本発明の第一の実施の形態に係る打込機1について、図1乃至3に基づいて説明する。打込機1は、ハウジング2と、ハンドル3と、マガジン4と、ノーズ部5と、運動変換機構6とから主に構成されている。なお、ハンドル3からマガジン4に向かう方向を下方向として上下方向を定義し、この上下方向と直交する方向でハウジング2からハンドル3及びマガジン4が延出される方向を右方向として左右方向を定義する。
ハウジング2は、第一ハウジング21と、第二ハウジング22と、ボンベ収容部23と、第一ヘッドカバー24と、第二ヘッドカバー25とから構成されている。上記構成要件のうち、第一ハウジング21及び第一ヘッドカバー24に係る構成が、打撃機構を構成し、第二ハウジング22及び第二ヘッドカバー25に係る構成が、回転力付加機構を構成する。
第一ハウジング21内には、第一シリンダ7と、第一燃焼室枠12と、ビット9と、第一ファン10と、第一ファンモータ11と、第一シリンダヘッド27と、が設けられている。
第一シリンダ7は、上側が開口した筒状に構成され筒内に第一シリンダ室71aが規定されており、筒状の軸方向が上下方向と平行になるように第一ハウジング21内に収容されている。第一シリンダ7において上側に位置する第一シリンダ室71a開口周縁部分には、第一燃焼室枠12と接触するシール部7Aが設けられている。第一シリンダ7の下側の壁部分には、第一シリンダ室71a内外を貫通し、ビット9が挿通される孔7aが形成されている。また第一シリンダ7の下部には後述の第一燃焼室枠12を下側に付勢する図示せぬバネが設けられている。
第一シリンダ7の下部には第一ハウジング21に形成された図示せぬ排気口と連通し第一シリンダ室71a内外を貫通する排気穴7bが形成されている。また排気穴7bには、第一シリンダ室71a内から外へ向う一方向にのみ排気を流通させる図示せぬ排気逆止弁が設けられている。さらに、第一シリンダ7外周において排気穴7bを覆うように図示せぬ排気カバーが設けられている。
第一シリンダ室71a内には、第一ピストン71と、バンパ72とが収容されている。第一ピストン71は上下方向と直交する断面が略円板状に形成されており、複数のシール材を介して第一シリンダ7の内周面に当接して第一シリンダ室71aを上室と下室とに区切っている。図1に示す位置が第一ピストン71の上死点となり、第一ピストン71の上面は第一シリンダ7の上面と略同一である。第一ピストン71の下面は、下方に向けて突出するボス形状を成し、このボス部分には、下方に向けて延出されるピン73Aが設けられている。ピン73Aには、下方に向けて延出される略筒状のスリーブ73Bが装着されている。
ビット9は、断面が多角形状(本実施の形態では正六角形)に形成されると共に先端(下端)がネジと係合可能に形状化されて孔7aを貫通して第一シリンダ室71a外に延出している。ビット9は、後端(上端)で、ビット9の軸芯を中心として回転可能にスリーブ73Bの筒内に装着されている。
バンパ72は、第一シリンダ室71a内において第一ピストン71の下方となる下端部に配置されている。よって第一ピストン71が下方に移動した場合であってもバンパ72により第一ピストン71と第一シリンダ室71a内面とが直接接触することが抑制される。またバンパ72は後述のネジ41を打ち込んだ際の第一ピストン71の衝撃を吸収する。バンパ72と第一ピストン71とが当接する第一ピストン71の位置が第一ピストン71の下死点となる。
第一燃焼室枠12は、上下端が開口した円筒状に構成されており、その円筒内に第一シリンダ7が配置された状態で第一シリンダ7に対して上下動可能に配置されている。第一燃焼室枠12の下部には後述のプッシュレバー51と接続される図示せぬ第一連結部材が一体に接続されている。よって第一燃焼室枠12は、プッシュレバー51と一体に、第一シリンダ7に対して上下動することができる。第一燃焼室枠12の内面は、第一燃焼室枠12が図示せぬバネの付勢力に抗して上昇した場合に、その内周面全体に亘ってシール部7Aと当接するように構成されている。第一燃焼室枠12が上昇した場合は、第一燃焼室枠12の内周面とシール部7Aとが密着する。
第一シリンダヘッド27は、第一燃焼室枠12の上方に位置し第一ハウジング21に固定されて設けられている。第一シリンダヘッド27の下面部分には、第一燃焼室枠12の上端部と当接するシール部27Aが設けられており、シール部27Aと第一燃焼室枠12の上端部内周面とが密着することにより第一燃焼室21aが形成される。具体的には、第一燃焼室枠12が上方へ移動して第一燃焼室枠12の上端部内周面とシール部27Aが密着する時、第一ピストン71の上面と、第一シリンダ7の上面と、第一燃焼室枠12と、第一シリンダヘッド27の下面とで第一燃焼室21aが画成される。第一燃焼室21aは、シール部27Aと第一燃焼室枠12の上端部内周面との密着及びシール部7Aと第一燃焼室枠12との密着により気密性が保たれている。
第一シリンダヘッド27には、第一ファンモータ11と、第一点火プラグ29とが設けられている。第一ファンモータ11は、回転軸11Aが上下方向と平行となるようにかつその先端が第一燃焼室21a内に突出するように配置されており、第一シリンダヘッド27に保持されている。第一ハウジング21内には、後述のプッシュレバー51が図示せぬ被加工物に押し付けられて第一燃焼室枠12がストローク上端にあることを検出するためのヘッドスイッチ37A(図2)が設けられている。ヘッドスイッチ37Aは第一燃焼室枠12が所定位置まで上昇したときにオンとなり、このとき第一ファンモータ11及び後述の第二ファンモータ31の回転が開始される。
第一ファンモータ11の回転軸11Aの下方には第一ファン10が設けられており、第一ファン10は第一燃焼室21a内に配置されている。
第一点火プラグ29は、第一燃焼室21aの上部に配置され、第一燃焼室21a内に供給された可燃性ガスに点火することが可能となっている。また第一シリンダヘッド27においては、図示せぬガスボンベから供給される可燃性ガスを第一燃焼室21a内に導入する第一燃料流路27aが形成されている。
第二ハウジング22内には、第二シリンダ8と、第二燃焼室枠13と、第二ファン32と、第二ファンモータ31と、第二シリンダヘッド28と、が設けられている。なお、第二ハウジング22内の構成は、第一ハウジング21内の構成とほぼ同一であるため、同一の部分については簡単に説明する。
第二シリンダ8は、右側が開口した筒状に構成され筒内に第二シリンダ室81aが規定されており、筒状の軸方向が左右方向と平行になるように第二ハウジング22内に収容されている。第二シリンダ8の左端部には孔8aが形成されており、右端部外周面には第二燃焼室枠13と当接するシール部8Aが設けられている。第二シリンダ8には排気口8bが形成されており、図示せぬ排気逆止弁が設けられている。第二シリンダ室81a内にはロッド14を備える第二ピストン81とバンパ82とが収容されている。第二ピストン81は、第二シリンダ室81a内において左右方向に移動可能である。ロッド14は右端で第二ピストン81に同軸的に接続され、左端部分にラック14Aが所定長さ設けられており、ラック14Aは運動変換機構6と噛合している。ロッド14の右端部は第二ピストン81に同軸的に固定されている。バンパ82は、動作時の第二ピストン81の衝撃を緩和するために第二シリンダ室81a左端部に設けられている。
第二燃焼室枠13は第二シリンダ8に対して左右方向に移動可能に配置されており、その左端部分に後述のプッシュレバー51と接続される図示せぬ第二結部材が一体に接続されている。プッシュレバー51の上下方向の動作に連動して図示せぬ連結部材を介し第二燃焼室枠13が左右方向に移動する。また、第二燃焼室枠13は図示せぬバネにより第二シリンダ8に対して左側に付勢されている。第二燃焼室枠13と第二シリンダ8とは、シール部8Aによって密着している。
第二シリンダヘッド28は第二燃焼室枠13の右側に設けられており、その左部にはシール部28Aが設けられている。シール部28Aと第二燃焼室枠13との密着及び第二シリンダ8と第二燃焼室枠13との密着により第二燃焼室22aが画成されその気密性が保持される。
第二シリンダヘッド28には、第二ファンモータ31と第二点火プラグ33とが設けられている。さらに、第二シリンダヘッド28には可燃性ガスを導入する第二燃料流路28aが形成されている。
ボンベ収容部23は、第一ハウジング21の側部に上下方向に沿って併設されており、その内部にガスボンベ80を有している。ガスボンベ80は内部に可燃性ガスを貯留しており、可燃性ガスを一定量噴出可能であって、第一燃焼室枠12及び第二燃焼室枠13の移動(後述のプッシュレバー51の移動)に伴って第一シリンダヘッド27方向に傾斜するように構成されている。図示せぬガスボンベは、その先端が第一燃料流路27a及び第二燃料流路28bに接続されており、可燃性ガスを第一燃料流路27a及び第二燃料流路28a内に噴出することができる。
第一ヘッドカバー24は、第一ハウジング21の上方に設けられており、複数の吸気孔24aが形成されている。第一ファン10の回転により吸気孔24aから新鮮な空気を第一燃焼室21a内に取り込むことができる。
第二ヘッドカバー25は、第二ハウジング22の右方に設けられており、複数の吸気孔25aが形成されている。第二ファン32の回転により吸気孔25aから新鮮な空気を第二燃焼室22a内に取り込むことができる。
ハンドル3のボンベ収容部23との接続部分には、トリガ36が設けられており、トリガ36はトリガスイッチ36Aを動作させている。ハンドル3の内部には電池35が着脱自在に挿入されている。
マガジン4は、ハンドル3の下方であって第二ハウジング22と上下方向で略同一の位置に設けられている。その内部には複数のネジ41が装填されていて、図示せぬスプリングによってネジ41が後述のノーズ部5に供給される。またマガジン4の内部には、制御装置37が設けられている。制御装置37は、トリガスイッチ36A、ヘッドスイッチ37A、第一点火プラグ29、第二点火プラグ33、第一ファン10、第二ファン32と接続されており、打撃機構に係る制御を行う打撃側制御部38と、回転力付加機構に係る制御を行う回転側制御部39とを有している。打撃側制御部38は、図2に示されるように、第一ファン駆動回路38Aと、第一ファンタイマ38Bと、第一火花駆動回路38Cとから構成されており、回転側制御部39は、第二ファン駆動回路39Aと、第二ファンタイマ39Bと、第二火花駆動回路39Cと、点火タイマ39Dとから構成されている。
第一ファン駆動回路38Aは、第一ファンモータ11と接続され第一ファンタイマ38Bからの信号に基づき第一ファンモータ11に駆動電力を印加している。第一ファンタイマ38Bは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとからの信号を検知すると共に、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとのすべての信号を検知しなくなった時から一定時間第一ファン駆動回路38Aに信号を出力している。第一火花駆動回路38Cは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとの双方の信号を検出した時に第一点火プラグ29へ信号を出力して駆動電力を印加している。
第二ファン駆動回路39Aは、第二ファンモータ31と接続され第二ファンタイマ39Bからの信号若しくはヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとの少なくとも一方からの信号に基づき第二ファンモータ31に信号を出力して駆動電力を印加している。第二ファンタイマ39Bは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとからの信号を検知すると共に、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとのすべての信号を検知しなくなった時から一定時間第二ファン駆動回路39Aに信号を出力している。第二火花駆動回路39Cは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとの双方の信号を検出すると共に点火タイマ39Dからの信号を検出した時に第二点火プラグ33に信号を出力して駆動電力を印加している。点火タイマ39Dは第一火花駆動回路38Cから出力された信号を検出した後、所定時間t13(約15ms)経過後に第二火花駆動回路39Cに信号を出力している。
第一シリンダ7の下方には、被加工物Pに対向するノーズ部5が設けられている。ノーズ部5には、ビット9とネジ41とを案***出口5aが形成され、上下方向に移動可能なプッシュレバー51が設けられている。プッシュレバー51は図示せぬ連結部材と接続されている。プッシュレバー51と第一第一シリンダ7との間には図示せぬスプリングが介装されており、この図示せぬスプリングによってプッシュレバー51は第一シリンダ7に対して下方に付勢される。
運動変換機構6はノーズ部5と第一シリンダ7との間に位置しており、図3に示すように、ピニオン61と、第一ギヤ62と、第二ギヤ63と、から構成されている。ピニオン61はロッド14のラック14Aと常時噛合していて、ノーズ部5(図1)に回転可能に支承される軸61Aを有している。第一ギヤ62は、軸61Aに同軸的に固定されてピニオン61と同軸一体回転しており、第二ギヤ63と噛合している。第二ギヤ63は回転中心位置に六角形の挿入孔63aが形成されており、挿入孔63aにビット9が隙間嵌状態で挿通されている。よってビット9と第二ギヤ63とは互いに同軸的に回転するが、第二ギヤ63に対してビット9は挿入孔63aへの貫通方向(上下方向)に移動可能である。
ロッド14が左右方向に移動することにより、ラック14Aと噛合しているピニオン61が回転し、直線運動を回転運動に変換する。ピニオン61の回転力が軸61Aを介して同軸上の第一ギヤ62に伝達され、第一ギヤ62と噛合している第二ギヤ63に伝達される。これにより、第二ギヤ63の挿入孔63aに挿通されているビット9に回転力が伝達される。上述のようにロッド14とピニオン61とが常時噛合し、かつ第二ギヤ63の挿入孔63aにビット9が挿入されているため、ロッド14の動作量がビット9の回転量と比例関係になる。ロッド14の移動量は第二ピストン81の移動量であるので、第二ピストン81の移動量とビット9の回転量とは比例関係になる。また第二ピストン81は、上死点から下死点までの間のみ移動可能であるので、第二ピストン81が上死点から下死点までを移動している間が第二ギヤ63(ビット9)の回転する間になる。
上記構成の打込機1でネジ41を被打込材Pに打ち込む工程について、主に図2のブロック図と図6及び図7のタイムチャートとに基づき説明する。打込機1において図1に示される状態では、プッシュレバー51及びトリガ36は動作していないため、ヘッドスイッチ37A、トリガスイッチ36A、燃料噴射、第一ファンモータ11、第一点火プラグ29、第二ファンモータ31、第二点火プラグ33はいずれもオフ状態にあり、動作していない。また第一燃焼室21a及び第二燃焼室22aはいずれも開いた状態にあり、第一ピストン71及び第二ピストン81はいずれも上死点に位置している。
図1に示される状態から、図6に示される時刻T0において、図4に示されるように、打込機1を被打込材Pに押し付けることにより、ノーズ部5に対してプッシュレバー51を上方に移動させる。この移動に伴い第一燃焼室枠12が第一シリンダ7に対して上方に移動し第一燃焼室21aを閉じると共にヘッドスイッチ37A(図2)をオンにする。第一燃焼室枠12の移動と同時に第二燃焼室枠13が第二シリンダ8に対して右側へと移動し、第二燃焼室22aが閉じられる。ヘッドスイッチ37Aがオンになるので、ヘッドスイッチ37Aから信号が出力され、これを第二ファン駆動回路39Aで検出して第二ファンモータ31をオンにし、第二ファン32を約12000min−1で回転させる。
またプッシュレバー51の動作に応じて、燃料である可燃性ガスをガスボンベ80から第一燃料流路27a内に噴出すると共に第二燃料流路28a内に噴出し、閉止された第一燃焼室21a内及び第二燃焼室22a内に燃料を導く。第二燃焼室22a内では第二ファン32が回転しているため、予め第二燃焼室22a内にある酸素(空気)と燃料とが撹拌・混合され、好適に混合気が形成される。これに対して第一燃焼室21aでは、未だ第一ファン10が回転していないため、酸素(空気)と燃料との撹拌・混合はされないままである。
次に時刻T1において、トリガ36を引き、トリガスイッチ36Aをオンにする。この時点においては、トリガスイッチ36Aとヘッドスイッチ37Aとの両方から信号が出力されるため、この両方の信号に基づき第一火花駆動回路38Cから第一点火プラグ29に信号が出力され、第一燃焼室21a内に第一点火プラグ29による火花が発生する。火花の発生と同時に第一燃焼室21a内の混合気に着火し燃料が燃焼し始め、時刻T2で第一ピストン71が上死点から下死点に向かって移動し始める。
また第一火花駆動回路38Cから信号が出力されることで、点火タイマ39Dが動作し、時刻T1から所定時間t13(約15ms)経過後の時刻T3において、第二火花駆動回路38Cでトリガスイッチ36Aとヘッドスイッチ37Aとの両方からの信号と点火タイマ39Dとの信号を検出し第二点火プラグ33に信号が出力される。この信号に基づき第二燃焼室22a内に第二点火プラグ33による火花が発生する。火花の発生と同時に第二燃焼室22a内の混合気に着火し混合気が燃焼し始め、図7に示されるように時刻T4で第二ピストン81が上死点から下死点に向かって移動し始める。
その後、時刻T5において図4に示されるように、ビット9が釘41を被打込材Pに接触させ、時刻T6において図5に示されるように、第一ピストン71と第二ピストン81とがほぼ同時に下死点へと到達する。
時刻T1からの第一燃焼室21aにおける燃焼は、混合気が好適に形成されていない状態での燃焼であるため、その燃焼速度は遅く、故に急激な体積膨張は発生しない。よって図7のグラフ(a)に示されるように、急激な燃焼圧の上昇は発生せず、時刻T1から徐々に圧力が上昇する緩慢な圧力上昇になり、その燃焼圧の最大値も過度に高圧にはならない。従って、グラフ(b)に示されるようにビット9の上死点から下死点までに係る時間(t26:約20ms)が長くなる。
これに対して、時刻T3からの第二燃焼室22aにおける燃焼は、好適な混合気が形成された状態での燃焼であるため、燃焼速度が速く、急激な体積膨張が発生する。よって図7のグラフ(a)に示されるように、燃焼圧の急激な上昇が発生し、その最大値も第一燃焼室21aに比べて高圧になる。従って第二ピストン81の上死点から下死点までの移動は第一ピストン71の上死点から下死点までの移動よりも早くなる。故に第二ピストン81の上死点から下死点への移動に掛かる時間をt46(約10ms)とし、移動開始時刻T4を第一ピストン71の移動開始時刻T2より遅くしても、同時刻T6に下死点へと移動させることができる。尚、第二ピストン81の移動の基となる第二点火プラグ33での点火時刻は点火タイマ39Dの設定で変更できるため、予め実験により最適値を割り出すことにより、第一ピストン71と第二ピストン81とが同時に下死点に移動するように設定することは容易である。
一般にねじ締めの場合、ねじの回転による螺旋状のねじ山の食い込みで工作物に貫入していくので、ビット9からネジ41への付勢力(推力)は、ビット9とネジ41のねじ頭の十字穴との噛み合いが外れない程度の小さい荷重でよい。よって前述のように第一燃焼室21aにおいて燃焼圧の最大値が小さいとしても、ビット9のネジ41への当接は好適に行われる。
また回転が開始する前にネジ41を被打込材Pに接触する位置まで降下させる必要があるが、上述のように、点火タイミングをずらし、ビット9の回転より先に第一ピストン71を移動させているため、第二ピストン81が動き始めてビット9の回転量が増加し始めた時刻T5にビット9に付勢されたネジ41を被打込材Pに接触させることができる。
ネジ41が被打込材Pに接触した後に、さらに回転によってネジ41を被打込材Pに貫入していく。ネジ41の貫入は回転により軸方向に進むが、運動変換機構6のギア類の慣性抵抗により、このネジ41の貫入に係る時間は、例えばピストンの往復動のみによる釘打機による釘の貫入より時間がかかる。これに対しては、前述のように第二燃焼室22a内での燃焼圧を高めて第二ピストン81の移動速度(ビット9の回転速度)を早めるとともに、第一燃焼室21a内での燃焼圧を低くして第一ピストン71の移動速度(ビット9の移動速度)を遅くする。これによりネジ41が被打込材Pに接触した後にビット9でネジ41を付勢し続ける時間を稼ぐことができるので、ネジ41が貫入されている間、即ちビット9が回りきるまでの間(第二ピストン81が上死点から下死点まで移動する間)において、ビット9によりネジ41を付勢し続けることができる。
第一ピストン71がバンパ72に当接した後(ネジ41を貫入し終わった後)に、燃焼ガスは排気穴7bより第一シリンダ7外部へ放出される。燃焼ガスが第一シリンダ7外部へ放出され、第一シリンダ室71a内及び第一燃焼室21a内部が大気圧になった時点で排気穴7bの図示せぬ逆止弁は閉じられる。第二燃焼室においても同様に、排気口8bを介して燃焼ガスが第二シリンダ8外部へ放出され、第二シリンダ室81a内及び第二燃焼室22a内部が大気圧になった時点で図示せぬ逆止弁が閉じられる。
第一シリンダ室71a内及び第二シリンダ室81a並びに第一燃焼室21a内及び第二燃焼室22a内に残った燃焼ガスは、燃焼後であるため高温であり、その燃焼熱が第一シリンダ7及び第二シリンダ8の壁、第一燃焼室枠12及び第二燃焼室枠13から吸収され、第一シリンダ7及び第二シリンダ8等は高温になる。この吸収された熱は、第一シリンダ7及び第二シリンダ8、並びに第一燃焼室枠12及び第二燃焼室枠13の外面から大気中に放散される。
この第一シリンダ7に燃焼ガスの燃焼熱が吸収されることにより燃焼ガスが急冷され、燃焼ガスの体積が減少して第一ピストン71上室の圧力が低下し、大気圧以下になる熱真空の状態となり、第一ピストン71を初期の上死点位置に引き戻す。第二燃焼室22aにおいても同様に熱真空の状態となり、第二ピストン81を上死点位置に引き戻す。
その後、時刻T7においてトリガ36を引くのを止めてトリガスイッチ36Aをオフにする。更に時刻T8においてねじ締め機1を持ち上げ、プッシュレバー51を被打込材Pから離すと、プッシュレバー51と第一燃焼室枠12及び第二燃焼室枠13とが図示せぬスプリングの付勢により図1に示す初期位置へ戻る。この初期位置に第一燃焼室枠12が戻ることにより、ヘッドスイッチ37Aもオフになる。このトリガスイッチ36Aのオフ信号及びヘッドスイッチ37Aのオフ信号に基づき、第一ファンタイマ38B及び第二ファンタイマ39Bが一定時間(t89:約10s)動作し、信号を出力する。
これら第一ファンタイマ38B及び第二ファンタイマ39Bからの出力を第一ファン駆動回路38A及び第二ファン駆動回路39Aで検出することにより、第一ファン10及び第二ファン32が一定時間上述の回転数(約12000min−1)で回転し続ける。このとき第一燃焼室枠12の上方の第一通気孔21b及び第二燃焼室枠13の右方の第3通気孔22bを通じて、第一ファン10及び第二ファン32により空気の流れを発生させることで第一ヘッドカバー24及び第二ヘッドカバー25にそれぞれ設けられた吸気孔24a、吸気孔25aからきれいな空気を取り込む(吸気)と共に、ハウジング2の図示せぬ排気口から燃焼後の空気を吐き出す(排気)。その後時刻T9において所定時間が経過することにより、第一ファン10及び第二ファン32が停止し初期の静止状態となる。静止状態になった後、上記過程を再度繰り返すことにより、再びネジ41を打ち込むことができる。
次に本発明の第二の実施の形態について図8及び図9に基づき説明する。第二の実施の形態に係るねじ締め機においては、制御装置137に係る構成以外は、第一の実施の形態に係るねじ締め機1と同じであるので説明を省略する。
制御装置137は、図8に示されるようにトリガスイッチ36A、ヘッドスイッチ37A、第一点火プラグ29、第二点火プラグ33、第一ファン10、第二ファン32と接続されており、打撃機構に係る制御を行う打撃側制御部138と、回転力付加機構に係る制御を行う回転側制御部139とを有している。
打撃側制御部138は、第一ファン駆動回路138Aと、第一ファンタイマ138Bと、第一火花駆動回路138Cと、電圧変換回路138Dから構成されている。回転側制御部139は、第二ファン駆動回路139Aと、第二ファンタイマ139Bと、第二火花駆動回路139Cと、点火タイマ139Dとから構成されており、第一の実施の形態の回転側制御部39と同じ構成を成すため、説明を省略する。
第一ファン駆動回路138Aは、第一ファンモータ11と接続され電圧変換回路138Dからの信号に基づき第一ファンモータ11に低速回転(約600min−1)の電圧と高速回転(約12000min−1)の電圧とを印加している。第一ファンタイマ138Bは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとからの信号を検知すると共に、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとのすべての信号を検知しなくなった時から一定時間電圧変換回路138Dに信号を出力している。第一火花駆動回路138Cは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとの双方の信号を検出した時に第一点火プラグ29へ信号を出力して駆動電力を印加している。電圧変換回路138Dは、ヘッドスイッチ37Aとトリガスイッチ36Aとの少なくとも一方からの信号に基づき第一の電圧及び信号を第一ファン駆動回路138Aに出力すると共に、第一ファンタイマ138Bからの信号に基づき第二の電圧及び信号を第一ファン駆動回路138Aに出力する。ここで第一の電圧とは、第一ファンモータ11が低速回転する信号であり、第二の信号とは、第一ファンモータ11が高速回転できる電圧である。
上記制御装置137によりネジ41を被打込材Pに打ち込む工程について、図8のブロック図と図9のタイムチャートとに基づき説明する。各時刻(T0〜T9)におけるネジ打ち機の動作は、第一の実施の形態に係るネジ打ち機1の各時刻の動作と略同じであるため、主に差異点について説明する。
図9に示されるように、時刻T0において、燃料噴射が第一燃焼室21a、第二燃焼室22a内に行われると共にヘッドスイッチ37Aがオンになるので、ヘッドスイッチ37Aから信号が出力され、これを第二ファン駆動回路139Aで検出して第二ファンモータ31をオンにし、第二ファン32を約12000min−1で回転させる。また同じくヘッドスイッチ37Aの信号を電圧変換回路138Dで検出し、この検出結果に基づき、電圧変換回路138Dから第一ファン駆動回路138Aに第一の電圧及び信号を出力し、第一ファンモータ11を低速で回転させる。第二ファンモータ31の回転により、第二燃焼室22a内には好適な混合気が形成される。これに対して第一燃焼室21a内では、第一ファンモータ11が低速回転するため、好適な混合気が形成されることはない。
次に時刻T1において、トリガ36を引き、トリガスイッチ36Aをオンにする。この時点においては、トリガスイッチ36Aとヘッドスイッチ37Aとの両方から信号が出力されるため、この両方の信号に基づき第一火花駆動回路138Cから第一点火プラグ29に信号が出力され、第一燃焼室21a内に第一点火プラグ29による火花が発生する。火花の発生と同時に第一燃焼室21a内の混合気に着火し燃料が燃焼し始め、時刻T2で第一ピストン71が上死点から下死点に向かって移動し始める。
時刻T1からの第一燃焼室21aにおける燃焼は、混合気が好適に形成されていない状態での燃焼であるため、第一の実施の形態と同様にその燃焼速度は遅く、ビット9の上死点から下死点までに係る時間、特にネジ41が被打込材Pに接触してから下死点に到達するまでの時間が長くなる。これにより、長時間に亘ってビット9からネジ41に付勢力を与えることができる。
トリガスイッチ36Aとヘッドスイッチ37Aとが共にオフになる時刻T8では、電圧変換回路138Dで検出する信号が、トリガスイッチ36Aとヘッドスイッチ37Aとの一方からの信号から、第一ファンタイマ138Bからの信号へと切り替わる。第一ファンタイマ138Bからの信号が電圧変換回路138Dで検出されることにより、電圧変換回路138Dから第一ファン駆動回路138Aに第二の電圧及び信号を出力し、第一ファンモータ11を高速で回転させる。第一ファンモータ11が高速回転することにより、時刻T8から時刻T9の間で、第一燃焼室21a内の排気及び吸気を好適に行い、次の打ち込み動作に備えることができる。
第一の実施の形態では、期間T0〜T8において第一ファン10を回転させず、期間T8〜T9において第一ファン10を回転させている。この場合、期間T0〜T8における第一燃焼室21a内の燃焼速度は遅くなるが、可燃性ガスが第一燃焼室21a内の空気とほとんど混合されずに燃焼しているため、期間T8〜T9において可燃性ガスの一部が未燃焼ガスとして排気されるおそれがある。これに対して第二の実施の形態では、期間T0〜T8において第一ファン10を低速(約600min−1)で回転させているため、燃焼ガスと空気とがある程度は混合される。これにより、第一の実施の形態より燃焼性能が向上して未燃焼ガスが発生することが抑制される。また、第二の実施の形態では、期間T0〜T8において低速回転としたが、これに限らず、例えば期間T1〜T8(第一点火プラグ29で点火された時から吸排気を行う前まで)においてのみ第一ファン10を低速回転させてもよいし、逆に期間T0〜T1(燃焼ガスが噴射されてから第一点火プラグ29が点火されるまで)のみ第一ファン10を低速回転させてもよい。
尚、第二の実施の形態では、高速回転(12000min−1)に対して低速回転(600min−1)としたが、これに限定されず、ねじ締め機の形状、対称とするネジの種類等に応じて、適宜変更可能である。