JP5585499B2 - 潤滑剤塗布装置およびこれを備える画像形成装置 - Google Patents
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Description
クリーニングブレードを感光体ドラム表面に圧接させる構成をとる場合、感光体ドラムとクリーニングブレード間の摩擦力が増大すると、クリーニングブレードの先端部分が折れ曲がって変形したり破損したりすることが生じるおそれがある。また、クリーニングブレードの先端部分の磨耗が増大し、想定寿命よりも短い期間でクリーニング不良が生じるおそれがある。
特許文献1には、固形潤滑剤に接触するブラシローラを回転させて、ブラシローラにより固形潤滑剤を削り、削り取られた潤滑剤粉をブラシ繊維に取り込んだ状態で感光体ドラムの表面まで搬送し、感光体ドラムに潤滑剤粉を塗布させる構成が開示されている。
すなわち、従来からブラシローラに用いられているブラシ繊維は、一般にナイロンやポリエステルからなり、潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛からなるが、ナイロンやポリエステルは、ステアリン酸亜鉛よりも仕事関数が低い。仕事関数は、物質から電子を取り出すために必要なエネルギーを示し、帯電のし易さを表す量として知られており、仕事関数が低いほど電子を放出し易く、正に帯電し易くなる。
潤滑剤粉がブラシ繊維に残ることが生じ易くなることは、ブラシローラの1回転当たりの、感光体ドラムへの潤滑剤の供給量が少なくなることを意味し、潤滑剤の供給効率が悪いことになる。潤滑剤粉がブラシ繊維に残ることが続くと、やがてブラシ繊維が潤滑剤粉で詰まり、固形潤滑剤を削り取って搬送するというブラシ繊維の性能が低下し、感光体ドラムへの潤滑剤の供給量が早期に低下することになる。
しかしながら、この方法は、ブラシ繊維の先端の電界強度が強くなり、低い電圧でも感光体ドラムとの間で放電が起き易く、放電が起きるとブラシ繊維が劣化して、ブラシ繊維の劣化により感光体ドラムへの潤滑剤粉の供給量が早期に低下することに繋がる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、感光体ドラムなどの像担持回転体に潤滑剤を長期に亘って安定して供給することが可能な潤滑剤塗布装置およびこれを備える画像形成装置を提供することを目的としている。
さらに、前記塗布部材は、ブラシ状の部材からなることを特徴とする。
ここで、前記塗布部材は、芯金の周囲に導電性のブラシ繊維が設けられてなり、芯金が接地されていることを特徴とする。
さらに、前記画像形成装置には、像担持回転体の周面に当接して、その周面に残留しているトナーを除去するクリーニング部材が配置されており、前記塗布部材は、クリーニング部材が像担持回転体の周面に当接している位置よりも、像担持回転体の回転方向下流の位置で像担持回転体の周面に接触することを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、上記の潤滑剤塗布装置を備えることを特徴とする。
(1)プリンタの全体の構成
図1は、プリンタの全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタは、周知の電子写真方式により画像を形成するものであり、作像部10と、中間転写部20と、給送部30と、定着部40と、制御部50などを備え、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)からのプリントジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
作像ユニット10Y〜10Kは、像担持回転体としての感光体ドラム11Y〜11Kと、その周囲に配設された帯電器12Y〜12Kと、露光部13Y〜13Kと、現像器14Y〜14Kと、クリーナ16Y〜16Kなどを備えており、感光体ドラム11Y〜11KにY〜K色のトナー像を作像する。
定着部40は、定着ローラと加圧ローラを圧接させて定着ニップを確保すると共にヒータにより定着ローラを加熱して定着に必要な温度を維持する。
感光体ドラム11Y〜11Kは、マイナス(負)極性に帯電する帯電特性を有しており、帯電器12Y〜12Kにより感光体ドラム11Y〜11Kがマイナス帯電され、レーザビームLにより画像の形成されるべき部分が露光される。
なお、感光体ドラムとトナー間には、ファンデルワールス力が働いているので、トナー像を構成するトナー粒子のうち、静電的に中間転写ベルト21に一次転写できないトナー(残留トナー)が少ないとはいえ存在する。
感光体ドラム11Y〜11Kへの各色の作像動作は、トナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により二次転写位置29に移動する。
二次転写位置29を通過した用紙Sは、定着部40に搬送され、定着ニップを通過する際に、トナー像が加熱、加圧されて用紙Sに定着された後、排出ローラ対38を介して排出され、収容トレイ39に収容される。
図2は、クリーナ16Yの構成を拡大して示す図であり、クリーナ16Yの周辺に配されている感光体ドラム11Yや帯電器12Yなども合わせて示している。なお、クリーナ16Y〜16Kは、いずれも基本的に同じ構成なので、ここではクリーナ16Yの構成を説明して、他のクリーナ16M〜16Kについてはその説明を省略する。
ブラシ繊維72は、ここでは導電性のポリエチレン繊維が用いられ、ブラシ繊維72を構成するブラシ毛の1本1本の根元が芯金71を介して接地されている。
固形潤滑剤64は、金属石鹸の粉体を溶融成型したものであり、ここではステアリン酸亜鉛が用いられている。
潤滑剤粉をプラス極性に帯電させることにより、ブラシローラ63のブラシ繊維72が感光体ドラム11Yの周面を摺擦するときに擦り付けることによる機械的な潤滑剤粉の供給だけでなく、静電的に潤滑剤粉が感光体ドラム11Yに引き付けられることによる潤滑剤粉の供給を行えるようになり、潤滑剤の供給効率を従来よりも向上させることができる。この理由については、後述する。
摩擦帯電部材65は、表面がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなり、その表面が、回転しているブラシローラ63のブラシ繊維72にやや食い込むような状態でブラシ繊維72に当接して、ブラシ繊維72を摩擦帯電させる。摩擦帯電部材65とブラシ繊維72との仕事関数の大小により、ここではブラシ繊維72がプラス極性に摩擦帯電されるようになっている。
図3は、摩擦帯電部材65とブラシ繊維72と固形潤滑剤64のそれぞれが帯電している様子を示す模式図であり、図4(a)は、摩擦帯電前の摩擦帯電部材65とブラシ繊維72と固形潤滑剤64の仕事関数の大きさを示す模式図であり、図4(b)と図4(c)は、仕事関数が変化する様子を模式的に示す図である。
ブラシ毛先端部73がプラス極性に摩擦帯電されている状態で、固形潤滑剤64との接触位置P1に至り、接触位置P1を通過する際に、ブラシ毛先端部73と固形潤滑剤64との摩擦により固形潤滑剤64が削られると共に削り取られた潤滑剤粉Jがプラス極性に摩擦帯電される。
感光体ドラム11Yの帯電極性は、上記のようにマイナス極性であり、クリーニング後であってもマイナスの残留電荷が残っていることが多いので、プラス極性に摩擦帯電されている潤滑剤粉Jは、接触位置P2において、ブラシ繊維72が感光体ドラム11Yの周面に擦り付けられることによる機械的な塗布に加えて、クーロンの引力の作用により感光体ドラム11Yに引き付けられることによる静電的な塗布が行われる。
図4(a)に示すように、摩擦帯電前の摩擦帯電部材65の仕事関数をφm、ブラシ繊維72の仕事関数をφb、固形潤滑剤64の仕事関数をφjとすると、次の(式1)と(式2)の関係を満たすようになっている。
φj<φave・・・(式2)
ここで、φave=(φm+φb)/2である。
図4(b)は、摩擦帯電部材65とブラシ毛先端部73との摩擦帯電により、摩擦帯電部材65とブラシ毛先端部73との仕事関数が変化する様子を示す図である。
図4(c)は、ブラシ毛先端部73が固形潤滑剤64を削るときの摩擦により、ブラシ毛先端部73と潤滑剤粉Jの仕事関数が変化する様子を示す図である。
なお、ブラシ毛先端部73は、図3に示すようにプラスに帯電されている潤滑剤粉Jを、感光体ドラム11Yとの接触位置P2に搬送して感光体ドラム11Yに塗布する際に、感光体ドラム11Yの周面に接触する。
上記のように、ブラシ毛先端部73が摩擦帯電部材65で摩擦帯電されてからブラシローラ63の1回転により摩擦帯電部材65の位置に戻るまでのサイクルが、ブラシ繊維72を構成する1本1本のブラシ毛について、ブラシローラ63の1回転毎に繰り返されることにより、潤滑剤粉Jが感光体ドラム11Yの帯電極性の逆極性であるプラスに帯電した状態で感光体ドラム11Yに供給することができるようになる。
(4)潤滑剤塗布評価の実験結果について
図5は、実施例1、2および比較例1〜4の構成において潤滑剤塗布が良好に行われたか否かを示す実験の結果を示す図である。
(4−1)実験条件
同図に示す仕事関数の大きさは、紫外線電子分光法(UPS測定法)により測定された数値を示しており、ここではVG Scientific社製のESCALab200Rを用いた。具体的には、紫外線He−Iを照射し、運動エネルギーが20〜50eV間での測定を行い、価電子帯レベルのバンド幅を求め、紫外線He−IのエネルギーによりHOMOレベルを求めた。
塗布ブラシは、繊維の材質を除いて、繊維太さ6デシテックスで、繊維抵抗が108Ωの導電性繊維を、外径6mmの金属製の芯金に基布厚み0.5mmでブラシ外径が12mm(繊維高さ2.5mm)、繊維密度120KF/inch2でロール状にしたものを用いた。固形潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛を固形化したものを用い、押圧バネにより塗布ブラシに対して、6N/mの押圧力になるように当接させた。
潤滑剤塗布評価は、耐久の枚数ごとに感光体ドラムの摩擦係数を代用測定値として用いて評価した。目標となる摩擦係数を維持することは、潤滑剤の塗布が目標値を維持することと同等とみなせるからである。
耐久は、23℃55%RHの環境下で、各色について、20%相当の格子状ライン画像(ブルー)を10万枚、20万枚、30万枚連続プリントすることにより行われた。各枚数分の連続プリント終了時における潤滑剤評価方法は、耐久前と同じ摩擦係数の測定により行われた。なお、Y〜Kの各色について測定したが、どの色でも同じ結果となった。
実施例1と2は、それぞれ上記の(式1)と(式2)を満たすものであり、耐久前および耐久後において全て評価結果が○になっており、長期に亘って必要な量の潤滑剤を感光体ドラムに塗布し続けることができた。
一方、比較例1は、(式1)を満たすが、(式2)を満たしていない構成であり、(式2)を満たさないことから、摩擦帯電後のブラシ毛先端部73の仕事関数φaveが固形潤滑剤64の仕事関数φjよりも低くなり、潤滑剤粉Jの極性をマイナスにしてしまう。このため、目標の潤滑剤塗布量を供給することができず、評価結果が×になった。
(式1)を満たしていないということは、ブラシ繊維72の仕事関数φbの方が摩擦帯電部材65の仕事関数φmよりも高い構成であり、ブラシ毛先端部73が摩擦帯電部材65で摩擦帯電される際に摩擦帯電部材65から電子を奪うため、ブラシ毛先端部73がマイナス極性に帯電される。
比較例3は、摩擦帯電部材65を備えない構成であり、潤滑剤粉Jの帯電極性は、ブラシ繊維72と潤滑剤との仕事関数で決まることになる。比較例3では、ブラシ繊維72の仕事関数φb<潤滑剤の仕事関数φjの関係があるので、潤滑剤粉Jの帯電極性は、マイナスになる。これにより、長期に亘って必要な量の潤滑剤を感光体ドラムに塗布し続けることができなかった。
以上、説明したように本実施の形態では、摩擦帯電部材とブラシ繊維と固形潤滑剤を、上記の(式1)と(式2)を満たす材料のものを用いるので、ブラシローラに電圧を印加することなく、長期に亘って必要な量の潤滑剤粉を感光体ドラムに供給し続けることができ、摩擦係数を低くすることによりクリーニングブレードの磨耗や破損を防ぎ、クリーニングブレードを長寿命化できると共に、転写性、クリーニング性の向上、および感光体ドラム周面の磨耗の進行を抑えて、感光体ドラムの長寿命化を実現することができる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、固形潤滑剤64を削り取って、削り取った潤滑剤粉Jを感光体ドラムに塗布する塗布部材として、ブラシローラ63を用いる例を説明したが、その形状はブラシ状に限られない。例えば、スポンジ状のものや、周面に微小な凹凸などの粗さを設けてなるローラなどを用いることもできる。
この構成の場合、摩擦帯電部材65は、ブラシローラ63の周囲においてブラシローラ63の回転方向に接触位置P2よりも下流かつ接触位置P1よりも上流の位置に配置される。ブラシローラ63の回転方向は、装置構成によって適した方向が決められる。
また、例えば固形潤滑剤64をステアリン酸亜鉛に代えて、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸リチウムといった脂肪酸金属塩を利用することもできる。
上記では、(式1)と(式2)を用いたが、例えば塗布部材と摩擦帯電部材と固形潤滑剤の各材料が、摩擦帯電部材との摩擦で像担持回転体(感光体ドラム)の帯電極性とは逆極性に帯電した塗布部材により削り取られた潤滑剤粉の帯電極性が、像担持回転体の帯電極性と逆極性になるような仕事関数の大きさのものから選択される構成をとれば、上記の実施の形態と同じような条件で潤滑剤塗布を行うことができる。
(5)上記実施の形態では、本発明に係る潤滑剤塗布装置およびこれを備える画像形成装置をタンデム型カラーデジタルプリンタ等に適用した場合の例を説明したが、これに限られない。カラーやモノクロの画像形成に関わらず、像担持回転体表面に潤滑剤を塗布する構成であれば、例えば複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。また、像担持回転体を感光体ドラムとする構成例を説明したが、ドラム状に限られず、例えばベルト状のものなどであっても良い。さらに、潤滑剤塗布部69がクリーナ16Yに設けられている構成例を説明したが、クリーナ16Yとは別に配置される構成であっても構わない。また、潤滑剤塗布部(装置)は、少なくともブラシローラ63と摩擦帯電部材65とを備える構成であれば良い。
さらに、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
12Y、12M、12C、12K 帯電ローラ
61 クリーニングブレード
63 ブラシローラ
64 固形潤滑剤
65 摩擦帯電部材
68 均しブレード
69 潤滑剤塗布部
71 芯金
72 ブラシ繊維
73 ブラシ毛先端部
J 潤滑剤粉
Claims (8)
- 像担持回転体を有する画像形成装置に備えられ、固形潤滑剤を削り、削り取った潤滑剤粉を像担持回転体の周面に塗布する潤滑剤塗布装置であって、
像担持回転体と固形潤滑剤の間に介在し、回転により固形潤滑剤を第1位置で削り、削り取った潤滑剤粉を第2位置で像担持回転体の周面に塗布する塗布部材と、
塗布部材の回転方向に沿って第2位置よりも下流かつ第1位置よりも上流の位置で、回転している塗布部材に当接して、塗布部材を摩擦帯電させる摩擦帯電部材と、を備え、
摩擦帯電部材と塗布部材と固形潤滑剤の各材料として、摩擦帯電部材との摩擦で帯電している塗布部材により削り取られた潤滑剤粉の帯電極性が像担持回転体の帯電極性と逆極性になるような仕事関数の大きさのものが選択されていることを特徴とする潤滑剤塗布装置。 - 像担持回転体の帯電極性は負であり、前記摩擦帯電が行なわれる前の、塗布部材の仕事関数をφb、摩擦帯電部材の仕事関数をφm、固形潤滑剤の仕事関数をφjとしたとき、
φm>φb、かつ、φj<(φm+φb)/2の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の潤滑剤塗布装置。 - 前記塗布部材は、
ブラシ状の部材からなることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑剤塗布装置。 - 前記塗布部材は、
芯金の周囲に導電性のブラシ繊維が設けられてなり、芯金が接地されていることを特徴とする請求項3に記載の潤滑剤塗布装置。 - 前記摩擦帯電部材は、
フッ素を含む樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑剤供給装置。 - 前記画像形成装置には、像担持回転体の周面に当接して、その周面に残留しているトナーを除去するクリーニング部材が配置されており、
前記塗布部材は、
クリーニング部材が像担持回転体の周面に当接している位置よりも、像担持回転体の回転方向下流の位置で像担持回転体の周面に接触することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑剤塗布装置。 - 前記塗布部材が像担持回転体の周面に潤滑剤を塗布する第2位置よりも、像担持回転体の回転方向下流の位置に配され、像担持回転体の周面に接触して、塗布部材により像担持回転体に塗布された潤滑剤を均す均し部材を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑剤塗布装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑剤塗布装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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