まず、本発明を実施するための形態の実施例における目的、課題について説明する。本実施例では、背景技術で述べたInband Backhaulを適用する場合、基地局が送受信する無線通信リソースは、第一無線通信路104と第三無線通信路106とでシェアされる。つまり、中継通信を多用して第二無線通信路105で沢山のデータ通信を行うと、これに比例して第三無線通信路106でも同量のデータ通信を行うことになり、結果として第一無線通信路104に振り分ける無線通信リソースが減ることになる。
これは、第一無線通信路104に振り分ける無線通信リソースが減るだけでなく、あるデータを基地局−端末間で伝送する際に、第一のルートで伝送した場合と第二のルートで伝送した場合とで各々占有する周波数リソースの量は、通信路の通信品質に応じて一般的に異なり、この現象により中継装置導入が周波数利用効率低下を招く場合がある。具体的には、あるデータを伝送するために第二のルートで占有する周波数リソースの量が、第一のルートで占有する周波数リソースの量に対して大きくなると、中継装置導入により当該データ伝送で使用する周波数リソースの量が増加するため、却って周波数利用効率が低下する。
ここで、前記第一のルートで占有する無線通信リソースは前記第一無線通信路の通信品質に反比例する。前記第二のルートで占有する無線通信リソースは、前記第二無線通信路の通信品質に反比例して消費される無線通信リソースと、第三無線通信路の通信品質に反比例して消費される無線通信リソースとの和となる。
以下、数式を交えて課題を説明する。第一無線通信路104、第二無線通信路105、第三無線通信路106の通信品質であるキャパシティをそれぞれCD、CA、CB(単位は[bit/s/Hz])と表す。一方、それぞれの無線通信路が占有する無線リソースの割合をPD、PA、PBとする。システム全体の有効な平均キャパシティCは次の式で表すことができる。
この式で留意すべき点は、第三無線通信路106はあくまで第二無線通信路105でデータ通信するためのバックホール回線であり、第二無線通信路105でデータ通信するためのオーバヘッドに過ぎない点である。
次に、第一無線通信路104、第二無線通信路105、第三無線通信路106が無線通信リソースをシェアしている点から、次の制約条件を導入できる。
さらに中継通信であることから、第二無線通信路105で伝送するデータ量と、第三無線通信路106で伝送するデータ量は等しくなり、次の制約条件を導入できる。
数式2と数式3から、次の関係を得ることができる。
数式4を数式1に代入すると、次の不等式が得られる。
この式において、仮にPA=0とすると第一無線通信路104のキャパシティCDのみが残る。つまり、中継装置を導入しない場合のシステム全体平均キャパシティである。ここで中継装置導入によりPA>0となると、右辺の第一項は減少し、右辺の第二項は増加する。つまり、中継装置導入のシステムロスとシステムゲインが混在している状況で、第一無線通信路104、第二無線通信路105、第三無線通信路106それぞれのキャパシティCD、CA、CBの相互関係によりシステムロスの方が大きいかシステムゲインの方が大きいかが分かれる。PA増加に伴いシステムゲインを増やす、すなわち中継装置導入によりシステムゲインを増やすための必要条件は次式となる。
変形すると次の式となる。
この数式7が、中継装置導入によりシステムゲインを増やすための各キャパシティCD、CA、CB間相互関係の必要条件である。このとき、中継装置導入によるシステムゲインは数式5から次の通り導かれる。
ただし、数式2から導かれるPA+PB≦1(等号はPD=0のとき成立)、および数式3から、以下の制約条件が導かれる。
図2に、数式7が等号となるよう線を描いたグラフを示す。横軸が第二無線通信路105のキャパシティCA、縦軸が第一無線通信路104のキャパシティCDで、第三無線通信路106のキャパシティCBをパラメータとして複数本の線を描いている。数式7から、この線より下側の領域が中継装置導入によりシステムゲインが得られる領域、線より上側の領域は中継装置導入によりシステムロスが発生する領域である。
図2から、システムゲインを増やすための定性的な条件が以下の通り導かれる。
(1)第二無線通信路105のキャパシティCAが第一無線通信路104のキャパシティCDと比較して十分に大きい。
(2)第三無線通信路106のキャパシティCBが大きいほど(1)の条件は緩和される。
極端な例を挙げる。第三無線通信路106のキャパシティCBが無限大に漸近すると、数式7のCB/(CA+CB)が1に漸近し、システムゲインとシステムロスとの境界線はCD=CAの直線に漸近する。特許文献1は、この直線を境界線として考えていると思われるが、実際は、数式3で示したように第二無線通信路105で伝送するデータ量の分だけ、第三無線通信路106でのデータ伝送も必要であり、第三無線通信路106のキャパシティに反比例する無線通信リソースを余分に消費することになる。この第三無線通信路106における無線通信リソースの余分な消費が、システムゲインとシステムロスとの境界線をCD=CAの直線から遠ざけている原因である。
以上から、中継装置を導入することでシステムゲインが得られず、却ってシステムロスが発生してしまう場合があることが明らかとなった。本実施例が解決しようとする課題の一つである。
より具体的には、前記第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、第三無線通信路品質から計算される該中継装置導入による性能のロスとゲインとを比較し、比較結果に基づき基地局と端末との間のデータ通信に対する中継要否判定を実施する無線通信システムにより課題を解決できる。
さらに、該基地局から該端末の方向に通信を行う下り通信と、該端末から該基地局の方向に通信を行う上り通信とでは各無線通信路のキャパシティの相互関係が変化するため、下り通信と上り通信各々に対して基地局と端末との間のデータ通信の中継要否判定を実施する無線通信システムにより、上り通信と下り通信の双方で課題を解決できる。
また、前記中継要否判定の判定結果を中継装置で収集し、中継装置が同判定結果に基づいてデータ通信を中継するか、中継せずに受信データを破棄するかを制御することで、第一無線通信路で通信すべきデータを破棄し、第二無線通信路および第三無線通信路で通信すべきデータのみ選択的に中継することができる。
基地局が前記第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、第三無線通信路品質を収集して前記中継要否判定を実施することで、基地局は3種類の無線通信路品質を元に中継要否判定結果を発行することができる。基地局が前記第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、第三無線通信路品質を収集することは、第一無線通信路品質を端末または基地局が推定し、第二無線通信路品質を端末または中継装置が推定し、第三無線通信路品質を基地局または中継装置が推定し、端末および中継装置が推定した結果を基地局へ無線でフィードバックすることで実現できる。
さらに、前記第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、第三無線通信路品質のうち2つを測定するために、基地局、端末のいずれかの装置が参照信号を送信し、中継装置を含めた残り2種類の装置が同参照信号を各々受信して異なる無線通信路の品質を推定することで、各種無線通信路品質を推定するための参照信号のオーバーヘッドを減らすことができる。
その上で、下り通信で基地局が送信する参照信号に中継装置が送信する参照信号をオーバーラップさせる、および上り通信で端末が送信する参照信号に中継装置が送信する参照信号をオーバーラップさせることで、さらに参照信号のオーバーヘッドを減らすことができる。
以下、本発明を実施するための形態について実施例を示す。図3に、本実施例におけるシステム全体の動作の流れを示す。
まず、ステップ1001で基地局−各端末間の第一無線通信路の通信品質を収集し、ステップ1002で中継装置−各端末間の第二無線通信路の通信品質を収集し、ステップ1003で基地局−中継装置間の第三無線通信路の通信品質を収集する。ステップ1001からステップ1003の順番や時間間隔は任意で良いが、ステップ1004までにステップ1001からステップ1003の全てを終わらせる必要がある。ここでは、各種通信品質を収集する主体として基地局、通信品質を測定する主体として基地局、端末、中継装置を想定している。より詳しい実施例については後述する。
ステップ1004では、ステップ1001からステップ1003で収集した第一無線通信路の通信品質、第二無線通信路の通信品質、第三無線通信路の通信品質から、端末毎の中継要否判定を実施する。
ステップ1005では、ステップ1004出力である端末毎の中継要否判定結果に基づき、中継すべき端末の無線信号を中継し、中継すべきでない端末の無線信号を中継しないよう制御する。
図4に、無線通信システムにおける基地局101、中継装置103及び端末102における、下り通信動作フローの第一実施例を示す。
まず、基地局101は端末102に対し、第一無線通信路(基地局−端末間)の通信路品質を推定するための参照信号201を送信し、中継装置103に対し第三無線通信路(基地局−中継装置間)の通信路品質を推定するための参照信号203を送信する。中継装置103は、第二無線通信路(中継装置−端末間)の通信路品質を推定するための参照信号202を送信する。
端末102は、参照信号201を受信し、その参照信号201を使用して第一無線通信路の通信路品質推定204を行う。端末102は、参照信号202を受信し、参照信号202を使用して第二無線通信路の通信路品質推定205を実施する。中継装置103は、参照信号203を受信し、その参照信号203を使用して第三無線通信路の通信路品質推定206を実施する。
端末102は、通信路品質推定204または206による通信路品質の推定結果をMAC(Medium Access Control)レイヤ(Layer2)で無線により基地局101にフィードバックする。ここでフィードバックするのは、第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208である。
同様に、中継装置103は、通信路品質推定206により、第三無線通信路の通信路品質推定結果209を基地局へMACレイヤで無線によりフィードバックする。
基地局101は、端末102から第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208とを無線ネットワークを介して受信する。基地局101は、中継装置103から、第三無線通信路の通信路品質推定結果209を無線ネットワークを介して受信する。
基地局101は、端末102と中継装置103から無線でフィードバックされた第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208と、第三無線通信路の通信路品質推定結果209とを用いて、端末102毎に中継装置103による中継通信を実施するか否かを判定する(210)。中継要否判定結果211は、MACレイヤ、またはRRC(Radio Resource Control)レイヤ(Layer3)で、無線ネットワークを介して中継装置103に転送される。
基地局101は、端末102と中継装置103から無線でフィードバックされた第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208と、第三無線通信路の通信路品質推定結果209とを用いて、どの端末と通信するかを決定する(212)。これは、いわゆるパケットスケジューラに相当する。
基地局101は、212で通信相手の端末を選択した後に、当該端末への伝送データ系列を生成し、当該端末に割り当てられた無線通信リソースを示す制御パケットを生成する。そして、基地局101がカバーするエリア(セル)内に、生成したデータ系列と制御パケットを無線ネットワークへ送信する(213)。
中継装置103及び端末102は、213でブロードキャストされたデータ系列と制御パケットを含む基地局送信信号214を受信する。中継装置103と端末102とのそれぞれで基地局信号の受信処理215を行う。基地局信号の受信処理215は、ベースバンド信号処理を実施し、データ系列のビット系列と、前記制御パケットのビット系列とを取り出す。前記制御パケットに中継要否判定結果211を埋め込んで、中継装置103で取り出しても良い。
中継装置103は、基地局信号受信処理215で取り出されたデータ系列のビット系列と、制御パケットのビット系列とを再度符号化して中継装置から改めて送信する(217)。このとき、基地局101から受信した中継要否判定結果211に基づき、中継しない場合は中継装置103内で前記データ系列と制御パケットのビット系列とを破棄し、再符号化および再送信は行わない。
中継装置103からの再送信信号218は端末102で受信され、基地局信号受信処理215と同様にベースバンド信号処理を実施し(219)、前記データ系列のビット系列と、前記制御パケットのビット系列とを取り出す。
図22及び図23に、下り通信動作フローの変形例を示す。
図22は、図4の処理の前に、動作フロー先頭に、中継装置103が無線通信路品質のフィードバックを開始するためのコマンド220が、基地局101から中継装置103に送信される。また、端末102が無線通信路品質のフィードバックを停止するためのコマンド223が、基地局101から端末102に送信される。一方、図4における、これに伴い端末102から基地局101に対する第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208とのフィードバック処理がない。このとき、基地局101の中継要否判定210は、端末102からフィードバックされる第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208に関して、過去に収集した結果を参照する。もし基地局101が起動直後で過去に収集した結果を持たない場合は、通信対象の端末102に対して中継不要と判断してもよい。その他の動作は図4と同じである。
図23に、下り通信動作フローの第二の変形例である。図4との違いは、動作フロー先頭に、中継装置が無線通信路品質のフィードバックを停止するためのコマンド221が、基地局101から中継装置103に送信される。端末102が無線通信路品質のフィードバックを開始するためのコマンド222が、端末102に基地局101から送信される。
一方、図4における、中継装置103から基地局101に対する第三無線通信路の通信路品質推定結果209のフィードバック処理は、図23では行わない。この場合、基地局101の中継要否判定210は、中継装置103からフィードバックされる第三無線通信路の通信路品質推定結果209に関して、過去に収集した結果を参照する。もし基地局101が起動直後で過去に収集した結果を持たない場合は、通信対象の端末102に対して中継不要と判断する。その他の動作は図4と同じである。
以上により、基地局101が、端末102や中継装置103における通信路品質の基地局101へのフィードバックの開始や停止を制御する。
図5に、上り通信動作フローの第一実施例を示す。
端末102は、基地局101に対し、第一無線通信路の通信路品質を推定するための参照信号301を送信し、中継装置103に対し第二無線通信路の通信路品質を推定するための参照信号302を送信する。
中継装置103は、第三無線通信路の通信路品質を推定するための参照信号303を基地局101に送信する。中継装置103は、端末102から参照信号302を受信し、その参照信号302を使用して第二無線通信路の通信路品質推定305を実施する。中継装置103は、第二無線通信路の通信路品質推定結果308を基地局101へMACレイヤで無線によりフィードバックする。
基地局101は、参照信号301を受信し、その参照信号301を使用して第一無線通信路の通信路品質推定304を行う。また、基地局101は、参照信号303を受信し、その参照信号303を使用して第三無線通信路の通信路品質推定306を実施する。また、基地局101は、中継装置103からフィードバックされた第二無線通信路品質推定結果308を無線ネットワークを介して受信する。
そして、基地局101は、304と306で推定した第一無線通信路の通信路品質と、第三無線通信路の通信路品質と、第二無線通信路の通信路品質推定結果308とを用いて、端末102毎に中継装置103による中継通信を実施するか否かを判定する中継要否判定処理(310)を実施する。中継要否判定結果311は、MACレイヤかRRCレイヤで無線により中継装置103に転送される。
さらに、基地局101は、第一無線通信路の通信路品質と、第二無線通信路の通信路品質と、第三無線通信路の通信路品質とに基づいて上り通信を許可する端末102を選択(312)し、許可した端末102に対する割当て情報をMACレイヤにて端末102宛に送信する(313)。
端末102は、基地局101から送信された割当て情報313を参照し、当該端末に上り通信の無線通信リソースが割り当てられていることを確認したら、データ系列と制御パケットを生成して上り信号を送信する(314)。
端末102が送信した上り無線信号315は、基地局101と中継装置103がそれぞれ受信し、端末送信信号に対する受信処理(316)を実施する。
中継装置103は、端末信号受信処理316で取り出された前記データ系列のビット系列と、制御パケットのビット系列とを再度符号化して中継装置から改めて送信する(318)。このとき、中継装置103は、基地局101から受信した中継要否判定結果311に基づき、中継しない場合は中継装置103内で前記データ系列と制御パケットのビット系列とを破棄し、再符号化および再送信は行わない。
中継装置103からの再送信信号319は基地局101で受信され、端末信号受信処理316と同様にベースバンド信号処理を実施し(320)、前記データ系列のビット系列と、前記制御パケットのビット系列とを取り出す。
以上の図4と図5を並列実行することで、上り通信と下り通信の中継要否判定、ならびに選択中継制御を同時並行で実施してもよい。具体的には、TDD(Time Domain Duplex)無線通信システムでは時分割で図4と図5を交互に実施、FDD(Frequency Domain Duplex)無線通信システムでは、無線区間を周波数分割多重し、基地局、中継装置、端末各装置内の処理は時分割または並列処理する。
図24及び図25に、図5の上り通信動作フローの変形例を示す。
図24は、動作フロー先頭に、中継装置103が無線通信路品質のフィードバックを開始するためのコマンド220が、基地局101から中継装置103に送信される。中継装置は、このコマンド220を受けると、上り第二無線通信路の通信路品質推定結果308を返す。その他の動作は図5と同じである。
図25に、上り通信動作フローの第二の変形例を示す。
図5との違いは、動作フロー先頭に、中継装置103が無線通信路品質のフィードバックを停止するためのコマンド221が、基地局101から中継装置103に送信される。一方、図4における上り第二無線通信路の通信路品質推定結果308の通知処理を不要となる。
中継装置103はこのコマンド221を受けると、上り第二無線通信路の通信路品質推定結果308の基地局への送信を停止する。このとき、基地局101の中継要否判定310は、中継装置103からフィードバックされる上り第二無線通信路の通信路品質推定結果308に関して、過去に収集した結果を参照することになる。もし基地局101が起動直後で過去に収集した結果を持たない場合は、通信対象の端末102に対して中継不要と判断する。その他の動作は図5と同じである。
図25の変形例で中継装置103からの無線通信路品質のフィードバックを停止している状態の場合、図24における中継装置103は上記コマンド220受信をトリガにフィードバックを開始する。したがって、図25と図24の変形例は、互いに切り替えて実施してもよい。以上により、基地局101が、端末102や中継装置103における通信路品質の基地局101へのフィードバックの開始や停止を制御する。
上述した図22ないし図25の無線通信システムでは、中継装置が推定した結果をフィードバックするタイムフレームと、該端末が推定した結果をフィードバックするタイムフレームとを互いにずらして、同一のタイムフレームで中継装置と端末が同時にフィードバックしない制御を行う。
また、中継装置が推定した結果をフィードバックするタイムフレームと、該端末が推定した結果をフィードバックするタイムフレームとを、基地局が指示する。図22から図25に示したフィードバックを開始または停止するコマンドは、基地局により、制御信号に含めて、支配下の中継装置や端末にブロードキャストされる。図26に、中継装置や端末へブロードキャストされるコマンドの一例である、フィードバックイネーブラのフォーマット2610を示す。
情報量としては2bitsである。第一ビットは、端末が推定した通信路品質情報を基地局へフィードバックしても良いかどうかを示すインジケータである。第二ビットは、中継装置が推定した通信路品質情報を基地局へフィードバックしても良いかどうかを示すインジケータである。インジケータが0の場合はフィードバック禁止、1の場合はフィードバック許可を示す。2bitsの値が00の場合はフィードバックを一切禁止する状態である。2bitsの値が01または10の場合は、中継装置または端末のいずれかがフィードバックを許可されている状態である。2bitsの値が11の場合は中継装置と端末の双方にフィードバックが許可されている状態である。
2bitsの1ビット目が0の場合がコマンド223、1ビット目が1の場合がコマンド222、2ビット目が0の場合はコマンド221、2ビット目が1の場合がコマンド220に相当し、2ビット送信することは、これらのコマンドを2個同時にブロードキャストすることに相当する。
図6Aから図6Dは、各種参照信号の送信方法に関する実施例である。ここでは下り通信を例として説明するが、上り通信へも適用可能である。
図6Aは、本実施例における基地局101からの参照信号(より具体的には参照信号シンボル系列)送信方法の第一例である。401で示している斜線のシンボルは、基地局から端末へ送信する第一無線通信路の通信路品質推定用の参照信号シンボルを表す。403で示している逆方向の斜線のシンボルは、基地局から中継装置へ送信する第三無線通信路の通信路品質推定用の参照信号シンボルを表す。404の黒塗りのシンボルはヌルシンボルを表す。405の白塗りのシンボルは、データシンボルを表す。図6Aでは、401の第一無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルと、403の第三無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルとが、受信側(端末および中継装置)で識別できるよう、同一時間周波数とならないよう配置している点である。
端末103は、基地局101から受信した第一無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボル401と、端末自身が保持する同参照信号シンボルとを比較し、同シンボル401が受けた伝搬路ゲインを推定する。中継装置は、基地局から受信した403の第三無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルと、中継装置自身が保持する同参照信号シンボルとの比較し、同シンボル403が受けた伝搬路ゲインを推定する。
なお、上り通信の場合、図6Aにおける401は端末が送信する第一無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルに、及び403は端末が送信する第二無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルに、それぞれ対応し、404と405は下り通信と同様である。
図6Bは、本実施例における中継装置103からの参照信号シンボル送信方法の一例である。402は、中継装置103が端末102へ送信する第二無線通信路の品質推定用参照信号シンボルである。図6Aで、401と403に割り当てられていたシンボルには、ヌルシンボル404を配置し、基地局が送信する参照信号シンボルと干渉しないように時間と周波数をずらしている。端末102は、中継装置103から受信した第二無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボル402と、端末自身が保持する同参照信号シンボルとの比較から、同シンボル402が受けた伝搬路ゲインを推定する。上り通信の場合は、402が中継装置が基地局へ送信する第三無線通信路の品質推定用参照信号シンボル系列に相当する。
図6Cは、本実施例における基地局からの参照信号シンボル送信方法の第二例である。シンボル406は、401と403との2つの役割を担う参照信号シンボルとして定義されたシンボルである。このように、2つの役割を担う参照信号シンボルを1種類にマージすることで、参照信号シンボルの数、およびシステム全体から見た参照信号シンボルのオーバヘッドを減らすことができ、システムの周波数利用効率を高めることができる。406は、中継装置103で受信する場合は、第三無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルとして、端末102で受信する場合は、第一無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルとして扱う。
なお、上り通信の場合、406は端末が送信する。406を中継装置102で受信する場合は第二無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルとして、基地局101で受信する場合は第一無線通信路の通信路品質推定用参照信号シンボルとして扱う。
図6Dは、本実施例における基地局からの参照信号シンボルと中継装置からの参照信号シンボルとをオーバーラップ送信する実施例である。基地局から送信する参照信号シンボル406と、中継装置から送信する参照信号シンボル402とが、同一時間(OFDMシンボル)、同一周波数(サブキャリア)にオーバーラップしている。この参照信号シンボル送信方法は、図6Cの例と比較して更に参照信号シンボルの数、およびシステム全体から見た参照信号シンボルのオーバヘッドを減らすことができ、結果としてシステムの周波数利用効率を高めることができる。
図6Dの例では4箇所で参照信号シンボル系列がオーバーラップしているが、これら4箇所の間で伝搬路応答が等しいと見なせれば、参照信号シンボル系列として例えばウォルシュ系列を使用することで2種類の参照信号シンボルを受信側で弁別でき、各参照信号シンボルに対する伝搬路応答や通信品質を推定できる。さらに、基地局が送信した参照信号シンボル406は、図6Cの例の通り中継装置と端末で別々に観測することでそれぞれ第三無線通信路と第一無線通信路の通信品質を推定できる。
図7は、参照信号シンボル系列の生成方法の例である。
ここでは、非特許文献2記載の方法に沿って説明する。参照信号シンボル系列は、線形帰還シフトレジスタを用いて得られた0と1のビット系列を元にQPSKコンスタレーションにマッピングする。このとき、ビット系列の偶数番目をI成分、奇数番目をQ成分に配置する。0の場合は該当するI成分またはQ成分が正(1/sqrt(2)、sqrt(x)はxの平方根を表す)、1の場合は該当するI成分またはQ成分が負(−1/sqrt(2)))にマッピングされる。
線形帰還シフトレジスタを用いる際、シフトレジスタの中身を初期化する必要があるが、非特許文献2によると、スロット番号(スロットは6または7OFDMシンボルで構成される。20スロットを1フレームと呼び、スロット番号とは1フレーム内のスロット番号を示す。従って値域は0から19である。)、スロット内の参照信号シンボルを挿入するOFDMシンボル番号、セル固有の識別番号(セルID)、およびCyclic Prefixのモード(非特許文献2ではNormalモードとExtendモードがあり、両者でスロット内のOFDMシンボル数がそれぞれ7、6と変化するため区別している。システム稼動中は変化しない値。)の4点に依存した初期値を設定する。つまり、最も更新頻度の高いOFDMシンボル毎に初期化されることになる。これらの値は基地局、中継装置、端末で共有される値である。
なお、非特許文献2では図7の通り2つのM系列生成シフトレジスタ804、805の出力を合成した結果を参照信号シンボル系列を生成する元のビット系列としている。804はOFDMシンボルが変更されるたびに最も左上のレジスタ806に1を、その他のレジスタにはすべて0を初期値として設定する。M系列シフトレジスタ805は、上記4点に依存した初期値をバイナリ表示し、各ビットの値を各レジスタ806に格納する。
各レジスタに対し0または1の値が初期値として設定されたあと、矢印の方向にレジスタの内容をシフトさせながら出力ビット系列(参照信号シンボル系列の元となるビット系列)を生成する。807は排他的論理和である。
図8Aから図8Cは、無線通信路の通信路品質推定結果を示す各種無線通信路品質の基地局へのフィードバックフォーマットの例である。これらはMACレイヤでフィードバックする例で記述しているが、基地局との無線通信プロトコル上で規定されていれば、同様の情報をRRCレイヤでフィードバックしても良い。
図8Aは、下り通信における各種無線通信路品質の端末102から基地局101へのフィードバックフォーマット例である。図8Aは、図4の207や208に相当する。各端末が基地局にフィードバックされる情報は、基地局がどの端末からのフィードバックかを特定するための端末ID820と、端末が測定した第一無線通信路のCQI830と、第二無線通信路のCQI840である。
例えばLTEであれば、PUCCH(Physical Uplink Control Channel、非特許文献2参照)のフィードバックフィールドを拡張するか、フィードバックフォーマットを追加すればよい。
図8Bは、下り通信における各種無線通信路品質の中継装置から基地局へのフィードバックフォーマット例である。図8Bは、図4の209に対応する。各中継装置が基地局にフィードバックされる情報は、基地局がどの中継装置からのフィードバックかを特定するための中継装置ID850と、中継装置が測定した第三無線通信路のCQI860である。例えばLTEであれば、PUCCHのフィードバックフィールドを拡張するか、フィードバックフォーマットを追加すればよい。基地局−中継装置間のバックホール回線向け専用のチャネル、例えばR−PUCCH(Relay−Physical Uplink Control Channel)を新たに定義しても良い。
図8Cは、上り通信における各種無線通信路品質の中継装置から基地局へのフィードバックフォーマット例である。図8Cは、図5の301、303及び308に対応する。各中継装置が基地局にフィードバックすべきは、基地局がどの中継装置からのフィードバックかを特定するための中継装置IDと、中継装置が測定した第二無線通信路の端末ID820と、端末ID毎のCQI840である。実現方法は図8Bと同様である。
図20Aから図20Dは、無線通信路の通信路品質推定結果を示す各種無線通信路品質の基地局へのフィードバックタイミングの例を示している。
図20Aは、中継装置を有さない無線通信システムにおけるタイミングチャートである。1マスが1サブフレームを表す。黒いマスは端末から下り第一無線通信路の通信品質をフィードバックするサブフレーム901を示す。フィードバックする間隔は、Npサブフレームとしている。フィードバックする内容は、図8AのCQI(第二無線通信路)を除いたものである。
図20Bは、中継装置を有する無線通信システムにおけるタイミングチャートの第一例である。901は端末から下り第一無線通信路および下り第二無線通信路の通信品質をフィードバックするサブフレームを示す。フィードバック内容は図8Aと同じである。902は中継装置から下り第三無線通信路および上り第二無線通信路の通信品質をフィードバックするサブフレームを示す。フィードバック内容は図8Bおよび図8Cに示す通りである。
図20Aと比較すると、無線通信路品質のフィードバック回数はシステム全体で変化していないが、フィードバックの機会を端末と中継装置でシェアするため、各通信品質のフィードバック周期は図20Aと比較して倍となる。つまり、フィードバックの量は従来水準のままだが、フィードバック周期が従来比で倍となる。フィードバック周期が伸びることで、同周期の間で無線伝搬路の通信品質はフェージングなどにより変化する量が一般的に大きくなるため、フィードバック情報の精度が低下しやすくなり、その結果無線通信路の伝送能力(キャパシティ)を活かしきれなくなる一方、フィードバック回数を抑えているため、フィードバック回数に比例して消費される無線通信リソースを節約できるため、その分無線通信路の伝送能力を高めることができる。
図20Cは、中継装置を有する無線通信システムにおけるタイミングチャートの第二例である。901と902は図20Bと同様である。
図20Aと比較すると、無線通信路品質のフィードバック回数は2倍となり、端末によるフィードバックと中継装置によるフィードバックの回数はそれぞれ図20Aと同じである。図20Aと同一頻度のフィードバックを実施しているため、フィードバック周期に依存する無線伝送能力の活用度合いは図20Aと同等となるが、フィードバック回数を倍としているため、フィードバック回数に比例して無線通信リソースを図20Aと比較して余分に消費するため、その分無線通信路の伝送能力を低くすることになる。
図20Dは、中継装置を有する無線通信システムにおけるタイミングチャートの第三例である。901と902は図20Bと同様である。
フィードバックの総量は図20Aと同じであるが、端末からのフィードバック周期および中継装置からのフィードバック周期は不定となる。フィードバック周期が伸びる部分では、図20Bの例でも示した通りフィードバック情報の精度が低下しやすくなるが、移動しない中継装置の場合、基地局−中継装置間の第三無線通信路の通信品質は時間に対する変化量が小さくなると考えられる。従って、より時間に対する通信品質の変化量が大きい端末に対し多めのフィードバック機会を与えることで、図20Bの例で示した通りフィードバック情報の精度低下が発生しにくくなり、無線通信路の伝送能力を活かしやすくなる利点がある。ただし、基地局が中継装置と端末に対してフィードバックの開始または停止を報知する必要がある。この報知方法は、図22から図26の実施例で説明済みである。
図9は、基地局から中継装置に通知される中継要否判定結果のフォーマット例である。このフォーマットはMACレイヤでの例である。
図9は、LTEのDCI(Downlink Control Information、非特許文献3参照)に相当する下りデータチャネルの送信方法を示す制御信号である。この制御信号は、基地局からデータ信号と共に送信され、端末と中継装置が各々受信する。第一フィールドは端末ID910であり、この制御信号および当制御信号が関連付けられているデータ信号の宛先端末IDである。第二フィールド920は、当該端末に割り当てられた無線通信リソースの位置を示すビットフラグで、”1”が示す部分リソースを当該端末に割り当てられていることを示す。例えば、システム周波数を12分割した場合、図9の例では左から5個目と6個目に”1”が立っているため、5個目と6個目の分割周波数が当該端末に割り当てられていることを示す。第三フィールド930はMCS(Modulation&Coding Scheme)で、変調方式や符号化率を一意に示すインジケータである。第4フィールド940は、中継要否判定結果を示すフラグである。このフラグは、当制御信号および当制御信号と関連付けられているデータ信号を中継するか否かを示す中継要否フラグである。図9の例では、基地局101による中継要否判定の結果、要の場合は、中継要否フラグ940の値は1で、否の場合は、中継要否フラグの値は0である。中継装置がフラグ値が”1”を検出した場合は当該制御信号と関連データ信号を中継し、”0”の場合は当該制御信号およびデータ信号を中継装置内で破棄する。
図10は、基地局が中継装置に通知される中継要否判定結果の例である。図10では、RRCレイヤでのフォーマット例である。
第一フィールド1010は、中継要否判定結果を通知する宛先の中継装置IDである。第二フィールド1020は、当該中継装置で中継すべき端末IDを示す、中継要否フラグビットマップである。この図の例では、左側12個に”1”(中継する)が立ち、右側12個に”0”(中継しない)が立てられている。左側から順に端末ID0,1,2・・・と対応させることを基地局−中継装置間でルール化しておくことで、この結果から端末ID0から11は当該中継装置で中継し、端末ID12から23は当該端末装置で中継しないことが分かる。実際に中継装置へ到来した制御信号およびデータ信号のうちどれを中継するかは、図9に示すデータ信号に付随する参照信号の中身を解析し、上記ビットフラグによる端末ID毎の中継要否判定結果と照合することで選択的な中継処理を実現する。
図21は、非特許文献4に記載されているCQI(Channel Quality Indicator)から無線通信路キャパシティに変換するためのテーブル例を示す。
左から数えて一列目2110は、CQIのインデックスである。2110は、4bitsCQIの例であり、計16個のインデックスを表している。左から2列目2120は、各CQIインデックスにおいて使用する変調方式である。左から3列目2130は、ビット列から符号語を生成する際に、パリティビットを含む生成全ビット数を1024としたときに、元のビット列であるシステマティックビット(組織ビット)の割合を示している。つまり、x/1024は符号化率を表す。左から4列目2140は、再送が発生しなかった場合の周波数利用効率[bit/s/Hz]であり、すなわちキャパシティである。図11のステップ1102で実施されるCQI(無線通信路品質)からキャパシティへの変換は、図21のような表に従い実施される。なお、CQIインデックスが0の場合のOut of Rangeは、当該端末または中継装置がCQIをフィードバックする時点でデータ通信が不可能な状態を表す。
図11は、基地局101における中継要否判定処理の実施例である。上り通信と下り通信で共通のアルゴリズムを使用する。図3の1004、図4の210、図5の310の処理の詳細である。
ステップ1101では、基地局に所属する全端末に関する中継フラグを0とする。ステップ1102では、図4や図5に示した手順に従い、各端末に関する第一無線通信路および第二無線通信路の通信品質、および中継装置に関する第三無線通信路の通信品質を収集し、変換テーブルを用いてCQIからキャパシティに変換する。ステップ1103では、各端末kに関する評価関数を計算する。評価関数F(k)は次の式で表される。
ここで、CA(k)は端末kに関する第二無線通信路の通信品質であるキャパシティ、CD(k)は端末kに関する第一無線通信路の通信品質であるキャパシティ、CBは第三無線通信路の通信品質であるキャパシティを表す。
ステップ1104では、全ての端末を一旦グループ1に所属させる。グループ1は、第一無線通信路を使用する端末のグループを表す。以降、端末を順次グループ2(第二無線通信路を使用する端末のグループ)に仮に所属させ、グループ1からグループ2に移動することでシステムキャパシティゲインが得られるかどうかを評価する。
ステップ1105では、グループ1に所属する端末の中で、評価関数F(k)が最大値となる端末のインデックスと評価関数最大値を取得する。ステップ1106でこの評価関数最大値が非負か負かを判定する。判定結果、負の場合は、これ以上第二無線通信路に端末を割り振ると、システムキャパシティが減少するとして、中継要否判定処理を終了する。一方、負でない(非負)の場合は、ステップ1107に進む。
ステップ1107では、ステップ1105でインデックス指定された端末がグループ2に移動する前の、グループ1に所属する端末の第一無線通信路に関する平均キャパシティCDを計算する。ステップ1108で、ステップ1105でインデックス指定された端末をグループ2に移動させ、ステップ1109でグループ2に所属する端末の第二無線通信路に関する平均キャパシティCAを計算する。
ステップ1110では、ステップ1107のCD、ステップ1109のCA、および第三無線通信路のキャパシティCBから評価関数Gを求める。評価関数Gは次の式で表される。
ステップ1111では、評価関数Gが非負か負かを判定する。負であれば、システムキャパシティゲインが得られないとして、中継要否判定を終了する。一方、非負であれば、ステップ1108でグループ2に移動させた端末の中継フラグを”1”とし、この端末がグループ2に移動した条件の下、次の端末をグループ2に移動させるべきかどうかを判断するため、ステップ1105に戻る。
図12Aと図12Bは、図11の中継要否判定における端末毎の状態管理テーブル例である。
図12Aの例は、図11のステップ1104が完了した状態である。この例にステップ1105を適用すると、端末3に関して最大評価関数値+3.0が得られる。この最大評価関数値は非負のため、ステップ1107でCD=(1+5+1)/3≒2.3が計算され、ステップ1108で端末3がグループ2へ移動し、ステップ1109ではCA=5が得られる。ステップ1110でこれらCA,CDとCB=5を使用し、評価関数値Gを計算する。G=(5/2.3)−(5/5)−1≒0.17となる。従って、評価関数値Gは非負のため、端末3の中継フラグに1が立つ。この時点での状態を図12Bに示す。この状態でステップ1105に戻るが、グループ2に移動した端末3を除けば、評価関数値が最大でも0未満のため、中継要否判定処理を終了する。以上の図11のフローチャートでは、基地局は、第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、第三無線通信路品質から計算される、中継装置を利用する場合の、通信性能のロスと通信性能のゲインとを比較し、比較結果に基づき中継要否判定を実施する。
図13から図17を用いて、無線通信システムが有する基地局、中継装置、端末の構成を説明する。
図13は基地局の構成例である。
無線フロントエンド501は、アンテナ、デュプレクサ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、アップコンバータ、ダウンコンバータ、アナログデジタル変換、デジタルアナログ変換で構成される。無線フロントエンド部501は、無線周波数信号の送受信を行う。上り受信ベースバンド信号に対し、502でFFT処理を実施し、503でデータシンボルと参照信号シンボルとの分離を行う。
503で分離した参照信号シンボルに対し、伝播路応答推定部504は、上り第一無線通信路および上り第三無線通信路の応答推定を行う。伝搬路応答の推定には、送受信側両方(端末と基地局、中継装置と基地局)において既知の参照信号シンボルを使用する。参照信号シンボルが時間と共に変化しないのであれば、伝播路応答推定部504は、固定かつ既知の参照信号シンボル系列をメモリ(例えば、図27のメモリ2730)に保持しておき、時間と共に変化する場合は、伝播路応答推定部504は、送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従い、参照信号シンボル系列を生成する。
また、同一の時間周波数に相互相関の低い複数の参照信号シンボル系列が多重されている場合、つまり端末と中継装置が異なる参照信号シンボル系列を同一の時間周波数に重ねている場合、図18に示すように、受信した参照信号シンボル系列を中段のレジスタ810に右側から順番に詰め込み、同様に複素共役をとった既知の第一参照信号シンボル系列を上段のレジスタ801に右側から順番に詰め、複素共役をとった既知の第二参照信号シンボル系列を下段のシフトレジスタ820の右側から順番に詰める。
その状態で、図示の通り、加算機803と乗算器802とが、乗算と加算を実施することで、第一参照信号シンボルに対する伝搬路応答と、第二参照信号シンボルに対する伝搬路応答とを取り出すことができる。ここで、受信参照信号シンボル系列は503から入力され、既知の第一参照信号シンボルおよび第二参照信号シンボルは、504内の固定パタンを記録するためのメモリから、または504内で送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従って、例えば図7の実施例のように生成した結果を入力する。
通信品質推定処理部505は、504の伝搬路推定結果に基づいて通信品質を推定する。図11の304や306に対応し、通信品質推定処理部505は、上り第一無線通信路と上り第三無線通信路と各々の通信品質を推定する。通信品質推定の最も簡単な方法は、雑音電力と干渉電力を固定値と仮定し、504で推定した伝搬路推定結果の2乗を所望信号電力とし、所望信号電力を固定値で割った値をSINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)として扱い、これをシャノン容量に換算する方法が挙げられる。ただし、このままでは仮定が実際とずれていた場合に通信品質の見積りを誤るため、アウターループ制御を実施することが考えられる。例えば、ある固定値を仮定した状態でデータ通信を繰り返し、データ系列のパケット誤り率がしきい値(例えば1%や0.1%に設定する)より大きい場合は、実際の雑音電力と干渉電力の和が固定値より大きいと考えられるため固定値を大きくし、データ系列のパケット誤り率がしきい値より小さい場合は、実際の雑音電力と干渉電力の和が固定値より小さいと考えられるため固定値を小さくする、という制御である。
そして、通信品質推定部505は、上りの第一無線通信路品質と、第三無線通信路品質とを推定し、基地局制御ブロック511に入力する。
506は、504の伝搬路推定結果を用いた受信ウェイトの計算である。受信ウェイトの目的は、受信した複数空間レイヤの分離と、各空間レイヤの位相補正である。受信ウェイト計算のアルゴリズムとしてはZF(Zero Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)が知られている。
507は、503で分離した複数空間レイヤのデータシンボルベクトルに対し、506で計算した受信ウェイト行列を乗算して、空間レイヤの分離と、各空間レイヤの位相補正を行う。
508は、507で空間レイヤ分割されたデータシンボルをコードワード単位にまとめ、ビット毎の対数尤度比を求め、Turbo復号またはビタビ復号を実施する。復号された結果のうち、データ部分は受信データバッファ509に格納され、制御情報は基地局制御ブロック511に入力される。本発明における制御情報としては、端末がフィードバックした下りの第一無線通信路品質と第二無線通信路品質、ならびに中継装置がフィードバックした下りの第三無線通信路品質と上りの第二無線通信路品質とがこのルートで基地局制御ブロック511へ入力される。なお、データと制御情報の区別は、当該無線通信システムが準拠する規格団体が発行する無線I/Fのプロトコルに従う。
バックホールネットワークI/F510は、基地局より上位のノード、例えばアクセスゲートウェイ、と有線接続されているバックホールネットワークに対するI/Fである。バックホールネットワークI/F510は、受信データバッファ507の上位ノードへの転送と、上位ノードから転送されるデータを送信データバッファ512に格納する。
基地局制御ブロック511は、505で得られた通信品質推定結果、および508で得られた中継装置や端末からのフィードバック情報を元に、上りパケットスケジュール、下りパケットスケジュール、および図11のフローチャートに対応する中継要否判定を実施する。パケットスケジュールのアルゴリズムとしてはプロポーショナルフェアネスが知られている。本実施例にプロポーショナルフェアネスを適用する場合、中継を要する端末に対しては第二無線通信路の通信品質、中継を要しない端末に対しては第一無線通信路の通信品質を元に瞬時伝送レートを算出する。パケットスケジュール結果、本実施例による中継要否判定結果および図26に示す中継装置や端末に対するフィードバックイネーブラ2610は、下り制御信号として符号化変調処理部513に入力される。フィードバックイネーブラは、中継装置や端末からのフィードバック量の調整に使用する。また、下りパケットスケジュール結果に従い、送信データバッファ512からデータ系列を取り込むよう符号化変調513に指示する。
符号化変調処理部513は、送信データバッファ512からのデータ系列、基地局制御ブロック511からの制御情報系列をそれぞれ符号化、変調を実施する。符号化としては、たとえば原符号化率1/3の畳み込み符号器を使用する。変調は符号化出力を2ビット束ねてQPSK、4ビット束ねて16QAM、6ビット束ねて64QAMのコンスタレーションにマッピングする。何ビット束ねるかは、511から得られる下りスケジューリング結果、およびプロトコルの規定に従う。
レイヤマップ514は、513内の符号化で出力される一連のビット系列をコードワードと呼ぶが、コードワードを形成する513出力の変調シンボル系列を複数の空間レイヤにマッピングする処理である。各変調シンボルは、特定のOFDMシンボル、サブキャリア、空間レイヤに配置される。配置のルールは、プロコトルで規定されているため、同規定に従った配置位置を一通り格納したメモリ(例えば、図28のメモリ2830)を参照するか、配置ルールをアルゴリズム化した論理回路により配置先を特定する。以上の配置により、参照信号シンボルが格納されるOFDMシンボル、サブキャリア、空間レイヤは空白シンボルとなっている。空白シンボルはI成分Q成分共に0のシンボルである。
プレコーディング処理部515は、514のレイヤマップ出力を複数空間レイヤ分をベクトルとして扱い、プレコーディング行列を送信重み行列として乗算する処理である。プレコーディング処理部515は、これを全てのOFDMシンボルおよびサブキャリアに関して実行する。
516は、下り参照信号シンボル系列を生成するブロックである。参照信号シンボル系列としては、参照信号シンボル系列間の相互相関が低いM系列、PN系列、ウォルシュ系列を元に生成したBPSKシンボル系列やQPSKシンボル系列、またはZadoff−Chu系列を用いるのが望ましい。各種系列生成アルゴリズムは広く知られているため、その生成アルゴリズムを論理回路(例えば図7)で実現するか、予め生成される系列全通りの出力をメモリに格納しておき、テーブル引きすることで実現できる。
参照シンボル挿入処理部517は、515のプレコーディング出力において空白シンボルとなっている部分に、516で生成した参照信号シンボル系列を挿入する。図6Aから図6Dに示した例に従い、参照シンボル挿入処理部517は、参照信号シンボル系列を挿入する。この挿入処理が完了したらOFDMシンボル毎に518でIFFT処理を実施し、無線フロントエンド501に出力する。
以上の501、510を除いた部分は、基地局が有するハードウェアである論理回路や、DSP、MPUなどのプロセッサが実行してもよい。
図27は、基地局101の装置構成例である。基地局101は、プロセッサ2710と、データバッファ2720と、メモリ2730を有し、ぞれぞれ内部バス2750で接続されている。さらに、ネットワークI/Fとして、バックホールネットワークI/F501、無線フロントエンド501を有する。プログラムやテーブルを格納する記憶装置2760を有する。
記憶装置2760には、中継要否判定プログラム2762、通信路品質推定プログラム2764、参照信号処理プログラム2766、変換テーブル2769及び状態管理テーブル2768が格納されている。なお、本願明細書で開示される基地局における処理に対応されるプログラムは、図示されていないものも格納されている。
中継要否判定プログラム2762は、図11のフローチャートに示される処理が定義され、図13の基地局制御ブロックが実行する処理に対応する。
通信路品質推定プログラム2764は、図5の304及び305に対応し、また図13の通信品質推定部505に対応する。
参照信号処理プログラム2766は、図1の参照シンボル系列生成部516及び参照シンボル挿入部517で行う処理に対応する。
状態管理テーブル2768は、図12A、図12Bに示されるテーブルであり、端末ごとに、通信路品質と中継装置の要否とが管理されている。
変換テーブル2769は、通信路品質を求めるときに参照される図21に示される変換テーブルである。
プロセッサ2710は、記憶装置2760に格納されているプログラムを実行する。また、プロセッサ2710は、図13の基地局制御ブロックに対応する処理等を実行し、テーブルを参照し、無線通信を制御する。
データバッファ2720は、図13の509や512に対応する。メモリ2730は、プロセッサ2710が処理するプログラムが展開され、処理に必要なデータを保持する。
無線フロントエンド501は、図13と同様で、中継装置や端末装置との無線信号の送受信を行うインターフェースである。バックホールネットワークI/Fは、図13と同様で、他の基地局間や基地局の上位のノードに接続されるネットワークに接続するインターフェースである。
図14は、中継装置の構成例である。
601は基地局側の無線フロントエンド、602は端末側の無線フロントエンドである。構成部品は501と同じである。
下りベースバンド処理部603は、601から入力された下りベースバンド信号を一旦復号し、再度符号化して端末側無線フロントエンド602へ出力する。ベースバンド信号処理の途中段階で、中継装置制御ブロック604と制御情報をやり取りする。
上りベースバンド信号処理部605は、端末側無線フロントエンド602から入力された上りベースバンド信号を一旦復号し、再度符号化して基地局側フロントエンド601へ出力する。ベースバンド信号処理の途中段階で、中継装置制御ブロック604と制御情報をやり取りする。
中継装置制御ブロック604とベースバンド処理部603、605との間では、通信品質情報と中継要否判定結果をやりとりする。
図15は、本実施例による中継装置における下り通信に関する機能ブロック構成例である。
基地局側無線フロントエンド601から入力された下り受信ベースバンド信号に対し、606でFFT処理を実施し、データ参照信号分離部607は、データシンボルと参照信号シンボルとの分離を行う。
データ参照信号分離部607で分離した参照信号シンボルに対し、伝搬路応答指定部608で下り第三無線通信路の応答推定を行う。図13の基地局における504と同様、伝搬路応答の推定には、送受信側両方(基地局と中継装置)において既知の参照信号シンボルを使用する。参照信号シンボルが時間と共に変化しないのであれば、固定かつ既知の参照信号シンボル系列をメモリに保持しておき、時間と共に変化する場合は、送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従い、参照信号シンボル系列を生成する。
通信品質推定部609は、608の伝搬路推定結果に基づいて下り第三無線通信路の通信品質を推定する。具体的な通信品質推定方法は505と同じである。ここで得られた推定結果は、中継装置制御ブロック604へ入力される。図4の206に対応する。
610と611は、それぞれ506と507と同様である。
612は、611で空間レイヤ分割されたデータシンボルをコードワード単位にまとめ、ビット毎の対数尤度比を求め、Turbo復号またはビタビ復号を実施する。復号された結果のうち、データ部分は下り受信データバッファ613に格納され、制御情報は中継装置制御ブロック604に入力される。本発明における制御情報としては、基地局が511で生成した中継要否判定結果およびフィードバックイネーブラがこのルートで中継装置制御ブロック604へ入力される。なお、データと制御情報の区別は、当該無線通信システムが準拠する規格団体が発行する無線I/Fのプロトコルに従う。
中継装置制御ブロック604は、下り通信に関連する処理としては、通信品質指定609で推定された下り第三無線通信路の通信品質を入力し、上り制御信号に埋め込む処理と、612から基地局が生成した中継要否判定結果とフィードバックイネーブラを入力し、中継要否判定結果に従い614に中継するデータ系列のみ符号化などを実施するよう指示する中継制御処理を行う。図4の215、216及び217に対応する。
中継制御処理は、図10のフォーマットの中継要否フラグビットマップ1020を用いて中継要否判定結果から分かる端末毎の中継実施/不実施の区別と、下りデータ系列毎固有に付加される制御情報(パケット毎の符号化率、変調方式や周波数リソースの割当て情報が格納されている)の宛先端末とを照合し、中継を実施する端末宛のデータ系列のみを再度符号化以降の処理を実施するよう制御する。一方、図9のフォーマットの場合、中継制御処理は、データ系列毎固有に付加される制御情報の中に中継要否判定結果を示す中継要否フラグ940が埋め込まれているため、これが1であれば中継を実施し、0であれば中継を実施しない。なお、中継を実施しないデータ系列は、下り受信データバッファ613からクリアする。
符号化変調部614は、下り受信データバッファ613からのデータ系列を、同データ系列固有の制御情報に従い符号化、変調を実施する。本実施例では、この対象となるデータ系列は、中継装置制御ブロック604から指示されたものを例にしている。
レイヤマップ615は、処理内容は514と同様であるが、さらに、上記データ系列固有の制御情報が示すサブキャリアやOFDMシンボルに変調シンボルを配置する。
プレコーディング部616は、615のレイヤマップ出力を複数空間レイヤ分をベクトルとして扱い、プレコーディング行列を送信重み行列として乗算する処理を行う。プレコーディング部616は、これを送信対象のOFDMシンボルおよびサブキャリアに関して実行する。
参照シンボル系列生成部617は、下り参照信号シンボル系列を生成するブロックである。516で生成した参照信号シンボル系列と同じでも別でも良いが、基地局の参照信号シンボル系列と同じOFDMシンボル、サブキャリアに参照信号シンボル同士をオーバーラップさせる場合は、可能な限り相互相関が低い別の系列を使用する。参照信号シンボル系列の生成方法は516と同様である。
参照シンボル挿入部618は、プレコーディング部616のプレコーディング出力において空白シンボルとなっている部分に、参照シンボル系列生成部617で生成した参照信号シンボル系列を挿入する処理を行う。図6Aから図6D、ならびに図7Aから図7Cに示した実施例に従い参照信号シンボル系列を挿入する。この挿入処理が完了したらOFDMシンボル毎に619でIFFT処理を実施し、端末側無線フロントエンド602に出力する。
以上の601、602を除いた機能ブロック602ないし619は、中継装置のハードウェアである論理回路や、DSP、MPUなどのプロセッサが実行してもよい。
図16は、中継装置の上り通信の実施例である。
602から入力された上り受信ベースバンド信号に対し、620でFFT処理を実施し、621でデータシンボルと参照信号シンボルとの分離を行う。
621で分離した参照信号シンボルに対し、622で上り第二無線通信路の応答推定を行う。504と同様、伝搬路応答の推定には、送受信側両方(端末と中継装置)において既知の参照信号シンボルを使用する。参照信号シンボルが時間と共に変化しないのであれば、固定かつ既知の参照信号シンボル系列をメモリに保持しておき、時間と共に変化する場合は、送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従い、参照信号シンボル系列を生成する。
623は622の伝搬路推定結果に基づいて上り第二無線通信路の通信品質を推定する。図5の305に対応する。具体的な通信品質推定方法は505と同じである。ここで得られた推定結果は、中継装置制御ブロック604へ入力される。
624と625は、それぞれ506と507と同様である。
626は、625で空間レイヤ分割されたデータシンボルをコードワード単位にまとめ、ビット毎の対数尤度比を求め、Turbo復号またはビタビ復号を実施する。復号された結果のうち、データ部分は上り受信データバッファ627に格納され、制御情報は中継装置制御ブロック604に入力される。なお、データと制御情報の区別は、当該無線通信システムが準拠する規格団体が発行する無線I/Fのプロトコルに従う。
中継装置制御ブロック604は、上り通信に関連する処理として、623から入力された上り第二無線通信路の通信品質と、609で推定された下り第三無線通信路の通信品質とを、図8Bや図8Cの実施例のように上り制御信号に埋め込む処理を行う。図15で示した下り通信において604に入力されたフィードバックイネーブラの指示が、中継装置からのフィードバック禁止を示している場合、実施しない。つまり上り制御信号への埋め込み処理は行わない。
また、中継装置制御ブロック604は、612から入力された基地局からの中継要否判定結果に従い628に中継するデータ系列のみ符号化などを実施するよう指示する処理がある。後者の処理は、図10の実施例に従うと、中継要否判定結果から分かる端末毎の中継実施/不実施の区別と、上りデータ系列毎固有に付加される制御情報の発信元端末とを照合し、中継を実施する端末宛のデータ系列のみを再度符号化以降の処理を実施するよう制御する。なお、中継を実施しないデータ系列は、上り受信データバッファ627からクリアする。図5の316、317及び318が対応する。
628は、上り受信データバッファ627からのデータ系列を、同データ系列固有の制御情報に従い符号化、変調を実施する。ただし、この処理を実施するデータ系列は604から指示されたものに限定する。
レイヤマップ629は、処理内容は514と同様であるが、さらに上記データ系列固有の制御情報が示すサブキャリアやOFDMシンボルに変調シンボルを配置する。
プレコーディング部630は、629のレイヤマップ出力を複数空間レイヤ分をベクトルとして扱い、プレコーディング行列を送信重み行列として乗算する処理である。これを全てのOFDMシンボルおよびサブキャリアに関して実行する。
参照シンボル挿入部631は、上り参照信号シンボル系列を生成するブロックである。図17の716で生成する参照信号シンボル系列と同じでも別でも良いが、基地局の参照信号シンボル系列と同じOFDMシンボル、サブキャリアに参照信号シンボル同士をオーバーラップさせる場合は、可能な限り相互相関が低い別の系列を使用する。参照信号シンボル系列の生成方法は516と同様である。
632は、630のプレコーディング出力において空白シンボルとなっている部分に、631で生成した参照信号シンボル系列を挿入する処理である。図6Aから図6D、ならびに図7Aから図7Cに示した実施例に従い参照信号シンボル系列を挿入する。この挿入処理が完了したらOFDMシンボル毎に633でIFFT処理を実施し、601の基地局側無線フロントエンドに出力する。
以上の601、602を除いた部分は、論理回路や、DSP、MPUなどのプロセッサで実現することができる。
図28は、中継装置103の装置構成例である。中継装置103は、プロセッサ2810と、データバッファ2820と、メモリ2830を有し、ぞれぞれ内部バス2850で接続されている。さらに、ネットワークI/Fとして、基地局無線フロントエンド601及び端末側無線フロントエンド602を有する。また、中継装置103は、プログラムやテーブルを格納する記憶装置2860を有する。
記憶装置2860には、中継制御プログラム2862、通信路品質推定プログラム2864、参照信号処理プログラム2866及び中継要否情報2868が格納されている。なお、本願明細書で開示される中継装置103における処理に対応されるプログラムは、図示されていないものも格納されている。
中継制御プログラム2862は、図4の215、216及び217に対応し、図5の317、318及び319に対応する処理が定義されるプログラムである。また、中継制御プログラム2862がプロセッサ2810に読み込まれることにより、図15や図16の中継装置制御ブロック604に対応する。通信路品質推定プログラム2864は、図4の206、図5の305に対応し、また図15や図16の通信品質推定部609、623に対応する。
参照信号処理プログラム2866は、図14や図15の参照シンボル系列生成部617、631及び参照シンボル挿入部618、632で行う処理に対応する。また、参照信号処理プログラム2866は、図4の202や図5の303のコマンドを送る処理に対応する。
中継要否情報2868は、図9や図10に示されるような基地局と端末間の通信について、中継装置による中継要否が管理されている。
プロセッサ2810は、記憶装置2860に格納されているプログラムを実行する。また、プロセッサ2810は、プログラムを実行し、中継装置制御ブロック604に対応する処理等を実行し、中継要否情報2868を参照し、無線通信を制御する。
データバッファ2820は、図15の613や図16の627に対応する。メモリ2830は、プロセッサ2810が処理するプログラムが展開され、処理に必要なデータを保持する。
無線フロントエンド601及び602は、図14と同様で、基地局や端末装置との無線信号の送受信を行うインターフェースである。
図17は、端末における機能ブロック構成例を示す。
無線フロントエンド701は、構成部品は501の構成に対応する。
下り受信ベースバンド信号に対し、702でFFT処理を実施し、データ参照信号分離部703は、データシンボルと参照信号シンボルとの分離を行う。
データ参照信号分離部703で分離した参照信号シンボルに対し、伝搬路応答推定部704は、下り第一無線通信路および下り第二無線通信路の応答推定を行う。伝搬路応答の推定には、送受信側両方(端末と基地局、中継装置と端末)において既知の参照信号シンボルを使用する。参照信号シンボルが時間と共に変化しないのであれば、固定かつ既知の参照信号シンボル系列をメモリに保持しておき、時間と共に変化する場合は、送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従い、参照信号シンボル系列を生成する。
また、同一の時間周波数に相互相関の低い複数の参照信号シンボル系列が多重されている場合、つまり基地局と中継装置が異なる参照信号シンボル系列を同一の時間周波数に重ねている場合、図18に示すように、受信した参照信号シンボル系列を中段のシフトレジスタ810に右側から順番に詰め込み、同様に複素共役をとった既知の第一参照信号シンボル系列を上段のレジスタ801に右側から順番に詰め、複素共役をとった既知の第二参照信号シンボル系列を、下段のレジスタ820に右側から順番に詰める。
その状態で、図示の通り、加算機803と乗算器802とが、乗算と加算を実施することで、第一参照信号シンボルに対する伝搬路応答と、第二参照信号シンボルに対する伝搬路応答とを得る。ここで、受信参照信号シンボル系列は、データ参照信号分離部703から入力され、既知の第一参照信号シンボルおよび第二参照信号シンボルは、伝搬路応答推定部704内の固定パタンを記録するためのメモリ(図29のメモリ2930)から、または伝搬路応答推定部704内で送信側と受信側で共有された参照信号シンボル系列のルールに従って生成した結果を入力する。
通信品質推定部705は、伝搬路応答推定部704の伝搬路推定結果に基づいて通信品質を推定する。下り第一無線通信路と下り第二無線通信路と各々の通信品質を推定する。通信品質推定の方法は505と同じである。図4の204及び205に対応する。
伝搬路応答推定部705で推定された上りの下り第一無線通信路品質と、下り第二無線通信路品質は、端末制御ブロック711に入力される。
706と707は、それぞれ506、507と同様である。
708は、707で空間レイヤ分割されたデータシンボルをコードワード単位にまとめ、ビット毎の対数尤度比を求め、Turbo復号またはビタビ復号を実施する。復号された結果のうち、データ部分は受信データバッファ709に格納され、制御情報は基地局制御ブロック711に入力される。制御情報としては、基地局における制御ブロック511が発行するフィードバックイネーブラ(図26)が711へ入力される。なお、データと制御情報の区別は、当該無線通信システムが準拠する規格団体が発行する無線I/Fのプロトコルに従う。
アプリケーション710は、端末で使用するウェブやメールなどのアプリケーションを操作させるためのプロセッサおよび画面やキーボードなどのユーザインターフェースである。アプリケーションから入力されるデータは送信データバッファ712に格納され、基地局が生成したスケジューリング情報に従って送信される。
端末制御ブロック711は、705で得られた通信品質推定結果、および708で得られた上りパケットスケジュール情報に従った符号化変調713の駆動、および705から入力された通信品質推定結果と、708から入力された中継要否判定結果を上り制御情報として713に入力する処理、さらには、アプリケーション710により上りデータ系列が生成され、送信データバッファ712にデータがある場合に、基地局に上りスケジューリング情報を送ってもらうためのスケジューリングリクエストも制御情報として符号化変調713に入力する。ただし、708から入力されたフィードバックイネーブラ(図26の2610)が、端末からのフィードバック禁止を示している場合、705から入力された通信品質推定結果の上り制御情報として713に入力する処理は実施しない。
符号化変調713は、送信データバッファ712からのデータ系列、端末制御ブロック711からの制御情報系列をそれぞれ符号化、変調を実施する。符号化方法や変調方法は513と同様である。
714と715は、それぞれ514と515と同様である。
参照シンボル系列生成部716は、上り参照信号シンボル系列を生成するブロックである。参照信号シンボル系列の生成方法は516と同様である。
参照シンボル挿入部717は、プレコーディング部715のプレコーディング出力において空白シンボルとなっている部分に、716で生成した参照信号シンボル系列を挿入する処理である。図6Aから図6Dに示した実施例に従い参照信号シンボル系列を挿入する。この挿入処理が完了したらOFDMシンボル毎に718でIFFT処理を実施し、701の無線フロントエンドに出力する。
以上の701、710を除いた部分は、論理回路や、DSP、MPUなどのプロセッサで実現することができる。
図29は、端末102の装置構成例である。
端末102は、プロセッサ2910と、データバッファ2920と、メモリ2930を有し、ぞれぞれ内部バス2950で接続されている。さらに、ネットワークI/Fとして、端末102は、無線フロントエンド701を有する。また、端末102は、プログラムやテーブルを格納する記憶装置2960を有する。
記憶装置2960には、通信路品質推定プログラム2964、参照信号処理プログラム2966が格納されている。また、端末102は、図4の基地局信号受信処理215や中継装置信号受信処理219で、受信したデータを記憶装置2960またはメモリ2930に格納してもよい。なお、本願明細書で開示される端末102における処理に対応されるプログラムは、図示されていないものも格納されている。
通信路品質推定プログラム2964は、図4の204及び205に対応し、また図17の通信品質推定部705に対応する。
参照信号処理プログラム2966は、図17の参照シンボル系列生成部716及び参照シンボル挿入部717で行う処理に対応する。また、参照信号処理プログラム2966は、図5の301や302のコマンドを送る処理に対応する。
プロセッサ2910は、記憶装置2960に格納されているプログラムを実行する。また、プロセッサ2910は、プログラムを実行し、端末制御ブロック711に対応する処理等を実行し、無線通信を制御する。
データバッファ2920は、627や図17の709,712に対応する。メモリ2930は、プロセッサ2910が処理するプログラムが展開され、処理に必要なデータを保持する。
無線フロントエンド701は、図14と同様で、基地局や端末装置との無線信号の送受信を行うインターフェースである。
以上の実施例により、中継装置を導入することによるシステム全体の性能のロスを抑え、性能のゲインを高めることができる。例えば、セルの平均周波数利用効率を高めることができる。
上述の実施例の変形例1として、以下、1基地局に対して複数の中継装置が存在する場合の例を示す。
図30は、1基地局101と、複数の中継装置103−1,103−2とを有する無線通信システムの構成例を示す。基地局101に対し、中継装置103が複数接続し、さらに各中継装置103との通信が可能な端末102が複数台存在する。各端末102は基地局101との直接通信も可能である。この時、基地局101−端末102との間の第一無線通信路104は、中継装置103の数が1台の場合と変わらず存在するが、中継装置103−端末102との間の第二無線通信路105は、中継装置103個別に各端末(102−1から102−4)との間に定義される。同様に、基地局101−中継装置103との間の第三無線通信路106は、中継装置103毎に定義される。つまり、基地局101と各端末102との間の無線通信ルートとして、基地局101−端末102間の直接的なルートと、中継装置103毎の中継ルートが存在することとなり、中継装置103が複数存在する場合は、端末102毎に3種類以上のルートからなルートを選択する必要がある。
このような1基地局に対して複数の中継装置が存在する無線通信システムにおいては、中継装置の運用方法として2種類あり、一つ目は、各中継装置を個別に制御する例である。二つ目は、複数の中継装置を論理的に1台の中継装置とみなし、全ての中継装置に対して同一の制御をする方法である。以下、本変形例の処理の詳細を述べる。
図31は、複数中継装置を導入した場合のシステム全体の処理フローである。ステップ1001からステップ1005までは図3の実施例と同じステップなので説明を省略する。ステップ1003とステップ1004との間に、端末毎に中継装置を選択するステップ1006を挿入している。ステップ1005では端末毎に、ステップ1006で選択した中継装置を使用した中継通信を行うか、基地局と端末が直接通信するかを判定する。ステップ1006による中継装置判定方法の詳細は、図37及び図38を用いて後述する。
図32は、1基地局に対して複数の中継装置が存在する無線通信システム下り通信の実施例である。
まず、基地局101は、端末102に対し、第一無線通信路(基地局−端末間)の通信路品質を推定するための参照信号201を送信し、中継装置103に対し第三無線通信路(基地局−中継装置間)の通信路品質を推定するための参照信号203を送信する。参照信号203は、基地局101がブロードキャストする信号であり、複数の中継装置103間で共通の参照信号とする。
中継装置1及び2(103)は、上記参照信号203を用いて中継装置個別の第三無線通信路の通信品質推定で品質推定を行い(206)、推定結果を基地局へフィードバックする(209)。このとき、フィードバックの送信元となる中継装置を特定できるよう、図8Bに示すフィードバックフォーマットに従って、例えば、CQI860の値を含む推定結果を、中継装置それぞれから基地局に送信し、フィードバックする。また、中継装置103は、中継装置103個別の参照信号203を、端末102に向け、第二無線通信路の通信路品質を推定するためにブロードキャストする。中継装置固有の参照信号生成方法としては、図7で示した実施例に従い、セル固有の識別番号を中継装置毎に変えれば良い。同じく参照信号の配置方法としては、図6Dに示した方法で、複数の中継装置が送信する参照信号をオーバーラップさせればよい。ただし、プロトコルとして規定すれば、各中継装置が送信する参照信号を必ずしもオーバーラップさせる必要は無く、かつオーバーラップさせていない状態であれば中継装置毎に異なる参照信号を生成する必要も無く、同一の参照信号を使用してもよい。
端末102は、参照信号201を受信し、その参照信号201を使用して第一無線通信路の通信路品質推定204を行う。さらに端末102は、中継装置1及び2それぞれから固有の参照信号202−1及び202−2を受信し、中継装置それぞれに対応する参照信号202用いて、中継装置ごとに第二無線通信路の通信路品質推定205を行う。端末102は、通信路品質推定204または206による通信路品質の推定結果をMACレイヤで、無線により基地局101にフィードバックする。ここでフィードバックするのは、第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、中継装置個別の第二無線通信路の通信路品質推定結果208である。
基地局101は、端末102と中継装置103から無線でフィードバックされた第一無線通信路の通信路品質推定結果207と、第二無線通信路の通信路品質推定結果208と、第三無線通信路の通信路品質推定結果209とを用いて、まず端末102毎に中継装置の選択を行う(224)。
基地局101は端末毎に中継装置を選択した後に、同選択結果に基づき端末102毎に中継装置103による中継通信を実施するか否かを判定する(210)。中継要否判定結果211は、MACレイヤ、またはRRCレイヤで、無線ネットワークを介して中継装置103に転送される。以降の動作は図4と同様のため説明を省略する。
図33に、第一無線通信路の通信路品質推定結果207と第二無線通信路の通信路品質推定結果208のフィードバックフォーマットの例を示す。第一無線通信路の通信路品質推定結果207については図8Aと同様だが、第二無線通信路の通信路品質推定結果208は中継装置毎に生成されるため、通信路品質推定結果毎に、その通信路品質推定結果に対応する中継装置のIDが付加され、通信路品質推定結果と中継装置IDとが対応付けられる。
図32の中継装置選択224の処理について詳細に説明する。具体的には次の式(数12)に示す評価関数が最大となる中継装置rを選択する。
kは端末のインデックス、rは中継装置のインデックスである。CA(k,r)は端末kと中継装置rとの間の第二無線通信路のキャパシティ、CD(k)は基地局と端末kとの間の第一無線通信路のキャパシティ、CB(r)は基地局と中継装置rとの間の第三無線通信路のキャパシティをそれぞれ表す。
中継装置選択224の詳細について、端末毎の中継装置選択方法の第一例を示す図37を用いて説明する。図37は、基地局101が行う中継装置選択224の詳細を示したフローチャートである。ステップ1201では数12が最大となる中継装置のインデックスRmaxを探索する。中継装置に関するループが完了した時点のRmaxが示す中継装置を、当該端末kが中継通信で使用する中継装置として選択する(ステップ1202)。中継装置選択の後段に続く中継要否判定を実施する際、端末毎にそれぞれ1つの第一無線通信路品質、第二無線通信路品質、および第三無線通信路品質を参照するが、基地局は第二無線通信路品質と第三無線通信路品質は中継装置毎に持っている。この中継装置選択により、端末毎に第二無線通信路品質と第三無線通信路品質の代表値を、選択した中継装置に関する第二無線通信路品質と第三無線通信路品質の値とする。
次に、基地局101が行う、中継装置選択方法の第二例を示す図38を用いて、基地局101が行う中継装置選択224の詳細を説明する。ステップ1203では、数12の評価関数が正になるかどうかを判定している。もし評価関数値が0または負の場合は次の中継装置rに関して同様の判定を行う。評価関数値が正の場合は、当該中継装置rが当該端末kにとって、基地局と直接通信するよりも、中継装置r経由で通信した方がシステム性能のゲインが得られると判定されたことに相当する。ステップ1203で評価関数値が正となった中継装置のグループの中から、ステップ1204で当該端末kにとってな中継装置Rmaxを選択する。Rmaxは数13が最大値となるrである。
数13の分母N(r)は、当該端末kが中継装置rを選択すると仮定した上で当該中継装置rを選択している端末の総数である。同じく分子CA(k,r)は端末kが中継装置rを使用したときの第二無線通信路の通信品質である。つまり、数13の評価関数は、端末kが中継装置rを使用したときの第二無線通信路の通信品質を、中継装置rを使用すると見込まれる端末数で除算したものであり、端末kに按分されると見込まれる実質的な第二無線通信路の通信品質である。言い換えると、中継装置を使用する端末が多いほど、端末あたりに期待されるスループットが低下するため、数13の評価関数は端末当りに期待されるスループットを示し、これが最大値となる中継装置を選択するということは、端末にとって最もスループットを確保しやすい中継装置を選択することに相当する。
なお、複数の中継装置を論理的に1台の中継装置とみなし、全ての中継装置に対して、基地局が同一の制御をする場合は、以下の点が図32と異なる。
相違点一点目は、中継装置固有の参照信号202−1と202−2が、同一の参照信号となる点である。端末102は、第二無線通信路の通信路品質を推定する際(205)、複数の中継装置103が送信する同一の参照信号202−1と202−2の重畳信号に対する通信路品質推定となる。よって、端末102からの第二無線通信路品質フィードバック208は、第一無線通信路品質フィードバック207も併せて図8Aの形式に従って、フィードバック207が行われる。
相違点二点目は、中継装置選択224の処理が異なることである。基地局101が中継装置選択224を実施する際、端末102からフィードバックされる第二無線通信路品質はどの中継装置を経由しているかが不明のため、中継装置103からフィードバックされる第三無線通信路品質と数12のように結び付けることができない。具体的には、数12のCA(k,r)について、r毎の値がフィードバックされないため、数12の第二項であるCA(k,r)/CB(r)が正しく計算できない。このとき、数12に相当する評価関数値は次の式(数14)の通りとなる。
この式の第二項は、端末毎のキャパシティであるCA(k)を中継装置毎のキャパシティであるCB(r)を除算する形となっているが、端末kがどの中継装置rで通信するかが不明のため、第三無線通信路に対する第二無線通信路のキャパシティ比率、つまり第二無線通信路でデータ通信する際に第三無線通信路でどの程度無線通信リソースを余分に消費するかを示す本項が正しく計算できない。従ってこの場合、端末がどの中継装置経由で通信しても最低限保証される第三無線通信路の通信路品質を参照することにする。具体的には次の式(数15)の通りである。
この式の第二項の分母は、基地局と接続する全中継装置に関する第三無線通信路のキャパシティの最小値を示す。つまり、端末毎の中継装置選択の方法は、全ての端末に関して各中継装置毎に推定された第三無線通信路品質が最小値となる中継装置を選択することに相当する。実際は全ての中継装置が、中継要否判定により中継が必要と判断された全ての端末に関する中継通信を行う。
相違点三点目は、中継要否判定結果211−1と211−2がある複数の中継装置に対して共通となる点である。これに伴い、各中継装置が再送信する下り信号218−1と218−2も同一となる。
図34は、1基地局に対して複数の中継装置が存在する無線通信システム上り通信の例である。
端末102は、基地局101に対し、第一無線通信路の通信路品質を推定するための参照信号301を送信し、複数の中継装置103に対し第二無線通信路の通信路品質を推定するための参照信号302を送信する。端末102は、参照信号302を複数の中継装置103に対してブロードキャストしてもよい。
中継装置103それぞれは、第三無線通信路の通信路品質を推定するための中継装置個別の参照信号303−1、303−2を基地局101に送信する。中継装置103は、端末102から参照信号302を受信し、その参照信号302を使用して第二無線通信路の通信路品質推定305−1、305−2を実施する。中継装置1及び2(103)は、第二無線通信路の通信路品質推定結果308−1、308−2を基地局101へMACレイヤで無線によりフィードバックする。中継装置103がフィードバックする際、基地局101がどの中継装置からのフィードバックかを識別するために、図8Cのようにフィードバックフォーマットに従って、推定結果に中継装置のID820を付加したものを、中継装置それぞれから基地局に送信する。
基地局101は、参照信号301を受信し、その参照信号301を使用して第一無線通信路の通信路品質推定304を行う。また、基地局101は、中継装置1及び2それぞれから中継装置固有の参照信号303−1、303−2を受信し、その参照信号303−1、303−2をそれぞれ使用して中継装置毎の第三無線通信路の通信路品質推定306を実施する。また、基地局101は、中継装置103それぞれからフィードバックされた第二無線通信路品質推定結果308−1、308−2を無線ネットワークを介して受信する。
そして、基地局101は、304と306で推定した第一無線通信路の通信路品質と、第三無線通信路の通信路品質と、第二無線通信路の通信路品質推定結果308とを用いて、端末102毎に中継装置の選択を行う(321)。中継装置の選択方法は図32の実施例で説明した通りである。
基地局101は、端末毎に中継装置を選択した後に、同選択結果に基づき端末102毎に中継装置103による中継通信を実施するか否かを判定する(310)。中継要否判定結果311は、MACレイヤ、またはRRCレイヤで、無線ネットワークを介して中継装置103に転送される。以降の動作は図5と同様のため説明を省略する。
なお、図34に示す実施例で、複数の中継装置を論理的に1台の中継装置とみなし、全ての中継装置に対して同一の制御をする場合、以下の点が図34の実施例と異なる。
相違点は、中継要否判定結果311−1と311−2が複数の中継装置に対して共通となる点である。基地局101は、中継装置選択321で端末毎に中継装置を選択し、選択された中継装置102を使用すること前提に310で端末毎の中継要否判定を実施する。ただし、ある端末の無線通信を実際に中継する場合は、全ての中継装置で当該端末に対する中継を実施する。この方法は、中継装置個別に中継制御を実施する場合と比較し、中継要否判定結果の通知に伴うオーバーヘッドを低減できる。なお、中継要否判定結果311−1と311−2が全中継装置に対して共通とすることに伴い、中継装置が再送信する上り信号319−1と319−2は、全中継装置が中継すべき端末からの上り信号を全てデコードできた理想的な場合を仮定すると、同一の信号となる。ただし実際は、中継装置毎にデコードに失敗する端末の信号が存在するため、全ての中継装置が必ずしも同一信号を出力するとは限らない。
図35は、複数の中継装置が1台の基地局に所属する場合の、基地局の構成例である。図13の実施例と大部分が共通するため、図13との相違点についてのみ説明する。
伝播路応答推定部504は、503で分離した参照信号シンボルに対し上り第一無線通信路および上り第三無線通信路の応答推定を行う。上り第三無線通信路については中継装置毎に推定を実施する。
通信品質推定処理部505は、504の伝搬路推定結果に基づいて通信品質を推定する。図11の304や306に対応し、通信品質推定処理部505は、上り第一無線通信路と上り第三無線通信路と各々の通信品質を推定する。上り第三無線通信路の通信品質推定は中継装置個別に実施され、上り第一無線通信路の通信品質と共に基地局制御ブロック511に入力する。
復調復号処理部508は、507で空間レイヤ分割されたデータシンボルをコードワード単位にまとめ、ビット毎の対数尤度比を求め、Turbo復号またはビタビ復号を実施する。復号された結果のうち、データ部分を受信データバッファ509に格納し、制御情報を基地局制御ブロック511に入力する。制御情報としては、例えば、端末がフィードバックした下りの第一無線通信路品質と、中継装置毎端末毎の下り第二無線通信路品質(図33)、ならびに中継装置がフィードバックした中継装置個別の通信路品質のうち下りの第三無線通信路品質(図8B)と、中継装置毎端末毎の上りの第二無線通信路品質(図8C)とである。これらの制御情報が、基地局制御ブロック511へ入力される。
基地局制御ブロック511は、505で得られた通信品質推定結果、および508で得られた中継装置や端末からのフィードバック情報を元に、上りパケットスケジュール、下りパケットスケジュール、および図11のフローチャートに対応する中継要否判定を実施する。ただし、図31に示した通り、中継要否判定を実施する前に、端末毎にな中継装置を選択する(519)。519における端末毎に、中継装置を選択する選択方法は図32の実施例に記載している。519はファームウェアとしてDSPやMPUなどで実現することができる。513に渡す中継要否判定結果は、中継装置ごとに対応する結果であっても複数の中継装置共通の結果としても良い。
図36は、本発明による無線通信システムにおいて、複数の中継装置が1台の基地局に所属する場合の、基地局101の装置構成例である。図27の実施例と大部分が共通であるが、 さらに、図32の中継装置選択224や図32の中継装置選択321に対応する、記憶装置2760に、端末毎に、複数の中継装置からいずれかの中継装置を選択するためのプログラム2770が格納される。
以上、1基地局に対して複数の中継装置が存在する場合の実施例を示した。以下、端末毎に継装置を選択する前に、中継装置の絞込みを行う実施例について説明する。中継装置の絞込みを中継装置選択前に行うことで、中継装置選択に伴う演算量削減の効果がある。
図39は、中継装置選択前に中継装置の絞込み処理を行うフローである。ステップ1001からステップ1006までは図3および図31の実施例と同じステップなので説明を省略する。ステップ1003とステップ1006との間に、端末毎に選択する中継装置の絞り込み処理を行うステップ1007を挿入している。ここでは、端末と中継装置それぞれの位置情報、または位置情報に準ずる基準で、しきい値判定により端末毎に選択される中継装置の候補を絞り込む。ステップ1006では、端末毎にステップ1007で絞り込まれて生き残った中継装置を対象に、図32、図37、または図38に示す方法で端末毎にな中継装置の選択を行う。
図40は、無線通信システムにおいて、複数の中継装置が1台の基地局に所属し、かつ中継装置選択前に中継装置を絞り込む場合の、基地局の構成例である。図13および図35の実施例と大部分が共通するため、図13および図35との相違点についてのみ説明する。
相違点は、中継装置選択519の前に中継装置絞込520のブロックを挿入した点と、中継装置絞込ブロック520が、参照する中継装置位置情報バッファ521を追加した点である。中継装置絞込ブロック520は、端末と中継装置との位置情報に基づく中継装置絞込と、端末が送信する無線信号の中継装置での受信強度に基づく中継装置絞込との2通りの実現方法があるため、以下で各々の場合について説明する。
第一の絞込処理実現方法である端末と中継装置との位置情報に基づく中継装置絞込は、端末の位置情報と中継装置の位置情報から端末と中継装置との間の地理的な距離を計算し、同距離に対するしきい値判定により中継装置選択の候補に残すか外すかを決定する。例えば、距離が200mを下回れば候補に残し、下回らなければ候補から外す。
この絞込処理で必要な情報は、判定用のしきい値と、端末の位置情報と、中継装置の位置情報である。これらのうち、判定用のしきい値と中継装置の位置情報は基地局起動時の初期設定により取得する。中継装置の位置情報は中継装置位置情報バッファ521に格納する。端末の位置情報は、例えば端末に搭載されたGPS(Global Positioning System)により取得し、図32の端末からのフィードバック情報207または208、または図34の端末からのフィードバック情報と共に、図17の位置測定のアプリケーション710が生成するデータ信号として基地局に通知し、図40の受信データバッファ509から上りデータチャネルに含まれていた端末の位置情報を、基地局制御部511が中継装置絞込ブロック520に入力することで取得できる。この絞込方法の実施例を図41に示す。ステップ1301で中継装置と端末との間の距離を計算し、ステップ1302で計算した距離に対するしきい値判定を行い、計算した距離がしきい値を下回る場合は当該中継装置を当該端末の選択する中継装置候補として残し(ステップ1303)、下回らない場合は当該中継装置を当該端末の選択する中継装置候補から外す(ステップ1304)。
第二の絞込処理実現方法である端末が送信する無線信号の中継装置での受信強度に基づく中継装置絞込は、図34で中継装置から基地局にフィードバックする第二無線通信路品質308を元に実現できる。308の実体は、図21に示すCQIインデックス2110であり、図示の通り周波数利用効率2140にマッピングされる。周波数利用効率2140は端末が送信する無線信号の中継装置での受信強度に対し単調増加の関係にあるため、CQIインデックスに対するしきい値を判定を実施することで目的を達成できる。例えば、しきい値としてCQIインデックス6を設定した場合、CQIインデックスが6以上の場合は当該中継装置を選択候補として残し、6未満の場合は当該中継装置を選択候補から外すという動作になる。しきい値の取得方法は、上記位置情報ベースの絞込方法と同様、基地局起動時の初期設定による。この絞込方法の実施例を図42に示す。ステップ1305で中継装置rからフィードバックされた端末kに関する上り第二無線通信路の無線通信品質を表すCQIインデックスを変数Aと定義し、ステップ1306で定義した変数Aに対するしきい値判定を行い、変数Aがしきい値を上回る場合は当該中継装置を当該端末の選択する中継装置候補として残し(ステップ1303)、上回らない場合は当該中継装置を当該端末の選択する中継装置候補から外す(ステップ1304)。
なお、図36の記憶装置2760に、端末毎に選択する中継装置の絞込みを実施するためのプログラム2771と、中継装置の位置情報テーブル2772が格納される。