有機化合物が残存する傾向がある。そのため、その後の結晶化熱処理中の昇温時に、残存していた有機化合物が急激に分解して膜中にクラックやポアが発生する。
この傾向は、塗布と仮焼熱処理を繰り返して多層構造の酸化物超電導前駆体膜を形成して厚膜化する場合に著しくなる。その結果、得られた酸化物超電導前駆体厚膜を結晶化し超電導体膜を得る際にエピタキシャル成長が困難となり、面内配向性に優れた超電導体厚膜を得ることが難しく、臨界電流密度Jc特性が頭打ちとなる。更に、クラックの発生により臨界電流密度Jc特性は著しく低下する。
この問題に対して、例えば、特許文献1では、RE成分として、炭素原子数4〜8のケト酸の塩を使用することで、酸化物超電導前駆体膜中におけるフッ化物等の有機鎖の残存を低減する方法が開示されている。これより、REBaCuO系酸化物超電導体膜を高速で均一に成膜している。
特開2010−192142号公報
ところで、MOD法において、金属有機化合物溶液を基板に塗布する方法として、酸化物中間層が形成されたテープ状の基板を、有機酸塩を有機溶媒に溶解させた金属有機化合物溶液に浸し、この基板を金属有機化合物溶液から引き上げる、いわゆるディップコート法が知られている。
酸化物超電導体の厚膜化を図るため、ディップコートの際に基板に付着する金属有機化合物溶液の膜厚をより厚くしたいという要望がある。すなわち、特許文献1に示すRE成分として炭素原子数4〜8のケト酸の塩が含まれる金属有機化合物溶液よりも、濡れ性の高い酸化物超電導体用の組成物を用いて、更に、高速で厚膜の酸化物超電導体を有する酸化物超電導線材を製造したいという要望がある。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、酸化物超電導体の製造において、厚膜化、高速化及び低コスト化を図ることができる酸化物超電導体用組成物、及び酸化物超電導線材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の酸化物超電導体用組成物の一つの態様は、REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系酸化物超電導体を形成するための組成物であって、RE成分としてケトン基を含まない炭素原子数3〜8のカルボン酸のRE塩と、Ba成分としてトリフルオロ酢酸バリウムと、Cu成分として炭素原子数6〜16の分岐飽和脂肪族カルボン酸の銅塩及び炭素原子数6〜16の脂環族カルボン酸の銅塩からなる群から選ばれる1種類以上の銅塩と、これらの金属塩成分を溶解させる有機溶剤と、を必須成分として含有する構成を採る。
本発明の酸化物超電導線材の製造方法の一つの態様は、上記構成の酸化物超電導体用組成物の溶液が収容された容器から、テープ状の基材を引き上げることにより、前記基材の表面に前記溶液を塗布する塗布工程と、塗布した前記溶液に仮焼焼成処理を施して、前記基材の表面に酸化物超電導体の前駆体を形成する仮焼成熱処理工程と、前記前駆体に本焼成熱処理を行って結晶化させることで、前記基材の表面に、REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系の酸化物超電導体を形成する本焼成熱処理工程とを有するようにした。
本発明によれば、酸化物超電導体の製造において、厚膜化、高速化及び低コスト化を実現することができる。
MOD法によるREBaCuO系超電導層を備えるテープ状酸化物超電導線材の製造方法の概略を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るREBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系酸化物超電導体用組成物は、REとBaとCuの複合酸化物からなる超電導体となる組成物である。例えば、REBaCu系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Dy、Gd及びHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2及びz=6.2〜7である。)の組成を有する超電導体が挙げられる。REがYであれば、超電導体の組成制御がしやすい。
本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物のRE成分は、ケトン基を含まない炭素原子数3〜8のカルボン酸のRE塩の1種類以上からなる。ここでは、RE塩は、プロピオン酸のRE塩であることが望ましく、イットリウム塩にフッ素原子を含まないプロピオン酸イットリウムであることが望ましい。
RE塩を誘導するプロピオン酸の炭素原子数が3より小さい場合、充分な溶解性を得ることができず、均一な酸化物超電導厚膜を得られない。また、炭素原子数が8より大きい場合、仮焼成熱処理時におけるCOガス発生量が増加するため塗布膜が飛散しやすくなり、高特性な酸化物超電導厚膜を得ることが困難となる。
本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物のBa成分は、(CFCOO)Ba・nHO(nは0又はとり得る水和数である)で表されるトリフルオロ酢酸バリウムであり、通常無水物か1水和物で得られる。トリフルオロ酢酸塩を酸化物超電導体の前駆体化合物として使用することは従来から知られているが、その利点は、酸化物超電導体への変換温度が高いバリウムの炭酸塩を経由させないことにある。この効果が最も効率よく得られるのは、Ba成分をトリフルオロ酢酸塩とした場合である。Ba成分ではなく、RE成分にトリフルオロ酢酸塩を使用すると本発明の効果が得られず、Cu成分にトリフルオロ酢酸塩を使用すると後述する溶解性の向上効果が得られない。
本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物に含有されるCu成分は、炭素原子数6〜16の分岐飽和脂肪族カルボン酸の銅塩、及び炭素原子数6〜16の脂環族カルボン酸の銅塩からなる群から選ばれる1種類以上からなる。該銅塩は、L Cu・pHO(Lは、炭素原子数6〜16の分岐飽和脂肪族カルボン酸残基又は炭素原子数6〜16の脂環族カルボン酸残基であり、pは0又はとり得る水和数である)で表され、通常無水和物又は1〜2水和物で得られる。該銅塩を誘導する炭素原子数6〜16の分岐飽和脂肪族カルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸等が挙げられ、該銅塩を誘導する炭素原子数6〜16の脂環族カルボン酸の銅塩を誘導するものとしては、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、ナフテン酸等が挙げられる。これらのカルボン酸のうち、ナフテン酸等の天然物由来のものは、本発明で規定された炭素原子数以外のものや分岐又は脂環基を有さないものを成分として含有する場合があるが、本発明においては、これらの成分の有無を問わずに、通常は、市販されているものをそのまま使用することができる。
ここでは、酸化物超電導体用組成物は、ケトン基を含まない炭素原子数3〜8のカルボン酸のRE塩としてY−プロピオン酸、Ba−TFA、Cu−2−エチルヘキサン酸を含有する。
上記の銅塩としては、ネオデカン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、イソノナン酸銅等の合成カルボン酸の銅塩が、性能や品質的に安定したものとなるので好ましい。また、ネオデカン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、イソノナン酸銅、ナフテン酸銅は、それ自身の有機溶剤への溶解性が良好であり、さらに、本発明に係るRE塩及びバリウム塩の溶解性を向上させる効果もあるので好ましい。
本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物において、前記RE成分、Ba成分及びCu成分の含有量は、合計で10〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜50重量%であり、モル濃度(3成分の合計)としては、0.5〜2.0モル/Lが好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.5モル/Lである。
また、本発明の酸化物超電導体用組成物において、上記RE成分、Ba成分及びCu成分は、REとBaとCuのモル比は、Y:Ba:Cu=1:a:3としたときにa<2の範囲内のBaモル比となるように含有させる。この場合、高い臨界電流密度Jc及び臨界電流値Icを得るために、原料溶液中のBaモル比は1.0≦a≦1.8の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、原料溶液中のBaモル比は1.3≦a≦1.7の範囲である。
これにより、Baの偏析を抑制することができ、その結果、結晶粒界でのBaベースの不純物の析出が抑制される。よって、クラックの発生が抑制されるとともに結晶粒間の電気的結合性が向上し、超電導膜をMOD法で形成して、更に均一で且つ、厚膜の超電導特性に優れたテープ状酸化物超電導体を有する酸化物超電導線材を容易に製造できる。
また、本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物における有機溶剤は、上述のRE成分、Ba成分及びCu成分のうち少なくともRE成分を溶解させるものであれば、特に制限されない。具体的には、有機溶剤は、所望の塗布性能、溶解性、粘度、溶解安定性等の性能を得るために任意に選択され、2種類以上混合して用いてもよい。
この有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系剤、その他の溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2−ヘキサノール、ヘプタノール、2−ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、3(N,N−ジメチルアミノ)プロパノール等が挙げられる。
ジオール系溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ−ラクトン、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート、δ−ラクトン等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン、ソルベントナフサ、テレピン油、D−リモネン、ピネン、ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株)、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリン等が挙げられる。
シアノ基を有する炭化水素溶剤としては、アセトニトリル、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等が挙げられる。
ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。
上記の有機溶剤としては、沸点が80℃以上であるものが均一な塗布性を与えるので好ましい。また、アルコール系溶剤は、様々な基材に対する濡れ性が良好なので好ましい。特に1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2−ヘキサノール、ヘプタノール、2−ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2−オクタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル等の炭素数4〜8のアルコール系溶剤が好適である。
酸化物超電導体用組成物における有機溶剤の含有量は、25〜80重量%である。塗布性、金属成分の濃度、溶解安定性を考慮すると40〜70重量%が好ましい。
本発明の酸化物超電導体用組成物は、さらに、有機溶剤に、プロピオン酸塩を溶解するためにアミノ基を有する可溶化剤を含有する。アミノ基としては、例えば、テトラメチル尿素、n-オクチルアミン、プロピルアミン等が挙げられる。特に、高沸点溶剤である理由から、テトラメチル尿素が好ましい。
また、有機溶液には、レベリング剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤、分散剤等の任意成分を含有してもよい。尚、これらの任意成分の含有量は、本発明の酸化物超電導体用組成物中において、10重量%以下とするのが好ましい。上記の任意成分の具体例としては、レベリング剤として機能する有機酸が挙げられる。該有機酸としては、水酸基を有してもよく、分岐を有してもよく、不飽和結合を有してもよい炭素原子数6〜30の有機酸が好適である。具体例としては、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、ナフテン酸、ロジン酸、アビエチン酸等が挙げられ、アビエチン酸が好ましい。
なお、本発明の酸化物超電導体体用組成物の粘度は、2〜150[mPa・s]の範囲であることが好ましく、ここでは、20[mPa・s]としている。
<本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物が用いられるMOD法の概要>
図1は、MOD法によるREBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系超電導層を備えるテープ状酸化物超電導線材(以下、「YBCO超電導線材」ともいう)の製造方法の概略を示したものである。
まず、テープ状のNi合金基板上に、テンプレートとしてイオンビームスパッタリング法によりGdZr中間層とY中間層を順次成膜し、さらに、この上にIBAD法によりMgO中間層を成膜する。その後、スパッタリング法によりLaMnO中間層と、PLD法又はスパッタリング法によりCeO中間層を順次成膜して複合基板である基材を形成する。
そして、この基材上に、塗布工程(a)で、本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物、つまり、Y―プロピオン酸塩、Ba―TFA塩(トリフルオロ酢酸塩)およびCu―エチルヘキサン塩を有機溶媒中にY:Ba:Cu=1:1.5:3の比率で溶解した混合溶液(超電導原料溶液)30をディップコート法により塗布する。
ディップコート法は、基板上に酸化物中間層が形成されたテープ状の基材を、混合溶液30が収容された容器に浸(浸漬)した後、混合溶液30から引き上げることで、基材の表面に混合溶液を塗布する方法である。ディップコート法では、引き上げた際に、混合溶液の表面張力により膜厚が調整されて混合溶液が塗布される、つまり、塗布膜が形成される。ディップコート法では、基材の引き上げ速度と溶液濃度とで膜厚を制御できる。基材の引き上げ速度と、引き上げ時に基材に塗布される膜厚とは、引き上げ速度が低速な程、薄く、引き上げ速度が高速な程、厚くなるという関係が成り立つ。ここでは、ディップコート法における基材の移動速度を5〜30[m/h]の範囲とすることが望ましい。
こうして、混合溶液30を塗布した後、仮焼成熱処理工程(b)で仮焼成する。仮焼成熱処理工程(b)では、例えば、円柱体の周面に、混合溶液30(図1(a)参照)が塗布された線材49が螺旋状に巻回する。このように線材49が巻回された円柱体を焼成装置内で回転させつつ、所定の水蒸気分圧、酸素分圧の雰囲気中で所定時間の間、ヒータ等により加熱する。この塗布工程(a)および仮焼成熱処理工程(b)を所定回数繰り返して、基材の中間層上に所望の膜厚を有する超電導前駆体としての膜体を形成する。なお、図1では、基材上に超電導前駆体としての膜体を形成している最中(混合溶液30塗布前の状態あるいは仮焼成熱処理後の塗布膜が形成された状態)の線材を線材49で示している。なお、仮焼成熱処理工程(b)では、線材は、例えば焼成装置内で、水蒸気分圧3〜76Torr、酸素分圧300〜760Torrの雰囲気中で400〜500℃の温度範囲で、仮焼熱処理されることが好ましい。また、仮焼成熱処理における昇温速度を30[℃/min]以上にすることができる。なお、仮焼成熱処理時間は、1〜10時間、更に好ましくは2〜7時間であることが望ましい。
この後、基材の中間層上に超電導前駆体としての膜体が形成されたテープ状の線材50に対して、本焼成熱処理工程(c)では、超電導前駆体の膜体の結晶化熱処理、即ち、YBCO超電導体生成のための熱処理を施す。なお、本焼成熱処理工程(c)では、例えば、円柱体の周面に線材を螺旋状に巻回し、この円柱体を焼成装置内で回転させつつ、所定の水蒸気分圧、酸素分圧の雰囲気中で、所定時間の間、ヒータ等により加熱する。本焼成熱処理工程(c)では、焼成装置内で、水蒸気分圧30〜600Torr、酸素分圧0.05〜1Torrの雰囲気中で700〜800℃の温度範囲で本焼成熱処理されることが好ましい。本焼熱処理時間は、水蒸気ガスを導入しながら、5〜30時間、より好ましくは、10時間〜15時間であることが好ましい。この本焼成熱処理では、30[℃/min]の昇温温度で前駆体を加熱する。
次いで、安定化層形成工程(d)で、YBCO超電導体上に、スパッタ法でAg安定化層を施した後、後処理工程(e)で、後熱処理を施してテープ状のYBCO超電導線材(酸化物超電導線材)60を製造する。
ここで、塗布工程(a)及び仮焼成熱処理工程(b)を繰り返す回数は、1回以上、l0回以下である。
塗布工程(a)では、混合溶液として、本実施の形態に係るREBaCu(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系酸化物超電導体用の組成物が、基材(図では線材49として示す)に塗布される。この酸化物超電導体用組成物は、RE成分としてケトン基を含まない炭素原子数3〜8のカルボン酸のRE塩を必須成分として含有している。
これにより、塗布工程(a)では、ディップコート法で基材に混合溶液を塗布する場合において、ケトン基を含むRE塩を含有する混合溶液を塗布する場合と比較して、濡れ性の向上を図ることができる。例えば、本実施の形態に係る酸化物超電導体用組成物である混合溶液におけるRE成分をプロピオン酸塩(以下、「プロピオン液」と称す)とする。このプロピオン液を含有する混合溶液30を用いた場合では、ケトン基を含む混合溶液としての2−エチルヘキサン塩を含有する従来の混合溶液(以下、「エチルヘキサン液」と称す)を用いた場合と比較して、乾燥し難い。言い換えれば、RE成分としてエチルヘキサン液でディップコートした場合、本実施の形態のプロピオン液(酸化物超電導体用組成物)でディップコートした場合と比較して、蒸発しやすい(飛びやすい)。
このため、エチルヘキサン液で塗布した後、基材を引き上げると、混合溶液の表面張力、極性等の要因とともに基材上の塗布膜は軸方向で見て両端で膨らんだ形状で乾燥する。
これに対し、プロピオン液でディップコートする本実施の形態では、アミノ基を有する可溶化剤を含有するため、蒸発しにくい(飛びにくい)。このため、プロピオン液を塗布して引き上げた基材上の塗布膜は、軸方向で見て両端部及び中央部共に均一な膜体として塗布された状態で乾燥する。
これにより、エチルヘキサン液によるディップコートと比較して、本実施の形態のプロピオン液によるディップコートでは、一回に塗布される膜厚が厚くなる。例えば、一回で塗布される膜厚が最厚となるように最適化した溶液濃度及び引き上げ速度で、エチルヘキサン液でディップコートを行った場合、一回で塗布される膜厚(塗布膜厚)は0.11[μm/coat]であった。これに対し、一回で塗布される膜厚が最も厚くなるように最適化した溶液濃度及び引き上げ速度で、本実施の形態のプロピオン液(混合溶液30)でディップコートを行った場合、一回での塗布膜厚は、0.3[μm/coat]以上となった。このようにエチルヘキサン液で行った場合よりも超電導前駆体となる塗布膜を厚膜で形成できる。
また、RE成分として、プロピオン酸(C)塩を必須成分とする酸化物超電導体用組成物としての混合溶液30は、レブリン酸(C)よりもC量を低減できる。これにより、炭酸ガスの発生を軽減されて、クラック発生を減少して、より酸化物超電導体の厚膜化を図ることができる。
なお、Ni合金基板は2軸配向性を有するものでも配向性の無い金属基板の上に2軸配向性を有する中間層を成膜したものでもよい。また、中間層は、1層あるいは複数層形成される。塗布方法としては、上記のディップコート法以外にインクジェット法、スプレー法などを用いることも可能であるが、基本的には、連続して混合溶液を複合基板上に塗布できるプロセスであればこの例によって制約されない。1回に塗布する膜厚は、0.01μm〜2.0μm、好ましくは0.1μm〜1.0μmである。
このように形成される酸化物超電導体は、線材、デバイス、或いは、電力ケーブル、変圧器、限流器等の電力機器等に用いられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、本実施の形態の酸化物超電導体用組成物を用いて、テープ状の基材上に、REBaCu系の酸化物超電導体(YBCO超電導体)を図1に示すMOD法により形成した。この実施例1の基材は、基板としてのハステロイ(登録商標)と、このハステロイ(登録商標)上に、順に、GZO、MgO、LMO、CeOを積層することで形成された中間層とを備える。ディップコート法で用いられる混合溶液30(図1参照)は、フッ素原子を含まないY−プロピオン酸、Ba−TFA、Cu−2−エチルヘキサン酸と、これらY−プロピオン酸、Ba−TFA、Cu−2−エチルヘキサン酸の成分を溶かす有機溶剤とを含有する。加えて有機溶剤には、プロピオン酸を溶かすアミノ基を有する可溶化剤(ここでは、テトラメチル尿素)が含まれる。ディップコート法では、超電導体の臨界1回塗布膜厚は、1.2[μm/coat](塗布速度5[m/h])であり、1回の塗布膜厚は、0.49[μm/coat]であった。これを所望の膜厚(ここでは、2.5[μm]を超える膜厚)になるまで複数回繰り返した。
<実施例2>
MOD法で実施例1と同様にYBCO超電導体を形成する際に、実施例1と比較して、塗布工程において、塗布速度を2倍の10[m/h]として、基材に混合溶液30(図1参照)をディップコートして、YBCO超電導体を形成した。実施例2では、一回の塗布膜厚は、0.77[μm/coat]であった。これを所望の膜厚(ここでは、2.0[μm]を超える膜厚)になるまで複数回繰り返した。
<実施例3>
実施例1で用いた混合溶液の有機溶液において、アミノ基を有する可溶化剤を含まない構成の混合溶液を、ディップコート法で、実施例1の基材と同じ基材に塗布し、塗布してなる塗布膜に対して、仮焼成熱処理、本焼成熱処理を施して、酸化物超電導線材を形成した。塗布速度は、5[m/h]とし、その他、塗布、仮焼成熱処理及び本焼成熱処理における条件は、実施例と同じ条件で行った。
<参照例1>
参考例として、TFA−MOD原料溶液としてY−TFA、Ba−TFA、Cu−2−エチルヘキサン酸を含有する混合溶液を用いて、実施例1と同様に、テープ状の基材に、MOD法でYBCO超電導体を形成した。塗布速度5[m/h])であり、一回の塗布膜厚は、0.11(約0.1)[μm/coat]であり、塗布工程及び仮焼成工程を繰り返して所望の膜厚(ここでは20回繰り返して、膜厚2[μm]とした)にした。その他、塗布、仮焼成熱処理及び本焼成熱処理における条件は、実施例と同じ条件で行った。
これらの測定結果を表1に示す。
Figure 0005591966
表1から、実施例1〜3は、一回のディップコートで基材に塗布する混合溶液の膜厚は、参照例1と比較して、より厚いものとなる。実施例1では、約4倍も厚い膜厚が形成され、実施例2では、参照例1の一回塗布膜厚よりも、約7倍も厚い膜厚が形成される。さらに実施例3では、参照例1の一回塗布膜厚よりも、約4倍も厚い膜厚が形成された。
実施例1では、酸化物超電導線材におけるYBCO超電導体の膜厚を、所望の膜厚にするために、塗布工程及び仮焼成熱処理工程を6回繰り返して、塗布膜を積層した。参照例1を用いて、実施例1と同様の膜厚にするためには、MOD法における塗布工程及び仮焼成熱処理工程を29回繰り返す必要がある。よって、実施例1は、酸化物超電導体を有する酸化物超電導線材を形成する際に、参照例1と比較して、厚膜化、高速化及び製造の低コスト化を図っていることがわかった。また、実施例1の臨界電流値Icは、791[A/cm−w]、臨界電流密度Jcは2.7[MA/cm]となり、優れた特性を有するものとなった。なお、超電導特性を示す臨界電流値Ic、臨界電流密度Jc(電圧基準1μV/cm)は、直流4端子法により測定した。
さらに、実施例2のように、実施例1におけるディップコート法での混合溶液30(図1参照)の塗布速度を5→10[m/h]とすると、塗布工程及び仮焼成熱処理工程の繰り返し回数を更に軽減できる。これにより、実施例2は、酸化物超電導体を有する酸化物超電導線材を形成する際に、実施例1よりもさらなる一層の厚膜化、高速化及び製造の低コスト化が達成される。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
本発明に係る酸化物超電導体用組成物、及び酸化物超電導線材の製造方法は、厚膜化、製造の高速化及び低コスト化を図ることができる効果を有し、MOD法で酸化物超電導線材を製造する際に有用である。
30 混合溶液
49、50 線材
60 YBCO超電導線材

Claims (6)

  1. REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系酸化物超電導体を形成するための組成物であって、
    RE成分としてケトン基を含まない炭素原子数3〜8のカルボン酸のRE塩と、
    Ba成分としてトリフルオロ酢酸バリウムと、
    Cu成分として炭素原子数6〜16の分岐飽和脂肪族カルボン酸の銅塩及び炭素原子数6〜16の脂環族カルボン酸の銅塩からなる群から選ばれる1種類以上の銅塩と、
    これらの金属塩成分を溶解させる有機溶剤と、
    を必須成分として含有する、
    酸化物超電導体用組成物。
  2. 前記RE成分がイットリウム塩からなる、
    請求項1記載の酸化物超電導体用組成物。
  3. 前記RE成分がフッ素原子を含まないプロピオン酸塩からなる、
    請求項1又は2に記載の酸化物超電導体用組成物。
  4. 前記有機溶剤は、アミノ基を有する可溶化剤を含む、
    請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物超電導体用組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の酸化物超電導体用組成物の溶液が収容された容器から、テープ状の基材を引き上げることにより、前記基材の表面に前記溶液を塗布する塗布工程と、
    塗布した前記溶液に仮焼焼成処理を施して、前記基材の表面に酸化物超電導体の前駆体を形成する仮焼成熱処理工程と、
    前記前駆体に本焼成熱処理を行って結晶化させることで、前記基材の表面に、REBaCuO(REは、Y、Nd、Sm、Gd、Dy、Eu、Er、Yb、Pr及びHoからなる群から選択された少なくとも1種以上の元素)系の酸化物超電導体を形成する本焼成熱処理工程と、
    を有する酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 前記塗布工程と前記仮焼成熱処理工程とを1回以上10回以下繰り返して、前記前駆体を形成する、
    請求項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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