JP5527052B2 - 誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品 - Google Patents

誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、高周波領域で使用される電子部品に使用される誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品に関する。
近年、需要が増加している携帯電話等の移動体通信機器では、数百MHzから数GHz程度のいわゆる準マイクロ波と呼ばれる高周波帯域が使用されている。そのため、移動体通信機器に用いられるコンデンサ、フィルター、共振器、回路基板等の電子部品においても高周波帯域での使用に適した諸特性が要求されている。
高周波帯域で使用される電子部品の一つである回路基板は、電極や配線等の導体(以下、「導体材」という。)を備え、磁性体と誘電体とを組み合わせてなるLCフィルター、高誘電率材料と低誘電率材料とを組み合わせてなるコンデンサなどを内蔵し、LCフィルターやコンデンサなどの回路を形成している。
回路基板では、その配線層での配線間容量に起因する信号遅延を低減するため、基板の比誘電率εrを低くすることが必要となる。また、回路基板では、高周波信号を減衰させないため、基板のQf値を大きくすること(即ち、誘電損失を小さくすること)が必要となる。従って、回路基板用の材料としては、使用周波数における比誘電率εrが低く、且つQf値が大きい誘電体材料が要求される。Qは、誘電体における現実の電流と電圧の位相差と、理想の電流と電圧の位相差90度との差である損失角度δの正接tanδの逆数であり、fは共振周波数である。Qf値は、品質係数Q=1/tanδと共振周波数fとの積で表され、Qf値が大きくなると、誘電損失は小さくなる。
一般に誘電率の低い材料は誘電損失が小さいものが多く、マイクロ波領域のデバイスに使用されており、例えば、LCフィルターは高誘電率材料と低誘電率材料とを同時焼成して形成される。LCフィルターはそのL部を構成する部分のセラミック材料に自己共振周波数を高く取れるように高いQ値を有する低誘電率材料を、C部に温度特性が良く誘電率の高い材料を用いることで温度特性の良い高Q値を有するLC素子を実現できる。
このような誘電体材料としては、例えば、フォルステライト(Mg2SiO4)を主成分とし、亜鉛酸化物、ホウ素酸化物、アルカリ土類金属酸化物、銅化合物、及びリチウム化合物を副成分として含む誘電体磁器組成物(以下、「フォルステライト系組成物」という。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。フォルステライト系組成物は、導体材である金属Ag又はAg系合金(以下、Ag系金属という。)の融点より低い温度(低温)で焼成することが可能となり、基板としての強度を上昇させることができることから、回路基板用の誘電体材料に適している。
フォルステライト系組成物の焼結温度は約1000℃以下であり、従来の誘電体磁器組成物の焼結温度より低いため、PdやPtなどの従来から用いられてきた導体材に比べて融点が低く、低抵抗であり、且つ安価なAg系金属を導体材として用いることができる。そのため、フォルステライト系組成物は、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で同時焼成することが可能である。そのため、フォルステライト系組成物を用いて回路基板を形成する際、フォルステライト系組成物はAg系金属などの導体材と同時に焼成可能な低温焼成材料(LTCC)として用いられ、各層にLCフィルターやコンデンサなどの回路を形成することが可能である。
特開2009−132579号公報
しかしながら、従来のフォルステライト系組成物は、本焼成した後、添加している亜鉛酸化物などの焼結助剤が未反応のまま残るため、得られる誘電体磁器の誘電損失が大きくなる、という問題がある。
また、焼結助剤の添加量を減らし、未反応物の焼結助剤を軽減した場合、フォルステライト系組成物を焼成して得られる焼成材料の焼結性を損ない、基板の誘電損失、強度を悪化させる、という問題がある。
そのため、フォルステライト系組成物を用いて低温で焼成した後に未反応の焼結助剤が残るのを抑制すると同時に、焼結助剤を完全に反応させて、焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、優れた誘電特性を有する誘電体磁器が求められている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低温で焼成して得ることを可能としつつ、焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、優れた誘電特性を有する誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品物について鋭意研究をした。その結果、Mg2SiO4を主成分として含む誘電体磁器は、X線回折において、主相であるMg2SiO4に対する未反応なまま存在する亜鉛酸化物のピーク強度比を抑えると共に、誘電体磁器の相対密度を大きくすることにより、誘電体磁器は焼結性を確保することができ、抗折強度を維持すると共に、優れた誘電特性を有することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明に係る誘電体磁器は、Mg2SiO4を含む主成分と、亜鉛酸化物及びガラス成分を含む副成分とを含み、X線回折において、主相であるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAに対する、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、相対密度が96%以上であることを特徴とする。
上記組成によれば、副成分として含まれるガラス成分が液相としての役割を果たし、未反応で残る焼結助剤とMg2SiO4との反応性を促進し、誘電体磁器組成物の焼成後に未反応で残る焼結助剤を低減することができると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるため、誘電体磁器の焼結性を確保することができる。このとき、誘電体磁器のX線回折におけるピーク強度比IB/IAを10%以下とし、相対密度を96%以上とする。この結果、誘電体磁器のQ値を上昇させることができ、誘電損失を小さくすることができる。また、上記組成によれば、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成することができると共に、誘電体磁器組成物の焼成温度の低下に伴い生じる誘電体磁器の抗折強度の低下を抑制することができる。
尚、誘電体磁器組成物とは、誘電体磁器の原料組成物であり、誘電体磁器とは、誘電体磁器組成物を焼結させることによって得られる焼結体である。また、焼結とは、誘電体磁器組成物を加熱することで、誘電体磁器組成物が焼結体(誘電体磁器)となり、緻密な物体になる現象である。一般に、加熱前の誘電体磁器組成物に比べて、焼結体(誘電体磁器)の密度、機械的強度等は大きくなる。また、焼結温度とは、誘電体磁器組成物が焼結する際の誘電体磁器組成物の温度である。また、焼成とは、焼結を目的とした加熱処理を意味し、焼成温度とは、加熱処理の際に誘電体磁器組成物が曝される雰囲気の温度である。
本発明の好ましい態様として、前記ガラス成分は、Li2Oを含むガラスを少なくとも1つ以上含むことが好ましい。ガラス成分がLi2Oを含むことで、更に未反応な焼結助剤とMg2SiO4との反応を促進し、誘電体磁器組成物の焼成後、誘電体磁器中に未反応で残る焼結助剤を更に低減すると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるので、誘電体磁器の焼結性は更に安定して確保できる。このため、得られる誘電体磁器のQ値は更に上昇させることができ、誘電損失を更に小さくすることができる。また、誘電体磁器の抗折強度を更に安定させることができる。
本発明の好ましい態様として、前記亜鉛酸化物の含有量が、10質量部以上16質量部以下であることが好ましい。前記亜鉛酸化物(特に、ZnO)は、誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成する際に、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で焼成するのに寄与するため、前記亜鉛酸化物の含有量を上記範囲内とすることで、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と安定して同時焼成させ、誘電体磁器を得ることができる。
本発明に係る誘電体磁器の製造方法は、Mg2SiO4を含む主成分と、亜鉛酸化物及びガラス成分を含む副成分とを含む誘電体磁器を製造するにあたり、酸化マグネシウムの原料粉末と二酸化珪素の原料粉末とを混合して熱処理し、Mg2SiO4結晶粉末を作製し、前記Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として前記亜鉛酸化物及びガラス成分を添加し、誘電体磁器組成物を得る誘電体磁器組成物の作製工程と、前記誘電体磁器組成物を酸素雰囲気下において800℃以上1000℃以下の温度で焼成して、焼結体を得る焼成工程とを含み、X線回折において、前記焼結体の主相であるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAに対する、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、相対密度が96%以上であることを特徴とする。
上記組成を有する誘電体磁器組成物は、酸素雰囲気下において800℃以上1000℃以下の温度で焼成でき、低温(Ag系金属の融点より低い温度)でAg系金属と同時焼成することができる。また、誘電体磁器組成物を低温(Ag系金属の融点より低い温度)焼成する際、副成分として含まれる亜鉛酸化物及びガラス成分が液相としての役割を果たし、未反応で残る焼結助剤とMg2SiO4との反応を促進することができる。これにより、誘電体磁器組成物の焼成後、誘電体磁器に未反応で残る焼結助剤を低減することができると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるため、誘電体磁器の焼結性を確保することができる。このとき、得られる誘電体磁器は、ピーク強度比IB/IAを10%以下とし、相対密度を96%以上とする。これにより、得られる誘電体磁器のQ値を上昇させ、誘電損失を小さくすることができる。また、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成する際、誘電体磁器組成物の焼成温度の低下に伴い生じる誘電体磁器の抗折強度の低下を抑制することができる。このため、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で焼成して得られる誘電体磁器の抗折強度を、従来のフォルステライト系組成物を焼成して得られる誘電体磁器よりも向上させることができる。
本発明の好ましい態様として、前記ガラス成分として、Li2Oを含むガラスを少なくとも1つ以上含むことが好ましい。ガラス成分がLi2Oを含むことで、更に未反応な焼結助剤とMg2SiO4との反応を促進し、誘電体磁器組成物の焼成後、誘電体磁器に未反応で残る焼結助剤を更に低減すると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるので、誘電体磁器の焼結性は更に安定して確保できる。このため、得られる誘電体磁器のQ値は更に上昇させることができ、誘電損失を更に小さくすることができる。また、誘電体磁器の抗折強度を更に安定させることができる。
本発明の好ましい態様として、前記亜鉛酸化物の含有量が、10質量部以上16質量部以下であることが好ましい。前記亜鉛酸化物(特に、ZnO)は、誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成する際に、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で焼成するのに寄与するため、前記亜鉛酸化物の含有量を上記範囲内とすることで、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と安定して同時焼成させることができる。
本発明に係る電子部品は、上記何れか一つに記載の誘電体磁器からなる誘電体層を有することを特徴とする。誘電体層には、本発明に係る誘電体磁器が用いられるため、Q値は大きく、誘電損失は小さくなるので、高周波帯域での使用に適した特性が得られ、信頼性の高い電子部品を提供することができる。
本発明によれば、低温で焼成して得ることを可能としつつ、焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、優れた誘電特性を有する誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る誘電体磁器の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、本実施形態の電子部品をLCフィルターとした場合の一実施形態を模式的に示す概念断面図である。 図3は、本実施形態に係る電子部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図4は、実施例4及び比較例7のX線回折チャートである。
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
<誘電体磁器>
本実施形態に係る誘電体磁器は、Mg2SiO4を含む主成分と、ZnO及びガラス成分を含む副成分とを含み、X線回折において、主相であるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAに対する、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、相対密度が96%以上である。
なお、本実施形態において、誘電体磁器組成物とは、誘電体磁器の原料組成物であり、誘電体磁器とは、誘電体磁器組成物を焼結させることによって得られる焼結体である。また、焼結とは、誘電体磁器組成物を加熱することで、誘電体磁器組成物が焼結体(誘電体磁器)となり、緻密な物体になる現象である。一般に、加熱前の誘電体磁器組成物に比べて、焼結体(誘電体磁器)の密度、機械的強度等は大きくなる。また、焼結温度とは、誘電体磁器組成物が焼結する際の誘電体磁器組成物の温度である。また、焼成とは、焼結を目的とした加熱処理を意味し、焼成温度とは、加熱処理の際に誘電体磁器組成物が曝される雰囲気の温度である。
誘電体磁器組成物を低温で焼成することが可能であるか否か(低温焼結性)の評価は、誘電体磁器組成物の焼成温度を徐々に下げて焼成し、本実施形態に係る誘電体磁器が所望の誘電体高周波特性が得られる程度に誘電体磁器組成物が焼結しているかどうかで判断することができる。また、本実施形態に係る誘電体磁器についての誘電特性は、Qf値、温度変化による共振周波数の変化(共振周波数の温度係数τf)、及び比誘電率εrによって評価することができる。Qf値、比誘電率εrは、日本工業規格「マイクロ波用ファインセラミックスの誘電特性の試験方法」(JIS R1627 1996年度)に従って測定することができる。
<主成分>
本実施形態に係る誘電体磁器には、Mg2SiO4(フォルステライト)が主成分として含まれる。Mg2SiO4は、単体でのQf値が200000GHz以上であり、誘電損失が小さいため、誘電体磁器の誘電損失を低下させる機能を有する。また、Mg2SiO4は、その比誘電率εrが6から7程度と低いため、誘電体磁器の比誘電率εrを低下させる機能も有する。ここで、誘電損失は、高周波のエネルギの一部が熱となって放散する現象である。誘電損失の大きさは、上記の通り、現実の電流と電圧の位相差と理想の電流と電圧の位相差90度との差である損失角度δの正接tanδの逆数Q(Q=1/tanδ)で表わされる。誘電体磁器の誘電損失の評価は、このQと共振周波数fの積であるQf値を用いている。誘電損失が小さくなればQf値は大きくなり、誘電損失が大きくなればQf値は小さくなる。誘電損失は高周波デバイスの電力損失を意味するため、誘電体磁器のQf値は大きいことが好ましい。本実施形態では、誘電損失の評価は、Q値を用いる。
誘電体磁器の誘電損失を下げるという観点から、主成分に占めるMgSiOの割合が100質量部であることが好ましいが、比誘電率εrを調整するため、MgSiO以外の主成分をMg2SiO4と併用することができる。Mg2SiO4以外の主成分としては、例えば比誘電率εrが17前後であるチタン酸マグネシウム(MgTiO3)、及び比誘電率εrが200前後であるチタン酸カルシウム(CaTiO3)等が挙げられる。
Mg2SiO4を構成するMgOとSiO2とのモル比は、化学量論的にはMgO対SiO2が2対1であるが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、本実施形態に係る誘電体磁器の効果を損なわない範囲内で化学量論比から外れてもよい。例えば、MgO対SiO2は、1.9対1.1から2.1対0.9の範囲内とすることができる。
本実施形態の誘電体磁器中のMg2SiO4の含有量は、誘電体磁器全体から後述する各副成分を除いた残部であることが好ましい。誘電体磁器がこのような条件で主成分であるMg2SiO4を含むことで、誘電損失及び比誘電率εrを低下する効果が確実に得られるようになる。なお、主成分として上記のようなMg2SiO4以外の成分を含む場合、主成分の合計は誘電体磁器全体から後述の各副成分を除いた残部となる。
<副成分>
本実施形態の誘電体磁器は、主成分であるMg2SiO4に対する副成分として、亜鉛酸化物及びガラス成分を含む組成で構成されている。副成分は、誘電体磁器組成物を焼成する際に液相を形成する焼結助剤として用いられる。特に、副成分として含まれるガラス成分は液相としての役割を果たし、未反応で残る焼結助剤と主成分であるMg2SiO4との反応性を促進する。これにより、誘電体磁器組成物の焼成後に誘電体磁器に未反応で残る焼結助剤を低減することができると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるため、誘電体磁器の焼結性が確保される。この結果、得られる誘電体磁器のQ値を上昇させることができ、誘電損失を小さくすることができる。
また、亜鉛酸化物及びガラス成分を誘電体磁器組成物の焼成時に液相を形成する焼結助剤として添加し、副成分として誘電体磁器組成物に含有させることによって、誘電体磁器組成物の焼結温度が低下する。このため、誘電体磁器組成物を焼成し、誘電体磁器を作製する際、誘電体磁器組成物を低温(Ag系金属の融点より低い温度)でAg系金属と同時に焼成することが可能となり、低温焼成化を図ることができると共に、誘電体磁器組成物の焼成温度の低下に伴い生じる誘電体磁器の抗折強度の低下を抑制することができる。よって、誘電体磁器組成物の低温(Ag系金属の融点より低い温度)焼成を可能としつつ、得られる誘電体磁器の抗折強度を、従来のフォルステライト系組成物を焼成して得られる誘電体磁器よりも向上させることができる。
亜鉛酸化物としては、例えばZnO等が挙げられる。ガラス成分は、Li2Oを含むガラスを少なくとも1つ以上含むものであることが好ましい。ガラス成分がLi2Oを含むことで、更に未反応な焼結助剤とMg2SiO4との反応性を促進し、誘電体磁器組成物の焼成後、誘電体磁器に未反応で残る焼結助剤を更に低減すると共に、焼結助剤を完全に反応させることができるので、誘電体磁器の焼結性は更に安定して確保できる。これにより、得られる誘電体磁器のQ値は更に上昇させることができ、誘電損失を更に小さくすることができる。また、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成することを可能としつつ誘電体磁器の抗折強度を更に安定して確保することができる。
このようなガラス成分としては、例えば、SiO2−RO−Li2O(ROはアルカリ土類金属酸化物を1種類以上含む)系ガラスとB23−RO−Li2O系ガラスとの何れか一方又は両方を含んで構成されるものが好ましい。ガラス成分として、具体的には、SiO2−RO−Li2O系ガラスとしては、SiO2−CaO−Li2O系ガラス、SiO2−SrO−Li2O系ガラス、SiO2−BaO−Li2O系ガラス、SiO2−CaO−SrO−Li2O系ガラス、SiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラス、SiO2−SrO−BaO−Li2O系ガラス、SiO2−CaO−SrO−BaO−Li2O系ガラスなどが挙げられる。B23−RO−Li2O系ガラスとしては、B23−CaO−Li2O系ガラス、B23−SrO−Li2O系ガラス、B23−BaO−Li2O系ガラス、B23−CaO−SrO−Li2O系ガラス、B23−BaO−CaO−Li2O系ガラス、B23−SrO−BaO−Li2O系ガラス、B23−CaO−SrO−BaO−Li2O系ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、SiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスが好ましい。
亜鉛酸化物の含有量は、亜鉛酸化物の質量をZnOに換算した場合、主成分100質量部に対して、8.0質量部以上20質量部以下であることが好ましく、10質量部以上16質量部以下であることがより好ましく、12.0質量部以上16.0質量部以下であることが更に好ましい。亜鉛酸化物(特に、ZnO)は、誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成する際に、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で焼成するのに寄与する。このため、亜鉛酸化物の含有量を上記範囲内とすることで、低温(Ag系金属の融点より低い温度)で誘電体磁器組成物をAg系金属と安定して同時焼成させることが可能となる。
亜鉛酸化物の含有量が8.0質量部未満となると、低温焼結効果(即ち、より低い温度での誘電体磁器組成物の焼結を可能とする効果)が不充分となる傾向があり、誘電体磁器の焼結密度は小さくなり、品質係数Qが低下して、誘電損失が大きくなる傾向があると共に、抗折強度を向上する効果が小さくなる傾向がある。また、亜鉛酸化物の含有量が20質量部を超えると、品質係数Qが低下して、誘電損失が大きくなる傾向がある。そこで、亜鉛酸化物の含有量を上記範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
副成分の一種であるガラス成分の含有量は、ガラス成分の質量をSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスに換算した場合、副成分からガラス成分を除いた誘電体組成100質量部に対して、2.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上7.0質量部以下であることがより好ましい。
ガラス成分の含有量が2.0質量部未満となると、低温焼結効果が不充分となり、焼結が不足し、本実施形態に係る誘電体磁器の焼結密度は小さくなり、品質係数Qは低下し、誘電損失が大きくなる傾向があると共に、抗折強度を向上する効果が小さくなる傾向がある。また、ガラス成分の含有量が10.0質量部を超えると、品質係数Qは低下し、誘電損失が大きくなる傾向がある。そこで、ガラス成分の含有量を上記範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
本実施形態に係る誘電体磁器においては、副成分に含まれる成分として、亜鉛酸化物及びガラス成分以外に、例えば、ホウ素酸化物、アルカリ土類金属酸化物などを含むようにしてもよい。具体的なホウ素酸化物としては、B23等が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、BaO、SrO、CaO、MgO等が挙げられる。
ホウ素酸化物の含有量は、ホウ素酸化物の質量をB23に換算した場合、主成分100質量部に対して、3.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましい。
ホウ素酸化物の含有量が3.0質量部未満となると、低温焼結効果が不十分となる傾向があり、品質係数Qが低下して誘電損失が大きくなる傾向がある。また、ホウ素酸化物の含有量が10.0質量部を超えると、誘電体磁器の焼結密度が低くなり易く、品質係数Qが低下して誘電損失が大きくなると共に、抗折強度が向上する効果が小さくなる傾向がある。そこで、ホウ素酸化物の含有量を上記範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
アルカリ土類金属酸化物の含有量は、アルカリ土類金属酸化物の質量をRO(Rはアルカリ土類金属元素を示す)に換算した場合、主成分100質量部に対して、1.0質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。アルカリ土類金属酸化物を誘電体磁器組成物に含有させることによって、誘電体磁器組成物の低温焼結効果が顕著となる。
アルカリ土類金属酸化物の含有量が1.0質量部未満となると、低温焼結効果が十分に得られなくなる傾向があり、本実施形態に係る誘電体磁器の焼結密度が低くなり易く、品質係数Qが低下して誘電損失が大きくなると共に、抗折強度が向上する効果が小さくなる傾向がある。また、アルカリ土類金属酸化物の含有量が4.0質量部を超えると、低温焼結効果は顕著となるものの、品質係数Qが低下して、誘電損失が大きくなる傾向がある。そこで、アルカリ土類金属酸化物の含有量を上記範囲内とすることによって、これらの傾向を抑制できる。
アルカリ土類金属であるRとしては、Ba、Sr、Caの何れかが好ましく、これらの2種以上を混合して用いてもよい。具体的なアルカリ土類金属酸化物ROとしては、MgO、CaO、SrO、BaO等が挙げられる。
本実施形態に係る誘電体磁器では、X線回折におけるピーク強度比IB/IAは10%以下であり、好ましくは5%以下であり、更に好ましくは0%である。ピーク強度比IB/IAが10%を越えると、誘電体磁器の焼結性は不十分となり、十分な強度が得られないからである。
X線回折において、主相であるMg2SiO4のX線回折ピーク強度IAは、2θが36.0°から37.0°の間に最大ピークが生じ、亜鉛酸化物のX線回折ピーク強度IBは、2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°の間に生じる。このX線回折ピーク強度IBから未反応なまま残存する亜鉛酸化物を確認することができ、X線回折ピーク強度IAと比較することで、主成分中に未反応なまま残存する亜鉛酸化物の割合を確認することができる。主成分中に未反応なまま残存する亜鉛酸化物は、誘電体磁器組成物を焼結した際の誘電体磁器の焼結性に影響し、誘電体磁器の焼結密度を低下させ、Q値を低下させる。よって、ピーク強度比IB/IAを10%以下とし、主成分中に未反応なまま残存する亜鉛酸化物の割合を小さくすることで、誘電体磁器の焼結性を確保し、誘電体磁器の焼結密度を良好とし、Q値を上昇させることができる。
X線回折ピーク強度IAのMg2SiO4の2θの角度は、36.0°から37.0°の間の範囲内としているが、後述するように、誘電体磁器組成物を作製する際、Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として亜鉛酸化物やガラス成分を添加しており、誘電体磁器に含まれる副成分の組成比に応じて若干変動することから、Mg2SiO4の2θの角度は、36.0°から36.5°の間の範囲内が好ましく、36.3°付近がより好ましい。
X線回折ピーク強度IBの未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θの角度は、31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°の間の範囲内と各々しているが、上記と同様に、誘電体磁器に含まれる副成分の組成比に応じて若干変動することから、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θの角度のうち31.0°から32.0°の値は、31.5°から32.0°の間の範囲内が好ましく、31.8°付近がより好ましい。また、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θの角度のうち33.0°から34.0°の角度は、33.3°から33.8°の間の範囲内が好ましく、33.6°付近がより好ましい。
本実施形態に係る誘電体磁器では、相対密度が96%以上であり、好ましくは99%以上である。相対密度は誘電体磁器組成物を焼成した際の焼成性を示す。相対密度が96%を下回ると、誘電体磁器の焼結性は不十分となり、誘電体磁器のQ値の低下、強度の低下を引き起こすからである。誘電体磁器組成物の主成分をMgSiOとし、副成分をZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスとした時、同一の組成の誘電体磁器組成物の焼成温度と時間とを変化させて焼結密度ρsを測定した際、その焼結密度ρsの値が3.35g/cm3である。誘電体磁器の主成分と副成分との組成比によって誘電体磁器の焼結密度ρsの値は若干変動するが、相対密度は、例えば、誘電体磁器の焼結密度ρsの値が、3.35g/cm3の時を、相対密度100%と規定して求めることができる。よって、本実施形態に係る誘電体磁器の相対密度を96%以上とすることで、誘電体磁器の焼結性は確保できるので、得られる誘電体磁器の焼結密度を良好とし、Q値を上昇させ、誘電損失を低下させることができると共に、抗折強度を上昇させることができる。
Q値の低下は電子部品の損失が大きくなることを意味し、Q値が大きいほど、電子部品の損失は小さく抑えられる。本実施形態に係る誘電体磁器は、亜鉛酸化物及びガラス成分の含有量を誘電体磁器組成物と同様の範囲内とし、X線回折におけるピーク強度比IB/IAを10%以下とすると共に、相対密度を96%以上とする。これにより、本実施形態に係る誘電体磁器は、焼結性及び抗折強度を確保することができると共に、Q値を上昇させ、誘電損失を小さくすることが可能となる。このため、誘電体磁器組成物の低温焼結化を図りつつ、本実施形態に係る誘電体磁器のQ値を、所定値(例えば、1000)以上に維持することができる。よって、本実施形態に係る誘電体磁器は、Ag系金属等の低融点の導体材を内部電極とする電子部品に用いられる低温焼成が可能な誘電体磁器を提供することができる。
このように、本実施形態に係る誘電体磁器は、主成分としてMg2SiO4を含み、副成分として亜鉛酸化物及びガラス成分を含み、X線回折において、ピーク強度比IB/IAを10%以下とすると共に、相対密度を96%以上とするものである。本実施形態に係る誘電体磁器に副成分として含まれるガラス成分は、誘電体磁器組成物を焼成する際、液相としての役割を果たし、未反応で残る焼結助剤とMg2SiO4との反応を促進させることができ、誘電体磁器組成物を低温で焼成しても未反応な焼結助剤をなくし、焼結助剤を完全に反応させ、誘電体磁器の焼結性を確保することができる。このとき、本実施形態に係る誘電体磁器のピーク強度比IB/IAは10%以下であると共に、相対密度は96%以上である。これにより、得られる誘電体磁器のQ値を上昇させることができ、誘電損失を小さくすることができる。また、上記組成によれば、Ag系金属が溶融しない程度の低温で誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成することができると共に、誘電体磁器組成物の焼成温度の低下に伴い生じる抗折強度の低下を抑制することができる。このため、低温で焼成して得られる誘電体磁器の抗折強度を、従来のフォルステライト系組成物を焼成して得られる誘電体磁器よりも向上させることができる。従って、本実施形態に係る誘電体磁器は、低温で焼成して得ることを可能としつつ、焼結性が確保され、抗折強度を維持すると共に、誘電損失を低下させることが可能となる。
<誘電体磁器の製造方法>
本実施形態に係る誘電体磁器の製造方法の一例について説明する。図1は、本実施形態に係る誘電体磁器の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る誘電体磁器の製造方法は、Mg2SiO4を含む主成分と、ZnO及びガラス成分を含む副成分とを含む誘電体磁器を製造するにあたり、以下の工程を含む。
(a) 酸化マグネシウムの原料粉末と二酸化珪素の原料粉末とを混合して熱処理し、Mg2SiO4結晶粉末を作製するMg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS11)
(b) Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として前記亜鉛酸化物及びガラス成分を添加し、誘電体磁器組成物を得る誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS12)
(c) 誘電体磁器組成物を酸素雰囲気下において800℃以上1000℃以下の温度で焼成して、焼結体を得る焼成工程(ステップS13)
<Mg2SiO4結晶粉末の作製工程:ステップS11>
Mg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS11)は、酸化マグネシウム(MgO)の原料粉末と酸化珪素(SiO2)の原料粉末とを混合して仮焼きし、フォルステライト(Mg2SiO4)結晶粉末を作製する工程である。Mg2SiO4結晶粉末の原料となるMgOの原料粉末とSiO2の原料粉末とをそれぞれ所定量秤量した後、混合する。これにより原料混合粉末を得る。なお、副成分の各原料の秤量は、完成後の誘電体磁器組成物において、各副成分の含有率が、誘電体磁器組成物全体に対して所望の上記比率(質量部)となるように行う。また、MgOの原料粉末及びSiO2の原料粉末との混合は、乾式混合又は湿式混合等の混合方式で行うことができ、例えば、ボールミルなどの混合分散機で純水、エタノール等の溶媒を用いて混合する。ボールミルの場合の混合時間は4時間から24時間程度とする。
原料混合粉末を、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下で12時間から36時間程度乾燥させた後、熱処理(仮焼き)する。この仮焼きによって、MgSiO結晶が得られる。仮焼温度は、1100℃以上1500℃以下であることが好ましく、1100℃以上1350℃以下であることが好ましい。また、仮焼時間は1時間から24時間程度行うことが好ましい。
合成されたMgSiO結晶を、粉砕して粉末とした後、乾燥する。これにより、MgSiO結晶粉末が得られる。このMgSiO結晶粉末が誘電体磁器の主成分粉末として用いられる。粉砕は乾式粉砕又は湿式粉砕等の粉砕方式で行なうことができ、例えば、ボールミルで純水、エタノール等の溶媒を用いて湿式粉砕する。粉砕時間は、特に限定されるものではなく、所望の平均粒子径の大きさのMgSiO結晶粉末が得られればよく、粉砕時間は例えば4時間から24時間程度とすればよい。MgSiO結晶粉末の乾燥は、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下の乾燥温度で、12時間から36時間程度行なう。
なお、Mg2SiO4結晶による効果を大きくするためには、Mg2SiO4中に含まれる未反応のMgOやSiO2の原料成分を少なくする必要があるため、MgOとSiO2とを混合した原料混合粉末を調製する際、マグネシウムのモル数が珪素のモル数の2倍となるように、MgOとSiO2とを混合することが好ましい。
MgSiO結晶粉末は、MgOの原料粉末及びSiO2の原料粉末からMg2SiO4結晶を合成する方法に限定されるものではなく、市販のMg2SiO4を用いてもよい。この場合、市販のMg2SiO4を、上述と同様の方法で粉砕し、乾燥してMg2SiO4結晶粉末を得るようにしてもよい。
Mg2SiO4結晶粉末を得た後、誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS12)に移行する。
<誘電体磁器組成物の作製工程:ステップS12>
誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS12)は、Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として前記亜鉛酸化物及びガラス成分を添加し、誘電体磁器組成物を得る誘電体磁器組成物の作製工程である。
得られたMgSiO結晶粉末と、誘電体磁器組成物の副成分の原料である亜鉛酸化物を所定量秤量した後、これらを混合して熱処理する。Mg2SiO4結晶粉末と副成分原料粉末との熱処理後の粉に対し、ガラス成分を添加して粉砕処理して誘電体磁器組成物とする。本実施形態では、ガラス成分は、MgSiO結晶粉末と亜鉛酸化物とを混合した後、熱処理して得られる粉に添加するようにしているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、ガラス成分は、MgSiO結晶粉末と亜鉛酸化物とを混合し熱処理する時に混合してもよい。亜鉛酸化物としては、上記のように、例えばZnOが挙げられる。ガラス成分としては、上記のように、Li2Oを含むガラスを少なくとも1つ以上含むものであることが好ましい。ガラス成分としては、例えば、SiO2−RO−Li2O系ガラスとB23−RO−Li2O系ガラスとの何れか一方又は両方を含んで構成されるものが好ましい。ガラス成分がLi2Oを含むことで、更に未反応なまま存在する焼結助剤とMg2SiO4との反応を促進させることができるので、誘電体磁器の焼結性は更に安定して確保でき、誘電体磁器のQ値は更に上昇させ、誘電損失を更に小さくすることができる。また、Ag系金属が溶融しない程度の低温で誘電体磁器組成物をAg系金属と同時焼成しつつ抗折強度を更に安定して確保することができる。
副成分の原料として、後述する仮焼き等の熱処理で焼成することによって亜鉛酸化物及びLi2Oを含むガラスとなる化合物を用いることもできる。誘電体磁器組成物の副成分の原料としては、亜鉛酸化物及びガラス成分以外に、例えば、ホウ素酸化物、アルカリ土類金属酸化物、又は焼成(後述する仮焼き等の熱処理)することによってこれらの酸化物となる化合物を用いることができる。ホウ素酸化物としては、B23等が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、BaO、SrO、CaO、MgO等が挙げられる。焼成により上記酸化物となる化合物としては、例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、硫化物、有機金属化合物等が例示される。ホウ素酸化物としては、B23等が挙げられる。アルカリ土類金属酸化物としては、BaO、SrO、CaO、MgO等が挙げられる。
亜鉛酸化物及びガラス成分の各原料の秤量は、完成後の誘電体磁器において、亜鉛酸化物及びガラス成分の含有量が、主成分に対して所望の上記質量比率(質量部)となるように行う。即ち、亜鉛酸化物の含有量は、亜鉛酸化物の質量をZnOに換算した場合、主成分100質量部に対して、8.0質量部以上20質量部以下であることが好ましく、12.0質量部以上16.0質量部以下であることがより好ましい。ガラス成分の含有量は、ガラス成分の質量をSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスに換算した場合、副成分からガラス成分を除いた誘電体組成100質量部に対して、2.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上7.0質量部以下であることがより好ましい。
副成分に含まれる成分として、亜鉛酸化物とガラス成分以外に、例えば、ホウ素酸化物、アルカリ土類金属酸化物などを含む場合、ホウ素酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量についても、上記の通り、主成分に対して各々所望の上記質量比率(質量部)となるように行う。
混合は、乾式混合又は湿式混合等の混合方式で行うことができ、例えば、ボールミルなどの混合分散機で純水、エタノール等の溶媒を用いた混合方式により行うことができる。混合時間は、4時間から24時間程度とすればよい。
原料混合粉末を、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下の乾燥温度で、12時間から36時間程度乾燥する。
乾燥させた原料混合粉末は、例えば800℃以上950℃以下で、1時間から10時間程度、熱処理(仮焼き)する。このように仮焼を焼成温度以下の温度で行うことによって、原料混合粉末中のフォルステライトが融解することを抑制でき、誘電体磁器組成物中に、結晶の形でMg2SiO4を含有させることができる。
仮焼後の原料混合粉末に対してLi2Oを含むガラスなどのLi系ガラスを添加、混合粉砕した後、乾燥する。これにより、誘電体磁器組成物が得られる。粉砕は乾式粉砕又は湿式粉砕等の粉砕方式で行なうことができる。粉砕時間は4時間から24時間程度とすればよい。粉砕後の原料混合粉末の乾燥は、好ましくは100℃以上200℃以下、より好ましくは120℃以上140℃以下の処理温度で12時間から36時間程度行えばよい。
上述した誘電体粉末である原料混合粉末の作成方法により、誘電体磁器組成物の主成分と副成分とが均一に混合されて、材質が均一な誘電体磁器組成物を得ることができる。
誘電体磁器組成物を得た後、誘電体磁器組成物を焼成する焼成工程(ステップS13)に移行する。
<焼成工程:ステップS13>
焼成工程(ステップS13)では、得られた誘電体磁器組成物を焼成して、焼結体を得る。これにより、本実施形態に係る誘電体磁器が得られる。焼成は、例えば、空気中のような酸素雰囲気にて行うことが好ましい。また、焼成温度は、導体材として用いるAg系金属の融点以下であることが好ましく、例えば、800℃以上1000℃以下であることが好ましく、800℃以上950℃以下であることがより好ましく、860℃以上950℃以下であることが更に好ましく、880℃以上940℃以下であることが最も好ましい。
このように本実施形態に係る誘電体磁器の製造方法を用いて得られる誘電体磁器は、ピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、相対密度が96%以上である。このため、焼成工程(ステップS13)において800℃以上1000℃以下の低温で焼成しても誘電体磁器の相対密度を高くし、未反応なまま残存するZnOの含有量を軽減している。よって、本実施形態に係る誘電体磁器は、焼成工程(ステップS13)において低温で焼成して得ることができ、誘電体磁器の焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、誘電損失の優れた誘電体磁器となる。したがって、本実施形態に係る誘電体磁器は、フィルター、共振器、コンデンサ、回路基板等の電子部品の一部を構成する誘電体磁器として好適に用いることができる。
以上、本発明に係る誘電体磁器の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る誘電体磁器は、低温で焼成可能としつつ、焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、誘電損失を低下させる効果を阻害しない範囲内で、他の化合物を含むようにしてもよい。
<電子部品>
本実施形態の誘電体磁器は、例えば、フィルター、コンデンサ、共振器、回路基板等の電子部品の一部を構成する誘電体層として好適に用いることができる。図2は、本実施形態の電子部品をLCフィルターとした場合の一実施形態を模式的に示す概念断面図である。図2に示すように、LCフィルター10は、複数の誘電体層11と、コイル12と、キャパシタパターン部13−1から13−3と、ビア(ビア導体)14とを含む。誘電体層11は、本実施形態の誘電体磁器が用いられている。コイル12及びキャパシタパターン部13−1から13−3はAg導体で形成されている。ビア14は、コイル12とキャパシタパターン部13−1とを導通させるAg導体が充填されたビアホール部分であり、LC共振回路が形成されている。キャパシタパターン部13−1はビア14によってコイル12と接続されている。LCフィルター10のコンデンサー部は3層構造としているが、LCフィルター10は3層構造に限定されず、任意の多層構造とすることができる。LCフィルター10では、誘電体層11に本実施形態に係る誘電体磁器を用いていることから誘電体層21は抗折強度を確保すると共に、誘電損失の低下を抑制するため、LCフィルター10は、誘電体層11の強度を維持することができると共に、高いQ値を有し、誘電損失が小さくなるので、高周波帯域での使用に適した特性が得られる。よって、本実施形態の電子部品は、LCフィルターとして好適に用いることができる。
このようにして製造されたLCフィルター10は、はんだ付け等によってプリント基板上に実装され、各種電子機器に用いられる。
本実施形態に係る電子部品は、図2に示すLCフィルター10のように、誘電体層11とキャパシタパターン部13−1から13−3とが交互に積層される電子部品に限定されるものではなく、誘電体層を含む電子部品であれば好適に用いることができる。また、本実施形態に係る誘電体磁器は、外部に更に素子が個別に実装される電子部品であっても好適に用いることができる。本実施形態の他の電子部品としては、例えば、コンデンサ、共振器、回路基板、ロー・パス・フィルタ(Low-pass filter:LPF)、バンド・パス・フィルタ(Band-pass filter:BPF)、ダイプレクサ(DPX)、カプラ(方向性結合器)、バルン(又はバラン;平衡不平衡インピーダンス変換器)等としても好適に用いることができる。
<電子部品の製造方法>
本実施形態に係る電子部品の製造方法の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る電子部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に係る電子部品の製造方法は、図1に示す誘電体磁器の製造方法により製造される誘電体磁器組成物を成型して複数積層し、焼成することにより製造されるものである。本実施形態に係る電子部品を製造するにあたり、以下の工程を含む。
(a) 酸化マグネシウムと二酸化珪素とを混合して熱処理し、Mg2SiO4結晶粉末を作製するMg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS21)
(b) Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として前記亜鉛酸化物及びガラス成分を添加し、誘電体磁器組成物を得る誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS22)
(c) 誘電体磁器組成物の粉末を含むペーストを基板上に塗布し、成型体を作製する成型体作製工程(ステップS23)
(d) 成型体を形成して得られるグリーンシートを複数積層し、積層体を得る積層体作製工程(ステップS24)
(e) 積層体を酸素雰囲気下において800℃以上1000℃以下の温度で焼成して、焼結体を得る焼成工程(ステップS25)
<Mg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS21)及び誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS22)>
Mg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS21)及び誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS22)は、上述の誘電体磁器を製造する際の図1に示すMg2SiO4結晶粉末の作製工程(ステップS11)及び誘電体磁器組成物の作製工程(ステップS12)と同様であるため、説明は省略する。誘電体磁器組成物を得た後、成型体を作製する成型体作製工程(ステップS23)に移行する。
<成型体作製工程:ステップS23>
成型体作製工程(ステップS23)は、誘電体磁器組成物の粉末を含むペーストを基板上に塗布し、成型体を作製する工程である。得られた誘電体磁器組成物の粉末を、ポリビニルアルコール系、アクリル系、又はエチルセルロース系等の有機バインダー等に添加した後、得られた混合物をシート状に成型してグリーンシートを得る。グリーンシートの成型方法としては、シート法や印刷法等の湿式成型法がある。成型体を作製した後、積層体を作製する積層体作製工程(ステップS24)に移行する。
<積層体作製工程:ステップS24>
積層体作製工程(ステップS24)は、成型体を形成して得られるグリーンシートを複数積層し、積層体を得る工程である。積層体作製工程(ステップS24)では、成型して得たグリーンシート上に、所定形状の内部電極が形成されるようにAgを含有する導電性ペーストを塗布する。導電性ペーストが塗布されたグリーンシートを必要に応じて複数作製し、積層してプレスし、積層体を得る。得られた積層体を所望のサイズに切断し、面取りを行った後、チップを焼成する焼成工程(ステップS25)に移行する。
<焼成工程:ステップS25>
焼成工程(ステップS25)は、上述の誘電体磁器を製造する際の図1に示す焼成工程(ステップS13)と同様であるため、説明は省略する。焼結体の冷却後、必要に応じて、得られた誘電体磁器に外部電極等を形成することで、誘電体磁器に外部電極等が形成された電子部品が完成する。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<誘電体磁器の作製>
[実施例1]
主成分としてMg2SiO4を含み、副成分として、亜鉛酸化物及びガラス成分を含み、主成分100質量部に対して、ZnOの含有率が16質量部であり、B23の含有率が6.0質量部であり、CaCO3の含有率が2.0質量部であり、副成分からガラス成分を除いた誘電体組成100質量部に対して、SiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスの含有率が2.0質量部である誘電体磁器を、以下に示す手順で作製した。CaCO 3 の含有率が2.0質量部である場合、CaOに換算すると1.12質量部である。
まず、主成分の原料であるMgO及びSiOを、マグネシウム原子のモル数がケイ素原子のモル数の2倍となるようにそれぞれ秤量した。秤量した原料に純水を加え、スラリー濃度が25質量部であるスラリーを調製した。このスラリーを、ボールミルにて16時間湿式混合した後、120℃程度で24時間乾燥して、原料混合粉末を得た。この原料混合粉末を、空気中で、3時間、1200℃程度で仮焼して、Mg2SiO4結晶を得た。このMg2SiO4結晶に純水を加えて、スラリー濃度が25%であるスラリーを調製した。このスラリーを、ボールミルにて16時間粉砕した後、120℃で24時間乾燥して、誘電体磁器組成物の主成分であるMg2SiO4結晶粉末を作製した。
次に、得られたMg2SiO4結晶粉末に対して、誘電体磁器組成物の副成分の原料であるZnO、B2、CaCO3、ガラス成分を各々配合して調整し、誘電体磁器組成物の粉末を得た。誘電体磁器組成物の各成分の配合量は、Mg2SiO4結晶粉末100質量部に対して、ZnOが16質量部、B2が6.0質量部、CaCO3が2.0質量部、副成分からガラス成分を除いた誘電体組成物100質量部に対して、SiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスが2.0質量部となるように調整した。
誘電体磁器組成物の粉末に有機バインダーなどを添加した後、これをドクターブレード法によってシート成型してシート成型体を複数作製した。複数のシート成型体を積層後プレスして基板状に成型し、シート積層成型体を作製した。このシート積層成型体を所望のサイズに切断後、チップの面取りを行い、これをAgが溶融しない焼成温度(900℃)で2.5時間焼成して、誘電体磁器を作製した。作製した誘電体磁器の主成分として含まれるMgSiOと、副成分として含まれるZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスとの各々の配合量を表1に示す。
[実施例2から12、比較例1から10]
誘電体磁器組成物全体に対するLiOの含有率(質量%)を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、誘電体磁器組成物をそれぞれ作製した。そして、得られた誘電体磁器組成物をシート成型して得られるシート成型体を、複数積層後プレスして基板状に成型したシート積層成型体を作製した。このシート積層成型体を実施例1と同様の方法で、各誘電体磁器を得た。作製した誘電体磁器の主成分として含まれるMgSiOと、副成分として含まれるZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスとLiO2との各々の配合量を表1に示す。
<評価>
得られた誘電体磁器の焼結密度ρs、相対密度(焼結密度が3.35g/cm3の時を100%とした)、Q値、抗折強度、素地の変形及び焼結性、主相に対するZnOの量を各々求めた。
[焼結密度ρsの測定]
焼成後の試験片がLWT方向で4.5×3.2×0.8mm前後になるように切断加工し、各方向の寸法をマイクロメーターで測定し、電子天秤で質量を測定し、そこからの嵩密度を焼結密度ρs(単位:g/cm3)とした。測定結果を表1に示す。尚、本実施例では、実施例4の誘電体磁器を作製する際に用いた誘電体磁器組成物の主成分であるMgSiOと、副成分であるZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスと同一の組成の誘電体磁器組成物の焼成温度と時間とを変化させて焼結密度ρsを測定した際、その焼結密度ρsの値が3.35g/cm3であった。そのため、実施例4での焼結密度の値3.35g/cm3を相対密度100%と規定し、相対密度が96%を下回る場合には焼結が不十分と評価した。
[Q値]
(X線回折による未反応で残存するZnOの量の特定)
焼成後の試料を瑪瑙乳鉢を用いて粉末状にすり潰してX線回折(X-Ray Diffraction spectroscopy;XRD)法によりXRD測定を行ない、X線回折ピーク強度を測定した。XRD測定は、Cu管球を使用しているX線回折装置(商品名:RINT2000/PC、リガク社製)を用いて行なった。測定試料には、実施例4、比較例7を用いた。測定条件は、以下に示す通りで行った。実施例4及び比較例7のX線回折チャートを図4に示す。
(測定条件)
・電圧:50kV
・電流:300mA
・スキャン速度:4°/min
・範囲:2θ=10〜70(deg)
図4に示すように、XRD測定結果から、実施例4では、36.5°付近にX線回折ピーク強度が確認され、比較例7では、36.4°付近にX線回折ピーク強度IAが確認された。このX線回折ピーク強度IAは、主相であるMg2SiO4に起因して見られるものである。比較例7では、31.8°付近と33.6°付近にX線回折ピーク強度IBが確認された。このX線回折ピーク強度IBは、未反応なまま存在するZnOに起因して見られるものである。一方、実施例4では、31.8°付近と33.6°付近にはX線回折ピーク強度IBは確認されなかった。よって、MgSiOを主成分とし、ZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスとを副成分として含む誘電体磁器では、X線回折ピーク強度IAに対するX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAは0%であった。一方、MgSiOを主成分とし、ZnOとB23とCaCO3とLi2Oとを副成分として含む誘電体磁器では、ピーク強度比IB/IAは15%程度であった。よって、実施例4の誘電体磁器のように、MgSiOを主成分とし、ZnOとB23とCaCO3とSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスとを副成分として含む誘電体磁器では、亜鉛酸化物は未反応なまま存在せず、完全に反応しているといえる。
(Q値の測定)
空洞共振器摂動法によりQ値を測定した。空洞共振器内に大きさが0.8mm四方の試験片を挿入し、空洞共振器内のQ値の変化を測定した。測定周波数は1.9GHzで行い、Q値は、3回行なって得られたQ値の平均値とした。測定結果を表1に示す。
[抗折強度の測定]
各誘電体磁器の試験片の厚みが0.4mm前後、幅が2.6mm前後になるように切断加工し、3点曲げ強度を測定した。測定器(商品名:5543、Instron社製)を用いて3点曲げ強度を測定した。3点曲げ強度試験により測定して得られた結果から抗折強度を求めた。測定時に試験片を支える2点間の治具距離は15mmとし、測定速度は0.5mm/minとし、10箇所で測定を行い、試験数10個で測定して得られた値の平均値(単位:MPa)を測定値とした。測定結果を表1に示す。
[素地の変形及び焼結性]
素地の変形は、焼結密度ρsの測定に用いた各試料を目視で判断した。焼結性は、焼結密度ρsの測定に用いた各試料を破断し、その面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、商品名:JSM‐6700、日本電子データム社製)でSEM観察して相対密度100%の試料に対してポア量の程度で焼結性が充分か否かを判断した。結果を表1に示す。
[主相に対する未反応で残存するZnOの量]
焼成後の主相に対する未反応で残存するZnOの量は、主相に含まれるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAと、未反応なまま存在するZnOの2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBとを求め、X線回折ピーク強度IAに対するX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAから求めた。測定結果を表1に示す。このピーク強度比IB/IAが10%以下が好適な範囲とした。
Figure 0005527052
表1に示すように、実施例1から12では、焼結密度ρsの値は3.35g/cm3から±0.02g/cm3の範囲内にあり、焼結密度ρsの値が3.35g/cm3を相対密度100%と規定した時の相対密度の値は99%以上であったことが確認された。このとき、実施例1から12の各誘電体磁器は、Q値が1000以上であり、抗折強度も280MPa以上であり、何れも素地の変形は無く、焼結性も良好であったことが確認された。また、焼成後の主相に対する未反応で残存するZnOの量は、何れも0%であったことが確認された。よって、SiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスのようなLi系ガラスを添加することで、未反応で残存するZnOの量は抑制することができ、Q値を1000以上にすることできるといえる。
これに対し、比較例1と比較例3から6では、焼結密度ρsの値が3.35g/cm3より小さく、相対密度の値は96%より小さかったことが確認された。特に、相対密度の値が90%以上96%未満の場合には、Q値及び抗折強度は低くなり、素地の変形は生じない場合もあったが、何れも焼結不十分となったことが確認された(比較例3、4参照)。また、相対密度の値が90%より小さい場合には、Q値及び抗折強度は測定不能となり、焼結不十分となったことが確認された(比較例5、6参照)。このとき、主相に対するZnOの量は、何れも0%であったことが確認された。これは、誘電体磁器組成物の焼結が不足し、誘電体磁器を得ることができなかったからであると考えられる。また、比較例2、7から10では、相対密度の値は96%以上であったが、Q値が低く、主相に対する未反応で残存するZnOの量は、15%以上であったことが確認された。これは、Li2Oを添加すると、未反応なZnOがある程度残り、Q値を1000以上にできないからであると考えられる。よって、焼結密度ρsが良好であってもQ値が低いと、誘電体磁器には、ZnOが残存するといえる。
従って、誘電体磁器組成物に含まれるZnOを全て焼成し、誘電体磁器のピーク強度比IB/IAを10%以下とすると共に、相対密度を96%以上とすることで、得られる誘電体磁器の焼結性を確保し、抗折強度を維持すると共に、Q値を上昇させ、誘電損失を低下させることができることが判明した。
以上のように、本発明に係る誘電体磁器、誘電体磁器の製造方法及び電子部品は、低温焼成化を可能としつつ、誘電特性を向上させることができるため、LTCCとして用いられ、高周用回路基板などに好適に用いることができる。
10 LCフィルター
11 誘電体層
12 コイル
13−1〜23−3 キャパシタパターン部
14 ビア(ビア導体)

Claims (3)

  1. Mg2SiO4を含む主成分と、亜鉛酸化物、ガラス成分、ホウ素酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を含む副成分と、
    を含み、
    前記ガラス成分が、SiO 2 −BaO−CaO−Li 2 O系ガラスであり、
    前記亜鉛酸化物の含有量が、前記亜鉛酸化物の質量をZnOに換算した場合、前記主成分100質量部に対して8.0質量部以上20質量部以下であり、
    前記ガラス成分の含有量が、前記ガラス成分の質量をSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスに換算した場合、前記副成分から前記ガラス成分を除いた誘電体組成100質量部に対して2.0質量部以上10.0質量部以下であり、
    前記ホウ素酸化物の含有量は、前記ホウ素酸化物の質量をB23に換算した場合、前記主成分100質量部に対して3.0質量部以上10.0質量部以下であり、
    前記アルカリ土類金属酸化物の含有量は、前記アルカリ土類金属酸化物の質量をRO(Rはアルカリ土類金属元素を示す)に換算した場合、前記主成分100質量部に対して1.0質量部以上4.0質量部以下であり、
    X線回折において、主相であるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAに対する、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、
    相対密度が96%以上であることを特徴とする誘電体磁器。
  2. Mg2SiO4を含む主成分と、亜鉛酸化物、ガラス成分、ホウ素酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を含む副成分とを含む誘電体磁器を製造するにあたり、
    酸化マグネシウムの原料粉末と二酸化珪素の原料粉末とを混合して熱処理し、Mg2SiO4結晶粉末を作製し、前記Mg2SiO4結晶粉末に、副成分原料粉末として前記亜鉛酸化物及びガラス成分を添加し、誘電体磁器組成物を得る誘電体磁器組成物の作製工程と、
    前記誘電体磁器組成物を酸素雰囲気下において800℃以上1000℃以下の温度で焼成して、焼結体を得る焼成工程と、
    を含み、
    前記ガラス成分が、SiO 2 −BaO−CaO−Li 2 O系ガラスであり、
    前記亜鉛酸化物の含有量を、前記亜鉛酸化物の質量をZnOに換算した場合、前記主成分100質量部に対して8.0質量部以上20質量部以下とし、
    前記ガラス成分の含有量を、前記ガラス成分の質量をSiO2−BaO−CaO−Li2O系ガラスに換算した場合、前記副成分から前記ガラス成分を除いた誘電体組成100質量部に対して2.0質量部以上10.0質量部以下とし、
    前記ホウ素酸化物の含有量を、前記ホウ素酸化物の質量をB23に換算した場合、前記主成分100質量部に対して3.0質量部以上10.0質量部以下とし、
    前記アルカリ土類金属酸化物の含有量を、前記アルカリ土類金属酸化物の質量をRO(Rはアルカリ土類金属元素を示す)に換算した場合、前記主成分100質量部に対して1.0質量部以上4.0質量部以下とし、
    X線回折において、前記焼結体の主相であるMg2SiO4の2θが36.0°から37.0°の間におけるX線回折ピーク強度IAに対する、未反応なまま存在する亜鉛酸化物の2θが31.0°から32.0°及び33.0°から34.0°におけるX線回折ピーク強度IBのピーク強度比IB/IAが10%以下であると共に、
    相対密度が96%以上であることを特徴とする誘電体磁器の製造方法。
  3. 請求項1に記載の誘電体磁器からなる誘電体層を有することを特徴とする電子部品。
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