JP5565807B2 - フェルミチョッパー回転制御装置 - Google Patents

フェルミチョッパー回転制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリットと一体に回転するロータを真空中で磁気浮上させて回転させ、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー、およびロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させるフェルミチョッパー回転制御装置に関する。
従来から、ロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させる装置として、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。さらに、TMPに用いる磁気軸受の制御装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
一方、特許文献3には、パルス中性子非弾性散乱測定で用いられるフェルミチョッパーに関し、磁気ベアリングによりロータを真空中に浮上させ、600Hzもの高速回転が実現されていることが記載されている。そのロータには中性子透過窓に相当するスリットパッケージが装填される。
さらに、特許文献4には、フェルミチョッパー(特許文献4に記述されるところのチョッパー分光器)において、1000Hzの高速回転にあたって、回転精度±0.1μsを実現可能な構成が示されている。
特開平10−281093号公報 特開2002−13532号公報 特開2007−303909号公報 特開2010−25902号公報
ところで、TMPは、回転速度の制御精度(ロータの回転周波数精度Δf)は1Hz程度であり、また、同期制御が不要であることから、その制御回路の搭載がされていない。
本発明の目的は、回転速度の高速化および回転速度の高精度化を図ったフェルミチョッパー回転制御装置を提供することにある。
更に本発明の別の目的は、高速、高精度で信号を処理する場合に周囲の高精度計測器に影響を与えないようノイズを極力抑えたフェルミチョッパー回転制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリットと一体に回転するロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させ、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー回転制御装置において、前記ロータの回転数及び位相角を指定するための入力装置と、ディジタルによる位相信号から前記誘導モータの各相のコイルに供給するための三相正弦波信号を生成する三相信号発生部と、前記三相正弦波信号を増幅して前記誘導モータに出力する三相電力増幅器と、前記ロータの回転を検出して回転信号を発生する回転センサと、前記三相信号発生部を制御して前記誘導モータを駆動制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、前記入力装置に指定される回転数及び位相角に基づき前記三相信号発生部に前記位相信号を出力して、前記誘導モータの回転速度を制御する速度制御と、外部から入力される基準タイミング信号と前記回転センサで検出される前記ロータの回転位置とに基づき、前記誘導モータの位相を制御する位相制御であって、前記ロータの位相角と目標位相角との偏差を算出し、該偏差を最小にするよう前記三相信号発生部に対し同期指令回転周波数に調整用の微小な周波数データを出力して加減算を行わせて位相角制御と、を行うことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリットと一体に回転するロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させ、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー回転制御装置において、前記ロータの回転数及び位相角を指定するための入力装置と、ディジタルによる位相信号から前記誘導モータの各相のコイルに供給するための三相正弦波信号を生成する三相信号発生部と、前記三相正弦波信号を増幅して前記誘導モータに出力する三相電力増幅器と、前記ロータの回転を検出して回転信号を発生する回転センサと、前記三相信号発生部を制御して前記誘導モータを駆動制御するモータ制御部と、を備え、前記モータ制御部は、前記入力装置に指定される回転数及び位相角に基づき前記三相信号発生部に前記位相信号を出力して、前記誘導モータの回転速度を制御し、外部から入力される基準タイミング信号と前記回転センサで検出される前記ロータの回転位置とに基づき、前記誘導モータの位相を制御し、前記位相制御を行いながら中性子ビームの発生周期毎で位相角のヒストグラムを求め、センター値からのプラス側マイナス側毎の偏差の総和から同期指定回転周波数を補正する、ことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、前記三相信号発生部は、ディジタル直接合成発振器を備えたことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、前記モータ制御部は、回転制御する場合に、実回転周波数の値からスリップ量や加速量を制御してS字加速で目標回転周波数を実現することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、前記モータ制御部は、前記ロータの実回転周波数が目標回転周波数に到達したとき、位相角制御を前記中性子源で発生する中性子が前記スリットに到達するまでの時間に依存した一定の角度にて前記ロータの位相角制御を行うことを特徴とする。
本発明によれば、ロータの回転速度の高速度化および回転速度の高精度化を図ることができ、且つ外部の上位装置と同期してロータを回転させることができるフェルミチョッパーが得られ、かつ外部の上位装置と同期してロータを回転させることができる。従来のフェルミチョッパーの性能は、600Hz、±0.25μs程度であったが、本発明によれば、600Hzの高速回転で、かつ回転周波数変化(ばらつき)が±0.01Hz以下の高精度な回転を実現できる。且つ、ロータのスリットに対する位相角制御精度は半値幅で0.3μs以下とすることを可能とした。
本発明によれば、高速、高精度で信号を処理する場合に周囲の高精度計測器に影響を与えないようノイズを極力抑えたフェルミチョッパーが得られる。
一実施形態に係るフェルミチョッパー全体の概略構成を示すブロック図。 誘導モータの駆動を制御する回路部分の構成を示すブロック図。 フェルミチョッパー本体の内部構成を詳細に示すブロック図。 フェルミチョッパー本体の構造を概略的に示す断面図。 フェルミチョッパー本体のロータを概略的に示す断面図。 ロータと一体に回転するスリットを概略的に示す斜視図。 スリット支持部材にスリットが挿入された状態を示す断面図。 中性子ビームとスリットの関係を示す説明図。 位相角パルスの計測について説明するタイミングチャート。 位相角パルス幅に応じた位相角制御領域を示す図。 位相角が目標位相角より大きくずれているときの補正のためのインチング動作を説明するタイミングチャート。 位相角と目標位相角のずれが小さい場合の補正のためのインチング動作を説明するタイミングチャート。
次に、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、一実施形態に係るフェルミチョッパー1全体の構成を概略的に示している。図2は、フェルミチョッパー回転制御装置の詳細な構成を示している。図3は、フェルミチョッパー本体の内部構造を詳細に示している。図4は、フェルミチョッパー本体の構造を概略的に示している。図5は、フェルミチョッパー本体のロータを概略的に示している。図6は、ロータに搭載されてロータと一体に回転するスリットを概略的に示している。図7は、スリット支持部材にスリットが挿入された状態を示す横断面図である。そして、図8は、中性子ビームとスリットの関係を示す説明図である。
パルス中性子源(図示省略)では、たとえば、大強度陽子加速器施設(J−PARC)では25Hzの繰り返し(40msの周期)で加速器で加速された時間的にパルス状の陽子が中性子発生標的に入射し、標的原子核の核破砕反応により、時間的にパルス状の中性子が、繰り返し25Hz(周期40ms)で発生する。フェルミチョッパー1は、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化する装置である。このフェルミチョッパー1は、図1と図2で示すように、フェルミチョッパー本体2と、磁気浮上制御回路3と、三相信号発生部4と、モータ制御部5と、三相電力増幅部6と、入力装置7、システム基準クロック51とを備える。
フェルミチョッパー本体2は、中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリット10と、スリット10が搭載されこのスリット10と一体に回転するロータ11と、ロータ11を回転させる誘導モータ12と、ロータ11を磁気浮上させる磁気軸受13と、ロータ11の回転速度と回転位置を検出する回転センサ14とを有する。
フェルミチョッパー本体2は、図4に示すように、中性子ビームが通過する窓15を有するハウジング16を備える。このハウジング16内部は真空にされており、このハウジング16内に、スリット10、ロータ(シャフト)11、誘導モータ12および磁気軸受13(図3参照)が収容されている。フェルミチョッパー本体2は、ロータ11が真空中で、磁気浮上されて回転するようになっている。
ハウジング16は、ベースプレート17と、ベースプレート17に固定された筒体18と、この筒体18に固定された筒体19と、この筒体19に固定され、左右に中性子ビームが透過する窓15を有する筒体20と、この筒体20の上部開口端を塞ぐ蓋21とを有する。
また、フェルミチョッパー本体2には、図3に示すように、ロータ11をx,y,zの3軸方向で磁気浮上させるために、スラスト磁気軸受22、一対のラジアル磁気軸受23,24、スラスト制御センサ25、および一対のラジアル制御センサ26,27が設けられている。磁気浮上制御回路3は、各センサ25乃至27で検出されるロータ11のx,y,z位置に基づき、磁気軸受22乃至24の各電磁コイルへの給電を制御する。
図5に示すように、スリット支持部材29がロータ11に固定されている。このスリット支持部材29の溝29aに、図6に示すスリット10が挿入されている。
このスリット10は、中性子遮蔽材(中性子遮蔽部)10aと、アルミニウムスペーサ(中性子透過部)10bを複数回交互に重ねて、両側を保持部材10c、10dで挟持している。中性子遮蔽材10aとアルミニウムスペーサ10bはそれぞれ所定の曲率で湾曲している。中性子遮蔽材10aとアルミニウムスペーサ10bは、交互に複数回重ねた状態で、中性子遮蔽材10aおよびアルミニウムスペーサ10bと同じ曲率の曲面をそれぞれ持つ保持部材10c、10dで挟まれている。このようなスリット10が、スリット支持部材29の溝29aに挿入されている。また、スリット10は、複数のネジでスリット支持部材29に固定される。これにより、スリット10がロータ11と一体に回転するようになっている。
中性子はアルミニウムスペーサを透過するので、アルミニウムスペーサ10bの幅をWとすると、ロータ11の直径Dおよびロータ11の回転周波数fに対して、開口時間Δtは、Δt=W/2πDfで与えられる。尚、図8において、dは中性子遮蔽材10aの厚さでる。
フェルミチョッパー1では、Δt=1.5μs−0.7μsをf=600Hz−1kHzで実現することを目指している。
図2において、三相信号発生部4は、誘導モータ12の各相のコイルに供給するための三相正弦波信号を生成するもので、U相、V相およびW相の各コイルに対応して設けた3個のDDS0・DDS1・DDS2(Direct Digital Synthesizer)、すなわちディジタル直接合成発振器にて構成しており、各DDS0・DDS1・DDS2はディジタルにより生成した各波形データをアナログ信号に変換するD/Aコンバータを含む。
DDS0・DDS1・DDS2からそれぞれ出力される3つの位相差のあるアナログ信号を、インピーダンス変換用バッファアンプ30,31,32で受け、次にD/A変換により発生した高周波成分を低域通過フィルタ33,34,35で除去し、増幅回路36,37,38で適切なレベルまで電圧を増幅して、図3の三相電力増幅器6により電力増幅されて誘導モータ12のU,V,Wの各相のコイルに供給される。
誘導モータ12の駆動部にこのような三相電力増幅器6を用いて、DDS0・DDS1・DDS2による三相信号発生部4からの信号を電力増幅する構成とすることで、インバータを用いる場合と比べて電流スパイクノイズの発生を抑えられ超精密制御に有効となる。
モータ制御部5は、三相信号発生部4を制御することにより、誘導モータ12の駆動を制御するもので、好ましい例としては、FPGA(Field Programmable Gate Array)、すなわち現場にて書き換え可能なロジックデバイスにて構成すると良い。モータ制御部5は、誘導モータ12の回転速度や位相角制御を行うが回転速度の高速化および回転速度の高精度化を図るべくDDS0〜DDS2の制御プログラムが設定されており、従って、フェルミチョッパーの使用現場に応じた再設計が可能なFPGAはモータ制御部として好ましいのである。もちろん、マイクロコンピュータ等の他の再プログラム可能なデバイスを用いても良いが、FPGAは近年、高集積化及び高速化を飛躍的に向上させており、高精度、高速処理の点でFPGAが好ましく、またコスト的にも有利である。
モータ制御部5は、メモリ部8にこれら制御に必要なデータをカウントしたり制御に必要な各種変数を記憶しておくレジスタ群を備えている。
入力装置7は、ユーザーがロータの回転数や位相角を指定するもので、モータ制御部5は、これら指定値及び回転センサ14から出力するセンサ信号a,bや中性子の発生タイミングを与える基準タイミング信号(T0パルス:J−PARCでは繰り返し25Hz、周期40ms)に同期させて誘導モータ12の駆動を制御する。
DDS0〜DDS2からの信号の発生について説明する。各DDS0〜DDS2の構成をDDS0で代表して説明すると、ラッチ部41と、加算器を含む位相アキュムレータ42と、波形ROM43と、D/Aコンバータ44とから構成されている。
位相アキュムレータ42は、モータ制御部5を通して外部より供給される25MHzのシステム基準クロック51に同期して周波数設定値Nを累積していく。こうすると、周波数設定値に比例した速度のノコギリ波状のディジタルデータが得られる。このとき、ラッチ部41は、位相アキュムレータ42の演算処理に必要な各種変数をラッチしておくレジスタ群を具備している。
位相アキュムレータ42での演算データは、出力波形の位相に相当し、波形データが書き込まれた波形ROM43のアドレスとして使用する。この波形ROM43から読み出されたディジタル信号をD/Aコンバータ44でアナログ信号に変換すると、波形ROM43のデータに対応した正弦波による波形が得られる。
周波数の設定について説明する。波形ROM43には12ビット(2π/4096)に分割された1サイクル分のsinωtの値が正弦波テーブルとして格納されており、このデータを1周期の時間で4096回アドレスを変えて読み出し、10ビットのD/Aコンバータでアナログ信号に変換すれば正弦波が得られる。位相を制御するには、読み出しアドレスに位相レジスタのアドレスを加算すれば、指定の位相からの発振が可能となる。
目標とする周波数(Ftarget)から位相アキュムレータ42に供給される位相ステップ(Δphase)は次の計算式から求められる。例として、Ftarget=600.000Hz、システム基準クロック51に同期したマスタークロックの周波数fMCLKを25MHzとすると、
Δphase=Ftarget/(fMCLK/232
=600.000/(25×106/232
=600.000/0.005820766
=103,079.21672=(192A7)hex
よって、DDS0〜DDS2の周波数レジスタFreg0に32ビットによるデータ(000192A7)hexをモータ制御部5が書き込むことで、目標周期で波形ROM43から正弦波データが繰り返し読み出され、D/Aコンバータ44でアナログ信号に変換されて正弦波電流値として出力される。
位相アキュムレータ42では小数点以下は切り捨てられるため、整数倍とならない場合は、実際の発振周波数に僅かな誤差が発生する。つまり、103,079×0.005820766=599.9987385Hzで、Ftarget=600.000Hzに対する誤差は−0.0012615Hzとなる。
この誤差をさらに10分の1小さくするためにfMCLKを10分の1の2.5MHzとする高精度化処理を行うと、
Δphase=Ftarget/(fMCLK/232
=600.00000/(2.5×106/232
=600.00000/0.0005820766
=1,030,792.151=(FBA88)hex
1,030,792×0.0005820766=599.9999027Hzで、Ftarget=600.000Hzに対する誤差は−0.0000973Hzで10分の1以下となる。従って、fMCLK=2.5MHzを採用した。
この誤差が位相角の誤差に与える影響度を計算すると、600Hzにおいて、
Δt=(1/600)−(1/599.9999027)=0.271ns
となる。この誤差は時間と共に累積されるので基準タイミング信号(T0パルス)の周期である40ms間には24倍して6.504ns、さらに1秒では162.6ns、10秒では1.626μsとなる。
このことから、位相角を半値幅で0.3μs以内に保証しようとすれば、誤差を補正するためのフィードバック制御が必要となるが後段で説明する。
三相正弦波を生成するには、モータ制御部5は3個のDDS0〜DDS2をそれぞれ0度、120度、240度に位相をオフセットさせ、同期して出力する必要がある。各相間の120度の位相差は変化しないので、位相レジスタPHASE0REGに初期設定すれば、その後の制御は不要であるが、各相に使用されているバッファアンプ30,31,32、低域通過フィルタ33,34,35、増幅器36,37,38、三相電力増幅器6等による各相間の要素バラツキに起因する位相バラツキが僅かに発生することも考えられるため、これら位相オフセットデータをパラメータ化し位相レジスタにセットできるようにしておくことが必要である。
3個のDDSの発振タイミングを同期させるために、モータ制御部5は同一のマスタークロック信号CLK及び位相アキュムレータ42をゼロにクリアするためのリセット信号RSTを同時にDDSに出力する。電源投入後のリセット信号で各DDSにリセット信号RSTを出力すれば同期した三相正弦波信号が得られる。
フェルミチョッパーを目標回転周波数に上げるのに、モータ制御部は次の領域に分けてスリップ制御及び加減速制御を行う。
A.領域区分によるスリップ量
(1)初期回転領域・・・0〜15Hz領域
スタートボタンが押されると、指令周波数に15Hzを設定し、急加速を防ぐために線間で約4.6Vの低い電圧をモータに印加し低電流でゆっくりと回転を上げて行き、ロータ回転周波数が15Hzになるまでその値を保持する。
(2)高スリップ領域
15Hz以上で且つ(目標回転数−15Hz)以下の領域のスリップ量は10Hzとする。
(3)低スリップ領域
(目標回転周波数−15Hz)以上で(目標回転周波数±5Hz)以内の領域のスリップ量は2Hzとする。
領域区分による加減速量
(4)高加速領域
15Hz以上で且つ(目標回転数−5Hz)以下の領域の加速量は0.1Hzとする。
(5)低加減速量領域
(目標回転周波数−5Hz)以上で且つ(目標回転周波数+5Hz)以下の領域の加減速量は±0.01Hzとする。
(6)超微小加減速量領域
(目標回転周波数−0.1Hz)以上で且つ(目標回転周波数+0.1Hz)以下の領域の加減速量は±1digit(0.000582Hz)とする。
B.回転制御における制御区分
モータ制御部5が回転制御をする場合、実回転周波数の値からスリップ量、加速量を制御して簡易的なS字加速で目標回転周波数を実現する。回転制御区分は、4ビットのデータ(AccelDecelState)で表し、その判定基準は表1で示す。ここで、微動加速領域幅は0.1Hz、回転同期精度はfMCLK=2.5MHzでは1digitに相当する0.000582Hzである。
Figure 0005565807
回転センサから出力する信号は2通りの信号があり、1つはフェルミチョッパー本体2内部に取り付けた回転センサからのセンサ信号aであり、もう1つは放射線の損傷を避けるためにフェルミチョッパー本体2の外側で放射線の影響を少ない場所に赤外線発光部と受光部を置き、その赤外線をファイバーを経由してロータ11で反射させ受光部で得られるセンサ信号bである。
これらの信号は、回転制御、位相角制御の精度に直接影響するため、外来ノイズの影響を最小限にすることが必要である。更に、回路を構成するのに、リップルの少ない電源を採用したり、センサの立上がり速度を考慮して増幅器とフィルタの定数を決めるとともに、センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するコンパレータ部にはチャタリングが発生しないような適切なヒステリシス量を選定することなど回転信号が不安定にならないような対策を施す必要がある。放射線特性や応答特性を考慮し、センサ信号aまたはセンサ信号bの何れか一方を選択してセンサ信号として回転制御に用いる。
回転制御で使用するセンサ信号は、回転センサから得られる1周期の時間(周波数の逆数)である。実際にはパルス周期の時間を計測するということはクロックでカウントすることになるため、精度を上げるには出来る限り短い周期のクロックでカウントするのが望ましい。
センサ信号(ロータパルスRP)を2倍に分周し、その半周期分をカウントし、除算器で逆数をとって実回転周波数を得る。但し、この実回転周波数の値はマスタークロックの整数倍で表さなければならない。具体的には、回転周期毎に16回の移動平均を求めて実回転周期回転数を求める。高精度化処理による指令周波数精度は10×(232−1)=(9FFFFFFF6)hexであるので、実回転周波数は次の式で求められる。
実回転周波数=(9FFFFFFF6)hex/実回転周期カウント数
但し、
実回転周期カウント数=(1/目標回転数(600Hz))×(1/(25×106))
=1666.667μs/0.04μs
=41666.667=(A2C2)hex
従って、実回転周波数は、
実回転周波数= (9FFFFFFF6)hex/(A2C2)hex=(FBA88)hex
となり、目標回転数のΔphase=(FBA88)hexと一致するのである。
モータ制御部5による位相角制御について説明すると、位相角とは、J−PARCでは25Hzの繰り返しで中性子が発生するが、その発生時刻を基準タイミング信号(T0パルス)の発生時刻とし、その中性子が回転するフェルミチョッパーのロータ11のスリット10の開口部に到達するまでの時間を言い、パルス(TW)にて示す。
フェルミチョッパーのロータ11は回転センサを備えており1回転で1パルスを検出可能である。分かりやすくするため、回転センサ位置とスリットの開口部位置を同一位置と仮定する(違う場合はその角度をオフセットとして考慮することになる)。中性子が発生からスリットに到達するまでの時間にロータがどれだけ回転したか、つまり、位相角は基準タイミング信号(T0パルス)からロータパルス(RP)までのパルス(TW)の幅と同じことになる。当然、あるエネルギーの中性子の到達までの時間は一定であるから、パルス(TW)はロータの回転周波数に依存する。この位相角パルス(TW)の幅を一定の角度に保つ制御を位相角制御という。
位相角制御を行うためには、基準タイミング信号(T0パルス)とロータパルス(RP)が同期している必要がある。基準タイミング信号(T0パルス)とロータパルス(RP)が同期するためには、ロータの回転周波数がT0の繰り返し(25Hz)の整数倍の周波数でなければならない。しかし、DDS0〜DDS2にセットするデータは1/232をベースにしており、DDS0〜DDS2は前述したように、位相アキュムレータ42では小数点以下は切り捨てられるため、整数倍とならない場合は、実際の発振周波数に僅かな誤差が発生する。つまり、103,079×0.005820766Hz=599.9987385Hzで、Ftarget=600.000Hzに対する誤差を−0.0000973Hzと10分の1以下にすることができることは前述した通りである。
この誤差が位相角の誤差に与える影響度を計算すると、600Hzにおいて、
Δt=(1/600)−(1/599.9999027)=0.271nsとなる。この誤差は時間と共に累積されるので基準タイミング信号(T0パルス)の周期である40ms間には24倍して6.504ns、さらに1秒では162.6ns、10秒では1.626μsとなることは前述した通りである。
さらには誘導モータ12ではスリップがあることから僅かの周波数のずれでも、時間と共に位相角パルス(TW)の幅は要求される精度を超えてしまう。
従って、回転制御だけでは位相角を一定に保つことは極めて困難であり、位相角を半値幅で0.3μs以内に保証しようとすれば、位相角パルス(TW)の幅を計測し、誤差を補正するフィードバック制御をモータ制御部5は行っている。
このフィードバック制御としてモータ制御部5は、次のような制御を行う。すなわち、ロータの実回転周波数が目標回転周波数に到達し、基準タイミング信号(T0パルス)に同期したとする。この瞬間から位相角制御に移り、このときDDS0〜DDS2からの指令回転周波数を同期指令回転周波数としてモータ制御部5は記憶する。一般に、同期直後の位相角は目標とずれている。位相角制御を行うには位相角パルス(TW)の時間幅を精密に測定(実際には1周期をシステム基準クロック51でカウントする)し、目標位相角との偏差を算出する。そして、その偏差を最小にするよう同期指令回転周波数に微小な周波数を短周期、短時間加減算を行う。
これで位相角制御は長時間に亘って安定に制御される筈であるが、しかし実際には、起動時間経過と共に誘導モータ12の銅損、フェルミチョッパーの真空度、電力増幅器の熱安定など同期回転周波数を変化させる要因がいくつかあるため、電源投入後は位相角制御は安定には働かない。実験結果からは実回転周波数が安定するまでには約4〜5時間程度かかることが分かっている。
つまり、同期が実現できたとしても、その時に記憶された同期指令回転周波数と実回転周波数との間には、約4〜5時間に亘って差が生じていると推測できる。この差を位相角制御を行いながら補正できれば、電源投入から4〜5時間の間でも位相角制御を精度内に動作させることができる。
これには次の2つの方法が考えられる。
(1)位相角制御が外れたら位相角制御を一旦止め、回転制御に戻して同期指令回転周波数を取得し直し、再び位相角制御に入る。
(2)位相角制御を行いつつ、基準タイミング信号(T0パルス)のパルス周期毎に位相角のヒストグラムを求め、センター値からのプラス側マイナス側毎の偏差の総和を求め、その量から同期指令回転周波数を補正する。
位相角パルス(TW)の計測について説明する。図9は基準タイミング信号(T0パルス)とロータパルス(RP)と位相角パルス(TW)のタイミングチャートを示している。位相角パルス(TW)の計測カウント数の精度を上げるために25MHzのシステム基準クロック51からPLLで4逓倍の100MHzのクロック(CLK100M)を作りマスタークロックとする。基準タイミング信号(T0パルス)をマスタークロックで同期化し前縁パルス(TO_1clk)を作る。同様にロータパルス(RP)から前縁パルス(f600Hz1clk)と1クロック遅れのパルス(600Hz1clk_2)を作る。基準タイミング信号(T0パルス)と前縁パルス(f600Hz1clk)からフリップフロップ(flip-flop)で位相角パルス(TW)を作る。
そして、位相角パルス(TW)の立ち上がりでモータ制御部5は記憶部8の中のカウンタTWcountQをクリアしておき、位相角パルス(TW)がONの間、マスタークロック(CLK100M)でカウントし、位相角パルス(TW)の立下がりパルス(TWfall)でそのカウント値を記憶させる。この値はノイズなどによりバラツキが発生することが考えられるため、16回の移動平均をとる。
基準タイミング信号(T0パルス)とロータパルス(RP)が同期するとき、どの位相角で同期するかはその都度異なる。目標位相角に近い場合はゆっくりと、遠く離れている場合は早く近づける必要がある。従って、目標位相角から現在位相角がどれ位離れた領域にあるかを判別し、領域毎に同期指令回転周波数に加減算する周波数量を制御する必要がある。
図10は位相角制御領域を示すもので、位相角パルス(TW)の幅に応じた位相角制御の状態を示している。位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)は位相角制御領域を判定した時の状態を記憶するレジスタである。
SyncMarginは位相角同期精度であり時間幅で指定するが、回転周波数により異なる。図の例では0.08μsとなっている。
AUTOfastQは高速制御領域か低速制御領域かを指定する値であり、(目標位相角±AUTOfastQ)以外であるときは高速に目標位相角に近づける。(目標位相角±AUTOfastQ)以内に入ったら低速に目標位相角に近づける。例えばこの値を50μsとした場合、450μs以下と550μs以上の領域では高速に目標位相角に近づけることになる。
図10では、基準タイミング信号(TO Pulse)に同期して立上り、それぞれ異なるタイミングにて発生するロータパルス(RP)にて立下がる位相角パルス(TW)に対して5通りのパルスの状態(TW1〜TW5)が示されており、TW1は目標位相角の状態である。目標位相角は回転速度により異なり、入力装置7から値が指定されたパルス幅は、25MHz(0.04μs)で数えた時の2進数で与えられ、例えば、500μsでは、500μs÷0.04μs=12500=(30D4)hexで与えられる。
パルスTW1は、(500−0.08)μsから(500+0.08)μsの範囲であり、位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)が“111”で位相角制御は行わない。
パルスTW2は、パルス幅が450μs以下であり、僅かに回転速度を遅くさせるために、同期指令回転周波数に、例えば、約1.0Hzを500ms周期で30ms間だけ減算する。この位相角制御は位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)が“100”の減算高速領域で行われる。
パルスTW3は、パルス幅が450μs以上で(500−0.08)μs以下であり、僅かに回転速度を早くさせるために、同期指令回転周波数に約0.1Hzを500ms周期で30ms間だけ減算する。この位相角制御は位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)が“010”の減算低速領域で行われる。
パルスTW4は、パルス幅が(500+0.08)μs以上で550μs以下であり、僅かに回転速度を早くさせるために、同期指令回転周波数に約0.1Hzを500ms周期で30ms間だけ加算する。この位相角制御は位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)が“001”の加算低速領域で行われる。
パルスTW5は、パルス幅が550μs以上であり、僅かに回転速度を遅くさせるために、同期指令回転周波数に約1.0Hzを500ms周期で30ms間だけ加算する。この位相角制御は位相角状態レジスタ(PhaseAngleState)が“011”の加算高速領域で行われる。
位相角制御におけるモータ制御部による周波数インチング制御について説明する。位相角パルス(TW)は、基準タイミング信号(T0パルス)でセットしロータパルス(RP)でリセットされるパルス幅であるから、基準タイミング信号(T0パルス)周期毎にその変化量は確定する。この変化量に対しロータパルス(RP)をクロックとして8回又は16回の移動平均を行い40ms以内の積分時定数を持たせる。このようにすれば、検出精度のエラーや外来ノイズの影響を最小限に抑えることができる。
誘導モータ12の負荷であるロータは真空中に収められており、誘導モータ12とロータ11の駆動伝達機構は磁気軸受を採用しているので負荷はかなり小さいと考えられ、その時定数もまた小さいと考えられる。
周波数指令の与え方は、現在値にΔfを加減算しその結果を比較してまた加減算するという累積方式ではオーバーシュート、アンダーシュートを繰り返してしまうところがある。これを避けるため、ある瞬間だけ速度を上げてまたすぐに元に戻すといういわゆるインチング動作のような制御方式を採用する。
このような方式にすれば、例えばTWが0.1μs目標位相角よりプラス側にオーバーしても、それを検出して即座に元に戻す指令を出し、その結果、今度は0.1μsマイナス側に振れ、それをまたプラス側へと順次続けていけば半値幅0.3μsが実現できる。
但し、この方式だけでは、加減算の基準である同期指令回転周波数が時間経過と共に変化することから長時間安定に精度内に動作させることは難しく、この分の補正が必要である。同期指令回転周波数の補正については、後に述べる。
モータ制御部5によるインチング制御方法について、タイミングチャートを用いて具体的に説明する。図11において、位相角パルス(TW)は、基準タイミング信号(T0パルス)の立下がりで1にセットされロータパルス(RP)の立下りで0にリセットされる。このTWパルス幅を基本クロックCLK100Mでカウントし、その大きさから高速領域か低速領域かを判定し、レジスタ(PhaseAngleState)が“011”で加算高速回転領域であるとき、レジスタ(PhaseUPLarge)を1にセットし、パルス(PhaseUPLarge)を立上げる。TWの領域変化に即座に対応させるためPhase UP Largeの立上がりを検出し、パルス(PhaseUPLargeRise)を作り、その立下がりでレジスタ(PUPLTonR1)を1にセットしパルス(PUPLTon)を立上げる。レジスタ(PUPLTonR1)は予め指定される時間(PhaseTonSet)後に0にリセットされる。
このパルス(PUPLTon)の立ち上がりに同期したパルス(PUPLTonRise)の立下りのタイミングにて、レジスタ(Freg0)の現在の指令周波数に微小周波数(delta_stepMupL)を加算する(Freg0<=Freg0+delta_stepMupL)。そして、パルス(PUPLTon)の立下がりに同期したパルス(PUPLTonFall)の立下りのタイミングで加算した分を減算しレジスタ(Freg0)の値を現在の指令周波数Freg0に戻す(Freg0<=Freg0-delta_stepMupL)。
ところが、加速高速回転領域が継続し、パルス(PhaseUPLarge)が1の状態がそのまま続く場合は、PhasePeriodで指定された時間を後にパルス(PUPLTon)が1になり、以後、パルス(PhaseUPLarge)が0になるまで繰り返される。
以上が位相角が目標位相角から大きくずれているときの、大きめのインチング動作である。
図12においては、位相角パルス(TW)の幅が加算低速回転領域“001”の場合、レジスタ(PhaseUPSmall)を1にセットし、パルス(PhaseUPSmall)を立上げる。パルス(PhaseUPSmall)が1になると、上記と同様、パルス(PUPSTon)の立上がり同期したパルス(PUPLTonRise)の立下りのタイミングにて、レジスタ(Freg0)の現在の指令周波数Freg0に微小周波数(delta_stepMupS)を(Freg0<=Freg0+delta_stepMupS)加算する。そして、パルス(PUPLTon)の立下がりに同期したパルス(PUPLTonFall)の立下りのタイミングで加算した分を減算しレジスタ(Freg0)の値を現在の指令周波数Freg0に戻す(Freg0<=Freg0-delta_stepMupS)。これにより、実回転周波数は僅かずつ上昇していく。
さらにそのままパルス(PhaseUPSmall)が1の状態が続けば、PhasePeriodで指定された時間後にパルス(PUPSTon)が1になり、以後、パルス(PhaseUPSmall)が0になるまで繰り返される。
このように、現在の基準周波数に僅かなdelta_stepMupSを加算し、立下りで加算分を減算する方法で誘導モータ12に対し微小インチング動作を行い目的の位相角に近づける。TWの幅が目標位相角より小さい場合は、上記制御の逆となり基準周波数に対し減算してインチング制御を行う。
以上のように、加算高速回転領域“011”ではパルス(PUPLTon)、加算低速回転領域“001”ではパルス(PUPSTon)をそれぞれ立ち上げ、インチング動作に入る。同様に、減算低速回転領域“010”ではパルス(PDNSTon)、減算高速回転領域“100”ではパルス(PDNLTon)をそれぞれ立ち上げ、逆インチング動作に入る。また、位相角同期精度領域“111”では、インチング動作は行わない。この動作の連続により位相角の精度を要求される半値幅(600Hz時0.3μs)以内に制御することが可能である。
モータ制御部5による位相角制御におけるヒストグラム解析フィードバック制御について説明する。位相角制御中においても、同期指令回転周波数は時間経過と共に変動する。このことが、位相角の目標角に対する偏差量を変動させる要因である。この場合は、位相角パルス(TW)の10,000ポイントにおいて許容精度外のサンプル数を積分すれば、位相角制御中においても位相角のずれを判別できる。
同期指令回転周波数の補正周期は、サンプル数10,000ポイントの場合、1ポイントが基準タイミング信号(T0パルス)のパルス周期が40msかかることから400秒となる。従って、この周期でサンプリング数のプラス側偏差またはマイナス側偏差をそれぞれ積分し、周波数補正量に換算して同期指令周波数にフィードバックすれば位相角パルス(TW)を位相角精度内に抑えることができる。
上記の構成で、フェルミチョッパー1には、中性子ビームが一定の時間周期(25Hzの繰り返し)で入射する。この時間周期を測定してフェルミチョッパー1を同期させるため、モータ制御部5には、25MHzのシステム基準クロック51の信号が同期信号として入力されている。
モータ制御部5は、入力装置7に指定されるロータ12の回転数及び位相角を目標値に25MHzの基準タイミング信号と回転センサ14で検出されるロータ12の回転位置とに基づき、誘導モータ12の位相を制御する位相制御を行う。このとき更に精度を高めるためにマスタークロック信号25MHzを10分の1の2.5MHzに置き換えて周波数の設定、回転制御や位相角制御の精度を高めた。
このとき、目標回転周波数までは、S加速方式で発振周波数を可変させながら3個のDDS0〜DDS2から三相正弦波信号を出力して回転制御を行い、そして、目標回転周波数に到達すると位相角制御を行う。そして、位相角制御には周波数インチング制御を用いて補正を行う。また、電源投入後の位相角制御が安定しないようなケースでも、位相角制御を行いつつ中性子ビームの発生周期毎で位相角のヒストグラムを求め、センター値からのプラス側マイナス側毎の偏差の総和を求めて、その量から同期指定回転周波数を補正する。
こうした駆動制御を行うことにより、図8に示すように、スリット10と一体に回転するロータ11をパルス中性子源で発生する中性子ビーム50の発生に同期して回転させることができる。これにより、スリット10の中性子透過部であるアルミニウムスペーサ10bが中性子ビーム50と平行になったときにのみ、中性子を、アルミニウムスペーサ10bを透過させて単色化を行うことができる。つまり、希望するエネルギーの単色中性子ビームを生成できる。
以上のように構成された一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
・ロータ11の回転速度の高速度化および回転速度精度の高精度化を実現できる。つまり、ロータ11を高速回転で、かつ回転速度変化(ばらつき)の小さい高精度で回転させることができる。
・加速器などの外部の上位装置と同期してロータ11を回転させることができる。これにより、加速器施設の中性子発生源で発生するパルス状の中性子ビーム50の発生時刻とフェルミチョッパー本体2のスリット10での中性子透過時刻を同期させることができ、その発生源から出射されるパルス状の中性子ビームから、希望する正しいエネルギーの中性子パルスを得ることができる。
・ロータ11の回転周波数制御精度は600Hzにおいて±0.01Hz以下であり、且つロータ11のスリット10に対する位相角制御は0.3μs以下の高精度回転が得られる。
・DDS0・DDS1・DDS2による三相信号発生部4からの信号を電力増幅する構成とすることで、インバータを用いる場合と比べて電流スパイクノイズが低減されて超精密制御に有効となる。
・大強度陽子加速器施設(J−PARC)に設置された高分解能チョッパー分光器(HRC)で、フェルミチョッパーで選択した中性子エネルギー(Ei)が2eVまでの領域でΔE/Ei=1%のエネルギー分解能を実現するために要求されるスリット10の最小開口時間Δt=0.7μsを実現できる。
本発明は、中性子源で発生するパルス状の中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー及び、ロータを真空中で磁気浮上させた状態で回転させる回転制御装置に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
加速器やパルス中性子源に設置される機器のうち、加速器周期や中性子発生周期に同期して制御される機器において、本発明を適用することにより、従来よりも高精度で同期制御することが可能になるものであり、産業上の利用可能性を有する。
1:フェルミチョッパー
2:フェルミチョッパー本体
3:磁気浮上制御回路
4:三相信号発生部
5:モータ制御部
6:三相電力増幅器
10:スリット
10a:中性子遮蔽材(中性子遮蔽部)
10b:アルミニウムスペーサ(中性子透過部)
11:ロータ
12:誘導モータ

Claims (5)

  1. 中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリットと一体に回転するロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させ、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー回転制御装置において、
    前記ロータの回転数及び位相角を指定するための入力装置と、
    ディジタルによる位相信号から前記誘導モータの各相のコイルに供給するための三相正弦波信号を生成する三相信号発生部と、
    前記三相正弦波信号を増幅して前記誘導モータに出力する三相電力増幅器と、
    前記ロータの回転を検出して回転信号を発生する回転センサと、
    前記三相信号発生部を制御して前記誘導モータを駆動制御するモータ制御部と、を備え、
    前記モータ制御部は、
    前記入力装置に指定される回転数及び位相角に基づき前記三相信号発生部に前記位相信号を出力して、前記誘導モータの回転速度を制御する速度制御と、
    外部から入力される基準タイミング信号と前記回転センサで検出される前記ロータの回転位置とに基づき、前記誘導モータの位相を制御する位相制御であって、前記ロータの位相角と目標位相角との偏差を算出し、該偏差を最小にするよう前記三相信号発生部に対し同期指令回転周波数に調整用の微小な周波数データを出力して加減算を行わせて位相角制御と、
    を行うことを特徴とするフェルミチョッパー回転制御装置。
  2. 中性子透過部と中性子遮蔽部が交互に積層されたスリットと一体に回転するロータを真空中で磁気浮上させて誘導モータにより回転させ、パルス中性子源で発生する中性子ビームを単色化するフェルミチョッパー回転制御装置において、
    前記ロータの回転数及び位相角を指定するための入力装置と、
    ディジタルによる位相信号から前記誘導モータの各相のコイルに供給するための三相正弦波信号を生成する三相信号発生部と、
    前記三相正弦波信号を増幅して前記誘導モータに出力する三相電力増幅器と、
    前記ロータの回転を検出して回転信号を発生する回転センサと、
    前記三相信号発生部を制御して前記誘導モータを駆動制御するモータ制御部と、を備え、
    前記モータ制御部は、
    前記入力装置に指定される回転数及び位相角に基づき前記三相信号発生部に前記位相信号を出力して、前記誘導モータの回転速度を制御し、
    外部から入力される基準タイミング信号と前記回転センサで検出される前記ロータの回転位置とに基づき、前記誘導モータの位相を制御し、
    前記位相制御を行いながら中性子ビームの発生周期毎で位相角のヒストグラムを求め、センター値からのプラス側マイナス側毎の偏差の総和から同期指定回転周波数を補正する、
    ことを特徴とするフェルミチョッパー回転制御装置。
  3. 前記三相信号発生部は、ディジタル直接合成発振器を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフェルミチョッパー回転制御装置。
  4. 前記モータ制御部は、回転制御する場合に、実回転周波数の値からスリップ量や加速量を制御してS字加速で目標回転周波数を実現することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載フェルミチョッパー回転制御装置。
  5. 前記モータ制御部は、前記ロータの実回転周波数が目標回転周波数に到達したとき、位相角制御を前記中性子源で発生する中性子が前記スリットに到達するまでの時間に依存した一定の角度にて前記ロータの位相角制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のフェルミチョッパー回転制御装置。
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