JP5581980B2 - 磁気記録ヘッドおよび磁気記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁性記録媒体に対して高周波磁界を照射して磁気共鳴を駆動し、その記録媒体の磁化反転を誘導して、情報を記録する磁気記録ヘッドおよび磁気記録装置に関するものである。
近年のコンピュータの能力向上およびネットワークの高速化,大容量化にともない,ディジタル・データの形で流通する情報の量は飛躍的に増加してきている。こうした大容量の情報を効率的に受配信・抽出するためには,大容量の情報を高速に入出力できるストレージ・デバイスが必要である。磁気ディスクでは,高密度化にともなって,一旦記録した信号が熱揺らぎによって徐々に減少していくという問題が顕在化している。これは磁気記録媒体が磁性体微結晶の集合であり,この微結晶の体積が減少してきていることが原因である。十分な耐熱揺らぎ安定性を得るには,よく用いられる熱揺らぎ指標Kβ(=KuV/kT;Ku:磁気異方性,V:粒子体積,T:温度,k:Boltzmann定数)が70以上ある必要があると考えられている。Ku,T(材料,環境)を一定とすれば,Vの小さな粒子ほど熱揺らぎによる磁化反転が起こりやすい。高密度化が進み1ビットの占める記録膜体積が減少するにつれて,Vを低下させなければならず,熱揺らぎが無視できない。この熱揺らぎを抑えるためにKuを高めると,磁気記録に必要な磁化反転磁界が記録ヘッドで発生できる記録磁界を越えることになり,記録不能となる。
この問題を回避するために,マイクロ波アシスト記録技術(Microwave Assisted Magnetic Recording、以下MAMRと略記)がCMUのZhuらによって、US2008/0019040(下記特許文献1)に開示されている。MAMRは,垂直磁気ヘッドの主磁極からの磁界に加えて,隣接したスピントルクオシレータ(Spin Torque Oscillator、以下STOと略記)からのマイクロ波磁界を磁気異方性の大きな磁気記録媒体に印加することにより,記録対象領域を磁気共鳴状態として磁化を揺さぶり,磁化反転磁界を低下させて記録を行うものである(図1)。従来の磁気ヘッドでは記録磁界が不足して記録が困難であった1Tbit/inを超える高記録密度対応の磁気記録媒体に対し,マイクロ波照射領域への記録が可能となる。STOは、固定層からのスピントルクをCuを介して隣接する磁界創生層(Field Generation Layer、以下、FGLと略記)に伝え、FGLの磁化を面内で高速回転せしめることによってマイクロ波(高周波磁界)を発生せしめている。MAMRは磁気共鳴現象を利用するため,有効なマイクロ波磁界成分は,記録媒体磁化の歳差運動と同じ回転方向となる,反時計回りの回転磁界成分である。一方,STOのマイクロ波磁界発生源であるField Generation Layer(FGL)からのマイクロ波磁界は,回転方向がFGLの磁化回転方向に依存する楕円回転磁界で,FGLの前後で逆周りである。したがって,MAMRに有効な反時計回り回転磁界は,FGLの前後片側だけに創生されることになる(図1b)。このため,主磁極極性が反転する度にFGLの磁化の回転方向を反転させる必要がある。特開2009−070541(下記特許文献2)および、WO2009/133786(下記特許文献3)に開示された、STO駆動電流を一定のままスピントルクの供給源となる固定層の磁化を主磁極磁界に従って反転させる方法が現実的である(図2a,b)。この場合、固定層の磁化反転中,FGL駆動に必要なスピントルクが得られないと考えられるため,固定層磁化反転を高速化する必要がある。第2の従来技術では、前記第1の従来技術のSTOの固定層の保磁力を低下させて主磁極磁界によって固定層磁化を反転させる技術、および、固定層に近接して磁束密度の高い磁性体を設置し反転速度を高める技術が開示されている。また、第3の従来技術では、主磁極または、補助磁極の一部を実質的に固定層とする技術が開示されている。主磁極に突起(リップ)部を設け、スピン散乱層を介して高周波磁界発生器が配置され、さらに、FGLへの主磁極からの磁界の影響を抑制する向きにスピントルクが働くように電流を流す構成とする。この構成により、主磁極から当該高周波磁界発生器への流入磁界が膜面に垂直に入るようにすることが可能となる。そして、主磁極をスピン源として用いる為、主磁極の極性に依存せずに最大高周波磁界が得られる高周波磁界発生器駆動電流が所望の周波数に応じて設定が可能である。
US2008/0019040 特開2009−070541 WO2009/133786
1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度を有するMAMRでは、主磁極からの書き込み磁界が印加されているナノメートルオーダーの領域に、強力な高周波磁界を照射して磁性記録媒体を局所的に磁気共鳴状態にし、磁化反転磁界を低減して情報を記録する。STOの発振時に固定層磁化が十分に固定され、安定なスピントルクがFGLに供給される必要がある。さらに、主磁極極性が反転する際には、FGLの磁化の回転方向が反転する必要がある。主磁極極性が反転する度にFGLの磁化の回転方向が反転しない場合,媒体磁化の反転位置がFGLの前後でずれることになり,線記録密度を高めることができない。
特許文献1記載の技術においては、強力な高周波磁界をナノメートルオーダーの領域に照射して記録媒体を局所的に磁気共鳴状態にし、磁化反転磁界を低減して情報を記録することが可能である。固定層には、(Co/Pd)n,(Co/Pt)nなどの高磁気異方性(かつ比較的、飽和磁束密度低い)多層膜を用いているため、安定なスピントルクがFGLに供給されると考えられる。しかし、主磁極極性の反転に伴って固定層磁化が反転しないので、FGL磁化の回転方向を反転させるには,STO駆動電流を反転させることになる。この場合、a)電流の正負でスピントルクの効率が変化する,b)FGLに印加される外部磁界が等しくない,c)FGL磁化の立ち上がり角度が異なる,d)STO駆動電流を主磁極磁界に同期させる必要がある,といった問題を解決する必要があり,実現が困難である。
特許文献2記載の技術では、スピントルク源となる固定層に主磁極からの磁界より保磁力の低い(Co/Pd)n,(Co/Pt)nなどの多層膜を用いており、STO駆動電流を一定のまま、主磁極極性に同期して固定層の磁化を反転、続いてFGLの磁化の回転方向を反転に至らしめている。保磁力の低い(Co/Pd)n,(Co/Pt)nなどの多層膜は、磁気異方性エネルギーが小さく、飽和磁束密度Bsが更に低くなる傾向があり、高Bs材料を積層しても、十分な固定層の磁化反転速度が得られない。また、固定層の保磁力が低いため、電流を強くして大きなスピントルクをFGLに供給しようとすると、その反作用で固定層磁化が不安定になるといった問題がある。さらに、これらの多層膜はαが0.07−0.3と大きいため、スピンポンピング作用によってスピン流が消費されるので、同じ周波数の高周波磁界を得るための電流を多く流す必要があることも問題である。
特許文献3記載の技術では、主磁極に設けた突起(リップ)部をスピントルク源とすることにより、STO駆動電流を一定のまま、主磁極極性に同期してスピントルク源の磁化を反転、続いてFGLの磁化の回転方向を反転に至らしめている。主磁極または、補助磁極の一部を実質的に固定層とするため、磁化反転速度は十分速いと考えられる。しかし、スピントルク源の磁化が主磁極の磁化状態の影響やFGLからのスピントルクの反作用の影響で変動しやすく、大きなSTO駆動電流を流し、発振周波数を増大させることが困難である。
本発明の目的は、1)STOの固定層の磁化反転速度を十分早くすること、2)STOの発振時に固定層磁化が十分安定していることを両立させることにより、信頼性が高く結果としてコストを低減する超高密度かつ高速情報転送速度記録に好適な情報記録装置を提供することにある。
以上の問題を解決する目的で、まず、以下のLLG(Landau Lifschitz Gilbert)方程式(第1式)に基づく計算機シミュレーションで磁化反転挙動を解析した。
ここで,γはジャイロ磁気定数,αはダンピング定数である。有効磁界Hは,セル間交換磁界Hex,磁気異方性磁界Ha(=Hk×cosθm,θmは磁化と磁化容易軸のなす角),静磁界Hd,および,外部磁界Hextの4成分の和で構成される。Hexは,交換スティフネス定数が1μerg/mで,セル間の磁化方向のずれの2乗に比例する交換エネルギーポテンシャルを仮定して算出した。
固定層の磁化反転の解析には、40nm×40nm×9nmの固定層を径2.5nm,高さ3nmのセルで分割し,16×16×3個のセルの集合体とみなした(図3)。各々のセル内の磁化は一様で,一斉回転モデルにしたがって反転するものとする。各セルはほぼ等しい一軸磁気異方性を持っており(分散±10%),磁化容易軸分散はz軸を中心としてΔθ50=3deg.の分布を仮定した。外部磁界Hext,磁気異方性磁界Hk,飽和磁束密度Bs,ダンピング定数αを表1の範囲で変化させ,各組合せ条件における磁化反転過程を計算した。
計算は,まず,z方向に予定強度の外部磁界を印加して十分時間を置いた後,−z方向に100psで所定の外部磁界を印加して放置し,磁化の挙動を観察する(図4a、図4b)。磁化の反転時間は,所定の外部磁界が印加された時点を原点とし、飽和磁化Bsoの90%の磁化が反転する(磁化のz成分Bszが−0.9Bsoに達する)時刻までの時間をもって求めた。
まず,ある固定層について,外部磁界強度に対する磁化反転挙動の概要を示す。図5は,磁化のz成分Bszを縦軸とし、Bs=1.2T,Hk=0.82MA/m(9kOe)の固定層磁化の反転の様子について外部印加磁界強度を変えて調べたものである。外部磁界はほぼ−z軸方向に印加している。反転時間が最も長いのは,外部印加磁界Hextが0.6MA/m(7.5kOe)で,230ps,最も短いのがHext=1.2MA/m(15kOe)で120psである。Hextが大きいほど反転時間が短くなっていることが分かる。
次に,外部磁界強度を固定した場合の磁気異方性磁界強度に対する磁化反転挙動の概要を示す。図6aは,Bs=1.2Tの固定層に0.6MA/m(7.5kOe)の外部磁界を印加した場合の磁化反転の様子について磁気異方性磁界Hkを変えて調べたものである。Hk=1.68MA/m(21kOe)では磁気異方性が大きすぎて磁化が固定されるため,計算時間の範囲で磁化の反転は見られなかった。Hk=1.2MA/m(15kOe)では100psを過ぎたあたりから磁化反転の兆候が見られ,約300psで完了した。一旦反転が始まると,磁化のz成分の変化の割合は,Hk=0.72MA/m(9kOe)の場合と比べても大きな差にはなっていない。より大きな磁気異方性により,磁化容易軸近くに固定層磁化が拘束されたため,反転の開始が遅れたものと考えられる。Hk=0.24MA/m(3kOe)では,t=0においてBsz=0であり,固定層磁化がこの時点ですでに半分近く反転している現象が見られている。これは,磁気異方性磁界の影響よりも,反磁界の影響が大きいため,外部印加磁界が弱まる際に固定層磁化が面内に倒れるためと考えられる。反磁界の影響を大きくして反転開始タイミングを早めることが,固定層の短時間磁化反転のポイントの1つとなる。ただし,図6のHk=0.24MA/m(3kOe)の磁性膜の場合には,反転開始が早いとしてもSTOの固定層には不向きである。反磁界が強すぎるため,いつまでたっても磁化が反転しきらず,飽和状態に至っていない。固定層の磁化が飽和していない場合,面内磁化成分が残ることになり,不必要な方向のスピントルクをFGLに与えることになる。また,固定層自体の磁化の安定性が悪いので,FGLが受取るスピントルクの反作用によって固定層が不安定となり,発振が乱れる結果となる。Hk=0.24MA/m(3kOe)に観られる,反転開始時間は早いが完全に反転しきらない(ここでは、磁化のz成分Bszが−0.9Bsoに達することがない)現象は,Hk=0.72MA/m(9kOe)においても,反磁界が強くなるBs=1.8Tとすると観測された(図6b)。
以上のように,MAMR用STOに供する固定層は,1)磁化反転速度が十分速いこと,2)磁化が完全に反転して飽和に達することを両立させる必要があることが分かった。
そこで,磁化反転計算で得られた結果を整理するため,速度因子Vと飽和因子Sを導入する(図7)。図7aは、固定層の磁化反転開始時の固定層に印加される有効磁界を示したものである。ここで、速度因子Vとして、固定層に作用する有効磁場の和を定義する。外部印加磁界Hextと実効反磁界Hd−effは、磁化反転を促進し、速度因子Vに正の作用となる。ただし、膜面に垂直方向の実効反磁界Hd−effは、固定層の形状を考慮して、層に垂直な方向の反磁界係数をN、層方向の反磁界係数をNinとして、膜面に垂直方向の反磁界Nと,膜面内の反磁界Ninとの差で与えられるものとする。
磁気異方性磁界Hkは磁化方向を向くため磁化反転を抑制する作用をすることを考慮すると、速度因子Vは
と表される。図5においては,Hextの増加に伴って,速度因子Vが大きくなり,磁化反転時間が短くなっている。また,図6aにおいては,Hk=1.68MA/m(21kOe)の場合には,速度因子Vが負値となり,磁化反転が起こっていない。Hkが1.2MA/m(15kOe)より小さいと,Hkの減少に伴って速度因子Vが大きくなり,磁化反転開始のタイミングが早くなっていると考えられる。磁化反転時間が短くなることと,反転開始のタイミングが早くなることとは,厳密には等しい現象とは言えないが,ここでは,どちらも反転を速くするため,同じ速度因子Vで議論することにする。
図7bは、固定層の磁化反転終了時に固定層に印加される有効磁界を示したものである。ここで、飽和因子Sとして、固定層に作用する有効磁場の和を定義する。飽和因子Sは固定層の磁化を飽和に至らしめる際に作用する有効磁場で,外部印加磁界Hextと磁気異方性磁界Hkが正の作用をする。実効反磁界Hd−effは磁化と反対方向を向くため,飽和因子Sには負の作用となる。
図5においては,最も飽和因子Sが小さいHext=0.6 MA/m(7.5kOe)の場合でさえ固定層磁化が磁化飽和に至っているため,Hextの増加に伴って飽和因子Sが大きくなっても,磁化飽和する状況に変化は見られない。一方,図6においては,Hkの減少に伴って飽和因子Sが小さくなっている。Hk=0.24(3kOe)の場合には飽和因子Sが負値となるため,固定層磁化が飽和に至らないと解釈できる。Bs=1.8Tの場合には,実効反磁界Hd−effが大きいため,Hk=0.72MA/m(9kOe)でも飽和因子Sが負値となり,固定層磁化が飽和に至らない。なお,実効反磁界Hd−effは,膜面に垂直方向の反磁界NpBs=(Npは,膜面に垂直方向の反磁界係数)と,膜面内の反磁界NinBs(Ninは,膜面内の反磁界係数)との差で与えられるものとする。従来固定層候補の(Co/Pd)n,(Co/Pt)nなどの多層膜では、磁化飽和に関する外部磁界の効果が考慮されておらず、一般には、H>Hd−effを固定層の要件としていたと考えられる。
図8は,縦軸に飽和因子S,横軸に速度因子Vを取って,Hext(0.4−1.2MA/m(5−15kOe)),Hk=(0.24−1.68MA/m(3−21kOe)),Bs=(0.6−2.4T)の各組み合わせについて,計算された磁化反転状況をまとめたものである。ダイヤモンドは固定層磁化が磁化飽和に至った条件,四角は固定層磁化が反転を始めたものの磁化飽和に至らない条件,三角は固定層磁化が回転しなかった条件である。速度因子Vが負の場合には,固定層磁化が回転していない(三角)。また,飽和因子Sが負の場合には,固定層磁化が磁化飽和に至っていない(四角)。速度因子Vが大きいほど反転時間が短くなると予想されるが,図8によれば,外部印加磁界Hextが一定の元,速度因子Vが大きいほど飽和因子Sが小さくなることがわかる。飽和因子Sを確保しつつ速度因子Vを大きくするには,Hextを大きくすることが必要であることがわかる。
反転時間の速度因子V依存性を図9に示す。反転時間は,ほぼ速度因子Vに反比例しており,0.2ns以下の反転時間を得るには,Vが0.7(MA/m(8.5kOe))以上必要であることが分かる。ただし,これまでの計算は,ダンピング定数αが0.1の場合であったことに注意する必要がある。αが小さいほどエネルギーの散逸が小さく,磁化反転時間が長くなることが知られている。反転時間のα依存性については,次節で詳述するが,これまで固定層候補として考えられてきた(Co/Pd)nや(Co/Pt)nなどの固定層材料のαは0.07−0.3である。また、これまで、Hkが小さくて固定力が弱いためSTOの固定層材料候補となっていない(Co/Ni)n多層膜のαは、0.03−0.05が報告されている。αが異なる固定層材料を用いる場合、必要なVが変わってくることを考慮する必要がある。
図10は,Hext=0.8MA/m(10kOe),Hk=0.63MA/m(9kOe),Bs=1.2Tにて求めた磁化反転時間のダンピング定数α依存性である。図には,単磁区粒子の反転時間もあわせて示してある。固定層の磁化反転時間は,αの減少に伴って長くなるが,単磁区粒子に比べると比較的穏やかである。固定層の磁化反転時間は,他の多くの条件にても概ね,α=0.1の場合の磁化反転時間tsw(0.1)を用いて,
と表すことが出来た。例えば、αが0.025の固定層材料を用いた場合,他が全く同じ条件でも、磁化反転時間はα=0.1の場合のほぼ2倍となると考えられる。一方,単磁区粒子の場合には,αの減少に伴ってαの逆数に比例して急激に磁化反転時間が大きくなっている。ダンピングの原理から考えると,単磁区粒子の磁化反転時間のα依存性がむしろリーズナブルである。αが小さい場合に固定層の磁化反転には別のダンピング機構が働いていると推定される。
以上より、任意のαを有する固定層において、必要な固定層磁化反転時間(必要tsw)を実現する速度因子を「必要V(α)」とすると、
のように表される。図10bは、これを図示したものである。
図11a、bは,α=0.2,0.03の場合について磁化反転の様子をx,y,zの各磁化成分で示したものである。αが大きい場合には,磁化のz成分が減少するとともに,直交するxとy成分が交互に大きくなっており,固定層の磁化がほぼ一体となってz 軸の周りを回転しながら反転している状態である。単磁区粒子と同様の振る舞いを示している。これに対して,αが小さい場合には,Bszが0になるまで,直交するxとy成分がほとんど観られていない。これは,固定層の磁化反転の初期において,各セルの磁化がほぼ独立に回転している状態と推定される。各セルの磁化がほぼ独立に回転している場合には,隣接セルからの有効磁界が大きく変動し,セル磁化の回転が変調を受けるため,全体が一体となって回転する場合よりダンピングが大きくなると考えられる。Bszが0になるまでのBszの変化が急峻である。隣接セル間のフラストレーションが解消し,全体が一体となって回転するようになると,磁化のxとy成分が交互に大きくなると供にz成分の変化が小さくなっている。Bszが0になると全体が一体となって回転する理由は、図11c、dに示すように、隣接セルからの有効磁界が、反転初期(図11c)と反転中期(図11d)とで変わっているためと考えられる。反転初期には、交換結合磁界Hexと静磁界Hdとが逆方向で打ち消しあっているので、比較的独立状態を保って磁化が回転する。一方反転中期には、交換結合磁界Hexと平均的な静磁界Hdが磁化方向を向くため、全体が一体となって回転するようになるものと考えられる。固定層をCo系記録媒体と同様の、膜成長方向に伸びる柱状のグラニュラー構造とし、非磁性物質の析出により粒子境界の交換相互作用を低減させることにより、反転後半での全体が一体となった磁化回転を抑制でき、磁化反転時間の短縮が図られる。固定層のダンピング定数αは大きいほうが,磁化反転時間が短くなり望ましいと考えられるが,αが大きいとスピンポンピング作用によってスピンが消費されるため、必要な周波数の高周波磁界を得るための電流値まで電流を流せないことも想定され、好ましくない。むしろ,磁化反転初期の各セルの磁化がほぼ独立に回転している状態を維持し,固定層磁化の一体化を遅らせることも,有効な固定層磁化反転の短時間化方法である。
最後に,固定層の設計指針について考察する。固定層には,磁化の高速反転性や飽和特性が要求されることは,上記に述べた通りである。しかしながら,STOの固定層に要求される最も重要な機能は「磁化が固定され,安定なスピントルクをFGLに供給する」ことである。「磁化反転し易い」ことと,「磁化が十分固定される」こと,一見矛盾する特性を併せ持つ固定層の設計には,明確な設計指針が必要である。ここでは,「磁化が十分固定される」因子として,飽和因子Sを用いて,固定因子Fを次のように導入する。
ここで,Volは固定層の体積である。したがって固定因子Fは,飽和因子Sの有効磁界下にある固定層の磁気エネルギーに相当する量と考えられる。
図12aは,Hext=0.8MA/m(10kOe),Hk=0.64MA/m(8kOe)の場合の固定層のBsに対する速度因子Vと固定因子Fとを併せて示したものである。実効反磁界係数Np−Ninは,固定層の形状(40nm×40nm×10nm)を考慮して,0.671とした。左縦軸が速度因子V,右縦軸が固定因子Fを示している。速度因子Vは,Bsの増加に伴って直線的に増加しており,Bsが大きいほど磁化反転が早くなることを示している。一方,固定因子FはBsに対して上に凸の形状となっている。中間的なBs値において固定層が最も安定となる。Bsが大きすぎると,MAMR用STOに用いる板状の固定層は実効反磁界係数が正であり,反磁界が強くなり,飽和因子Sが小さくて磁化が不安定になるためと考えられる。
必要な磁化反転時間を得るための速度因子Vの値が1.36MA/m(17kOe)だとすると,本例の固定層に必要なBsは,1.7T以上となる。ここで,Bsが少しだけ1.7Tより大きい状況を考えると,速度因子Vは大きくなるが,固定因子Fは逆に小さくなってしまう。固定因子Fの値が十分であれば,さらにBsを大きくすることも考えられる。固定層の安定性は,FGLに供給するスピントルクの反作用に抗する上で極めて重要である。
ここで、固定層に印加する磁界を面直方向から少し傾ける場合について考察する(図12b)。反転時には、磁化と磁界が反対方向を向いているため、ストーナ・ウォルファス則に従い、有効磁気異方性磁界Hk−effが磁界印加角度の増加と共に大きく減少する(Hk−eff−sw)。一方、固定時には、磁化と磁界とがほぼ同じ方向を向くため、Hk−effは、cos側に従って緩やかに減少する(Hk−eff−osc)。例えば、磁界印加角度が10−20度の場合、固定層の磁化固定作用にはほとんど支障が無く、反転時の磁気異方性磁界だけを低下させることが可能となる。このことは、固定層に印加する磁界を面直方向から少し傾けることにより、飽和因子S、固定因子Fを保ったまま、速度因子Vを高めることができることを意味している。あるいは、速度因子Vが変わらないようにHkを高めると、飽和因子S、固定因子Fが4割増加させることができる可能性もある。
以上より、固定層に印加する磁界を面直方向からθ傾けた場合の速度因子と飽和因子は、数式3、及び数式4より、
のように、表されると考えられる。ここで、固定層に印加される磁界が、固定層内で分布を持つ場合には、その平均値を用いるものとする。θを変えて、反転状態や反転速度を求めたところ、θが25度まで、図8および図9の速度因子Vと飽和因子SをそれぞれV’とS’に置き換えても同等の結果となることが分かった。
ただし、FGLに印加される磁界が面直から傾くと、その方向にFGL磁化が拘束されやすくなるため、発振(FGL磁化の回転)が阻害されて好ましくない。FGLに近い方の磁極幅に対して、固定層に近い方の磁極幅を狭くすることにより、固定層に印加される磁界を平均的に傾けることが可能となる。
固定層磁化の反転時には磁化が中間にあるため、FGLに不要なスピントルクを与える可能性がある。STO励磁電流を、主磁極極性の切り替え時に同期して一時的に弱めることにより、この影響を抑えることができ、安定したSTO発振特性が得られる。
HDDでは、面記録密度の増加に伴って、トラック方向のビット長を短くしている。1Tbit/inを超える磁気記録においては、トラック方向のビット長が10nm以下となることが予想される。この場合、現在のHDDに標準的に用いられているヘッド−媒体相対速度である20m/sを適用すると、1ビット当たり10/20=0.5ns以下で記録を行うことになる。この場合、情報転送速度は、2Gbit/sとなる。前述の第1、第2、第3の従来技術においては、ヘッド磁界を記録媒体に垂直に印加している為、記録媒体の反転時間を0.4ns以下とするのが困難である。このため、1Gbit/sを超える情報転送速度を実現するのは困難である。
ここで、主磁極の極性反転時間を0.1nsとすれば、記録媒体の反転時間を0.2ns以下、固定層の反転時間を、0.2ns以下とする必要がある。本発明における所定の条件下では、固定層磁化反転速度を0.2ns以下、記録媒体反転速度を0.2ns以下とすることができるので、1ビット書込み時間=0.5nsを達成できる。その結果、記録密度が1平方インチあたり1Tビットを超えるマイクロ波アシスト記録を適用した情報記録装置がおいて、2Gbit/sを超える情報転送速度を実現する高密度情報記録方法と装置とを提供することが可能となる。
上記構成により、固定層の磁化反転速度が十分早く、かつスピントルクオシレータの発振時の固定層磁化安定化を両立させることにより、信頼性が高く結果としてコストを低減する超高密度かつ高速情報転送速度記録に好適な磁気ヘッド及び磁気記録装置を提供することが可能となる。
MAMRの原理を示す図 FGLから創生される磁界を示す図 STO、外部磁界とSTO駆動電流の方向の関係を示す図 STO、外部磁界とSTO駆動電流の方向の関係を示す図 固定層の計算モデルを示す図 計算に用いた外部磁界の時間変化を示す図 磁化の時間変化と反転時間の定義を示す図 磁化の時間変化を示す図 磁化の時間変化を示す図 磁化の時間変化を示す図 固定層反転開始時の有効磁界の関係を示す図 固定層反転終了時の有効磁界の関係を示す図 反転の状態を示すダイアグラム 反転時間の速度因子依存性を示す図 反転時間のダンピング定数依存性を示す図 必要Vとダンピング定数との関係を示す図 固定層磁化反転時の磁化の各成分の変化を示す図(α=0.2) 固定層磁化反転時の磁化の各成分の変化を示す図(α=0.03) 固定層磁化反転開始時における、ある磁化要素に印加される有効磁界の様子を示す図 固定層磁化がほぼ面内を向く時における、ある磁化要素に印加される有効磁界の様子を示す図 MAMR向けSTO用固定層の設計指針を示す図 外部磁界を固定層面直から傾けた場合の有効異方性磁界の変化を示す図 磁気ヘッド部の拡大図 磁極間に発生する磁界のアスペクト比依存性を示す図 (Co/Ni)nの磁気特性を示す図 試作磁性体の磁気特性を示す図 試作磁性体のパラメータを用いて計算した固定層の反転状態を示す図 試作磁性体のパラメータを用いて計算した固定層の反転時間を示す図 磁気ヘッドの磁気ヘッドスライダへの載置形態 磁気ヘッドの磁気ヘッドスライダへの載置形態 磁気ヘッド部の断面拡大図 ABS面から見た磁気ヘッド部の拡大図 ABS面から見た磁気ヘッド部の拡大図 ギャップ磁界分布を示す図 ギャップ磁界分布を示す図 ギャップ磁界分布を示す図 ギャップ磁界分布を考慮した磁化反転特性を示す図 磁気ヘッド部の拡大図 固定層における機能分割を構成する例を示す図 磁気ヘッド部の拡大図 面内磁界によるアシスト反転の原理を示す図 面内磁界によるアシスト反転の効果を示す図 磁気ディスク装置の全体構成図。
以下、図面を用いて本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。
図13は記録ヘッドおよび記録媒体を、記録媒体面に垂直(図中の上下方向)かつヘッド走行方向(図中の左または右方向であるトラック方向)に平行な面で切断した場合における記録機構周辺の断面構造を表している。記録ヘッド200においては、主磁極5と対向磁極6との間で、図面上方にて磁気的な回路を構成している。ただし、図面上方においては電気的にはほぼ絶縁されているものとする。磁気的な回路は、磁力線が閉路を形成するものであり、磁性体のみで形成されている必要はない。また、主磁極5の対向磁極6と反対側に補助磁極等を配置し、磁気回路を形成してもよい。この場合には、主磁極5と補助磁極との間は電気的に絶縁されている必要はない。更に、記録ヘッド200は、これらの磁気回路を励磁する為のコイル、銅線等が具備されているものとする。主磁極5と対向磁極6には、電極または電極に電気的に接触する手段が備わっており、主磁極5側から対向磁極6側、あるいはその逆のSTO駆動電流がFGL2を通して流せるように構成されている。主磁極5と対向磁極6の材料は、飽和磁化が大きく、結晶磁気異方性がほとんどないCoFe合金とした。記録媒体15には、基板19上に、下地層20として30nm−CoFe上に10nm−Ru層を形成した積層膜、記録層16として磁気異方性磁界が2.4MA/m(30kOe)のlOnmCoCrPt−SiOx層を用いた。
主磁極5に隣接して層状に、磁束整流層8,非磁性スピン散乱体12、FGL(磁化高速回転体)2,非磁性スピン伝導層3,固定層1を経て対向磁極6にいたる。尚、磁束整流層8から固定層1までは、図面左右方向に伸びる柱状構造で、断面がABS面に沿った方向が長い長方形をしている。当該長方形形状とすることにより、トラック幅方向に形状異方性が生じる為、主磁極からの漏れ磁界のFGL2の面内成分があってもFGL2の面内磁化回転を円滑に行わせることが可能となり、主磁極5とFGL2を近づけることができる。この長方形のABS面に沿った辺の長さwは、記録トラック幅を決定する重要な因子であり、本実施例では35nmとした。マイクロ波アシスト記録においては、主磁極5からの記録磁界とFGL2からの高周波磁界とが揃わないと記録できないような磁気異方性の大きい記録媒体を用いることになる為、主磁極5の幅と厚さ(ヘッド走行方向の長さ)は、記録磁界が大きく取れるよう大きめに設定することが可能である。本実施例では、幅80nmと厚さ100nmとすることで、約0.9MA/mの記録磁界が得られている。磁束整流層8は、主磁極5と飽和磁化が同じまたは大きな材料を用い、主磁極5からの磁界がFGL2の層方向にできるだけ垂直となるよう3D磁界解析ソフトを用いて磁束整流層8の厚さ設計を行った。本実施例における磁束整流層8の厚さは、10nmであったが、この値は、前述の長方形の形状、対向磁極までの距離と状況、用いる媒体の状況、図面上方における磁気回路の状況に依存する。FGL2は、飽和磁化が大きく、結晶磁気異方性がほとんどない厚さ15nmのCoFe合金とした。FGL2では、層に沿った面内で磁化が高速回転し、ABS面および、側面に出現する磁極からの漏れ磁界が、高周波磁界として作用する。FGL2に(Co/Fe)n多層膜等の負の垂直磁気異方性を有する飽和磁化が大きな材料を用いても良い。この場合、FGL磁化の面内回転が安定化し、より高い周波数の高周波磁界が得られる。FGL2の磁化回転駆動力は、非磁性スピン伝導層3を介して固定層1に反射されたスピンによるスピントルクである。このスピントルクは、主に、主磁極5、磁束整流層8、および対向磁極6から創生される磁界の和となるギャップ磁界の影響をFGL2において打ち消すように作用させるのが良い。このスピントルクの作用を得るには、対向磁極6側から主磁極5側へSTO駆動(直流)電流を流す必要がある。主磁極5側から磁束が流入する場合に、FGL2の磁化の回転方向はSTO駆動(直流)電流の上流側から見て反時計周りとなっており、主磁極5からの磁界で反転する記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ向きの回転磁界を印加することができる。主磁極5へ磁界が流入する場合には、FGL2の磁化の回転方向は高周波駆動(直流)電流の上流側から見て時計周りとなり、主磁極5への磁界で反転する記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ向きの回転磁界を印加することができる。したがって、FGL2から生じる回転高周波磁界は、主磁極5の極性に依らず、主磁極5による磁化反転をアシストする効果がある。本効果は、主磁極5の極性に寄ってスピントルクの向きが変わらない従来技術1の高周波磁界発生器では得られない。スピントルク作用は、STO駆動電流(電子流)が大きくなるほど大きくなり、また、非磁性スピン伝導層3と隣接する層との間に分極率の大きなCoFeB層を1nm程度挿入すると大きくなる。非磁性スピン伝導層3には、2nm−Cuを用いた。非磁性スピン散乱体12には、3nm−Ruを用いた。PdやPtを用いても同様な作用がある。固定層1には、l2nm(Co/Ni)多層膜を用いた。固定層に印加される磁界は、磁束整流層8端面から対向磁極6端面までの長さが40nm、FGL2の高さが32nmとしたので、3D磁界解析ソフトを用いて解析したところ、約0.8MA/m(10kOe)である(図14)。試作した(Co/Ni)多層膜の磁気特性を図15に示す。また、比較に用いた(Co/Pd)多層膜、Co膜の磁気特性を図16に示す。これらの磁気パラメータを用いて再度、計算機シミュレーションにより、外部磁界0.8MA/m(10kOe)を仮定して磁化反転特性を求めたところ、(Co/Ni)、特にCo組成がNi組成と同じか大きい場合、即ち、Co層の合計膜厚が、Ni層の合計膜厚以上である場合に、良好な高速磁化反転が得られることが予想された(図17a)。図は、縦軸にHext、横軸にHd−eff−Hをとり、各領域での磁化反転特性を計算結果から予想したものである。従来、外部磁界の効果が考慮されていないため、固定層の要件はH>Hd−effを採用していたと考えられる。この場合、図17bの第2象限にある物質だけが対象となるため、(Co/Pd)n,(Co/Pt)nなどの多層膜が固定層の候補に挙がっていた。しかし、第2象限では、Hextを超える大きな速度因子V(=Hext+Hd−eff−H)が得られない。そこで、本発明は、H<Hd−eff領域(第一象限)に着目し、飽和因子S(=Hext−Hd−eff+H)及び固定因子F(=BsVol×S)を念頭に置くことにより、発振時に安定でかつ、より高速な磁化反転を実現することに成功した。(Co/Ni)多層膜は、大きな磁気異方性エネルギーを保ちつつ、Bsを1.0−1.7Tの広範囲で制御できるため、必要な固定因子Fを確保しつつ、速度因子Vを大きくすることが可能であるため、MAMR用STOに用いる固定層材料として有望である。特に、Co組成がNi組成と等しいか大きい場合には、Bsが1.5Tを超えるため、高速反転に好ましい。図17bは、種々の固定層候補磁性膜の膜厚を変えることにより、(Hd−eff−Hk−eff−sw)/Hextに対する磁化反転時間の逆数をプロットしたものである。固定層候補磁性膜の膜厚を薄くすると、4πMsに向かってHd−effが増加し、速度因子Vが大きくなる。したがって、図はそれぞれの固定層候補磁性膜に対して右上がりの曲線となる。これは、磁性膜が薄いほど(Hd−eff−Hk−eff−sw)/Hextが大きくなり、磁化反転が早くなることを意味している。黒丸は、従来候補であった(Co/Pd)n多層膜に対する曲線で、H>Hd−effであるため、図の第一象限に達することがなく、磁化反転が早くならない。三角や四角は、(Co/Ni)n多層膜に対する曲線で、Hd−eff−Hk−eff−sw=Hextとなって不飽和な反転なるまで、磁化反転を早くすることが可能である。×、+は、(Co/Ni)n多層膜に外部磁界を10度傾けた場合の曲線で、傾けない場合に比べてさらに高速の磁化反転が得られている。
本発明の高周波磁界発生源201を組み込んだ記録再生部109搭載のスライダ102をサスペンション106に取り付け(図18)、スピンスタンドを用いて記録再生特性を調べた。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング7nm、トラックピッチ40nmとして磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔15nmのGMRヘッドにより再生した。高周波駆動電流を変化させて、315MHzで800kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大13.1dBが得られ、630MHzで1600kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大8.0dBであった。このことから、1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度において、1.2Gbit/sを超える情報転送速度を実現することが可能であることがわかった。このときの高周波磁界の周波数は、35GHzであった。
一方、固定層に(Co/Pd)nを用いた場合には、315MHzで800kFCIの信号を記録した場合に信号/ノイズ比は最大13.0dBが得られたものの、630MHzで1600kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大2.0dBと大幅に劣化した。また、最大パフォーマンスが得られる35GHzの高周波磁界を得るのに必要な電流は、固定層に(Co/Ni)多層膜を用いた場合の約1.3倍必要であった。(Co/Pd)nを用いると、Hkが大きくて、Bsが小さいため、速度因子V(=Hext+Hd−eff−H)が小さくなり、高速反転特性が得られないと考えられる。また、(Co/Pd)は、(Co/Ni)に比べてダンピングコンスタントが大きいため、スピンポンピングによるスピン消費分を補う必要があった。
固定層にCoFe合金を用いた場合には、630MHzで1600kFCIの信号を記録した場合は、信号/ノイズ比は最大7.0dBとそれほど悪くないが、315MHzで800kFCIの信号を記録した場合に信号/ノイズ比は最大11.0dBで、十分なエラーレートが得られないことが分かった。CoFe合金は、飽和磁化が大きいため、飽和因子S(=Hext−Hd−eff+H)が負となり、飽和しないため、固定層磁化が揺らいで安定なスピントルクがFGLに供給されないものと考えられる。
図19(A)(B)を用いて磁気ヘッド走行方向と記録媒体との配置関係について説明する。磁気ヘッドの磁気ヘッドスライダへの載置形態は2種類あり、1つは図19(A)に示すトレーリング側への配置、もう1つが図19(B)に示すリーディング側への配置である。ここで、トレーリング側、リーディング側は、記録媒体に対する磁気ヘッドスライダの相対的な移動方向によって決まり、記録媒体の回転方向が図19(A)ないし図19(B)に示した向き(図中の矢印の方向)とは逆であれば、図19(A)がリーディング側への載置、図19(B)がトレーリング側への載置となる。なお原理的には、スピンドルモータの極性を逆にして記録媒体を逆向きに回転させれば、トレーリング側とリーディング側の関係を逆にすることが可能であるが、回転数を正確に制御する必要上、スピンドルモータの極性を変えるのは非現実的である。本発明の固定層に(Co/Ni)nを用いたマイクロ波アシスト記録用ヘッドを用いた場合には、図19(A)(B)のどちらの配置を用いても、1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度の記録再生に十分な信号/ノイズ比とオーバーライト特性が得られた。
図20は本発明による記録ヘッドおよび記録媒体の第2の構成例を示す図である。図20aは記録ヘッドを、記録媒体面に垂直(図中の上下方向)かつヘッド走行方向(図中の左または右方向であるトラック方向)に平行な面で切断した場合における記録機構周辺の断面構造を表している。主磁極5と対向磁極6との間で、図面上方にて磁気的な回路を構成していること、図面上方においては電気的にはほぼ絶縁されていること、これらの磁気回路を励磁する為のコイル、銅線等が具備されていること、主磁極5と対向磁極6に電極または電極に電気的に接触する手段が備わりSTO駆動電流がFGL2を通して流せるように構成されていることは、実施例1と同様である。主磁極5と対向磁極6の材料は、飽和磁化が大きく、結晶磁気異方性がほとんどないCoFe合金とした。記録媒体15には、基板19上に、下地層20として30nm−CoFe上に10nm−Ru層を形成した積層膜、記録層16として磁気異方性磁界が2.4MA/m(30kOe)のlOnm−FePtパタン層を用いた。
主磁極5に隣接して層状に、磁束整流層8,非磁性スピン散乱体12、FGL(磁化高速回転体)2,非磁性スピン伝導層3,固定層1、第2の磁束整流層13を経て対向磁極6にいたる。尚、FGL2から固定層1までは、図面左右方向に伸びる柱状構造で、断面がABS面に沿った方向が長い長方形をしている。この長方形のABS面に沿った辺の長さwは、記録トラック幅を決定する重要な因子であり、本実施例では40nmとした。マイクロ波アシスト記録においては、主磁極5からの記録磁界とFGL2からの高周波磁界とが揃わないと記録できないような磁気異方性の大きい記録媒体を用いることになる為、主磁極5の幅と厚さ(ヘッド走行方向の長さ)は、記録磁界が大きく取れるよう大きめに設定することが可能である。本実施例では、幅80nmと厚さ100nmとすることで、約0.9MA/mの記録磁界が得られている。磁束整流層8は、主磁極5と飽和磁化が同じまたは大きな材料を用い、主磁極5からの磁界がFGL2の層方向にできるだけ垂直となるよう3D磁界解析ソフトを用いて磁束整流層8の厚さ設計を行った。本実施例における磁束整流層8の厚さは、10nmであったが、この値は、前述の長方形の形状、対向磁極までの距離と状況、用いる媒体の状況、図面上方における磁気回路の状況に依存する。FGL2は、飽和磁化が大きく、結晶磁気異方性が層面内にある(負の垂直磁気異方性を有する)厚さ15nmの(Co/Fe)n多層膜とした。FGL2では、層に沿った面内で磁化が高速回転し、ABS面および、側面に出現する磁極からの漏れ磁界が、高周波磁界として作用する。FGL2の磁化回転駆動力は、非磁性スピン伝導層3を介して固定層1に反射されたスピンによるスピントルクである。このスピントルクは、主に、主磁極5、磁束整流層8、および対向磁極6から創生される磁界の和となるギャップ磁界の影響をFGL2において打ち消すように作用させるのが良い。このスピントルクの作用を得るには、対向磁極6側から主磁極5側へSTO駆動(直流)電流を流す必要がある。主磁極5側から磁束が流入する場合に、FGL2の磁化の回転方向はSTO駆動(直流)電流の上流側から見て反時計周りとなっており、主磁極5からの磁界で反転する記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ向きの回転磁界を印加することができる。主磁極5へ磁界が流入する場合には、FGL2の磁化の回転方向は高周波駆動(直流)電流の上流側から見て時計周りとなり、主磁極5への磁界で反転する記録媒体の磁化の歳差運動方向と同じ向きの回転磁界を印加することができる。したがって、FGL2から生じる回転高周波磁界は、主磁極5の極性に依らず、主磁極5による磁化反転をアシストする効果がある。非磁性スピン伝導層3には、2nm−Cuを用いた。非磁性スピン散乱体12には、3nm−Ptを用いた。固定層1には、l2nm(Co/Ni)多層膜を用いた。固定層に印加される磁界は、磁束整流層8端面から第2の磁束整流層13端面までの長さが40nm、FGL2の高さが38nmとしたので、3D磁界解析ソフトを用いて解析したところ、約0.8MA/m(10kOe)である。
本実施例の記録ヘッドは、固定層1に印加される磁界が面直から傾いた角度となるように構成されている。図20bは、図20aの記録ヘッドをABS面から見た図である。磁束整流層8のクロストラック方向の幅に比べて、第2の磁束整流層13の幅が狭くなっている。3D磁界解析ソフトを用いて、切断面A−A‘、切断面B−B‘の磁界分布(磁界の角度)を求めた結果を図20d、図20eにそれぞれ示す。また、図20fは、比較として計算した磁束整流層8の幅と第2の磁束整流層13の幅が等しい場合(図20f)の切断面C−C‘における磁界分布である。切断面A−A’は、狭くなった第2の磁束整流層13近くの磁界分布で、最大30度、平均11.5度の傾いた磁界分布が見られる。固定層1の磁化反転の高速化に有効であることが期待される。切断面B−B’は、狭くなった第2の磁束整流層13から離れた位置の磁界分布で、最大10度、平均2.3度の磁界分布が見られる。磁界の面内方向成分が少ないため、FGL2の設置場所に適していると考えられる。切断面C−C’は、磁束整流層8の幅と第2の磁束整流層13の幅が等しい場合について、第2の磁束整流層13近くの磁界分布を示したものである。最大10度、平均2.3度の磁界分布が見られる。最大25度、平均6.5度の磁界分布は、固定層1の磁化反転の高速化には、不十分であると思われる。図20gは、Hk=1.2MA/m(15kOe)、Bs=1.2Tの磁性体をそれぞれの磁界分布の中に置いたときの磁化反転の様子を示したものである。それぞれの磁界分布の中で、最大となる磁界の大きさを0.96MA/m(12kOe)とした。得られた磁化反転の時間は、数式7の速度因子を用いて推定した反転時間とそれぞれ、ほぼ一致している。図20bに示される記録ヘッドにおいて、狭くなった第2の磁束整流層13近くに固定層を設置するのが良いと推察される。
図20bに示される記録ヘッドの高周波磁界発生源201を組み込んだ記録再生部109搭載のスライダ102をサスペンション106に取り付け(図18)、スピンスタンドを用いて記録再生特性を調べた。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング7nm、トラックピッチ50nmとして磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔14nmのGMRヘッドにより再生した。高周波駆動電流を変化させて、354MHzで900kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大13.0dBが得られ、709MHzで1800kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大8.1dBであった。このことから、1平方インチあたり1Tビットを超える記録密度において、1.4Gbit/sを超える情報転送速度を実現することが可能であることがわかった。このときの高周波磁界の周波数は、35GHzであった。図20cに示される記録ヘッドを用いた場合には、354MHzで900kFCIの信号を記録した場合に信号/ノイズ比は最大13.2dBが得られたものの、709MHzで1800kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大4.0dBと大幅に劣化した。
図21は本発明による記録ヘッドおよび記録媒体の第3の構成例を示す図である。本実施例は、実施例2の記録ヘッドにおいて、固定層1を分割し各部分をその機能に応じて最適化したものである。図21aに示すように、固定層1のFGL2側の部分(高磁気異方性領域10)は、FGL2にスピントルクを供給するためより強固に固定されていることが望ましい。一方、固定層1の第2の磁束整流層13側は、第2の磁束整流層13からの磁界分布が大きく、固定層1の磁化反転を起動する部分(磁化反転起動領域9)であるので、反転磁界が低いことが望ましい。磁化反転起動領域9は、Hkが低いことが好ましいが、大きすぎるBsは固定層1の発振時の安定性を著しく妨げるため好ましくない。磁化反転起動領域9は、高磁気異方性領域10に対して、はみ出している部分があると、当該はみだし部分が高磁気異方性領域10からの交換相互作用を受けないため、固定層磁化反転の起点となり好ましい。磁化反転起動領域9と高磁気異方性領域10とは、適度な交換相互作用で結合していることが好ましい。さらに、FGL2を高磁気異方性領域10や非磁性スピン伝導層3に比べて小さくすると、1)固定層1よりFGL2に注入されるスピンが増加しSTO駆動電流が下がって好ましい、2)固定層1の体積が大きくなり発振時の磁化安定性が増して好ましい。固定層1を分割し各部分をその機能に応じて最適化する場合には、速度因子および飽和因子は磁化反転起動領域9で見積もるのが良い。また、固定因子は固定層1の各部分からの効果を足し合わせるのが良い。
図21bは、(Co/Ni)n多層膜において、前記特性を得る構成を示したものである。(Co/Ni)n多層膜では、Co4とNi7の積層厚みによって、磁気異方性や飽和磁化を制御可能である。磁化反転起動領域9では、Co4の厚みをNi7に比べて厚く、高磁気異方性領域10ではCo4の厚みをNi7に比べて薄く構成することによって所望の積層構造が得られる。本構造は、磁化反転起動領域9と高磁気異方性領域10とを連続的に構成できるため、境界部分での交換相互作用の劣化がない特徴がある。
図21に示される記録ヘッドを用いて、実施例2と同様のスピンスタンドによる記録再生特性を調べた。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング7nm、トラックピッチ35nmとして、トラックを重ね書きしながら磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔14nmのGMRヘッドにより再生した。高周波駆動電流を変化させて、385MHzで980kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大13.3dBが得られ、772MHzで1960kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大8.2dBであった。このことから、1平方インチあたり1.4Tビットを超える記録密度において、1.5Gbit/sを超える情報転送速度を実現することが可能であることがわかった。高周波磁界発生に必要な電流は、実施例2の場合の80%であった。
図22は本発明による記録ヘッドおよび記録媒体の第4の構成例を示す図である。本実施例においては、ヘッド磁界が記録媒体面に略平行になったところでアシスト記録を行っている。記録媒体は、記録ヘッドからの磁界を吸わないようにSULを設けていない。図23に本実施例の原理を示す。従来技術である垂直MAMS(Micro assist magnetic switching)では、反転前の磁化が、略記録磁界と逆方向にあるため、媒体磁化の反転に歳差運動の時間が必要である(図23a)。一方、本発明の面内MAMSでは、あらかじめ磁化が反転側に傾けられているので、反転時間が殆ど必要ない。このことを検証するため、計算機シミュレーションにより、短時間パルスによる反転実験を行った結果が図23bである。垂直MAMSでは、パルス時間が1nsを切るあたりから、パルス時間の短縮とともに急激に反転に必要な磁界が増加している。これに対して、面内MAMSでは、パルス時間が0.2nsでも、必要な磁界の急激な増加が見られず、極めて迅速な磁化反転が行われているものと思われる。
図21に示される固定層構造を図22の面内ヘッド磁界印加方式に組み込んだヘッドを作製し、実施例2と同様のスピンスタンドによる記録再生特性を調べた。ヘッド媒体相対速度20m/s、磁気スペーシング7nm、トラックピッチ30nmとして、トラックを重ね書きしながら磁気記録を行い、さらにこれをシールド間隔12nmのGMRヘッドにより再生した。高周波駆動電流を変化させて、493MHzで1250kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大13.0dBが得られ、984MHzで2500kFCIの信号を記録した場合は信号/ノイズ比は最大7.9dBであった。このことから、1平方インチあたり2.1Tビットを超える記録密度において、2.0Gbit/sを超える情報転送速度を実現することが可能であることがわかった。また、STO励磁電流を主磁極極性の切り替え時に同期して一時的に弱めることが可能なSTO励磁ドライバを用いることにより、ヘッド媒体相対速度20m/s、1476MHzで2500kFCIの信号を記録が可能となり、3.0Gbit/sの情報転送速度が実現できた。
本発明による第1から第4の各実施例に示された記録ヘッドおよび記録媒体を磁気ディスク装置に組み込んで、性能評価を行った。図24は本実施例の情報記録装置の全体構成を示す模式図である。磁気ディスク装置の基本構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)はそのA−A′での断面図である。記録媒体101は回転軸受け104に固定され、モータ100により回転する。図24では3枚2.5インチの磁気ディスク、6本の磁気ヘッドを搭載した例について示したが、磁気ディスクは1枚以上、磁気ヘッドは1本以上あれば良い。記録媒体101は、円盤状をしており、その両面に記録層を形成している。スライダ102は、回転する記録媒体面上を略半径方向移動し、先端部に磁気ヘッドを有する。サスペンション106は、アーム105を介してロータリアクチユエータ103に支持される。サスペンション106は、スライダ102を記録媒体101に所定の荷重で押しつける又は引き離そうとする機能を有する。磁気ヘッドの各構成要素を駆動するための電流はICアンプ113から配線108を介して供給される。記録ヘッド部に供給される記録信号や再生ヘッド部から検出される再生信号の処理は、図24(B)に示されたリードライト用のチャネルIC112により実行される。また、情報処理装置全体の制御動作は、メモリ111に格納されたディスクコントロール用プログラムをプロセッサ110が実行することにより実現される。従って、本実施例の場合には、プロセッサ110とメモリ111とがいわゆるディスクコントローラを構成する。
第1から第3の各実施例に示された記録ヘッドに連続媒体を組み込んだ磁気ディスク装置の場合、1平方インチあたり1.0Tビット、合計記録容量4Tバイト、情報転送速度1.2Gbit/s、ビットパタン媒体を組み込んだ磁気ディスク装置の場合1平方インチあたり1.5Tビット、合計記録容量6Tバイト、情報転送速度1.2Gbit/sの情報記録再生装置が得られた。第4各実施例に示された記録ヘッドと構成に連続媒体を組み込んだ磁気ディスク装置の場合、1平方インチあたり2.0Tビット、合計記録容量8Tバイト、情報転送速度2.1Gbit/s、ビットパタン媒体を組み込んだ磁気ディスク装置の場合1平方インチあたり3.0Tビット、合計記録容量12Tバイト、情報転送速度2.0Gbit/sの情報記録再生装置が得られた。
l…固定層、2…FGL(磁化高速回転体)、3…非磁性スピン伝導層、4…Co層、5…主磁極、6…対向磁極、7…Ni層8、…磁束整流層,12…非磁性スピン散乱体、13…第2の磁束整流層、15…記録媒体、16…記録層、20…下地層、19…基板、200…記録ヘッド、201…高周波磁界発生源、
100…モータ、101…記録媒体、102…スライダ、103…ロータリアクチユエータ、104…回転軸受け、105…アーム、106…サスペンション、108…配線、110…プロセッサ、111…メモリ、112…チャネルIC、113…ICアンプ。

Claims (6)

  1. 主磁極と、
    高周波磁界を発生させる磁界創生層と、
    前記磁界創生層にスピントルクを供給する固定層とを有し、
    前記固定層への外部印加磁界をH ext 、前記固定層の磁気異方性磁界をH 、前記固定層の膜面の垂直方向の実効反磁界をH d−eff としたとき、
    ext −H +H d−eff >0、かつ、H ext +H −H d−eff >0
    を満たし、
    前記固定層は、積層方向に柱状のグラニュラー構造を有することを特徴とする磁気記録ヘッド。
  2. 主磁極と、
    高周波磁界を発生させる磁界創生層と、
    前記磁界創生層にスピントルクを供給する固定層とを有し、
    前記固定層への外部印加磁界をH ext 、前記固定層の磁気異方性磁界をH 、前記固定層の膜面の垂直方向の実効反磁界をH d−eff としたとき、
    ext −H +H d−eff >0、かつ、H ext +H −H d−eff >0
    を満たし、
    前記固定層と前記主磁極との間には、第1の磁束整流層が設けられ、
    前記固定層に対して前記主磁極側とは反対側に、第2の磁束整流層が設けられ、
    ABS面における前記第2の磁束整流層のクロストラック方向の幅は、前記第1の磁束整流層のクロストラック方向の幅よりも小さいことを特徴とする磁気記録ヘッド。
  3. 主磁極と、
    高周波磁界を発生させる磁界創生層と、
    前記磁界創生層にスピントルクを供給する固定層とを有し、
    前記固定層への外部印加磁界をH ext 、前記固定層の磁気異方性磁界をH 、前記固定層の膜面の垂直方向の実効反磁界をH d−eff としたとき、
    ext −H +H d−eff >0、かつ、H ext +H −H d−eff >0
    を満たし、
    前記固定層は、高磁気異方性領域と磁化反転起動領域とに分割されて形成されていることを特徴とする磁気記録ヘッド。
  4. 前記磁化反転起動領域は、前記高磁気異方性領域に対して、ヘッドの進行方向から見て、はみ出した領域があることを特徴とする請求項3記載の磁気記録ヘッド。
  5. 主磁極と、
    高周波磁界を発生させる磁界創生層と、
    前記磁界創生層にスピントルクを供給する(Co/Ni)多層膜からなる固定層とを有し、
    前記(Co/Ni)多層膜におけるCo層の合計膜厚は、Ni層の合計膜厚以上であることを特徴とする磁気記録ヘッド。
  6. 主磁極と、
    高周波磁界を発生させる磁界創生層と、
    前記磁界創生層にスピントルクを供給する(Co/Ni)多層膜からなる固定層とを有し、
    前記固定層は、第1の領域と第2の領域とに分割されて形成され
    前記第1の領域では、Co層の合計膜厚はNi層の合計膜厚より厚く、
    前記第2の領域では、Co層の合計膜厚はNi層の合計膜厚より薄いことを特徴とする磁気記録ヘッド。
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