JP5535714B2 - フッ素含有液体の処理方法および処理装置 - Google Patents

フッ素含有液体の処理方法および処理装置 Download PDF

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Description

本発明は、フッ素含有液体の処理方法に関し、より詳細には、フッ素を水性媒体中に含む被処理液を処理し、フッ素濃度が低減された処理液を得る方法に関する。更に、本発明は、かかるフッ素含有液体の処理方法を実施するために用いられる処理装置にも関する。
なお、本発明において用語「フッ素」は、フッ素(F)として分析され得る限り、水性媒体中で任意の形態を有し得、例えばイオンおよび/または化合物などであってよいことを意味する。
フッ素は、例えば半導体、電気、電子、樹脂、塗料、繊維などの種々の産業分野において広範に用いられている。他方、フッ素が人体および環境に及ぼす影響も指摘されている。このため、わが国ではフッ素に対する排出規制が強化されており、排水基準値8mg/L以下、環境基準値0.8mg/L以下と定められている。
従来、フッ素含有液体の処理方法としては、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加してフッ化カルシウムとして凝集沈殿させる方法(カルシウム凝集沈殿法)が一般的に用いられていた。しかし、フッ化カルシウムの溶解度は十分には低くないため、かかる方法ではフッ素濃度を0.8mg/L以下とすることは実際上不可能である。
そこで、フッ素含有液体のより高度な処理方法として、カルシウム化合物およびリン酸類(および/またはリン酸化合物)を添加し、通常、種晶としてリン酸カルシウム粒子を用いて、溶解度の極めて低いフルオロアパタイト(FAp:Ca(POF)を析出させる方法(晶析法)が利用されている。これにより、フッ素濃度を0.8mg/L以下とすることが可能である(例えば特許文献1および2を参照のこと)。
その他、フッ素含有液体の別の処理方法も知られているが、フッ素濃度を0.8mg/L以下とすることは困難である(例えば特許文献3を参照のこと)。
特開2002−370093号公報 特開2004−122113号公報 特開2001−212575号公報
「合成ハイドロキシアパタイトへのたんぱく質吸着に関する界面電気化学的研究」、歯科医学、1987年、第50巻、第6号、p853−878
上記のような晶析法を利用したフッ素含有液体の処理方法では、最終的に処理液を周囲環境へ排水可能な状態にするために、リン酸カルシウム粒子を分離除去して、実質的に清澄な処理液を得る必要がある。
例えば特許文献1には濾過を行うことが記載されている。濾過は、実際的には、例えばフィルタープレス脱水機を要し、高コストであり、大量処理に適さないという難点がある。また、特許文献1には、リン酸カルシウム粒子を充填した充填塔に処理液を通液することも記載されているが、充填塔に通液するだけでは、閉塞ショートパス等により、フッ素濃度を0.8mg/L以下に低減することはできない。
また、例えば特許文献2には、1つの容器において固液接触領域と分離領域とを画定し、固液接触領域にリン酸カルシウム粒子を留めるようにし、その上方の分離領域を経て処理液を抜き出すことが記載されている。しかしながら、かかる方法では、運転初期に得られる処理液が白濁することが、本発明者の研究により判明した。
このように処理液が白濁すると、濁度(透視度)に対する排水基準を満たさなくなるという別の問題を招いてしまうこととなる。
本発明の目的は、フッ素含有液体の処理方法であって、フッ素濃度が十分に(好ましくは0.8mg/L以下に)低減され、かつ、実質的に清澄な処理液を得ることができる新規な方法を提供することにある。本発明のもう1つの目的は、このようなフッ素含有液体の処理方法を実施するために用いられる処理装置を提供することにある。
本発明の1つの要旨によれば、フッ素含有液体の処理方法であって、
a)フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む被処理液と、リン酸カルシウムを含む粒子とを、酸の添加によりpHを4.0以上5.5以下に調整した状態で混合し、
b)これにより得られる混合物に凝集剤を添加し、混合物中の粒子を沈降させて、上澄み液を処理液として得、該処理液のフッ素濃度は、前記被処理液のフッ素濃度より低下していることを含んで成り、
前記工程b)の後、
c)フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む新たな被処理液と、前記工程b)で沈降させて得られた粒子とを、リン酸類の添加によりpHを6以上とした状態で混合し、
d)これにより得られる混合物にアルカリを添加してpHを7以上、例えば7〜8に調整し、凝集剤を添加し、混合物中の粒子を沈降させて、上澄み液を新たな処理液として得、該新たな処理液のフッ素濃度は、前記新たな被処理液のフッ素濃度より低下している
ことを含んで成り、工程c)およびd)を1回、または、更にその後、工程c)にて工程b)で沈降させて得られた粒子に代えて工程d)で沈降させて得られた粒子を用いて2回以上繰り返して実施する方法が提供される。
晶析法を利用した従来のフッ素含有液体の処理方法では、pHをほぼ中性〜アルカリに維持することが必須であると考えられていた。これは、フルオロアパタイト(Ca(POF)がpH7以上のアルカリ領域で析出し易いことに基づいているものと考えられる。より具体的には、フッ素含有液体にリン酸類を添加することによりpHが低下するものの、pH6以上を確保しており(特許文献1の実施例を参照のこと)、実際的にはpH7〜8とされている(特許文献2の実施例を参照のこと)。
これに反して、本発明者の鋭意研究により、フッ素含有液体をリン酸カルシウムを含む粒子(本明細書において、単にリン酸カルシウム粒子とも言う)で「最初に処理するとき」、換言すれば、バージンの(フッ素含有液体の処理に対して未使用の)リン酸カルシウム粒子を用いてフッ素含有液体を処理し、そして、凝集剤により粒子を沈降分離するときは、pHを4.0以上5.5以下にすることが好ましいことが判明した。
本発明の上記処理方法によれば、フッ素濃度が十分に、好ましくは0.8mg/L以下に低減され、かつ、実質的に清澄な処理液を得ることができる。本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、本発明の作用効果は次のように推察される。種晶としてバージンのリン酸カルシウム粒子を用いると、水性媒体中にカルシウムイオンが存在する場合には、別途、カルシウム化合物やリン酸類を用いなくても、微粒子が析出し、白濁として観察される。この微粒子は液中で懸濁し、従来のpH条件下では凝集剤を用いても沈降させることは極めて困難であるが、pH5.5以下では凝集剤により沈降し易くなる。この微粒子は、ハイドロキシアパタイト(HAp:Ca(PO(OH))やフルオロアパタイト(FAp:Ca(POF)などであると考えられる。これらアパタイトの粒子は、pH6.0以上では粒子間の電気的反発力が強いのに対し、pH5.5以下では粒子間の電気的反発力が弱く、このためフロック形成し易くなると考えられる。他方、これらアパタイトの溶出を防止するためにはpH4.0以上とすることが好ましい。フッ素含有液体中のフッ素は、フルオロアパタイトとして析出したり、ハイドロキシアパタイトの析出時に取り込まれたり、および/またはフロック形成時に取り込まれたりして、粒子に「固定」されて沈降する。この結果、上澄み液として得られる処理液は、フッ素濃度が十分に、好ましくは0.8mg/L以下に低減され、かつ、実質的に清澄なものとなると考えられる。
本発明者の研究によれば、工程a)およびb)を経て得られたリン酸カルシウム粒子を用いてフッ素含有液体を処理するときは、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いるときとは異なり、処理液の白濁の問題は起こらないこと、および、pH条件等を適切に変更することにより、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いるときと類似した混合および凝集沈降操作を実施し得ることが判明した。
本発明の上記態様によれば、一度使用したリン酸カルシウム粒子を繰り返し使用しつつ、フッ素濃度が十分に、好ましくは0.8mg/L以下に低減され、かつ、実質的に清澄な処理液を得ることができる。
前記工程a)で添加する酸としては、水性媒体のpHを調整し得るものであれば特に限定されないが、無機酸、例えばリン酸、塩酸、硝酸および硫酸から成る群から選択される少なくとも1種を用いてよく、好ましくは塩酸である。なお、工程a)では酸を用いればよく、特段、リン酸に限定されない点に留意されたい。この理由は、本発明を限定するものではないが、リン酸カルシウム粒子にフッ素が吸着されるため、より詳細には、リン酸カルシウム粒子に由来するハイドロキシアパタイト(HAp:Ca(PO(OH))の水酸基が、水性媒体中のフッ素で置換されてフルオロアパタイト(FAp:Ca(POF)となるためであると考えられる。
本発明によれば、工程b)および工程d)にて凝集剤を添加している。各工程における凝集剤の添加量(以下に示すように1つの工程で凝集剤を複数回に分けて添加する場合はその合計)は、被処理液に対して、例えば0.5〜3.0重量ppmとし得、これにより混合物中の粒子を沈降させ、かつ、膨化を回避することができる。このように比較的少量の凝集剤添加量でよいので、凝集剤のコストを低くし、リン酸カルシウム粒子の寿命を長くすることができる。
本発明において、前記工程b)は、凝集剤を添加した後、混合物中の粒子を沈降させる前に、アルカリを添加してpHを7以上、例えば7〜8に調整し、更に凝集剤を添加することを含んでいてよい。
また、本発明において、前記工程b)は、上澄み液を中和することを含み、前記処理液は中和後の液であってよい。この場合、工程b)にて得られる処理液を後工程にて中和する必要がない。
本発明のもう1つの要旨によれば、フッ素含有液体の処理装置であって、リン酸カルシウムを含む粒子を収容するフッ素固定槽を含んで成り、該フッ素固定槽は、フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む被処理液と該粒子とを含んで成る混合物を攪拌する攪拌手段を備え、かつ、攪拌手段を運転停止した後、混合物中の粒子を沈降させて得られる上澄み液をフッ素固定槽の外部へ排出するための排出口を備える装置が提供される。
本発明の上記処理装置は、上述の本発明のフッ素含有液体の処理方法を実施するために好適に用いられる。被処理液に含まれるフッ素は、フッ素固定槽にてリン酸カルシウムを含む粒子に固定されて沈降し、これにより、フッ素濃度が十分に、好ましくは0.8mg/L以下に低減され、かつ実質的に清澄な処理液が得られる。本発明の上記処理装置は大量処理に適し、操作が簡便であり、装置構成が簡素であるのでメンテナンス容易である。
本発明の1つの態様において、上記処理装置は、前記フッ素固定槽の排出口に接続され、かつ該排出口から上澄み液が移送される中和槽を更に含んで成っていてよい。この中和槽にて上澄み液を中和することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、処理装置は中和槽を有しなくてよく、前記フッ素固定槽で適宜中和を行うようにしてもよい。
本発明によれば、フッ素含有液体の処理方法であって、フッ素濃度が十分に(好ましくは0.8mg/L以下に)低減され、かつ、実質的に清澄な処理液を得ることができる新規な方法が提供される。更に、本発明によれば、このようなフッ素含有液体の処理方法を実施するために用いられる処理装置も提供される。本発明のフッ素含有液体の処理方法および処理装置は大量処理に適する。
本発明の1つの実施形態におけるフッ素含有液体の処理装置を示す概略断面図である。 本発明のもう1つの実施形態におけるフッ素含有液体の処理装置を示す概略断面図である。 本発明の予備実験において、バージンのリン酸カルシウム粒子を異なる条件に付して、その粒径分布を測定したグラフであって、Aは被処理水と一緒に通常的な凝集沈降分離操作に付して得られる上澄み液中の浮遊物、Bは被処理液と混合および静置して得られる上澄み液中の浮遊物、Cは純水と混合および静置して得られる上澄み液中の浮遊物、Xは市販で入手したそのままの状態のもののグラフである。 図3に点線丸印にて示す粒径1μm以下の微粒子をX線解析に付したデータを示し、Aは微粒子のスペクトルグラフから得られたピークを、S1〜S5はそれぞれCa(PO(OH)、CaF(PO、Ca(PO・xHO、CaFおよびCaの標準ピークを示す。 本発明の実施例において、被処理液とバージンのリン酸カルシウム粒子との混合物にリン酸を徐々に添加したときの混合物の光学顕微鏡写真であって、(a)リン酸添加前、pH=7.5のとき、(b)リン酸添加によりpH=5.8に達したとき、および(c)リン酸添加によりpH=5.0に達したときの写真である。 ハイドロキシアパタイト粒子のゼータ電位(mV)のpH依存性を示す既知のグラフである(非特許文献1を参照のこと)。
(実施形態1)
本発明の1つの実施形態におけるフッ素含有液体の処理方法および処理装置について詳述する。
図1を参照して、本実施形態に用いるフッ素含有液体の処理装置10は、フッ素固定槽1を含んで成り、このフッ素固定槽1は、攪拌手段3と、上澄み液の排出口5と、粒子Pの抜き出し口7とを備える。フッ素固定槽1は任意の適切な形状を有し得、例えば、図示するような傾斜した底部を有する円筒状容器であってよい。攪拌手段3は、フッ素固定槽1にて被処理液と粒子Pとを含んで成る混合物を攪拌し得るものであればよく、例えば、図示するようにモーターMにより回転する攪拌翼を備える手段であってよい。排出口5は、凝集沈降した粒子が上澄み液に混入流出しないような位置に設けられ、抜き出し口7は、粒子を効率的に抜き出し得るようにフッ素固定槽1の底部に設けられ得る。
本実施形態のフッ素含有液体の処理方法は以下のようにして実施される。
・初回操作
・工程a)
まず、フッ素固定槽1に、フッ素含有液体として被処理液を入れる。被処理液は、フッ素およびカルシウムを任意の形態(例えばイオンおよび化合物など)で水性媒体中に含むものであればよい。水性媒体は水を主成分とするものであればよく、フッ素およびカルシウムに加えて他の成分を更に含み得る。より具体的には、被処理液は、例えば半導体、電気、電子、樹脂、塗料、繊維などの種々の産業により生じる排水であってよく、また、このような排水を、水酸化カルシウム(消石灰)などのカルシウム化合物を添加してフッ化カルシウムとして凝集沈殿させる方法(カルシウム凝集沈殿法)により1次処理したものであってよい。いずれにせよ、被処理液は、本発明の実施に際して、フッ素およびカルシウムを含む状態となっていれば特に制限されない。
被処理液のフッ素濃度は、例えば1〜15mg/Lであり、カルシウム濃度は、例えば30〜300mg/Lである(なお、単位mg/Lはppmと等しいと考えて差し支えない)。被処理液のpHは特に限定されないが、例えばpH7〜10であり得る。
また、フッ素固定槽1に、リン酸カルシウムを含む粒子P(本明細書において、単にリン酸カルシウム粒子とも言う)を入れる。ここで入れるリン酸カルシウム粒子は、バージンのリン酸カルシウム粒子であり、市販のリン酸カルシウム粒子をそのまま使用し得る。
リン酸カルシウム粒子の粒径分布は、特に限定するものではないが、例えば1〜1000μm、好ましくは1〜200μmである。粒径分布の下限値を1μm以上とすることによって、沈降分離することができ、上限値を1000μm以下とすることによって、反応効率の低下を防ぐことができる。
また、リン酸カルシウム粒子の比表面積は、例えば10m/g以上、好ましくは30m/g以上、より好ましくは50m/g以上である。比表面積を10m/g以上とすることによって、処理液体との接触面積を適切に確保し、処理時間を許容可能な程度に短くできる。
リン酸カルシウム粒子は、実質的にリン酸カルシウムから成るものであってよく、または、リン酸カルシウムを主成分とし、他の成分を比較的少量含むものであってもよい。
リン酸カルシウムとしては、後述する混合物中で実質的に溶解しないものが好ましく、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられ、ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトに代表されるアパタイト構造のものでもよい。
リン酸カルシウム粒子中の(Ca)と(P)のモル比(Ca/P)は、被処理液中のフッ素濃度や、添加する酸の種類および濃度などによって様々であり得るが、通常1.2〜2.3程度である。
リン酸カルシウム粒子の使用量(または投入量)は、代表的には、フッ素濃度8mg/Lの被処理液に対して、例えば1〜10重量%、好ましくは2〜3重量%である。リン酸カルシウム粒子の使用量を1重量%以上とすることによって、フルオロアパタイトを生成することができ、10重量%以下とすることによって、凝集剤の使用量を低減することができる。しかしながら、リン酸カルシウム粒子の使用量は、被処理液のフッ素濃度により増減し、上記範囲に限定されるものではない。
被処理液およびリン酸カルシウム粒子をフッ素固定槽1に入れる順序は、いずれを先に入れても、同時に入れてもよいが、被処理液を先に入れるほうが粒子の飛散がないので好ましい。
温度および圧力条件は適宜設定してよいが、常温(周囲温度、例えば5〜30℃)および常圧(大気圧、約0.1MPa)にて実施するのが簡便である(以下の操作においても同様とする)。
その後、フッ素固定槽1内の被処理液およびリン酸カルシウム粒子Pの混合物を攪拌手段3により攪拌しながら、該混合物に酸を添加する。この酸の添加により、混合物の水相のpHを4.0以上5.5以下に調整する。使用する酸は、特に限定されないが、無機酸、例えばリン酸、塩酸、硝酸および硫酸から成る群から選択される少なくとも1種を用いてよく、好ましくは塩酸である。リン酸には、リン酸それ自体のみならず、添加によりpHを4.0以上5.5以下に調整し得る限り、他のリン酸源、例えばリン酸アンモニウム等のリン酸塩などを用いてもよい。
このとき、混合物中で白色の微粒子が析出して、混合物が白濁し得るが、酸の添加によりpHが低下していくにつれてフロック形成が進み、混合物の白濁が緩和される。後述する予備実験から理解されるように、この微粒子は、ハイドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))やフルオロアパタイト(Ca(POF)などであると考えられ、pH6.0以上では粒子間の電気的反発力が強いのに対し、pH5.5以下では粒子間の電気的反発力が弱くなるためフロック形成し易くなると考えられる。pH4.0未満ではこれらアパタイトが溶出し易くなるので、pH4.0以上としつつ、かつ、電気的反発力を小さくするためpH5.5以下とすることが好ましく、5.0以下とすることが更に好ましい。なお、ハイドロキシアパタイトおよびフルオロアパタイトを構成するリン酸は、リン酸カルシウム粒子に由来し得るので、混合物に添加する酸としてリン酸を用いなくてもよい。
・工程b)
先の工程a)によりフッ素固定槽1にてpHを上記の通り調整した混合物に、凝集剤を添加し、攪拌手段3の運転を停止して、混合物中の粒子を沈降させる。これにより、粒子が沈降分離され、実質的に清澄な上澄み液を得ることができる。混合物中に含まれるフッ素は、フルオロアパタイトとして析出したり、ハイドロキシアパタイトの析出時に取り込まれたり、および/またはフロック形成時に取り込まれたりして、粒子に「固定」されて沈降する。
凝集剤には、フロックや高分子の凝集に用いられ得る既知のものを使用でき、アニオン系凝集剤(例えばポリアクリル酸、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体およびその塩など)、ノニオン系凝集剤(例えばポリアクリルアミドなど)、カチオン系凝集剤(例えばポリアクリルアミドのカチオン化変性物、ポリアクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリメタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、ポリエチレンイミン、キトサンなど)を使用できる。
凝集剤の添加量は、被処理液に対して、0.5〜3.0重量ppm、好ましくは0.7〜0.9重量ppmであるが、リン酸カルシウムの添加量に応じて増減する。本実施形態によれば、工程a)でpHを4.0以上5.5以下に調整したことにより、粒子間の電気的反発力が弱くなっているため、このように比較的少量の凝集剤添加量でフロック形成が進み得、その後、粒子を沈降させ、実質的に清澄な上澄み液を得ることができる。これにより、凝集剤のコストを低くし、リン酸カルシウム粒子の寿命を長くすることができる。沈降分離に要する時間は、例えば1時間以内、好ましくは10〜30分とし得る。
他方、本発明に反してpHが5.5よりも高いとき、例えばpH=7以上では、凝集剤の添加量をかなり大きく、例えば10重量ppm以上にしなければ、24時間静置しても、沈降分離することはできない。更に、このように大量の凝集剤を添加すると、沈降した粒子および凝集剤が汚泥となって膨化し、カルシウムとリンとフッ素の反応不良、SS(Suspended Solids:懸濁物質)リーク、リン酸カルシウム粒子の劣化などを招き得るため好ましくない。
工程b)におけるオプション操作
本実施形態に必須ではないが、凝集剤を上記のように添加した後、混合物中の粒子を沈降させる前に、アルカリを添加してpHを7以上、例えば7〜8に調整し、更に凝集剤を添加してもよい。この場合、凝集剤をpH4.0以上5.5以下で既に一旦添加し、フロック形成が進行しているので、その後、pHを7以上に調整しても、更なる凝集剤添加により粒子を沈降分離することができる。pHを7〜8に調整する場合、アルカリは中和剤として理解され得る。アルカリには、例えば水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム化合物や、水酸化ナトリウムなどを使用し得る。凝集剤の添加量は、このように工程b)にて複数回に分けて添加する場合、これらの合計で、被処理液に対して、1〜6重量ppm、好ましくは1.4〜1.8重量ppmである。沈降分離に要する時間は、上記と同様に、例えば1時間以内、好ましくは10〜30分とし得る。
上記の沈降分離により、フッ素固定槽1にて上澄み液が得られ、排出口5から処理液として排出される。上澄み液の排出は、沈降分離の状態に応じて適宜実施し得る。得られる処理液は実質的に清澄であり、そのフッ素濃度は被処理液のフッ素濃度より低下しており、好ましくは0.8mg/L以下とすることができる。
また、本実施形態に必須ではないが、フッ素固定槽1にて、例えば上記のアルカリ添加などにより、pHが中性域(pH6〜8)となるように上澄み液を中和した場合には、得られる処理液は既に中和されているので、後工程にて中和する必要がない。
以上により、初回操作が終了する。この初回操作は、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いて工程a)およびb)を実施するものであり、処理装置を始めて使用するとき、および、リン酸カルシウム粒子を交換したときのいずれにも該当する。
・2回目およびそれ以降の操作
・工程c)
上記の工程b)にて上澄み液を排出した後、フッ素固定槽1に使用済のリン酸カルシウム粒子Pが残留している。
このフッ素固定槽1に、フッ素含有液体として新たな被処理液を入れる。新たな被処理液は、工程a)にて上述したものと同様であり得る。以下、特に説明のない限り、初回操作と同様の説明が当て嵌まるものとする。
その後、フッ素固定槽1内の被処理液およびリン酸カルシウム粒子Pの混合物を攪拌手段3により攪拌しながら、該混合物にリン酸を添加する。このリン酸の添加により、混合物の水相のpHを6以上に調整する。リン酸には、リン酸それ自体のみならず、添加によりpHを6以上に調整し得る限り、他のリン酸源、例えばリン酸アンモニウム等のリン酸塩などを用いてもよい。
このとき、初回操作の工程a)とは異なり、混合物の白濁はほとんど認められない。
・工程d)
工程c)により、フッ素固定槽1にてpHを上記の通り調整した混合物に、アルカリを添加してpHを7以上、例えば7〜8に調整し、凝集剤を添加し、攪拌手段3の運転を停止して、混合物中の粒子を沈降させる。pHを7〜8に調整する場合、アルカリは中和剤として理解され得る。アルカリには、工程b)におけるオプション操作にて上述したものと同様のものを使用し得る。これにより、実質的に清澄な上澄み液を得ることができる。混合物中に含まれるフッ素は、リン酸カルシウム粒子を種晶として、その表面などにフルオロアパタイトとして析出したり、ハイドロキシアパタイトの析出時に取り込まれたり、および/またはフロック形成時に取り込まれたりして、粒子に「固定」されて沈降する。
上記の沈降分離により、フッ素固定槽1にて上澄み液が得られ、排出口5から処理液として排出される。得られる処理液は実質的に清澄であり、そのフッ素濃度は被処理液のフッ素濃度より低下しており、好ましくは0.8mg/L以下とすることができる。
また、フッ素固定槽1にて、例えば上記のアルカリ添加などにより、pHが中性域(pH6〜8)となるように上澄み液を中和した場合には、得られる処理液は既に中和されているので、後工程にて中和する必要がない。
以上により、2回目操作が終了する。この2回目操作は、工程a)およびb)を経て得られたリン酸カルシウム粒子を用いて、工程c)およびd)を1回実施するものである。
3回目以降の操作は、2回目操作を繰り返して実施すればよい。ただし、工程c)を実施する際、工程b)で沈降させて得られた粒子に代えて工程d)で沈降させて得られた粒子を用いることとなる。
このように、リン酸カルシウム粒子を繰り返して使用できる。しかし、繰り返し使用するうちに、リン酸カルシウム粒子が大きくなり、攪拌が困難になり得る。その他種々の理由によりリン酸カルシウム粒子が寿命に達すると、使用済のリン酸カルシウム粒子をフッ素固定槽1の抜き出し口7より抜き出し、新たなバージンのリン酸カルシウム粒子を用いて、上述の初回操作を実施し得る。
(実施形態2)
本発明のもう1つの実施形態におけるフッ素含有液体の処理方法および処理装置について以下に詳述する。以下、特に説明のない限り、実施形態1と同様の説明が当て嵌まるものとする。
図2を参照して、本実施形態に用いるフッ素含有液体の処理装置10’は、フッ素固定槽1に加えて中和槽9を含んで成り、中和槽9はフッ素固定槽1の排出口5に接続され、排出口5から上澄み液が移送されるようになっている。
本実施形態のフッ素含有液体の処理方法は以下のようにして実施される。
・初回操作
・工程a)
実施形態1にて上述した工程a)の操作と同様に、フッ素固定槽1に被処理液およびバージンのリン酸カルシウム粒子を入れ、これらの混合物を攪拌手段3により攪拌しながら酸を添加し、pHを4.0以上5.5以下に調整する。
・工程b)
実施形態1にて上述した工程b)の操作と同様に、先の工程a)により得られる混合物に、凝集剤を添加し、攪拌手段3の運転を停止して、混合物中の粒子を沈降分離させる。なお、実施形態1にて工程b)のオプション操作として説明した操作は実施しない。
上記の沈降分離により、フッ素固定槽1にて上澄み液が得られる。上澄み液は、排出口5から中和槽9へと移送される。
中和槽9にて、得られた上澄み液に中和剤を添加してこれを中和する。中和剤としては任意の適切なアルカリ、例えば水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム化合物や、水酸化ナトリウムなどを使用し得、中和槽9で使用するには水酸化ナトリウムが好ましい。中和された液は、中和槽9より処理液として排出される。
以上により、初回操作が終了する。得られる処理液は実質的に清澄であり、そのフッ素濃度は被処理液のフッ素濃度より低下しており、好ましくは0.8mg/L以下とすることができる。
・2回目およびそれ以降の操作
・工程c)
実施形態1にて上述した工程c)の操作と同様に、工程a)およびb)を経て得られたリン酸カルシウム粒子Pが残留しているフッ素固定槽1に新たな被処理液を入れ、これらの混合物を攪拌手段3により攪拌しながらリン酸を添加し、pHを6以上に調整する。
・工程d)
実施形態1にて上述した工程d)の操作と同様に、先の工程c)により得られる混合物に、アルカリを添加してpHを7以上、例えば7〜8に調整し、凝集剤を添加し、攪拌手段3の運転を停止して、混合物中の粒子を沈降分離させる。
上記の沈降分離により、フッ素固定槽1にて上澄み液が得られる。上澄み液は、排出口5から中和槽9へと移送される。
中和槽9にて、得られた上澄み液に中和剤を添加してこれを中和する。中和剤としては上記と同様のものを使用し得る。中和された液は、中和槽9より処理液として排出される。得られる処理液は実質的に清澄であり、そのフッ素濃度は被処理液のフッ素濃度より低下しており、好ましくは0.8mg/L以下とすることができる。
以上により、2回目操作が終了する。得られる処理液は実質的に清澄であり、そのフッ素濃度は被処理液のフッ素濃度より低下しており、好ましくは0.8mg/L以下とすることができる。
3回目以降の操作は、2回目操作を繰り返して実施すればよい。ただし、工程c)を実施する際、工程b)で沈降させて得られた粒子に代えて工程d)で沈降させて得られた粒子を用いることとなる。
実施例を通じて本発明を更に詳細に説明する。
以下の予備実験ならびに実施例および比較例において、バージンのリン酸カルシウム粒子として、ノボロックA(下関三井化学株式会社製)を用いた。被処理液としては、フッ素含有液体を、水酸化カルシウム(消石灰)を用いたカルシウム凝集沈殿法により1次処理して得られた1次処理水(フッ素濃度8mg/L、カルシウム濃度200mg/L、pH=7.5)を用いた。リン酸として、ノボロックB(下関三井化学株式会社製)を用いた。凝集剤として、オルフロックOA−32シリーズ(オルガノ東京株式会社製)を用いた。
pH、フッ素濃度、カルシウム濃度およびSS(懸濁物質)は、JIS K0102(ただし、フッ素濃度はイオン電極法、カルシウム濃度はICP発光分光分析法)により測定した。
(予備実験)
本発明を完成するに際して、バージンのリン酸カルシウム粒子を使用する場合の白濁について鋭意研究し、以下の予備実験を行った。
このリン酸カルシウム粒子を異なる条件に付して、サンプルA〜Cを調製した。サンプルXはそのままのものである。
A:バージンのリン酸カルシウム粒子を用いて被処理液を通常的な凝集沈降分離操作に付して得られる上澄み液(比較例)。より詳細には、リン酸カルシウム粒子と被処理液の混合物(被処理液に対してリン酸カルシウム粒子2重量%)を攪拌しながら、これにリン酸を添加してpH5.8とし、その後、水酸化カルシウムを添加してpH7.8に中和し、凝集剤を添加し(被処理液に対して凝集剤0.8重量ppm、添加時間20〜40分)、攪拌停止後、30〜40分静置して得られる上澄み液中の浮遊物
B:バージンのリン酸カルシウム粒子と被処理液を混合および静置して得られる上澄み液中の浮遊物(被処理液に対してリン酸カルシウム粒子2重量%、静置60分)。
C:バージンのリン酸カルシウム粒子と純水とを混合および静置して得られる上澄み液中の浮遊物(純水に対してリン酸カルシウム粒子2重量%、静置60分)。
X:未処理のバージンのリン酸カルシウム粒子(市販品そのまま、乾燥粒子の集合物)
なお、サンプルA〜Cはコロイド状態である。
サンプルA〜Cを目視観察したところ、サンプルAは液全体が白濁していたが、サンプルBおよびCは実質的に清澄(透明)であった。
これらサンプルA〜CおよびXを粒度分布解析に付した(MICROTRAC HRA MODEL No9320−X、日機装株式会社製)。結果を図3に示す。図3を参照して、サンプルXの粒度分布より、元のリン酸カルシウム粒子が1〜300μmの粒径分布を有していたことがわかる。そして、サンプルBおよびCでは、約0.8〜30μmの粒径分布となり、元のリン酸カルシウム粒子のうち比較的大きな粒子が沈降して上澄み液から除外されたことがわかる。これに対して、サンプルAでは、点線丸印にて示す部分に新たなピークが現れ、粒径1μm以下の微粒子が多量に存在していることがわかる。
この結果から、サンプルAの白濁は、粒径1μm以下の微粒子が新たに析出し、これが、凝集剤を用いても沈降せずに上澄み液中に存在することによるものと考えられる。そして、サンプルBおよびCは実質的に清澄であったことから、この微粒子は、水性媒体中にカルシウムイオンが存在する場合にのみ析出するものと考えられる。なお、かかる白濁(微粒子の析出)は、バージンの(フッ素含有液体の処理に対して未使用の)リン酸カルシウム粒子を用いて通常的な凝集沈降分離操作に付した場合に生じ、バージンでない(フッ素含有液体の処理に対して少なくとも1回使用した)リン酸カルシウム粒子を同様の操作に付しても生じない。
次に、サンプルAを60〜100℃で乾燥させ、1μm以下の微粒子を分取し、これをX線解析に付した(X線解析装置、 RINT X-ray Diffracto meter RINT-1000 株式会社リガク(旧名称:理学電機)製)。結果を図4に示す。図4は、微粒子について測定されたスペクトルグラフ(縦軸はX線強度(cps)であり、横軸は2θ(度)である)を示し、その下方のAは、微粒子のスペクトルグラフから得られたピークを、S1〜S5はそれぞれCa(PO(OH)、CaF(PO、Ca(PO・xHO、CaFおよびCaの標準ピークを示す。図4より、微粒子の示したピークAはピークS1に最も近く、次いでピークS2に近かった。よって、微粒子は、ハイドロキシアパタイト(Ca(PO(OH))やフルオロアパタイト(Ca(POF)などであると考えられる。
以上の予備実験の結果から、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いて被処理液を凝集沈降操作に付したときに生じる白濁は、ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトなどの粒径1μm以下の微粒子が析出することが原因であると考えられる。
(実施例)
実施形態1にて上述したフッ素含有液体の処理方法および処理装置を以下の手順および条件で実施した。
1)フッ素固定槽へ被処理液(フッ素濃度8mg/L、カルシウム濃度200mg/L、pH=7.5)を入れた。
2)フッ素固定槽へバージンのリン酸カルシウム粒子を入れた(被処理液に対してリン酸カルシウム粒子2重量%)。
3)フッ素固定槽にて被処理液およびリン酸カルシウム粒子を攪拌混合しながら、リン酸を徐々に添加し、混合物のpHを低下させてpH=5.2に調整した。
4)混合物を引き続き攪拌混合しながら、凝集剤を約3分かけて添加した(被処理液に対して凝集剤0.8重量ppm)。
5)次いで、水酸化カルシウムを添加してpH=7.8に調整し、これにより混合物を中和した。
6)混合物を引き続き攪拌混合しながら、凝集剤を約3分かけて添加した(被処理液に対して凝集剤0.8重量ppm)。
7)攪拌停止し、混合物を20分静置して、混合物内の粒子を沈降させた。この間、静置10分ほどで、フッ素固定槽の底まで目視で観察できる程度の透明度となった。
8)フッ素固定槽より上澄み液を排出して処理液を得た。得られた処理液は実質的に清澄(透明)であった。処理液のフッ素濃度を分析したところ、0.1mg/Lであった。
図5は、上記1)〜3)と同様の操作を行ったときの混合物の光学顕微鏡写真であって、(a)リン酸添加前、pH=7.5のとき、(b)リン酸添加によりpH=5.8に達したとき、および(c)リン酸添加によりpH=5.0に達したときの写真である。リン酸添加前のpH=7.5の混合物(=被処理液+リン酸カルシウム粒子)は、極めて細かい粒子が析出し、混合物が全体的に白濁しており(図2(a))、リン酸添加によりpH=5.8となったときもほぼ同様の白濁が観察されたが(図2(b))、pH=5.0になったときでは白濁が緩和され、透明の部分が観察された(図2(c))。
図6は、ハイドロキシアパタイト粒子のゼータ電位(mV)のpH依存性を示す既知のグラフである(非特許文献1を参照のこと)。図6から理解されるように、ハイドロキシアパタイト粒子のゼータ電位は、pH=8.0〜6.0ではpHが低下するにつれて、徐々に低下しつつも比較的高いレベルを維持しているが、pH=5.5および5.0では、顕著に低下する。pH=5.8(図2(b))ではまだゼータ電位が高いが、pH=5.0(図2(c))では極めて小さくなる。
よって、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いて被処理液を凝集沈降操作に付すと、ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトなどの粒径1μm以下の微粒子が析出するが、これらアパタイトの粒子は、pH6.0以上では粒子間の電気的反発力が強いのに対し、pH5.5以下では粒子間の電気的反発力が弱く、このためフロック形成し易くなると考えられる。
本実施例の結果より、バージンのリン酸カルシウム粒子を用いる場合に、pHを4.0以上5.5以下に調整し、その後、凝集剤により粒子を沈降分離することにより、フッ素濃度を0.8mg/L以下に低減でき、かつ、実質的に清澄な処理液が得られることが確認された。
(比較例1)
以下の手順および条件で処理を実施した。
1)フッ素固定槽へ被処理液(フッ素濃度8mg/L、カルシウム濃度200mg/L、pH=7.5)を入れた。
2)フッ素固定槽へバージンのリン酸カルシウム粒子を入れた(被処理液に対してリン酸カルシウム粒子2重量%)。
3)フッ素固定槽にて被処理液およびリン酸カルシウム粒子を攪拌混合しながら、リン酸を徐々に添加し、混合物のpHを低下させてpH=6に調整した。
4)次いで、水酸化カルシウムを添加してpH=7.8に調整し、これにより混合物を中和した。
5)混合物を引き続き攪拌混合しながら、凝集剤を約20〜40分かけて添加した(被処理液に対して凝集剤0.8重量ppm)。
6)攪拌停止し、混合物を30〜40分静置した。
7)フッ素固定槽より上澄み液を排出して処理液を得た。処理液のフッ素濃度を分析したところ、0.1mg/Lであった。しかし、得られた処理液は白濁していた。
本比較例で得られた処理液は、析出した微粒子により白濁し、濁度についての排水基準を満たさなかった。
(比較例2)
以下の手順および条件で処理を実施した。
1)〜4)上記比較例1における1)〜4)と同様とした。
5)凝集剤の添加量を比較例1の場合より増やした。具体的には、被処理液に対して凝集剤10重量ppmとし、混合物を引き続き攪拌混合しながら、凝集剤を約40分かけて添加した。
6)攪拌停止し、混合物を60分静置した。沈降した粒子および凝集剤が汚泥となって膨化した。
7)フッ素固定槽より上澄み液を排出して処理液を得た。処理液のフッ素濃度を分析したところ、0.1mg/Lであった。
本比較例では、多量の凝集剤使用により比較例1の白濁は抑えられたが、膨化した汚泥がSSとしてリークし、SSについての排水基準200mg/Lを満たさず、リン酸カルシウム粒子の劣化を促進させた。
本発明によるフッ素含有液体の処理方法および処理装置は、例えば半導体、電気、電子、樹脂、塗料、繊維などを含む種々の産業分野において発生するフッ素含有排水を処理し、そのフッ素濃度を低減するために好適に利用され得る。ただし、本発明は、かかる利用に限定されることを意図したものではないことに留意されるべきである。
1 フッ素固定槽
3 攪拌手段
5 上澄み液の排出口
7 粒子の抜き出し口
9 中和槽
10、10’ 処理装置
M モーター
P リン酸カルシウムを含む粒子

Claims (7)

  1. フッ素含有液体の処理方法であって、
    a)フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む被処理液と、リン酸カルシウムを含む粒子とを、酸の添加によりpHを4.0以上5.5以下に調整した状態で混合し、
    b)これにより得られる混合物に凝集剤を添加し、混合物中の粒子を沈降させて、上澄み液を処理液として得、該処理液のフッ素濃度は、前記被処理液のフッ素濃度より低下している
    ことを含んで成り、
    前記工程b)の後、
    c)フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む新たな被処理液と、前記工程b)で沈降させて得られた粒子とを、リン酸類の添加によりpHを6以上とした状態で混合し、
    d)これにより得られる混合物にアルカリを添加してpHを7以上に調整し、凝集剤を添加し、混合物中の粒子を沈降させて、上澄み液を新たな処理液として得、該新たな処理液のフッ素濃度は、前記新たな被処理液のフッ素濃度より低下している
    ことを含んで成り、工程c)およびd)を1回、または、更にその後、工程c)にて工程b)で沈降させて得られた粒子に代えて工程d)で沈降させて得られた粒子を用いて2回以上繰り返して実施する方法。
  2. 前記工程a)で添加する酸として、リン酸、塩酸、硝酸および硫酸から成る群から選択される少なくとも1種を用いる、請求項1に記載の方法。
  3. 凝集剤の添加量が被処理液に対して0.5〜3.0重量ppmである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記工程b)は、凝集剤を添加した後、混合物中の粒子を沈降させる前に、アルカリを添加してpHを7以上に調整し、更に凝集剤を添加することを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記工程b)は、上澄み液を中和することを含み、前記処理液は中和後の液である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法を実施するために用いられるフッ素含有液体の処理装置であって、リン酸カルシウムを含む粒子を収容するフッ素固定槽を含んで成り、該フッ素固定槽は、フッ素およびカルシウムを水性媒体中に含む被処理液と該粒子とを含んで成る混合物を攪拌する攪拌手段を備え、かつ、攪拌手段を運転停止した後、混合物中の粒子を沈降させて得られる上澄み液をフッ素固定槽の外部へ排出するための排出口を備える装置。
  7. 前記フッ素固定槽の排出口に接続され、かつ該排出口から上澄み液が移送される中和槽を更に含んで成る、請求項に記載の装置。
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