JP5572362B2 - 吸収体 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収体およびその使用方法に係り、特にオーディオ機器や電子機器などの振動や電磁ノイズを吸収する吸収体およびその使用方法に関する。
オーディオ機器は電源トランスなどの振動源を内部に備えていたり、スピーカなどのように振動源を含んでいるため、機器内部に振動エネルギーが発生し、これらの振動が再生音に大きく影響して音質の劣化や音像定位に影響を与えている。また、電源トランスは高調波歪を発生するとともに、電源コードなどを通して外部から高周波域雑音が混入し、通常の電源フィルターではこれらを十分には除去できずに再生音に雑音として影響を及ぼしている。
こうした影響除去の手法として、これまで、円錐形構造のスパイク1段又は多段構造がすでに実用化され、効果を発揮している(例えば特許文献1参照。)。
図14は、従来の円錐型構造のスパイクを用いた振動防止支持装置の構造を示す断面図である。スパイクはスパイク受け111と、スパイク受け111に挿入される第1のスパイク110と、第1のスパイク110に重ねられる第2のスパイク120とスパイク受け111に入れられる液体113とよりなる。
第1のスパイク110上側の円柱部分114と下側の円錐部分115とで構成され、第2のスパイク120は上側の円柱部分121と下側の円錐部分122とで構成され、円錐部分122は第1のスパイク110の円柱部分114の上面で支持されている。そして、第2の円柱部分121の上面に振動を防止するスピーカなどの音響機器が載置される。
このような振動防止支持装置はオーディオ機器などで、内部に発生する振動を機器外部に排除するとともに、外部からの振動を遮蔽するために実用化されている。
特許第3848987号公報
一般的に、振動の吸収や絶縁を目的としてゴムや振動吸収材(固体)が用いられている。これらはある特定の振動に有効ではあるが、人間の聴覚の周波数範囲をカバーする広い周波数特性を持つものはなく、かつ、素材の特徴が再生音に重畳してしまう問題点がある。
これまでにある多くの技術は、主に、機器とベースの間に異種の素材を挟むことで振動特性を変化させ、音の変化を生じさせている。しかし、積極的に機器の振動を除去するという観点からではなく、振動特性の変更による技術であり、一長一短を持っていた。
また、上記の如く、振動除去の観点から多段スパイク構造技術を採用した振動防止支持装置が提案されている。振動の排除と絶縁の技術により、効果を発揮している。
しかし、上記の振動防止支持装置では、円錐形状内の振動伝播特性と端部での反射の影響により伝播特性に暴れが生じ、結果として白色雑音的ノイズは完全には除去されず、振動伝播特性が十分には改善されない問題があった。
また、これらは機器の筐体を支持する形で雑音対策を行っており、振動発生源に直接適用しにくいことから、雑音吸収が十分でないという問題もあった。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、第1に、オーディオ機器や電子機器の内部から発生する振動や電磁ノイズを吸収する吸収体であって、可撓性を有し変形可能な密閉容器と、該密閉容器内に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、を具備し、振動若しくは電磁的ノイズ、又は振動及び電磁的ノイズを吸収することにより解決するものである。
また、前記密閉容器は、袋状またはチューブ状であることを特徴とするものである。
また、前記液体の分子の回転周波数が、吸収すべき振動および/又はノイズと同等になるように前記液体の双極子モーメントおよび/又は分子量を選択することを特徴とするものである。
また、前記有機溶剤は、ジメチルスルホキシドであることを特徴とするものである。
また、前記高分子材料は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とするものである。
また、前記密閉容器を固定する支持材を有することを特徴とするものである。
第2に、オーディオ機器や電子機器の内部から発生する振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収する吸収体の使用方法であって、前記吸収体は、可撓性を有し変形可能な密閉容器と、該密閉容器内に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、を具備し、該吸収体を振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に接触させ、振動若しくは電磁的ノイズまたは振動及び電磁的ノイズを吸収することを特徴とするものである。
また、前記密閉容器を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に直接接触させることを特徴とするものである。
また、前記吸収体で前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源を被覆することを特徴とするものである。
前記吸収体を前記振動源および/又は電磁的ノイズ発生源に巻きつけることを特徴とするものである。
本実施形態によれば、第1に、可撓性を有し変形可能な吸収体が実現できるので、振動や電磁ノイズが問題となる箇所に直接当接することができ、効率的に振動吸収や電磁ノイズの吸収が行われ、雑音を低減することができる。
有機溶剤や、高分子材料はその構造あるいは、分子の双極子モーメントの効果により、外部からの機械的な振動による直接的な振動を吸収する効果と、電磁力に起因したモーメントの回転運動によるエネルギー吸収する効果を同時に有する。したがってこれらの液体を、ポリエチレンの袋や、軟質塩化ビニルのチューブなどの変形可能(変形自在)な密閉容器に封入して吸収体とすることにより、振動や電磁ノイズを効率的に吸収することができる。
具体的には、電源に係わる雑音やスピーカなどの振動源に係わる雑音の除去性能に優れ、スピーカやアンプなどの振動発生源に吸収体を使用することにより、再生音の臨場感や演奏家の実在感の阻害を防止できるなど、オーディオ機器の音質を著しく向上させる。
第2に、密閉容器をチューブやパック状にすることにより、載置して支持することが困難な部品や、狭小または複雑な形状の部品にも適用できる。具体的には、電源コードや機器内部の部品にも直接、当接することができ、電気的雑音の効率的な抑制が可能となる。
第3に、溶液の特性を調整することにより広い範囲にわたる雑音吸収特性を調整することが可能である。
具体的には、密閉容器に封入する液体の分子量の大小と双極子モーメントの大小の割合で、エネルギーをよく吸収する周波数範囲が変化する。つまり、吸収する対象の周波数を特定し、その周波数を良く吸収するであろう双極子モーメントと分子量(溶液の場合、溶媒の分子量の加味する)の組合せを設定して、有効な材料を選定する。この組合せにより、数十HzからGHz程度の範囲の周波数を吸収することができる。
第4に、振動および電磁的ノイズの吸収対策において、円錐型構造のスパイクを用いた振動防止支持装置などと比較して省スペース化が図れる。
本発明の第1の実施形態を説明する(A)斜視図、(B)斜視図、(C)平面図である。 本発明の第1の実施形態の使用方法を説明するための(A)斜視図、(B)正面図、(C)斜視図である。 本発明の第1の実施形態の使用方法を説明するための平面図である。 本発明の第1の実施形態の使用方法を説明するための斜視図である。 本発明の第2の実施形態を説明するための斜視図である。 本発明の第2の実施形態の使用方法を説明するための概要図である。 本発明の第3の実施形態を説明するための(A)断面図、(B)斜視図である。 本発明の第3の実施形態の使用方法を説明するための斜視図である。 本発明の実施形態の特性を説明するための特性図である。 本発明の実施形態と比較するための他の構成の特性図である。 本発明の実施形態の特性評価を説明する概要図である。 本発明の実施形態の特性を説明するための特性図である。 本発明の実施形態と比較するための他の構成の特性図である。 従来技術を説明するための断面図である。
図1から図13を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
吸収体1は、密閉容器2と、これに充填される液体3とからなる。後に詳述するが、本実施形態の吸収体1は、音響機器や、電子機器などが有する振動源の振動やそれに伴う雑音、および電磁ノイズを吸収するものである。
密閉容器2は、可撓性および柔軟性を有し変形可能(以下、変形自在と称する)で、水分を通しにくい性質で、水分をもらさずに密閉でき、長期(例えば5年から6年程度)保存が可能な材料からなる。
具体的には、例えばポリエチレンなどを主材料とするレトルトパック等に用いるラミネートフィルムの袋(平袋)(以下パックと称する)、軟質塩化ビニルのチューブ、又はポリエチレン(Polyethylene:PE)などを密閉状態で用いる。
変形自在の程度について更に説明する。本実施形態における変形自在とは、密閉容器2が例えばパックの場合は、対象物の周囲のほぼ全面に密着させて被覆できる程度に可撓性及び柔軟性を有し変形可能であるとする。具体的には例えば、円筒形の対象物であればその円柱面、球体の対象物であればその球面、立方体(直方体)の対象物であればいずれの面にも密着して被覆できる程度に可撓性及び柔軟性を有する程度とする。尚、ここでは変形自在の程度を示したものであり、吸収体1として使用の際には必ずしも対象物の全面を被覆する必要は無い。
また、密閉容器2がチューブの場合は、そのチューブを対象物の周りにらせん状に巻きつけることにより対象物に密着させることが可能な程度に、可撓性及び柔軟性を有し変形可能であるとする。
図1は、第1の実施形態の吸収体1を示す斜視図(図1(A)(B))および平面図(図1(C))であり、密閉容器2がパック2aの場合について説明する。
密閉容器2には、有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体3が充填(封入)される。より詳細には、図1(A)の如くパック2aの注入口2bから液体3が注入された後、図1(B)の如く注入口2bが加熱圧着(シーラーなどを用いる)により封止され、密閉状態となる。
尚、密閉容器2は、図1の如く予め袋(平袋)状になっている容器であってもよいし、所望の形状の複数枚のポリエチレンフィルムやラミネートフィルムなどの密閉用フィルム2a’を重ねて、液体3を充填できる程度に注入口2bを除いた部分を所望の形状に加熱圧着して袋状としたものであってもよい。
例えば、図1(C)の如く、略円形の2枚のポリエチレンフィルム2a’を準備し、これらを重ねて液体3の注入口2bを除いて破線の如く加熱圧着して袋状のパック2aとし、注入口2bから液体3を注入した後、注入口2bを加熱圧着して密閉し、吸収体1とすることができる。
液体3の一例として、有機溶剤の場合はジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)、アセトン、アセトニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、HMPA、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)などである。
また、液体高分子材料としては、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、などの液体が挙げられる。
更に、高分子材料の溶液の場合は、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、エチレングリコール(ethylene glycol)、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、などを水、アルコール、シリコンオイルといった有機溶剤などの溶媒と混合したものが挙げられる。
吸収体1が振動や電磁ノイズを吸収する原理は以下の通りである。
高分子材料は1次元構造、さらに複雑な2次元構造、3次元構造と各種構造で重合した物質であり、共有結合力で、これらの構造を維持する性質を持っている。そのため、振動などの外力により変形させられたとき元に戻る復元力を発生し、質量による慣性力とあいまって外力と同じ周波数の振動を発生する。この振動による内部摩擦により振動エネルギーが吸収される。
また、高分子材料には、双極子モーメントの効果が大きいものがあり、周囲電界の変動により分子に回転力が生じ、周囲の分子との摩擦により、変動電界のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、回路や回路基板における変動電界による影響除去・抑制が見込まれる。
例えば、分子量100万のポリエチレングリコール(PEG)では、炭素Cと水素H2および酸素Oの単位(−CH2−CH2−O−)が7万個以上も直列に共有結合して鎖状の構造をしており、CとCの結合は約110度の角度で結合し180°の角度で結合するOをはさんで長さ約1.5mm程度の非常に細長い紐状になっていると考えられる。この紐は、これらの共有結合の角度を保とうとする硬い性質を持っている。
一方で、各結合は結合の軸を中心に回転しうる柔軟な構造となっている。水溶液とした場合、この紐は部分的に他の紐と絡まりあって内部に水の分子を取り込んでいる。このためこれらの紐が相互にまたは間に水などの分子を付着させて取り込む形で複雑に絡み合うことにより、部分的に拘束されて弾性力のある紐となっており、バネを形成していると考えられる。
一方、分子量が大きくさらに水などの分子が付着することで1本の紐の質量は大きくなって、バネと各分子の質量の相互関係により振動系を形成している。したがって、外力によって液内部に振動を生じ外部振動の周波数が固有振動数と一致する場合、共振により大きく振動して、紐と紐の間および紐の周りに付着している水などの溶液の分子との間の摩擦により振動エネルギーが吸収される、一種のバネーダンパーマス系を構成して振動吸収効果を大きくしている。
以上は、振動エネルギーの機械的メカニズムによる吸収機構であるが、一方で、双極子モーメントに起因した電磁力に基づくエネルギー吸収機構が考えられる。すなわち、周囲磁界の変動により、回転可能な双極子モーメントにより高周波域において仮想的に微弱ではあるが導電性を持つと見なせる高分子材料溶液に、磁界変動を妨げようとする電界(渦電流の要因)が発生し、この変動電界によって分子(双極子モーメント)に回転力が生じ、回転のための駆動力および周囲の分子との摩擦により、変動電界のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、電源コードや電源トランスにおける雑音除去・抑制が見込まれる。
同様に、周囲の振動が溶液に伝わることにより、双極子モーメントが振動方向に変位する。この変位自体はミクロンオーダーの変位であっても、モーメントにとっては大きな変位である。この振動運動と外部磁界(地磁気など)との相互作用により分子(双極子モーメント)に回転力が生じ、回転のための駆動力および周囲の分子との摩擦により、振動のエネルギーを吸収する効果を持つ。この効果により、スピーカマグネットやアナログプレーヤなどに生じる振動吸収が生じ、振動に起因した雑音の除去・抑制が見込まれる。
例えば、分子量100万のPEGでは、炭素2個、水素4個、酸素1個からなる単位(CHO)が2万個以上も直列に共有結合して鎖状の構造をしており、CとCおよびOの結合は約110度の角度で結合して長さ約1.5mm程度の細長い紐状になっていると考えられる。
一方で、CとOの間の結合は結合の腕方向に伸びているが、各結合は回転可能であり、結合の角度を保ったまま固まりになる場合もあり、長く伸びる場合もある。また、螺旋状に分子が並んだ場合は短くまとまった形状にもなりうる。また、分子を構成するHやOは親水性が良く、PEGの水溶液では、水の分子がPEG分子の周りに絡みつきやすく、長く伸びた構造になっていると考えられる。これは、PEGの水溶液に回転における弾性(ねじり戻し)が生じている原因と考える。
このため,振動と外部磁界や変動磁界などによって生じる回転トルクは、分子の回転において分子の重量のみでなく周囲の水の分子まで伴って回転させることとなり、外部のエネルギーを大きく消費するとともに、共振周波数を低くし、音声領域での効果を生じていると考えられる。
たとえば、PEGの双極子モーメントを考える。エチレングリコール(ethylene glycol:EG)の双極子モーメントは約2D(デバイ)であるのに対し、EGが10個重合したPEGでは両端の距離が約2倍に対し双極子モーメントは約10Dとなり5倍に達している。つまり、重合により双極子モーメントが増加し、変動磁界に対するトルクや分子の運動と地磁気の相互作用に起因するトルクが増加し分子の回転運動が誘発されやすい状況になっていくことが示される。
水の双極子モーメントは1.85Dで、分子量が18であり,外部から受けるトルクは小さいがそれ以上に慣性モーメントが小さく、回転の周波数は非常に高くGHz程度になる。
一方、PEGでは双極子モーメントの大きさが大きく駆動トルクも大きくなるが、分子の質量や大きさの増加と付着する水の分子による質量増加により慣性モーメントが著しく増加するため、分子の回転周波数はKHz程度まで低下し、可聴域での効果が期待される。
このように、本実施形態の吸収体1の振動吸収能力は上記の解析とともに、双極子モーメントの運動と地磁気または外部磁界の相互作用によるモーメントに起因する分子の回転運動と粘性による運動エネルギーの減衰が効果を高めていると考える。
以下は、この点についての理論的考察である。
PEG分子が外部振動により変位d[m]の調和振動をすると仮定する。外部磁界は地磁気で磁束密度B[Wb/m]、分子内の分極による分極モーメントの強さをM[D(デバイ)]、相当電荷量をq[C]、分子を長さl[m]、半径r[m]の円筒で質量m[kg]と仮定すると、慣性モーメントJ[kgm]は以下の(1)式で表される。
相当電荷量qは、M=qlDを用いて単位Cにより表現するなら以下の(2)式で表される。
また、外部磁界Bの中において角周波数ωで分子が強制振動されるとき、分子に生じる回転トルクτ[Nm]は磁界と双極子モーメントがなす角度をφとして以下の(3)式の通りである。
ここで、磁界と双極子モーメントがなす角度φはトルクを受けて回転する間に磁界と直行するようになるため、π/2とおくことができる。分子の回転に外力が最も多く費やされる状況として、トルクτ を受けて分子が半回転したとき逆方向のトルクにより反転する状況を仮定する。今、単純に粘性による減衰を無視して分子を回転させるためにのみ外力が用いられるとするなら、トルクによる回転の角度をθとして、運動方程式は以下の(4)式で表される。
回転運動の周期と加振力の周期が一致するとして、これを時間tの積分範囲0〜π/ωの範囲で2回積分して、(5)式を得る。
そして、θ=πとおくことにより(6)式を得る。
さらに、(3)式で振動速度の振幅v=ωdを考慮すると(7)式により最大のエネルギー損失を与える周波数を推定することが出来る。
これに基づき、分極モーメントの強さM=10D、分子の長さl=30μm、分子の近似半径r=0.3nm、振動振幅d=10μm、分子の質量m=1.17×10−22kg、外部磁束密度(地磁気)B=0.000045Wb/m 、を仮定してωを求めた場合、約2.9kHzとなる。この値はモーメントが最大180度回転する場合であり、この周波数より高い周波数でエネルギー吸収の効果が生じる。さらに、粘性による吸収は、回転速度に比例するため高い周波数領域でより効果的にエネルギー吸収が生じる。ただし、水溶液の場合PEGが親水性であることを考慮すると、分子の周囲にクラスタ化した水の分子が付着し、見かけ上の質量を増加し、上記の最低周波数はさらに低い領域に移行すると考えられる。
また、振動振幅を10μmとしたが、100μm程度の振幅も生じうるであろうし、分子量によっては分子の長さも、最も長く伸びた場合数mmにも及びうる。これらの幅を考慮するなら、PEG溶液の外部振動エネルギー吸収能力の周波数幅はかなり広範囲にわたるものと考えられる。これに、溶液の粘性や弾性を考慮すると、分子量に特有の共振特性が生じるものと考えられる。これらの周波数は十分可聴域に入る周波数であることが推測される。
電磁ノイズ吸収では、電流の変化に起因した磁場の変動を抑制するよう電界が生じ、その電界により溶液内の双極子モーメントにトルクが発生し回転運動となる。この往復回転運動や分子の回転と溶液の粘性により運動エネルギーが吸収され、電源コードなどに流れる交流電流の負荷となってコードにおいて減衰させられ、機器に到達するノイズの量が低減し抑制される。効果が期待されるノイズ成分は非常に高い周波数成分であり、溶液中の高分子の分子量や双極子モーメントの大きさにより、吸収効果を期待する周波数範囲が設定可能となる。
電線内を流れる変動電流J[A]により周囲に変動磁界B[Wb/m]が生じる。このとき、Bの変動を抑制するようBの時間微分に応じて電界強度E[V/m]の変化が電線の周囲に発生し、これによりPEG溶液の分極モーメントが外部トルクτ[Nm]を受け回転し、電流Jに仕事をさせることとなる。これにより、変動電流が抑制され、伝達されにくくなる。前述から、トルクの大きさにもよるが、可聴周波数域での雑音電流(商用周波数以外の電流成分)、特に、高周波数域での雑音電流抑制に効果が期待できる。
上記は、理論的に計算した結果である。電流により生じる磁界Bの時間変化を打ち消す方向に電界が生じて双極子モーメントの電荷を動かして渦電流を作ろうと働く。分子内での電荷の距離の範囲でしか移動できないので、高周波域の電流に対して効果が生じると考えられる。ある共振特性を持つと考えられるのでこの計算を行った。
尚、液体3が有機溶剤の場合も、動作原理は上記と同様である。有機溶剤は、分子量が小さいので、高い周波数において有効と考えるが、分極の強さ、つまり双極子モーメントの大きさにより対応可能な周波数領域は変化する。また、粘性の大きさは材料やその濃度によって変化する。
このため、十分な振動および電磁的ノイズの吸収特性を得るためには、液体の分子量と双極子モーメントを適宜選択する。
具体的に説明すると、本実施形態の吸収体1の液体3は、分子量と双極子モーメントによる分子の回転周波数を例えば100Hzから50000Hzの範囲となるように、調整する。
つまり、電子レンジでは水のエネルギー吸収が最も高い周波数である2.5GHz程度に設定されているが、この逆の計算を行って対象とする周波数範囲を決めた後、その周波数を良く吸収するであろう双極子モーメントと分子量(溶液の場合、溶媒の分子量の加味する)の組合せを設定して、有効な材料を選定する。
分子量が100万の液体3場合、分子の回転周波数は150Hz程度である。したがって、分子の回転周波数が上記の範囲(100Hzから50000Hz)となる場合を算出すると、双極子モーメントは2D〜500Dとなる。また実験的には、分子量で10000〜2000000程度のPEG水溶液の場合に、分子の回転周波数が、上記の範囲となる。
このように、液体3の双極子モーメントと分子量の組合せを適宜選択することにより、数十HzからGHzまでの範囲の周波数を吸収することができる。
双極子モーメントが大きいと回転トルクが大きく、エネルギー吸収が高周波数に移行する。したがって、どのような周波数を対象にするかと分子量との兼ね合いで適切な双極子モーメントの範囲が決定される。本実施形態の吸収体1に用いる範囲の一例としては、1.5D〜500D程度である。
また、分子量が大きいと大きな回転トルクが必要となり、エネルギー吸収が低周波数に移行する。したがって、どのような周波数を対象にするかと双極子モーメントとの兼ね合いで適切な分子量の範囲が決定される。本実施形態の吸収体1に用いる範囲の一例としては、水のみで18、PEGなどで200から500万程度である。
尚、これらは一例であり、水の分子がPEGの分子にどの程度絡みついているかによって変わるものであり、双極子モーメントと、分子量の相互の値の関係で対応周波数が変化する。したがって、吸収したい周波数に応じて、液体の分子量と双極子モーメントを適宜選択する。
図2から図4は、吸収体1を振動源や電磁ノイズ発生源など(以下ノイズ源と総称する)に使用した場合の一例を示す図である。吸収体1は一例として、図1に示すパック2aに溶液(PEG)3を注入したものを用いる。この吸収体1を以下、パック状吸収体1aと称する。
図2を参照して、スピーカユニットのマグネット11にパック状吸収体1aを使用する場合を説明する。図2(A)がパック状吸収体1aを使用する前のマグネット11と、パック状吸収体1aである。図2(B)がパック状吸収体1aを使用したマグネット11の正面図であり、図2(C)が斜視図である。
パック状吸収体1aは、例えば幅Wがマグネット11の高さ(厚み)より長く、長さLがマグネット11の円周以上である。円筒形のマグネット11の円柱面の周囲にパック状吸収体1aを配置してマグネット11を被覆する。パック状吸収体1aは例えば、接着テープや、紐状のもので固定され、マグネット11はパック状吸収体1aの密閉容器(パック)2と直接接触する。尚、パック状吸収体1aは、ノイズ源(マグネット11)の全面を被覆しなくてもよく、一部が直接接触していればよい。パック状吸収体1aとノイズ源の接触面積が大きい方が、吸収能力は高くなる。
スピーカユニットのマグネット11にパック状吸収体1aを使用した場合、スピーカユニットに生じた振動はパック状吸収体1aの溶液3を振動させ、地磁気やスピーカのマグネット11による磁気の中を振動することによりトルクを受け、分子の回転により運動エネルギーが吸収され、振動が抑制される。
図3は、ヘッドホンスピーカ15のスピーカユニットにパック状吸収体1aを使用する場合の一例を示す図である。図3(A)が耳掛け型ヘッドホンスピーカ15の外観平面図、図3(B)がスピーカユニットを取り外した後、パック状吸収体1aの装着前の状態を示す平面図、図3(C)がパック状吸収体1aと、その装着する部分のヘッドホンスピーカ15を示す平面図、図3(D)がパック状吸収体1aを装着後の平面図、図3(E)がパック状吸収体1aとスピーカユニットを装着した状態を示す平面図である。
図3(A)(B)の如く、一般的にヘッドホンスピーカ15は、前面カバー17より後ろ側のスピーカーユニット16、マグネット19が背部カバー18によって覆われている。このような場合には、スピーカユニット16、マグネット19が配置される背部の空間にパック状吸収体1aを装着できる(図3(C)(D))。そして、パック状吸収体1aを装着後、スピーカユニット16、マグネット19および前面カバー17を装着することにより(図3(E))、ノイズ源となるスピーカユニット16、マグネット19とパック状吸収体1aが直接接触し、振動及び/又は電磁的ノイズを吸収できる。
この場合のパック状吸収体1aは、背部カバー18の空間の形状に合わせて、例えば薄型の略円形である(図3(C))。すなわち、この場合の密閉容器2は、略円形の2枚のポリエチレンフィルムを準備し、これらを重ねて液体の注入口を除いて加熱圧着して袋状にしたものであり、注入口から液体を注入した後、注入口を加熱圧着して密閉する。
ヘッドホンスピーカ15にパック状吸収体1aを用いることにより、雑音の低減と音が耳元から外側にはなれて音場空間の広がりを作り出すことができる。
図4は、レシーバアンプの電源トランス12にパック状吸収体1aを使用する場合を示す。図4(A)(B)がパック状吸収体1aの使用前の電源トランス12を示す斜視図であり、図4(C)(D)がパック状吸収体1aを使用した場合の電源トランス12を示す斜視図である。
図示は省略するが、この場合のパック状吸収体1aも、例えば電源トランス12の高さ及び外周と同等のサイズとする。
図4(C)(D)の如く、電源トランス12の周囲にこれを被覆するように、パック状吸収体1aを配置する。パック状吸収体1aは放熱フィン12fの間にも配置できる。
電源トランス12にパック状吸収体1aを載置した場合は、電源トランス12により発生する高調波歪電流による電界の作用が分子に働きそれが負荷となって高調波成分を抑制したり、電磁作用による電源トランス12自体の振動も抑制されていると考える。
また、放熱フィン12fにおいて生じている振動に対し溶液内の双極子が負荷となり抑制していると考えられる。
パック状吸収体1aは、内部が液体3であり、密閉容器2が可撓性を有し変形可能であるので、パック状吸収体1a自体も、変形可能である。従って、ノイズ源であるマグネット11や、電源トランス12の形状に沿って直接、面接触させることができる。
従来構造(図14)のような載置方式ではないため、例えば図2のマグネット11の如く、ノイズ源が床面に対して水平に配置されない場合であっても、ノイズ源に直接、パック状吸収体1aを接触させることができる。また、パック状吸収体1aは電源トランス12の放熱フィン12fの間など、入り組んだ構造の部分にも配置できる。
つまり、密閉容器2の大きさおよび形状を適宜選択することで、狭小な部分でも広範な部分でも、ノイズ源の種々の大きさ及び形状に合わせて適用できる。
また、図示は省略するが、パック状吸収体1aの上にノイズ源を載置したり、逆に、ノイズ源の上にパック状吸収体1aを載置して使用することもできる。
既述の如く、パック状吸収体1aの溶液3は、ノイズ源となるマグネット11、19や、電源トランス12の周波数に応じて、その振動や雑音が吸収できるように、特性(分子量、双極子モーメント)が適宜選択される。
図5および図6は、第2の実施形態として、密閉容器2がチューブ2cの場合について説明する。
図5は吸収体1を示す。チューブ2bはたとえば軟質塩化ビニルのチューブを用いる。チューブ2bの一端2dを加熱圧着により封止して筒状にした後に、他端の注入口2bから液体(例えばPEG)3を注入し、注入口2bを同様に封止して密閉状態とする。封止はシーラーを用いて加熱圧着できる。また、チューブとして、ポリエチレンなどの他の材料を用いた場合は、ホットメルト(グルーガン)を用いてプラスチックによるのり詰めで封止できる。このようなチューブ状の吸収体1を以下チューブ状吸収体1bと称する。
図6は、チューブ状吸収体1bの使用例を示す図である。チューブ状吸収体1bは、例えばノイズ源である電源コード20にらせん状に巻きつけて使用する。電源コード20は、密閉容器(チューブ)2と直接接触する。このようにすることで、紐状で長尺のノイズ源であっても、長さ方向に略全体に亘ってチューブ状吸収体1bを接触させることができる。
電源コード20には、商用電源の基本周波数のみでなくトランスなどで発生する高調波歪やIT機器などに生じる高周波雑音が混入しており、こうした雑音電流により電源コード20の周辺に変動磁界が生じている。この磁界変動にチューブ状吸収体1bの溶液3中の双極子が反応し、負荷として働き、電源コード20に接続されている機器への雑音の混入量を低減できると考えられる。
密閉容器2としてチューブ2cを用いた場合は、ノイズ源が長尺物の場合に好適であり、その長さはノイズ源の長さに応じて適宜選択される。
尚、チューブ状吸収体1bは、電源コード20などのノイズ源にらせん状に巻きつけるだけでなく、電源コード20に沿わせてひも状の固定手段や接着テープで固定するなど、ノイズ源と一緒に束ねて使用してもよい。チューブ状吸収体1bは変形自在であるので、形状が固定されていない電源コード20等であっても、密着させることができる。
図7および図8を参照して、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、図1に示すパック状吸収体1aを更に支持材5に固定してパッド状の吸収体1とするものであり、以下パッド状吸収体1cと称する。図7(A)(B)がパッド状吸収体1cを説明する図である。図7(A)が平面図であり、図7(B)が図7(A)のa−a線断面図である。また、図8がパッド状吸収体1cの使用例を示す図である。
図7を参照して、支持材5としては例えば、プラスチックダンボール、ナイロンボード、ポリカーボネイトボードなどのプラスチック、木材、金属の板などが挙げられる。又これに限らず、パック状吸収体1aを支持し、あるいは挟み込むことができるものならば使用可能である。
例えば、2枚のプラスチックダンボールの間にパック状吸収体1aを挟み込む形で配置し、接着材などで固定する。また、パック状吸収体1aは、2枚の支持材5と略同じ形状で配置される。更に、プラスチックダンボール5の表面側に、適用する機器(ノイズ源)の裏面の形状に合わせて成形した他のパック状吸収体1aを接着材などで固定する。
これにより、他のパック状吸収体1aを、適用する機器(ノイズ源)に直接接触させることができる。
第1の実施形態および第2の実施形態は、主に、オーディオ機器に用いる場合を例に説明したが、オーディオ以外の例えば電子機器などにも使用できる。
図8の如く、パッド状吸収体1cは、その上に例えばノート型パーソナルコンピュータ(以下「ノート型PC」という。)などの電子機器30を載置して使用する。ノート型PC30に使用する場合には、プラスチックダンボール5上に露出している他のパック状吸収体1aがノート型PC30の裏面に接触するので、パック状吸収体1aがノート型PC30の吸排気口を塞がないよう、これを除いた領域にパック状吸収体1aを配置する。
このように、パッド状吸収体1cをノート型PC30に用いた場合、ノート型PC30内の電源部やハードディスクに生じる振動や電磁ノイズを吸収することができる。
第3の実施形態において、パック状吸収体1aに変えて、図5に示すチューブ状吸収体1bを例えば渦巻状に配置するなどしてもよい。
また、図示は省略するが、1枚の支持材5の上に、パック状吸収体1aを配置し、固着するのみであってもよい。
図9から図13を参照して、本実施形態の吸収体1に対する特性の測定と吸収体1の有無による試聴の比較結果を説明する。
まず、図9及び図10を参照して、吸収体1の特性について説明する。DENON社製レシーバーアンプ(RCD−M37)について、吸収体1を適用した場合と適用しない場合について音質音像表現の改善について比較した。
図9が吸収体1を適用した場合であり、図4(C)(D)の如くアンプ内蔵の電源トランス12の周囲をパック状吸収体1aで被覆し、図6の如く電源コード20にチューブ状吸収体1bを巻きつけた。
図9(A)では、アンプ自体の周波数特性を破線、2次高調波歪特性を実線、3次高調波歪特性を細実線で示した。横軸がステップ周波数であり、縦軸が電圧レベル[dB]である。図9(B)に全高調波歪特性の測定結果を示し、横軸がステップ周波数であり、縦軸が全高調波歪率[10−3%]である。
また、図10は比較のために吸収体1を適用しない場合の特性を示す。図10(A)がアンプ自体の周波数特性(破線)、2次高調波歪特性(実線)、3次高調波歪特性(細実線)であり、横軸がステップ周波数であり、縦軸が電圧レベル[dB]である。図10(B)が全高調波歪特性の測定結果であり、横軸がステップ周波数であり、縦軸が全高調波歪率[10−3%]である。
これらによると、吸収体1の有無によって、10kHz前後から高周波数に向けて2次高調波成分が少なくなる傾向を見せており、3次高調波成分も起伏は大きいものの深いディップなどを示して減少の傾向を見せるなど、歪特性に変化が生じていることが示される。また、高周波領域での歪成分の減少傾向は、後述の試聴実験の結果に一致して、雑音感の低減などの改善に関係するものである。
一方、試聴によっても効果の確認を行った。試聴環境として、アンプおよびCDプレーヤ(DENNON社製RCD−M37)、スピーカ(KRYNA社製 K102)、スピーカスタンド(KRYNA社製 KRYNA PRO MGT−60RS)、スピーカケーブル(KRYNA Spca7)、電源ケーブル(DENNON社製RCD−M37 標準ケーブル)を用いて音楽CD(Compact Disc)を再生し、アンプとスピーカについて吸収体1の有無で比較した。
比較対象は以下の通りである。
対象1:アンプの電源コードにチューブ状吸収体1bを使用し、電源トランスにパック状吸収体1aを使用したもの(図4(C)(D)、図6参照)
対象2:対象1と同機種であるが、異なる機体で吸収体1を適用していないもの
対象3:対象1の左右スピーカのスピーカエンクロージャの上に図1に示すパック状収体1aを1個ずつ載置したもの
図11を参照して、評価内容と方法および比較結果を説明する。図11(A)(B)(C)はスピーカPの振動板に対峙する被験者Sを俯瞰した図(スピーカPについて上面図)であり、図11(D)(E)(F)はスピーカPの振動板に対峙する被験者Sを背後から見た図(スピーカPについての正面図)である。
また、図11(A)(D)が対象1、図11(B)(E)が対象2、図11(C)(F)が対象3の場合である。
5名の被験者Sについて、左右スピーカPの中央で、スピーカPから距離約2mの位置にて試聴させ、以下の2点について評価した。
第1は、音像の定位位置および音像の大小についての評価であり、楽曲中のボーカルv(○印)と楽器d(スネア:△印)の音像位置および音像の大きさ・広がり(音像のぼけ具合)とを○印(v)および△印(d)の位置と大きさで表し、評価用紙に記入させた。
第2は、音質の評価であり、解像力・奥行き・広がり・高さ・帯域・軽さ・音歪感・静寂感・音質を5段階にて評価させた。点の付け方としては、対象2の評価を1とし、これを基準にどの程度改善されているかを評価させた。
評価結果は以下の通りであり、まず、第1の音像定位の比較について説明する。
図11(B)(E)に示す対象2(吸収体1不適用)の結果では、音像の印象が大きくぼけたイメージであるが、対象1(図11(A)(D))、対象3(図11(C)(F))の順に音像のイメージが小さく明確になっている。この傾向は5人の被験者に共通であった。
また、音像の位置については、対象2(図11(B)(E))ではボーカルv(○印)とスネアd(△印)の音像が部分的に重なり合って位置の違いが不明確であるのに対し、対象1(図11(A)(D))、対象3(図11(C)(F))の順で音像位置の高さが高くなり奥行きがわずかであるが遠めに変化している。
この傾向も5名に共通の傾向であった。これらの結果より、対象2(吸収体1不適用)、対象1(アンプのみに吸収体1適用)、対象3(アンプとスピーカに吸収体1適用)の順で音像が明確になり、音像の位置もより明確に認識できるようになることが示された。これらにより、吸収体1の効果として、音像表現に改善をもたらすことが示される。
第2に音質の比較について、説明する。
比較結果を表1に示す。結果から示されるように、アンプのみに吸収体1を適用した対象1では、「解像力」、「音像の高さ感」、「音の軽さ」で大きな改善が見られ、全体的に見ても吸収体1を不適用の対象2に対し、吸収体1の効果が大きいことが示されている。
さらに、スピーカエンクロージャの上に、パック状の吸収体1(図1)を配置するという最も簡易な手法を併用することにより、すべての評価項目において著しい改善がなされ、特に「解像力」、「音の歪感」、「静寂感」での改善が大きく、スピーカにおける効果の大きさが示された。こうして得られた結果は図9および図10が示す、吸収体1の有無による高調波歪特性の10kHz前後からの減少傾向とも結びついており、解像力、音の歪感、静寂感、音質など雑音の多少に大きくかかわる要因の改善に深く関連している。
図12および図13を参照して、吸収体1をスピーカユニットへ適用した場合の評価結果を説明する。
図2(B)(C)の如く、スピーカユニットのマグネット11周囲にパック状吸収体1aを巻き付け、吸音材や振動吸収ボードを併用したスピーカシステムと、単純にスピーカユニットをエンクロージャに取り付けただけのスピーカ(吸収体1不適用)を作成し、放射音の歪特性を比較した。
図12は吸収体1を適用したスピーカの特性を示しており、図12(A)にスピーカの周波数特性(破線)、2次高調波歪特性(実線)、3次高調波歪特性(細実線)の測定結果を示し、横軸がステップ周波数であり、縦軸が電圧レベル[dB]である。図12(B)に全高調波歪特性の測定結果を示し、横軸がステップ周波数であり、縦軸が全高調波歪率[10−3%]である。
図13は比較のために吸収体1を適用しないスピーカの特性を示しており、図13(A)にスピーカの周波数特性(破線)、2次高調波歪特性(実線)、3次高調波歪特性(細実線)の測定結果を示し、横軸がステップ周波数であり、縦軸が電圧レベル[dB]である。図13(B)に全高調波歪特性の測定結果を示し、横軸がステップ周波数であり、縦軸が全高調波歪率[10−3%]である。
両者の間で周波数特性に変化が生じているが、どの変化が音質的にどのような影響を与えているかは判別しにくい結果である。しかし、2高調波歪特性(実線)および3次高調波歪特性(細実線)を見ると、吸収体1を適用したスピーカ(図12(A))では不適用のスピーカ(図13(A)))に比べて歪成分が7dB以上低減されていることが示されている。
さらに、全歪特性(図12(B))でも、吸収体1を適用したスピーカ低域で歪の低減が適用しない場合(図13(B))と比べて大きく、高域でも歪が低減されており、これらの特性の改善が、試聴における「音の歪の低減」、「静寂感」、「音の解像度の向上」、「音質の改善」、「音の余韻感」につながっていると考えられる。
特に、質的には細かな音の表現力が増加し、対策前では音の違いが表現できるようになり、演奏者、楽器の実在感、会場の臨場感などの表現力が非常に向上していると判断できる。
1、1a、1b、1c 吸収体
2、2a、2c 密閉容器
3 液体
5 支持材
11 マグネット
12 電源トランス
20 電源コード
30 電子機器

Claims (3)

  1. 可撓性を有し変形可能な密閉容器と、
    該密閉容器内に充填される有機溶剤、液体高分子材料、高分子材料の溶液のいずれかから選択される液体と、
    を具備し、
    前記液体の分子の回転周波数が、吸収すべき振動および/又はノイズと同等になるように前記液体の双極子モーメントおよび/又は分子量を選択し、
    振動若しくは電磁的ノイズ、又は振動及び電磁的ノイズを吸収することを特徴とする吸収体。
  2. 前記有機溶剤は、ジメチルスルホキシドであることを特徴とする請求項に記載の吸収体。
  3. 前記高分子材料は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項に記載の吸収体。
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