JP5535136B2 - ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線 - Google Patents

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Description

本発明は、機械特性及び耐熱性に優れるとともに、内層と該内層に接する最外層との剥離性に優れたノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線に関する。
電気・電子機器の内部および外部配線に使用される絶縁電線やケーブルには、耐熱性および機械特性(例えば、引張特性、耐摩耗性)のほか、高い難燃性が要求される。
難燃性を満足するために、ポリ塩化ビニル(PVC)コンパウンドや、分子中に臭素原子や塩素原子を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリオレフィンコンパウンドに代わり、ハロゲンを含有しない難燃剤(ノンハロゲン系難燃剤)が配合された樹脂組成物が提案されている。例えばエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体に、難燃剤として水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物が多量に配合された難燃性樹脂組成物が提案されている。
一方、電気・電子機器の配線材に求められる難燃性、耐熱性、機械特性(例えば引張特性、耐摩耗性)などの規格は、UL、JISなどで要求水準に応じて定められている。例えば、UL1581(電線、ケーブルおよびフレキシブルコードのための関連規格(Reference Standard for Electrical Wires,Cables and Flexible Cords))や、JIS C 3005(ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法)では、難燃性、耐熱性、および機械特性について定められている。
また、電気・電子機器の配線材には、内層を機械的な外傷から保護するために、最外層に被覆層を形成した多層絶縁電線が必要とされる場合がある。この多層絶縁電線では、電線製造工程において、内層に絶縁性に劣る局所部分が生じてしまっても、内層を最外層部によって保護することにより、長期にわたり高い耐圧特性を維持することが可能となる。
電気・電子機器の配線材では、圧着端子により絶縁電線の金属導体と金属製の端子が接続される。この方法では、最外層を内層から剥離し、内層を露出させた状態で、中空の金属製の圧着端子を、内層の外周を覆うように差込み、その外側から圧着端子を固定し、絶縁電線の金属導体と金属製の端子を直接接続させる。この方法によって、電荷を逃がすことなく、効率良く電気エネルギーを伝えることができる。圧着端子の中空部分の大きさは配線材の直径により定まっており、最外層が内層からきれいに剥すことができないと、圧着端子をうまく差し込むことができない。
またノイズフィルターに使用される配線材でも、最外層を内層からきれいに剥すことが必要とされている。
しかし上記のエチレン系共重合体に金属水和物を充填した難燃性樹脂組成物を用いて導体に2層以上被覆した多層絶縁電線では、層間の密着性が高く、最外層を内層からうまく剥離することが困難である場合が多い。
多層絶縁電線としては、内層にノンハロゲン難燃性樹脂組成物を用い、外層にシリコーン化合物とパラフィンワックスを添加したノンハロゲン難燃性樹脂組成物からなるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この多層絶縁電線は、内層から外層をきれいに剥離するという点では十分とはいえず、UL3737で定められた耐熱性に合格することはできない。
また、内層の引張弾性率が特定の値以上のポリオレフィン系熱可塑性樹脂で形成され、外層がエチレン系重合体と金属水酸化物とからなる難燃性樹脂組成物で形成された絶縁電線が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この絶縁電線も、内層から外層をきれいに剥離することができない。
特開2002−270048号公報 特開2004−335263号公報
本発明は、上記の問題点を解決し、耐熱性および機械特性に優れるとともに、最外層を内層からきれいに剥離することができ、かつ難燃性を維持できるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように最外層が設けられた少なくとも2層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、前記内層及び最外層のうち、内層が架橋されてなり、前記内層と前記最外層の一方が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の中から少なくとも1種以上が選ばれたエチレン系共重合体、及びポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分に対し金属水和物を含む難燃性樹脂組成物を用いて押出被覆され、内層と最外層の他方が、エチレン−α−オレフィン共重合体を必須成分として含むエチレン系共重合体と、ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分に対し金属水和物を含む難燃性樹脂組成物を用いて押出被覆され、内層と最外層の少なくともいずれか一方にシリコーンガムを含有するノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線が上記課題を解決することを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
すなわち本発明は、
<1>金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように直接最外層が設けられた少なくとも2層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、前記内層及び最外層のうち、少なくとも内層が電子線架橋されてなり、
前記内層および前記最外層が、下記組成:
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部及び(C1)シリコーンガム0〜6質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方がシリコーンガムを、前記樹脂成分(A1)100質量部に対し、1〜6質量部含有することを特徴とするノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線、
<2>前記(a11)成分のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体が、少なくとも前記樹脂成分(A1)の30質量%以上であることを特徴とする<1>記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線、
<3>前記シリコーンガムが、前記内層を構成する難燃性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、1〜6質量部含有し、前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、1〜6質量部含有する<1>又は<2>記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線、
<4>前記電子線照射により架橋されている層以外の層が、
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、(C1)シリコーンガム1〜6質量部、(D1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(E)架橋助剤として(E1)(メタ)アクリレート系架橋助剤及び(E2)アリル系架橋助剤のうち少なくとも1種0.03〜1.8質量部を含む樹脂混合物を溶融混練して架橋された層であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線、及び
<5>前記電子線照射により架橋されている層の照射量が1〜30Mradであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線、
を提供するものである。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層電線は、耐熱性および機械特性に優れるとともに、最外層を内層からきれいに剥離することができ、かつ難燃性を維持することができる。
図1は、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の別の実施形態を模式的に示す断面図である。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層電線について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線20の一実施形態は、金属導体1上に内層2が設けられ、該内層2を覆うように直接最外層3が設けられている。金属導体1としては、軟銅線、銅合金線、アルミニウム線、好ましくは、軟銅線、銅合金線 を使用することができる。内層2と最外層3は、後述するように、難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、少なくとも内層2は電子線架橋されている。
また、図2に示すように、本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、金属導体1上に他の層4を介して、内層2が押出被覆され、少なくとも内層2は電子線架橋されている。該内層2を覆うように直接最外層3が設けられていてもよい。内層2と最外層3を構成する難燃性樹脂組成物としては、前記図1に示す、第一の形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線と同様のものを使用することができる。図1に示す一実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線においても、図2に示す別の実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線においても、内層2と最外層3をうまく剥離することができる。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、
金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように直接最外層が設けられた少なくとも2層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、前記内層及び最外層のうち、少なくとも内層が電子線架橋されてなり、
前記内層および前記最外層が、下記組成:
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部及び(C1)シリコーンガム0〜6質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方がシリコーンガムを含有する。
1.難燃性樹脂組成物(X1)
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の内層および最外層に用いられる難燃性樹脂組成物(X1)は、(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部及び(C1)シリコーンガム0〜6質量部を有する。
(a11)エチレン系共重合体
(a11)成分のエチレン系共重合体としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体などを単独で、又は適宜混合したものを使用することができる。
(a11)成分のエチレン系共重合体は、難燃性樹脂組成物(X1)中、30〜95質量%、好ましくは50〜70質量%である。ここで、(a11)成分のエチレン系共重合体のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、樹脂成分(A1)の30質量%以上であることが好ましい。この範囲内とすることにより、金属水和物を十分配合することができ、難燃性を確保することができると同時に柔軟性の低下を抑制することができる。
本発明の(a11)エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を好ましく使用することができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体及び/又はエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を用いることにより、多層電線としての柔軟性や難燃特性の向上の効果を得ることができるため、好ましい。エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などを挙げることができる。エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、エバフレックス(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)、レバプレン(商品名、バイエル社製)を挙げることができる。またエチレン−メタクリル酸共重合体としては、例えば、ニュクレル(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などを挙げることができる。さらにエチレン−アクリル酸エチル共重合体としては、例えば、エバルロイ(商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製)などを挙げることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル含有量が17〜80質量%のものを使用することが好ましい。酢酸ビニル含有量の異なる樹脂を二種以上組み合わせてもよい。この範囲内の酢酸ビニル含有量のエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることにより、ノンハロゲン系難燃剤を配合しても機械特性を損なうことなく、難燃性を確保することができる。(a11)エチレン系共重合体中の酢酸ビニル含有量は、好ましくは、20〜80量%、さらに好ましくは33〜80質量%である。
エチレン‐酢酸ビニル共重合体の配合量は、(a11)エチレン系共重合体中、80〜100質量%とすることが好ましい。この範囲内とすることにより、金属水和物を十分配合することができ、難燃性を確保することができると同時に、十分な柔軟性を得ることができる。
(a12)ポリプロピレン樹脂
(a12)ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン樹脂)や、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体などを使用することができる。成分として、エチレン−プロピレンブロック共重合体を使用することにより、耐熱性、加熱変形特性を向上させることができる。ここでエチレン−プロピレンランダム共重合体はエチレン成分の含有量が1〜5質量%程度のものをいい、エチレン成分がプロピレン鎖中にランダムに取り込まれているものをいう。またエチレン−プロピレンブロック共重合体はエチレン成分の含有量が5〜15質量%程度のものをいい、エチレン成分とプロピレン成分が独立した成分として存在するものをいう。
(a12)ポリプロピレン樹脂のMFR(ASTM‐D‐1238)は、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜25g/10分、さらに好ましくは0.3〜15g/10分である。ポリプロピレン樹脂を配合することにより、耐熱性を向上させることができる。UL1581で規定されている121℃で1時間後の加熱変形特性を満足することができる。ポリプロピレン樹脂の含有量は樹脂成分(X1)中、5〜20質量%であり、好ましくは、7〜20質量%、さらに好ましくは、10〜20質量%である。ポリプロピレン樹脂の含有量が少なすぎると耐熱性、特に加熱変形特性が低下し、多すぎると成形体の柔軟性が低下する。
(B1)金属水和物
難燃性樹脂組成物(X1)は、前記(a11)エチレン系共重合体及び(a12)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、さらに好ましくは150〜220質量部を含有する。金属水和物の含有量をこの範囲内とすることにより、難燃性と機械特性を満足することができる。
使用できる金属水和物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムを挙げることができる。その中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましい。その中でも水酸化マグネシウムは熱分解温度が高いため、本発明の難燃性樹脂組成物に配合した際に押出成形が容易である。また、水酸化マグネシウムを使用すると、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができ、特に好ましい。
水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理の例としては、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネート処理、シランカップリング剤による処理などが挙げられる。樹脂成分との相互作用の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤により表面処理したものを使用するのが好ましい。
さらに、本発明においては、無処理の水酸化マグネシウムや、表面処理を行った水酸化マグネシウムをそれぞれ単独で使用するのは勿論、両者を併用してもよい。さらに、異なる表面処理を行った水酸化マグネシウムを併用することも可能である。この際、シラン表面処理水酸化マグネシウムを少なくとも50質量%に設定することが好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤は末端にビニル基、メタクリロキシ基、グリシジル基、アミノ基を有するものが好ましい。具体的にはたとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。
水酸化マグネシウムをシランカップリング剤で表面処理をする場合には、いずれか1種のシランカップリング剤のみでも、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤による表面処理の方法としては、通常使用される方法で処理を行うことが可能であるが、たとえば、表面処理をしていない水酸化マグネシウムをあらかじめドライブレンドしたり、湿式処理を行ったり、混練時にシランカップリング剤をブレンドすることなどにより得ることが可能である。使用するシランカップリング剤の含有量は、表面処理をするのに十分な量が適宜加えられるが、具体的には水酸化マグネシウムに対し0.1〜2.5質量%、好ましくは0.2〜1.8質量%、さらに好ましくは0.3〜1.0質量%である。
すでにシランカップリング剤により表面処理が施された水酸化マグネシウムを入手することも可能である。シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、キスマ5L、キスマ5N、キスマ5P(いずれも商品名、協和化学(株)製)や、マグシーズS4(商品名、神島化学(株)製)などがあげられる。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、たとえばキスマ5(商品名、協和化学(株)製)、マグニフィンH5(商品名、アルベマール(株)製)などがあげられる。
難燃性樹脂組成物(X1)では、金属水和物の含有量は、樹脂成分(A1)100質量部に対し120〜300質量部であり、好ましくは150〜220質量部、さらに好ましくは180〜210質量部である。金属水和物の配合量が少なすぎると、難燃性に問題が生じ、多すぎると機械的特性が低下する。
その他難燃性を向上させるために難燃助剤として、メラミンシアヌレート化合物を、0〜80質量部、好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは15〜45質量部加えることもできる。メラミンシアヌレート化合物は、粒径が細かい物が好ましい。本発明で用いるメラミンシアヌレート化合物の平均粒径は好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。ここで平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定によって得られた値をいう。
また、分散性の面から表面処理されたメラミンシアヌレート化合物が好ましく用いられる。本発明で用いることのできるメラミンシアヌレート化合物としては、MC6000(商品名、日産化学(株)製)、メラプアMF15(商品名、(株)チバ製)、スタビエースMC15(商品名、堺化学製)などがある。
そのほかに使用できるノンハロゲン系難燃助剤として、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、膨張性黒鉛、炭酸カルシウムなどを使用することができる。
(C1)シリコーンガム
(C1)シリコーンガムは、内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に含有する。シリコーンガムの配合量は、前記(a11)エチレン系共重合体及び(a12)ポリプロピレン樹脂を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、0〜6質量部、さらに好ましくは1〜6質量部である。内層と最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方に所定量のシリコーンガムを含有させることにより、内層と最外層との密着性を低下させることなく、シリコーンガムが内層と最外層の界面にブリードしやすくなり、内層と最外層との剥離を問題なく行うことができる。ここで、高分子量のシリコーンガムを使用することによって、構成素材と架橋し、長期に渡って界面の状態を維持することが出来る。高分子量シリコーンガムとしては、例えば、「CF−9150」(商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を使用することができる。
シリコーンガムの中でも、重量平均分子量が10万以上のものが好ましい。更に好ましくは、10〜80万である。また、25℃における動粘度は1万cSt以上のものが好ましい。
ここで、重量平均分子量は、下記条件のGPC(ゲル−パーミエーション クロマトグラフ)で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/4000/H3000/H2000(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
また、動粘度は、25℃で回転粘度計により粘度を測定し、その後、動粘度に換算した値である。
(その他の成分)
(1)不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂
難燃性樹脂組成物(X1)には、樹脂成分として、不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂を配合することができる。不飽和カルボン酸による変性量は、ポリオレフィン樹脂に対し、0.5〜15質量%のものを好ましく使用することができる。ここでポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどを使用することができる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸などを使用することができる。ポリオレフィン樹脂の変性は、例えば、ポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸を有機パーオキサイドの存在下で、加熱・混練することにより行うことができる。不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン樹脂としては、例えば、「アドテックス」(商品名、日本ポリエチレン(株)製)、「アドマー」(商品名、三井化学(株)製)、「モディック」(商品名、三菱化学(株)製)、「ポリボンド」(商品名、クロンプトン(株)製)を挙げることができる。
不飽和カルボン酸で変性されたポリオレフィン樹脂を配合することにより、機械的特性、耐磨耗性向上の効果を得ることができる。
本発明において、樹脂成分中における不飽和カルボン酸変性ポリオレフィンを配合する場合には、難燃性樹脂組成物(X1)の樹脂成分中0〜40質量%、好ましくは0〜30質量%とすることができる。
(2)スチレン系共重合体
難燃性樹脂組成物(X1)には、スチレン系共重合体を配合することができる。スチレン系共重合体としては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成された、二元又は三元の共重合体を使用することができる。
本発明のスチレン系共重合体のスチレン含有量は、10〜65質量%が好ましい。例えば、「セプトン4077」(商品名、クラレ(株)製)を挙げることができる。スチレン系共重合体の配合量としては、難燃性樹脂組成物(X1)の樹脂成分中、0〜40質量%、好ましくは、0〜30質量%、更に好ましくは0〜20質量%である。スチレン系共重合体を配合することにより、伸び特性や柔軟性の向上の効果を得ることができる。
(3)鉱物性オイル
難燃性樹脂組成物(X1)には、鉱物性オイルを配合することができる。鉱物性オイルとしては、パラフィン系のオイルである「ダイアナプロセスオイルPW」(商品名、出光興産(株)製)が挙げられる。
鉱物性オイルの配合量は、難燃性樹脂組成物(X1)中の樹脂成分100質量部に対し、0〜20質量部、好ましくは、0〜10質量部である。この添加量が多いほど、樹脂成分が流動的になり伸び特性、柔軟性が向上するが、強度特性、耐摩耗性、難燃性が低下する。
(4)酸化防止剤及び金属不活性化剤など
難燃性樹脂組成物(X1)には、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜、配合することができる。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
本発明のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線は、金属導体上に、例えば、直接又は間接に難燃性樹脂組成物を押出被覆して内層を形成し、その後、該内層を覆うように直接、難燃性樹脂組成物を押出被覆して最外層を形成する。前記内層及び最外層のうち内層は少なくとも電子線架橋されている。これにより、最外層を被覆する際に、押出・成形温度で内層の被覆材料が溶けず、最外層の材料と融着しないため、内層と最外層をきれいに剥離することができる。内層と最外層との剥離性(以下、ストリップ加工性ともいう)を良好なものとするために、内層と最外層をともに架橋することが好ましい。これにより、耐熱性を向上させることができる。電子線照射の照射量は1〜30Mradとすることが好ましい。照射量が少なすぎると内層を最外層の剥離性に問題が生じることがあり、照射量が多すぎると、十分な伸び特性を得られなかったり、多層絶縁電線に曲げ応力を加えて使用する場合に内層と最外層との間に剥離が生じて、電気絶縁性に問題が生じることがある。
電子線照射により架橋されている層として、以下の組成:
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部及び(C1)シリコーンガム0〜6質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)とすることができる。また、電子線照射により架橋されている層として、以下の組成:
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、(C1)シリコーンガム0〜6質量部、(E)架橋助剤として(E1)(メタ)アクリレート系架橋助剤及び(E2)アリル系架橋助剤のうち少なくとも1種0.03〜1.8質量部を含む樹脂混合物を溶融混練してなる難燃性樹脂組成物であることが好ましい。架橋助剤を含む組成物を用いることにより、架橋効率を向上させることができ、照射量を低減し、生産効率を向上させることができる。
電子線照射により架橋されている層以外の層は、
(a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、(C1)シリコーンガム0〜6質量部、(D1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(E)架橋助剤として(E1)(メタ)アクリレート系架橋助剤及び(E2)アリル系架橋助剤のうち少なくとも1種0.03〜1.8質量部を含む樹脂混合物を溶融混練して架橋された層であることが好ましい。
内層と最外層の厚さに特に制限はないが、例えば、内層の厚さは0.30〜2.00mm、外層の厚さは、0.15〜1.00mmが好ましい。
(実施例1〜9、比較例1〜9)
表1〜4に示す各成分をバンバリーミキサーで溶融・混練した後、ペレット化して、内層と最外層に使用される難燃性樹脂組成物を得た。次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、表1〜4に示されている内層樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した。その後、電子線照射架橋設備にて、照射量:1〜30Mrad、加速電圧:750keVで内層に電子線照射架橋を施した。
その後、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように、内層上に、最外層に使用される難燃性樹脂組成物を押出被覆して、最外層を形成した。その後、再度、照射量:1〜30Mrad、加速電圧:750keVで最外層に電子線照射架橋を施した。
(比較例10)
内層と最外層に表4の組成を用い、内層と最外層に電子線照射架橋を施さない以外は、実施例1と同様の方法で、ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
(比較例11)
内層と最外層に表4の組成を用い、内層に電子線照射架橋を施さずに、最外層を被覆した後に、照射量:5Mradで電子線照射を施す以外は実施例1と同様の方法で、最外層のみを電子線照射架橋したノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
(実施例10)
以下の方法により、多層(3層)ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
予め、表5の実施例10の最内層と中間層に用いる各成分(内1)をバンバリーミキサーで溶融混練した後、ペレット化して、表5に示す難燃性樹脂組成物(内層の樹脂組成物)を得た。同様の方法で、実施例10の最外層の各成分を用いて、難燃性樹脂組成物(最外層の樹脂組成物)を得た。
次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、外径2.05mmφとなるように、上記の難燃性樹脂組成物(内層の樹脂組成物)を押出・被覆した。その後、電子線照射架橋設備にて、照射量:5.0Mrad、加速電圧:750keVで内層に電子線照射架橋を施して、最内層を形成した。
その後、上記の樹脂組成物(内層の樹脂組成物)を用いて、これを中間層として、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、前記層の上に、樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した。その後、再度電子線照射架橋設備にて、照射量:5.0Mrad、加速電圧:750keVで電子線照射架橋を施して、中間層を形成した。
その後、上記の樹脂組成物(最外層の樹脂組成物)を上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように押出被覆し、再度電子線照射架橋設備にて、照射量:5.0Mrad、加速電圧:750keVで最外層に電子線照射架橋を施して、多層(3層)ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
(実施例11〜19、比較例12〜20)
表6〜9の内層に使用される難燃性樹脂組成物の各成分をバンバリーミキサーで溶融・混練した後、ペレット化してコンパウンドを得た。次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、表6〜9に示されている内層樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した。その後、電子線照射架橋設備を用いて、加速電圧:750keVで、表6〜9に示す照射線量:1〜30Mradの電子線を内層に電子線照射架橋を施した。
その後、表6〜9の最外層に使用される難燃性樹脂組成物を構成する各成分の混合物を、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように内層上に押出被覆して、化学架橋された最外層を形成した。
(比較例21)
表9の内層に使用される難燃性樹脂組成物の各成分をバンバリーミキサーで溶融・混練した後、ペレット化してコンパウンドを得た。次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、表9に示されている内層樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した。内層に架橋処理は施さなかった。
その後、表9の最外層に使用される難燃性樹脂組成物を構成する各成分の混合物を、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように内層上に押出被覆して、最外層を形成した。最外層に架橋処理は施さなかった。
(実施例20)
以下の方法により、多層(3層)ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
予め、表10の実施例20の内層の成分(内1)をバンバリーミキサーで溶融混練した後、ペレット化して、内層を構成する難燃性樹脂組成物を得た。また、表10の最外層に使用される難燃性樹脂組成物を構成する各成分(外1)の混合物を同様にして作製した。
次に、40mmφ押出機(L/D=25)にて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=70℃の押出温度条件により、導体(錫めっき処理軟銅線、34本/0.18mmφ)の上に、外径2.05mmφとなるように、上記内層を構成する難燃性樹脂組成物を押出・被覆した後、照射量:5Mrad、加速電圧:750keVで最内層に電子線照射架橋を施した。
その後、上記の内層を構成する難燃性樹脂組成物を中間層として、上記押出機を用いて、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、前記層の上に、樹脂組成物を外径2.89mmφとなるように押出・被覆した後、再度照射量:5Mrad、加速電圧:750keVで中間層に電子線照射架橋を施した。
その後、上記の最外層に使用される難燃性樹脂組成物を構成する各成分の混合物を、上記押出機で、ダイス温度200℃、以下フィーダー側へ、C3=200℃、C2=190℃、C1=170℃、プレヒーター温度=OFFの押出温度条件により、引き落とし法で、外径3.8mmφとなるように中間層上に押出被覆して、最外層を化学架橋して、多層ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線を得た。
得られたノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線について、下記に示されているUL1581に準拠した試験方法で各種の特性を評価した。
表1〜10に示す各成分としては、以下のものを用いた。表1〜10における、エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は JIS K 7210:1999 の条件による値をいう。
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体:V9000(商品名、三井・デュポンポリケミカル社製)
(2)エチレン−α−オレフィン共重合体:カーネルKS240T(商品名、日本ポリエ
チレン社製)
(3)エチレン−エチルアクリレート共重合体:NUC6510(商品名、 日本ユニカー社製)
(4)アクリル酸変性ポリプロピレン:ポリボンドP1002(商品名、ケムチュラ社製)
(5)ブロックポリプロピレン:ノバテックBC8A(商品名、日本ポリプロピレン社製)
(6)マレイン酸変性ポリエチレン:アドテックスL6100M(商品名、日本ポリエチレン社製)
(7)スチレン系エラストマー:セプトン4077(商品名、クラレ社製)
(8)鉱物性オイル:ダイアナプロセスオイルPW90(商品名、出光興産社製)
(9)ビニルシランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム:マグシーズFK640(商品名、神島化学工業社製)
(10)メラミンシヌレート系難燃剤:MC6000(商品名、日産化学社製)
(11)スズ酸亜鉛系難燃助剤:アルカネックスZHS(商品名、水澤化学工業社製)
(12)ポリエチレンワックス:AC−PE−No.6(商品名、ハネウェル社製)
(13)シリコーンガム:CF9150(商品名、 東レ・ダウコーニング社製)
(重量平均分子量:10万以上、25℃における動粘度:100万cSt)
ここで、シリコーンガムの重量平均分子量と粘度は以下の方法により測定した値である。
(重量平均分子量)
下記条件のGPC)ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/4000/H3000/H2000(商品名、東ソー社製)
流量:0.6ml/min
濃度:0.3質量%
注入量:20μl
カラム温度:40℃
(動粘度)
25℃で回転粘度計により粘度を測定し、その後、動粘度に換算した。
(14)オレイン酸アマイド:アーモスリップCP(商品名、ライオン社製)
(15)架橋助剤:メタクリレート系の架橋助剤、NKエステル3G(商品名、新中村化学工業社製)
(16)有機パーオキサイド:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペロオキシ)−ヘキサン、パーヘキサ25B(商品名、日本油脂社製)
(17)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:イルガノックス1076(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(18) ヒンダードフェノール系金属不活性剤:イルガノックスMD1024(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
<ノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線の試験及び評価>
1.引張試験
二重絶縁電線から導体を抜き取り、さらに内層と外層を剥離して管状サンプルを準備し、それぞれ標点距離25mm、引張速度500mm/minで、破断伸び(%)、破断強度(MPa)を測定した。外層については、破断伸びが150%以上を合格、破断強度が13.79MPa以上を合格とした。また、内層については、破断伸びが150%以上を合格、破断強度が10.3MPa以上を合格とした。
2.老化引張試験
1.の引張試験に用いたサンプルと同等の形状のものを136℃の恒温槽内で7日間保持した後、室温で十分に冷却し、それぞれ標点距離25mm、引張速度500mm/minで、破断伸び(%)及び破断強度(MPa)を測定した。得られた測定データと、(1)の老化前引張データを用いて、破断伸び残率(%)、破断強度残率(%)を算出した。外層については、破断伸び残率(%)が70%以上を合格、破断強度残率が85%以上を合格とした。また、内層については、破断伸び残率(%)が45%以上を合格、破断強度残率(MPa)が70%以上を合格とした。
3.加熱変形試験
UL1581に基づき、内層と最外層の加熱変形を層ごとに測定した。最外層には250gfの負荷荷重を、最外層に接する内層には400gfの負荷荷重を120℃の温度下で60分間与え、各層の試験後の変形率を測定した。測定はn=2で行い、その平均値について、各層とも50%以下を合格とし、50%以上を超えるものを不合格とした。
4.垂直燃焼試験VW−1
多層絶縁電線のサンプル(以下、「内外層一括のサンプル」ともいう。)を、たるみのない状態で張った後、このサンプル上に指示旗、サンプル下に綿を設置した。フードを外した状態で15secの着火と60secの離火を5回繰り返した。60sec以上のサンプルの燃焼、指示旗の燃焼および綿の燃焼の全てが観察されなかったサンプルを合格とした。
5.内層/外層間密着力測定
多層絶縁電線の最外層の端末を50mmの長さで剥した電線を用意した。最外層の被覆と最外層に接する内層の間に3.0mmφ程度のダイスをセットし、引張試験機を用いて、50mm/minの速度で最外層を引き抜いた。その際、計測された荷重を密着力とした。密着力が、20〜30N程度で、引き抜き可能であって、配線の際に容易に外層が外れないものを○と評価した。
Figure 0005535136
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表1〜10からわかるように、本発明の多層絶縁電線は、内層と外層の単独でも十分な機械特性を示し、加熱変形試験でも優れた結果を示した。また、難燃性も、内層と外層の密着性も適度な値を示した。内層及び最外層のうち、内層が電子線照射により架橋されている本発明の多層絶縁電線はすべての項目において優れた特性を示した。内層が電子線照射により架橋され、最外層が化学架橋されている場合もすべての項目において優れた特性を示した。内層と最外層が両方とも電子線照射により架橋されている場合も同様であった。また2層からなる場合だけでなく、3層からなる場合も問題は生じず、3層以上からなる多層絶縁電線の場合も同様の優れた効果を示すことがわかった。
これに対して、比較例1、12では、最外層と内層のエチレン系共重合体の配合量が少なすぎるため、難燃性が不合格であり、比較例2、13では、逆にエチレン系共重合体の配合量が多すぎるため、密着性が高すぎる結果となった。また比較例3、14では、最外層と内層のポリプロピレン樹脂が多すぎるため、破断伸びが不合格となった。金属水和物が少なすぎる比較例4、15は難燃性が不合格であり、金属水和物が多すぎる比較例5、16は機械特性が低くなった。
また、比較例6、17では、最外層及び内層に含まれるシリコーンガムが多すぎるため、樹脂組成物の製造が困難な場合があり、押出被覆の際にスクリューが滑って成形性に支障を生じた。さらに、比較例7〜9、18〜20からわかるように、シリコーンガムに代えて、他の滑剤を用いてもストリップ加工性に問題が生じた。また、比較例10、21からわかるように、内層及び最外層の少なくとも一方にシリコーンガムを含む組成物を用いていても、内層と最外層がいずれも架橋されていない場合は、ストリップ加工性に問題を生じた。また、比較例10、11、21では、内層が電子線架橋されていないため、ストリップ加工性に問題を生じた。
1 金属導体
2 内層
3 最外層
4 他の層
10 一実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線
20 別の実施形態のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線

Claims (5)

  1. 金属導体上に直接又は間接に内層が設けられ、前記内層を覆うように直接最外層が設けられた少なくとも2層からなるノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線であって、前記内層及び最外層のうち、少なくとも内層が電子線架橋されてなり、
    前記内層および前記最外層が、下記組成:
    (a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部及び(C1)シリコーンガム0〜6質量部を有する難燃性樹脂組成物(X1)を用いて押出被覆され、
    前記内層と前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物の少なくともいずれか一方がシリコーンガムを、前記樹脂成分(A1)100質量部に対し、1〜6質量部含有することを特徴とするノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  2. 前記(a11)成分のうち、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体が、少なくとも前記樹脂成分(A1)の30質量%以上であることを特徴とする請求項1記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  3. 前記シリコーンガムが、前記内層を構成する難燃性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、1〜6質量部含有し、前記最外層を構成する難燃性樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対して、1〜6質量部含有する請求項1又は2記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  4. 前記電子線照射により架橋されている層以外の層が、
    (a11)エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体からなる群から選ばれたエチレン系共重合体30〜95質量%、(a12)ポリプロピレン樹脂5〜20質量%を含有する樹脂成分(A1)100質量部に対し、(B1)金属水和物120〜300質量部、(C1)シリコーンガム〜6質量部、(D1)有機パーオキサイド0.01〜0.6質量部、(E)架橋助剤として(E1)(メタ)アクリレート系架橋助剤及び(E2)アリル系架橋助剤のうち少なくとも1種0.03〜1.8質量部を含む樹脂混合物を溶融混練して架橋された層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
  5. 前記電子線照射により架橋されている層の照射量が1〜30Mradであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のノンハロゲン系難燃性多層絶縁電線。
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