本発明の基板の接着方法は、第1の基板の表面に蒸着重合により有機物からなる第1の下地層を形成する第1の下地層形成工程と、第2の基板の表面に蒸着重合により有機物からなる第2の下地層を形成する第2の下地槽形成工程と、第1の基板表面に形成された第1の下地層上に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に形成された第2の下地層上に第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程と、第1の基板と第2の基板とを単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し、第1の単量体を蒸着させた面と第2の単量体を蒸着させた面とを接触させると共に、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成することにより、第1の基板と第2の基板とを接着する重合体形成工程とを有するものである。
具体的には、まず、第1の基板の表面に蒸着重合により有機物からなる第1の下地層を形成し、第2の基板の表面に蒸着重合により有機物からなる第2の下地層を形成する。
第1の基板と第2の基板は、有機物からなる第1の下地層や第2の下地層を蒸着重合により形成することができる基板であれば制限されないが、例えば、Siウエハー、SiCウエハー、サファイア基板、GaN基板、Ge基板、SOI基板、GOI基板、ガラス基板や、これらをチップ状に切断したもの、さらに、これらの上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜を設けたデバイス等が挙げられる。従来技術のように、積層したい基板、すなわち、第1の基板及び第2の基板の一方に、接着剤をスピンコート法等で塗布し加熱等して硬化させる方法では、面積の大きい基板(例えば直径200mm以上のウエハー)を第1の基板や第2の基板とすると硬化時のそりが例えば数mm程度と大きくなってしまう。しかし、本発明の基板の接着方法においては、後述する試験例等に示すように、そりを抑制することができるため、大面積の基板を用いても、そり量の少ない基板積層体を製造することができる。勿論、チップなど面積の小さいものを第1の基板や第2の基板としても、接着する際のそり量を小さくすることができる。
第1の下地層や第2の下地層を構成する有機物は、蒸着重合で形成されるものであればよく、例えば、ポリ尿素、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。そして、各下地層は弾性力があるものであることが好ましい。パーティクル等により基板上に形成された凹凸を埋めることができ、且つ、接着時の応力を緩和することができるからである。また、各下地層は、重合体形成工程で第1の単量体と第2の単量体とを反応させて形成する重合体と同じ材質でも異なる材質でもよい。また、第1の下地層や第2の下地層は、複数の層で構成されていてもよい。
また、第1の下地層や第2の下地層の厚さは、第1の基板や第2の基板上に形成されたパーティクルや凹凸等を覆うことができればよいが、例えば、1〜5μmとすればよい。第1の下地層や第2の下地層の膜厚を5μmより大きくすると、各下地層を形成する際に発生する応力により第1の基板や第2の基板がそってしまう場合がある。しかしながら、第1の基板と第2の基板とを同一のもの(例えば材質、厚さ、形状が同一のもの)とし、且つ、第1の下地層と第2の下地層とを同一のもの(例えば材質、厚さ、形状が同一のもの)とすると、下地膜の形成時に基板がそったとしても、後述する重合体形成工程で真空張り合わせ装置等に載置すると面対称になり、この状態で押圧することにより、下地層の形成時に発生した基板のそりは接着後にはほぼ解消できる。
蒸着重合により有機物からなる第1の下地層や第2の下地層を、それぞれ第1の基板や第2の基板に蒸着重合する方法は特に限定されず、原料を加熱し気化して基板に蒸着させる通常の蒸着法を用いればよい。このような下地層の原料としては、例えば室温(25℃)で液体である物質や、室温では固体だが第1の基板や第2の基板、及び、第1の基板や第2の基板上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜が設けられている場合はこれら第1の基板や第2の基板上に設けられた膜の耐熱温度未満に加熱されることにより融解又は昇華する物質が挙げられる。なお、加熱温度は各原料の分解温度未満の温度とする。第1の下地層や第2の下地層としてポリイミドを形成する場合は、芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物を同時または交互に第1の基板や第2の基板に蒸着させて、互いに反応させればよい。
芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェン、3,3’−ジアミノベンゾフェン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−3,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボシキ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、二無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられる。
また、第1の下地層や第2の下地層としてポリアミドを形成する場合は、例えばジアミンとジカルボン酸を同時または交互に第1の基板や第2の基板に蒸着させて、互いに反応させればよい。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジカルボン酸としては、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイド、無水トリメリット酸ブロマイド、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。蒸気圧と反応性を考慮すると、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイドや、無水トリメリット酸ブロマイドが好ましい。
第1の下地層や第2の下地層としてポリ尿素を形成する場合は、例えばジアミンとジイソシアネートを同時または交互に、第1の基板や第2の基板に蒸着させて、互いに反応させればよい。ジアミンとしては、耐熱性を考慮すると芳香族ジアミンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、トリレン2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート等の芳香族系有機ジイソシアネート化合物や、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルメタン等の芳香脂肪族系有機ジイソシアネート化合物が挙げられる。
ここで、Siウエハー、SiCウエハー等の表面には、通常直径0.2μm程度のパーティクルや0.1μm程度の微細な凹凸が形成されており、完全な平面ではない。このようなパーティクル等が形成されたSiウエハー、SiCウエハー等を第1の基板や第2の基板として用いると、第1の基板と第2の基板とを接着する層、すなわち、第1の単量体と第2の単量体とで形成する重合体からなる層が、パーティクル等が形成された領域付近で薄くなり、接着力が不十分になる場合がある。しかしながら、本発明においては、第1の基板の表面及び第2の基板の表面にそれぞれ下地層を設けるため、このパーティクル等により生じる問題が生じない。したがって、パーティクル等が形成されたSiウエハー、SiCウエハー等を第1の基板や第2の基板として用いても、確実に強固に接着することができる。
なお、第1の下地層や第2の下地層は、それぞれ第1の基板や第2の基板表面に蒸着重合で形成されているため、第1の下地層と第1の基板との密着性や、第2の下地層と第2の基板との密着性は、良好である。
次に、第1の基板の表面に形成された第1の下地層上に第1の単量体を蒸着させる第1の単量体蒸着工程と、第2の基板の表面に形成された第2の下地層上に第1の単量体と反応して重合体を形成する第2の単量体を蒸着させる第2の単量体蒸着工程を行う。
第1の基板に形成された第1の下地層上に蒸着させる第1の単量体及び第2の基板に形成された第2の下地層上に蒸着させる第2の単量体は、それぞれ第1の下地層や第2の下地層に蒸着できるものである必要がある。このような蒸着できる第1の単量体や第2の単量体としては、例えば室温(25℃)で液体の単量体や、室温では固体だが、第1の基板や第2の基板、第1の基板や第2の基板上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜が設けられている場合はこれら第1の基板や第2の基板上に設けられた膜、及び、第1の下地層や第2の下地層の耐熱温度未満に加熱されることにより融解又は昇華する単量体が挙げられる。
また、第1の単量体と第2の単量体とが反応して重合体を形成するものである必要がある。この重合体により、第1の基板と第2の基板とが接着される。なお、第1の単量体や第2の単量体は、第1の下地層や第2の下地層の表面に蒸着しているため、第1の下地層表面に第1の単量体を蒸着して形成した蒸着膜(以下「第1の単量体蒸着膜」ともいう)と第1の下地層(ひいては第1の基板)との密着性や、第2の下地層の表面に第2の単量体を蒸着して形成した蒸着膜(以下「第2の単量体蒸着膜」ともいう)と第2の下地層(ひいては第2の基板)との密着性は、良好である。
第1の単量体と第2の単量体とが反応して形成される重合体としては、例えば、ポリ尿素、ポリアミドや、ポリイミドが挙げられる。ポリイミドを形成する場合は、第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方を芳香族ジアミンとし、もう一方をテトラカルボン酸二無水物とすればよい。芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とは反応性が高く、各蒸着膜を接触させただけで反応が開始するため、好ましい。例えば芳香族ジアミンとテトラカルボン酸二無水物は接触しただけで70%程度反応してポリイミドの前駆体であるポリアミド酸になり、このポリアミド酸を加熱することでポリイミドを容易に形成することができる。なお、ポリアミド酸の状態で第1の下地層及び第2の下地層を介して第1の基板と第2の基板とを接着することができれば、イミド化させなくてもよい。
このような芳香族ジアミンとしては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェン、3,3’−ジアミノベンゾフェン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−3,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボシキ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
また、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、二無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m(p)−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物等が挙げられる。
また、重合体としてポリアミドを形成する場合は、例えば第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方をジアミンとし、もう一方をジカルボン酸とすればよい。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジカルボン酸としては、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイド、無水トリメリット酸ブロマイド、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。蒸気圧と反応性を考慮すると、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、無水トリメリット酸クロリド、テレフタロイルブロマイド、イソフタロイルブロマイドや、無水トリメリット酸ブロマイドが好ましい。
重合体としてポリ尿素を形成する場合は、例えば第1の単量体及び第2の単量体のいずれか一方をジアミンとし、もう一方をジイソシアネートとすればよい。ジアミンとしては、耐熱性を考慮すると芳香族ジアミンが好ましく、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、トリレン2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート等の芳香族系有機ジイソシアネート化合物や、m−又はp−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ビス(イソシアナトメチル)ジフェニルメタン等の芳香脂肪族系有機ジイソシアネート化合物が挙げられる。
そして、第1の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであり、第2の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであることが好ましい。すなわち、第1の単量体や第2の単量体がそれぞれ1種類の単量体で構成されている場合は、各単量体がホモポリマーを形成しないものであることが好ましく、第1の単量体や第2の単量体がそれぞれ複数種の単量体で構成されている場合は、第1の単量体や第2の単量体を構成する複数種の単量体が互いに反応してホモポリマーやコポリマーを形成しないことが好ましい。本発明は、第1の単量体と第2の単量体が反応して重合体を形成することにより、第1の基板と第2の基板とを接着するものであるが、第1の単量体が互いに反応したり第2の単量体が互いに反応してしまうと第1の単量体と第2の単量体の反応が生じ難くなってしまうためである。また、第1の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであり、第2の単量体が互いに反応して重合体を形成しないものであると、第1の単量体や第2の単量体を蒸着させた後すぐに次の重合体形成工程を行う必要が無いため、好ましい。
また、第1の単量体及び第2の単量体は、第1の基板及び第2の基板や、この第1の基板や第2の基板上に絶縁膜等の無機物膜や有機物膜、配線等の膜が設けられている場合はこれら第1の基板や第2の基板上に設けられた膜、及び、第1の下地層や第2の下地層の耐熱温度以下(例えば250℃以下)の温度で反応して重合体を形成するものであることが好ましい。また、第1の単量体及び第2の単量体は、この第1の基板及び第2の基板や、第1の基板や第2の基板上に設けられた膜、及び、第1の下地層や第2の下地層の耐熱温度まで接着力を維持できることが好ましい。
このような第1の単量体や第2の単量体は、1種ずつ用いてもよく、また、複数種用いてもよい。例えば、重合体としてポリイミドを形成する場合、第1の単量体として複数種の芳香族ジアミンを用い、第2の単量体として複数種の芳香族ジアミンのそれぞれと反応する複数種のテトラカルボン酸二無水物を用いてもよい。また、形成する重合体が、異なる種類のものとなるようにしてもよい。
第1の単量体や第2の単量体を、それぞれ第1の基板表面に形成された第1の下地層上や第2の基板表面に形成された第2の下地層上に蒸着する方法は特に限定されず、原料(本発明においては第1の単量体や第2の単量体)を加熱し気化して基板(本発明においては下地層)に蒸着させる通常の蒸着法を用いればよい。なお、加熱温度はそれぞれ第1の単量体や第2の単量体の分解温度未満の温度とする。
第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜の膜厚は特に限定されないが、例えば500nm以下とすることが好ましい。蒸着膜が厚すぎると、重合体形成工程において、基板に近い領域の第1の単量体や第2の単量体が反応できず接着力が弱くなり、また、膜厚が薄いほうが第1の単量体と第2の単量体を反応させた時に生じる応力による基板のそりがより低減されるためである。ただし、各蒸着膜が薄すぎると接着力が弱くなるためある程度の厚さ、例えば200nm以上とすることが好ましい。なお、このような蒸着膜の好適な膜厚は、用いる単量体の性質や求められる接着力等に依存するものであるため、用いる単量体の性質や求められる接着力等に応じて蒸着膜の膜厚を適宜調製すればよい。
そして、第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜に、添加剤を混入させてもよい。添加剤としては、カルボン酸無水物等の脱水剤や、密着性向上のためのシランカップリング剤等が挙げられる。例えば脱水剤を添加することにより、第1の単量体と第2の単量体との反応により生成するH2Oを脱水剤で吸水することができる。添加剤を混入させる方法に特に制限はなく、例えば、添加剤を第1の下地層や第2の下地層の単量体が蒸着される側の面に蒸着させてもよい。具体例としては、第1の単量体や第2の単量体を第1の下地層や第2の下地層表面に蒸着する前、後または蒸着と同時に、添加剤を蒸着する方法が挙げられる。
次に、重合体形成工程を行う。重合体形成工程においては、第1の基板と第2の基板とを単量体を蒸着させた側の面が対向するように載置し第1の単量体を蒸着させた面と第2の単量体を蒸着させた面とを接触させる、すなわち、第1の基板に形成された第1の下地層上の第1の単量体蒸着膜と、第2の基板に形成された第2の下地層上の第2の単量体蒸着膜とを接触させる。
これにより、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成する。例えば、第1の基板や第2の基板を加熱することにより、第1の単量体蒸着膜や第2の単量体蒸着膜を、第1の単量体と第2の単量体とが反応して重合体を形成する温度に加熱する。この加熱の温度は、第1の単量体や第2の単量体の分解温度未満であることが好ましい。勿論、第1の単量体蒸着膜と第2の単量体蒸着膜とが接触することのみで反応して重合する場合は、加熱しなくてもよい。また、第1の単量体と第2の単量体とを反応させる際に、触媒を用いてもよい。
このように、第1の単量体蒸着工程と、第2の単量体蒸着工程と、重合体形成工程とを行うことにより、複数の基板、すなわち第1の基板及び第2の基板を接着する際のそりを抑制することができる。したがって、そり量が小さい基板積層体を製造することができる。よって、微細なデバイスを積層した基板積層体を製造することができ、本発明は、TSV技術に適している。
ここで、従来技術のように、第1の基板及び第2の基板の一方に接着剤をスピンコート法等で塗布する方法では、形成される接着剤膜の膜厚は、蒸着膜と比べて厚い膜(例えば10〜20μm程度)となる。したがって、接着剤が加熱等されて硬化する時に発生する応力の絶対値が大きくなるため、基板のそりが大きくなってしまう。また、スピンコート法等の塗布法では、膜厚の制御性が蒸着膜と比べて悪く、膜厚がばらついて不均一になる。そして、硬化時に発生する応力の大きさは膜厚に依存するため、硬化時に発生する応力が不均一になって、基板にそりが発生しやすくなる。
本発明においては、蒸着法で単量体を成膜しているため、薄膜(例えば1000nm以下。好ましくは500nm以下。)とすることができる。したがって、第1の単量体及び第2の単量体が反応する時、すなわち、硬化時に発生する応力を小さくすることができるため、基板のそりを小さくすることができる。また、蒸着法なので膜厚の制御性が良好であり、スピンコート法等の塗布法と比較して均一な膜厚にすることができ、単量体の反応時に発生する応力を均一にできるため、基板のそりを発生し難くすることができる。
なお、一方の基板の下地層上に第1の単量体及び第2の単量体を用いて蒸着重合して重合体を形成し、その後もう一方の下地層が形成された基板を密着させた場合は、基板を密着させる段階ではすでに重合体が形成され硬化しているため、第1の基板を第2の基板とを接着することはできない。
このような基板の接着を行う方法について、図1及び図2を用いて、さらに具体的に例示する。図1は、基板に下地層及び単量体を蒸着する真空蒸着装置を模式的に示す図であり、図2は、下地層及び単量体を蒸着した基板同士を接着する真空張り合わせ装置を模式的に示す図である。
図1に示すように、真空蒸着装置10は、真空槽11の内部天井側には、下地層及び蒸着膜を形成する基板Sを保持する基板保持部材12が設けられている。この基板保持部材12は、下地層や蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向く状態で基板Sを保持するように構成されている。そして、真空槽11内の底面側には、第1の単量体13aが収容されるタングステンボート14aが配置されており、タングステンボート14aの上には、水平方向に開閉可能なシャッター15aが設けられており、このシャッター15aの開閉により、第1の単量体13aの基板や下地層への蒸着が制御される。また、真空槽11内の底面側のタングステンボート14aとは離れた領域には、第2の単量体13bが収容されるタングステンボート14bが配置されており、タングステンボート14bの上には、水平方向に開閉可能なシャッター15bが設けられており、このシャッター15bの開閉により、第2の単量体13bの基板や下地層への蒸着が制御される。
そして、図2に示すように、真空張り合わせ装置20は、真空槽21の内部天井側には、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを保持する上部基板保持機構23が設けられている。この上部基板保持機構23は、上部基板保持板24と、上部基板保持板24に接続された上部基板保持ピック25を有し、上部基板保持ピック25で第1の基板Saを引っ掛けることにより、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを保持するように構成されている。そして、真空槽21内の底面側の上部基板保持機構23に対向する領域には、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを保持する石英等からなる下部基板支持台26が設けられている。下部基板支持台26の下方には、加熱手段として複数のランプヒーター27が設けられている。また、真空槽21内には、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面とは反対側から第1の基板Saを押圧して第1の単量体蒸着膜22aと第2の単量体蒸着膜22bとを密着させる押圧機構30が設けられている。この押圧機構30は、荷重を伝達する荷重伝達棒31と、荷重伝達棒31にかけられた荷重を第1の基板Sa全体にかける押し付け板32と、押し付け板32の第1の基板Sa側の面に設けられたポリイミドフィルム等の緩衝材33とを有し、この緩衝材33が、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面とは反対側の第1の基板Sa表面に接触して第1の基板Saを押圧できるように構成されている。
そして、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20とは、図示しない真空搬送室を介して真空の状態で基板Sが搬送できるように連結されている。なお、一度大気中に出して搬送することも可能である。
このような真空蒸着装置10及び真空張り合わせ装置20を用いて、基板の接着を行うには、まず、真空蒸着装置10で、第1の基板Saの表面に第1の下地層35aを設けた後、この第1の下地層35a上に第1の単量体13aを蒸着し、第2の基板Sbの表面に第2の下地層35bを設けた後、この第2の下地層35b上に第2の単量体13bを蒸着する。
具体的には、タングステンボート14aに第1の単量体13aを充填し、タングステンボート14bに第2の単量体13bを充填する。次いで、基板Sとして第1の基板Saを真空槽11内に搬送し、下地層及び蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12で保持する。そして、シャッター15a及びシャッター15bを開けた状態で、真空槽11に接続された真空ポンプ等により真空槽11内を排気して所定の真空状態とした後、タングステンボート14a及び14bに電流を流してタングステンボート14a内の第1の単量体13a及びタングステンボート14b内の第2の単量体13bを加熱して気化させて、第1の基板Sa表面で第1の単量体13a及び第2の単量体13bを反応させることにより、第1の基板Sa表面に蒸着重合膜からなる第1の下地層35aを形成する。次に、シャッター15bを閉じて第2の単量体13bを第1の基板Sa表面に形成された第1の下地層35a上に蒸着しないようにすることで、第1の単量体13aのみを、第1の基板Sa表面に形成された下地層35a上に蒸着し、第1の単量体蒸着膜22aを形成する。その後、タングステンボート14a及び14bへの電流の供給を停止して第1の単量体13aの第1の下地層35aへの蒸着を停止した後、真空槽11内は上記真空状態を維持したまま、基板側から順に第1の下地層35a及び第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saを真空槽11内から搬出する。
次に、基板Sとして第2の基板Sbを真空槽11内に搬送し、下地層及び蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持し、シャッター15a及びシャッター15bを開ける。そして、タングステンボート14a及び14bに電流を流してタングステンボート14a内の第1の単量体13a及びタングステンボート14b内の第2の単量体13bを加熱して気化させて、第2の基板Sb表面で第1の単量体13a及び第2の単量体13bを反応させることにより、第2の基板Sb表面に蒸着重合膜からなる第2の下地層35bを形成する。次に、シャッター15aを閉じて第1の単量体13aを第2の基板Sb表面に形成された第2の下地層35b上に蒸着しないようにすることで、第2の単量体13bのみを、第2の基板Sb表面に形成された下地層35b上に蒸着し、第2の単量体蒸着膜22bを形成する。その後、タングステンボート14a及び14bへの電流の供給を停止して第2の単量体13bの第2の下地層35bへの蒸着を停止した後、真空槽11内は上記真空状態を維持したまま、基板側から順に第2の下地層35b及び第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbを真空槽11内から搬出する。なお、上記では下地層と蒸着膜を形成する装置を同一の装置としたが、異なる装置を用いてもよい。また、上記では下地層を、第1の単量体及び第2の単量体を反応させた重合体からなるものとしたが、その他の材質の下地層としてもよい。
ここで、第1の下地層35aや第2の下地層35bとして、形成時にH2Oが発生するもの(例えばポリイミド等)を形成する場合、この発生するH2Oが接着力に悪影響を与える場合があるため、第1の下地層35aや第2の下地層35bを形成した後であって、第1の単量体蒸着膜22aや第2の単量体蒸着膜22bを形成する前に、例えば200〜250℃で0.5〜2時間大気中で加熱する工程を行うことが好ましい。この工程を行うことにより、第1の下地層35aや第2の下地層35b中のH2Oを脱離させることができるため、接着力を向上させることができる。
次に、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の下地層35a及び第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saと、第2の下地層35b及び第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbとを、真空張り合わせ装置20で接着する。具体的には、まず、真空張り合わせ装置20の真空槽21内に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを搬送し、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを上部基板保持機構23で保持すると共に、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを下部基板支持台26に載置する。次いで、真空ポンプ等により排気して所定の真空状態とし、ランプヒーター27で第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱することにより第1の単量体蒸着膜22aと第2の単量体蒸着膜22bを加熱すると共に、荷重伝達棒31に荷重をかけて第1の基板Sa表面の第1の下地層35a上に形成された第1の単量体蒸着膜22aと第2の基板Sb表面の第2の下地層35b上に形成された第2の単量体蒸着膜22bとを密着させることにより、第1の単量体と第2の単量体とを反応させて重合体を形成する。これにより、形成された重合体、第1の下地層35a及び第2の下地層35bを介して第1の基板Saと第2の基板Sbとが接着される。
なお、上述した例では、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20を用い、真空蒸着装置10と真空張り合わせ装置20とは真空搬送室を介して真空の状態で基板Sが搬送できるように連結するものを例示したが、場合によっては、大気中で行うようにしてもよい。
以下に、本発明を試験例に基づいて説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(試験例1)
図1に示す真空蒸着装置10を用いて、第1の基板Saの表面に第1の下地層35aを設けた後、この第1の下地層35a上に第1の単量体13aを蒸着し、また、第2の基板Sbの表面に第2の下地層35bを設けた後、この第2の下地層35b上に第2の単量体13bを蒸着した。第1の基板Sa及び第2の基板Sbは、それぞれφ300mm(直径300mm)のシリコンウエハーとした。また、第1の単量体13aとして二無水ピロメリット酸(pyromellitic dianhydride)を用い、第2の単量体13bとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いた。そして、第1の下地層35a及び第2の下地層35bは、第1の単量体13aと第2の単量体13bを蒸着重合させて形成した。
具体的には、まず、タングステンボート14aに二無水ピロメリット酸(第1の単量体13a)を充填し、タングステンボート14bに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(第2の単量体13b)を充填した。そして、第1の基板Saを真空槽11内に搬送し、下地層及び蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持した。そして、シャッター15a及びシャッター15bを開け、1×10−4Paまで真空槽11を排気し、タングステンボート14a及び14bに電流を流してタングステンボート14a内の二無水ピロメリット酸及びタングステンボート14b内の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50℃に加熱して気化させて、第1の基板Sa表面で二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを等モルで反応させることにより、ポリイミドからなる膜厚2μmの蒸着重合膜(第1の下地層35a)を形成した。次に、シャッター15bを閉じて4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを第1の基板Sa表面に形成された第1の下地層35a上に蒸着しないようにすることで、第1の基板Sa表面に形成された下地層35a上に二無水ピロメリット酸のみを蒸着して、第1の単量体蒸着膜22aを形成した。その後、タングステンボート14a及び14bへの電流の供給を停止して二無水ピロメリット酸の第1の下地層35aへの蒸着を停止した後、真空槽11内は1×10−4Paに維持したまま、基板側から順に第1の下地層35a及び第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saを真空槽11内から搬出した。
次に、第2の基板Sbを真空槽11内に搬送し、下地層及び蒸着膜を形成する面が鉛直方向下側を向くように基板保持部材12に保持した。そして、シャッター15a及びシャッター15bを開けた状態で、タングステンボート14a及び14bに電流を流してタングステンボート14a内の二無水ピロメリット酸及びタングステンボート14b内の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50℃に加熱して気化させて、第2の基板Sb表面で二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを等モルで反応させることにより、第1の下地層35aと同様のポリイミドからなる膜厚2μmの蒸着重合膜(第2の下地層35b)を形成した。次に、シャッター15aを閉じて二無水ピロメリット酸を第2の基板Sb表面に形成された第2の下地層35b上に蒸着しないようにすることで、第2の基板Sb表面に4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを蒸着して第2の単量体蒸着膜22bを形成した。その後、タングステンボート14a及び14bへの電流の供給を停止して4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの第2の下地層35bへの蒸着を停止した後、基板側から順に第2の下地層35b及び第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbを真空槽11内から搬出した。なお、第1の単量体蒸着膜22aの膜厚及び第2の単量体蒸着膜22bの膜厚は、同一になるようにした。
次に、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の下地層35a及び第1の単量体蒸着膜22aが形成された第1の基板Saと第2の下地層35b及び第2の単量体蒸着膜22bが形成された第2の基板Sbとを、真空張り合わせ装置20で接着した。具体的には、まず、真空蒸着装置10の真空槽11から搬出された第1の基板Sa及び第2の基板Sbを、窒素雰囲気中で排気しながら真空張り合わせ装置20の真空槽21内に搬送して、第1の単量体蒸着膜22aが形成された面が鉛直方向下側を向く状態で第1の基板Saを上部基板保持機構23で保持すると共に、第2の単量体蒸着膜22bが形成された面が鉛直方向上側を向く状態で第2の基板Sbを下部基板支持台26に載置した。次いで、真空槽21を1×10−2Paまで排気し、荷重伝達棒31に3kgの荷重をかけて、第1の基板Sa表面の第1の下地層35a上に形成された第1の単量体蒸着膜22aと第2の基板Sb表面の第2の下地層35b上に形成された第2の単量体蒸着膜22bとを密着させ、ランプヒーター27により第1の基板Sa及び第2の基板Sbを250℃で2時間加熱した。これにより、二無水ピロメリット酸と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが反応してポリアミド酸を経てポリイミド膜が形成され、第1の基板Sa及び第2の基板Sbがポリイミド膜、第1の下地層35a及び第2の下地層35bを介して接着されたシリコンウエハー積層体が形成された。その後、ランプヒーター27を停止して、第1の基板Sa及び第2の基板Sbを100℃まで冷却し、シリコンウエハー積層体を大気中に取り出した。そして、得られたシリコンウエハー積層体のそり量を測定した。なお、第1の基板Saと第2の基板Sbは積層体の状態で同一の方向に反っている。
上記操作を、第1の単量体蒸着膜(二無水ピロメリット酸の蒸着膜)22a及び第2の単量体蒸着膜(4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの蒸着膜)22bの各膜厚(蒸着膜厚)を、表1に示す値に変化させてそれぞれ行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、いずれも0.30mm以下でありシリコンウエハー積層体のそり量は小さく、特に単量体の蒸着膜の膜厚が100nm以下においては、そり量は0.15mm以下であった。なお、単量体の蒸着膜の膜厚が増加するとウエハー積層体のそり量は増加したが、1000nmではそり量が急激に減少している。これは、蒸着させる単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いると、単量体の蒸着膜の厚さが1000nm以上では、密着させても二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが十分に拡散せず、ウエハーに近い領域では重合できず単量体の状態で残っているためである。したがって、単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合は、単量体の蒸着膜の膜厚は、500nm以下とすることが好ましい。
(試験例2)
試験例1で得られた各シリコンウエハー積層体について、それぞれ5mm角に切断した。任意に抽出した10ピースをそれぞれ取り出し、第1の基板Sa及び第2の基板Sbの両面に5mmφのSUSの棒をエポキシ接着材で接着した。このSUS棒の片方を固定しもう一方のSUS棒に300kgの荷重をかけて、第1の基板Sa及び第2の基板Sbが剥離するかどうかを調べた。10ピースのうち剥離したピースの割合を、剥離確率として表2に記載する。また、第1の基板Saの表面に第1の下地層35aを設けずに第1の単量体13aを蒸着し、第2の基板Sbの表面に第2の下地層35bを設けずに第2の単量体13bを蒸着した以外は試験例1と同様の方法で作成した各シリコンウエハー積層体(表2において「下地層なし」と記載する。)についても、同様にして剥離確率を求めた。
表2に示すように、下地層を設けたものは、下地層を設けなかったものと比較して、接着力が強かった。また、接着力は単量体の蒸着膜の膜厚に依存しており単量体の蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例2では、単量体の蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、単量体の蒸着膜の膜厚が10nmでは薄いため、接着力は若干弱かった。したがって、単量体として二無水ピロメリット酸及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合は、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。
(試験例3)
第1の下地層35aを形成した後、第1の単量体蒸着膜22aを形成する前に、第1の下地層35aが形成された第1の基板Saを大気中に出し250℃で2時間加熱する工程を行ない、また、第2の下地層35bを形成した後、第2の単量体蒸着膜22bを形成する前に、第2の下地層35bが形成された第2の基板Sbを大気中に出し250℃で2時間加熱する工程を行なった以外は、試験例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。
この結果、表3に示すように、試験例1と同様に、シリコンウエハー積層体のそり量は小さかった。
(試験例4)
試験例1で得られた各シリコンウエハー積層体の代わりに、試験例3で得られた各シリコンウエハー積層体を用いた以外は、試験例2と同様の操作を行った。結果を表4に示す。
この結果、表4に示すように、試験例4は、試験例1よりも接着力が高く、特に蒸着膜厚が100〜200nmでは全く剥離せず非常に接着力が強かった。これは、下地層形成時に生じたH2Oが下地層を加熱する工程により除去されたため、H2Oの凝集による接着力の低下が生じなかったためと推測される。
(試験例5)
第1の基板Saの表面に形成した第1の下地層35aを加熱し、また、第2の基板Sbの表面に形成した第2の下地層35bを加熱した後、これら下地層を形成した装置とは別の図1に示す真空蒸着装置を用いて、第1の単量体13aとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを使用し蒸着するときの加熱温度を35℃とし、第2の単量体13bとして4,4’−ジアミノジフェニルメタンを使用し蒸着するときの加熱温度を70℃とし、第1の単量体と第2の単量体を反応させる時に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱する条件を180℃で3時間として、芳香族ポリ尿素膜を形成した以外は、試験例3と同様の操作を行ってシリコンウエハー積層体を作成し、このシリコンウエハー積層体について、試験例2と同様の操作を行った。結果を表5に示す。
この結果、表5に示すように、接着力は蒸着膜の膜厚に依存しており蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例5では、蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、蒸着膜の膜厚が10nmでは薄すぎて、接着力は若干弱かった。したがって、単量体として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及び4,4’−ジアミノジフェニルメタンを用いる場合は、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。
(試験例6)
第1の基板Saの表面に形成した第1の下地層35aを加熱し、また、第2の基板Sbの表面に形成した第2の下地層35bを加熱した後、これら下地層を形成した装置とは別の図1に示す真空蒸着装置を用いて、第1の単量体13aとしてテレフタル酸ジクロリドを使用し蒸着するときの加熱温度を90℃とし、第2の単量体13bとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを使用し蒸着するときの加熱温度を50℃とし、第1の単量体と第2の単量体を反応させる時に第1の基板Sa及び第2の基板Sbを加熱する条件を200℃で1時間として、ポリアミド膜を形成した以外は、試験例3と同様の操作を行ってシリコンウエハー積層体を作成し、このシリコンウエハー積層体について、試験例2と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
この結果、表6に示すように、接着力は蒸着膜の膜厚に依存しており蒸着膜の膜厚が厚いほうが接着力は高くなる傾向があった。なお、試験例6では、蒸着膜の膜厚が1000nm以上では、密着させても重合が厚さ方向全体に均一に行われないため、十分な接着ができなかった。また、蒸着膜の膜厚が10nmでは薄すぎて、接着力は弱かった。したがって、単量体としてテレフタル酸ジクロリド及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いる場合も、接着力を考慮すると、単量体の蒸着膜の膜厚は、100nm以上500nm以下とすることが好ましいといえる。
(試験例7)
第1の下地層35aを形成した後、ニ無水ピロメリット酸(脱水剤)を蒸着させて第1の下地層35a上に第1の単量体蒸着膜22aを形成する際に、二無水ピロメリット酸の蒸着と同時に、二無水ピロメリット酸1モルに対して0.3モルとなるように1,10−フェナントロリンを第1の下地層35aの表面に蒸着させた以外は、試験例1と同様の操作を行ってシリコンウエハー積層体を作成し、このシリコンウエハー積層体について、試験例2と同様の操作を行った。結果を表7に示す。
この結果、表7に示すように、脱水剤を蒸着させることにより、脱水剤を蒸着させなかった試験例2と比較して、密着性が改善できることが確認された。