以下に、本発明にかかる無線通信システムおよび端末装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
以下の各実施の形態では、複数の無線局と通信が可能な場所に位置している端末から2局以上の無線局へデータを送信し、端末から送信されたデータを無線局同士が連携して受信する方法について開示する。各実施の形態では、「基地局」「端末」の用語を用いて説明する場合もあるが、開示するデータ伝送方法は「基地局」「端末」以外のいかなる無線局に対しても適用可能である。なお、各実施の形態においては、ある端末から送信されたデータを他の無線局と連携して受信する無線局を「連携無線局」と呼んで説明を行う。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態の無線通信システムの構成例および動作概要を示す図である。図示したように、本実施の形態の無線通信システムは、複数の無線局(無線局1,2)および端末を含む。無線局1,2は、たとえばセルラー無線通信システムの基地局であり、端末は移動局である。
図1では、端末が無線局1および2と通信可能な場所に位置している場合の例を示している。なお、図示を省略しているが無線局1,2は上位ネットワークに接続されたゲートウェイなどの上位装置に収容されている。端末から無線局側への方向を上り方向とする。このような状態において端末から上位ネットワーク(無線局側)に向けてデータを送信する場合には、端末は、送信すべきデータを分割して複数の無線局1,2に異なるデータ部分を送信する。また、無線局1,2は異なるデータ部分を受信すると、有線ネットワークにおいて一方の無線局から他方の無線局に受信データ部分を転送し、他の無線局から転送されたデータ部分を受信した無線局は、配下の端末から直接受信したデータ部分と他の無線局経由で受信したデータ部分を統合する。たとえば、図示したように、無線局2がデータ部分を転送し、無線局1で各データ部分を統合する。このように、本実施の形態の無線通信システムでは1つの端末がデータを分割し、異なるデータ部分を複数の無線局に送信することを特徴とする。便宜上、図1においては、図示した端末が送信する上りデータを連携して受信する無線局1,2のみを記載しているが、実際には、連携受信を行わない他の無線局も無線通信システムに含まれる。連携受信を行う無線局(連携無線局)は、端末が上りデータの送信を開始する前に決定される。連携無線局は、上りデータの送信側(端末)と受信側(無線局)のどちらが決定してもよい。また、決定方法については特に規定しない。
端末は、複数の無線局に異なるデータ部分を送信する際に、送信ビームを用いてそのデータ部分を受信する無線局に対して強い電力で信号送信するようにしてもよい。このような方法により、各データ部分を受信無線局に対して強い電力で伝送することができる。また、異なるデータを送信することにより、2つの無線リンクを有効に活用でき、高い通信容量を達成することが可能となる。
図2は、本実施の形態の連携制御手順を示すシーケンス図であり、図1に示した動作を実行する際のシーケンス例、すなわち、端末が連携無線局である無線局1,2に対して上りデータを送信し、無線局1および2が端末から受信した各データを無線局1で統合する場合のシーケンス例を示している。
図2に示した連携制御においては、まず端末が各連携無線局(無線局1,2)に対してチャネル品質測定用の信号(既知信号またはサウンディング信号)を送信し(ステップS21)、無線局1,2ではチャネル品質を測定する。次に、無線局2はチャネル品質の測定結果であるチャネル品質情報を無線局1に通知する(ステップS22)。次に、無線局1は、自身が測定したチャネル品質(端末から無線局1へのチャネル品質)および無線局2から通知されたチャネル品質情報(端末から無線局2へのチャネル品質)に基づき、端末からの送信に適した連携送信モードを予め決定しておいた複数の連携送信モードの中から選定する(ステップS23)。次に、無線局1は、選定した連携送信モードおよびその関連情報(端末から各連携無線局への送信タイミング、データ分割方法などの情報)を無線局2に通知し(ステップS24)、さらに、端末に対してはこの関連情報を制御情報として送信する(ステップS25)。端末は、ステップS25で送信された制御情報を受信するとその制御情報に従いデータを分割し、分割して得られた各データ部分をそれぞれ無線局1,2に送信する(ステップS26,S27)。無線局2は分割されたデータ部分を受信すると、そのデータを無線局1に送信する(ステップS28)。無線局1では端末から直接受信したデータ部分と無線局2から受け取ったデータ部分を統合(合成)することにより全データを構築する(ステップS29)。統合して得られたデータは無線局1からゲートウェイを経由し、その宛先に向けて送信される(ステップS30)。
ここでは、簡単化のために、端末からの上りデータを連携して受信する無線局(連携無線局)が2局の場合について説明したが、連携無線局が3局以上の場合にも同様の制御を適用できる。すなわち、各連携無線局でのチャネル品質の測定結果に基づいて、連携無線局の中のいずれか一つが連携送信モードを選定し、選定結果とその関連情報を他の連携無線局および端末へ通知する。そして、選定された連携送信モードに従って、端末および各連携無線局は上りデータ伝送を行う。なお、これ以降の説明においては、複数の連携無線局のうち、チャネル品質測定結果を他の連携無線局から取得して連携送信モードを選定する連携無線局を「主無線局」または「主連携無線局」と呼び、その他の連携無線局を「副無線局」または「副連携無線局」と呼ぶ。
ステップS23におけるより好ましい連携送信モード選択の形態として、以下に示す2つのモードの中から連携送信モードを選択する形態が特に有効である。
(送信モードA:分割データ送信モード)
端末はデータを分割して各連携無線局に向けて異なるデータ部分(分割データ)を送信する。
(送信モードB:同一データ送信モード)
端末は各連携無線局に向けて同じデータを送信する。
送信モードAは端末が複数アンテナを用いて送信ビームを形成できるときに特に有効となる。これは、端末が送信ビームを用いるとデータを受信する無線局の方向のみに強い電力で信号を送信できるためである。他の無線局に与える干渉を低減できるため、異なる送信ビームを用いて無線局ごとに独立に無線リンクを確立でき、高い無線伝送効率を実現できる。また、適切な送信ビーム形成を行うためには、チャネル状態の時間変化が小さい状態が好ましい。従って、送信モードAは端末の移動速度が小さく、チャネルの変化が小さい場合に特に有効となる。
一方、送信モードBは端末が単一アンテナを利用する場合や高速移動している場合に特に有効となる。この場合、端末のチャネル環境は変わりやすく、各連携無線局では正確にデータを受信できない場合も発生しうるが、複数の連携無線局で同じデータを受信することでダイバーシチ効果を得ることができる。
また、上記の送信モードA(分割データ送信モード)を用いる場合、無線局1は分割されたデータへのシーケンス番号割り当て方法を無線局2に通知する。データへのシーケンス番号割り当て方法としては主に以下の2通りがある。
(シーケンス番号の分割割り当て)
一連のシーケンス番号を分割し、端末が各無線局に向けて送信するデータ部分に付与する。
(シーケンス番号の並列割り当て)
各無線局へ送信するデータ部分に対して独立にシーケンス番号を付与する。
連携シーケンス番号割り当てを使用した場合、独立シーケンス番号割り当てを使用した場合と比較して、送信側(端末)における送信処理(データの分割、シーケンス番号の付与など)は複雑になるが、受信側(連携無線局側)における各データ部分の結合作業にかかる処理負荷は小さくなる。一方、独立シーケンス番号割り当てを使用した場合には、送信側での処理は複雑化しないが、受信側における結合処理が複雑化して処理負荷が大きくなる。どちらを使用するかはシステムで固定としてもよいし、無線局や端末の状態(負荷状態など)に応じて適応的に選択するようにしてもよい。
図3は、分割データへのシーケンス番号の割り当て動作の一例を示す図であり、シーケンス番号の分割割り当てを用いる場合の動作例を示している。図示した例では、端末は、全データを6つに分割し、各データ部分にシーケンス番号1〜6をつける。さらに、その中から各連携無線局に向けて送信するデータ部分を抽出して送信する。本図に示すように、分割されたデータのヘッダ部分にシーケンス番号を書き込むことによって、各データ部分にシーケンス番号を割り当てることができる。
図4および図5は、端末から連携無線局へのデータ伝送動作の一例を示す図であり、端末から各連携無線局に向けて送信する制御情報とデータの具体例を示している。図4は送信モードAを使用する場合の動作を示し、図5は送信モードBを使用する場合の動作を示している。図4,5に示した動作においては、まず、無線局1(主無線局)が、制御情報として、データ送信に用いる無線リソースとその送信モード(送信モードAまたはB)を識別する情報、およびシーケンス番号の割り当て方法の情報を端末に送信する。次に、制御情報を受信した端末が、送信モード(送信モードAまたはB)およびシーケンス番号の割り当て方法を識別し、特定された無線リソース位置においてデータを送信する。制御信号によって無線リソースを特定する方法は従来から多く知られており、そのいかなる方法を使用しても構わない。
図6は、本実施の形態の無線局の構成例を示す図である。図6に示した構成は無線局1,2(主無線局,副無線局)のいずれに対しても適用できる。
本実施の形態の無線局は、図6に示したように、端末から送信されたチャネル品質測定用信号やデータを受信する信号受信部61と、端末から送信された制御情報を受信する制御情報受信部62と、連携送信モードを選定する送信モード選択部63と、端末および連携無線局に制御情報を送信する制御情報送信部64と、端末から直接受信したデータを保持しておくとともに、自局が主無線局として動作する場合には他の連携無線局(副無線局)から受け取ったデータと端末から直接受信したデータを合成するバッファ・データ合成部65と、有線ネットワークに向けてデータを送信するデータ送信部66と、を備える。
図6に示した無線局が主連携無線局である場合の送信モード決定動作およびデータ受信動作について説明する。
送信モード決定動作においては、まず、信号受信部61が端末からの既知信号またはサウンディング信号を受信し、端末との無線リンクのチャネル品質を測定する。制御情報受信部62は、上記無線リンクのチャネル品質測定結果を示すチャネル品質情報を信号受信部61から受け取って送信モード選択部63に渡すとともに、副連携無線局における無線リンクのチャネル品質測定結果(チャネル品質情報)が送信されてくるとそれを受信する。送信モード選択部63は、信号受信部61によるチャネル品質測定結果を示す第1のチャネル品質情報と制御情報受信部62が副連携無線局から受信した第2のチャネル品質情報とに基づき送信モードを選定する。制御情報送信部64は、送信モード選択部63から選定結果(選定された送信モード)を受け取り、送信モード選択部63が選定した送信モードを示す情報及び関連するその他の制御情報を端末および連携無線局に向けて送信する。
上記の送信モード決定動作を実行した後のデータ受信動作においては、上記送信モード選択部63における選定結果に従い、信号受信部61が端末から特定のデータ部分を受信する。受信したデータ部分はバッファ・データ合成部65に引き渡され、バッファ・データ合成部65は、信号受信部61から受け取ったデータ部分と他の連携無線局(副連携無線局)から転送されてきた他のデータ部分とを統合する。統合されたデータはデータ送信部66から有線ネットワークへ送信される。
図6に示した無線局が副連携無線局である場合の送信モード決定動作およびデータ受信動作について説明する。
送信モード決定動作においては、まず、信号受信部61が端末からの既知信号またはサウンディング信号を受信し、端末との無線リンクのチャネル品質を測定する。制御情報送信部64は、信号受信部61における無線リンクのチャネル品質測定結果を示すチャネル品質情報を制御情報受信部62および送信モード選択部63経由で受け取り、他の連携無線局(主連携無線局)に送信する。その後、制御情報受信部62は、主連携無線局における送信モードの選定結果(選定された送信モードを示す情報及び関連するその他の制御情報)を主連携無線局から受信する。
上記の送信モード決定動作を実行した後のデータ受信動作においては、上記制御情報受信部62が受信した主連携無線局における送信モードの選定結果に従い、信号受信部61が端末から特定のデータ部分を受信する。受信したデータ部分はバッファ・データ合成部65に引き渡され、バッファ・データ合成部65は、信号受信部61から受け取ったデータ部分を主連携無線局へ転送する。
図7は、本実施の形態の端末の構成例を示す図である。本実施の形態の端末は、図7に示したように、上りデータを保持しておくデータ・バッファ71と、データ・バッファ71で保持されているデータを所定長(所定ビット数)のブロックに分割するデータ分割部72と、入力信号に対してウエイトを乗算するウエイト乗算部75,76と、連携無線局での送信モード決定結果に従い送信データの分割方法を決定する制御方法決定部77と、無線局から送信された制御情報を受信する制御情報受信部78と、を備える。図7に示した構成の端末において、データ分割部72およびウエイト乗算部75,76はデータ送信処理手段を構成する。また、既知信号・制御情報送信部79およびウエイト乗算部75,76がチャネル測定用信号送信処理手段を構成する。
図7に示した端末が上りデータを送信する場合の動作について説明する。まず、端末では、送信モードを連携無線局側で決定させるために、既知信号・制御情報送信部79が既知信号を生成し、ウエイト乗算部75および76が必要に応じてアンテナごとのウエイト乗算を行った後、各アンテナから各連携無線局に向けて既知信号を送信する。ここで、ウエイト乗算は送信ビーム形成又はプリコーディングを行うためのものであり、送信ビーム形成またはプリコーディングを用いない場合には、ウエイト乗算部で必ずしもウエイト乗算を行わなくても構わない。その後、制御情報受信部78は、連携無線局側での送信モード決定結果を示す制御情報(選定された送信モードを示す情報及び関連するその他の制御情報)を主連携無線局から受信する。次に、制御方法決定部77がこの受信制御情報を解読してデータ分割方法を決定する。制御方法決定部77がデータ分割方法を決定すると、決定結果に従い、データ分割部72がデータ・バッファ71に格納されている上りデータを分割して各連携無線局に送信するデータ部分(データブロック)を生成し、ウエイト乗算部75および76が必要に応じてアンテナごとのウエイト乗算を行った後、各アンテナから各連携無線局に向けてデータを送信する。なお、データ分割部72は、全てのデータを一方のウエイト乗算部へ出力する(データ分割を行わない)ことも可能である。
このように本実施の形態では、2つ以上の無線局が連携して端末からの送信データを受信する場合に、端末が送信すべきデータを分割してその一部を特定の無線局に対して送信することを特徴とする。このような構成により、複数の無線局に対して異なるデータ部分を送信することが可能となり、複数の無線リンクを用いたデータ伝送における信号伝送効率を改善できる。また、連携無線局の中の主無線局は、各連携無線局と端末との間の無線リンクのチャネル品質に基づいて、端末が各無線局へ分割データを送信する送信モードAと端末が各無線局へ全てのデータを送信する送信モードBの中から適切な送信モードを選定し、さらに、他の無線局(副無線局)および端末に利用する送信モード(選定した送信モード)を制御情報として通知することとした。本手法により、環境に応じた適切なデータ伝送が可能となる。また、各連携無線局と端末の間で決められたシーケンス番号割当方法に従って端末がデータを分割し、各データ部分にシーケンス番号を付与して送信することとしたので、連携無線局側では、端末から受信した各データ部分を統合できる。特にシーケンス番号の分割割り当て方法を用いた場合、各データ部分を統合する連携無線局(主無線局)では、端末からのデータをシーケンス番号に基づく簡易な順序並び替えによりデータを統合できる。また、シーケンス番号の並列割り当て方法を用いた場合には、端末は従来の構成と同様のシーケンス番号割当を用いて複数の分割データを異なる無線局へ送信できる。従って、従来の無線局に対する機能変更を最小限に抑えながら、無線局間での連携データ受信を実現できる。
実施の形態2.
本実施の形態では、実施の形態1で説明したデータ伝送(連携伝送制御)において、データ部分へ並列にシーケンス番号を割り当てる場合について説明する。
本実施の形態では、図8〜図14を使用して説明を行う。なお、図8は、データの分割方法を指示する制御信号の一例を示す図である。図9は、データの分割動作の一例を示す図である。図10は、分割データとともに連携無線局から端末に送信される制御信号の一例を示す図である。図11は、無線局側での受信データの結合動作例を示す図である。図12Aは、データの分割方法を指示する制御信号の一例を示す図である。
実施の形態1で説明した無線通信システムにおいて送信モードA(分割データ送信モード)とシーケンス番号の並列割り当てを用いたデータ伝送を行う場合、まず主無線局(無線局1)から副無線局(無線局2)および端末に対して図8に示す制御信号を送信する。なお、副無線局への送信は有線ネットワーク(有線伝送路)を介して行い、端末への送信は無線リンク(無線伝送路)を介して行う。本制御信号には、分割周期T(ビット)、分割比率R、前半を担当する無線局IDおよび後半を担当する無線局IDが制御情報として含まれている。図8に示した制御信号を受信した副無線局および端末は、分割周期Tおよび分割比率Rを把握し、さらに前半を担当する無線局ID,後半を担当する無線局IDを解読する。その結果、副無線局は受信を担当するデータ部分を認識する。また、端末はデータの分割方法およびその分割データ(データの各分割部分)の送信先の無線局を認識する。
端末は、制御内容を認識すると図9に示すように全データをTビットの周期で分割し、さらにそのTビットをR:1−Rの比率に分割する。そして、分割して得られた分割データのうち特定の無線局が受信する分割データに対して、シリアルなシーケンス番号を付与したヘッダを加えて送信する。図10は、分割データとともに端末から連携無線局(無線局1,2)に送信される制御信号の一例を示しており、本制御信号にはシーケンス番号割り当て方法(分割または並列)を示す情報(シーケンス割り当て方法)、分割周期T(ビット)、分割比率Rおよび送信部分の情報が含まれる。ここで「送信部分」とは、図10に示した制御信号を受信する無線局に対して端末が送信を行うデータ部分(前半または後半)を示す情報であり、この制御信号を受信した無線局が受信を担当するデータ部分を示す情報ということもできる。各連携無線局はこの制御信号を受信することにより、シーケンス番号割り当て方法およびデータの分割方法を認識する。なお、端末は主無線局から制御信号(図8に示した制御信号)を受信しているが、端末は主無線局から受信した制御信号の内容に従わない(従うことができない)場合もありえる。そのため、端末はデータの分割方法に関する制御信号(図10に示した制御信号)を各連携無線局に送信する。また、端末が主無線局からの制御信号に常に従う場合であっても、端末が下りリンクで制御信号を正しく受信できない場合もありえる。そこで、端末がデータの分割方法に関する上記の制御信号を各連携無線局に送信することにより、各連携無線局は端末がデータ分割を正しく実行していることを確認できる。
各連携無線局(無線局1,2)は、端末から送信された分割データを受信すると、図11に示した手順で結合する。具体的には、主無線局が、端末から直接受信した各分割データをシーケンス番号順に並べて結合し、同様に、副無線局から転送されてきた各分割データもシーケンス番号順に並べて結合する。主無線局は、分割データとともに送信されてきた制御信号に含まれる情報を確認して受信データの分割周期T,分割比率Rを把握しているので、次に、結合したデータを一定数のビットごとに分割して各連携無線局が受信したデータ部分を交互に並べる。ここで、図11の例では、無線局1が受信した各データ部分(無線局1への送信データ部分)を結合したデータについてはTRビット(T×Rビット)ごとに分割する。一方、無線局2が受信した各データ部分を結合したデータについてはT(1−R)ビットごとに分割する。このような方法により主無線局ではデータを統合できる。
図8〜11では2つの無線局での連携を想定して説明を行ったが、同様の概念は3つ以上の無線局が連携する場合に対しても拡張できる。一例として、3つの無線局1〜3が連携してデータを受信する場合について説明する。図12Aは、連携無線局が3局の場合に使用する制御信号(主無線局から副無線局および端末に送信する制御信号)の一例を示す図である。無線局1が主無線局である場合、無線局1は、送信モードの決定を行い、送信モードAを選定した場合、副無線局である無線局2,3およびデータを送信しようとしている端末に対して図12Aに例示した制御信号を送信する。本制御信号には、データの分割数N、1番目の分割部分(分割部分1)のビット数B1、2番目の分割部分(分割部分2)のビット数B2、3番目の分割部分(分割部分3)のビット数B3および各分割部分を担当する無線局IDが制御情報として含まれている。図12Bには、一例として、分割数Nが3の場合における各分割部分と各分割部分のビット数の関係を示している。本制御信号を受信した各副無線局(無線局2,3)および主無線局(無線局1)は、含まれている各制御情報を確認することにより自身が受信を担当する分割部分を把握する。また、端末は、主無線局から受信した上記制御信号に含まれている各制御情報を確認することにより、分割方法および各分割データの送信先とする連携無線局を把握する。端末は図12Aの制御信号に従い、上りデータの分割および分割データの各連携無線局への送信を行う。各連携無線局は、図12Aの制御信号に従い、端末から送信された各分割データを受信する。さらに、各副無線局(無線局2,3)は、受信した分割データを主無線局(無線局1)に対して転送し、主無線局は、端末および各副無線局から分割データを受信すると、まず、受け取った各データ部分を受信経路ごとに、シーケンス番号に従って結合し、さらに、結合した各データを、図12Aの制御信号に含まれる各分割部分のビット数に応じて分割して並べ替えることにより、連携受信されたデータを統合する。このように、3つ以上の無線局が連携してデータを分割受信する場合にも適用できる。
これまでは、端末から各連携無線局に同じビット数のデータを周期的に送信する場合を想定したが、無線リンクで送信されるデータのビット数は送信ごとに異なっていても構わない。例えば、端末が各連携無線局との間のチャネル状態に応じて変調・符号化率を適応的に変化させる場合には、利用する変調方式に応じて送信ごとのデータのビット数は変化する場合もある。ここで、送信ごとのデータのビット数は時間的に変化する場合もあれば、異なる周波数での送信ごとに変化する場合もある。また、異なる空間領域への送信においてビット数が変化する場合もある。
図13は、送信ごとにデータのビット数を変化させる場合の端末におけるデータの分割・送信動作を示す図である。図13で示した例では、端末はデータをTビット周期で分割し、さらに、TビットのデータをR:1−Rの比率で分割する。その後、受信を担当する連携無線局ごとにデータ部分を一旦結合し(図示したデータブロック1301,1302に相当)、チャネル状態に応じて変調・符号化率を適応的に決定して送信ごとのビットサイズを決定する。送信ごとのビットサイズを決定すると、上記の一旦結合したブロック(データブロック1301,1302)を決定したビットサイズで分割し、さらに、分割後の各ブロック(分割データ)にヘッダ1303〜1307をそれぞれ付加し、ヘッダにシーケンス番号を書き込んで各連携無線局に送信する。
図14は、送信ごとにデータのビット数が変化する場合の連携無線局側(主無線局)におけるデータの統合動作を示す図であり、図13に示した手順で分割されたデータを結合して元のデータに戻す手順を示している。図示したように、主無線局は、端末から直接受信した各分割データをそのシーケンス番号順に並べて結合してデータブロック1401を得る。さらに、このデータブロック1401をTRビットごとに分割する。同様に、副無線局(無線局2)経由で受信した各分割データをそのシーケンス番号順に並べて結合してデータブロック1402を得る。さらに、このデータブロック1402をT(1−R)ビットごとに分割する。最後に、端末から直接受信したデータ(TRビットのデータブロック)と副無線局経由で受信したデータ(T(1−R)ビットのデータブロック)とを交互に並べることにより、データを統合する。
このように、本実施の形態の連携伝送制御では、端末がデータを分割送信する場合に各連携無線局へ送信するデータ部分に並列なシーケンス番号割り当てを行い、各連携無線局に対して、分割データおよび適切な制御信号を送信することとした。これにより、連携無線局側の主無線局では、受信した各分割データをそれらに付加されたシーケンス番号に従って並び替えて結合し、さらに、受信した制御情報に従って所定ビットごとのブロックに分割した後に交互に並び替えることにより、分割送信されたデータを統合して元の送信データを復元することができる。
実施の形態3.
本実施の形態では、実施の形態1,2で説明した無線通信システムに適用可能な再送制御方法について示す。
実施の形態1,2では複数の無線局が連携して分割データを受信する場合について説明したが、連携無線局が端末からのデータの一部または全てを正しく受信できない場合もある。そのため、本実施の形態では、このような状況においてデータを再送する場合の再送制御方法について説明する。
図15は、本実施の形態の無線通信システムにおける再送制御の一例を示す図である。図15では、端末が、分割データ送信モード(送信モードA)でデータ部分#1およびデータ部分#2を無線局1,2に送信する場合の再送制御を示している。図16は、図15の再送制御動作を示したシーケンス図である。
ここで、図15,図16に示したデータ部分#1,#2は実施の形態1,2で述べたもの(TRビットのデータ部分,T(1−R)ビットのデータ部分)と同じであり、分割されたデータの一部である。しかし、各連携無線局はデータ部分#1,#2を正しく受信できない場合もある。そのため、たとえば、無線局2がデータ部分#2を正しく受信できなかった場合、本実施の形態の無線通信システムでは、無線局2は無線局1(主無線局)に対してその旨を伝える。この場合、無線局1は、端末にデータ部分#2の送信を要求する。この場合、無線局1は端末に対して、既に送信したデータ部分とは異なる部分の送信を要求するために、他の分割部分の送信を要求する制御信号(「他の分割部分の送信要求」)を送信する。端末は「他の分割部分の送信要求」を受信すると、無線局1に既に送信したデータ部分以外のデータ部分(データ部分#2)を無線局1に送信する。このとき、「他の分割部分の送信要求」に対応するデータ部分の送信であることを示す制御信号も併せて送信する。制御信号とデータを受信した無線局1は、受信した制御信号から、その前に送信した「他の分割部分の要求信号」に対応するデータ部分#2が端末から送信されたことを認識し、既に受信したデータ部分#1と統合することにより全てのデータを受信する。
さらに、無線局1は、図16に示したように、データ部分#1,#2の統合に成功した場合、全データの受信に成功したことを示す信号(全データ受信に対するACK)を端末に対して送信する。このACKを受信した端末は、バッファ(データ・バッファ71、図7参照)に蓄積しておいた対応データ部分(ACKの受信により正常受信が確認されたデータ部分)を削除する。このように、「全データ受信に対するACK」を制御信号として端末へ通知することにより、端末でバッファに蓄積しておくデータ量を低減でき、端末内のバッファサイズを小型化できる。
図16では、「他の分割部分の送信要求」と「全データの受信に成功したことを示すACK」を同時に使用する場合について示したが、「全データの受信に成功したことを示すACK」は「他の分割部分の送信要求」を送信しない場合にも適用できる。例えば、無線局1,2からそれぞれデータ部分を正しく受信した場合にも、無線局1(主無線局)は「全データの受信に成功したことを示すACK」を制御信号として端末へ通知する。その結果、端末はバッファに蓄積していた対応データ部分を削除できる。副無線局である無線局2は、端末からのデータ部分を正しく受信できた場合、その旨を無線局1に通知するようにしてもよいししなくてもよい。本実施の形態の無線通信システムでは、各副無線局が受信したデータ部分を主無線局に転送して主無線局が統合するので、主無線局は、副無線局からの通知がされなくても全データの受信に成功したかどうかを判断できる。
「全データの受信に成功したことを示すACK」は一部のデータ部分のみを受信した無線局から端末へ通知されるため、従来の無線伝送におけるACKとは異なる。従来の無線伝送におけるACKはデータを受信した各無線局からデータの送信元端末に対してデータの受領通知するために送信される。これに対して、本実施の形態の「全データの受信に成功したことを示すACK」はこの信号を送信する無線局がデータ受信を行っていない部分も含めて端末に全てのデータを受信できたことを通知する。
また、「全データの受信に成功したことを示すACK」を制御信号として主無線局から端末へ通知する代わりに、主無線局がどこまでデータを受信できたかを制御信号として通知するようにしてもよい。例えば、主無線局がデータを統合できた最終のシーケンス番号を端末に通知し、端末は通知を受けたシーケンス番号よりも小さいシーケンス番号に対応するデータ部分をバッファから削除する。このように、主無線局がデータを統合できた最終のシーケンス番号を端末に通知することも本実施の形態に含まれる。
また、「全データの受信に成功したことを示すACK」を制御信号として主無線局から端末へ通知する代わりに、端末がデータ送信時点からタイマにより経過時間を計時し、送信時点から所定時間が経過した蓄積データをバッファから削除するようにしてもよい。このように、経過時間に基づき未送信データ部分(自身が送信を担当していない部分)も含めて蓄積データを削除することも本実施の形態に含まれる。
図17は、本実施の形態の無線局による再送動作を説明するための図であり、端末が無線局1へ最初に送信するデータ部分(データ部分#1)と「他の分割部分の送信要求」受信に対応して送信するデータ部分(データ部分#2)の関係を示している。データ部分#1が分割された後のTビットデータの前半部分である場合、データ部分#2は残りの後半部分のデータとなる。この際、他のデータ部分(他の分割部分)の範囲を明確に定義するために、対象とするデータの範囲T1(ビット)に関する情報を各連携無線局と端末の間で共有する。連携無線局と端末の間で制御信号を送受信することにより、この情報は更新できる。また、あらかじめ無線標準規格において、データの範囲T1(ビット)を固定ビット数として決めることで共有しても構わない。データの範囲T1(ビット)をフレーム時間と一致させても構わない。この場合、「他の分割部分の送信要求」はそのフレーム内で送信されるデータ部分に対応する他のデータ部分となる。
端末が「他の分割部分の送信要求」に対応するデータ部分(図17の例ではデータ部分#2となる)を送信する際、端末が無線局1へ1回で送信できるデータ量(ビット数)と端末が無線局2へ1回で送信するデータ量(ビット数)が異なる場合がある。この場合、端末は送信する「他のデータ部分」を再分割または結合することにより、無線局1への1回分の送信データ量に合うようにデータ形式を変更して送信しても構わない。このようにデータ形式を変更する場合、端末は無線局1に対して利用するデータ形式またはデータフォーマットを制御情報として通知する。無線局1は受取った制御情報に従い信号を受信する。
図18は、データ部分の定義方法の一例を示す図である。図18ではフレーム単位でデータ部分#1とデータ部分#2を定義する場合の例を示している。このような定義方法を適用した無線通信システムでは、端末が主無線局へフレームuのデータ部分#1を送信した後、「他の分割部分の送信要求」を受取った場合、端末はフレームuのデータ部分#2を送信する。これに対して、主無線局へフレームuのデータ部分#1を送信した後、全データの受信に成功したことを示すACKを主無線局から受取った場合には、端末はフレームu+1の送信を開始する。このように、端末は、フレーム内の全データを全て受取ったことを示すACKを主無線局から受取るまでに「他の分割部分の送信要求」を受信した場合には、そのフレームの残りのデータ部分を送信する。このように、フレーム単位で「他の分割部分の送信要求」を扱うことにより簡易な制御とすることができる。また、主無線局が全データの受信に成功したことを示すACKを送信することも本実施の形態の特徴である。本構成により端末は全データの受信を確認して次のフレームの制御に同時に移ることができる。
説明した一連の再送制御は、図6に示した構成の無線局と図7に示した構成の端末により実現できる。無線局(主無線局)では信号受信部61において受信成功か失敗かを判別し、受信失敗の場合には、制御情報送信部64が「他のデータ部分の送信要求」を送信する。端末は制御情報受信部78においてその要求信号を受信すると、制御方法決定部77において「他のデータ部分の送信要求」であることを認識し、データ分割部72においてデータ・バッファ71に格納されているデータの中から必要なデータを抽出する。また、制御方法決定部77では「他のデータ部分の送信要求」に対応するデータ部分の送信であることを示す制御信号を生成し、生成したデータと制御信号を既知信号・制御情報送信部79を介して主無線局に向けて送信する。
本実施の形態で説明した再送制御により、端末は無線局2との接続状態が悪い場合にも無線局1へ全てのデータを送信できる。本実施の形態の再送制御を適用しない場合、連携無線局と端末との間のいずれかの無線リンクの状態が悪くなった場合、端末は全てのデータを送信できず通信品質が大幅に劣化する。通信品質を常に保証することは運用上極めて重要であり、通信品質を保証できないサービスは実用に大きな支障をきたす。これに対して、本制御を用いれば、チャネル状態が急激に変化し無線局2との接続が悪くなる場合にも無線局1が本来無線局2の受信すべきデータを受信することで端末からの信号伝送をサポートできる。このように、本実施の形態の再送制御を用いれば、マルチリンク信号送信における通信品質劣化の問題を解決できる。
なお、本実施の形態で説明した再送制御と従来の方式(受信を失敗した副無線局が端末に再送要求する方式)と併用しても構わない。この場合、受信を失敗した副無線局は、端末に再送要求を行い、さらに主無線局に対しても「他の分割部分の送信要求」を送信する。端末は、無線局1および2に対して要求内容に対応するデータ部分(図15に示した例の場合であればデータ部分#2となる)を送信する。このようにすることにより、端末は、再送を要求されたデータ部分をより確実に送信できる。
本実施の形態では、主無線局が端末に対して送信要求を行う場合について説明したが、他の連携無線局が同様の送信要求を行っても構わない。ただし、より好ましい形態として、連携無線局の中で主無線局と副無線局を決定し、主無線局が端末でのデータ送信の通信品質に責任を持つことが望まれる。このような構成では、主無線局が端末に対して優先的に「他のデータ部分の送信要求」を送信する。
このように、本実施の形態の無線通信システムにおいて、連携無線局は、端末から分割送信されたデータを受信できなかった場合、受信できなかったデータを送信するように、データを受信できなかった連携無線局とは異なる連携無線局が、端末に対して受信できなかったデータの送信を要求することとした。これにより、連携送信における通信品質劣化の問題を解決できる。また、本実施の形態の無線通信システムにおいては、端末が初回送信とは異なるデータ部分を送信したこと(連携無線局からの要求に対応するデータ部分の送信であること)を通知する制御信号を送信することとしたので、再送を要求した連携無線局は端末からの送信内容を把握することができる。
実施の形態4.
本実施の形態では実施の形態3で説明した再送制御において、端末が連携無線局に対して再送要求を行う際のさらに好ましい形態について開示する。
実施の形態3では端末が連携無線局から受信した「他の分割部分の送信要求」に対して他のデータ部分を送信する場合を説明したが、他のデータ部分の送信にはさまざまな方法がある。それらについて図19および図20を用いて説明する。
図19は、本実施の形態の無線通信システムにおける送信制御動作の一例を示す図であり、無線局1および2が端末からの上りデータを連携して受信する動作において、端末が無線局1,2に対して1フレーム内のデータ部分#1,#2をそれぞれ送信した後、無線局1からの要求に応じてデータ部分#2を再送する場合の例を示している。図19において、191〜196は端末が送信する各データ部分に付加されたシーケンス番号とする。
図19に示した動作では、まず端末が、無線局1へデータ部分#1(分割データ191,193,195)を送信し、無線局2へデータ部分#2(分割データ192,194,196)を送信する。なお、端末は、この最初の送信では各無線局に対してシーケンス番号の小さい順に送信を行う。たとえば、無線局1に対しては分割データ191→分割データ193→分割データ195の順番で送信する。その後、無線局1からデータ部分#2の送信を要求されたとする。このとき端末は、要求されたデータ部分#2をその前に無線局2から送信された順番と同じ順番で(シーケンス番号の小さい順に)送信してもよいが、逆の順番で送信するようにしてもよい(分割データ196→分割データ194→分割データ192の順に送信するようにしてもよい)。
本来、端末はデータ部分#2を無線局2へ送信するはずであるが、無線局2と端末の間の伝送速度が想定よりも遅い場合、無線局2にデータ部分#2が全て到着するまでの所要時間が長くなる。このような場合、無線局2は分割データ192および分割データ194は受信できているが、分割データ196は受信できていない状態、すなわち、無線局1(受信した分割データを統合する連携無線局)が分割データ196を無線局2から受け取れていない状態となる可能性がある。そのため、端末が無線局1へ分割データ196→分割データ194→分割データ192の順番で送信すれば、無線局1は、分割データ196を受信した時点でデータ部分#2の分割データが全て揃うことになる。この結果、端末がデータ部分#2を全て送信する前にACK(全データの受信に成功したことを示すACK)が無線局1から送信されることとなり、端末は途中でデータ部分#2の送信を停止することができる。なお、ここでいう全データとは1フレーム内の全データを指す。このような再送制御動作を適用すれば、端末がデータ部分#2の全ての分割データを送信しなくても無線局1は全分割データを受信するため、受信済みの分割データ(送信する必要のない分割データ)が無線局1へ再送信されるのを防止するとともに次フレームの送信を開始するまでの時間を短縮して無線伝送効率を向上できる。
図20は、上記の図19を用いて説明した動作に対応する制御シーケンスを示す図である。図20に示した伝送手順では、まず、端末が分割データ送信モードに従い、データ部分#1,#2を無線局1,2へ送信する。そして、たとえば副無線局である無線局2がデータ部分#2の一部を受信できなかった場合、その旨が主無線局である無線局1に通知され、無線局1が端末に対してデータ部分#2の送信を要求する。無線局1はデータ部分#2の送信を要求する際に、データ部分#2内の分割データの送信順序についても事前に規定されたフォーマットに従い要求する。端末は無線局1からの要求に従い、分割データの送信順序について事前に規定されたいくつかのフォーマットの中の適切なフォーマットでデータ部分#nの分割データを送信する。また、端末は無線局1に対し、制御信号によって分割データの送信順序または順序を規定したフォーマット番号を通知する。無線局1は、送信を要求したデータ部分#2とともに送信されてきた制御信号を解析することによりデータ部分#2の分割データの送信順序を把握し、データを受信する。無線局1は全ての分割データを受信すると、全データを受信したことを示すACK信号を端末に送信する。ACK信号の送信は端末がデータ部分#2を全て送信し終わる前であっても構わない。端末は、データ部分#2の送信を完了する前に端末から前記ACK信号を受信した場合、データ部分#2の送信を途中で中止する。途中でのデータ送信中止により、不要なデータ送信を削減し、無線伝送効率を向上できる。また、周囲への干渉を低減できる。
本実施の形態では、分割されたデータ単位でシーケンス番号が大きい方から小さい方への再送を行う場合(最初に送信された順番と逆の順番で再送を行う場合)について示したが、情報シンボル単位または情報ビット単位でフレームの最終ビット(またはシンボル)から最初のビットまでを順番に送信する方法も同様に可能である。この場合にも、端末が再送を行っている途中であっても受信側の連携無線局は全データの受信を完了した段階でACKを送信するので、端末はデータの送信を停止でき、不要なデータ送信を削減して無線伝送効率を向上できるとともに周囲への干渉を低減できる。
このように、本実施の形態の無線通信システムにおいて、連携無線局からの要求に応じてデータを再送する端末は、再送データを、その前に送信した時とは逆の順番で送信することとした。これにより、再送するデータ量が必要以上に多くなるのを防止でき、無線伝送効率を向上させるとともに周囲への干渉を低減できる。また、後続データの送信を開始するまでの時間を短縮できる。
実施の形態5.
本実施の形態では実施の形態1〜4で説明した無線通信システムにおいて、フレーム単位で端末から各無線局へ送信するデータ分割部分を制御する方法について示す。本実施の形態では、図1に示したような、無線通信システムの無線局1および2が連携して端末からの上りデータを受信する場合を想定する。
実施の形態1〜4で説明した無線通信システムの無線局1および2が送信モードA(分割データ送信モード)で連携して端末からの上りデータを受信している状態において、端末は、あるフレーム(仮にフレームuとする)での無線局1へのデータ送信を無線局2へのデータ送信よりも速く完了した場合には、次のフレームu+1での無線局1へのデータ送信を無線局2へのデータ送信よりも早く開始しても構わない。
また、端末から各連携無線局に送信するデータの分割比率をフレームごとに変化させてもよい。例えば、フレームuでの無線局1へのデータ伝送が無線局2へのデータ伝送よりも早く完了した場合、次のフレームu+1では、現在(フレームu)よりも高い割合で無線局1へデータを伝送することができるといえる。従って、次のフレームu+1ではより高い分割比率Rでデータを無線局1へ送信する方が無線局1と2でのデータ部分の到着時間を合わせるために適しているといえる。
このようにフレーム単位でデータの分割比率を変更することは図8で示した制御信号のうち「データ分割比率」に関する制御情報(図8に示した分割比率Rに相当)をフレーム単位で通知することによって実現できる。
図21は、フレームごとにデータ分割比率に関する制御情報を通知する動作の一例を示す図である。データの分割比率をフレームごとに変化させる場合、主無線局は副無線局および端末に対して、図21に示したように、分割比率R(データ分割比率に関する制御情報)をフレームごとに通知する。また、その他の制御情報(シーケンス番号割り当て方法に関する制御情報,分割周期・送信部分に関する制御情報)はフレームごとに変化させる必要がないので、フレームよりも長い周期で通知する。このように、フレームごとにデータ分割比率を変更する制御動作において、分割比率Rまたはそれに相当する情報をフレーム単位で通知し、データ分割に係わる他の制御情報をより長い周期で通知することも本実施の形態の無線通信システムの特徴の一つである。これにより、連携無線局から端末に送信される制御情報が必要以上に増大するのを防止できる。なお、毎フレームでデータ分割比率に関する制御情報を送信するのではなく、数フレームごとに送信するようにしてもよい。この場合も、その他の制御情報はさらに長い周期で送信する。また、データの分割比率を変更する必要があると判断した場合にデータ分割比率に関する制御情報を送信するようにしてもよい。
また、「データ分割比率」に関する制御情報として常に分割比率Rを通知するのではなく、図22に示したように、先頭フレームでは分割比率Rの初期値(R0)を通知し、後続フレームでは前フレームからの比率の差分値(ΔR1,ΔR2,…)のみを制御信号として通知するように構成してもよい。本構成を用いればフレームごとに分割比率の値を通知する場合に比べて、通知するデータ量を削減できる。
また、データの分割比率Rに関する代表的な値とインデックス番号の対応を規格化し、対応するインデックス番号を通知することにより制御情報量を削減することも可能である。この場合、図23に示すテーブル情報を連携無線局及び端末は予め保持しておく。図23は、分割比率Rとインデックス番号の対応テーブルの一例を示す図である。このように、分割比率Rに関する制御情報としてインデックス番号を通知する構成により、制御情報量を削減できる。また、連続フレームでは前のフレームに対するインデックス番号数の変化のみを通知することも可能である。例えば、前のフレームに対して+1、0、−1のインデックス番号の変化のみを行うこととする。これは、連続フレームでは分割比率が類似した値になりやすい性質を用いたものである。この場合、制御情報量をさらに削減できる。
また、データ分割に係わる制御情報は端末単位で変更することがより望ましい。これは、端末の存在位置によって適切なデータ分割比率は変化するためである。従って、主連携無線局は、各端末からのチャネル状態通知に従って、端末単位で適切なデータ分割比率を決定することがより好ましい。
このように、本実施の形態の無線通信システムにおいては、端末から各連携無線局に送信する上りデータの分割比率(各連携無線局へ送信するデータ量の比率)をフレーム単位で変更するので、効率的な無線伝送を実現できる。
実施の形態6.
本実施の形態では実施の形態1〜5とは異なる連携伝送制御を実施する無線通信システムについて説明する。
実施の形態1〜5では、各連携無線局と端末との間の各無線リンクのチャネル状態などに基づいて、連携無線局の中の主無線局が連携送信方法(送信モード,データの分割方法)を決定する無線通信システムについて示した。これに対して、本実施の形態では端末が送信モード及びデータの分割方法などの連携送信方法を決定し、制御信号として連携無線局に通知する無線通信システムについて示す。
図24は、本実施の形態の無線通信システムにおいて連携無線局が連携してデータを受信する際の制御手順を示すシーケンス図であり、端末からの上りデータを無線局1および2が連携して受信する場合の例を示している。この例では無線局1を主無線局とし、かつ送信モードA(分割データ送信モード)を使用している。図示したように、本実施の形態の無線通信システムでは、無線局1,2が連携して端末からの上りデータを受信する場合、端末は分割データの送信先とする無線局1,2(連携無線局)に対してチャネル品質測定用の参照信号(または既知信号やサウンディング信号)を送信し、無線局1,2は、チャネル品質を測定した後、端末が送信に利用できる無線リソースを制御情報#1,#2として端末へ通知する。端末は無線局1,2から受信した制御情報#1,#2(端末が送信に利用できる無線リソース)に基づき適切な送信モードを決定する。
より好ましい送信モード選択の形態として、端末は、連携無線局側で送信モードを決定する実施の形態1〜5と同様に、以下に示す2つの送信モードの中から選択する形態が特に有効である。
(送信モードA:分割データ送信モード)
端末はデータを分割して各連携無線局に向けて異なるデータ部分を送信する。
(送信モードB:同一データ送信モード)
端末は各連携無線局に向けて同じデータを送信する。
端末は、送信モードAを選択する場合、さらにデータの分割方法を決定する。例えば、無線局1から与えられた無線リソース(無線局1への送信で使用可能な無線リソース)が無線局2から与えられた無線リソースよりも大きい場合、端末は、無線局1へ送信するデータ量の方が多くなるように分割比率を決定する。端末はデータ分割方法を決定すると、決定結果に従い、上りデータの分割および無線局1,2への送信を行う。分割データを送信する際には送信モードおよびデータ分割方法に関する制御情報も無線局1,2へ送信する。連携無線局側においては、副無線局の無線局2は端末から受信したデータ部分#2および制御情報を主無線局の無線局1へ転送し、無線局1は、端末から受信した制御情報(副無線局経由で端末から受け取った制御情報も含む)に従い、端末から受信したデータ部分#1と無線局2から受け取ったデータ部分#2を統合する。無線局1は、データ部分#1と#2を正常に受信した場合(統合処理まで終了した場合)、その旨を示すACK(全データ受信に対するACK)を端末へ送信する。各連携無線局が端末から分割データを受信した後の処理(分割データの受信から各分割データを統合し、ACKを送信するまでの処理)は実施の形態1〜5で示した連携無線局が端末から分割データを受信した後の処理と同様である。
なお、図24に示したような、連携無線局が2局の場合、主無線局である無線局1は端末から直接受信した制御情報を解析することにより送信モードおよびデータの分割方法を認識できるので、副無線局である無線局2は制御情報を無線局1へ転送しなくてもよい。よって、端末は無線局2へ制御情報を送信しなくてもよい。また、連携無線局が3局以上の場合であっても各連携無線局へ分割送信された各データ部分の統合を主無線局が行うので、端末は、送信モードおよびデータ分割方法に関する制御情報を主無線局のみに送信するようにしてもよい。
図25は、連携無線局が2局の場合に端末が各連携無線局(無線局1,2)に対して送信する制御信号の一例を示す図である。図25に示した制御信号には、分割周期T(ビット)、分割比率R、前半を担当する無線局ID、後半を担当する無線局ID、およびシーケンス番号の割り当て方法(連携または独立)を示すシーケンス割り当て方法が含まれる。この制御信号を端末から受信した各連携無線局は、前半を担当する無線局ID,後半を担当する無線局IDを解読することにより、自身が受信を担当するデータ部分(分割データ)を認識できる。また、分割周期T及び分割比率Rを解読することによりデータの分割方法を把握する。さらに、シーケンス割り当て方法を解読することにより分割データへのシーケンス番号の割り当て方法(連携シーケンス番号割り当て、または独立シーケンス番号割り当て)を認識できる。
端末から連携無線局に送信する上記の制御信号はフレームごとに送信するようにしてもよい。フレームごとに送信する構成とした場合、端末は連携無線局間でのデータの分割比率(各連携無線局へ送信するデータ量の比率)をフレームごとに変化させることができる。また、端末がデータの分割比率に関する情報のみをフレーム単位で通知し、その他の制御情報(シーケンス番号割り当て方法,分割周期・送信部分に関する情報)はフレームよりも長い周期で通知する構成も可能である。「データの分割比率に関する情報」とは、図25に示した制御信号の場合は分割比率Rまたはこれに相当する情報である。このような構成により、短い周期で変更を要する分割比率Rのみを効率的に連携無線局へ通知できる。また、この構成を適用した場合、連携無線局間ではデータの分割方法に関する連携制御を行わなくてもデータの連携受信を行える。なお、1フレームごとにデータの分割比率に関する情報を送信するのではなく数フレームごとに送信するようにしてもよい。また、データの分割比率を変更する必要があると判断した場合に送信するようにしてもよい。
また、本実施の形態で説明した連携制御と実施の形態1〜5で述べた連携制御を適応的に選択することもできる。例えば、無線局1,2が同じセルラーネットワークに属する隣接基地局である場合には、無線局1,2の間の有線ネットワークを介して連携制御を行う実施の形態1〜5を利用することができる。これに対して、無線局1がセルラーネットワークの基地局、無線局2がWireless LANのアクセスポイントである場合には、本実施の形態のように端末が送信モードおよびデータ分割方法を決定することが好ましい。従って、連携する無線局の形態によって、連携無線局間での連携制御で連携無線局主導の連携送信を行うか、端末からの指示に従って端末主導の連携送信を行うかを選択する。
図26は、連携無線局主導での連携制御と端末主導での連携制御のどちらを実施するかを選択する制御の一例を示す図である。図26に示した制御手順においては、まず、無線局1,2が帰属ネットワーク情報(この情報の送信元無線局が属しているネットワークの情報)を端末に通知する。次に、端末は、各無線局から通知された帰属ネットワーク情報に基づき連携制御方法(端末主導または基地局主導)を決定し、決定結果(連携制御方法)を示す制御情報を無線局1,2に送信する。その後、無線局1,2は受信した制御情報が示す連携制御方法に従い、連携制御を実施する。また、図27は、連携無線局主導での連携制御と端末主導での連携制御のどちらを実施するかを選択する制御の異なる例を示す図である。図27に示した制御手順においては、まず、副無線局である無線局2が主無線局である無線局1に帰属ネットワーク情報を通知する。次に、無線局1は通知された情報(無線局2のネットワーク帰属情報)に基づき連携制御方法を決定し、決定結果を示す制御情報を端末に送信する。制御情報を受信した端末はその制御情報が示す連携制御方法に従い本実施の形態または実施の形態1〜5で示した制御を実施する。このように、ネットワーク環境に応じて、連携無線局間での連携制御を連携無線局主導で行うか、端末主導で行うかを適応的に選択できる。
実施の形態7.
本実施の形態では実施の形態1〜6で説明した連携伝送制御におけるデータの分割方法について説明する。
先の実施の形態において、連携無線局間または無線局と端末の間で送受信する制御信号フォーマットの例を図8で開示した。そして、この制御信号フォーマットは、分割されたデータの各部分の受信を担当する無線局を特定するための情報として、無線局IDなどを制御情報として含んでいた。これに対して、本実施の形態では、分割されたデータの各部分の受信を担当する無線局を特定するための情報を制御信号に含めて通知する必要のない無線通信システムについて説明する。具体的には、あらかじめ決められた規定に従い各部分を担当する無線局を決定することで、分割されたデータの各部分を担当する無線局を特定するための情報の通知を不要とした無線通信システムについて説明する。
例えば、連携無線局のうち無線局IDの小さい無線局がデータの前半部分を担当することに予め決定しておく。この場合、制御信号において無線局IDと担当するデータ部分の関係を通知する必要がなくなる。連携無線局がお互いの無線局IDを事前に把握していればよい。この場合、データ分割方法のみの通知により各無線局は担当すべき分割データを認識できる。この結果、伝送効率を改善できる。
また、連携無線局が2局の場合には、主無線局が1番目のデータ部分を担当し、連携する副無線局が2番目のデータ部分を担当することに予め決定しておくことで、制御信号にて無線局IDと担当するデータ部分の関係を通知する必要がなくなる。この場合にも、データの分割方法(分割開始位置,分割周期,分割比率)のみを制御信号にて通知すれば、各無線局は担当するデータ部分を認識できる。
また、連携する無線局間で本来の無線局IDを短縮する簡易的な無線局IDを割り振る方法を用いることもできる。例えば、本来の無線局IDをIPアドレスとする場合、長いビット数が必要となるが、連携無線局が3局である場合、2ビット(00,01,10,11)の簡易的な無線局IDを3つの連携無線局に付与して制御信号を送信する。このような構成によって無線局IDの通知に必要となる制御信号量を低減でき、伝送効率を向上できる。
実施の形態8.
本実施の形態では実施の形態1〜7とは異なる形態の複数の無線局による連携受信について説明する。
複数の無線局が連携受信を行う場合、各無線局で受信する信号の相対遅延を測定することが伝送品質を維持する上で重要となる。ここで、相対遅延とは、端末から送信された主無線局宛のデータが主無線局に到着するまでの時間と、端末から送信された副無線局宛のデータが副無線局経由で主無線局に到着するまでの時間の差である。この相対遅延には、処理遅延、無線リンクでの伝搬遅延など全ての影響が含まれる。
この相対遅延を測定するために、本実施の形態の無線通信システムでは、図28および図29に示したように、端末はテスト信号#1を無線局1へ送信し、主無線局である無線局1はテスト信号#1を受信した場合、その到着時刻を確認する。また、端末はテスト信号#2を無線局2へ送信し、副無線局である無線局2はテスト信号#2を受信すると、分割データを受信した場合に主無線局へ転送する場合と同じ伝送路を使用して、テスト信号#2を無線局1へ転送する。無線局1は、無線局2経由でテスト信号#2を受信した場合にもその到着時刻を確認する。そして、無線局1は、テスト信号#1の到着時刻とテスト信号#2の到着時刻の差である相対遅延情報の情報を含んだ制御信号を端末へ送信する。無線局1から相対遅延情報を受信した端末は、通知された相対遅延を考慮して、送信モードおよびデータ分割方法を決定し、決定結果に応じた処理を実行して無線局1,2へデータを送信する。なお、説明の便宜上、図29では端末がテスト信号#1と#2を送信するタイミングをずらして記載しているが、端末は、テスト信号#1,#2を同時に送信するのが望ましい。テスト信号#1,#2に送信時刻の情報を書き込んで送信するのであれば、必ずしもテスト信号#1,#2を同時に送信する必要はないが、同時に送信する場合には送信時刻情報が不要となり送信データ量を抑えることができる。
連携送信制御の一例を示す。例えば端末から無線局1,2へ同じデータを送信する送信モードBの連携伝送において、端末が、無線局1に向けた分割データの送信開始タイミングを相対遅延分の送信を遅らせる形態がある。端末が無線局1へのデータ送信開始タイミングを遅らせることにより、無線局1は端末から直接送られてくるデータ(第1のデータ)と無線局2経由で送られてくるデータ(第2のデータ)をほぼ同時に受取ることができる。その結果、端末では、第1のデータと第2のデータを容易に合成することが可能となる。第1のデータの受信タイミングと第2のデータの受信タイミングが大きく異なる場合、無線局1は先に到着したデータを所定時間メモリに格納しておかなければならず、多くのメモリを必要とする。これに対して、本実施の形態の手法を用いれば各無線局が主無線局として動作する際に必要とするメモリ量を削減できる。
また、異なる連携送信制御の例を示す。図30に示すように分割した上りデータの異なる部分を端末から各連携無線局(無線局1,2)へ送信する送信モードAの連携伝送を実行する場合、端末は、遅延時間の短い主無線局(無線局1)への無線リンクで分割データの前半部分を送信し、遅延時間の長い副無線局(無線局2)への無線リンクで分割データの後半部分を送信する。分割されたデータを統合する主無線局は前半部分のデータをより早く必要とするため、端末は、無線局1に対して低遅延伝送が要求される前半部分の信号(図30におけるデータ1,2,3)を送信する。一方、無線局2に対しては遅延が許容される後半部分の信号(図30におけるデータ4,5,6)を送信する。
また、異なる連携送信制御の例を示す。たとえば、音声とメールなど許容される遅延量が異なる2つの通信を端末に提供する場合、端末は、許容遅延の短い通信データ(音声など)を無線局1に向けて送信し、許容遅延の長い通信データ(メールなど)を無線局2に向けて送信する。このように、測定した相対遅延にもとづき通信ごとに送信する無線局を決定することで、通信品質を維持できる。
本実施の形態は上述した実施の形態1〜7のいずれとも組み合わせて用いることができる。特に、端末がデータの分割方法を決定して通知する実施の形態6との組合せでは、端末が相対遅延に基づきデータ分割方法を決定して連携無線局に通知するので伝送効率を向上できる。
このように本実施の形態では、他の無線局と連携してデータを受信する無線局のうち、分割された状態の受信データを統合する無線局(主無線局)が端末から送信される信号の相対遅延を測定し、相対遅延情報を端末に通知することとした。これにより、端末は、通知された相対遅延情報に基づき各連携無線局に送信するデータを決定することができるようになり、遅延を考慮した高い信号品質を維持することができる。
実施の形態9.
本実施の形態では複数の無線局による連携伝送の実施の形態1〜8とは異なる形態について開示する。
近年の無線通信では高速無線通信を収容するため、送受信局が複数アンテナを用いる構成が多く利用されている。このように送受信局が複数アンテナを備えるシステムはMIMO(Multi-Input Multi-Output)システムと呼ばれ、MIMOシステムでは複数の信号を空間多重できる利点が広く知られている。
一般にMアンテナを備える送信局では最大M個の空間多重された信号を送信できる。しかし、M+1個以上の信号を同時に異なる空間領域へ送信することは難しい。これは、受信側で多重信号をうまく分離できなくなるためである。従って、Mアンテナを持つ端末が複数の無線局に異なるデータを送信する際には、同じ時間周波数においてM個以下の信号を同時に送信する構成が好ましい。
このような状態を実現するため、本実施の形態では図31に示すように端末が無線局1,2に対してそれぞれ制御情報3101,3102を送信する。これらの制御情報は、端末が無線局1,2へ信号を送信する際に最大限利用可能な空間多重信号数を示す情報である。無線局1,2はそれぞれ制御情報3101,3102で示された空間多重信号数の範囲で空間多重信号数を設定して端末に信号送信を指示する。
例えば、端末のアンテナ数Mが2である場合、
制御情報3101が示す最大空間多重信号数=N1
制御情報3102が示す最大空間多重信号数=N2
とすると、
(N1,N2)=(1,1),(2,0),(0,2),(1,0),(0,1)
などが上記「最大限利用可能な空間多重信号数に関する情報」として利用される。
端末が空間多重信号数(N1,N2)の範囲で各連携無線局に向けて信号を送信した場合、端末から同時に送信される信号数はM個以下となる。このように、端末が複数の無線局に対して最大限利用可能な空間多重信号数に関する情報を通知することにより、端末が各連携無線局へデータを送信する際の空間多重信号数を適切な値に制御できる。
また、端末は制御情報3101,3102を周期的に通知することにより、周期的に最大限利用可能な空間多重信号数に関する情報を更新することも可能である。このような制御によって、環境に応じて柔軟に空間多重信号数を設定できる。
なお、上述の「最大限利用可能な空間多重信号数」は空間多重信号数でも構わない。この場合にも、端末から同時に送信される信号数はM個以下となる。また、空間多重信号数はレイヤ数と呼んでも構わない。
制御情報3101,3102は、図32に示すように分割比率Rとともにテーブル形式で規定することもできる。図32ではM=4アンテナの端末を想定しており、端末は連携無線局へ合計4レイヤまでを同時に送信可能である。図32では多くのデータ部分を受信する無線局の方が多くのレイヤ数を必要とすることを考慮してテーブルを作成している。このように、受信データ量と必要レイヤ数の相関を利用して両者を結合したテーブルを作成することにより、端末から各連携無線局に送信される制御情報量を低減できる。各連携無線局が受信を担当するデータ量とレイヤ数を結びつけてテーブルを作成することも本実施の形態の無線通信システムの特徴である。
また、図31に示した構成とは異なり、無線局1,2が端末のアンテナ数を事前に把握し、無線局1,2の間の連携制御によって無線局1,2が利用するレイヤ数を決定することもできる。この場合、図33に示すように無線局1,2はそれぞれ制御情報3301,3302を用いて利用レイヤ数を端末に通知する。このとき、図32に示したテーブルを用いて無線局1,2から端末に向けてレイヤ数情報と各無線局の担当するデータ部分を通知することも可能である。このように、レイヤ数情報と各無線局の担当するデータ部分に関する必要な組合せのみを結合したテーブルを保持することにより、効率的に制御情報を端末に通知できる。
図32のテーブルはデータ量とレイヤ数の対応関係を示したものであるが、テーブルを作成しなくても、データ量とレイヤ数に関連性を有する制御方法であれば構わない。例えば、データ量またはデータ比率が決定されると、その値に応じてレイヤ数の候補を限定する構成も可能である。4アンテナを有する端末に送信する際に、無線局1への送信データ比率が50%以下の場合にはレイヤ数の候補を1,2に限定し、無線局1への送信データ比率が50%より大きい場合にはレイヤ数の候補を1,2,3,4として、端末が実際の使用レイヤ数を決定することも可能である。その他、データ量とレイヤ数に関連性を有する制御方法であればどのようなものでも構わない。このように、無線局1へ送信するデータ量の増加に応じて、無線局1がより高いレイヤ数をサポートできる構成が好ましい。
このように、本実施の形態の無線通信システムでは、連携無線局と端末が複数のアンテナを有し、空間多重伝送を行う構成の場合、端末局は、各連携無線局との間のチャネル状態に基づいて、各連携無線局に利用を許可する多重数(最大空間多重信号数)を決定する、または主無線局に多重数を決定させることとした。これにより、先の実施の形態1〜8で説明した無線通信システムにおける連携伝送制御をMIMOシステムに適用できる。
実施の形態10.
本実施の形態では実施の形態1〜9で開示した連携伝送の利用形態の一例を開示する。
図34は実施の形態1〜9で開示した連携伝送の利用形態の一例を示す図である。図34に示したシステム構成では、無線局1と2は隣接しており、端末が無線局1および2の双方と通信可能な領域が連携領域、端末が無線局1および2のいずれか一方とのみ通信可能な領域が非連携領域である。端末が連携領域内に位置している場合、無線局1,2は端末から送信されるデータを連携して受信する。一方、端末が非連携領域に位置している場合には、端末が位置している非連携領域をサポートしている無線局が、端末から送信されるデータを単独で受信する。
ここで、図示したような、端末が無線局1のセルから移動を開始して無線局2のセルまで移動する場合について考える。この場合、端末は、無線局1の単独サポート領域(無線局1配下の非連携領域)から無線局1および2による連携サポート領域を経て、無線局2の単独サポート領域へと移動する。このとき、実施の形態1〜9で示した連携伝送制御は無線局1および2による連携サポート領域において適用される。このような制御は無線局1,2がそれぞれ単独サポート/連携サポートを示す情報を制御信号として端末に通知し、その制御信号に基づき端末が単独サポートか連携サポートかを認識する。制御信号が単独サポートを示している場合、端末は従来の無線制御に従う。一方、制御信号が連携サポートを示している場合、端末は実施の形態1〜9で示した制御動作を行う。
図34に示した例では端末が無線局1のセルから無線局2のセルに移動する場合、端末の位置が無線局2に近づくにつれて無線局1が受信を担当するデータの割合を徐々に下げて無線局2が受信を担当するデータの割合を徐々に上げていく。この制御は、端末の移動に伴い、無線局1と端末との間の通信品質は下がっていき、逆に、無線局2と端末との間の通信品質は上がっていくためである。このように、セル境界付近では連携送信を行う2つの無線局がそれぞれデータの異なる部分を受信し、受信するデータの割合を徐々に変更することにより、ハンドオーバを円滑にサポートすることができる。
なお、3GPP(Third Generation Partnership Project)における国際標準規格LTE(Long Term Evolution)では、セル間のハンドオーバは瞬時に切替を行うハードハンドオーバであり、常に1つの無線局(基地局)が端末をサポートする。また、第3世代移動通信方式W−CDMAではソフトハンドオーバがサポートされているが、この方式では各無線局が同じデータを送信する。これに対して、本実施の形態では複数の無線局が異なるデータ部分を送信する点で大きく異なる。異なるデータ部分を送信することにより、より高い通信容量を実現することが可能となる。
また、端末が無線局1のセルから無線局2のセルに移る際に、無線局1が受信を担当するデータ部分の比率を徐々に下げることにより、各無線局が異なるデータ部分を受信する新たなソフトハンドオーバ機能が可能となる。このようなハンドオーバはこれまでの移動通信システムでは考えられていなかった。
また、連携サポート領域において端末が移動した際には、無線局1,2の一方との無線リンク接続状態が急激に劣化する場合も考えられる。このような環境においても、実施の形態3で説明した再送制御に基づく無線伝送制御を行えば、通信品質を常に保証することができる。したがって、実施の形態3で示した再送制御を適用することにより、一方の無線局との伝搬状態が急激に変化した場合にも他方の無線局がデータ受信をサポートするので、安定したサービスを提供できる。
このように、本実施の形態によれば、新たなタイプのソフトハンドオーバをサポートする無線通信システムを実現することができ、従来よりも高効率かつ安定的な無線通信品質を実現できる。
実施の形態11.
本実施の形態では実施の形態1または6で説明した複数の無線局による連携送信の利用形態の一例を開示する。
実施の形態1や6においては、無線局1および2が連携してデータ受信を行うに際して、端末が同一データを無線局1および2へ送信する送信モードBを選定できることを説明したが、この送信モードBでは以下に示すさらにいくつかのモードを環境に応じて提供できる。
(送信モードB1)
端末は各連携無線局に対して同じ時間周波数で同じデータを送信する。端末が複数アンテナを持つ場合には、各連携無線局に対して同じ時間周波数で分散時空間符号を用いて同じデータを送信する。
(送信モードB2)
端末は各連携無線局に対して異なる時間周波数で同じデータを送信する。端末が複数アンテナを持つ場合には、各連携無線局に対して異なる時間周波数でそれぞれ送信ビームを形成して同じデータを送信する。
(送信モードB3)
端末は同一の送信データに対して異なる符号化方法で符号化を行い、異なる方式で符号化されたそれぞれの信号(異なる符号化データ)を各連携無線局に対して送信する。各連携無線局は端末から受信した符号化データを復号化する。異なる符号化方法の適用方法はさまざまであるが、異なる冗長ビットを付加する方法、異なる符号化率を用いる方法、異なる畳み込み演算を行う方法なども含まれる。
各連携無線局は端末からのデータを個別に受信した後、主無線局において最大比合成などの信号合成を行って信号品質を改善する。
送信モードB1は、各連携無線局が有線ネットワークを介して連携した無線リソース割当が可能である場合に有効となる。また、各連携無線局が同じ位置にあり、異なる方向のエリアをサポートする場合には、有線ネットワークを介さなくても無線局間での専用制御信号の交信によりこのような連携無線リソース制御をサポートすることもできる。
一方、送信モードB2は、各連携無線局の間で連携した無線リソース割当が行えない場合に有効となる。この場合、各連携無線局は独自に端末に対して無線リソースを与え、端末は各連携無線局に対して個別に信号を送信する。
また、送信モードB3は、送信モードB2と同じ環境で利用することができ、受信側(連携無線局)での演算量は大きくなるものの、符号化利得が得られるため送信モードB2よりも良好な受信特性が得られる。従って、連携無線局がその演算量を許容できる環境では、送信モードB2よりも優れた方式となる。
そこで、本実施の形態の無線通信システムでは、送信モードBを使用する際に、さらに送信モードB1,B2を環境に応じて適応的に使い分ける。この構成を実現するために、各連携無線局は、制御信号の交信により連携した無線リソース制御が行えるか否かを判定し、その判定に基づき送信モードB1またはB2のいずれかを選択する。図35は、連携無線局における送信モード選択手順を示すフローチャートであり、無線局1,2を連携無線局とした場合の送信モード選択手順を示している。まず、無線局1または無線局2は、連携してデータ受信を行う他の無線局との間で連携無線リソース制御が可能か否かを確認する。そして、連携無線リソース制御が可能である場合(「Yes」の場合)は送信モードB1を選定し、そうではない場合(「No」の場合)には送信モードB2を選定する。
このように、連携無線局間での連携無線リソース制御が可能か否かに応じて適切な送信モードを選定することにより、無線伝送効率を向上することができる。
実施の形態12.
本実施の形態では、複数の無線局が連携して端末からのデータを受信する無線通信システムにおいて、複数のアンテナを備えた端末が連携受信を行う各無線局に向けてデータを送信する動作の詳細について説明する。
図36は、本実施の形態の無線通信システムの構成および特徴的な動作の概要を示す図である。本実施の形態では、無線局1および2と、これらの無線局にデータを送信する端末を備える。また、無線局1および2は複数のアンテナを備え、互いに連携して端末からの上りデータを受信する。各無線局は、複数のアンテナ(アンテナ#1〜#4)の中の一部または全てを使用して上りデータを受信する。端末は、複数のアンテナを使い分けて上りデータを各無線局へ送信する。本実施の形態では、先の実施の形態で説明した送信モードA(分割データ送信モード)を使用する場合の動作について説明する。
MIMOシステムにおいて、複数アンテナを備える端末は複数の信号を空間多重できる。そこで、本実施の形態の無線通信システムでは、図36に示すように複数のアンテナを備える端末が複数アンテナをアンテナグループG1とG2に分けて使用し、アンテナグループG1のアンテナからは無線局1へ信号を送信し、アンテナグループG2のアンテナからは無線局2へ信号を送信する。端末が備えている各アンテナをグループ化する方法としては、図37Aおよび図37Bに示した手法や図38Aおよび図38Bに示した手法が適用可能である。
図37Aは、図37Bに示した端末が備えている各アンテナとこれらが帰属するアンテナグループの対応関係の一例を示す図である。ここで、アンテナ番号#1〜#4はアンテナ#1とアンテナ#2の組合せが、アンテナ#1とアンテナ#3、アンテナ#1とアンテナ#4の組合せよりもチャネル相関が高くなるように番号付けされている。図37Aではアンテナ#1と#3を一つのアンテナグループとし、アンテナ#2と#4をもう一つのアンテナグループとしている。このようにアンテナ番号に間隔のあるアンテナの組合せ(アンテナ間のチャネル相関がなるべく低くなる組合せ、一般的にはアンテナ間の距離が大きくなる組合せ)をアンテナグループとした場合、アンテナ間でのチャネル相関が小さく、チャネルがフェージングによって同時に落ち込む確率を低減できる。
図38Aは、図38Bに示した端末が備えている各アンテナとこれらが帰属するアンテナグループの対応関係の一例を示す図であり、図37Aに示した組合せとは異なる組合せの例を示している。図38Aでは、アンテナ#1と#2を一つのアンテナグループとし、アンテナ#3と#4をもう一つのアンテナグループとしている。なお、各アンテナ番号とチャネル相関の関係は図37Aの場合と同一である。このようにアンテナ番号の連続するアンテナの組合せをアンテナグループとすると、アンテナ間でのチャネル相関が高く、移動が生じた場合にもアンテナ間の相対位相が変化しにくい利点がある。従って、この組合せを適用した場合には送信ビームまたはプリコーディングに用いる送信ウエイトの更新周期を長くできる。
より好ましい形態として、図37Aに示したアンテナグループと図38Aに示したアンテナグループを状況に応じて使い分けるようにしてもよい。この場合、例えば、連携して受信動作を行う無線局(連携無線局)の中の主無線局が、端末でのアンテナグループの設定方法(図37Aまたは図38Aに示したグループ化方法)を決定して決定結果を端末に通知する。この場合、主無線局は、端末が有しているアンテナの数やその他の情報(アンテナグループ設定方法を決定する際に必要な情報)を端末から事前に取得しておく。逆に、端末がアンテナグループの設定方法を決定して決定結果を各連携無線局に通知しても構わない。端末から各連携無線局への通知は端末から全連携無線局へ直接通知してもよいし、主無線局へ通知し、主無線局から副無線局へ再通知するようにしてもよい。アンテナグループの設定(グループ化)を行う際には、アンテナ間でのチャネル相関が高い方がよいか、低い方がよいかをその利用環境(端末が移動中か否かなど)に応じて判断する。
図36〜図38Bに示したように、たとえばアンテナグループG1に帰属するアンテナを無線局1への信号送信で使用し、アンテナグループG2に帰属するアンテナは無線局2への信号送信で使用する。ここで、無線局が端末から自局への通信で使用される無線チャネルの状態(通信品質)を測定する場合、多くの無線通信システムでは無線局が決定した無線リソースにおいてサウンディング信号(または既知信号)を送信するよう端末に要求し、端末はその要求に従ってサウンディング信号(または既知信号)を送信する。ここで、本実施の形態の無線通信システムでは、上記サウンディング信号(または既知信号)を送信する場合、アンテナグループG1に属するアンテナは無線局1へサウンディング信号を送信し、アンテナグループG2に属するアンテナは無線局2へサウンディング信号を送信する。また、無線局1(無線局2)ではサウンディング信号を用いて端末のアンテナグループG1(アンテナグループG2)に属するアンテナとのチャネル状態を測定する。さらに、無線局1(無線局2)はチャネル状態の測定結果に基づき、端末が信号を送信する際のアンテナグループG1(アンテナグループG2)に属するアンテナの送信ビームウエイトまたはプリコーディングウエイトを決定し、そのウエイト情報を端末に通知する。端末は通知されたウエイト情報に基づきアンテナグループG1(またはアンテナグループG2)に属するアンテナの送信ビームウエイトまたはプリコーディングウエイトを決定し、分割されたデータ部分(分割データ)にウエイト乗算を行い無線局1(または無線局2)にデータを送信する。
このように、本実施の形態の無線通信システムでは、端末が有している複数のアンテナをグループ化し、同一グループのアンテナをある無線局への送信で使用するアンテナに設定して、無線局へ上りデータを送信することとした。これにより、連携受信のない場合と同じマルチアンテナ送信制御をアンテナグループ毎に適用して無線局(各連携無線局)へデータ(分割データ)を送信することができる。例えば、国際標準規格3GPP LTE方式などで規格化されているプリコーディングを用いたマルチアンテナからの信号送信を各アンテナグループに容易に適用することができる。また、複数の無線局への信号送信に異なるアンテナを用いることにより、1つのアンテナで複数の信号を多重送信する環境を避けることができる。複数の信号を多重送信すると、信号時間波形のピークが大きく変動し、増幅器の非線形性の影響を受けやすい。これに対して、本実施の形態に示すように複数の無線局への信号送信に異なるアンテナを用いると、送信信号の時間波形のピークを抑えることが可能となる。
実施の形態13.
本実施の形態では実施の形態1〜12で説明した連携伝送制御を国際標準規格3GPP LTE方式に適用するための構成を開示する。
セルラー無線通信では、国際標準規格3GPP LTE方式が適用されるケースが多く、従来のLTE方式の構成を拡張する形で従来規格をサポートしながら機能拡張を行うことが重要となる。そこで、本実施の形態ではLTE方式に無線局(基地局)間での連携機能を円滑に導入するための方法について説明する。
図39は、LTE方式におけるユーザープレーンのプロトコルスタックを示す図である。このプロトコルスタックは、文献「3GPP TS 36.300 V9.2.0 “EUTRA and EUTRAN overall description, Stage 2.”」に基づくものである。
図39に示したプロトコルスタックにおいて、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)層ではIPパケットのヘッダの圧縮/解凍およびデータの暗号化を行い、効率的な帯域幅の使用を実現する。また、RLC(Radio Link Control)層では無線リンク上で送信されるデータフォーマットへの変換を行う。MAC(Medium Access Control)層では他のユーザのデータとの多重化を行う。物理(PHY: Physical Layer)層では変調・符号化など実際の送信データを生成する処理を行う。物理層で生成された送信データは無線リンクに送信される。
図40は、実施の形態1〜12で説明した連携伝送制御を3GPP LTE方式に適用するためのプロトコルスタックを示す図である。図示したように、端末(UE:User Equipment)において新たにデータ分割を行う機能を付加し、さらに、基地局(eNB:evolved node B)においてデータを結合する機能を新たに追加することによって、従来の機能をサポートしながら新たな連携制御機能をサポートすることができる。
図41は、本実施の形態の無線通信システムを構成する基地局へデータを送信する端末の構成例を示す図であり、より詳細には、実施の形態1〜12で説明した連携伝送制御を3GPP LTE方式に適用する場合の構成例を示している。
図41に示した構成の端末は基地局(無線局)へ送信すべきIPパケットをアプリケーション層から受信し、かつこのパケットを複数の無線局で連携受信させる場合、PDCP層においてIPパケットのヘッダ圧縮、PDCP番号付けなどを実行する。さらに、新たに挿入されたバッファ・データ分割部においてデータのバッファリングを行い、各連携無線局(先の実施の形態と同様に無線局1,2とする)に送信すべきPDCP番号を持つデータを無線局1,2向けのRLC/MAC層に振り分ける。振り分けられたデータは従来のLTE構成と同様にRLC/MAC層およびPHY層を経て無線リンクで各連携無線局に送信される。
バッファ・データ分割部においてデータを分割する際は、データ分割制御部が分割方法(分割周期や分割比率など)を指示する。データ分割制御部は、無線局1または2から受信した制御情報が示す分割方法に従い、バッファ・データ分割部に指示を行う。なお、実施の形態6で説明した構成を適用する場合には、無線局1および2から受信した制御情報に基づき、データ分割制御部が分割方法を決定する。
このように、従来のLTE方式に対応した端末に対し、先の実施の形態で説明した連携伝送制御で必要となる、PDCP番号のデータを抽出する機能のみを付加することにより、従来のLTE方式の機能を失うことなく新たに基地局連携機能(連携伝送機能)を追加することができる。従来のLTE方式のみをサポートしたい場合、端末はバッファ・データ分割部において全てのPDCPパケットを一方の下位レイヤのみに送信する。無線局1,2が連携受信を行う場合には、PDCP番号に基づきPDCPパケットを複数の下位レイヤに振り分ける。
図42は、本実施の形態の無線通信システムを構成する基地局の構成例を示す図であり、実施の形態1〜12で説明した連携伝送制御を3GPP LTE方式に適用する場合の構成例を示している。
図42に示した構成の基地局は無線リンクで受信した信号を従来のLTE方式の端末と同様に、PHY層/MAC層/RLC層において処理する。このとき、上り制御チャネル解析部は、端末から送信されてきた制御信号を解読し、PHY層/MAC層/RLC層において必要な再送制御等を実施する。PHY層/MAC層/RLC層は端末が基地局に向けて送信したデータ部分をデータ結合部へ出力する。基地局が先の実施の形態で説明した主無線局として動作している場合、データ結合部には、上記PHY層/MAC層/RLC層から出力されたデータ部分、および連携基地局(副無線局として動作している他の基地局)が端末から受信したデータ部分が入力される。この場合、データ結合部は、入力された各データ部分のPDCPパケット番号をチェックし、各データ部分を番号順に並べ替えてから結合する。一方、副無線局として動作している場合、データ結合部は、PHY層/MAC層/RLC層から入力されたデータ部分を主無線局へ転送する。また、実施の形態3で示した再送制御(再送要求)を行うため、PDCP番号の欠落を確認し、再送要求に必要な情報を生成して下り制御チャネル送信部から送信する。データ結合部において結合されたデータは従来のLTE方式の基地局と同様にPDCP層経由でIP層へ転送される。
このように、従来のLTE方式に対応した基地局に対して新たにデータ結合部を付加することにより、基地局は、LTE方式の機能を失うことなく新たな基地局連携機能をサポートできる。
以上のように、本実施の形態の無線局(基地局)および端末は、新たに付加する機能以外は従来と同じ機能であり、変更が必要ない。その結果、LTE方式と同じ製造過程を用いることができ、設備投資の観点から低コスト化が実現できる。また、従来のLTE方式との間で部品の共通化を図ることができ、量産化の観点からも有益である。
性能面においては、一方の基地局と端末との伝搬状態が急激に悪化する場合にも基地局連携機能によって他方の基地局が端末からの信号伝送をサポートできる。その結果、1つの基地局のみがサポートするLTE方式よりも安定した信号品質を実現できる。また、MIMOシステムでは各基地局と端末がそれぞれ良好な空間チャネルを用いて複数のリンクを確立できる。その結果、基地局連携によって無線伝送効率を向上させることができる。また、一方の基地局がサポートできる端末数に余裕のある環境では、基地局連携によってより高い伝送速度をサポートできる。このように、本発明にかかる無線通信で実施する連携伝送制御は高効率な無線伝送の実現に大きく寄与できる。
実施の形態14.
実施の形態1〜13で示した連携伝送制御は適宜組み合わせて使用してもよい。また、実施の形態1〜13では、連携無線局側から端末に向けた下り制御情報(送信モードや分割方法などの決定結果についての制御情報)を連携無線局の中の1つ(主無線局)が送信する形態について主に説明したが、複数の連携無線局から端末に向けて送信するようにしてもよい。
また、実施の形態1〜13では、端末から連携無線局に向けた上り制御情報を端末から連携無線局の中の1つ(主無線局)へ送信する場合について説明したが、端末から複数の連携無線局へ送信するようにしても構わない。
また、実施の形態1〜13では、各連携無線局が異なる位置に配置される場合について主に説明したが、連携無線局は同じ位置に配置されても構わない。連携無線局は特定の方向のエリアのみをサポートするセクタであっても構わない。従って、セクタ間での連携受信も本発明に含まれる。
また、実施の形態1〜13では、「フレーム」を用いて制御方式を説明する場合もあったが、「時間スロット」「サブフレーム」「時間シンボル」「時間サンプル」など時間を表すいかなるパラメータであっても構わない。また、用語「分割比率」を用いて無線制御方法を説明する場合もあったが、分割比率を直接通知する代わりに分割比率を推測できるいかなる情報を通知しても構わない。