JP5588318B2 - 油性型プランジャー潤滑剤組成物 - Google Patents
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Description
潤滑剤組成物としては、水系の黒鉛含有組成物(例えば、特許文献1等)、O/W型あるいはW/O型の無黒鉛エマルション組成物(例えば、特許文献2等)、鉱油、油脂及び合成油を含有する油剤組成物、これに、更に黒鉛を分散させた油剤組成物等が広く用いられている。
更に、上記の油剤組成物の場合、溶湯をキャビティに供給した際に、引火することがあった。供給した潤滑剤が引火に費やされると、十分な潤滑剤が摺動面に介在しないこととなり、鋳物製品の生産性の低下につながる。
1.鉱油、カルシウムスルフォネート、ワックス、シリコーン及び芳香族リン酸エステルを含有することを特徴とする油性型プランジャー潤滑剤組成物。
2.140℃における溶融粘度が300〜11,000mPa・sであるワックスを含有する上記1に記載の油性型プランジャー潤滑剤組成物。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、オレフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。
酸化ワックスとしては、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレン等が挙げられる。
また、天然ワックスとしては、蜜ろう、カルナバワックス、モンタンワックス等が挙げられる。
本発明においては、上記溶融粘度の異なる複数のワックスを併用することができる。その例としては、(1)溶融粘度が3,000〜11,000mPa・sの範囲にある少なくとも1種のワックスと、溶融粘度が300mPa・s以上3,000mPa・s未満の範囲にある少なくとも1種のワックスと、を組み合わせる態様、(2)溶融粘度が3,000〜6,500mPa・sの範囲にある少なくとも1種のワックスと、溶融粘度が6,500mPa・sを超えて11,000mPa・s以下の範囲にある少なくとも1種のワックスと、を組み合わせる態様、等が挙げられる。
上記態様(1)の場合、例えば、溶融粘度が3,500〜6,000mPa・sのワックス(W1a)と、溶融粘度が300〜2,500mPa・sのワックス(W1b)とを併用することができる。ワックス(W1a)及び(W1b)の質量割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは30〜70質量%及び70〜30質量%、より好ましくは40〜60質量%及び60〜40質量%である。
また、上記態様(2)の場合、例えば、溶融粘度が3,500〜6,500mPa・sのワックス(W2a)と、溶融粘度が7,000〜10,000mPa・sのワックス(W2b)とを併用することができ、摺動面への吸着性が高く、油膜切れが抑制され、優れた潤滑性能を与える。ワックス(W2a)及び(W2b)の質量割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは30〜70質量%及び70〜30質量%、より好ましくは40〜60質量%及び60〜40質量%である。
ストレートシリコーンとしては、ジメチルシリコーン、環状シリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
また、変性シリコーンとしては、アルキル基、アラルキル基、アミノ基、カルボキシルアルキル基又はカルボン酸アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、ポリエーテル基、カルビノール基等により、一部あるいは全体を変性されたオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
本発明においては、優れた潤滑性能及び濡れ性が得られ、油膜強度が向上することから、変性シリコーンが好ましく、特に、アルキル変性シリコーンが好ましい。
上記芳香族リン酸エステルは、好ましくは、炭素原子数6〜30のアリール基を有する化合物であり、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)フォスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルフォスフェート等が挙げられる。
また、上記芳香族リン酸エステルの縮合物としては、1,3−フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニルフォスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)等が挙げられる。
本発明においては、溶湯供給時の引火の抑制効果が得られることから、芳香族リン酸エステル及びその縮合物が用いられる。
本発明の油性型プランジャー潤滑剤組成物において、親油性の成分は、通常、均一に混合した状態にあるが、ワックスは、種類によっては、微粒子状に分散している場合がある。無機粉体もまた、組成物中に分散している。
本発明の油性型プランジャー潤滑剤組成物は、上記温度に対応する粘度を有するため、ダイカストマシンのプランジャーチップと射出スリーブとの間に供給されると、摺動面への吸着性が高く、油膜切れが抑制され、潤滑剤からなる液溜まりが生成しにくく、経時による蓄積もしにくく、溶湯供給時の引火も抑制される。更に、鋳物製品を排出した後、射出スリーブの内壁に展延した潤滑剤が、プランジャーチップの後退時に再付着するため、過度の不足は生じ難く、プランジャーチップの後退時に系外に排出される堆積物を低減することができる。これらの効果は、例えば、2〜3m/秒といった、高速射出条件においても得ることができる。
本発明の油性型プランジャー潤滑剤組成物が適用できるダイカストマシンは、特に限定されるものではなく、例えば、型締力1,000トン以上の大型のダイカストマシンによる使用にも好適である。
油性型プランジャー潤滑剤組成物の調製に用いた原料を以下に示す。
(1)鉱油
パラフィン系原料油「スーパーオイルN320」(JX日鉱日石エネルギー社製)
(2)カルシウムスルフォネート
過塩基性塩カルシウムスルフォネート「LUBRIZOL5283C」(日本ルブリゾール社製)
(3)ワックス(w1)
140℃における溶融粘度が8,500mPa・sの酸化ポリエチレン「A−C 316」(Honeywell社製)
(4)ワックス(w2)
140℃における溶融粘度が4,500mPa・sの酸化ポリエチレン「A−C 392」(Honeywell社製)
(5)ワックス(w3)
140℃における溶融粘度が400mPa・sの低分子量オレフィンワックス「E−10」(Westlake Longview Corporation社製)
(6)シリコーン
アルキル変性シリコーンオイル「TSF4421」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
(7)リン酸エステル
トリクレジルフォスフェート「TCP」(大八化学工業社製)
上記の原料を表1に示す質量割合で、撹拌装置を用いて混合した後、オイルバスを用いて150℃まで加温することにより、組成物I、II、III及びIVを得た。得られた組成物について、0℃、10℃、25℃、50℃、100℃、150℃及び200℃における粘度を、B型粘度計により測定した(表1参照)。
また、比較例のために、市販品である油性黒鉛「プランジャーハイトTG−Y」(日本黒鉛社製)及びW/Oエマルション「ネオキャスターRE−76」(MORESCO社製)を用いた。
(1)引火性評価
引火性の評価は、箱状本体11の内部に、円柱状に形成されたキャビティ(内径75mm)と、このキャビティを形成する射出スリーブ(箱状本体11と一体化している)と、射出スリーブの上方(図2で上側)に開口した溶湯導入口15(開口サイズ:80mm×50mm)と、装置の一面側(図1で右側)から挿入され、摺動可能な円柱状のプランジャーチップ13(直径74.4〜74.7mm)と、装置の他面側(図1で左側)に配された、開閉可能な鋳物排出部17とを備える装置1を用いて行った(図1及び図2参照)。
プランジャーチップ13を、図2に示す位置に、即ち、溶湯導入口15を上方から見た場合に、プランジャーチップ13の先端側(キャビティ側)の露出面積が、溶湯導入口15の開口面積の半分(40mm×50mm)となるように、配置した。次いで、潤滑剤3ミリリットルを、露出しているプランジャーチップ13の外周面の中心部にスポット供給した(図2における矢印)。その10秒後、60℃に調温した装置のキャビティに、ADC12からなる溶湯2(650℃)の約300ミリリットルを供給し(図3参照)、断面形状が半円形である棒状の鋳物3を形成し、鋳物排出部17から排出した(図4参照)。その後、この操作を約3分間隔で連続的に10回行い、各回における鋳物排出時に、潤滑剤による引火性を目視観察した。その結果を表3に示す。
A:不燃・発煙なし
B:不燃・発煙のみ
C:炎小、鎮火速
D:炎小、鎮火遅
E:炎大、鎮火速
F:連続燃焼
一方、組成物(I)〜(IV)の場合、油性黒鉛及びW/Oエマルションに比べると、溶湯供給時の発火は抑制できることが認められた。
図5に示す付着滑り試験機を用い、以下の要領で摺動試験を行い、潤滑剤の摩擦係数を測定した。尚、W/Oエマルションについては、水分を除去した後の有効成分で試験した。
(a)合金工具鋼鋼材のSKD61からなる試験片(160mm×30mm×2mm)の表面を、♯1000の研磨紙で調整した後、ヒーター上で230℃に保持した。
(b)高炭素クロームからなる鋼球(φ3/16インチ)及び試験片の接触部に、約1.0mgの潤滑剤を付けて、鋼球に荷重(0.5kg又は4.0kg)を掛けながら、試験片の表面を、4mmの長さに渡って、速度4mm/秒で10回連続的に摺動させ、1回ごとに摩擦係数を測定した。
(c)この試験を3回繰り返して、摺動回数毎の摩擦係数を平均化して表4及び図6に示した。
型締力1,650トンのダイカストマシン(宇部興産機械社製)に、φ120mmのプランジャーチップを配設し、射出速度(低速0.8m/秒、高速2.8m/秒)、サイクルタイム88秒、溶湯温度645℃及び鋳込み重量14.2kgで、トランスミッション用アクスルケースの鋳造を行った。
本評価では、潤滑剤として組成物(III)及び油性黒鉛を用い、プランジャーチップに1ショットあたり5ミリリットル滴下して、約5万個の鋳物を製造し、溶湯供給時の発火状態、射出波形及び製品不良率について、比較した。
製造終了後、射出波形及び製品不良率は、組成物(III)及び油性黒鉛の間で遜色なかった。しかしながら、油性黒鉛を用いた場合、溶湯を供給する度に、潤滑剤に引火し、炎が高くたちのぼったのに対し、組成物(III)を用いた場合には、引火回数が油性黒鉛の半分程度であり、炎の高さも、油性黒鉛の半分程度であった。
11:箱状本体
13:プランジャーチップ
15:溶湯導入口
17:鋳物排出部
2:溶湯
3:鋳物
5:潤滑剤
6:鋼球
7:試験片
9:ヒーター
Claims (2)
- 鉱油、カルシウムスルフォネート、ワックス、シリコーン及び芳香族リン酸エステルを含有することを特徴とする油性型プランジャー潤滑剤組成物。
- 140℃における溶融粘度が300〜11,000mPa・sであるワックスを含有する請求項1に記載の油性型プランジャー潤滑剤組成物。
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