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creCをコードする遺伝子の機能が欠損した調味料の製造に利用可能な麹菌及びその利用 Download PDF

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本発明は、麹菌のカーボンカタボライト・リプレッションを正に制御する制御するタンパク質creCをコードする遺伝子の機能を欠損させた麹菌、及びその利用に係わるものである。
焼酎、清酒、みりん、味噌、醤油等の調味料の製造では、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)、アスペルギルス・アワモリ(A.awamori)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・オリーゼ(A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ(A.sojae)といった麹菌が用いられている。麹菌は各種酵素の生産に適しており、その用途に応じ、その各種酵素系の発現に適した製麹方法が採られている。例えば醤油の製造においては、蒸煮した穀類等の固体原料に麹菌の胞子を散布し、その表面で麹菌を増殖させることによって製麹を行っている。麹の原料となる大豆、小麦、米の種類により、また、それらのα化度、水分量により、製麹中の温度、湿度、培養時間、手入れ条件、通風・換気条件等のさまざまな製麹条件を調整して、各種酵素を効率よく産生させるように管理するのが一般的である。
特に、プロテアーゼやアミラーゼ、キシラナーゼなどの各種酵素の活性は、原料利用率ときわめてよく相関している。したがって従来、調味料を歩留まりよく製造するために、紫外線照射や薬剤による変異誘発によって各種酵素活性の高い麹菌を得るための育種が繰り返されてきた。
一方、調味料の製造に利用可能な麹菌とは近縁のアスペルギルス・ニドランス(A.nidulans)において、カーボンカタボライト・リプレッションを正に制御するタンパク質creCをコードする遺伝子の機能が欠損した変異株では、プロテアーゼ生産が向上することが知られている(非特許文献1)。
しかしながら、creC遺伝子欠損株において、プロテアーゼ以外の遺伝子の発現に変化が生じているかどうかについては、βガラクトシダーゼ及びキナ酸脱水素酵素を除いて報告されていない。また、アスペルギルス・ニドランスは醸造等に使用される麹菌ではないため、調味料製造に使用可能な安全性の高い麹菌において同遺伝子が存在するか否かも全く知られていない。このため、調味料製造に使用される麹菌において、同様の遺伝子の機能欠損によってプロテアーゼ等の酵素活性の高い菌株が得られるかどうかは、その遺伝子の存在が不明である状況においては、当業者であっても予想できるものではなく、まったく未知の事項であった。
Mol.gen.Genet.150,193−204、1977
したがって本発明の目的は、調味料製造に使用可能な麹菌においても同様の遺伝子が存在するか否かを最初に精査し、もし存在する場合には、同遺伝子の機能を欠損させることによって麹菌におけるプロテアーゼの各種酵素の活性が変化するかどうかを調査し、そのような変化が調味料の製造に有用かどうかを判定することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく、調味料製造に使用可能な麹菌において、同様の遺伝子をクローニングすることを試みた。まず、上記のアスペルギルス・ニドランスのcreC遺伝子配列を用いて、麹菌ゲノムデータベースDOGAN(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/MicroTop?GENOME_ID=ao)において相同性検索を実施したところ、アスペルギルス・オリーゼのゲノムにおいて、相同性が高い遺伝子としてID:AO090003000149とされる遺伝子が見出された。しかしながら、同遺伝子についての機能は未知であったことから、データベース上の配列を基にプライマーを設計し、PCRによって該遺伝子の全長をクローニングした。
該遺伝子をコードする正確な領域はゲノムデータベース上では不明であったため、5’−RACE法により遺伝子領域決定したところ、該遺伝子は、2371bp(開始コドンATG:終止コドンTAA)からなり、595アミノ酸残基、約65.4kDaのタンパク質をコードしていることが判明し、アスペルギルス・オリーゼにおいてもcreC遺伝子と同様の遺伝子(以下、「creC遺伝子」という)が存在することが明らかになった(別紙に「配列1」としてcreC遺伝子の塩基配列、「配列2」としてアミノ酸配列を示す)。そこで、調味料製造に用いられる麹菌であるアスペルギルス・オリーゼを用いて、相同組換え法によりcreC遺伝子欠損株を作成し、調味料製造に関わる各種酵素の活性を測定した。
その結果、驚くべきことに、本発明者は、アスペルギルス・オリーゼのcreC遺伝子の機能を欠損させることによって、プロテアーゼ活性のみならず、調味料製造時に重要な役割を担うアミラーゼ活性及びキシラナーゼ活性も向上させることができ、調味料製造にきわめて適した麹菌株を作製できることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は以下の通りである。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるcreCをコードする遺伝子の機能のみを欠損させることにより、プロテアーゼ、アミラーゼ及びキシラナーゼの各酵素活性が当該遺伝子の機能が欠損していない親株に比べて向上したアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)。
(2)creCをコードする遺伝子機能の欠損が、配列番号1に示される塩基配列における1若しくは数個の塩基欠失、置換若しくは付加によりもたらされる、上記(1)記載のアスペルギルス・オリーゼ(Aspergilluls oryzae)。
(3)上記(1)に記載のアスペルギルス・オリーゼを用いて製麹することを特徴とする麹の製造法。
(4)上記(1)に記載のアスペルギルス・オリーゼを用いて麹を調製し、その麹を用いて常法により仕込みし、発酵、熟成せしめることを特徴とする調味料の製造法。


本発明の麹菌は、高プロテアーゼ活性、高アミラーゼ活性および高キシラナーゼ活性を有していること、また調味料製造に通常用いられる麹菌を親株としているために、調味料の効率的な製造に直接的に寄与することから、産業上の利用可能性が非常に高いものである。さらに、creC遺伝子の欠損はカーボンカタボライト・リプレッションの脱抑制に係ると考えられることから、カーボンカタボライト・リプレッションの影響を受けやすい、液体麹の製造や、バイオエタノール生産の糖化段階に用いる加水分解酵素生産等にも応用可能である。
本発明において、調味料製造に使用できる麹菌とは、焼酎、清酒、みりん、醤油、味噌等の調味料の製造に使用可能で、安全性の確立されているアスペルギルス属に属する麹菌であれば特に限定はされない。具体的には、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリーゼ、アスペルギルス・ソーヤ等が好ましい。中でも特に好ましいのはアスペルギルス・オリーゼ、アスペルギルス・ソーヤである。
本発明においてcreC遺伝子とは、ゲノムデータベースDOGAN(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/MicroTop?GENOME_ID=ao)においてIDがAO090003000149である遺伝子を指す。
creC遺伝子の機能欠損株は、相同組換えによる遺伝子破壊や、変異導入による機能欠損の誘導により取得することができる。
相同組換えによる遺伝子の破壊方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、creC遺伝子の断片もしくはその上流・下流の領域とマーカー遺伝子とを組み合わせたDNA断片をベクターに組み込み、プロトプラスト−PEG法やエレクトロポレーション法などによってベクターを糸状菌に取り込ませ、相同組換えによって当該DNA断片を糸状菌のゲノム中に導入する方法などを挙げられる。DNA断片を麹菌細胞中に取り込ませる他の方法としては、パーティクルガン法、アグロバクテリウム法、マイクロインジェクション法などが挙げられる。
相同組換え法によって所期の遺伝子が麹菌に導入されたことを確認する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、遺伝子を導入する際に、親株として栄養要求性の突然変異株を、マーカー遺伝子として当該栄養要求性を補償するような機能を持つ遺伝子を用い、形質転換後に栄養要求性培地上で正常に生育した株を選抜する方法などが挙げられる。ただし、このような栄養要求性だけでは、目的とする遺伝子座が導入したマーカー遺伝子と置換されたかどうか確認できない。従って、栄養要求性に合わせて適宜PCR法、サザンハイブリダイゼーション法等を用いて、目的とする遺伝子座がマーカーによって置換されていることを確認する必要がある。
また、変異導入法としては、公知の処理方法を用いることができ、紫外線、イオンビーム、放射線等を照射させる物理的方法、エチルメタンスルホネート、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、亜硝酸、アクリジン色素等の変異剤を用いる化学的方法がある。特に好ましくは、イオンビーム、紫外線を照射させる方法を挙げることができる。
上記のような遺伝子破壊法、または変異導入法によってcreCの機能が欠損し、プロテアーゼ活性が向上した株をスクリーニングする方法としては、ミルクカゼインを含有するプレートでハローアッセイを行うことで、親株に比べハローが大きくなった株を候補株とし、選抜した候補株からゲノムDNAを抽出し、シークエンス解析で確認する方法などを挙げることができる。他の方法としては、コロニーハイブリダイゼーション法等を利用することができる。
また、本発明における各種酵素活性が上昇した株とは、醤油原料培地などにおいて親株に比べて酵素活性が1.1倍以上上昇した株を差す。
なお、各種酵素活性の測定方法としては、通常用いられている方法を利用することができ、たとえばプロテアーゼ活性の測定法としては「しょう油試験法」(財団法人日本醤油研究所・編集発行)に記載の方法を用いることができる。
本発明の麹菌を用いた麹の製法およびその麹を用いた調味料を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、醤油の製造においては、通常の麹原料、たとえば撒水して蒸煮した大豆原料と炒熬割砕した小麦原料の混合物に、上記のcreC遺伝子の機能欠損した麹菌を接種混合して麹を調製し、得られた麹を通常の仕込みタンクに適当な濃度の食塩水で仕込み、適宜撹拌しつつ3〜6ヶ月間程度発酵熟成させて醤油諸味を得、常法により圧搾、精製、必要により火入れを行い、製品醤油(生醤油あるいは火入醤油)とする。
以下、実施例において本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、実施例中の%は、全てw/v%を意味する。
実施例1 相同組換え法によるcreC遺伝子欠損株の作成
(1)相同組換えによるcreC遺伝子欠損株の作成
creC遺伝子欠損株を作成するための親株として、硫酸(硫黄源)を資化することのできない栄養要求性株である麹菌アスペルギルス・オリーゼΔligD株を用いた。なお、ΔligD株は、公知文献(Fungal Genet Biol.45(2008)、878−889)に従い、アスペルギルス・オリーゼRIB40株(寄託番号:ATCC42149)を元に作成された株である。また、マーカー遺伝子としては、硫酸(硫黄源)を資化する機能をもつアスペルギルス・ニドランスsC遺伝子(Mol Gen Genet.1995 May 20;247(4):423−429.)を用いた。
このため、所期のマーカー遺伝子が正常に導入された株は、sC遺伝子が導入されることによってΔligD株の栄養要求性が回復するため、硫黄源として硫酸塩だけが含まれる培地においても生育することが可能になる。このことから、creC遺伝子欠損株を容易に単離することができる。
すなわち、アスペルギルス・オリーゼΔligD株のゲノムDNAを鋳型とし、creC遺伝子コード領域の上流領域約1.5kbp(creC ORF上流領域)から下流領域約1.5kbp(creC ORF下流領域)までをプライマー1、2を用いてPCR法により増幅した。PCR法による増幅は定法により行い、得られた増幅産物をベクターpENTR D/TOPO(インビトロジェン)に導入し、完成したベクターを制限酵素AatIIサイト、XbaIサイトを付加したプライマー3、4を用いて再度PCR法により増幅した。得られた増幅産物を制限酵素AatII、XbaIで処理し、creCのORF部分を欠損した直鎖状の配列(甲)を得た。
次に、アスペルギルス・ニドランスのゲノムDNAを鋳型とし、AatIIサイト、XbaIサイトを付加したプライマー5、6を用いて、PCR法によってsC遺伝子領域を増幅した後、pCRBluntベクター(インビトロジェン)に導入した。得られたベクターをAatII、XbaIで処理し、sC領域の配列(乙)を得た。
このようにして得られた配列甲及び乙を、DNAリガーゼを用いて融合することで、creC遺伝子破壊用コンストラクトを作成した(図1)。このベクターをNotIで処理し、得られた直鎖状のベクターをプロトプラスト−PEG法を用いて麹菌ΔligD株に導入した。硫酸を含む選択培地(グルコース1%、亜硝酸ナトリウム0.2%、リン酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.05%、塩化カリウム0.05%、硫酸鉄0.001%、トレースエレメント0.1%、食塩4.68%)で生育した株を同培地に3回植え継ぎ、creC遺伝子欠損候補株を得た。
これらの候補株から定法に従いゲノムDNAを抽出し、これを鋳型としてcreC遺伝子の増幅をPCR法で確認した。creC遺伝子が破壊されていた場合、遺伝子の増幅は認められないため、増幅を認めない株をしてcreC遺伝子欠損株とした。
使用したプライマーを表1に示す。
Figure 0005582628
(2)生育の確認
直径8cmのプラスチックシャーレに麹汁培地を作成し、creC遺伝子欠損株、および対照株として親株ΔligDとをそれぞれプレートの中央に播種した。30℃で24時間おきにコロニーの直径を測定した。その結果、親株であるΔligD株、creC遺伝子欠損株間で生育に差がないことが明らかとなった(図2)。
(3)ハローアッセイ
直径8cmのプラスチックシャーレにハローアッセイ用の培地(ミルクプレート、デンプンプレート)を作成し、creC遺伝子欠損株、および対照株として親株ΔligDをプレートの中央に播種し、形成されるハローの大きさを測定した。その結果、creC遺伝子欠損株は親株に比べ大きなハローを形成したことから、プロテアーゼ活性、アミラーゼ活性が向上していることが示唆された(図3)。
なお、使用したミルクプレートの組成は以下の通りである。
グルコース2%、亜硝酸ナトリウム0.3%、リン酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.5%、硫酸鉄0.001%、ミルクカゼイン0.1%、トレースエレメント0.1%、寒天1.5%
また、使用したデンプンプレートの組成は以下の通りである。
グルコース2%、亜硝酸ナトリウム0.3%、リン酸2カリウム0.1%、硫酸マグネシウム0.5%、塩化カリウム0.5%、硫酸鉄0.001%、デンプン0.1%、トレースエレメント0.1%、寒天1.5%
(3)プロテアーゼ活性の測定
脱脂大豆5gに8mlの滅菌蒸留水を散水し、5gの割砕小麦を加えてよく攪拌し、40分オートクレーブ処理を行った原料を醤油原料培地とした。該醤油原料培地1g当たり、胞子数が106個となるように、creC遺伝子欠損株、および対照株として親株ΔligDの胞子をそれぞれ散布し、よく攪拌して、28℃で48時間程度培養した。培養の結果、creC遺伝子欠損株と親株との間に生育の差は認められなかった。
培養した麹に140mlの冷水を添加しよく攪拌した後4時間放置し、これをろ紙でろ過することで酵素液を調整した。調整した酵素液を用いてプロテアーゼ活性を測定した。測定は以下の手順で行った。
1.5%ミルクカゼイン溶液1mlと蒸留水1mlを試験管にとり、30℃の恒温槽で5分間予熱した。5分後1mlの酵素液を加え、10分間反応を行った後、0.4Mトリクロロ酢酸溶液3mlを加え反応を停止した。さらに30℃で30分放置して、沈殿をろ紙で除いた後、ろ液2mlを取り、0.55M炭酸ナトリウム溶液5ml、Folin試薬1mlを加え30℃で30分反応させ、分光光度計で660nmの吸光度を測定した。同様の方法で、チロシン標準液を用いて検量線を作成し、1分間にチロシン1μgを遊離させる酵素量を1unitとして酵素活性を計算した。その結果、creC遺伝子欠損株は親株ΔligDに比べてプロテアーゼ活性が有意に高かった(図4)。
(4)アミラーゼ活性の測定
アミラーゼ活性測定は以下の手順で行った。
酵素液1mlに50mM MaclLvaine緩衝液(pH5.0)を1ml加え、1%デンプン水溶液を2ml加え、30℃で30分反応を行った。その後、0.5規定酢酸10ml、0.0003規定ヨウ素溶液10mlを加え、分光光度計で700nmの吸光度を測定した。ヨウ素青色呈色を10%低下せしめる酵素量を1unitとして酵素活性を計算した。その結果、creC遺伝子欠損株は親株ΔligDに比べてアミラーゼ活性が有意に高かった(図5)。
(5)キシラナーゼ活性の測定
キシラナーゼ活性測定は以下の手順で行った。
0.5%キシラン水溶液160μlに40μlの酵素液を加え、40℃で60分程度反応を行った後、DNS試薬400μlを加え、5分間沸騰させた後に、2.4mlの純水を加え、よく混合した後、分光光度計で500nmの吸光度を測定した。同様の方法でキシロース標準液を用いて検量線を作成し、1分間に1μgのキシロースを遊離させる酵素量を1unitとして酵素活性を計算した。その結果、creC遺伝子欠損株は親株ΔligDに比べてプロテアーゼ活性が有意に高かった(図6)。
なお、ここで使用したDNS試薬は下記の手順で調製した。
4.5%水酸化ナトリウム水溶液300mlに、1%3,5−ジニトロサリチル酸水溶液880mlと、ロッシェル塩255gを添加した。この溶液に、10%水酸化ナトリウム水溶液22mlにフェノール10gを混合し、100mlにフィルアップした溶液69mlに炭酸水素ナトリウム6.9gを溶解せしめたものを加え、2日以上室温に遮光保存したものを使用した。
上記(3)〜(5)における、親株ΔligDとcreC遺伝子欠損株の各種酵素活性の数値、および対照株すなわちΔligDに対するcreC遺伝子欠損株の酵素活性の比を比べた結果をまとめると、以下表2のようになった。なお、表中、ΔcreCはcreC遺伝子欠損株のことを示す。
Figure 0005582628
以上の結果より、プロテアーゼ活性、アミラーゼ活性、キシラナーゼ活性が親株に比べて高くなっている調味料製造に好適な麹菌を得ることができた。
実施例2 creC遺伝子欠損株を用いた醤油の製造
脱脂大豆5kgに7Lの水を加え1時間混合後、高圧蒸煮缶にて蒸煮圧力4kg/cm2で10分蒸煮を行った。この蒸煮脱脂大豆に、加熱変性後割砕した小麦5.2kgを加え、種麹と共に混合し、製麹を行った。なお、種麹としては実施例1で得られたcreC遺伝子欠損株を用い、対照としてその親株を使用した。
得られた麹を冷塩水と共に仕込み、仕込み直後10〜15℃、1ヶ月後に25℃〜30℃まで温度を上げ、トータル5ヶ月間醸造し、標準的な濃口醤油を得た。なお、これ
らの試験は全てP1レベル閉鎖系で行った。得られた諸味等を分析した結果、creC遺伝子欠損株を用いた場合には、親株と比較して窒素利用率が高く、かつ醤油粕が少ないことが明らかとなった。

図1は、実施例で行った遺伝子破壊ベクターの作出工程を模式的に表したものである。矢印はプライマーの作成位置、および作成方向を、矢印に付記された数字は実施例中に示したプライマーの番号を、また、AnsCはアスペルギルス・ニドランス由来のsC遺伝子を示す。 図2は、対照株ΔligD株とcreC遺伝子欠損株とでコロニーの直径を比較した結果を示している。◇は親株、□はcreC遺伝子欠損株(ΔcreC)における測定値を示す。 図3は、ハローアッセイの結果を示す。上段はミルクプレートの結果、下段はデンプンプレートの結果を示す。 図4は、醤油原料培地における親株ΔligDとcreC遺伝子欠損株(ΔcreC)のプロテアーゼ活性を比較した結果を示す。 図5は、醤油原料培地における親株ΔligDとcreC遺伝子欠損株(ΔcreC)のアミラーゼ活性を比較した結果を示す。 図6は、醤油原料培地における親株ΔligDとcreC遺伝子欠損株(ΔcreC)のキシラナーゼ活性を比較した結果を示す。

Claims (4)

  1. 配列番号1に示される塩基配列からなるcreCをコードする遺伝子の機能のみを欠損させることにより、プロテアーゼ、アミラーゼ及びキシラナーゼの各酵素活性が当該遺伝子の機能が欠損していない親株に比べて向上したアスペルギルス・オリーゼ(Aspergillus oryzae)。
  2. creCをコードする遺伝子機能の欠損が、配列番号1に示される塩基配列における1若しくは数個の塩基欠失、置換若しくは付加によりもたらされる、請求項1記載のアスペルギルス・オリーゼ(Aspergilluls oryzae)。
  3. 請求項1に記載のアスペルギルス・オリーゼを用いて製麹することを特徴とする麹の製造法。
  4. 請求項1に記載のアスペルギルス・オリーゼを用いて麹を調製し、その麹を用いて常法により仕込みし、発酵、熟成せしめることを特徴とする調味料の製造法。
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